特許第5911246号(P5911246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911246
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】ウインドガラス昇降機構
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   E05F11/48 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-204164(P2011-204164)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2013-64283(P2013-64283A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】市川 憲志
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−513858(JP,A)
【文献】 特開平6−320358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるガイドレールと;このガイドレールに沿って昇降自在に支持された、ウインドガラスを固定したスライダベースと;このスライダベースに固定されたワイヤと;上記ガイドレールに回転自在に設けられた、スライダベースに固定された上記ワイヤが巻き掛けられるワイヤガイドプーリと;を備えたウインドガラス昇降機構において、
上記ワイヤガイドプーリは、
全円板状の底面フランジと、周方向の一部が切除された不完全円板状の中間フランジとを有し、両フランジ間に回転軸孔と同心のワイヤガイド溝を形成するプーリ本体部;及び
このプーリ本体部の中間フランジを挟んで底面フランジとの軸方向の反対側に一体に形成した非円形の天面フランジ;を備え、
この非円形天面フランジは、平面的に見て、中間フランジとの間にワイヤガイド溝より小径で中間フランジの少なくともフランジ除去部に接近する方向に偏心した仮巻溝を形成する仮巻溝形成部と、この仮巻溝形成部に接続され中間フランジのフランジ除去部において底面フランジの最大輪郭に接近するワイヤ導入部とを有すること;及び
このワイヤ導入部の内面は、少なくとも底面フランジ輪郭への最大接近部での軸直交断面において、全体がワイヤガイド溝の底部に向かって傾斜するとともに該ワイヤガイド溝の底部に接続される傾斜面からなっていること;を特徴とするウインドガラス昇降機構。
【請求項2】
請求項1記載のウインドガラス昇降機構において、
上記傾斜面の軸直交断面からの傾斜角度は、底面フランジと中間フランジが形成するワイヤガイド溝の軸直交断面からの傾斜角度より大きいウインドガラス昇降機構。
【請求項3】
請求項1または2記載のウインドガラス昇降機構において、
上記傾斜面は、上記ワイヤガイド溝の底部の円弧に接する接線を形成するウインドガラス昇降機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のウインドガラス昇降機構において、
天面フランジのワイヤ導入部は、平面的に見て、底面フランジ輪郭への最大接近部から徐々に底面フランジから離反しており、その内面には、最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深める上記仮巻溝が形成されているウインドガラス昇降機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のウインドガラス昇降機構において、
上記中間フランジの上記フランジ除去部の上記回転軸孔を中心とする平面角度は、45゜ないし90゜の範囲内であるウインドガラス昇降機構。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のウインドガラス昇降機構において、
上記傾斜面の軸直交断面からの傾斜角度は、底面フランジ輪郭への最大接近部から離間するにつれて徐々に大きくなるウインドガラス昇降機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドガラス昇降機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のウインドガラスを昇降させるウインドガラス昇降機構は、ウインドガラスを固定したスライダベースを、ドアの補強部材に固定したガイドレールに上下移動可能に支持し、このスライダベースから上下方向に繰り出したワイヤを、ガイドレールの上部と下部に設けたワイヤガイドプーリとケーブルドラムに巻き掛けた構成とされている。ケーブルドラムにはドライブユニットが接続されており、このドライブユニットによってケーブルドラムを正逆に回転駆動すると、スライダベースがガイドレール上でウインドガラスとともに昇降される。
【0003】
このようなウインドガラス昇降機構において、ワイヤガイドプーリにワイヤを巻き掛けるための構造として、特許文献1及び特許文献2に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、ワイヤ溝を備えたワイヤガイドプーリ上に、ワイヤ支持面とこれに連なる誘導傾斜面を備えたワイヤ掛け治具を支持し、ワイヤ掛け治具のワイヤ支持面にワイヤを巻き掛けた状態でワイヤガイドプーリとワイヤ掛け治具を一体回転させることで、ワイヤ掛け治具の誘導傾斜面を介してワイヤガイドプーリのワイヤ溝にワイヤを巻き掛ける構造が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1は、別部材としてのワイヤ掛け治具を必須としているため、構成が複雑で高コストである。また、ワイヤ掛け治具のワイヤ支持面とワイヤガイドプーリのワイヤ溝を繋ぐ誘導傾斜面で急勾配の段差が生じるため、ワイヤ掛け治具からワイヤガイドプーリへワイヤを移行させる際にワイヤが損傷するおそれがある。
【0006】
特許文献2には、図13及び図14に示すように、ワイヤガイドプーリ1に、支持溝2と、この支持溝2に並置されるとともにワイヤガイドプーリ1の軸1aを取り囲む環状形状を有するアセンブリ溝3と、この支持溝2とアセンブリ溝3を接続する遷移溝4とを有し、アセンブリ溝3にワイヤ5を巻き掛けた状態でワイヤガイドプーリ1とワイヤ5を相対回転させることで、遷移溝4を介してワイヤ5をアセンブリ溝3から支持溝2に遷移させて支持溝2に巻き掛ける構造が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献2は、遷移溝4を介して支持溝2とアセンブリ溝3を接続しているが故に、次のような技術課題を有する。
図15(A)は、ワイヤ5が遷移溝4の近傍でワイヤガイドプーリ1から離れるような位置関係で支持溝2に巻き掛けられて停止した状態を示している。
図15(A)の状態で車両ドアを強く閉めてワイヤ5に車両幅方向の振動が加わると、図15(B)に示すように、支持溝2に巻き掛けられていたワイヤ5の一部が遷移溝4に引っ掛かってアセンブリ溝3に戻る。
図15(B)の状態でワイヤガイドプーリ1が反時計方向に回転すると、図15(C)に示すように、支持溝2に巻き掛けられていたワイヤ5の大半が支持溝2から抜けてアセンブリ溝3に戻る。
図15(C)の状態でワイヤガイドプーリ1がさらに反時計方向に回転すると、ワイヤ5が支持溝2から完全に抜けて、ワイヤ5をアセンブリ溝3に巻き掛けた初期状態に戻る。この状態ではもはやウインドガラス昇降機構はその機能を発揮できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−320358号公報
【特許文献2】特表2001−513858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、簡単な構成で低コストであり、ワイヤを損傷させることなくワイヤをワイヤガイド溝に簡単に巻き掛けることができ、しかも一旦巻き掛けたワイヤがワイヤガイド溝から離脱することがないウインドガラス昇降機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウインドガラス昇降機構は、上下方向に延びるガイドレールと;このガイドレールに沿って昇降自在に支持された、ウインドガラスを固定したスライダベースと;このスライダベースに固定されたワイヤと;上記ガイドレールに回転自在に設けられた、スライダベースに固定された上記ワイヤが巻き掛けられるワイヤガイドプーリと;を備えたウインドガラス昇降機構において、上記ワイヤガイドプーリは、全円板状の底面フランジと、周方向の一部が切除された不完全円板状の中間フランジとを有し、両フランジ間に回転軸孔と同心のワイヤガイド溝を形成するプーリ本体部;及びこのプーリ本体部の中間フランジを挟んで底面フランジとの軸方向の反対側に一体に形成した非円形の天面フランジ;を備え、この非円形天面フランジは、平面的に見て、中間フランジとの間にワイヤガイド溝より小径で中間フランジの少なくともフランジ除去部に接近する方向に偏心した仮巻溝を形成する仮巻溝形成部と、この仮巻溝形成部に接続され中間フランジのフランジ除去部において底面フランジの最大輪郭に接近するワイヤ導入部とを有すること;及びこのワイヤ導入部の内面は、少なくとも底面フランジ輪郭への最大接近部での軸直交断面において、全体がワイヤガイド溝の底部に向かって傾斜するとともに該ワイヤガイド溝の底部に接続される傾斜面からなっていること;を特徴としている。
上記中間フランジの上記フランジ除去部の上記回転軸孔を中心とする平面角度は、45゜ないし90゜の範囲内であることが好ましい。
上記傾斜面の軸直交断面からの傾斜角度は、底面フランジ輪郭への最大接近部から離間するにつれて徐々に大きくなることが好ましい。
【0011】
上記傾斜面の軸直交断面からの傾斜角度は、底面フランジと中間フランジが形成するワイヤガイド溝の軸直交断面からの傾斜角度より大きく設定することが好ましい。
【0012】
上記傾斜面は、上記ワイヤガイド溝の底部の円弧に接する接線を形成することが好ましい。
【0013】
天面フランジのワイヤ導入部は、平面的に見て、底面フランジ輪郭への最大接近部から徐々に底面フランジから離反しており、その内面には、最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深める上記仮巻溝が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、底面フランジと中間フランジを有するプーリ本体部に天面フランジを一体に形成するだけでワイヤガイドプーリが得られるので、簡単な構成で低コストに製造できるウインドガラス昇降機構が得られる。
また、仮巻溝にワイヤを仮巻きした状態でワイヤとワイヤガイドプーリを相対回転させるだけで、ワイヤが、仮巻溝からワイヤ導入部の内面に形成された傾斜面に移行し、この傾斜面を伝ってワイヤガイド溝に移行するので、ワイヤを損傷させることなくワイヤをワイヤガイド溝に簡単に巻き掛けることができる。
しかも、ワイヤガイド溝にワイヤが巻き掛けられると、たとえ車両ドアを強く閉めてワイヤに車両幅方向の振動が加わったとしても、ワイヤが傾斜面に乗り上げた後でこの傾斜面を伝って再びワイヤガイド溝に戻るので、一旦巻き掛けたワイヤがワイヤガイド溝から離脱することがない。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、傾斜面の軸直交断面からの傾斜角度を十分に確保することで、傾斜面を伝ってワイヤを仮巻溝からワイヤガイド溝へ移行させる際にワイヤが損傷するのをより確実に防止することができる。また、一旦巻き掛けたワイヤがワイヤガイド溝から離脱するのをより確実に防止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、傾斜面が、ワイヤガイド溝の底部の円弧に接する接線を形成しているので、傾斜面を伝ってワイヤを仮巻溝からワイヤガイド溝へスムーズに移行させ易くなる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、ワイヤ導入部の内面に、傾斜面と併存させて、底面フランジとの最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深める仮巻溝を形成しているので、仮巻溝から傾斜面へのワイヤ移行をより滑らかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるウインドガラス昇降機構の構成を示す図である。
図2】本発明によるワイヤガイドプーリを示す斜視図である。
図3】本発明によるワイヤガイドプーリを示す側面図である。
図4】本発明によるワイヤガイドプーリを示す平面図である。
図5図4のV−V線に沿う断面図である。
図6図4のVI−VI線に沿う断面図である。
図7図4のVII−VII線に沿う断面図である。
図8図4のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9図4のIX−IX線に沿う断面図である。
図10図4のX−X線に沿う断面図である。
図11】本発明によるワイヤガイドプーリのワイヤガイド溝にワイヤを巻き掛ける方法を説明するための図である。図11(A)は、ワイヤガイドプーリの仮巻溝にワイヤを仮巻きした状態を示す図である。図11(B)は、ワイヤが仮巻溝から傾斜面に移行し、この傾斜面を伝ってワイヤガイド溝に移行し始めた状態を示す図である。図11(C)は、仮巻溝に仮巻きされていたワイヤが傾斜面を介してワイヤガイド溝に完全に移行して巻き掛けられた状態を示す図である。
図12】本発明によるワイヤガイドプーリの優位な作用効果を説明するための図である。図12(A)は、ワイヤガイド溝にワイヤが巻き掛けられた状態で車両ドアを強く閉めてワイヤに車両幅方向の振動が加わることで、ワイヤの一部が傾斜面に乗り上げている状態を示す図である。図12(B)は、ワイヤが傾斜面に乗り上げた後に傾斜面を伝って再びワイヤガイド溝に戻った状態を示す図である。
図13】従来のワイヤガイドプーリの構成を示す平面図である。
図14】従来のワイヤガイドプーリを図13のP方向から見た側面図である。
図15】従来のワイヤガイドプーリの技術課題を説明するための図である。図15(A)は、ワイヤが遷移溝の近傍でワイヤガイドプーリから離れるような位置関係で支持溝に巻き掛けられて停止している状態を示す図である。図15(B)は、図15(A)の状態で車両ドアを強く閉めてワイヤに車両幅方向の振動が加わることで、支持溝に巻き掛けられていたワイヤの一部が遷移溝に引っ掛かってアセンブリ溝に戻った状態を示す図である。図15(C)は、図15(B)の状態でワイヤガイドプーリが反時計方向に回転することで、支持溝に巻き掛けられていたワイヤの大半が支持溝から抜けてアセンブリ溝に戻った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明によるウインドガラス昇降機構10の構成を示している。ウインドガラス昇降機構10は、ドア内の補強部材(図示せず)に固定される上下方向に延びるガイドレール11と、このガイドレール11に沿って昇降自在に支持されたスライダベース12とを備えている。スライダベース12には、図示しないウインドガラスが固定される。スライダベース12には、ガイドレール11に沿って上下方向に延びるワイヤ13の端部13aが固定されている。ガイドレール11の上端部には、ワイヤガイドプーリ100がその回転軸孔101に挿通した回転軸101aによって回転自在に取り付けられている。ガイドレール11の下端部にはケーブルドラム14が固定されている。スライダベース12に固定されたワイヤ13は、ガイドレール11の上端部でワイヤガイドプーリ100に巻き掛けられ、ガイドレール11の下端部でケーブルドラム14に固定されている。ケーブルドラム14にはモータドライブユニット15が接続されており、このモータドライブユニット15によってケーブルドラム14を正逆に回転駆動すると、スライダベース12がガイドレール11上でウインドガラスとともに昇降される。
【0020】
図2ないし図10は、本発明によるワイヤガイドプーリ100の単独構成を示している。ワイヤガイドプーリ100は、全円板状の底面フランジ111と、周方向の一部が切除された不完全円板状の中間フランジ112とを有するプーリ本体部110を備えている。以下では、中間フランジ112の周方向の切除部分をフランジ除去部112aと呼び、中間フランジ112の周方向の残留部分をフランジ残留部112bと呼ぶ。フランジ除去部112aの回転軸孔101を中心とする平面角度α(図4)は、45°ないし90°の範囲内とすることが好ましい。底面フランジ111と中間フランジ112のフランジ残留部112bの間の底部には、回転軸孔101と同心かつ回転軸孔101より大径のワイヤガイド溝113が形成されている。
【0021】
プーリ本体部110には、中間フランジ112を挟んで底面フランジ111との軸方向の反対側に、平面非円形の天面フランジ114が一体に形成されている。図2ないし図4に示すように、天面フランジ114は、平面的に見て、フランジ残留部112bにおいて底面フランジ111及び中間フランジ112より小径の仮巻溝形成部114aと、この仮巻溝形成部114aに接続されフランジ除去部112aにおいて底面フランジ111の最大輪郭に滑らかに接近するワイヤ導入部114bとを備えている。
【0022】
天面フランジ114の仮巻溝形成部114aと中間フランジ112のフランジ残留部112bの間(平面視したときにフランジ残留部112bに対応する部分)には、ワイヤガイド溝113より小径で少なくともフランジ除去部112aに接近する方向に偏心した仮巻溝115が形成されている。
【0023】
図2図3図5図6に示すように、天面フランジ114のワイヤ導入部114bの内面(平面視したときにフランジ除去部112aに対応する部分)には、少なくとも底面フランジ111の輪郭への最大接近部での軸直交断面において、全体がワイヤガイド溝113に向かって傾斜する傾斜面116が形成されている。図2図3では、ワイヤ導入部114bの内面に形成された傾斜面116にハッチングを付して描いている。底面フランジ111と天面フランジ114のワイヤ導入部114b(傾斜面116)の間の底部には、回転軸孔101と同心かつ回転軸孔101より大径のワイヤガイド溝113が形成されている。傾斜面116は、ワイヤガイド溝113の底部の円弧に接する接線を形成している。
【0024】
図5図6では、フランジ除去部112aにおいても中間フランジ112が存在する(中間フランジ112を切除していない)と仮定して、フランジ残留部112bを二点鎖線で描いている。図5図6から明らかなように、傾斜面116の軸直交断面からの傾斜角度は、ワイヤガイド溝113の軸直交断面からの傾斜角度よりも大きく設定されている。しかも、傾斜面116の軸直交断面からの傾斜角度は、底面フランジ111の輪郭への最大接近部から離間するにつれて徐々に大きくなるように設定されている(図5のV−V断面の傾斜角度よりも図6のVI−VI断面の傾斜角度の方が大きくなるように設定されている)。
【0025】
図4に示すように、天面フランジ114のワイヤ導入部114bは、平面的に見て、底面フランジ111の輪郭への最大接近部から徐々に底面フランジ111から離間している。図3図6に示すように、ワイヤ導入部114bの内面に形成された傾斜面116には、底面フランジ111の輪郭への最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深めるように仮巻溝115が形成されている。つまり、ワイヤ導入部114bの内面に仮巻溝115と傾斜面116が併存している箇所がある(図3でハッチングを付した傾斜面116に仮巻溝115の一部がせり出している)。
【0026】
続いて、以上のように構成されたワイヤガイドプーリ100のワイヤガイド溝113にワイヤ117を巻き掛ける方法について説明する。まず、図11(A)に示すように、ガイドレール11の上端部に回転自在に取り付けられたワイヤガイドプーリ100の仮巻溝115にワイヤ117を仮巻きする。この仮巻状態でワイヤ117とワイヤガイドプーリ100を相対回転させると、図11(B)に示すように、ワイヤ117が仮巻溝115からワイヤ導入部114bの内面に形成された傾斜面116に移行し、この傾斜面116を伝ってワイヤガイド溝113に移行し始める。さらにワイヤ117とワイヤガイドプーリ100を相対回転させると、図11(C)に示すように、仮巻溝115に仮巻きされていたワイヤ117が傾斜面116を介してワイヤガイド溝113に完全に移行して巻き掛けられる。このように、仮巻溝115にワイヤ117を仮巻きした状態でワイヤ117とワイヤガイドプーリ100を相対回転させるだけで、ワイヤ117を損傷させることなくワイヤ117をワイヤガイド溝113に簡単に巻き掛けることができる。
【0027】
ここで、ワイヤガイド溝113にワイヤ117が巻き掛けられた状態で、車両ドアを強く閉めてワイヤ117に車両幅方向の振動が加わると、図12(A)に示すように、ワイヤ117に対してその一部を傾斜面116に乗り上げさせる方向への力が働く。しかし、図12(B)に示すように、ワイヤ117は、傾斜面116に乗り上げた後に傾斜面116を伝って再びワイヤガイド溝113に戻るので、一旦巻き掛けたワイヤ117がワイヤガイド溝113から離脱することはない。
【0028】
以上のように、本実施形態のウインドガラス昇降機構10は、その前提の構成として、上下方向に延びるガイドレール11と、このガイドレール11に沿って昇降自在に支持された、ウインドガラスを固定したスライダベース12と、このスライダベース12に端部13aが固定されたワイヤ13と、ガイドレール11に回転自在に設けられた、スライダベース12に固定されたワイヤ13が巻き掛けられるワイヤガイドプーリ100とを備えている。
そしてワイヤガイドプーリ100は、全円板状の底面フランジ111と、周方向の一部が切除された不完全円板状の中間フランジ112とを有し、両フランジ111と112の間に回転軸孔101と同心のワイヤガイド溝113を形成するプーリ本体部110、及びこのプーリ本体部110の中間フランジ112を挟んで底面フランジ111との軸方向の反対側に一体に形成した非円形の天面フランジ114を備えている。非円形天面フランジ114は、平面的に見て、中間フランジ112との間にワイヤガイド溝113より小径で中間フランジ112の少なくともフランジ除去部112aに接近する方向に偏心した仮巻溝115を形成する仮巻溝形成部114aと、この仮巻溝形成部114aに接続され中間フランジ112のフランジ除去部112aにおいて底面フランジ111の最大輪郭に接近するワイヤ導入部114bとを有しており、このワイヤ導入部114bの内面は、少なくとも底面フランジ111の輪郭への最大接近部での軸直交断面において、全体がワイヤガイド溝113の底部に向かって傾斜する傾斜面116からなっている。
【0029】
この構成によれば、底面フランジ111と中間フランジ112を有するプーリ本体部110に天面フランジ114を一体に形成するだけでワイヤガイドプーリ110が得られるので、簡単な構成で低コストに製造できるウインドガラス昇降機構10が得られる。
また、仮巻溝115にワイヤ117を仮巻きした状態でワイヤ117とワイヤガイドプーリ100を相対回転させるだけで、ワイヤ117が、仮巻溝115からワイヤ導入部114bの内面に形成された傾斜面116に移行し、この傾斜面116を伝ってワイヤガイド溝113に移行するので、ワイヤ117を損傷させることなくワイヤ117をワイヤガイド溝113に簡単に巻き掛けることができる。
しかも、ワイヤガイド溝113にワイヤ117が巻き掛けられると、たとえ車両ドアを強く閉めてワイヤ117に車両幅方向の振動が加わったとしても、ワイヤ117が傾斜面116に乗り上げた後でこの傾斜面116を伝って再びワイヤガイド溝113に戻るので、一旦巻き掛けたワイヤ117がワイヤガイド溝113から離脱することがない。
【0030】
また本実施形態では、傾斜面116の軸直交断面からの傾斜角度を、底面フランジ111と中間フランジ112が形成するワイヤガイド溝113の軸直交断面からの傾斜角度より大きく設定している。
【0031】
この構成によれば、傾斜面116の軸直交断面からの傾斜角度を十分に確保することで、傾斜面116を伝ってワイヤ117を仮巻溝115からワイヤガイド溝113へ移行させる際にワイヤ117が損傷するのをより確実に防止することができる。また、一旦巻き掛けたワイヤ117がワイヤガイド溝113から離脱するのをより確実に防止することができる。
【0032】
また本実施形態では、傾斜面116が、ワイヤガイド溝113の底部の円弧に接する接線を形成している。
【0033】
この構成によれば、傾斜面116を伝ってワイヤ117を仮巻溝115からワイヤガイド溝113へスムーズに移行させ易くなる。
【0034】
また本実施形態では、天面フランジ114のワイヤ導入部114bは、平面的に見て、底面フランジ111の輪郭への最大接近部から徐々に底面フランジ111から離反しており、その内面には、最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深める仮巻溝115が形成されている。
【0035】
この構成によれば、ワイヤ導入部114bの内面に、傾斜面116と併存させて、底面フランジ111との最大接近部から離間するにつれて徐々に深さを深める仮巻溝115を形成しているので、仮巻溝115から傾斜面116へのワイヤ117の移行をより滑らかに行うことができる。
【0036】
また本実施形態では、中間フランジ112のフランジ除去部112a(傾斜面116)の回転軸孔101を中心とする平面角度を、45゜ないし90゜の範囲内に設定している。
【0037】
この構成によれば、フランジ除去部112a(傾斜面116)の平面角度を適切に設定することで、中間フランジ112のフランジ除去部112a(傾斜面116)とフランジ残留部112b(仮巻溝115)のバランスを良好に維持できるので、ワイヤガイド溝113上をワイヤ117が上手く回らないといったワイヤガイドプーリ100の動作不良が生じることがない。また、ワイヤガイド溝113にワイヤ117が巻き掛けられた状態で車両ドアを強く閉めてワイヤ117に車両幅方向の振動が加わったとしても、ワイヤ117がフランジ残留部112bの端部に引っ掛かって損傷することがない。
フランジ除去部112a(傾斜面116)の平面角度が45°を下回ると、上述の特許文献2のように、ワイヤガイド溝113にワイヤ117が巻き掛けられた状態で車両ドアを強く閉めてワイヤ117に車両幅方向の振動が加わったときに、ワイヤ117がフランジ残留部112bの端部に引っ掛かって損傷するおそれがある。また、ワイヤ117がフランジ残留部112bに引っ掛かった状態でワイヤガイドプーリ100が回転すると、ワイヤ117が傾斜面116を乗り越えて仮巻溝115に戻るおそれがある。
フランジ除去部112a(傾斜面116)の平面角度が90°を上回ると、フランジ除去部112a(傾斜面116)とフランジ残留部112b(仮巻溝115)のバランスが悪くなって、ワイヤガイド溝113上をワイヤ117が上手く回らないといったワイヤガイドプーリ100の動作不良が生じるおそれがある。
【0038】
本発明のワイヤガイドプーリ100は、ウインドガラス昇降機構10以外であっても、ワイヤガイド溝113にワイヤ117を巻き掛けて使用するあらゆる機構系に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 ウインドガラス昇降機構
11 ガイドレール
12 スライダベース
13 ワイヤ
13a ワイヤ端部
14 ケーブルドラム
15 モータドライブユニット
100 ワイヤガイドプーリ
101 回転軸孔
101a 回転軸
110 プーリ本体部
111 底面フランジ
112 中間フランジ
112a フランジ除去部
112b フランジ残留部
113 ワイヤガイド溝
114 天面フランジ
114a 仮巻溝形成部
114b ワイヤ導入部
115 仮巻溝
116 傾斜面
117 ワイヤ
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