特許第5911105号(P5911105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911105
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】有機EL照明装置のリペア方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20160414BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-518298(P2012-518298)
(86)(22)【出願日】2011年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2011060204
(87)【国際公開番号】WO2011152162
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-126735(P2010-126735)
(32)【優先日】2010年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300022353
【氏名又は名称】NECライティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】坂口 嘉一
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−293875(JP,A)
【文献】 特開平04−051490(JP,A)
【文献】 特開2007−141536(JP,A)
【文献】 特開平04−014794(JP,A)
【文献】 特開2004−247088(JP,A)
【文献】 特開平11−162637(JP,A)
【文献】 特開2004−164943(JP,A)
【文献】 特開2007−207703(JP,A)
【文献】 特開2005−340149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−28
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機EL素子を用いた有機EL照明装置をリペアするリペア方法であって、
前記複数の有機EL素子の陽極を互いに接続し、前記複数の有機EL素子の陰極に、前記陽極の電位に対して順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを交互に所定の周期で印加する印加工程と、
前記順方向バイアス電圧を印加する時間に対する前記逆方向バイアス電圧を印加する時間の割合である時間割合を増加させていく増加工程とを行うリペア方法
【請求項2】
請求項1に記載のリペア方法であって、
前記増加工程は、前記時間割合を連続的に増加させていくことを特徴とするリペア方法
【請求項3】
請求項1に記載のリペア方法であって、
前記増加工程は、前記時間割合を段階的に増加させていくことを特徴とするリペア方法
【請求項4】
請求項1に記載のリペア方法であって、
前記印加工程は、前記複数の有機EL素子のうち半数の有機EL素子の陰極に前記順方向バイアス電圧を印加し、前記複数の有機EL素子のうち残りの半数の有機EL素子の陰極に前記逆方向バイアス電圧を印加することを特徴とするリペア方法
【請求項5】
請求項4に記載のリペア方法であって、
前記印加工程は、マトリクス状に配置された前記複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、該陰極に、前記順方向バイアス電圧と前記逆方向バイアス電圧とのうち、互いに隣接する行に配置された陰極に印加する電圧と異なる電圧を印加することを特徴とするリペア方法
【請求項6】
請求項4に記載のリペア方法であって、
前記印加工程は、マトリクス状に配置された前記複数の有機EL素子のうち互いに同じ列に配置された陰極同士を接続し、該陰極に、前記順方向バイアス電圧と前記逆方向バイアス電圧とのうち、互いに隣接する列に配置された陰極に印加する電圧と異なる電圧を印加することを特徴とするリペア方法
【請求項7】
請求項1に記載のリペア方法において、
前記互いに接続された陽極に所定の電圧を印加する工程を行うことを特徴とするリペア方法
【請求項8】
請求項1に記載のリペア方法において、
前記互いに接続された陽極を接地する工程を行うことを特徴とするリペア方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(EL:Electro−Luminescence)素子を用いた照明装置を製造する製造方法法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置に用いる素子として有機EL(Electro−Luminescence)素子が注目されている。
【0003】
この有機EL素子を照明分野の製品(以下、有機EL照明装置と称する)に用いる場合、当該有機EL素子の電極である陽極と陰極との間に電気的短絡(ショート)が生じてしまうという問題が最重要課題の1つとなっている。
【0004】
有機EL照明装置は、その発光面積や電界の掛かる面積が大きい。そのため、ショートが生じてしまう確率も高くなり、それが歩留りや信頼性の低下につながるおそれもある。
【0005】
このショートの原因として、陽極として有機層の下地に用いる透明導電膜(ITO)に生じる表面段差や、陽極と陰極との間への異物・ゴミ等の混入が挙げられる。これらにより、ITO上の有機膜に欠損が生じたり、または膜厚が薄くなったりして、陽極と陰極との間の距離が短くなってしまう。それにより、局所的に電界が高くなった箇所がショートとなる。
【0006】
表面段差は、ITOのグレインや結晶粒、ITO成膜時のゴミ・異物等の混入、またはITOの下地に用いるSiOを研磨するときに用いるCeの残渣等により生じる。
【0007】
このショート発生を回避するために、当該製品の出荷前にエージング、リペアを行うことがある。
【0008】
しかしながら、これを回避するために、一般的には、陽極と陰極との間に順方向のバイアス電圧を印加して、有機EL素子を連続点灯させ、ショートが生じた箇所をレーザーで局所的に破壊・絶縁化する手法が用いられている。
【0009】
このように一般的に用いられているエージング・リペア方法では、製品の信頼性を上げるためにはショートが起きなくなるまで長時間の通電が必要となり、また、全数をエージングするには、そのための装置や場所の確保も必要となる。
【0010】
また、他のリペア方法として、正常な(ショートが生じていない)有機EL素子の発光電圧以下の順方向バイアス電圧を印加し、正常な部分よりも薄膜化している部分を部分的に微小発光させ、それを画像認識し、レーザーでリペアを行っている方法が用いられている。
【0011】
さらに、別のリペア方法として、有機EL素子に逆方向バイアス電圧をDC印加し、正常な部分よりも薄膜化しているところを逆方向電流により部分的にリペアを行っている方法が用いられている。しかしながら、この方法では、印加できる電圧の電圧値が低く、リペアできないショート発生予備軍が多数残る。その結果、上述した2つの方法を行わなければならない。
【0012】
そこで、有機EL素子に逆方向バイアス電圧を印加し、印加する逆方向バイアス電圧の電圧値を上げて、ショート部分をリペアする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−247088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載されたような技術においては、急激な電圧印加により、素子を破壊してしまうおそれがある。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題を解決する有機EL照明装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の有機EL照明装置の製造方法は、
複数の有機EL素子を用いた有機EL照明装置を製造する製造方法であって、
前記複数の有機EL素子の陽極を互いに接続し、前記複数の有機EL素子の陰極に、前記陽極の電位に対して順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを交互に所定の周期で印加する印加工程と、
前記順方向バイアス電圧を印加する時間に対する前記逆方向バイアス電圧を印加する時間の割合である時間割合を増加させていく増加工程とを行う。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明においては、リペアするための電圧印加による素子の破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】有機EL照明装置に用いられる有機EL素子の構造の一例を示す図である。
図2】複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した様子の一例を示す図である。
図3】有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の一例を示す図である。
図4】有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
図5】有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
図6】有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
図7】有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
図8】複数の有機EL素子のうち半数の有機EL素子の陰極に順方向バイアス電圧を印加し、残りの半数の有機EL素子の陰極に逆方向バイアス電圧を印加するための接続例を示す図である。
図9】マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した有機EL照明装置の構造を陰極側から見た図である。
図10】マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した有機EL照明装置の構造を陽極側から見た図である。
図11図9に示したように接続された有機EL素子の陰極に順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを印加する様子を示す図である。
図12図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形の一例を示す図である。
図13図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、有機EL照明装置に用いられる有機EL素子の構造の一例を示す図である。
【0021】
図1に示した有機EL素子は、ガラス基板100と、透明の部材からなる陽極である透明電極(ITO)101と、正孔注入層102と、正孔輸送層103と、陰極107と、透明電極101と陰極107との間に所定の電圧が印加されることにより発光する発光層104と、電子輸送層105と、電子注入層106と、封止シール剤108と、封止基板109とから構成されている。
【0022】
一般的に有機EL照明装置は、図1に示したような有機EL素子を複数配置した構成をとる。
【0023】
本発明は、上述したようなショートが発生するより前に、ショートが発生しやすい箇所をエージング過程で自動的にリペアすることを目的とした有機EL照明装置の製造方法である。
(第1の実施の形態)
まず、複数の有機EL素子の陽極を電気的に互いに接続する。
【0024】
図2は、複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した様子の一例を示す図である。
【0025】
図2に示すように、陽極と陰極とを含む有機EL素子200の陽極を電気的に互いに接続する。このとき、陽極はフロート状態であっても良いし、陽極が所定の基準電位とする(例えば、接地や所定の電圧を印加)ものであっても良い。
【0026】
そして、有機EL素子200のそれぞれの陰極に、陽極の電位に対して順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを交互に所定の周期で印加する。このときの逆方向バイアス電圧の電圧値は、降伏電圧以下とすることが好ましい。また、このときの順方向バイアス電圧の電圧値は、発光開始前後の電圧値から逆方向バイアス電圧の電圧値の極性を反転させた電圧値までの電圧値と同程度とすることが好ましい。
【0027】
図3は、有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の一例を示す図である。
【0028】
図3に示すように、陽極の電位Eに対して、陰極に所定の周期の矩形波(パルス波)となる電圧V(順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧)を印加する。図3に示した例では、順方向バイアス電圧を印加する時間と、逆方向バイアス電圧を印加する時間の割合は3:1である。
【0029】
図4は、有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
【0030】
図4に示すように、陽極の電位Eに対して、陰極に所定の周期の矩形波(パルス波)となる電圧V(順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧)を印加する。図4に示した例では、順方向バイアス電圧を印加する時間と、逆方向バイアス電圧を印加する時間の割合は1:3である。
【0031】
図3に示した波形の電圧印加に比べ、図4に示した波形の電圧印加は、陰極に順方向バイアス電圧を印加する時間に対する逆方向バイアス電圧を印加する時間の割合(時間割合)が高いものとなっている。つまり、図3に示した波形の電圧印加に比べ、図4に示した波形の電圧印加は、陰極に逆方向バイアス電圧を印加する時間が長い。
【0032】
このように、時間割合が高いものであると、リペアの確率を上げることができる。
【0033】
本発明では、この時間割合を増加させていく。これにより、リペアするための電圧印加による素子の破壊を防ぐ。このとき、時間割合を連続的に増加させていくものであっても良いし、段階(ステップ)的に増加させていくものであっても良い。
【0034】
以下に具体的に説明する。
【0035】
有機EL素子の等価回路としては、ダイオードとコンデンサとが並列に接続したものと考えることができる。有機EL素子は、陽極薄膜と陰極薄膜との間に有機薄膜を挟んだコンデンサ構造であるが、nmオーダーの薄膜を均一な膜厚で形成することは困難である。膜厚の面内バラツキが存在し、薄い部分は耐電圧性が低くなるが、膜厚バラツキのためその耐圧性も異なったものとなる。
【0036】
これに、リペアのためのバイアス(電圧)が印加された場合、膜厚が薄く耐圧の低い部分から順次リペアされていくこととなる。大面積で、ショート起因となりやすい箇所が多数ある有機EL素子のリペアには、膜厚に対応して順次電圧を上げて行く方法が有効である。また、多数ある欠陥部をリペアするには充分な時間が必要となる。
【0037】
時間割合を増加させ、逆方向バイアス電圧の印加の時間が長くしていくことにより、緩やかにリペアすることでき、急激なリペアバイアス印加による完全な素子破壊の防ぐことができる。
【0038】
図5は、有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
【0039】
図5に示すように、陽極の電位Eに対して、陰極に所定の周期の三角波となる電圧V(順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧)を印加するものであっても良い。
【0040】
図6は、有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
【0041】
図6に示すように、陰極に階段状の波形となる電圧Vを印加するものであっても良い。
【0042】
図7は、有機EL素子の陰極に印加させる電圧の波形の他の例を示す図である。
【0043】
図7に示すように、陰極に所定の電圧および所定の時間幅を持つパルス波となる電圧Vを印加するものであっても良い。
(第2の実施の形態)
また、複数の有機EL素子のうち半数の有機EL素子の陰極に順方向バイアス電圧を印加し、残りの半数の有機EL素子の陰極に逆方向バイアス電圧を印加するものであっても良い。
【0044】
図8は、複数の有機EL素子のうち半数の有機EL素子の陰極に順方向バイアス電圧を印加し、残りの半数の有機EL素子の陰極に逆方向バイアス電圧を印加するための接続例を示す図である。
【0045】
図8には、8つの有機EL素子をダイオードの記号でそれぞれ示している。また、有機EL素子の陽極は互いに共通配線されている(Column)。また、半数の4つの有機EL素子の陰極はRow1と接続されている。また、残り半数の4つの有機EL素子の陰極はRow2と接続されている。そして、Row1には、Columnの電位に対してHighレベルの電圧を印加する。また、Row2には、Columnの電位に対してLowレベルの電圧を印加する。
【0046】
これにより、Row2と接続された有機EL素子には順方向バイアス電圧が印加されたこととなり、図8に示した矢印の方向に電流が流れる。
【0047】
また、Row1と接続された有機EL素子には逆方向バイアス電圧が印加されたこととなり、電流は流れないが、図8に示すようにリークまたはショートの原因となる箇所(図8では抵抗の記号で示す)へ集中的に電流が流れ、リペアが行われる。
【0048】
続いて、LowとHighとを逆転させる。つまり、Row1には、Columnの電位に対してLowレベルの電圧を印加する。また、Row2には、Columnの電位に対してHighレベルの電圧を印加する。
【0049】
すると、今までリペアされていない側の有機EL素子がリペアされる。この手法により同時に多数の有機EL素子がリペアできる。
【0050】
また、順方向バイアス電圧の印加であっても、その電圧が低いものであれば、素子膜厚の薄い部分から順に順方向電流が流れ、リペアを行うことができ、リペアの確率が向上する。
【0051】
また、これを第1の実施の形態と同様に、時間割合の増加等で、逆方向バイアス電圧を調整することで、リペアの確率を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
また、マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行(または列)に配置された陰極同士を接続し、その行(または列)に交互に順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを印加するものであっても良い。
【0052】
例えば、マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、その陰極に、順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とのうち、互いに隣接する行に配置された陰極に印加する電圧と異なる電圧を印加するものであっても良い。
【0053】
図9は、マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した有機EL照明装置の構造を陰極側から見た図である。
【0054】
図10は、マトリクス状に配置された複数の有機EL素子のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を接続し、複数の有機EL素子の陽極を互いに接続した有機EL照明装置の構造を陽極側から見た図である。
【0055】
図9に示すように、マトリクス状に配置された有機EL素子200のうち互いに同じ行に配置された陰極同士を陰極接続線202で接続する。
【0056】
また、図10に示すように、マトリクス状に配置された有機EL素子200の陽極同士を陽極接続線201で接続する。
【0057】
図11は、図9に示したように接続された有機EL素子の陰極に順方向バイアス電圧と逆方向バイアス電圧とを印加する様子を示す図である。
【0058】
図11に示すように、マトリクスの端から奇数番目の行に当たる1、3、5行目に配置(接続)された有機EL素子の陰極に、陽極の電位に対して順方向バイアス電圧となるHighレベルの電圧を印加する。また、マトリクスの端から偶数番目の行に当たる2、4、6行目に配置(接続)された有機EL素子の陰極に、陽極の電位に対して逆方向バイアス電圧となるLowレベルの電圧を印加する。また、陽極接続線201は、接地またはフローティングさせる。なお、図11には、マトリクスの行が6つである場合を例に挙げて示しているが、行数については限定しない。また、行ではなく、列を用いても良い。
【0059】
この陰極に、Highレベルの電圧とLowレベルの電圧とを交互に印加する。
【0060】
図12は、図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形の一例を示す図である。なお、図12では、図11に示した5行目および6行目に印加する電圧波形を省略して示す。
【0061】
図12に示すように、図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形は、Highレベルの電圧とLowレベルの電圧とが周期的に交互に印加される矩形波である。また、1行目と3行目とが同じ波形であり、2行目と4行目とが同じ波形である。このように、1行おきに互いに同じ電圧(Highレベルの電圧とLowレベルの電圧とが周期的に交互に入れ替わる電圧)を印加する。
【0062】
これにより、Lowレベルの電圧が印加されている有機EL素子には順方向バイアス電圧が、またHighレベルの電圧が印加されている有機EL素子には逆方向バイアス電圧が印加される。すると、High時にリークもしくはショートの原因となる箇所から集中的に逆方向電流が流れ、リペアが行われる。また、次の工程で、LowレベルとHighレベルとを逆転させた電圧を印加することにより、前回リペアされていない側がリペアされる。
【0063】
また、順方向バイアス電圧の印加であっても、その電圧が低いものであれば、素子膜厚の薄い部分から順に順方向電流が流れ、リペアを行うことができ、リペアの確率が向上する。この手法により、さらに多数の有機EL素子が同時にリペアできる。
【0064】
また、これを第1の実施の形態と同様に、時間割合の増加等で、逆方向バイアス電圧を調整することで、リペアの確率を向上させることができる。
【0065】
図13は、図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形の他の例を示す図である。なお、図13では、図11に示した5行目および6行目に印加する電圧波形を省略して示す。
【0066】
図13に示すように、図11に示した構成における各行(陰極)に印加する電圧波形は、Highレベルの電圧とLowレベルの電圧とが周期的に交互に印加される矩形波である。ただし、各行間で印加するタイミングを所定の時間ずつ、ずらしている。
【0067】
ここで、本発明において上述したように陰極側を駆動する理由を、以下に述べる。
【0068】
有機EL素子の場合、陰極側にAl等の金属箔膜を用いることが多く、陽極側と比して比抵抗が低く電流を流し易い。また、加熱蒸着できる材料であるため融点が低い材料が多いことから、局所的な電界・電流集中によるマイグレーション等が起きやすくリペアが確実に行える。また、接続した陰極を走査する場合、1本の配線で陽極ライン全てからの電流を引き出さなければならない。そのため、高い電流密度の瞬時電流が流れることになり、リペアを行うことができ、その確率を向上することができる。
【0069】
有機EL照明の実用化を妨げている原因の1つに陽極と陰極との間のショートが挙げられる。本発明は、ショートが発生した後にレーザー光を用いてリペアを行うのではなく、エージング中にセルフリペアを行うことができる。また、同時に多数の有機EL素子をリペアできるため、生産タクトタイムの短縮に繋がる。
【0070】
なお、本発明の面発光装置の活用例としては、有機EL照明装置、液晶ディスプレイ等のバックライ等が挙げられる。
【0071】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0072】
この出願は、2010年6月2日に出願された日本出願特願2010−126735を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13