(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが配置され、燃焼圧によって該ヒータに生じる変位に基づいてその燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
前記ハウジングの先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面と、前記ヒータの外周面との間に先端側環状空隙を有しており、この先端側環状空隙、又は該先端側環状空隙の後方に連なる環状の空間を、先後において気密状に遮断する配置で、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたシール部材が設けられ、しかも、該シール部材は、前記ヒータの外周面側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部を有していると共に、該筒状部が前記ヒータの外周面に密着状にされて固定されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記シール部材の該筒状部の先端側であって、前記ヒータの外周面のうち、前記先端側環状空隙を挟む前記ハウジングの前記先端部位の内周面に対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部が、該内周面との間に隙間を保持すると共に、凸部自身の先端を前記ハウジングの先端より先方に位置させて形成されており、しかも、該凸部をその最外周部が、前記シール部材における前記筒状部の先端の外周部より半径方向外側に位置するように形成したことを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが配置され、燃焼圧によって該ヒータに生じる変位に基づいてその燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
前記ハウジングの先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面と、前記ヒータの外周面との間に先端側環状空隙を有しており、この先端側環状空隙より後方の前記ハウジングの先端寄り部位の内周面が、前記先端部位の内周面より拡径された拡径環状内周面をなし、この拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間における拡径環状空間に、該拡径環状空間を先後において気密状に遮断する配置で、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたシール部材が設けられ、しかも、該シール部材は、前記ヒータの外周面側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部を有していると共に、該筒状部が前記ヒータの外周面に密着状にされて固定されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記シール部材の該筒状部の先端側であって、前記ヒータの外周面のうち、前記先端側環状空隙を挟む前記ハウジングの前記先端部位の内周面に対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部が、該内周面との間に隙間を保持すると共に、凸部自身の先端を前記ハウジングの先端より先方に位置させて形成されており、しかも、該凸部をその最外周部が、前記シール部材における前記筒状部の先端の外周部より半径方向外側に位置するように形成したことを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
前記凸部が、前記ヒータに外嵌めされて固定されている筒状体又は環状体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)としては各種のものが知られている(例えば、特許文献1)。
図9は、これと同種のグロープラグ901の断面構造を簡略化して示した破断縦断面図である。同図のものは、筒状をなすハウジング110内に、通電することによって発熱する棒状(円軸状)のヒータ(例えば、シースヒータ、又はセラミックヒータ)10を、自身の先端(燃焼室内に突出する側の端。図示下端)10aが、そのハウジング110の先端136から突出するようにして備えている。なお、
図9、
図10中の「2点鎖線」は、エンジンヘッドにおける燃焼室Nの近傍部分を示す。
【0003】
このようなグロープラグ901では、燃焼圧によってヒータ10やそれに固定されて後方に延びる中軸(軸部材)等に生じる変位や、中軸等が変位した結果としてセンサへ及ばされる圧力に基づいて燃焼圧を検知するため、ヒータ10は、ハウジング110内において、その先後方向(軸G方向)に微小ではあるが変位可能に配置されている。このため、ヒータ10は、ハウジング110の内周面との間に空隙(環状空隙)を保持して配置されており、このヒータ10の後方には、ヒータ10等に生じる変位を検出する検知手段として、例えば圧電素子40が配置されている。これは、燃焼圧によってヒータ10が後方に押されて変位しようとする力で圧電素子40を圧縮し、その圧縮力の変化に応じて発生する電気信号を測定することで、燃焼圧を検出するよう構成されている。なお、特許文献1では、歪ゲージをその検知手段としており、ヒータの変位によって歪部材を変形させることで、それに取り付けられているセンサ(歪センサ)にて、その変形量に基づいて燃焼圧を検出するように構成されている。
【0004】
ところで、この燃焼圧検知センサ付きグロープラグ901では、高温、高圧の燃焼ガスが、ハウジング110の先端136から、その内周面とヒータ10の外周面との間の環状空隙を通ってハウジング110内の後方に入り込むのを防止する(シールを確保する)必要がある。このため、同図のグロープラグ901では、同図中の拡大図、及び
図10に示したように、ハウジング110の先端部位131の内周面と、ヒータ10の外周面との間に設けられた先端側環状空隙K1の後方の相対的に広い拡径環状空間K2内において、この拡径環状空間K2を先後において気密状に遮断する配置でシール部材60が設けられている。
【0005】
このシール部材60は、ハウジング110に対するヒータ10の軸G方向の変位を許容する必要があるため、ベローズやダイアフラムのようにそれ自体が先後方向(軸G方向)に変形できる金属薄膜(例えば、SUS630製の薄膜)など、十分な可撓性のある環状膜部(メンブレン)63を有する耐熱材からなるものから変形可能に形成されている。同図のシール部材60は、先端側の筒状部をなす小径筒部65と後端側の大径筒部61との間に、拡径環状空間K2を先後を仕切るように環状膜部63を有しており、この拡径環状空間K2内において、その小径筒部65が所定位置(黒塗り三角部)W1でヒータ10の外周面に沿って密着されて溶接(レーザ溶接)されている。そして、その大径筒部61がその後端側の所定位置(黒塗り三角部)W2、W3で、周方向に沿ってハウジング110側に溶接等により固定され、これによってハウジング110の先端寄り部位の内周面とヒータ10の外周面との間における先後方向のシールが確保されている。
【0006】
上記した構造のグロープラグ901は、エンジンヘッドのプラグホールにねじ込まれて、ヒータ10の先端10aが燃焼室内に露出するようにして取り付けられる。これにより、燃焼ガスは、露出しているヒータ10の全体を加圧するとともに、ハウジング110の先端部位131の内周面とヒータ10の外周面との間の先端側環状空隙K1を介して拡径環状空間K2内に侵入してその中のシール部材60の先端向き面(主とし環状膜部63)を加圧する。したがって、ヒータ10が後方に押されるように変位するのは、ヒータ自身の先端10aに受ける燃焼圧に加えて、拡径環状空間K2内に設けられているシール部材60の先端向き面が受ける燃焼圧(以下、圧力ともいう)によるこのシール部材60を後方に向けて変形させようとする作用に基づくものといえる。
【0007】
すなわち、上記した構造のグロープラグ901においては、シール部材60自体が後方に向けて変形する作用も、ヒータ10を後方へ変位させ、或いは圧電素子40を圧縮するのに寄与しており、この作用をも前提として、燃焼圧の検知がなされるように設定されている。すなわち、このグロープラグにおいては、ヒータ自体と共にシール部材60が受圧する燃焼圧にてヒータ10を後方へ変位させるものであるため、シール部材60が受ける燃焼ガスの圧力も燃焼圧の検知精度に大きく影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、エンジンの燃焼ガスにはススが含まれている。このため、上記構造のグロープラグ901においては、ハウジング110の先端部位131の内周面と、ヒータ10の外周面との間の先端側環状空隙K1を通過して、その奥のシール部材60が配置されている空間K2にススが入り込む。そして、
図10−Aに示したように、このススSは、その奥の各部の面に付着し、堆積する。他方、ハウジング110の先端部位131の内周面と、ヒータ10の外周面との間の環状空隙(先端側環状空隙)K1におけるその半径方向片側の空隙寸法は、0.25〜0.30mm程度と微小である。このため、そのススの付着、堆積が進行すると、
図10−Bに示したように、先端側環状空隙K1に対面するハウジングの先端部位131の内周面と、ヒータ10の外周面にもススSが付着、堆積し、やがてこの狭小な先端側環状空隙K1がスス詰まり状態(封止状態)となる。
【0010】
すなわち、従来の燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいては、このようなスス詰まり状態になると、奥のメンブレン等のシール部材60の先端向き面には燃焼ガスが届かない。このため、燃焼ガスのうち、ヒータ10を後方に押そうとする力は、その殆どがヒータ10の先端10aにかかる圧力成分となり、したがって、結果として燃焼圧の検知精度(感度)を低下させる。しかも、ハウジング110の先端部位131の内周面とヒータ10の外周面との間の先端側環状空隙K1においてスス詰まりを形成するススSは、この両者間に摩擦抵抗を発生させるだけでなく、この両者を接着するように作用するから、ヒータ10を保持する形となってしまう。このようにスス詰まりは、単に、燃焼圧の受圧面積(シール部材の先端向き面の面積)を減らすだけでなく、ヒータ10の後方への自由な変位を阻害することから、上記グロープラグにおいては、スス詰まりに起因して、圧力の検知精度(感度)が低下するという問題があった。なお、スス詰まりが生じた場合には、そのススを介してシール部材60に圧力が及ぶようにも考えられるが、堆積したススSはゴム状の弾性を有するため、圧力を緩和吸収してしまうクッション作用をなすことから、シール部材60には圧力が殆ど及ばない。
【0011】
本発明は、上記した燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおけるこうした問題点を解消するためになされたもので、ハウジングの先端部位の内周面とヒータの外周面との間の先端側環状空隙にスス詰まりが発生して、メンブレン等のシール部材に燃焼圧が作用しなくなり、その結果として燃焼圧の検知精度が低下する、ということを防止することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが配置され、燃焼圧によって該ヒータに生じる変位に基づいてその燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
前記ハウジングの先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面と、前記ヒータの外周面との間に先端側環状空隙を有しており、この先端側環状空隙、又は該先端側環状空隙の後方に連なる環状の空間を、先後において気密状に遮断する配置で、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたシール部材が設けられ、しかも、該シール部材は、前記ヒータの外周面側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部を有していると共に、該筒状部が前記ヒータの外周面に密着状にされて固定されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記シール部材の該筒状部の先端側であって、前記ヒータの外周面のうち、前記先端側環状空隙を挟む前記ハウジングの前記先端部位の内周面に対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部が、該内周面との間に隙間を保持すると共に、凸部自身の先端を前記ハウジングの先端より先方に位置させて形成されており、しかも、該凸部をその最外周部が、前記シール部材における前記筒状部の先端の外周部より半径方向外側に位置するように形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが配置され、燃焼圧によって該ヒータに生じる変位に基づいてその燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きグロープラグであって、
前記ハウジングの先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面と、前記ヒータの外周面との間に先端側環状空隙を有しており、この先端側環状空隙より後方の前記ハウジングの先端寄り部位の内周面が、前記先端部位の内周面より拡径された拡径環状内周面をなし、この拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間における拡径環状空間に、該拡径環状空間を先後において気密状に遮断する配置で、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたシール部材が設けられ、しかも、該シール部材は、前記ヒータの外周面側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部を有していると共に、該筒状部が前記ヒータの外周面に密着状にされて固定されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記シール部材の該筒状部の先端側であって、前記ヒータの外周面のうち、前記先端側環状空隙を挟む前記ハウジングの前記先端部位の内周面に対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部が、該内周面との間に隙間を保持すると共に、凸部自身の先端を前記ハウジングの先端より先方に位置させて形成されており、しかも、該凸部をその最外周部が、前記シール部材における前記筒状部の先端の外周部より半径方向外側に位置するように形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記凸部は、その先端における外周面に、半径方向外向きに突出する突出部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
請求項4に記載の発明は、前記凸部が、前記ヒータに外嵌めされて固定されている筒状体又は環状体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
【発明の効果】
【0015】
従来の燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいては、エンジンの燃焼過程で発生するススが、前記先端側環状空隙内においてヒータの外周面等に付着、堆積してスス詰まりを起こすと、その奥のシール部材の先端向き面には、燃焼圧が直接及ぶことが妨げられる。このため、ヒータを後方へ押す圧力、ないし、変位させる力が、スス詰まりがなく、シール部材に同ガス圧が直接及ぶ場合に比べると低下するから、燃焼圧の検知精度が低下する。
【0016】
これに対して、本願発明では、ヒータの外周面のうち、前記ハウジングの前記先端部位の内周面に対面する部位に上記したように凸部を設けている。このため、先端側環状空隙にスス詰まりが生じたとしても、そこに設けられている凸部の先端向き面(先端面及び先端向き端面)がススに埋もれることなく露出している状態においては、燃焼ガスがヒータを後方へ押す力は、ヒータの先端面と共にこの凸部の先端向き面にも作用する。このため、本発明では、スス詰まりが生じた場合のヒータを後方へ押す圧力、ないし変位させる力の低下があるとしても、燃焼圧が凸部の先端向き面に作用させることができる分、その力の低下を補填できるので、燃焼圧の検知精度の低下を低減、ないし遅らせることができる。
【0017】
また、本願発明のように、前記凸部の先端を前記ハウジングの先端より先方に位置させたものでは、スス詰まりが、上記先端側環状空隙のうち、ハウジングの先端まで及んだとしても、凸部の先端(先端向き面)はススに埋没しない。一方、スス詰まりは、ハウジングの先端まで進行すると、それ以上は殆ど進行しない。このため、このようなスス詰まり状態においても、その凸部の先端向き面にて燃焼圧を受けることができるため、凸部をハウジングの先端より先方に位置させることで、燃焼圧の検知精度の低下の低減をできるとともに、その状態を長く保持できる。この意味から、凸部の先端はハウジングの先端よりも、できるだけ先方に位置させるのが好ましい。なお、凸部の後端は、前記ハウジングの先端部位における前記先端側環状空隙の後端より後方に位置させるのが好ましいが、先端側環状空隙内に位置していてもよい。
【0018】
ところで、前記シール部材が、前記ヒータの外周面側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部を有していると共に、該筒状部が前記ヒータの外周面に密着状にされて固定されている場合、その筒状部の先端が前記先端側環状空隙の部位まで及んでいるとき、その筒状部の先端が、本発明における前記凸部と同様の働きをする。しかし、シール部材をなす板材、或いは上記筒状部の肉厚は、0.15〜0.30mm程度しかつけられない。シール部材としての変形容易性の確保等に基づくためであるが、この程度の肉厚の筒状部では、その先端における燃焼ガスの受圧面積を十分に確保することはできない。したがって、本願発明のように、前記凸部の最外周部を、前記シール部材における前記筒状部の先端の外周部より半径方向外側に位置させることで、燃焼ガスの受圧面積を確保することができる。
【0019】
本発明において前記凸部は、前記ヒータの外周面において、その周方向の全体において(周方向に)連続して存在するリング状をなしているものとするのが、凸部の先端向き面の面積(受圧面積)を大きく確保できるから好ましい。しかし、例えば、歯車の歯のように不連続に複数設けることでも、その凸部がある分、これがない従来のものに比べると、燃焼圧の受圧面積を大きく確保できるので、スス詰まり状態においても、センサの検知精度を高められる。
【0020】
本発明において、前記シール部材は、前記ハウジングの先端部位の内周面と前記ヒータの外周面との間に形成された先端側環状空隙を、又は該先端側環状空隙の後方に連なる環状の空間を、先後において気密状に遮断するように設けられていればよい。このため、本発明では、前記ハウジングの先端部位の内周面は、先後間において(先端から後端に向けて)ストレート(同一の内径)でもよい。しかし、請求項2に記載のように、この先端側環状空隙より後方の前記ハウジングの先端寄り部位の内周面が、前記先端部位の内周面より拡径された拡径環状内周面をなし、この拡径環状内周面と前記ヒータの外周面との間における拡径環状空間に、該拡径環状空間を先後において気密状に遮断する配置で、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたシール部材が設けられてなるものとするのが好ましい。これにより、高温の燃焼ガスがシール部材を直撃する割合を低減することができるためである。このような燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、先端側環状空隙の隙間寸法(ヒータの外周面とハウジングの先端部位の内周面との片側の隙間)は、ヒータの先後動(軸方向の変位)における支障を招かないようにするため、衝撃等によるヒータの振れ動きを考慮すると、ヒータの外周面とハウジングの先端部位の内周面との隙間は0.25mm以上必要で、グロープラグの構成上、0.30mm程度が上限である。このため、先端側環状空隙内のみで凸部の半径方向外向き寸法を大きく確保し、凸部の先端面の受圧面積を大きくすることは難しい。これに対し、本発明のように凸部の先端をハウジングの先端より先方に位置させることで、こうした制約はなくなるから、凸部の半径方向外向き寸法を大きく確保できる。
【0021】
すなわち、請求項3に記載の発明のように、凸部の先端における外周面に、半径方向外向きに突出する突出部を形成することで、凸部の先端面における燃焼ガスの受圧面積を大きく確保できる。なお、請求項3に記載の発明においては、凸部を全周に設け、その突出部も全周にある環状フランジをなすものとするのが好ましい。
【0022】
また、凸部は、ヒータの外周面をなす金属パイプの外周面を周方向において部分的に、或いは周方向において全体に、隆起するように形成してもよいが、請求項4に記載の発明のように、ヒータに外嵌めされて固定されている筒状体又は環状体からなることで形成するのが好ましい。このような構成とする場合には、そのような筒状体又は環状体をヒータに外嵌して溶接することで、その形成ができるため、その形成が容易となるためである。なお、メタルグロープラグにおいて、ヒータの外周面とは、ヒータを構成するシースパイプの外周面を意味する。また、セラミックグロープラグにおいて、ヒータの外周面とは、セラミックヒータの外周面に直接凸部が形成されるものでは、セラミックヒータの外周面を意味し、セラミックヒータに金属製のパイプが外嵌めされ、そのパイプに凸部が形成されるものでは、そのパイプの外周面を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を具体化した実施形態例(第1実施形態例)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグについて、
図1〜
図4に基づいて詳細に説明する。本例のグロープラグ101は、概略円筒状のハウジング110と、その内側において先端(図示、下方端)10aを、ハウジング110の先端136から突出させてなるシースヒータ10と、さらには、このシースヒータ10の後端側に配置された圧電素子40等を主体として構成されている。この点で、従来の燃焼圧検知センサ付きグロープラグと基本的構成は同じである。一方、本例のグロープラグは、
図2、
図3等に示したように、ヒータ10の外周面10bのうち、ハウジング110の先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面137bと、ヒータ10の外周面10bとの間の先端側環状空隙K1を挟む、その内周面137bに対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部70を、その内周面137bとの間に隙間を保持して形成したことに特徴を有するものであるが、以下、このグロープラグ101の全体構成を含め、詳細に説明する。なお、詳細は後述するが、本例では、ハウジング110は、ハウジング本体111と、その先端に配置されている先端側ハウジング131等から構成されている。
【0025】
すなわち、本例において、ハウジング110は、概略円筒状のハウジング本体111と、その内部に内挿され、シースヒータ10の後端において圧電素子40を支持するように、このハウジング本体111内に内挿、配置された圧電素子支持用内部ハウジング121と、ハウジング本体111の先端側に位置してハウジングの先端部位及び先端寄り部位を構成する先端側ハウジング131との3部品から構成されている(
図1参照)。このうち、ハウジング本体111は、後端寄り部位の外周面に、ねじ込み用多角形部113を備えていると共に、その先端側の外周面には、シリンダヘッドへのねじ込み用のネジ115を備えており、このネジ115より先端側は、そのネジ115の谷の径より若干小径をなす円筒管部117を備えている。そして、圧電素子支持用内部ハウジング121は、この円筒管部117の先端寄り部位の内周面に、内挿、配置されている。
【0026】
この素子支持用内部ハウジング121は、先端側の外周面において突出形成されたフランジ123を備えている。このフランジ123は、外径がハウジング本体111の円筒管部117の外径と同じとされ、
図1の拡大図、及び
図2に示されるように、このフランジ123における後端向き面124を、ハウジング本体111の先端118に当接させて、例えば、溶接で固定されている。一方、
図1の拡大図に示されるように、この素子支持用内部ハウジング121の後端125には、中央が開口する円環状底板126を有する円筒状キャップ127が、その筒状部128の先端を介して溶接されている。そして、この円筒状キャップ127内には、その円環状底板126に当接する配置で、円環状をなし、両端面に電極板43,44を介して絶縁板47が配置された圧電素子40が配置されている。なお、各電極板43,44からは、後方へ配線(図示なし)が引き出されている。
【0027】
一方、シースヒータ10は、先端10aが凸となす半球面状とされ、後方に延びる円管からなるシースパイプ11と、その内部の先端に接続されて、後方に延びる形で配置された発熱コイル21と、この発熱コイル21の後端にシースパイプ11内で接続されて後方に延びる通電用軸部材(円軸部材)25等から構成されている。本例では、このシースパイプ11の後端から通電用軸部材25を突出させており、シースパイプ11の後端寄り部位には、シースパイプ11の後端を閉塞状にするシースパイプ外装管31が外嵌されている(
図1参照)。ただし、シースヒータ10は、全体としてみると、棒状をなしており、シースパイプ11の先端寄りの半分程度が、ハウジング110の先端136から突出するよう設定されている。また、
図1の拡大図に示したように、このシースパイプ外装管31の後端は、通電用軸部材25を突出させるように縮径された円形の後端底部33を有しており、この後端底部33の後端向き面には、円筒部35が突出状に形成されている。なお、本実施例では、このシースパイプ外装管31は、その先端が、素子支持用内部ハウジング121の先端と略同位置か、若干それより先端側に位置するように保持されていると共に、外径が小さい薄肉部37とされている。そして、例えば、このシースパイプ外装管31は、周方向に沿ってシースパイプ11の外周面に溶接されて固定されている。
【0028】
他方、この通電用軸部材25は、このシースパイプ外装管31の後端の円筒部35内、及びその後方に配置された次記する押圧体50の内側、さらには、上記した圧電素子40、円筒状キャップ127の円環状底板126の各内側(貫通孔)を貫通するようにして、ハウジング110内においてその軸Gに沿って後方に延びている。そして、通電用軸部材25の後端は、ハウジング本体111の後端において、図示しない絶縁材等にて絶縁が保持されて固定されており、外部に突出されている。なお、シースパイプ11内部には、図示はしないが絶縁粉末が充填され、その後端がゴム等で封止されている。
【0029】
前記したシースヒータ10に外嵌されたシースパイプ外装管31の後端部における円筒部35と、上記した圧電素子40の先端に配置された電極板43、絶縁板47との間には、この絶縁板47と略同径の円環板部51と、これから同心で先方に延びる小円環部53を有する押圧体50が配置されている。この押圧体50の小円環部53は、シースパイプ外装管31の後端部における円筒部35に同軸状に固定されている。しかして、シースヒータ10は、自身の先端10aを上記したように筒状をなすハウジング110の先端136から突出させ、素子支持用内部ハウジング121内で、その内周面に対し隙間を保持した状態で配置されており、後方に押された際には、素子支持用内部ハウジング121の後端125側に上記したように配置されている圧電素子40を押圧体50を介して押圧するように構成されている。
【0030】
一方、本例では、この素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面(環状面)122には、次記するシール部材60を介して、ハウジング110の先端部位及び先端寄り部位をなす先端側ハウジング(以下、単に先端側ハウジング、又は単にハウジングともいう)131が同軸状に突き合わされ、溶接で固定されている。すなわち、素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面(環状面)122には、このフランジ123の外径と同外径の円筒部133と、その先端側に外周面が先細りテーパ面を有するテーパ筒部135とを有する先端側ハウジング131が、シール部材60を介して、溶接で固定されている。
【0031】
シール部材60については次に詳述するが、この先端側ハウジング131をなすテーパ筒部135の先端136、すなわち、ハウジング110の先端136から後方に向けての所定範囲の先端部位137は、その内周面137bが同一直径からなる円筒面に形成されている。そして、その内周面137bの直径D1は、ヒータ10の外周面10bとの間に、先後において一定の隙間からなる先端側環状空隙K1をなすように形成されている。一方、円筒面をなす内周面137b(先端部位137の内周面137b)の後方であり、ハウジング110の先端寄り部位(先端側ハウジング131の円筒部133に対応する部位)の内周面は、先端側環状空隙K1をなす先端部位137の内周面137bの内径D1より拡径され拡径環状内周面132をなしている。そして、この拡径環状内周面132とヒータ10の外周面10bとの間の環状の空間が拡径環状空間K2をなしている。
【0032】
本例においてシール部材60は、後端側が、拡径環状空間K2内に納まる寸法で、相対的に大径の大径円筒部61をなし、先端側が小径の筒状部(小径円筒部)65をなし、この両円筒部61、65の間が、先後方向にダイヤフラムのように変形容易な金属薄膜(メンブレン)からなる軸Gに垂直な環状膜部63で連結され、ヒータ10の先後動変位を許容するように変形可能に形成されている。そして、大径円筒部61の後端において、外方に円環状に突出し、外径が先端側ハウジング131の円筒部133の外径と同じとされた固定用フランジ62を備えている。一方、小径円筒部65はヒータ10の外周面10bに外嵌状をなす寸法とされている。
【0033】
しかして、このシール部材60は、その大径円筒部61の外側の固定用フランジ62を、素子支持用内部ハウジング121のフランジ123の先端向き面122と、先端側ハウジング131の円筒部133との間に挟ませる形で、それぞれの間において周方向に沿って外周面側から溶接されている。そして、小径円筒部65とヒータ10の外周面10bとの間も、所定位置において周方向に沿って溶接されている。このようにしてシール部材60により、拡径環状空間K2は先後において気密状に遮断されている。これにより、燃焼ガスが、先端側ハウジング131の先端136から、先端部位137の内周面137bとヒータ10の外周面10bとの間の先端側環状空隙K1を通って、その後方の拡径環状空間K2内に入り込むとしても、シール部材60にてそれより後方に入り込むのが防止されている。
【0034】
一方、ヒータ10の外周面10bのうちのハウジング110の先端部位137の内周面137bと対面する部位には、半径方向外向きに突出する凸部70が、このハウジング110の先端部位137の内周面137bとの間に、径方向において一定の隙間を保持して形成されている。ただし、本例では凸部70がヒータ10の外周面10bに、その周方向に連なるよう形成されている。具体的には、凸部70は、ヒータ10に外嵌されて溶接により固定された円筒管から形成されており、したがって、その外周面71とハウジング110の先端部位137の内周面137bとの間に隙間(環状空隙)が形成されている。また、この凸部70はその先端72がハウジング110の先端136より、先方に位置するようにして固定されており、凸部70の後端73は、先端側環状空隙K1、すなわち、先端側ハウジング131の先端部位137の内周面137bの後端138より後方に位置されている。
【0035】
これにより、本形態のグロープラグ101においては、エンジンヘッドのプラグホールにねじ込まれて、ヒータ10の先端10aを燃焼室N内に露出するように取り付けられ、燃焼ガスに曝される部位が同ガスの圧力を受け、ヒータ10の先端10aを後方に押圧する。同時に同ガスは、ハウジング110の先端部位137の内周面137bとヒータ10の外周面10bとの間の先端側環状空隙K1を介して(通過して)拡径環状空間K2内に入り込む形となり、その中のシール部材60の環状膜部63等の先端向き面を、
図3中に矢印で示したように加圧する。そして、これらの圧力により、ヒータ10は後方に押されるように変位し、シール部材60もその変位に追随するように変形する。これにより、そのヒータ10の変位に基づく押圧力で圧電素子40が圧縮され、その圧縮に基づき燃焼圧が検知される。すなわち、燃焼圧によってこのヒータ10はその先端10aから後方に押されると共に、シール部材60も同様に後方に押され、この両者の力により、ヒータ10は軸G方向(後方)に圧縮される。そして、これらの圧縮力により、圧電素子40はシースパイプ外装管31の後端部の円筒部35に固定された押圧体50の円環板部51と、素子支持用内部ハウジング121の後端に固定された円筒状キャップ127の円環状底板126との間で圧縮される。かくして、この圧縮力に基づいて発生する電圧信号を、各電極板43,44から後方へ配線(図示せず)を介して出力することで、燃焼圧が検知される。
【0036】
このような本例の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ101においては、エンジンの燃焼過程で発生するススSが、
図4に示したように、先端側環状空隙K1内においてヒータ10の外周面10b等に付着、堆積してスス詰まりを起こすようになると、その奥のシール部材60の先端向き面には直接、燃焼圧は及ばない。しかし、本例では、ヒータ10の外周面10bのうち、先端側環状空隙K1において凸部70を設けている。このため、その凸部70の先端72の面がススに埋もれることなく露出している状態においては、燃焼圧は、ヒータ10の先端10aと共に、この凸部70の先端72の面にも、
図4中に矢印で示したように作用する。
【0037】
本例では、凸部70を、ヒータ10の外周面10bに沿って連続するリング状(環状)に設けているため、スス詰まりが全く生じていない場合(
図3参照)に比べればヒータ10を後方へ変位させる力の低下はあるが、
図4に示したようなスス詰まりがあっても、燃焼圧を凸部70の先端72において後方に向けて作用させることができる。すなわち、
図4に示したようなスス詰まりがあっても、燃焼圧を、ヒータ10の先端10aのみでなく、凸部70の先端72の面にも付与できるため、凸部70を設けない場合に比べると、付与できるガス圧の低下を補填できる。したがって、その分、燃焼圧の検知精度の低下を低減ないし遅らせることができる。しかも、凸部70はその先端72をハウジング110の先端136より先方に位置させて形成されているため、スス詰まりが、先端側環状空隙K1のうち、ハウジング110の先端136まで及んだとしても、凸部70の先端(先端向き面)72はススに埋没しないから、以後は、燃焼圧の検知精度の低下を殆ど招かない。
【0038】
なお、本例では凸部70の後端73を、ハウジング110の先端部位137の内周面137b(先端側環状空隙K1)における後端138より後方に位置させている。このため、スス詰まりがこの凸部70の後端73より先端側に位置する段階が、凸部70の後端73を、ハウジング110の先端部位137の内周面137b(先端側環状空隙K1)における後端138より先方に位置させているときより早期のスス詰まり状態で、凸部70の先端72におけるガスの受圧作用が得られる。というのは、凸部70の後端73は、
図5に示した変形例のように、ハウジング110の先端部位137の内周面137b(先端側環状空隙K1)における後端138より先方に位置させることもできる。しかし、このようにすると、
図5に示したように、ススSがシール部材60の先端向き面と、凸部70の後端73との間まで詰まった状態にあるときは、凸部70の後端73に、矢印で示したように逆向きにかかる燃焼圧により、先後方向の圧力を相互に打ち消しあうと考えられる。したがって、凸部70の先端72によるガスの受圧作用は小さいものとなる。しかし、上記例のように凸部70の後端73を、先端側環状空隙K1の後端138より後方に位置させることで、このような状態を早期に解消できる。
【0039】
なお、上記形態においては、シール部材60のうち、ヒータ10の外周面10b側の内周端縁部が、折り曲げられて先方に延びる筒状部をなす小径円筒部65を有している。そして、その小径円筒部65がヒータ10の外周面10bに密着状にされて固定されている。したがって、その小径円筒部65を先端側環状空隙K1の部位(先端部位137の内周面137bの部位)まで延ばしておくと、その小径円筒部65の先端は、本発明における凸部70と同様の働きをするともいえる。しかし、シール部材60は、その変形容易性の確保等のため、その肉厚は、0.15〜0.30mm程度が限界である。小径円筒部65の肉厚がこのように薄いと、その先端における燃焼ガスの受圧面積を十分に確保することはできない。
【0040】
これに対して、本例では、
図3に示したように、凸部70はその最外周部(外周面71)が、シール部材60における筒状部である小径円筒部65の外周部(外周面)よりも半径方向外側に位置するように形成されている。すなわち、凸部70は、その先端72において、燃焼ガスの受圧面積を、小径円筒部65の先端に比べて大きく確保したものとなっているため、凸部70の先端72にてより効率的に燃焼圧を受けることができる。なお、このような構成は、シースパイプ11のうち、シール部材60における筒状部である小径円筒部65、及び凸部70をなす円筒管が外嵌される部位の外径が先後において同径の場合には、シール部材60における小径円筒部65の板厚よりも、凸部70をなす円筒管の肉厚寸法T2を厚いものを用いることで容易に得られる。
【0041】
なお、凸部70のヒータ10の外周面10bからの半径方向外向きに突出する高さ寸法T2は、シール部材60における小径円筒部65の板厚より、十分に大きくしておくのが好ましい(
図3参照)。このため、本例のように凸部70を円筒管で形成する場合には、その肉厚(寸法T2)が厚いものを用いるのがよい。また、上記例では、先端側環状空隙K1の後方の空間として、内周面を拡径して拡径環状内周面132として、先端側環状空隙K1より半径方向の寸法(空隙幅)が大きい拡径環状空間K2を設け、ここにシール部材60を配置している。すなわち、相対的に先端側環状空隙K1が狭いものとなっている分、先端側ハウジング131における先端部位により、シール部材60の環状膜部63の先端向き面の外周寄り部位が覆われる形となっていることから、環状膜部63の先端向き面の外周寄り部位は、高温の燃焼ガスに直撃される割合が低減されている。
【0042】
さて次に、本発明の別の実施形態について
図6に基づいて説明する。ただし、このものは、上記形態における凸部70の改良例とでも言うべきもので、それと本質的違いはなく、基本的に同一のものであるため、その相違点のみ説明し、同一の部位には同一の符号を付すに止める。以下、同様とする。すなわち、本例では、先端側ハウジング131の先端136より先方に位置させている凸部70の先端72の外周面71に、半径方向外向きに突出する突出部75を設けたものである。ただし、本例ではこの突出部75は、周方向に沿ってリング状をなすものとされている。このような本例では、
図6に示したように、最終的に先端側環状空隙K1のうち、ハウジングの先端136を超えて突出部75の後端向き面までススSが付着、堆積するようなスス詰まりが生じても、凸部70の先端72における半径方向外向きに突出する寸法を突出部75を設けた分、大きくできるため、燃焼ガスの受圧面積を大きく確保できる。したがって、燃焼圧の検知精度の低下を一層、低減させることができる。
【0043】
すなわち、燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、先端側環状空隙K1の隙間寸法(ヒータ10の外周面10bとハウジング110の先端部位137の内周面137bとの片側の隙間)は、0.25mm程度は必要である。これは、衝撃等によるヒータ10の振れ動きを考慮し、その振れ動きがあってもヒータ10の先後動における支障を招かないようにする必要から求められる寸法である。一方、グロープラグの構成、大きさ上、その隙間の上限は、0.30mm程度であるのが普通である。このため、先端側環状空隙K1内のみで凸部70の半径方向外向き寸法を大きく確保しようとしても、その寸法を十分に確保することはできない。しかし、凸部70の先端72をハウジング110の先端136より先方に位置させ、その外周面71の先端72に、半径方向外向きに突出する突出部75を設ける場合には、そうした制約はなくなる。すなわち、
図6に示したように突出部75を設けたことで、その寸法の確保が可能となり、燃焼ガスの受圧面積を大きく確保できる。なお、突出部75の突出量は、エンジンのプラグホールへの取付け等に支障のない範囲で設定すればよい。
【0044】
また、本発明では、ヒータ10の外周面10bのうち、ハウジング110の先端部位137の内周面137bと対面する部位に、半径方向外向きに突出する凸部70が、その内周面137bとの間に隙間を保持して形成されていればよい。したがって、その凸部70の断面形状は、上記したものに限定されるものではなく、適宜の形態のものとして具体化できる。例えば、凸部70の外周面71に、半径方向外向きに突出する突出部を設ける場合でも、その位置は、先端72より後方に寄った位置とすることもできる。より具体的には、
図3に示したように、凸部70の後端73の位置を先端側環状空隙K1の後端138より後方の拡径環状空間K2内に位置させるような場合には、
図7に示したように、その後端73において、半径方向外向きに突出する突出部76を設けることもできる。すなわち、
図7においては、拡径環状空間K2内において突出部76を設けたものである。このものでは、後端側の突出部76における先端向き面にても燃焼ガスを受圧できるため、その受圧面積を大きく確保できる。ススSの発生が少なく、したがって、スス詰まりの進行が遅いような場合には好適である。また、ススSが突出部76を埋設するようになっても、
図4の場合と同様の効果が得られる。
【0045】
なお、上記各形態では、凸部70を、ヒータ10の外周面10bにおいて周方向において連なるよう形成されているものとして具体化したが、本発明では上記もしたように、周方向において部分的に、或いは断続的に形成してもよい。さらに、上記例では、凸部70をヒータ10に外嵌されて溶接により固定された円筒管から形成したが、ヒータ10をなすシースパイプ11自体の外周面に、凸部を隆起するように形成してもよい。
【0046】
また本発明においては、シール部材としてメンブレン構造のものを用いたもので具体化したが、シール部材は、ダイヤフラム状のものでも、ベローズ状のものでも、いずれのものでも、前記ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されたものであればよい。また、上記例においてシール部材60は、先端側環状空隙K1より後方の空間である拡径環状空間K2を先後において気密状に遮断する配置で設けた場合を例示したが、本発明においてこのシール部材は、先端側環状空隙又は該先端側環状空隙より後方に形成される環状の空間を、先後において気密状に遮断する配置で設けられていればよく、その配置位置に制限はない。このため、例えば
図8に示したように、先端側ハウジング131(ハウジング)の先端又は先端寄り部位の形状、構造次第では、その先端側環状空隙K1に設けることもできる。
【0047】
すなわち、
図8は、ハウジングの先端部位(先端側ハウジング131)の変形例とでも言うべきもので、
図3において、先端側ハウジング131を先後にストレートの円管において、その先端136側の外周面にプラグホールの着座面(テーパ座面)に着座させ得るテーパを有するテーパ筒部135を形成したものとしている。このものでは、その形状、構造に基づき、上記各例における拡径環状空間K2を、あえて設けることなく、ハウジング(先端側ハウジング131)の先端136から後方に向けての所定範囲の先端部位137の内周面137bと、ヒータ10の外周面10bとの間に、先後において同一内径の先端側環状空隙K1を有するものとしている。これにより、シール部材60は、この先端側環状空隙K1において、先端側環状空隙K1自身を先後において気密状に遮断する配置で設けられている。
【0048】
このように本例では、その先端側環状空隙K1における半径方向の寸法は、上記各例におけるそれよりも、あえて大きいものとなっているところ、このものにおいても、
図3に示したものと同様の効果が得られる。なお、
図8に示したものでは、凸部70を、図中、2点鎖線で示したように、上記各例に比べてその厚みT2が厚い円筒管を用いることとして、先端側環状空隙K1の半径方向における隙間を、上記各例におけるもののように狭小としてもよい。このようにすれば、凸部70の先端72の面積を大きくできるから、燃焼ガスの受圧面積の増大を図ることができる。なお、このように、ハウジング(先端側ハウジング131)の先端136から後方に向けての所定範囲の先端部位137の内周面137bと、ヒータ10の外周面10bとの間に、先後において同一の内径の先端側環状空隙K1を有するものとする場合でも、その凸部70の先端72における外周面に、
図6に示したもののように、半径方向外向きに突出する突出部を設けることができるなど、上記した各例と同様の適用をすることができる。
【0049】
前記したように、本発明において、先端側環状空隙は、ハウジングの先端から後方に向けての所定範囲の先端部位の内周面と、前記ヒータの外周面との間をなす空隙(空間)であればよく、その形状、構造は、適宜に変更できる。また、シール部材は、この先端側環状空隙又は該先端側環状空隙より後方に形成される環状の空間(例えば、上記各例における拡径環状空間)を、先後において気密状に遮断する配置で、しかも、ヒータの変位を許容するよう変形可能に形成されて、設けられていればよく、したがって、適宜に変更して具体化できる。また、上記例では、センサが圧電素子である場合で具体化したが、燃焼圧がヒータを後方に押圧する際の圧力又はこれによるヒータの先後方向の変位に基づいて、その燃焼圧を検知可能のセンサであればよく、したがって、例えば、歪センサを用いる検知方式の燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいても、同様に適用できる。
【0050】
また、上記例のグロープラグは、ヒータがシースパイプ、及びシースパイプ外装管等を含むものからなり、ハウジングがハウジング本体や、先端側ハウジング等からなる構成のものとして具体化したが、本発明においてこれらは適宜の構成のものとして具体化できる。さらに、上記各例では、拡径環状空間が、その先端側ハウジングの内面に形成されると共に、シール部材の外周縁が、この先端側ハウジングと圧電素子支持用内部ハウジングのフランジとで挟まれる形で、溶接されて固定されているものとして具体化したが、シール部材のハウジングに対する固定構造はこれらに限定されるものではない。また、上記例では、シール部材の固定手段として溶接を用いたが、溶接を用いるとしても、レーザ溶接の他、電子ビーム溶接や抵抗溶接等、適宜の溶接を用いることができる。さらに、溶接の必要のない箇所については、圧入等による締り嵌めのみとしておいてもよいし、ロウ材を用いたロウ付けによる接合とするなど、シール部材の固定手段は適宜の手段を用いればよい。