(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加熱調理器を、誘導加熱による加熱口を左右手前に二口備えたビルトイン型(組み込み型)のIHクッキングヒーターに適用した場合を例に説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器の全体斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器の平面図である。
加熱調理器100は、金属板で形成された箱形状の本体ケース1と、例えば耐熱強化ガラスで構成され本体ケース1の上面開口を塞ぐ天板2とを備えている。平板状の天板2は、本体ケース1の上面開口を密閉状態に覆っており、天板2の上面から水滴などが本体ケース1の内部に侵入しないようになっている。
【0014】
加熱調理器100は、天板2の上に被加熱物を載置して加熱するための2つの加熱口を有しており、左側の加熱口を左加熱口3L、右側の加熱口を右加熱口3Rと称する。
本体ケース1の内部であって、天板2の左加熱口3Lの下側には、左加熱口3Lにおける加熱手段として、左加熱コイル31Lが設けられている。
また、本体ケース1の内部であって、天板2の右加熱口3Rの下側には、右加熱口3Rにおける加熱手段として、右加熱コイル31Rが設けられている。
これら2つの左加熱コイル31L及び右加熱コイル31Rは、それぞれ独立して通電とその電力量が制御され、火力も別個に設定できるようにインバータ回路(後述の
図4参照)に電気的に接続されている。
【0015】
なお、左加熱コイル31Lと右加熱コイル31Rの最大消費電力(最大火力)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、左加熱口3L、右加熱口3Rにおける加熱手段は加熱コイルに限定されず、いずれか一方または両方の加熱手段はシーズヒーター等の電気ヒーターであってもよい。また、加熱口の数も2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0016】
左加熱コイル31Lと右加熱コイル31Rは、通電時に被加熱物である被加熱容器に渦電流を生じさせるための磁界を発生するように渦状に巻かれたコイルと、これを収容する円形で上面が開口したコイル支持体と、このコイル支持体の下面の全体やその一部を覆い磁束漏れを抑制するフェライト(いずれも図示せず)とを備えている。左加熱コイル31L及び右加熱コイル31Rの上面は、天板2の下面に対して一定の空隙を空けて対向するように配置されている。
【0017】
本体ケース1の内部の下側には、グリル加熱室4が区画形成されている。グリル加熱室4は、金属板により左右及び上下の壁面が形成されており、グリル加熱室4の前面開口部は引出し式のグリル扉41により開閉自在に覆われている。グリル加熱室4内の上部天井付近には、グリル加熱室4内を上側から加熱する加熱手段として上ヒーター42(
図4参照)が設けられ、グリル加熱室4の底部付近には、グリル加熱室4内を下側から加熱する加熱手段として下ヒーター44(
図4参照)が設けられている。上ヒーター42の最大消費電力(最大火力)は、例えば1200W、下ヒーター44の最大消費電力は、例えば800Wである。
グリル加熱室4においては、上ヒーター42と下ヒーター44に同時または個別に通電して、ロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)や、グリル加熱室4内の雰囲気温度を設定して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。
【0018】
本実施の形態1では、左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42、及び下ヒーター44が、本発明における「電力を使用して被加熱物を加熱する加熱手段」に相当する。なお、以下の説明では、左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42、及び下ヒーター44を区別する必要がないときには、これらを単に「加熱手段」と称する。
【0019】
天板2の左奥側には左吸気口21Lが設けられ、右奥側には右吸気口21Rが設けられている。また、天板2において左吸気口21Lと右吸気口21Rとの間には、中央排気口21Cが設けられている。本体ケース1には、左吸気口21L、右吸気口21Rから外部の空気を吸い込むための送風装置(図示せず)が設けられている。本体ケース1の内部には、制御回路や加熱コイル等の発熱部品に冷却風を送るための通風経路が構成されており、左吸気口21L、右吸気口21Rから吸い込まれた外部の空気は、本体ケース1内の通風経路を通って中央排気口21Cから外部へと流出するようになっている。左吸気口21L、中央排気口21C、右吸気口21Rの上には、これら全体を覆うように、全体にわたって多数の小さな連通孔が形成されたカバー22が着脱自在に載せられている。このカバー22は、例えば、金属板に連通孔をプレス加工で形成したもの(パンチングメタル)や、金網等で構成されており、使用者の指や異物等が左吸気口21L、中央排気口21C、右吸気口21Rに入りにくくなっている。
【0020】
天板2の上面の手前側には、加熱調理器100の動作状態等を表示する表示部として、左表示部5L、右表示部5R、及び中央表示部6(これらを「表示部」と総称する場合がある)が設けられている。左表示部5L、右表示部5Rは、それぞれ、左加熱口3L、右加熱口3Rの手前側に設けられており、これらの加熱口における現在の火力等を表示する。左表示部5L、右表示部5Rは、それぞれ、左加熱口3L、右加熱口3Rの近傍に設けられており、加熱口とその火力とが確認しやすくなっている。
また、中央表示部6は、天板2の上面において、左表示部5Lと右表示部5Rとの間に設けられている。
【0021】
また、天板2の上面において、左表示部5L、中央表示部6、及び右表示部5Rの手前側には、それぞれ、左操作部7、中央操作部8、及び右操作部9(これらを「操作部」と総称する場合がある)が設けられている。また、天板2の上面には、電源ボタン10が設けられている。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器の表示部と操作部を説明する図である。
左操作部7は、主に左加熱口3Lに対する加熱条件を設定するためのものである。左操作部7には、左加熱コイル31Lにおける設定火力を上げるための上ボタン71と、左加熱コイル31Lにおける設定火力を下げるための下ボタン72と、左加熱コイル31Lに対する電力投入の有無を切り替える機能と各種設定条件を確定させるための機能とを備えた決定ボタン73と、自動調理メニューを設定するためのメニューボタン74とを備える。
【0023】
ここで、自動調理とは、調理開始から終了までの間の加熱出力を、予め記憶された制御シーケンスに従って自動的に調整する機能のことをいう。例えば、使用者により自動調理メニュー(例えば、揚げ物、煮込み、ゆでもの、炊飯等)が選択されると、選択された自動調理メニュー毎に設定された所定の制御シーケンスにより、調理開始からの時間経過に応じて火力(強火、中火、弱火等)の調整を自動的に行う。また、タイマーにより設定された時間が経過すると自動的に加熱動作を終了するタイマー機能も、本実施の形態1における自動調理の概念に含まれる。
【0024】
右操作部9は、主に右加熱口3Rに対する加熱条件を設定するためのものである。右操作部9には、右加熱コイル31Rにおける設定火力を上げるための上ボタン91と、右加熱コイル31Rにおける設定火力を下げるための下ボタン92と、右加熱コイル31Rに対する電力投入の有無を切り替える機能と各種設定条件を確定させるための機能とを備えた決定ボタン93と、タイマーボタン94とを備える。タイマーボタン94によるタイマー機能の設定がなされると、通電開始から所望の時間だけ加熱手段に通電し、その後自動的に通電を停止するという制御が行われる。
【0025】
中央操作部8は、主にグリル加熱室4における加熱条件を設定するとともに、加熱調理器100全体の動作に関する設定を行うためのものである。中央操作部8には、上ヒーター42、下ヒーター44における設定火力を上げるための上ボタン81と、上ヒーター42、下ヒーター44における設定火力を下げるための下ボタン82と、上ヒーター42、下ヒーター44に対する電力投入の有無を切り替える機能と各種設定条件を確定させるための機能とを備えた決定ボタン83とを備える。また、中央操作部8には、上ヒーター42、下ヒーター44への通電時間を増減させるための左ボタン84と、右ボタン85とが設けられている。
【0026】
操作部は、表面が水や調理物の油などに耐える材質の薄い合成樹脂皮膜や金属皮膜で覆われており、使用者が指先で軽く押すことにより、内蔵した電気接点が導通し、入力信号を発生するように構成されている。このように、操作部をメカニカルスイッチで構成するものに限らず、ガラスの下に静電スイッチを設けて操作部を構成してもよい。
【0027】
また、右操作部9よりも右側には、加熱調理器100の電源の入り/切りを制御する電源ボタン10が設けられている。
【0028】
左表示部5Lは、左加熱コイル31Lにおける現在の電力(火力)を表示する。右表示部5Rは、右加熱コイル31Rにおける現在の電力(火力)を表示する。左表示部5Lと右表示部5Rは、最小火力から最大火力までの火力を複数段階で表示できるようになっている。
【0029】
中央表示部6は、主にグリル加熱室4における現在の動作状態に関する情報を表示するとともに、加熱調理器100の全体動作に関する情報を表示する。中央表示部6は、例えばドットマトリックス型の液晶画面で構成されており、文字やアイコン等を表示することができる。なお、中央表示部6における表示動作については後述する。
【0030】
図4は、実施の形態1に係る加熱調理器の機能ブロック図である。
図4において、制御部12は1つまたは複数のマイクロコンピュータを内蔵し、定電圧回路を有する電源部11を介して直流電源が供給されている。制御部12は、加熱調理器100の加熱手段(左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42、下ヒーター44)と表示部(左表示部5L、右表示部5R、中央表示部6)を制御するほか、加熱調理器100の全体的な制御を司るものである。
【0031】
図4に示すように、加熱調理器100には、左加熱コイル31Lに高周波電力を供給するインバータ回路32Lと、右加熱コイル31Rに高周波電力を供給するインバータ回路32Rと、上ヒーター42に電力を供給するヒーター駆動回路43と、下ヒーター44に電力を供給するヒーター駆動回路45とを備える。制御部12は、操作部による設定に基づいて、設定された火力が得られるようにインバータ回路32L、インバータ回路32R、ヒーター駆動回路43、ヒーター駆動回路45の通電制御を行う。
【0032】
モーター駆動回路15は、本体ケース1内に設けられた機体内部部品の冷却やその換気に用いられる送風装置のファンモーターを駆動するための制御回路である。制御部12は、左加熱口3L、右加熱口3R、及びグリル加熱室4の少なくともいずれかによる加熱を開始すると、モーター駆動回路15を制御して送風装置を動作させる。
【0033】
表示部駆動回路16は、制御部12からの駆動信号を受けて、左表示部5L、右表示部5R、中央表示部6を駆動する回路である。
音声合成回路17は、制御部12からの駆動信号を受けて音声信号を生成し、生成した信号をスピーカー等の音出力部18に出力する。
【0034】
温度検知部13は、各加熱手段により加熱される被加熱物の温度を検知するためのものであり、本実施の形態1では、左加熱口3Lに載置される被加熱物の温度を検知するための温度センサーと、右加熱口3Rに載置される被加熱物の温度を検知するための温度センサーと、グリル加熱室4内の温度を検知するための温度センサーとを含んでいる。制御部12は、温度検知部13の温度センサーから出力される温度情報に基づいて、左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42、下ヒーター44への通電制御を行う。
【0035】
RTC14は、制御部12に対して年、月、日、時、分、秒等の時計データを提供するリアルタイムクロックである。RTC14は、電源部11とは別に設けられた内蔵電源(図示せず)から電源供給を受け、電源部11から電源を供給されていない場合、すなわち、加熱調理器100が電源オフの状態であっても動作するように構成されている。
【0036】
制御部12は、記憶部121と、計時部122と、電力管理部123とを備える。
記憶部121には、自動調理に使用される制御シーケンスを含む制御プログラムや、後述する電力抑制機能に関する条件設定データを含む各種データを記憶する。
計時部122は、時間を計測するものであり、加熱調理のタイマー機能や、後述する電力抑制機能を実行する際に用いられる。
電力管理部123は、設定された加熱調理器100で使用可能な上限電力量の目標値を受け取り、この目標値の範囲内で、各加熱手段に供給する電力の配分を決定する機能を有する。なお、電力管理部123の動作については後述する。
【0037】
次に、電力抑制機能について説明する。電力抑制機能とは、加熱調理器100で使用可能な電力量の上限値を、設定される目標値に基づいて変更する機能である。加熱調理器100には、電力上限値として定格電力値(例えば5800W)が定められているが、ピークカット機能の実行中には、その電力上限値が、定格電力値よりも小さい値である目標値(例えば4800W)に変更される。そして、制御部12の電力管理部123は、設定された電力上限値の範囲内で、各加熱手段(左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42、下ヒーター44)に供給する電力の配分を決定し、制御部12は、決定された電力配分に基づいて、各加熱手段への通電制御を行う。
【0038】
本実施の形態1の加熱調理器100は、(1)電力抑制を常時行う、(2)設定された期間内のみ電力抑制を行う、のいずれかを選択可能である。以下、電力抑制の条件設定に関する加熱調理器100の動作を、中央表示部6における画面表示例を示しながら説明する。
【0039】
(1)電力抑制を常時行う場合の条件設定
電力抑制を常時行う場合、すなわち、電力抑制期間の終期を定めず無期限で電力抑制を行う場合の、条件設定について説明する。
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器の電力抑制の条件設定動作を説明する画面例である。なお、
図5及びその他の図面、並びにこれ以降の説明において、電力抑制のことを「ピークカット」と称する場合がある。
【0040】
図5(a)は、電源ボタン10がオンされている場合における中央表示部6の通常の表示例(初期状態)である。この状態において、操作部により電力抑制を常時行うための設定機能が選択されると、
図5(b)に示すように、ピークカット条件設定を行うことを示す表示A1が表示され、続けて、
図5(c)に示すピークカット機能の説明と現在の電力上限値を示す表示A2が表示される。次に、操作部にてピークカット条件設定を選択するための操作がなされると、
図5(d)に示すように、ピークカット条件設定を行う使用者の意思を確認するための表示A3が表示される。次に、操作部にてピークカット条件設定の実行を決定する操作がなされると、
図5(e)に示すように、電力上限値の目標値を設定するための画面が表示される。
【0041】
本実施の形態1では、電力上限値の目標値を、電力量(W)、または、定格電力に対する割合(%)にて設定することができる。
図5(e)に示すように、電力量と割合のうち、選択されている方の項目には、表示B1が表示される。
また、本実施の形態1では、電力上限値の目標値を、予め定められた複数種類の値にて設定することができる。例えば電力量(W)で設定を行う場合には、5800W、4800W、4000W、3000Wのうちいずれかを選択可能であり、割合(%)で設定を行う場合には、100%、90%、85%、80%、70%、60%のうちいずれかを設定可能である。また、
図15(c)に示すように、例えば15%削減の指示であれば「−15%」等、抑制(量)の割合(%)で設定するようにしてもよい。なお、このように複数種類の値の中から使用者が選択するのではなく、電力量(W)あるいは割合(%)の値を使用者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器の電力抑制の条件設定動作を説明する画面例である。
図6(a)〜(d)は、電力量で電力上限値を設定する場合の画面例を示し、
図6(e)〜(g)は、割合で電力上限値を設定する場合の画面例を示している。なお、
図6(a)は、
図5(e)と同じ画面である。
【0043】
図6(a)に示す表示B1は、操作部に設けられた所定の操作ボタン(例えば、上ボタン81、下ボタン82)が操作されると、電力量と割合のいずれかに移動するようになっている。
電力上限値を電力量で設定する場合、
図6(a)に示すように、使用者は、電力量を示す項目に表示B1を移動させるように操作部を操作する。また、操作部に設けられた所定の操作ボタン(例えば、左ボタン84と右ボタン85)が操作されると、中央表示部6に表示される電力量の値が切り替え表示されるので、使用者は、電力上限値として設定したい値が表示されるように操作部を操作する。
図6(b)は電力上限値を4800Wに設定した状態を示し、
図6(c)は電力上限値を4000Wに設定した状態を示し、
図6(d)は電力上限値を3000Wに設定した状態を示している。
【0044】
また、電力上限値を割合で設定する場合、
図6(e)に示すように、使用者は、割合を示す項目に表示B1を移動させるように操作部を操作する。次に、使用者は、操作部に設けられた所定の操作ボタン(例えば、左ボタン84と右ボタン85)を操作して、割合を選択する。
図6(e)は電力上限値を100%に設定した状態を示し、
図6(f)は電力上限値を90%に設定した状態を示し、
図6(g)は電力上限値を85%に設定した状態を示している。
【0045】
このようにして電力量あるいは割合により電力上限値が設定されると、制御部12は、設定された情報を、所定時間の間あるいは常時、中央表示部6に表示させる。このようにすることで、使用者に対して設定内容をより明確に認識させることができる。また、このような表示に加え、あるいはこれに代えて、設定された電力上限値を、音出力部18により設定内容を音声にて報知するようにしてもよい。例えば、
図6(d)に示す設定がなされた場合には、音出力部18が、『ピークカット設定の電力上限値を3000Wに設定しました』という音声を出力する。このようにすることで、使用者に対して設定内容をより明確に認識させることができる。
【0046】
なお、ピークカット条件設定における各種設定を行うための具体的な操作ボタンは、操作部に設けられたいずれかの操作ボタンであればよく、ピークカット条件設定のために設けられた専用のボタンであってもよいし、他の機能とピークカット条件設定とで操作ボタンを共用するようにしてもよい。このことは、以下で説明するカレンダー設定等においても同様である。また、設定された電力上限値の目標値は記憶部121に格納され、記憶部121に格納された情報は、加熱調理器100が電源オフ状態のときにも、例えばバックアップ電源(電池)により保持される。なお、記憶部121を不揮発性メモリー(EEPROM)で構成してもよい。
【0047】
(2)設定された期間内のみ電力抑制を行う場合の条件設定
(2−1)カレンダー設定
設定された期間内のみ電力抑制を行う場合には、予め、加熱調理器100に対してカレンダー情報を設定しておく必要がある。そこで、まず、カレンダー情報の設定動作について説明する。
【0048】
図7は、実施の形態1に係る加熱調理器のカレンダー設定動作を説明する画面例である。
図7(a)は、電源ボタン10がオンされている場合における中央表示部6の通常の表示例(初期状態)である。この状態において、操作部によりカレンダー設定機能が選択されると、
図7(b)に示すように、カレンダー設定を行うことを示す表示C1が表示される。次に、操作部にてカレンダー設定を選択するための操作がなされると、
図7(c)に示すように、カレンダー設定を行う使用者の意思を確認するための表示C2が表示される。次に、操作部にてカレンダー設定を行うことを決定するための操作がなされると、
図7(d)に示すように、現在のカレンダー情報を示す表示C3と、現在設定されているピークカットの条件設定の内容を示す表示C4とが表示される。
【0049】
図7(d)の表示C3に示す例では、年、月、日、時、分、秒、が設定可能であり、これらの項目のうち、変更対象となっている項目にアンダーライン表示C5が表示される。このアンダーライン表示C5は、操作部に設けられた所定の操作ボタン(例えば、左ボタン84と右ボタン85)が操作されることにより、左側あるいは右側の項目に移動される。また、操作部に設けられた所定の操作ボタン(例えば、上ボタン81、下ボタン82)が操作されると、アンダーライン表示C5が表示されている項目の値が、増加あるいは減少する。使用者は、例えば、左ボタン84と右ボタン85を操作してアンダーライン表示C5をいずれかの項目に移動させ、上ボタン81と下ボタン82を操作することで、カレンダー情報を設定することができる。
【0050】
設定されたカレンダー情報は記憶部121に格納され、記憶部121に格納された情報は、加熱調理器100の電源オフ状態においても、例えばバックアップ電源(電池)により保持される。なお、記憶部121を不揮発性メモリー(EEPROM)で構成してもよい。このため、使用者は、基本的には、加熱調理器100に対して一度だけカレンダー情報の設定を行えばよい。
【0051】
(2−2)電力抑制期間の設定
本実施の形態1では、ピークカット機能を実行する期間(電力抑制期間)を使用者が設定することができる。また、ピークカット機能を実行する電力抑制期間の設定単位は、シーズン、月、日、時間、の4種類である。中央表示部6における画面例を参照しつつ、電力抑制期間の設定動作を説明する。
【0052】
図8は、実施の形態1に係る加熱調理器の電力抑制の条件設定動作を説明する画面例である。
図8(a)は、電力抑制期間を設定する設定単位を選択する画面の表示例である。
図8(a)に示す画面は、例えば、
図7(d)に示す状態において、操作部にてピークカット設定が選択された場合に表示される。本実施の形態1では、電力抑制期間の設定単位として、シーズン、月、日、時間、の4種類のいずれかを選択可能であり、現在選択されている項目名には表示D1が表示される。
【0053】
図8(b)は、
図8(a)にて「シーズン」が選択された場合に表示される画面例である。本実施の形態1の加熱調理器100では、4つのシーズン(春、夏、秋、冬)の設定が可能である。
図8(b)に示す例では、中央表示部6には春、夏、秋、冬の項目名を示す表示D2が表示され、表示D2において現在選択されている項目名には選択されていることを示す表示D3が表示される。使用者は、操作部を操作していずれかの項目名に表示D3を移動させ、その状態で設定を確定するための操作を行うことで、ピークカットを行う季節を設定することができる。
【0054】
また、
図8(b)に示すように、中央表示部6には、電力上限値を示す表示D4が表示される。電力上限値は、電力量(W)、または、定格電力に対する割合(%)にて設定可能である。本実施の形態1では、電力上限値は、予め定められた単位で設定可能である。例えば電力量(W)で設定を行う場合には、5800W、4800W、4000W、3000Wのうちいずれかを設定可能であり、割合(%)で設定を行う場合には、100%、90%、85%、80%、70%、60%のうちいずれかを設定可能である。
【0055】
電力抑制期間が「シーズン」で設定された場合、制御部12は、設定された季節の間(例えば、冬であれば11月から3月の間)、設定された電力上限値の範囲内で、各加熱手段への通電制御を行う。
【0056】
図8(c)は、
図8(a)にて「日」が選択された場合に表示される画面例である。画面には、電力抑制期間の開始タイミングを表示する表示D5と、電力抑制期間の終了タイミングを表示する表示D6と、電力上限値を表示する表示D4とが表示される。電力抑制期間を「日」で設定する場合には、電力抑制期間の開始・終了タイミングを、年、月、日で設定することができる。電力抑制期間が「日」で設定された場合、制御部12は、開始日から終了日までの間、設定された電力上限値の範囲内で、各加熱手段への通電制御を行う。
【0057】
図8(d)は、
図8(a)にて「時間」が選択された場合に表示される画面である。電力抑制期間を「時間」で設定する場合には、電力抑制期間の開始・終了タイミングを、時刻で設定することができる。電力抑制期間が「時間」で設定された場合、制御部12は、毎日、開始時刻から終了時刻までの間、設定された電力上限値の範囲内で、各加熱手段への通電制御を行う。
【0058】
また、本実施の形態1の加熱調理器100は、複数パターン(例えば5パターン)の電力抑制期間を設定することが可能である。
図8(c)、(d)には、ピークカット期間のパターン番号を示す表示D7が表示されており、
図8(c)の表示D7はパターン番号2の設定であることを示し、
図8(d)の表示D7はパターン番号1の設定であることを示している。
【0059】
なお、設定された電力抑制期間及び電力上限値の目標値の情報は記憶部121に格納され、記憶部121に格納された情報は、加熱調理器100の電源オフ状態においても保持される。
【0060】
ここで、本発明の「電力抑制期間受付部」は、本実施の形態1の「操作部」に相当する。
また、本発明の「目標値受付部」は、本実施の形態1の「操作部」に相当する。
また、本発明の「入力装置」は、本実施の形態1の「操作部」に相当する。
また、本発明の「電力量決定部」は、本実施の形態1の「電力管理部123」に相当する。
また、本発明の「記憶装置」は、本実施の形態1の「記憶部121」に相当する。
また、本発明の「報知部」は、本実施の形態1の「中央表示部6」及び「音出力部18」に相当する。
また、本発明の「時計機能」は、本実施の形態1の「計時部122」に相当する。
【0061】
次に、加熱調理器100の加熱動作を説明する。なお、(1)常時ピークカットを行う、あるいは、(2)設定された期間内のみピークカットを行う、のいずれかが設定されているものとする。
【0062】
図9は、実施の形態1に係る加熱調理器の動作を説明するフローチャートである。
図9に示すように、左加熱口3L、右加熱口3R、グリル加熱室4のうち少なくともいずれかに対する加熱条件設定と加熱開始の操作が操作部にてなされると(S1)、電力管理部123は、現在、電力抑制期間内であるか否かを判定する(S2)。電力抑制期間内であるか否かは、RTC14により供給される時計情報と、記憶部121に記憶された電力抑制期間に関する情報とに基づいて判定される。例えば、記憶部121に、午前6時から午前9時30分までの時間帯が電力抑制期間として記憶されている場合において、RTC14により供給される現在時刻が午前8時であれば、電力管理部123は、ピークカット設定の期間内であると判定する。また、記憶部121に、常時ピークカットを行う設定がなされている場合には、ステップS2の判定は常にYesとなる。
【0063】
電力抑制期間内でない場合(S2;No)、電力管理部123は、ステップS1における設定に基づいて加熱調理器100の定格電力の範囲内で加熱手段への電力を配分し(S4)、制御部12は、その配分に基づいて加熱手段への通電制御を行う(S5)。
【0064】
一方、電力抑制期間内である場合には(S2;Yes)、電力管理部123は、当該電力抑制期間に対応して設定された電力上限値を記憶部121から読み出し、その電力上限値の範囲内で、各加熱手段に対して設定されている電力を配分可能か否かを判断する(S3)。より具体的には、電力管理部123は、既に電力を供給している加熱手段への電力値と、ステップS1にて設定された電力値との合計が、電力上限値以下であるか否かにより、電力の配分の可否を判断する。例えば、電力上限値が3000Wに設定されており、いずれの加熱手段も加熱を行っていない場合において、左加熱口3Lの火力が3000Wに設定された場合には、電力管理部123は、電力配分が可能であると判断する。また、例えば、電力上限値が3000Wに設定されており、左加熱口3Lに1000Wの電力を供給している状態において、右加熱口3Rの火力が3000Wに設定された場合には、電力管理部123は、電力配分が不可能であると判断する。
【0065】
電力配分が可能である場合(S3;Yes)、電力管理部123は、ステップS1における設定に基づいて、電力上限値の範囲内で加熱手段への電力を配分し(S4)、制御部12は、その配分に基づいて加熱手段への通電制御を行う(S5)。
【0066】
電力配分が不可能である場合(S3;No)、電力管理部123は、各加熱手段の優先順位を判定する(S6)。優先順位は、任意の条件により予め設定され、記憶部121に格納されている。例えば、左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42及び下ヒーター44、の順に優先順位が高いなど、加熱手段毎に優先順位が設定されていてもよい。また、自動調理モードが設定されている加熱手段の方が、自動調理モードが設定されていない加熱手段よりも優先順位が高くなるように優先順位が設定されていてもよい。また、先に加熱を開始した加熱手段の方が、後に加熱を開始した加熱手段よりも優先順位が高くなるようにしてもよい。また、これらの組み合わせにより優先順位を決定してもよい。
【0067】
優先順位を判定した電力管理部123は、優先順位の高い加熱手段に優先的に電力が配分されるように、当該電力抑制期間に対して設定された電力上限値の範囲内で、各加熱手段への電力配分を決定する(S7)。例えば、電力上限値が3000Wであり、左加熱コイル31Lに1500Wの電力を供給している状態において、ステップS1にて右加熱コイル31Rに2000Wの電力設定がなされたとする。この場合、例えば、左加熱コイル31Lの優先順位の方が高ければ、左加熱コイル31Lには1500Wの電力供給を維持し、右加熱コイル31Rには1500Wの電力を配分する。また、右加熱コイル31Rの優先順位の方が高ければ、例えば、左加熱コイル31Lへの電力供給を1000Wを供給に低下させ、右加熱コイル31Rには設定通りの2000Wを配分する。なお、電力を配分する際の各加熱手段に対する電力抑制量をどの程度とするかは、任意の条件により設定することができる。
【0068】
次に、制御部12は、電力抑制を行うことを報知する(S8)。報知する内容は、例えば、電力抑制を開始すること、どの加熱手段における電力が抑制されるか、抑制後の電力値等である。また、ステップS8における報知は、中央表示部6を用いた視覚的な報知、及び音出力部18を用いた聴覚的な報知のいずれかまたは両方により行うことができる。また、加熱調理器100に電子メール送信機能(図示せず)を設け、予め設定されたアドレス宛に電力抑制に関する情報を含む電子メールを送信してもよい。このように、電力抑制を行うことを予告することで、使用者は、例えば調理の優先度の低い被加熱物の加熱を控えるなど状況に応じた加熱調理が可能となるので、使い勝手がよい。また、省電力化が効率的に実施される利点もある。
【0069】
ステップS8における報知の後、制御部12は、ステップS7にて設定された配分に基づいて、加熱手段への通電制御を行う(S5)。このステップS8に続いて行われるステップS5が、本発明における電力抑制モードに相当する。
なお、電力が制限された状態で加熱を行う場合、加熱開始から所定時間、あるいは常時、中央表示部6に電力抑制中であることを表示するようにしてもよい。このようにすることで、使用者は、電力抑制中であることを認識することができるので、電力抑制により設定した火力が得られない場合でも、故障と勘違いしたり設定火力が得られないことに不満を感じたりといったことを抑制することができる。
【0070】
ここで、
図9のステップS7における処理の変形例を説明する。上記説明では、ステップS7において、電力上限値と各加熱手段の優先順位に基づいて電力を配分することを説明した。しかし、いずれかの加熱手段に自動調理モードが設定されており、ステップS7で電力配分を行った結果、自動調理モードで加熱を行う加熱手段の電力を抑制しなければ加熱調理器100の使用電力量を電力上限値以下に抑えることができない場合には、自動調理モードでの加熱自体を行わないようにしてもよい。というのは、自動調理モードで加熱を行う場合、使用電力量を抑制すると、予めプログラムされた電力量よりも低い値で自動調理を実行しなくてはならなくなり、調理の良好な仕上がり得られない可能性があるためである。したがって、そのような場合には自動調理モードでの加熱自体を行わないことで、調理の失敗を防ぐことができる。
【0071】
このように、本実施の形態1の加熱調理器100は、電力抑制を行う期間を設定可能であり、この電力抑制期間中においては、設定された電力上限値の範囲内で、加熱手段に電力を配分するようにした。電力抑制期間と電力上限値に関する情報が予め設定されていれば、加熱調理器100は、自動的に電力抑制モードを実行するため、使用者に多くの手間をかけさせることなく電力使用量を抑制することができる。また、本実施の形態1の加熱調理器100は、期間を限定して電力上限値を抑制することができるので、例えば電力需要の増加する時間帯や時期に、電力抑制機能を実行するような設定がなされることで、電力の需要と供給のバランスの安定化を図ることができる。ここで、
図10に、電力需要の変動例を示す。
図10に示すように、一般に電力需要は時間帯によって変動し、また、春、秋に対して夏の電力需要の方が高いなど、季節によっても変動する。このため、例えば、季節を通じて電力需要の高い時間帯(例えば、午前8時から22時)をピークカット期間に設定したり、あるいは、電力需要の高い夏をピークカット期間に設定したりすることで、電力の需要側である加熱調理器100にて電力の供給と需要のバランスの安定化に貢献することができる。使用者が予め電力需要の高い期間を電力抑制期間として設定しておくだけで、その期間になると加熱調理器100が自動的に電力使用量を抑制するので、使用者にさほど手間をかけさせることなく、加熱調理器100の電力使用量を抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態1の加熱調理器100は、設定された電力抑制期間以外は、電力抑制を行わないので、使用可能な電力が制限されることによる使用者の不便さを抑えることができる。
【0073】
また、本実施の形態1の加熱調理器100は、電力抑制期間を、季節、年、月、日、時間、のように複数の条件で設定可能であるので、使用者毎の加熱調理器100の使用状況や電力の需要と供給のバランスに応じたタイミングで、きめ細かくピークカットの期間を設定することができる。このため、使用可能な電力が制限されることによる使用者の不便さを抑制しつつ、電力の需要と供給のバランスの安定化を図ることができる。
【0074】
また、本実施の形態1の加熱調理器100は、電力抑制期間中における電力上限値を、複数種類の中から設定可能とした。このため、使用者毎の加熱調理器100の使用状況や、電力需要と供給のバランスに応じて、電力上限値を設定することができる。このため、使用可能な電力量が制限されることによる使用者の不便さを抑制しつつ、電力の需要と供給のバランスの安定化を図ることができる。
【0075】
また、本実施の形態1の加熱調理器100は、電力抑制期間中に電力抑制を行う場合には、各加熱手段の優先順位に基づいて、各加熱手段への電力配分を決定するようにした。このため、電力抑制期間中には、使用者が、加熱手段の優先順位を考慮して使用する加熱手段を選択することで、加熱調理器100全体としての使用電力量を抑制しつつも、優先度合いの高い加熱調理については高火力のままで加熱調理を続けることも可能となる。したがって、本実施の形態1によれば、使用可能な電力が制限されることによる不便さを抑制することができる。例えば、加熱手段毎に優先順位が設定されている場合には、使用者は、優先順位の高い加熱手段を使用して、優先度の高い被加熱物を加熱することができる。また、例えば、自動調理メニューが設定されている加熱手段の優先順位が高く設定されている場合には、その加熱手段に優先的に電力が配分されることになるので、自動調理中に電力が不足することによる調理の失敗を抑制することができる。
【0076】
なお、本実施の形態1では、制御部12が時計データを取得するための構成として、内蔵電源から電源供給を受けるRTC14を設ける例を示したが、このRTC14に代えて電波時計を設けてもよい。
【0077】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、操作部にて電力抑制機能の条件設定を行う構成であった。本実施の形態2では、操作部を用いた電力抑制機能の条件設定に代えて、通信機能を用いて外部から電力抑制機能に関する条件設定を受けるようにした構成例を説明する。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付す。
【0078】
図11は、実施の形態2に係る加熱調理器の機能ブロック図である。
図11に示す加熱調理器100Aは、電力制御装置300との間で信号の送受信を行う通信部19を備える。通信部19は、外部機器から受信した信号のプロトコル変換を行って制御部12に出力するとともに、制御部12からの信号のプロトコル変換を行って外部機器に対して送信する機能を有する。
【0079】
本実施の形態2の通信部19は、有線通信により電力制御装置300と通信を行う接続インターフェース191と、無線通信により電力制御装置300と通信を行う送受信部192とを備えている。なお、接続インターフェース191と送受信部192の両方を備えている必要はなく、通信相手となる電力制御装置300の通信機能に応じて、必要なものを備えていればよい。
【0080】
ここで、本発明の「電力抑制期間受付部」は、本実施の形態2の「通信部19」に相当する。
また、本発明の「目標値受付部」は、本実施の形態2の「通信部19」に相当する。
また、本発明の「通信装置」は、本実施の形態2の「通信部19」に相当する。
【0081】
次に、本実施の形態2に係る加熱調理器100Aを適用可能な電力制御システムの構成例を説明する。
図12は、実施の形態2に係る電力制御システムのシステム構成図である。
図12に示すように、電力制御システム200は、例えば住戸内に構築されており、分電盤201と、電力制御装置300と、加熱調理器100Aと、電力を消費する電気機器202a、202b、202c、202dとを備えている。
【0082】
分電盤201は、住戸内に引き込まれた電力線203を介して電力供給事業者から供給される電力を受電し、受電した電力を住戸内の分岐電力線に分電して出力する。また、分電盤201は、当該住戸内の使用電力量が規定量を超えたときに電力会社からの受電を遮断する遮断器204を備えている。
【0083】
電気機器202a、202b、202c、202d(以下、電気機器202と総称する場合がある)は、電力を消費する家電機器等の電気機器であり、
図12では、一例として、衣類乾燥機、エアコン、ヘアードライヤー、テレビを示している。加熱調理器100A及び各電気機器202は、住戸内の分岐電力線に接続されており、この分岐電力線から電力供給を受ける。これら電気機器202は、電力制御装置300との間で通信するための通信装置を備えている。
【0084】
電力制御装置300は、加熱調理器100A及び各電気機器202に対して、電力制御信号を送信する装置である。
図13は、実施の形態2に係る電力制御システムに適用可能な電力制御装置の構成例を説明する図である。
図13に示すように、電力制御装置300は、1つまたは複数のマイクロコンピュータを内蔵した制御部301と、送受信部302と、電力需要率取得部303と、記憶部304とを備えている。
【0085】
送受信部302は、加熱調理器100A及び電気機器202との間で通信を行う。送受信部302が加熱調理器100A及び電気機器202との間で通信を行うための具体的構成を特に限定するものではなく、有線信号を用いるか無線信号を用いるかを問わないし、また、例えば電力線搬送通信を用いてもよい。
【0086】
電力需要率取得部303は、電力供給事業者による電力供給量に対する電力需要量の割合(電力需要率)を取得する。なお、電力需要率は、電力供給事業者あるいは任意のデータサーバから供給されるものとする。電力需要率取得部303が電力需要率を取得するための通信手段を特に限定するものではなく、有線信号を用いるか無線信号を用いるかを問わないし、また、HTTPプロトコルを用いた通信、携帯電話網を用いたパケット通信等を利用してもよい。
【0087】
記憶部304は、当該住戸の遮断器204の容量や、電力供給事業者との契約に基づいて当該住戸で使用可能な最大電力量、電力需要率取得部303が取得した電力需要率を記憶する。また、記憶部304は、電力制御装置300に接続された加熱調理器100A及び電気機器202の使用可能電力量(定格電力量)や、加熱調理器100A及び電気機器202に送信した電力制御信号に関する情報、加熱調理器100A及び電気機器202に電力を配分する際の優先順位に関する情報を記憶する。
【0088】
制御部301は、記憶部304に記憶された情報に基づいて、加熱調理器100A及び電気機器202に対して配分する電力を決定し、送受信部302を用いて加熱調理器100A及び電気機器202に対して電力制御信号を送信する。電力制御信号は、電力上限値に関する情報を含み電力抑制を行うよう指示する電力制限信号と、電力抑制の解除を指示する解除信号とに大別される。例えば、制御部301は、電力需要率取得部303により取得された電力需要率が所定の閾値を超えている場合には、電力抑制を行うための電力制限信号を送信する。また、電力抑制を行うための電力制御信号を送信した後に、電力需要率取得部303により取得された電力需要率が所定の閾値未満となった場合には、制御部301は、電力抑制を解除するための解除信号を送信する。制御部301は、記憶部304に記憶された加熱調理器100A及び電気機器202の優先順位に基づいて、優先順位の高い機器ほど電力抑制をなるべく行わなくてすむように、電力制御信号を送信する。
【0089】
次に、実施の形態2に係る加熱調理器100Aの動作を説明する。
図14は、実施の形態2に係る加熱調理器の動作を説明するフローチャートである。また、
図15は、実施の形態2に係る加熱調理器の電力抑制動作を説明する画面例である。また、
図16は、実施の形態2に係る加熱調理器の電力抑制の解除動作を説明する画面例である。以下、
図15、
図16を適宜参照しつつ、
図14に沿って実施の形態2の加熱調理器100Aの動作を説明する。
【0090】
電源ボタン10がオンされた初期状態の中央表示部6の表示を、
図15(a)に示す。
図14に示すように、電力管理部123は、通信部19を介して外部機器から電力制御信号を受信すると(S11)、受信した電力制御信号の内容を、中央表示部6及び音出力部18の少なくともいずれか一方を用いて報知する(S12)。このときの中央表示部6における表示例を、
図15(b)、(c)に示す。
図15(b)に示す例では、電力上限値を5800Wから3400Wに低下させる電力制御信号を受信したことを表示している。また、
図15(c)に示す例では、電力上限値を15%低下させる電力制御信号を受信したことを表示している。
【0091】
次に、電力管理部123は、受信した信号が電力制限信号であるのか解除信号であるのか、その信号種別を判定する(S13)。電力制限信号である場合には(S13;電力制限信号)、電力管理部123は、いずれかの加熱手段が自動調理モードで加熱中であるか否かを判定する(S14)。このとき、いずれかの加熱手段が自動調理モードで加熱中であるか否かを判定している最中であることを、中央表示部6及び音出力部18の一方または両方で報知してもよく、中央表示部6における表示例を
図15(d)に示す。
【0092】
いずれかの加熱手段が自動調理モードで加熱中である場合には(S14;Yes)、電力管理部123は、受信した電力制限信号に含まれる電力上限値の目標値まで加熱調理器100Aの電力を制限した場合に、自動調理中の加熱手段に影響が及ぶか否かを判定する(S15)。ここで、自動調理中の加熱手段に影響が及ぶとは、加熱調理器100Aの電力上限値を目標値まで低下させようとすると、自動調理中の加熱手段の火力を低下させなくてはならない、ということを意味する。
【0093】
例えば、左加熱コイル31Lにて3000Wで自動調理を行っており、右加熱コイル31Rにて自動調理ではなく1500Wで加熱を行っている場合において、電力上限値が4000Wであるときには、自動調理を行っていない右加熱コイル31Rの電力値を1000Wまで低下させることで、加熱調理器100Aの電力量を電力上限値(4000W)まで低下させることが可能であるので、ステップS15の判定はNoとなる。
一方、左加熱コイル31Lにて3000Wで自動調理を行っており、右加熱コイル31Rでも1500Wで自動調理を行っている場合において、電力上限値が4000Wであるときには、加熱調理器100Aの電力量を上限値(4000W)まで低下させようとすると、自動調理を行っている加熱手段の火力を低下させざるを得ないため、ステップS15の判定はYesとなる。
【0094】
電力抑制により自動調理に影響がある場合には(S15;Yes)、制御部12は、外部機器に対し、電力抑制を行わない旨の信号を送信する(S16)。次に、制御部12は、電力抑制を行わない(外部機器からの電力制限指示を無効とする)旨を、中央表示部6及び音出力部18の少なくともいずれか一方を用いて報知する(S17)。このときの中央表示部6における表示例を、
図15(e)に示す。続けて、制御部12は、加熱調理器100Aの電力を制限することなく、加熱動作を継続する(S18)。
なお、ここでは、ステップS16で外部機器に対し電力抑制を行わない旨の信号を送信して電力抑制を行わないものとして説明したが(S17、S18)、そのような動作に代えて、外部機器から送信される信号に基づいて制御部12が加熱手段への電力供給を制限するように制御してもよい。例えば、加熱調理器100AがステップS16で外部機器に対し電力抑制を行わない旨の信号を送信したが、他の電気機器202に配分する電力の抑制ができないために外部機器から加熱調理器100Aへ再度電力抑制を行う旨の電力制限信号(目標値及び電力抑制期間に関する信号)が送信された場合には、その再度送信された電力制限信号に基づいて、制御部12が自動調理に係る加熱手段への電力供給を制御する電力抑制モードを実行してもよい。また、外部機器から送信される信号に基づいて、制御部12は自動調理に係る加熱手段への電力供給を制限(低減または停止)してもよい。このようにすることにより、確実に電力抑制が可能となる。
【0095】
また、自動調理中でない場合(S14;No)、及び自動調理中であるが電力制限を行っても自動調理に影響がない場合には(S15;No)、電力管理部123は、各加熱手段の優先順位を判定する(S19)。優先順位は、任意の条件により予め設定されている。例えば、左加熱コイル31L、右加熱コイル31R、上ヒーター42及び下ヒーター44、の順に優先順位が高いなど、加熱手段毎に優先順位が設定されていてもよい。また、先に加熱を開始した加熱手段の方が、後に加熱を開始した加熱手段よりも優先順位が高くなるようにしてもよい。また、これらの組み合わせにより優先順位を決定してもよい。
【0096】
優先順位を判定した電力管理部123は、優先順位の高い加熱手段に優先的に電力が配分されるように、電力上限値の範囲内で各加熱手段への電力配分を決定する(S20)。
【0097】
次に、制御部12は、電力抑制を行うことを、中央表示部6及び音出力部18の少なくともいずれか一方を用いて報知する(S21)。このときの中央表示部6における表示例を、
図16(a)に示す。
図16(a)に示す例では、電力上限値が、5800Wから3400Wに抑制されたことを示している。
【0098】
ステップS21における報知の後、制御部12は、ステップS20にて設定された配分に基づいて、加熱手段への通電制御を行う(S22)。ステップS22における通電制御中には、
図16(b)に示すように、火力制限中であることを中央表示部6に表示してもよい。
【0099】
なお、ステップS22にて加熱動作を開始した後に、操作部にて他の加熱手段に対する加熱開始指示がなされたり、通電中の加熱手段に対して火力の増加指示がなされた場合には、電力管理部123は、ステップS19、S20、S21、S22の一連の処理を実行する。
【0100】
また、外部機器から受信した電力制御信号が解除信号である場合には(S13;解除信号)、電力管理部123は、電力制限状態を解除する(S23)。そして、制御部12は、電力制限が解除されたこと、及び火力を再設定することを促す情報を、中央表示部6及び音出力部18の少なくともいずれか一方を用いて報知する(S24)。このときの中央表示部6における表示例を、
図16(c)に示す。また、音出力部18において、例えば、『電力制限が解除されました。火力を再度設定してください。』という音声メッセージを出力してもよい。
【0101】
続けて、制御部12は、電力制限状態が解除される前の状態、すなわち電力制限がされている状態と同じ電力で、各加熱手段における加熱動作を継続する(S25)。なお、電力制限の解除信号を受けたにもかかわらずステップS25にて電力制限状態と同じ電力で加熱動作を継続するのは、自動的に電力を上昇させることで被加熱物が過度に加熱されるのを抑制するためである。
【0102】
このように、本実施の形態2の加熱調理器100Aは、通信部19を介して電力制御信号を受信し、受信した電力制御信号に基づいて各加熱手段への電力配分を決定するようにした。このため、電力制限を行うピークカット期間を使用者が設定することなく、加熱調理器100Aの使用電力量を抑制することができる。また、社会における電力需要率は時々刻々と変化する可能性があるが、電力制御装置300が周期的に電力需要率を取得しその電力需要率に基づいて設定される電力上限値を加熱調理器100に送信することで、加熱調理器100Aは、社会の電力需要率の変化に追従した電力上限値を取得することができる。このため、加熱調理器100Aは、電力の需要と供給のバランスがより安定するように電力を使用することが可能となる。
【0103】
なお、実施の形態2では、加熱調理器100Aは、電力制限信号を取得してから電力解除信号を取得するまでの間、電力抑制を実行する(すなわち、電力抑制期間は、電力制限信号を取得してから電力解除信号を取得するまでの間である)ものとして説明した。しかし、電力制御装置300が、電力抑制期間(シーズン、月、日、時等)を指定する信号を加熱調理器100Aに対して送信し、加熱調理器100Aは、取得した信号にて指定された電力抑制期間のみ、電力抑制を実行するようにしてもよい。
【0104】
また、前述の実施の形態1で示した操作部を用いた電力抑制期間及び電力上限値の目標値設定に関する機能を、実施の形態2の加熱調理器100Aに組み合わせてもよい。すなわち、操作部を用いた電力抑制機能の設定を可能とするととともに、外部機器である電力制御装置300から電力上限値の目標値や電力抑制期間を取得可能に構成してもよい。このようにすることで、実施の形態1、2で示した双方の効果を得ることができる。