(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられた窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、
窓を壁部に固定させ、窓枠の室外側周縁部から外周方向へ略垂直に突出し、室内側へ屈曲した略断面L字状の室外側突起部に係合可能な係合溝を有する略断面コの字状の係合部と、略断面コの字状の係合部の相対する底辺部のうちの一方の底辺部の略先端から、他方の底辺部とは反対方向へ略垂直に突出した略断面直線状の遮蔽部とを備えたアタッチメントの係合溝を窓枠の室外側突起部に係合させたのちに、窓枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
老朽化した窓をリフォームする場合、既設窓枠を撤去せずに、既設窓枠を基礎にしてその上から新設窓枠を取り付ける、いわゆる「かぶせ工法」が一般的である。この工法は、既設窓枠を取り外す必要が無いため、外壁等を壊す必要が無く、また足場が不要、工事音が少ない、工期が短い、粉塵・廃棄物が出ない、など様々な利点があり、窓を改装する方法として非常に有用である。
【0003】
かぶせ工法において、新設窓枠を既設窓枠に取り付けるには、既設窓枠に新設窓枠を、介装部材を介して溶接又はビス止め等により取り付ける方法が一般的であるが、既設窓枠と新設窓枠との間に隙間が生じるため、この隙間部分を塞ぐことが必要である。例えば、この空間を塞ぐため、新設窓枠の室外側外周部に外部アタッチメントを備えることで、新設窓枠と既設窓枠との間に形成される空間を塞ぐことが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、窓の改装が必要な場合というのは、そもそも窓枠の周りの柱や梁などの躯体に、歪みや撓み、傾きなどの不具合が生じている場合が多く、この不具合が生じた状態のまま新設窓枠を取り付けても、既設窓枠との間に生じる空間が四辺で一定ではなく、例えば、窓枠の上枠が水平でない場合などが挙げられるが、窓枠のサイズが大きければ大きいほど、このような不具合は大きく生じているのが通常である。このような躯体の歪みや撓み、傾きは、上下方向、左右方向にだけ生じるのではなく、前後方向にも生じることがあり、3次元的に生じる。また、このような躯体の不具合は、全て一様ではなく個別に異なるものである。
【0005】
そのため、窓の改装は、個別に異なる躯体に合わせて行わなければならないため効率が悪く、一度窓枠を取り付けた後に傾き等が発見されても、後から補正することができない。したがって、外部アタッチメントにより既設窓枠と新設窓枠との間の隙間部分を塞ぐ場合においても、現場で特別に加工を施す必要が生ずるなど熟練技術を要し、さらに、新設窓枠は、メーカーによって構造が異なる汎用性の無い商品であるため、施工には専門知識を要する。そのため、かぶせ工法による窓の改装には、高度な専門知識と技能を有する職人が必要であり、人手不足や施工が高コストになり易いという問題があった。
【0006】
また、いかに腕の良い職人により施工されたとしても、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分を完全に塞ぐことは困難であり、地震などによる水平応力が働いた場合、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分に変位が生じ、既設窓枠の変形が新設窓枠に直接作用することになり、ガラスが破壊しやすくなるといった問題が発生する。
【0007】
また、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分には、室内外の温度差による結露により水滴が生じ、また止水処理に用いたコーキングの劣化によって雨水が空間部分に入り込むことがあり、これらがサビやカビの温床になったり、窓枠を腐食させて窓枠の寿命を短くしたり、さらには、壁の内部にまで浸水して壁面にヒビ割れを生じさせる要因にもなる。特に、溶接した部分は、ペイント補修を行っても、空間部分の水分によってサビが生じることが多い。また、窓の開口部が大きいほど窓には強い風圧がかかるため、風圧性能が弱ければ窓が撓んで、カバー部分が損傷し、損傷した箇所から雨風が入り込むなどの問題が発生する。
【0008】
このような中、躯体と窓枠の間隙に発泡ポリウレタンを充填し、さらにカバー部分の内面に発泡ポリウレタンを吹き付ける躯体の改修方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法によっても、既設窓枠と新設窓枠との間に空間部分は残っているため、結露の発生を完全に防止できるものではなく、耐震性も十分ではなく、また、新設窓枠の取り付けを個別に異なる躯体に合わせて行わなければならないといった、施工の困難性を解決することはできない。
【0009】
このような問題を解決するため、既設窓枠を取り外すことなく新設窓枠を取り付けた改装窓において、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体を充填した改装窓が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この工法によれば、止水性、気密性、断熱性、遮音性、耐風圧性、耐震性、免震性、又は、制振性に優れた改装窓を得ることができる。この際、既設窓枠に新設窓枠を仮止めするためにフラットバーを用いるが、既設窓枠や新設窓枠に穴開けや溶接等の加工を施す必要があった。
【0010】
ところで、上述のように改装窓を取り付ける場合だけでなく、建物の開口部に新しい窓を取り付ける場合にも、窓構造体の止水性、気密性、断熱性、遮音性、耐風圧性又は耐震性等が求められる。特許文献3で開示されたように、新設する窓と、窓を設置する開口部が形成された躯体との間に生じる空間の略全体に発泡硬化体を充填することで、これらの性能を満たす窓構造体を得ることが可能である。この際、新設窓枠を躯体に固定して発泡硬化体の原料を空間部分に充填するが、新設窓枠の室外側の周縁部と壁部の隙間にできるコーキング用溝にまで発泡硬化体が浸入することがあり、確実なコーキングが行えずに、結果として新設窓枠の周縁部からの雨水の浸入等を防ぐことができないことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体を充填して改装窓を製造する際に、見栄え良く、穴開けや溶接等の加工を施す必要もなく、効率的に、既設窓枠に新設窓枠を仮止めすることができるアタッチメントを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、壁部と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体を充填して窓を新設する際に、新設窓枠の室外側の周縁部と開口部との間を確実にコーキングして、新設窓枠の周縁部からの雨水の浸入を防ぐための適切な深さのコーキング用溝を形成できるアタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、窓枠の室外側周縁部から外周方向へ略垂直に突出し、室内側へ屈曲した略断面L字状の室外側突起部に係合可能な係合溝を有する略断面コの字状の係合部と、略断面コの字状の係合部の相対する底辺部のうちの一方の底辺部の略先端から、他方の底辺部とは反対方向へ略垂直に突出した略断面直線状の遮蔽部とを備えたアタッチメントに関する。
【0015】
室外側突起部に係合溝を係合させたときに、遮蔽部の室外側の面が窓枠の室外側の平面と同一平面を形成し得ることが好ましい。
【0016】
遮蔽部が突出している底辺部において遮蔽部よりも室内側の位置から、他方の底辺部とは反対方向へ略垂直に突出した略断面直線状の固定部とを備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、室外側突起部に係合溝が係合した前記アタッチメントの相対する底辺部を連結する連結部の室内側にある連結部室内側底面と、窓枠の室内側周縁部から外周方向へ略垂直に突出し、室外側へ屈曲した略断面L字状の室内側突起部の先端面との間に嵌入可能な略断面直線状の抑え部と、該抑え部を連結部室内側底面及び前記先端面との間に嵌入した際に、窓枠及びアタッチメントに係止可能な係止部とを備えた抑え部材に関する。
【0018】
さらに、本発明は、既設窓枠を取り外すことなく、窓枠を取り付ける改装窓の製造方法において、前記アタッチメントの係合溝を窓枠の室外側突起部に係合させることで、窓枠を既設窓枠に接合させたのち、窓枠と既設窓枠との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、窓枠と既設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする改装窓の製造方法に関する。
【0019】
さらに、本発明は、略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられた窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、窓を壁部に固定させ、前記アタッチメントの係合溝を窓枠の室外側突起部に係合させたのちに、窓枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるアタッチメントを使用することで、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体を充填して改装窓を製造する際に、既設窓枠に新設窓枠を見栄え良く効率的に仮止めすることができる。また、既設窓枠や新設窓枠に対して穴開けや溶接等の加工を施す必要がないので、全ての作業工程を効率的に実施することが可能である。
【0021】
また、本発明にかかるアタッチメントを使用することで、壁部と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体を充填して窓を新設する際に、新設窓枠の室外側の周縁部と窓が設置される開口部との間に、適切な深さのコーキング用溝を形成することができる。適度な深さのコーキング用溝を形成することで、確実なコーキングが可能となり、新設窓枠の周縁部からの雨水の浸入等を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明にかかる第一の実施の形態について説明する。
図1は、第一の実施の形態にかかる改装窓の横方向の断面図である。改装窓は、窓の改装にあたって新たに設けられる窓枠である新設窓枠1と、窓の改装前に既に設けられていた窓枠である既設窓枠2と、新設窓枠1と既設窓枠2により形成される空間の略全体に充填された発泡硬化体4と、既設窓枠2が固定されたモルタルからなる壁部(図示しない)と、新設窓枠1に設置された引違い窓6と、新設窓枠1を既設窓枠2に接合するためのアタッチメント7及びZバー9と、アタッチメント7を新設窓枠1に固定する抑え部材8と、アタッチメント7とZバー9を固定するビス10と、充填された発泡硬化体4が室内側から見えないようにするためのカバー3(アルミ製)から構成されている。引違い窓6は共に水平方向に開閉が可能である。
【0024】
本発明における改装窓の施工手順としては、既設窓枠2に新設窓枠1を接合させたのち、新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を粘着テープで塞ぎ、該粘着テープに発泡硬化体原料を注入する注入孔を穿設し、注入孔から発泡硬化体原料を注入して新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分の略全体に発泡硬化体4を充填する方法があげられる。
【0025】
但し、発泡硬化体原料が硬化して発泡硬化体4となることで、既設窓枠2と新設窓枠1とを強固に接着して接合強度を高めるので、既設窓枠2と新設窓枠1のアタッチメント7による接合は、発泡硬化体4が硬化するまでの間、新設窓枠1が安定した状態を維持できる強度があれば足りる。新設窓枠1を傾くことなく水平に維持できれば、アタッチメント7は、新設窓枠1に対してやや傾いた面を有していても良い。また、Zバー9は、300mm〜450mm程度の幅を有しているため、Zバー9が設けられていない隙間は、透明又は半透明の粘着テープで塞ぐことで、発泡硬化体原料を注入した際の流出を防ぐことも可能となる。
【0026】
発泡硬化体原料の注入は粘着テープに穿設された注入孔から行われる。発泡硬化体原料を注入した後に、新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分を、アルミ製のカバー3に代わり、化粧部材で塞ぐことも可能である。粘着テープは、化粧部材の取り付けに邪魔にならなければそのままでも良いし、剥がしてから化粧部材を取り付けても良い。新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方のみを注入孔を設けてある化粧部材で塞ぎ、他方は注入孔を設けていない化粧部材で塞ぐことも可能である。また、室外に面する既設窓枠2と新設窓枠1との隙間部分はバックアップ材をはめ込みシール等で充填しても良い。
【0027】
本発明の改装窓は、既設窓枠2と新設窓枠1との間に生じる、窓枠の四辺の室内外に通じる隙間部分が(図示しない)化粧部材で塞がれていてもよい。新設窓枠1は、既設窓枠2の内周側に取り付けるものであるから、既設窓枠2よりも小さいものを使用するが、既設窓枠2に対して新設窓枠1が隙間無く収まるということはなく、どうしても既設窓枠2と新設窓枠1との間に若干の隙間部分が生じてしまうし、既設窓枠2自体が傾いていたり、歪んでいれば、隙間部分は必ず生じるものである。このように、既設窓枠2と新設窓枠1との間に隙間部分があることで、窓枠の室内外から、既設窓枠2と新設窓枠1との空間部分に充填した発泡硬化体4が見えてしまう。そこで、隙間部分を化粧部材により塞ぐことで、発泡硬化体4が窓枠の室内外から見えないようにすることができる。
【0028】
化粧部材は、例えば、平板状、又は断面がL字形状のアルミ製のものが適しているが、プラスチック製、木製、紙製等の材質でも良い。また、美観向上の観点から、化粧部材の上に、さらに木目が印刷されたプラスチック板や紙片、合板などを貼り付けても良い。化粧部材は、隙間部分が生じる窓枠の四辺に取り付けられ、粘着性の両面テープや接着剤などで窓枠に接着されても良いし、ビス止めされても良い。なお、改装窓の止水性、気密性、断熱性、遮音性は、既設窓枠2と新設窓枠1の間の空間部分の略全体を発泡硬化体4で埋めることで十分得られるので、化粧部材は、単に美観上の問題として隙間部分を隠すだけで良く、強固に取り付ける必要はない。
【0029】
隙間部分は、室内側と室外側の両方に生じるが、化粧部材は両方とも同じ部材を用いる必要は無い。例えば、室内側は、常に居住者から見える部分であるため、美観を損なわないように配慮する必要があるが、室外側は、美観よりも機能を重視する必要があるから、雨風に強い部材を用いる必要がある。
【0030】
化粧部材は、発泡硬化体4を充填した後に取り付けても良いし、発泡硬化体4を充填する前に取り付けても良い。発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付けた場合は、化粧部材によって発泡硬化体4が溢れ出ないようにすることができる。それとは逆に、発泡硬化体4を充填した後に化粧部材を取り付ける場合は、発泡ポリウレタンが充填され、溢れ出た場合には削ぎ落としてから取り付けることになる。
【0031】
化粧部材を取り付ける際には、バックアップ材及びシーリング材などの充填材によってコーキングを施しても良いし、これらのコーキングを施さないで、そのまま化粧部材を取り付けるだけでも良い。これは、発泡硬化体がコーキングの役目を果たすためである。但し、室外側の雨風に曝される場所については、化粧部材の剥がれや汚れを防ぐために、コーキングを施しておくことが好ましい。
【0032】
既設窓枠2と新設窓枠1との間の空間部分の略全体に発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付ける場合は、化粧部材の任意の箇所に、発泡硬化体原料を空間内に注入する注入孔が設けられていても良い。発泡硬化体4を充填した後に化粧部材を取り付ける場合、発泡硬化体4は既に空間内部に充填されているため、化粧部材を取り付けた後に発泡硬化体4を充填する必要は無いが、発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付けた場合は、発泡硬化体原料を空間内部に充填する隙間を確保しておくか、化粧部材自体に発泡硬化体原料を注入する注入孔を設けておく必要がある。
【0033】
化粧部材の任意の箇所に発泡硬化体原料を注入する注入孔を設ける場合、空間内部で発泡した発泡硬化体4は、注入孔から溢れ出ることになるが、隙間部分全体から発泡硬化体4が溢れ出る場合と比べ、溢れ出る量を極めて少なくできるだけでなく、溢れ出た発泡硬化体4を削り落とす作業が大幅に減ることになり、発泡硬化体4の充填量の節約にもつながる。
【0034】
次に、新設窓枠1が既設窓枠2にどのように固定されているかについて、より詳しく説明をする。
図2(a)は、新設窓枠1に取り付けられたアタッチメント7と抑え部材8を表す図の一例である。また、
図2(b)は、改装窓の窓枠の上枠部分を表す図の一例である。アタッチメント7は、係合溝7cを有する略断面コの字状の係合部7bと、係合部7bの相対する平行な略断面直線状の底辺部(コの字の上下の平行な横線に相当する部分)のうちの一方(以下、下辺部7fという)の略先端から、下辺部7fから見て他方の底辺部(以下、上辺部7dという)が存在する方向とは反対方向へ、略垂直に突出した略断面直線状の遮蔽部7aと、下辺部7fにおいて遮蔽部7aよりも室内側の位置から、下辺部7fから見て上辺部7dが存在する方向とは反対方向へ略垂直に突出した略断面直線状の固定部7gとから構成されている。すなわち、遮蔽部7aと固定部7gは下辺部7fから同じ方向へ突出している。固定部7gは、遮蔽部7aよりも室内側に位置しており、通常、係合部7bのコの字の縦線に相当する断面直線状の連結部7eと同一直線状になるように形成されている。遮蔽部7aの下辺部7fからの長さは、固定部7gの約2倍の長さを有する。なお、アタッチメント7の素材としては特に限定されないが、新規窓枠1の室外側の表面と同じ素材であることが好ましく、例えば、アルミなどが好ましい。
【0035】
新設窓枠1には、室外側周縁部から外周方向へ略垂直に突出し、室内側へ屈曲した略断面L字状の室外側突起部11が設けられている。室外側突起部11のL字状の室内側へ屈曲した先端部11aは、アタッチメント7の係合溝7cと係合可能である。例えば、先端部11aの幅が7mm、厚さが1.6mmである場合は、係合溝7cの遮蔽部7aからの深さは7mmであり、溝の幅1.6mmである。先端部11aと係合溝7cが係合すると、遮蔽部7aの室外側の面は、新規窓枠1の室外側の平面と同一平面を形成するため、室外から改装窓を見たときであっても見栄えが良くなる。
【0036】
固定部7gは、Zバー9のZの文字の横線に相当する部分(上辺部)と重ねあわされ、ビス10によりビス止めされる。なお、固定部7gとZバー9の上辺部には、ビス止め用の孔が設けられている。一方、Zバー9におけるZの文字のもう一方の横線に相当する部分(下辺部)と遮蔽部7aとの間に、既設窓枠2の室外側周縁部から窓の内周方向へ向かって突出した略断面直線状の室外側表面部2aを挟みこむことで、既設窓枠2がアタッチメント7に接合される。
【0037】
抑え部材8は、室外側突起部11に係合溝7cが係合したアタッチメント7を固定する役割を果たすもので、アタッチメント7が室内側に移動することを防ぐものである。抑え部材8の素材としては合成樹脂が用いられ、例えば、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。新設窓枠1には、新設窓枠1の室内側周縁部から外周方向へ略垂直に突出し、かつ、室外側へ屈曲した略断面L字状の室内側突起部12が設けられており、抑え部材8は、アタッチメント7と室内側突起部12との間に嵌入可能な略断面直線状の抑え部8aと、抑え部8aの両端から抑え部8aに対して略垂直に略断面直線状に立設され、且つ、該直線の抑え部8aに平行な突起を有する係止部8b、8cとから構成されている。
【0038】
係止部8b及び8cが有する抑え部8aに平行な突起は、抑え部8aとその両端において段を形成しており、係合部7bのコの字の縦線に相当する断面直線状の連結部7eと、室内側突起部12の先端部12aとの間に抑え部8aが嵌入されると、該段が引っ掛かるため、窓枠の外周方向への抑え部材8の移動が制限されることになる。係止部8b及び8cと、抑え部8aにより形成される段の大きさは、係合部7bと先端部12aの大きさに合わせて、抑え部8aが新設窓枠1の厚さ方向(室内から室外へ向かう方向)と平行になるように形成されている。
【0039】
係止部8b及び8cのそれぞれは、抑え部8aが嵌入された場合に新設窓枠1の外周側の底面部13と当接するように、抑え部8aから略垂直に直線状に伸びている。このため、窓枠の内周方向への抑え部材8の移動を制限することができる。このように係止部8b及び8cの役割により、発泡硬化体4の原料が注入された際であっても、抑え部材8の移動を防ぐことができる。
【0040】
既設窓枠2は、アンカーボルト22を用いて躯体5に固定されている。より具体的には、既設窓枠2から外周方向に突出した略断面L字状の室外側突起部の先端部2b及び、同じく略断面L字状の室内側突起部の先端部2cを2枚の固定板23a及び23bで挟みこみ、これをアンカーボルト22で固定することにより行われる。既設窓枠2の室外側周縁部と相対する躯体5との間には、コーキング20aが施されている。また、既設窓枠2の室内側周縁部と相対する内装部材24との間には、コーキング20bが施されている。
【0041】
既設窓枠2に新設窓枠1を固定する手順としては、まず、新設窓枠1の先端部11aにアタッチメント7を係合させ、その後、抑え部材8をアタッチメント7と新設窓枠の先端部12aの間に嵌入させることで、新設窓枠1にアタッチメント7を固定させる。その後、Zバー9を用いてビス10により、既設窓枠2にアタッチメント7を固定させる方法が挙げられる。また或いは、先に、Zバー9を用いてビス10により、既設窓枠2にアタッチメント7を固定させ、その後、新設窓枠1の先端部11aにアタッチメント7を係合させ、抑え部材8をアタッチメント7と新設窓枠1の先端部12aの間に嵌入させても良い。これらの方法をとることで、既設窓枠2に新設窓枠1を固定する際に、特に溶接などの接合作業を行う必要なく、効率よく、改装窓を施工することが可能となる。
【0042】
図3は、本発明の実施の形態にかかる改装窓の内観姿図の一例である。図中、実線が新設された窓を表すもので、破線は改装前に既設されていた既設窓枠2、及び、アタッチメントを固定するために用いたZバー9a〜cを表示するものである。窓は略長方形の引き違い窓であり、木製又は金属製の窓枠が窓の四辺に設けられている。窓枠の内側に溝が形成されており、この溝に透明又は半透明のガラスが嵌めこまれている。新規窓枠1と既設窓枠2の隙間に、発泡硬化体が充填されている。
図3からわかるように、アタッチメントを用いた新設窓枠1と既設窓枠2の固定は、上枠と左右枠の3点にて行われる。用いられたZバー9の幅は新設窓枠1の縦横の長さの約3分の1である400mm程度が好ましい。
【0043】
次に、本発明にかかる第二の実施の形態、すなわち、躯体5に新設の窓を設置する場合について説明する。説明する。
図4(a)は、新設窓枠1に取り付けられたアタッチメント7と抑え部材8を表す図の一例である。また、
図4(b)は、窓構造体の窓枠の上枠部分を表す図の一例である。躯体5に窓を設置する場合に用いるアタッチメント7は、固定部7gが設けられていないこと以外は、改装窓を施工する場合と同じで、遮蔽部7aと係合部7bから構成される。係合部7bは、新設窓枠1の先端部11aと係合可能な係合溝7cを有する。遮蔽部7aの下辺部7fからの長さは、所望のコーキング用溝の深さを得るために適宜定めることが可能である。また、抑え部材8は、改装窓を施工する場合と同じ形状のものが用いられる。抑え部材8を用いた新設窓枠1へのアタッチメント7の固定は、改装窓を施工する際と同様に行われる。
【0044】
新設窓枠1に抑え部材8を用いてアタッチメント7を固定した後に、新設窓枠1の躯体5への固定が行われる。新設窓枠1の躯体5への固定は、図示しないが、新設窓枠1の室外側突起部11の先端部11a及び室内側突起部12の先端部12aを2枚の固定板で挟みこみ、これをアンカーボルトで固定することにより行われる。また、発泡硬化体原料の充填作業に際し、躯体5と新設窓枠1との間の空間部分に仮止め用のスペーサを、等間隔毎(例えば、35〜40cm毎)に挿入し、窓本体を壁に固定しても良い。発泡硬化体原料が充填された後、仮止め用のスペーサを外し、スペーサが挿入されていた部分(発泡硬化体が充填されていない部分)にも発泡硬化体原料を注入することで、接合強度に優れた窓構造体が得られる。
【0045】
新設窓枠1にアタッチメント7を固定することで、アタッチメント7を用いない場合に比べ、新設窓枠1の周縁部の室外側表面と、該表面と相対する躯体5との間に形成されるコーキング用溝21を深くすることが可能となる。コーキング用溝21が浅くなると、新設窓枠1と躯体5との間に生じる空間に、発泡硬化体原料を室内側から充填した場合に、原料がコーキング用溝21まで浸入し、場合によっては、コーキング用溝21から溢れてしまい、その結果、漏れなくコーキングができない場合もある。しかし、本発明のアタッチメント7を用いることで、発泡硬化体4の原料がコーキング用溝21まで浸入することを防ぐことができるため、漏れのない確実なコーキング20cを施工することができる。なお、発泡硬化体原料を設窓枠1と躯体5との間に生じる空間に注入する際に、室内側に仮材25を設けることで、原料の室内側への漏れを防ぐことができる。
【0046】
本発明で用いられる発泡硬化体4とは、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン等の発泡性樹脂や発泡石膏等の、発泡しつつ(比較的短時間で)硬化する物質をいう。発泡ポリオレフィンとは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに発泡剤を加えて発泡させたものをいう。石膏は、高速攪拌機を用いて焼石膏と水の混合物に空気を導入することにより発泡させることができる。また、硬化に要する時間は、10〜20分程度である。
【0047】
本発明の発泡硬化体4として発泡ポリウレタンが用いられる場合、発泡硬化体原料は2種類のポリウレタン原料と発泡剤とを含む混合物である。発泡ポリウレタンとは、ポリウレタン原料に発泡剤を加えて発泡及び硬化させたものをいい、例えば、2種類の液体ポリウレタン原料(イソシアネート及びポリオール等)と、代替フロン液化ガス等の発泡剤とを高圧容器に密封してあり、使用時にこれらを混合して空気中に放出することにより、発泡しつつ硬化する一般的な市販品を採用すればよい。発泡ポリウレタンであれば、既設窓枠2と新設窓枠1の間の空間部分といった複雑な形状であっても、空間の略全体にわたって、簡便に硬化体を充填することが可能である。なお、発泡ポリウレタン、特に一般に硬質発泡ポリウレタンと呼ばれるものは、硬化後の硬度が比較的高く、新設窓枠の接着強度が高まるため、より好ましい。
【0048】
一般の市販品においては、2種類のポリウレタン原料を同一の高圧容器に充填してあり、使用時にその高圧容器内で混合するもの(1液性)と、2種類のポリウレタン原料を別個の高圧容器に充填してあり、使用時に注入ノズル内等で混合するもの(2液性)が存在している。2液性の発泡ポリウレタンは、2種類のポリウレタン原料が別個の高圧容器に充填してあり、使用時に注入ノズル内等で混合させ化学反応により硬化させるタイプの発泡ポリウレタンである。発泡剤は、2種類のポリウレタン原料と一緒に高圧容器に充填してあるものが一般的である。2液性のポリウレタンは、1液性の発泡ポリウレタンよりも発泡量が大きく発泡不良が生じ難いため、施工時に取り扱い易い。
【0049】
このように、改装窓又は新設した窓構造体において、空間部分の略全体に発泡ポリウレタンを充填することで、止水性、気密性、断熱性、遮音性が高まるだけでなく、接合強度が高まり、耐風圧性能が増す。新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分、或いは、新設窓枠1と躯体5との間の空間部分は、新設窓枠1の外周側、すなわち窓枠の上下左右の四辺に生じるが、それら四辺全ての空間部分に発泡ポリウレタンが充填される。但し、当該空間部分の全てに一切の隙間なく発泡ポリウレタンを充填することを要求するものではなく、発泡ポリウレタンの発泡不足や充填量の不足により、多少の隙間が残存しても差し支えない。
【0050】
発泡ポリウレタンの充填作業は、新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分、或いは、新設窓枠1と躯体5との間の空間部分の所望の箇所に注入ノズルを差し込み、2種類のポリウレタン原料と発泡剤とを、高圧容器内(1液性)又は注入ノズル内等(2液性)で混合しつつ注入するなどの方法によって行う。発泡ポリウレタンは、注入(充填)された箇所から徐々に発泡して空間部分を埋めていき、最終的には空間部分の隅々にまで行き渡る。このようにして、人の手が届かない隙間にも簡単に発泡ポリウレタンを充填することができるため、注入ノズルを差し込めない隙間に対しても発泡ポリウレタンを充填することが可能となる。
【0051】
仮に、発泡ポリウレタンを過剰に充填してしまい、空間部分から発泡ウレタンが溢れ出てしまっても、硬化後にカッターナイフなどで溢れ出た発泡ポリウレタン部分だけを簡単に削ぎ落とすことができるので、充填する量を気にせずに作業を行うことができる。そして、発泡ポリウレタンは、その種類によって異なるが、一般に約2分〜20分間で硬化し、既設窓枠2と新設窓枠1とを強固に接着する。充填作業は、熟練の技術を一切要せず、非常に簡便に、且つ、短時間で完了することができ、極めて高い耐震性、免震性、制振性、耐風圧性、止水性、気密性、断熱性、又は、遮音性を得ることができる。
【0052】
また、発泡ポリウレタンは硬化反応による発熱量が大きいため、その温度を測定することにより、発泡不良による不具合を検出することができる。通常、新設窓枠と既設窓枠との間の空間部分に充填した発泡ポリウレタンは、大部分は外部から見えないため、その発泡状態や硬化状態を視認することができないが、未だ硬化していない状態の発泡ポリウレタンの一部に、温度計の温度検知部を挿入して測定することで、発泡ポリウレタンの発泡状態や硬化状態の良否を簡易に判断することも可能である。発泡ポリウレタンが硬化する際に発する化学反応熱による温度上昇を検知することにより、発泡ポリウレタンの発泡状態や硬化状態の良否を簡易に判断できる。発泡ポリウレタン原料が硬化する際には化学反応により発熱するが、発熱量が小さい場合は、化学反応が十分に生じておらず、発泡ポリウレタンの発泡状態及び硬化状態が不完全となっている可能性がある。発泡状態及び硬化状態が不完全な場合は、新設窓枠と既設窓枠の接着強度が不十分になり、また、窓枠間の空間部分に大きな空洞が残存することがあり、耐震性、免震性、制振性、耐風圧性、止水性、気密性、断熱性、又は、遮音性が低下する。
【0053】
発泡ポリウレタンは断熱性が高いため、表面温度と内部温度が大きく異なる。したがって、正確な温度計測のためには、温度計の温度検知部を、充填した発泡ポリウレタンのなるべく中心部に挿入する必要がある。良否判断の基準となる温度は、使用する発泡ポリウレタンの種類により異なるため、適宜、基準となる温度を設けることが可能であるが、2液性簡易発泡硬質ウレタンフォーム(例えば、フォモジャパン株式会社製、品番:♯2205)の場合には、最高温度が110℃以上に上昇すれば、十分に発泡及び硬化したものと判断できる。より好ましくは120℃以上である。
【0054】
本発明における粘着テープとは、紙製のクラフト粘着テープ、布製の布粘着テープ、セロハンテープ、延伸ポリプロピレン製のOPP粘着テープなど、新設窓枠1と既設窓枠2との間の隙間部分を窓枠に接着するようにして塞ぐことのできるテープ状の素材であれば、いずれでも良い。発泡硬化体4を充填する前に粘着テープで隙間部分を塞ぐことで、充填された発泡硬化体4が隙間部分から溢れ出ないようにすることができる。例えば、透明又は半透明の粘着テープであれば、新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分に注入された発泡硬化体4の充填具合を見ることができるため、効率良く発泡硬化体4を充填でき、さらに最適な発泡硬化体4の充填量を見極めることができるので、発泡硬化体4の使用量を節約することができる。
【0055】
なお、粘着テープは、片面だけに粘着剤が塗られたものだけでなく、いわゆる両面テープのように、両面に粘着剤が塗られたものを使用しても良い。例えば、両面テープを用いた場合、新設窓枠1と既設窓枠2との間の隙間部分を前記の化粧部材によって塞ぐ場合、両面テープの上から両面テープに貼り付くように化粧部材を接着させることができるため、非常に簡便に効率良く作業を行うことができる。片面テープを用いた場合でも、粘着テープを残したまま化粧部材を取り付けることはできるが、粘着テープが不要な場合は、化粧部材を取り付ける前に粘着テープを剥がす必要がある。この場合は、発泡硬化体4が硬化したのちに粘着テープを剥がすことで、充填された発泡硬化体4が隙間部分から溢れ出ることもなく、簡単に粘着テープを剥がして化粧部材を取り付けることができる。
【0056】
発泡ポリウレタンの充填作業に際し、壁部とサッシとの間の空間部分に仮止め用のスペーサを、等間隔毎(例えば、35〜40cm毎)に挿入し、窓本体を壁部に固定しても良い。発泡ポリウレタンが充填された後、仮止め用のスペーサを外し、スペーサが挿入されていた部分(発泡ポリウレタンが充填されていない部分)にも発泡ポリウレタンを注入することで、窓構造体が得られる。
【0057】
本発明は、新築だけでなく、築年数が数十年経過した建物、マンション、アパート、ホテル、病院、学校、公共施設等における窓又は扉の取替え工事において利用できる。また、現場で発生する騒音問題も騒音が小さく、建付けにおいても溶接しないため、火気の心配がなく、環境問題においてもエコ工法として推奨できる。また、現在のところ、油を使用する工場(例えば、自動車メーカーの工場や化学製品を使用する工場等)は、窓の修理が困難であるため、この工法を用いて施工されることが期待される。