(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料と空気とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼室と、燃料を噴出する複数の燃料ノズルが配設された燃料ヘッダと、前記燃料ノズルから噴射された燃料と空気とを前記燃焼室に噴出する複数の空気孔が前記複数の燃料ノズルに対応して形成された空気孔プレートと、ガスタービン点火時に隣接する燃焼器に燃焼ガスを輸送して隣接燃焼器を点火する火炎伝播管とを備えたガスタービン燃焼器において、
前記燃料ヘッダに前記空気孔プレートを固定するためのサポートを備え、前記空気孔プレートにおける前記サポートの取り付け部分が前記火炎伝播管の位相と同位相に設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
請求項1又は請求項2に記載のガスタービン燃焼器において、前記サポートの下流側に、前記空気孔プレートの外周側から内周側に向かう空気の流れと並行するように設置された多孔板を有することを特徴とするガスタービン燃焼器。
請求項1又は請求項2に記載のガスタービン燃焼器において、前記火炎伝播管と同位相の位置に配置された複数の空気孔の直径を、その他の前記空気孔の直径よりも小さくすることを特徴とするガスタービン燃焼器。
請求項1に記載のガスタービン燃焼器の運転方法において、前記燃焼室で生成した燃焼ガスを、前記サポートと同位相に設けられた前記火炎伝播管を用いて、隣接する燃焼器に供給することを特徴とするガスタービン燃焼器の運転方法。
【背景技術】
【0002】
環境保全に対する規制や社会的要求が日増しに強くなっており、ガスタービンにおいてもさらなる高効率化、低NOx化が求められている。
【0003】
ガスタービンを高効率化させるための一方策として、タービン入口のガス温度を上昇させることが考えられるが、この場合、ガスタービン燃焼器での火炎温度の上昇に伴ってNOxの排出量増加が懸念される。
【0004】
NOx排出量低減のために、燃料と空気を予め混合した混合気をガスタービン燃焼器に供給して燃焼させる燃焼方式である予混合燃焼を採用したガスタービン燃焼器がある。
【0005】
前記の予混合燃焼を採用したガスタービン燃焼器は、バーナを構成する燃料と空気との混合を予め行う予混合器と、この予混合器の下流に位置して空気と混合させた燃料を燃焼させる燃焼室とを備えている。
【0006】
予混合燃焼は火炎温度が均一化するため低NOx化に有効であるが、火炎温度が上昇するとガスタービン燃焼器の燃焼室から上流に位置するバーナを構成する予混合器にまで火炎が想定外に逆流する逆火が起こる可能性が増加するため、NOx排出量の抑制と耐逆火性を兼ね備えたガスタービン燃焼器への要求が高まっている。
【0007】
NOx排出量の抑制と耐逆火性を兼ね備えたガスタービン燃焼器に関して、複数の燃料ノズルと複数の空気孔とを同軸上に配置して、燃料と空気の複数の同軸噴流を燃焼室に供給して燃焼させるガスタービン燃焼器に関する技術が特許文献1に開示されている。
【0008】
特許文献1に開示された燃料と空気の複数の同軸噴流を燃焼室に供給して燃焼させるガスタービン燃焼器は、従来の予混合燃焼を採用したガスタービン燃焼器と比較して非常に短い距離で燃料と空気とを急速混合することができるため、NOx排出量の抑制と耐逆火性を両立することが可能なガスタービン燃焼器である。また、対逆火性が優れているため、従来の拡散燃焼方式によって対応してきた石炭ガス化ガスやコークス炉ガス等の水素含有量が高く燃焼速度が速い燃料に対しても適用可能なガスタービン燃焼器である。
【0009】
また、特許文献1には、バーナ中心から同心円状に複数列、燃料と空気の複数の同軸噴流を配置する構造が開示されている。
【0010】
一方、複数の燃焼器を有するガスタービンでは、例えば対角に位置する2缶に点火栓を設置し、ガスタービン燃焼器の点火時に、点火栓をスパークさせて燃焼器に火花点火する。隣接する燃焼器は、火炎伝播管と呼ばれるチューブで互いに接続されており、点火した燃焼器から燃焼ガスが火炎伝播管を通過して隣接燃焼器へと流れて、全ての燃焼器が点火する。このようにして、複数の燃焼器を効率的に点火することができる。複数のバーナから1つの燃焼器が構成されるマルチバーナ構造において、点火時に火炎伝播管に効率的に燃焼ガスを流す構造として、特許文献2にバーナとバーナとの間隙の位相と火炎伝播管の位相を合わせる構造が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に示す本発明の第1の実施の形態は、燃料と空気とを混合して燃焼室に噴出し燃焼させる複数のバーナと、燃料を噴出する複数の燃料ノズルを配設した燃料ヘッダと、燃料と空気とを混合して燃焼室に噴出する複数の空気孔を形成した空気孔プレートと、燃料ノズルと空気孔を同軸に配設して形成した複数の燃料と空気の同軸噴流と、ガスタービン点火時に隣接する燃焼器に燃焼ガスを輸送して隣接燃焼器を点火する火炎伝播管を備えたガスタービン燃焼器において、前記燃料ヘッダに前記空気孔プレートを固定するためのサポートを備え、前記サポートを配設する位相が前記火炎伝播管の位相と略同位相とすることを特徴とする。
【0020】
また、ガスタービン点火時に燃料を供給して燃焼する点火用バーナの外周側に、ガスタービン点火時には使用しない非点火バーナを配設し、前記非点火バーナの前記空気孔の孔間距離が特に大きい部分の位相が、前記火炎伝播管の位相と略同位相とすることを特徴とする。
【0021】
また、以下に示す本発明の第2の実施の形態は、前記のようなガスタービン燃焼器において、前記サポートの下流に燃焼空気の流れと並行するように多孔板を設置することを特徴とする。
【0022】
また、以下に示す本発明の第3の実施の形態は、前記火炎伝播管に近接する複数の空気孔の直径を特に小さくすることを特徴とする。
【0023】
また、以下に示す本発明の第4の実施の形態は、前記サポートが多孔板であることを特徴とする。
【0024】
(1)第1の実施の形態
まず、本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントについて
図1を用いて説明する。
【0025】
図1は本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器2を備えた発電用のガスタービンプラント1000の全体構成を表している。
【0026】
図1に示した発電用のガスタービンプラント1000は、吸い込み空気100を加圧して高圧空気101を生成する圧縮機1と、前記圧縮機1で生成した高圧空気101と燃料系統200を通じて供給される燃料とを混合して燃焼させ、高温の燃焼ガス102を生成するガスタービン燃焼器2と、前記ガスタービン燃焼器2で生成した高温の燃焼ガス102によって駆動されるタービン3と、前記タービン3の駆動によって回転され電力を発生させる発電機20とを備えている。
【0027】
ガスタービン燃焼器の運転方法そして前記圧縮機1、タービン3及び発電機20は、一体のシャフト21によって相互に連結されており、タービン3を駆動して得られた駆動力はシャフト21を通じて圧縮機1及び発電機20に伝えられる構成となっている。
【0028】
前記ガスタービン燃焼器2は、ガスタービン装置のケーシング4の内部に格納されている。
【0029】
また、前記ガスタービン燃焼器2にはバーナ6が設置されており、このバーナ6の下流側となるガスタービン燃焼器2の内部には、前記圧縮機1から供給される高圧空気101と、このガスタービン燃焼器2で生成される高温の燃焼ガス102とを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10が配設されている。
【0030】
燃焼器ライナ10の外周には圧縮機1からガスタービン燃焼器2に高圧空気101を流下させる空気流路を形成する外周壁となるフロースリーブ11が配設されており、前記フロースリーブ11は燃焼器ライナ10よりも直径が大きく、該燃焼器ライナ10とほぼ同心円の円筒状に配設されている。
【0031】
ガスタービン燃焼器2の該燃焼器ライナ10の内側に形成した燃焼室50にてバーナ6から噴出させた高圧空気101と燃料系統200を通じて供給された燃料との混合気を燃焼させる。そして、発生した高温燃焼ガス102をタービン3に導くための尾筒内筒12が配設されている。この尾筒内筒12の外周には尾筒外筒13が配設されている。
【0032】
吸い込み空気100は圧縮機1によって圧縮された後に高圧空気101となるが、この高圧空気101はケーシング4内に供給されて充満した後、尾筒内筒12と尾筒外筒13の間に形成された空間に流入し、尾筒内筒12を外壁面から対流冷却する。
【0033】
尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の空間を流下した高圧空気101は、更にフロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を通って前記ガスタービン燃焼器2に向かって流下するが、この流下する途中でガスタービン燃焼器2の内部に設置された燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0034】
また、フロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を流下する高圧空気101の一部は、燃焼器ライナ10の壁面に設けられた多数の冷却孔から燃焼器ライナ10の内部へ流入して該燃焼器ライナ10のフィルム冷却に使用される。
【0035】
そして前記環状の流路を流下して燃焼器ライナ10のフィルム冷却に使用されなかった残りの高圧空気101は、ガスタービン燃焼器2に設けたバーナ6に備えた多数の空気孔32から燃焼器ライナ10内に供給される。
【0036】
前記ガスタービン燃焼器2に設置したバーナ6には、燃料遮断弁210を備えた燃料系統200を通じて供給する燃料を、燃料系統200から分岐したF1燃料流量調節弁211を備えたF1燃料系統201と、燃料系統200から分岐したF2燃料流量調節弁212を備えたF2燃料系統202と、燃料系統200から分岐したF3燃料流量調節弁213を備えたF3燃料系統203と、燃料系統200から分岐したF4燃料流量調節弁214を備えたF4燃料系統204の4つの燃料系統が配設されている。
【0037】
そしてF1燃料系統201を通じてバーナ6に供給されるF1燃料の流量はF1燃料流量調節弁211によって調節され、F2燃料系統202を通じてバーナ6に供給されるF2燃料の流量はF2燃料流量調節弁212によって調節され、F3燃料系統203を通じてバーナ6に供給されるF3燃料の流量は燃料流量調節弁213によって調節され、F4燃料系統204を通じてバーナ6に供給されるF4燃料の流量は燃料流量調節弁214によって調節される。
【0038】
この燃料流量調節弁211〜214によって前記F1燃料〜F4燃料の燃料流量をそれぞれ調節して、ガスタービンプラント1000の発電量が制御される。
【0039】
次に、ガスタービン燃焼器2の詳細な構成について説明する。
【0040】
図2は、
図1に示した第1実施例のガスタービン燃焼器2に備えたバーナ6を構成する燃料ノズルの燃料噴孔とベースプレート及び旋回プレートとの配置状況の詳細を示す部分構造図である。
【0041】
本実施例のガスタービン燃焼器2に設置したバーナ6には、ガスタービン燃焼器2の燃料ヘッダ40に多数の燃料ノズル31が取り付けられており、多数の燃料ノズル31の1本1本に対応した多数の空気孔32を備えたベースプレート33と旋回プレート38が、サポート15を介して燃料ヘッダ40に取り付けられた構造となっている。
【0042】
また、前記バーナ6には、複数の空気孔32を形成したベースプレート33と、該ベースプレート33に固定され、旋回角を持たせた旋回空気孔となる複数の空気孔32を形成した旋回プレート38とが配設されており、このうち旋回プレート38は燃焼器ライナ10の内側に形成される燃焼室50に面して配設されている。
【0043】
そして前記ベースプレート33の各空気孔32と旋回プレート38の各空気孔32とは相互に連通するように配設されており、前記燃料ノズル31と前記ベースプレート33の各空気孔32は同軸に配設される。
【0044】
同軸に配設された一対の燃料ノズル31及び空気孔32は、ほぼ同心円状に配設されており、
図2の詳細図に示すように、中央に燃料噴流35、その周囲に空気噴流36の同軸噴流を多数形成する。
【0045】
同軸噴流構造によって、ベースプレート33に形成された空気孔32内では燃料と空気は未混合であるため、燃料の自発火は発生せず、ベースプレート33および旋回プレート38が溶損するようなことはないので、信頼性の高いガスタービン燃焼器2とすることができる。
【0046】
また、このような小さな同軸噴流を多数形成することにより、燃料と空気の界面が増加し混合が促進するため、ガスタービン燃焼器2の燃焼時にNOxの発生量を抑制することができる。
【0047】
また、ガスタービン燃焼器2のフロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を通ってこのガスタービン燃焼器2に供給された高圧空気101の一部は、前記バーナ6の燃料ノズルを構成するベースプレート33に形成した空気孔32に、
図2に示したような空気噴流36となって供給され、このベースプレート33の空気孔32を流下して該ベースプレート33に固定された旋回プレート38に形成された空気孔32によって旋回をかけられて燃焼室50に供給される。
【0048】
図3は本実施例のガスタービン燃焼器2に設置したベースプレート33と旋回プレート38とから成る空気孔プレートを燃焼器下流側から見た図である。本実施例のガスタービン燃焼器2において、多数の空気孔32(および、図示しないが空気孔と対を成す燃料ノズル31)は空気孔プレートの半径方向内周側から半径方向外周側にかけて環状の空気孔列が同心状に8列配置されている。
【0049】
前記ガスタービン燃焼器2の燃焼部を形成するバーナは、中心側の4列(第1列〜第4列)が第1群(F1)の燃焼部を形成するF1バーナ、第5列が第2群(F2)の燃焼部を形成するF2バーナ、その外側の2列(第6、7列)が第3群(F3)の燃焼部を形成するF3バーナ、最外周(第8列)が第4群(F4)の燃焼部を形成するF4バーナとそれぞれ群分けされており、
図1に示した様に、F1バーナ〜F4バーナのそれぞれの群ごとに、燃料流量調節弁211〜214をそれぞれ備えた燃料系統201〜204から供給される燃料を燃料ノズル31に供給する。
【0050】
このような燃料系統201〜204の群分け構造によって、ガスタービンの燃料流量変化に対し燃料供給する燃料ノズルの本数を段階的に変化させる燃料ステージングが可能となり、ガスタービン部分負荷運転時の燃焼安定性の確保と低NOx化が可能となる。
【0051】
さらにベースプレート33の空気孔32は直管とし、旋回プレート38の空気孔32は角度(
図3中のα°)を持った斜め穴に形成することで、この空気孔32を流下する空気流全体に旋回をかけ、生じる循環流によって火炎を安定化させている。この角度α°は各列において最適となる値に設定する。
【0052】
F2〜F4バーナに比べて、F1バーナは空気孔32と空気孔32の間の距離(孔間距離)を広くすることで、この間隙に火炎を付着させて火炎の安定性を強化している。一方で、F1バーナに比べて、F2バーナ〜F4バーナは孔間距離を小さくすることで、孔間への火炎付着を防止し、火炎面までの混合距離を延長させることで低NOx燃焼する。F1バーナの外周側に配設したF2バーナ〜F4バーナは、中央のF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化され、かつ低NOx燃焼することができる。
【0053】
本実施例では、
図3に示すように第4群(8列目)の一部に空気孔32の孔間距離が特に広い部分を設ける。この空気孔32を設置しない部分の上流側(図面の裏側)は、ベースプレート33を燃料ヘッダ40に固定するためのサポート15の取り付け部分とする。サポート15は、
図2に示すように平板を曲げ加工した形状とする。曲げ構造によって周方向の熱伸びを吸収することができるため、構造信頼性を高めることができる。複数の燃焼器からなるガスタービンにおいては、ガスタービン点火時に、点火栓で点火した燃焼器から燃焼ガスを隣接する燃焼器に輸送することで複数のガスタービン燃焼器を点火せしめるために、燃焼器の左右1つずつ火炎伝播管を設置することが一般的である。サポート15は、火炎伝播管の設置される位相と同位相とする。ただし、空気孔32が旋回を有する場合には、サポート15の位相を火炎伝播管の位相と合わせると、孔間距離の広い部分の位相と火炎伝播管の位相にはずれが生じる。すなわち、火炎伝播管と孔間距離が広い部分の軸方向位置が異なるため、孔間距離が広い部分に相応する空気の流れは、火炎伝播管位置より周方向に変化することが考えられる。そのため、空気孔32から噴出する空気の旋回流れを考慮し、孔間距離の広い部分と火炎伝播管の位相が合うように、サポート15の位相を調整する。以下では、便宜上火炎伝播管と同位相の位置にサポート15を示す。
【0054】
このサポート15によって、空気孔プレートを燃料ヘッダ40に固定するときの空気の流れを
図4に示す。
図4(a)は
図2のA−A′断面であり、サポート15の拡大図を
図4(b)に示す。バーナ6に供給する燃焼空気を全体に均一にし、燃焼器の圧力損失を低減するためには、サポート15のように流れの中に配設する構造物によって空気の流れを阻害しないことが一般的である。しかし、本実施例のサポート15は、バーナ外周側からバーナ中心に向かう燃焼空気の流れを図のように敢えて阻害する。このときの圧力を、図のようにサポート15の外周側でP0、サポート15が無い部分でP1、サポート15のバーナ中心側でP21とすると、P0>P1>P21となる。P1>P21の圧力差から、P1に比べてP21の位置では空気孔32に燃焼空気を供給しにくくなる。したがって、P21の位置で燃焼空気流量が減少するので、燃料流量は一定、もしくはP21が低い分差圧が大きくなって燃料流量が増加し、サポート15の下流に位置しないバーナと比較して相対的に燃空比は高くなる。
【0055】
サポート15によって燃焼空気量を低減して火炎伝播性能を良くするためには、サポート15の幅が火炎伝播管の内径以上であることが望ましい。
【0056】
ここで、再び
図3を用いて点火時を説明する。点火時には図に示すバーナのA、B、Cの部分に燃料を供給して点火する。このとき、それぞれの領域の燃料と空気の質量流量比(燃空比)を比較すると、B>Cである。すなわち、点火時にAの部分で相対的に高い温度の燃焼ガスを生じると、Cに比べて燃空比の高いBの部分を伝って燃焼ガスが外周方向に伝播する。外周方向に伝播した燃焼ガスは、空気孔を配しないDの部分を通過して燃焼ガスは火炎伝播管に流入する。空気孔を配しないことで、燃焼空気によって燃焼ガスが希釈されて燃焼ガス温度が低下して火炎伝播性能が低下することを防ぐことができる。
【0057】
前述のように、サポート15と火炎伝播管の位相は同位相とする必要がある。本実施例では、例えば燃焼器がガスタービン軸の周方向に10缶配されるガスタービンであるため、サポート15は周方向に5本とした。サポート15を等間隔の位相に複数配置するとき、サポート15の本数をNs、燃焼器缶数をNcとすると、以下となる。
Ns=n*(Nc/2) …(1)
nは1以上の整数である。
【0058】
また、本実施例ではサポート15を図の形状としたが、他に
図5(a)〜(c)の構造が考えられる。
【0059】
図5(a)は、
図4のサポート15の両端につばをつけた形状となっており、
図4の構造に比べてサポート15の強度が増加する。また、サポート15のバーナ中心側は周囲がつばで囲まれているため、サポート15の下流には
図4に比べて燃焼空気が供給されにくくなる。
図5(b)はサポート15をV字型とした形状となっており、
図4の構造に比べて流体損失を低減し、V字型の角度を調整することで空気孔32の孔間にサポート15を配置できる。
図5(c)は、サポート15の上流側に曲線部を設けているため、
図4のサポート15の構造に比べて流体損失が低減し、サポート15の強度が増加する。
【0060】
図6は本実施例のガスタービンプラント1000の燃焼器2の運用方法を示す図である。横軸が時間軸、縦軸が燃料流量である。ガスタービンの点火時は、F1〜F3(1列目から7列目)に燃料を供給して燃焼する。F4(8列目)には燃料を供給しない。F1〜F3で生じた燃焼ガスが、F4の燃料ノズルおよび空気孔32を配設しない部分を通過して火炎伝播管へと流入し、点火栓を設置しない燃焼器へと燃焼ガスを輸送することでガスタービン燃焼器の全缶が点火する。
【0061】
点火後は、F1単独燃焼へと切り替わり、タービン3の定格回転数無負荷状態(FSNL;Full Speed No Load)まで昇速する。定格回転数に昇速後発電を開始し、負荷を増加させていく。負荷の増加に応じて、ガスタービン燃焼器2のバーナ6の燃空比が安定燃焼範囲となるように、F1、F2、F3、F4と順々に燃料を供給する燃料系統を増加させる燃料を供給する。本実施例のガスタービン燃焼器2は、F1〜F4に燃料が供給された燃焼状態で定格回転数定格負荷(FSFL;Full Speed Full Load)となる。
【0062】
本実施例のガスタービン燃焼器2は、F1〜F4の全てに燃料が供給され燃焼している状態では、バーナ6の全体で燃焼するため火炎の上流側に加速損失が生じる。この加速損失によって、点火時に意図した本実施例のバーナ中心から火炎伝播管の間の部分のサポート15による燃焼空気量の低減効果は打ち消される。すなわち、P0>P21の圧力差に比して火炎の加速損失は大きいため、F1〜F4の全てに燃料が供給される状態では、P0>P21の圧力差による燃焼空気量の低減効果はほとんど無くなる。そのため、FSFLでは燃焼空気量の配分をバーナ6全体に均一化させることができて、前記特許文献1に開示された燃料と空気の複数の同軸噴流を同心円状に配置し、燃焼室に供給して燃焼させるガスタービン燃焼器と同等の低NOx燃焼とすることができる。
【0063】
したがって、本実施例によれば、複数の燃焼器を有するガスタービンにおいて、点火時は適した燃料流量で燃焼器の全缶に点火し、定格時には低NOx燃焼と安定燃焼を両立することができる。
【0064】
(2)第2の実施の形態
次に本発明の第2実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器及びその運用方法について
図7を用いて説明する。
【0065】
本実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器は
図1〜
図6に示した本発明の第1実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
【0066】
図7(a)は、本発明の第1実施例の
図2のA−A′断面と同じ断面を本実施例について切り出した図である。本実施例では、図のように2つの多孔板16を燃焼空気の流れに並行するように配設する。
【0067】
図7(b)に火炎伝播管と同じ位相に配設されたサポート15の周りの燃焼空気の流れの模式図を示す。燃焼空気の基本的な流れは本発明の第1実施例に同じであるが、多孔板16によって燃焼空気の流れが阻害されるので、サポート15の下流には、第1実施例に比べて燃焼空気が供給されにくくなる。すなわち、圧力は第1実施例のP21と同じ位置のP22について、P21>P22となるため、バーナ中心から火炎伝播管の間のバーナに供給する燃焼空気量は第1実施例に比べて低減し、燃空比をさらに高めることができる。本実施例は、第1実施例の燃焼空気低減効果に対して、さらに燃焼空気量を低減したい場合に有効である。
【0068】
したがって、本実施例によれば、複数の燃焼器を有するガスタービンにおいて、点火時は適した燃料流量で燃焼器の全缶に点火できる。また、定格時には本発明の第1実施例と同じく火炎の上流側に生じる加速損失によって、サポート15及び多孔板16による局所的な燃焼空気の低減効果がほとんど無くなる。そのため、定格時は低NOx燃焼と安定燃焼を両立することができる。
【0069】
(3)第3の実施の形態
次に本発明の第3実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器及びその運用方法について
図8を用いて説明する。
【0070】
本実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器は
図1〜
図6に示した本発明の第1実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
【0071】
図8は本実施例のガスタービン燃焼器2に設置した空気孔プレートを燃焼器下流側から見た図である。本実施例のガスタービン燃焼器2において、多数の空気孔32(および、図示しないが空気孔32と対を成す燃料ノズル31)は空気孔プレートの半径方向内周側から半径方向外周側にかけて環状の空気孔列が同心状に8列配置されている。本実施例は、5〜7列目の火炎伝播管に近い部分の空気孔径が、他に比べて小さい点が第1実施例と異なる。空気孔径を小さくすることで、この部分に供給する燃焼空気量を低減できるため、本実施例は第1実施例に対して、さらに燃焼空気量を低減して火炎伝播性能を向上させたい場合に有効である。
【0072】
したがって、本実施例によれば、複数の燃焼器を有するガスタービンにおいて、点火時は適した燃料流量で燃焼器の全缶に点火し、定格時には低NOx燃焼と安定燃焼を両立することができる。
【0073】
(4)第4の実施の形態
次に本発明の第4実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器及びその運用方法について
図9を用いて説明する。
【0074】
本実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器は
図1〜
図6に示した本発明の第1実施例のガスタービンに設置されるガスタービン燃焼器と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
【0075】
図9は、本発明の第1実施例の
図2のA−A′断面と同じ断面を本実施例について切り出した図である。サポート15に多数の孔を設置して多孔板サポート17とする。
【0076】
図9の下に火炎伝播管と同じ位相に配設された多孔板サポート17の周りの燃焼空気の流れの模式図を示す。燃焼空気の基本的な流れは本発明の第1実施例に同じであるが、第1実施例に比べて燃焼空気が供給されやすくなる。すなわち、圧力は第1実施例のP21と同じ位置のP23について、P21<P23となるため、バーナ中心から火炎伝播管の間のバーナに供給する燃焼空気量は第1実施例に比べて増加し、サポートによる燃空比の高まりを抑えることができる。本実施例は、第1実施例の燃焼空気低減効果を抑えたい場合に有効である。また、サポートによる圧力損失を第1実施例に比べて低減できるため、ガスタービンの効率向上にも有効である。
【0077】
したがって、本実施例によれば、複数の燃焼器を有するガスタービンにおいて、点火時は適した燃料流量で燃焼器の全缶に点火し、定格時には低NOx燃焼と安定燃焼を両立することができる。
【0078】
なお、以上に説明した各実施例では、サポート等が配設される位相を火炎伝播管の位相と同位相とした場合を例に挙げているが、これらの位相は火炎伝播管の位相と必ずしも完全な同位相としなければならないわけではなく、サポートの幅や空気孔に設けられた旋回角等に応じて、適宜調整しても良い。即ち、サポートと火炎伝播管の位相は、上記の各実施例で説明した効果が得られる範囲で、大よそ同位相となっていれば良い。