特許第5911247号(P5911247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911247制御装置故障後の自動的な再較正を有する駐車ブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911247
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】制御装置故障後の自動的な再較正を有する駐車ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20160414BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   B60T17/22 C
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-204923(P2011-204923)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2012-66814(P2012-66814A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】10 2010 041 099.3
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベールレ−ミラー
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ビールツ
(72)【発明者】
【氏名】ラース ロータース
(72)【発明者】
【氏名】イザベル マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ズセク
(72)【発明者】
【氏名】トビアス プッツァー
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−181579(JP,A)
【文献】 特開2002−067932(JP,A)
【文献】 特開2008−265669(JP,A)
【文献】 特開2007−216896(JP,A)
【文献】 米国特許第05957246(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0258681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 − 8/96
B60T 17/00 − 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作エレメント(6)により操作される電気作動式の駐車ブレーキを再較正する方法であって、駐車ブレーキをロックするかまたは解除するために、前記操作エレメント(6)において実施された駐車ブレーキ要求を制御装置(1)により検知して、駐車ブレーキのアクチュエータ(4)を相応して制御する方法において、
前記操作エレメント(6)の操作後に、駐車ブレーキの移行状態を示すメモリエントリを形成し、前記制御装置(1)の一時的な故障後に、前記メモリエントリがセットされていることを検知した場合に、駐車ブレーキを全自動で、または操作エレメント(6)が再び操作されたあとに、規定され開放された出発位置にもたらすことを特徴とする、駐車ブレーキを再較正する方法。
【請求項2】
前記制御装置(1)の一時的な故障後、メモリエントリがセットされている場合に、エラー通知を形成し、該エラー通知が、運転手に駐車ブレーキを解除することを要求するようになっている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記制御装置(1)の一時的な故障後、メモリエントリがセットされていない場合に、駐車ブレーキを運転状態に応じて解除するか、または作動させるようになっている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記制御装置(1)が一時的に故障した場合に、エラー状態を視覚的および/または聴覚的に示す、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法を実施する手段を有することを特徴とする、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作エレメントにより操作される電気作動式の駐車ブレーキを再較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両は、しばしば、自動パーキングブレーキ(APB)とも呼ばれる、電気作動式の駐車ブレーキ(Feststellbremse)を装備している。このような種類の駐車ブレーキは通常、たとえばボタンのような操作エレメントを有していて、この操作エレメントによって駐車ブレーキをロックしかつ/または解除することができる。ボタンの操作時に、このボタンに接続された制御装置は駐車ブレーキ要望を検知して、相応して、たとえば電動モータのようなアクチュエータを制御する。これによって、駐車ブレーキをロックするか、または解除することができる。電気機械的なシステムでは、ブレーキ力が、たとえば(伝動装置を備えた)電動モータにより形成される。この場合、電動モータは、たとえば直接にホイールブレーキに位置しているか(モータ・オン・キャリパ)、または別の箇所に位置している。
【0003】
このような形式の駐車ブレーキを解除するためには、アクチュエータは通常、予め設定された期間または予め設定された回転数だけ解除方向に駆動させられる。このような形式の駐車ブレーキをロックするためには、アクチュエータは通常、規定された電流レベルに到達するまで、ブレーキディスクの方向に駆動させられる。電流レベルは通常、相応してロック中に求められたモータパラメータに適合される。ロック時に所望の緊締力を生ぜしめるためには、アクチュエータは、ブレーキディスクに対して最小距離を有する、開放された状態から始動されなければならない。この最小距離は、関連するモータパラメータを求めることを可能にするために必要である。ロック装置の前進運動中または後進運動中に、制御装置が、たとえば電圧不足または過電圧のために故障する、もしくは機能不全に陥ると、通常は、ロック装置が今どの位置にあるのか既知ではない。したがって、ロック装置の解除中に制御装置が故障すると、解除のためにボタンを再び操作した場合、駐車ブレーキは再び固定的な基準距離を後進方向に運動させられて、ストッパに衝突する。さらに、ロック装置の圧着中に制御装置が故障した場合、所望の緊締力を形成することは必ずしも可能ではない。なぜならば、出発位置、ひいてはブレーキディスクに対する、必要となる最小距離がもはや既知ではないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、制御装置の故障後に駐車ブレーキの機能を保証し、駐車ブレーキの、開放された出発位置への自動的な、または運転手により導入される再較正を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係る方法では、操作エレメントにより操作される電気作動式の駐車ブレーキを再較正する方法であって、駐車ブレーキをロックするかまたは解除するために、操作エレメントにおいて実施された駐車ブレーキ要求を制御装置により検知して、駐車ブレーキのアクチュエータを相応して制御する方法において、操作エレメントの操作後に、駐車ブレーキの移行状態を示すメモリエントリを形成し、制御装置の一時的な故障後もしくは機能不全後に、前記メモリエントリがセットされていることを検知した場合に、駐車ブレーキを全自動で、または操作エレメントが再び操作されたあとに、規定され開放された出発位置にもたらすようにした。
【0006】
本発明の有利な態様は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、制御装置の一時的な故障後、メモリエントリがセットされている場合に、エラー通知を形成し、エラー通知が、運転手に駐車ブレーキを解除することを要求するようになっている。
【0008】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、制御装置の一時的な故障後、メモリエントリがセットされていない場合に、駐車ブレーキを運転状態に応じて解除するか、または作動させるようになっている。
【0009】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、制御装置が一時的に故障した場合に、エラー状態を視覚的および/または聴覚的に示す。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御装置では、本発明による方法を実施する手段を有するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駐車ブレーキの操作エレメントの操作後に、メモリエントリを形成することが提案される。メモリエントリは駐車ブレーキの移行状態を示す。メモリエントリの形成のための条件は、たとえばロック方向または解除方向へのアクチュエータのスイッチオン、ボタン操作自体または別の条件であってよい。ロック装置の作動中に、たとえば電圧不足もしくは過電圧により駐車ブレーキの制御装置が故障すると、制御装置が再び初期化された後に、上記メモリエントリがセットされているか否かが検査される。メモリエントリがセットされている場合に限って、完全に自動的に、または操作エレメントが再び操作されたあとに、駐車ブレーキが規定され開放された出発位置へもたらされる。ボタン操作による駐車ブレーキのロックが可能ではないことが望ましい。この開放過程は、制御装置により制御される。これとは反対にメモリエントリがセットされていない場合、駐車ブレーキは通常どおりに要望にしたがってロックされるか、または解除される。
【0012】
本発明の有利な実施形態によれば、駐車ブレーキは、制御装置の一時的な故障後に、開放された終端位置に戻り、これによって新たに較正される。このことは、自動的に、または操作エレメントを再び操作することによって行われる。
【0013】
再較正のためには、駐車ブレーキが規定された固定的な距離を戻されると有利である。駐車ブレーキが端部ストッパへ到達すると、駐車ブレーキはその後に前進方向もしくは緊締方向へ規定された電流レベルにまで運動させられて、次いで再び、たとえば距離制御されて、開放された出発位置にもたらされる。端部ストッパへのロック装置の衝突は、たとえば電動モータの電流消費により検知され得る。
【0014】
制御装置が故障した場合に、相応するメモリエントリがセットされていると、有利にはエラー通知が形成される。このエラー通知は、たとえば視覚的および/または聴覚的な通知であってよく、この通知は、運転者に、駐車ブレーキをもう一度解除し、かつ再較正することを要求すると望ましい。
【0015】
エラー状態の表示のためには、たとえば警告灯が点灯しかつ/またはテキストが運転手情報システムに表示され得る。
【0016】
本発明による駐車ブレーキは、特別なアルゴリズムを備えた制御装置を有している。このアルゴリズムによって駐車ブレーキが上述のように制御される。
【0017】
以下に本発明を、添付された図面につき例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】駐車ブレーキの概略的なブロック図である。
図2】駐車ブレーキが開放された位置を起点とする、駐車ブレーキを再較正する方法の概略図である。
図3】駐車ブレーキがロックされた位置を起点とする、駐車ブレーキを再較正する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、主に公知先行技術により知られているような電気作動式の駐車ブレーキ(Feststellbremse)の例示的な実施形態を示している。駐車ブレーキは、当該駐車ブレーキをロック/解除するための操作エレメント6、たとえばボタンもしくはキー(Taster)と、制御装置1と、液圧ポンプ2を備えた液圧装置と、2つのホイールブレーキ3とを有している。これらのホイールブレーキ3は、駐車ブレーキの、関連するアクチュエータ4を有している。ボタン6の操作後に、制御装置1は、2つの電動モータを制御し、これによって、ブレーキパッド3は、所望の緊締力が形成されるまで、ブレーキディスク8に押し当てられる。与えられる緊締力が、規定された電流値への到達を介して規定されると有利である。ブレーキディスク8に対するブレーキパッド3の運動は、ブレーキピストン内に位置するスピンドルナットによって行われる。スピンドルナットは、モータ4の回転運動を、ロック方向もしくは解除方向へのスピンドルナットの長手方向運動に変換する。スピンドルのセルフロックは、電動モータの停止後に、ブレーキピストンがロック位置に留まるために役立つ。駐車ブレーキの解除のためには、ロック装置が開放された位置に戻される。圧着過程も解除過程も制御装置1によって制御され、この場合、制御装置1内には、相応するアルゴリズム7が格納されている。
【0020】
ロック過程または解除過程の間に、制御装置1が、たとえば過電圧しくは電圧不足に基づいて故障すると、駐車ブレーキは規定され解除された終端状態に戻される(再較正)。
【0021】
図2は、状態20として図示された、駐車ブレーキの開放された位置を起点とする再較正過程を示している。ブロック21で、運転手は、駐車ブレーキを作動させ、かつロックするために、この駐車ブレーキのボタン6を操作する。ブロック22では、ボタン操作後に、駐車ブレーキが移行状態にあることを示すメモリエントリが形成される。メモリエントリの形成のためのトリガ条件は、たとえばロック方向または解除方向への電動モータのスイッチオンであるかまたはボタン操作自体であってよい。ブロック23では、制御装置1が故障し、次いで、搭載電源網電圧が再びその基準値に到達した後に、新たに初期化される。このことは、ブロック23に概略的に示されている。ブロック24では、エラー通知が生成される。このエラー通知は、運転手にエラー状態を示唆し、かつ駐車ブレーキをその解除された出発位置に戻すためにボタン6を再び操作することを要求する。ブロック25においてボタン6が再び操作されると、制御装置1はロック装置4を開放された位置へ戻す。このことは、たとえば時間制御または距離制御によって行われ得る。ロック装置が後退運動の間にストッパに衝突すると、ロック装置は再び一区間だけ前進方向もしくは圧着方向に運動させられて、次いで、所望の出発位置が達成されるまで再び解除方向に運動させられる。この過程の制御は、制御装置1内に格納されたアルゴリズム7により実施される。
【0022】
図3は、駐車ブレーキの圧着された位置を起点とする再較正過程を示している。この場合、ブロック30は圧着された位置を示している。運転手が、状態31で、駐車ブレーキを開放するためにボタン6を操作し、電動モータ4を始動させたあとに、状態32で、駐車ブレーキの移行状態を示すメモリエントリが形成される。開放された状態への移行中に、ブロック33で示すように、再び制御装置1が故障して、その後に新たに初期化される。メモリエントリが、制御装置1の初期化後にセットされたものとして検知されるので、ブロック34ではエラー通知が形成される。このエラー通知は運転手に、ボタン6を再び操作するよう要求する。運転手がこの要求に従うと、駐車ブレーキが自動的に解除された位置へ運動させられる。ブロック20では、ついに解除された位置が再び達成される。
【符号の説明】
【0023】
1 制御装置
6 ボタン
4 モータ
図1
図2
図3