(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、第VII因子、組換え第VII因子、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、抗プラスミン、ビタミンK、又はそれらの組合わせである、請求項1に記載の薬学的組成物。
前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の薬学的組成物。
前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、抗プラスミン、ビタミンK、又はそれらの組合わせである、請求項23に記載の使用。
前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項33に記載の使用。
【背景技術】
【0003】
中枢神経系は、7つの主要部分:脊髄、延髄、橋、小脳、中脳、間脳、及び大脳半球を有する、両側性の本質的に対称な構造である。
図1は、Stedman’s Medical Dictionary,27
th Edition,plate 7 at A7(2000)からのヒト脳の側面図を示す。
【0004】
中枢神経系の最尾方部である脊髄は、四肢及び胴体の皮膚、関節、並びに筋肉からの知覚情報を受容かつ処理し、四肢及び胴体の動きを制御する。それは、頸部、胸部、腰部、及び仙骨部に細分化される。脊髄は、髄、橋、及び中脳からなる脳幹として吻側に続く。脳幹は、頭部の皮膚及び筋肉から知覚情報を受容し、頭部の筋肉に運動制御を提供する。これはまた、脊髄から脳及び脳から脊髄に情報を伝達し、網様体を介して覚醒及び意識レベルを調節する。脳幹は、脳神経核である細胞体のいくつかの集合を含有する。これらのうちのいくつかは、頭部の皮膚及び筋肉から情報を受容し、他は、顔、首、及び目の筋肉への運動出力を制御する。さらに、他は、特殊感覚である聴覚、バランス、及び味覚からの情報に特殊化されている(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8、2000)。
【0005】
脊髄のすぐ吻側にある延髄は、消化、呼吸、及び心拍数管理等の極めて重要な自律神経機能に関与するいくつかの中枢を含む(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8,2000)。
【0006】
髄の吻側にある橋は、動きについての情報を大脳半球から小脳に伝達する(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8、2000)。
【0007】
小脳は、橋の後方にあり、脳脚と呼ばれるいくつかの主要な線維束によって脳幹に結合している。小脳は、動きの強さ及び範囲を調節し、運動技能の学習に関与する。それは、学習及び認知にも寄与する(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8,2000)。
【0008】
橋の吻側にある中脳は、目の動きを含む多くの感覚及び運動機能、並びに視覚及び聴覚反射の協調を制御する(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8、2000)。
【0009】
間脳は、中脳の吻側にあり、2つの構造を含有する。1つは、視床であり、大脳皮質に達する残りの中枢神経系からの情報の大部分を処理し、運動制御、自律神経機能、及び認知を含む他の機能に関与する。もう1つは、視床下部であり、自律神経、内分泌、及び内臓機能を調節する(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8,2000)。
【0010】
大脳半球は、しわの多い外層、大脳皮質、並びに3つの深く位置する構造:運動能力の調節に関与する基底神経節、学習及び記憶保存の側面に関与する海馬、並びに感情の状態の自律及び内分泌反応を協調させる扁桃核からなる(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8,2000)。
【0011】
大脳皮質は、4つの葉:前頭葉、頭頂葉、側頭葉、及び後頭葉に分類される。大脳半球の表面は、裂溝及び溝(sulcus)として知られる多くの溝(groove)又は溝(furrow)を含有する。これらの溝の間にある脳部分は、回旋又は脳回と呼ばれる。外側大脳裂(シルビウス裂溝)は、前頭葉と側頭葉を分離する。中心溝(ローランド溝)は、頭頂葉と前頭葉を分離する(Kandel,E.et al.,Principles of Neural Science,4
th Ed.,p.8,2000)。
1.脳髄膜
【0012】
脳及び脊髄を取り囲み、かつ保護する3つのはっきりと異なる結合組織膜である髄膜は、(外層から内層に)硬膜、くも膜、及び軟膜と呼ばれる。
図2は、ヒト脳の説明的矢状図を示す(J.G.Chusid,Correlative Neuroanatomy & Functional Neurology,18
th Ed.,p.46,1982)。
1.1.硬膜
【0013】
硬膜は、脳及び脊髄を被覆する緻密な線維構造である。これは、内側の髄膜層及び外側の骨膜層又は骨内膜層を有する。脳上の硬膜層は、概して、それらが静脈洞に空間を提供するために分離し、かつ内層が脳部分の間に隔壁を形成する部分を除いて融合する。外層は、頭蓋骨の内面に固着し、血管及び線維拡張を骨自体に送り込む。大後頭孔(頭蓋腔から脊椎腔までの通路を形成する頭蓋の基部にある大きな開口部)の辺縁周辺で、それは骨に密着し、脊髄硬膜に続く。
【0014】
脳硬膜は、線維芽細胞、豊富な細胞外コラーゲン、並びに小窩洞及び血管によって不完全に2つの層:内側の(髄膜)層及び外側の(骨内膜)層に分けられる平らな薄膜内に配置される数個の弾性線維からなり、それらの層は、ある特定の状況において、それらが分かれて、静脈血の通路のために静脈洞を形成するか、あるいは脳部分の間に隔壁を形成する場合を除いて、ともに密に結合している。硬膜の外面は粗く、フィブリル状であり(線維から成る)、骨の内面に密に付着し、付着は、頭蓋縫合(頭蓋(skull)又は頭蓋(cranium)骨の間の不動の関節)の反対側に最も多い。骨内膜層は、頭蓋骨の内部の骨膜であり、それらへの供給のために血管を含有する。髄膜層は、その内面が、硬膜境界細胞と呼ばれている独特の細長い平らな線維芽細胞の層で覆われる。この層内にはコラーゲンが存在せず、細胞は、細胞間結合によって結合されない。それらは、高い頻度で、不定形の非フィラメント状の物質で満たされている細胞外空間によって分離される。髄膜層は、2つの薄板:コンパクトな薄板及び緩い薄板をさらに含み、前者は、概して、堅固な線維組織及びわずかの血管を含有するが、後者は、いくつかの血管を含有する。
図3は、脳を被覆する3つの髄膜層の断面図である(Haines,D.E.,Anatomical Record 230:3−21,1991)。硬膜は、頭蓋の空洞を一続きの自由に連通する区画に分ける4つの突起を内部に送り込み、脳の異なる部分の保護をさらに提供する。
【0015】
頭蓋の空洞に突き出る脳硬膜の突起は、膜の内側の(又は髄膜)層の二重化によって形成される。これらの突起は、(1)大脳鎌、(2)小脳テント、(3)小脳鎌、及び(4)鞍隔膜を含む。
【0016】
大脳鎌は、大脳半球の間の大脳縦裂内に垂直に下降する、鎌様の形態を有する強力な弓形の突起である。これは、鶏冠(篩骨の三角形の正中突起)で篩骨(頭蓋の基部及び鼻の根元の骨)に付着している前方では狭く、かつ脳テントの上面(小脳の上面を被覆する硬膜の弓形のひだ)と結合される後方では広い。その上部辺縁は、凸形であり、内部の後頭隆起まで遡って、正中線の頭蓋の内面に付着しており、これは、上矢状静脈洞を含有する。その下部辺縁は、固定されておらずかつ凹形であり、下矢状静脈洞を含有する。
【0017】
小脳テントは、弓形の薄膜であり、中央で上昇し、外周に向かって下向きに傾いている。これは、小脳の上面を被覆し、脳の後頭葉を支える。その前縁は固定されておらずかつ凹形であり、大脳脚(正中線のそれぞれの側面上の中脳の腹側面を縦方向に通過する皮質投射神経線維の巨大な束)、並びに上行性知覚及び自律神経線維並びに他の線維束の通過のために楕円形の大きい開口部(テント切痕)に結合する。小脳テントは、後方で、その凸形の縁によって後頭骨の内面上の斜走隆線に付着し、横静脈洞を取り囲み、前方で、いずれかの側面上の側頭骨の錐体部の上角に付着し、上錐体静脈洞を取り囲む。側頭骨の錐体部の尖部で、固定されていない縁と付着した縁が接触し、相互に交差し、前方に続いて、それぞれ、前及び後床突起に固定される。大脳鎌の後縁は、その上面の正中線に付着している。直静脈洞は、大脳鎌及び小脳テントの接合部に置かれる。
【0018】
小脳鎌は、2つの小脳半球を分離する硬膜の小さい三角形の突起である。その基部は、上方で、天幕の下部及び後部に付着しており、その後辺縁は、後頭骨の内面上の垂直稜の下方区分に付着している。それが下降する時、場合によっては、大後頭孔の側面上で失われる2つのより小さいひだに分かれる。
【0019】
鞍隔膜は、トルコ鞍(中頭蓋窩内に位置し、かつそれを二等分する、頭蓋の蝶形骨の上面上の鞍様の突出物)内に屋根をつけ、下垂体(脳下垂体)をほぼ完全に被覆する小さい円形の水平なひだであり、可変寸法の中央開口部は、漏斗(下垂体を脳の基部に結合する視床下部の漏斗状の延長部)を通す。
【0020】
硬膜の動脈は多数ある。前及び後篩骨動脈の硬膜枝並びに内頸動脈の硬膜枝、並びに中硬膜動脈からの枝は、前頭蓋窩の硬膜に供給する。内顎動脈の中硬膜動脈及び副硬膜動脈、破裂孔を通って頭蓋に進入する上行性咽頭動脈からの枝、内頸動脈からの枝、並びに涙腺動脈からの反回枝は、中頭蓋窩の硬膜に供給する。1つは頸静脈孔を通って、もう1つは乳突孔を通って頭蓋に進入する後頭動脈からの硬膜枝、椎骨動脈からの後硬膜動脈、頸静脈孔及び舌下神経管を通って頭蓋に進入する上行性咽頭動脈からの偶発的な硬膜枝、並びに中硬膜動脈からの枝は、後頭蓋窩の硬膜に供給する。
【0021】
脳硬膜から血液を戻す静脈は、板間静脈で吻合するか、あるいは種々の静脈洞で終わる。硬膜静脈の多くは、静脈洞に直接開口しないが、静脈裂孔と呼ばれる一続きの膨大部を通って間接的に開口する。これらは、上矢状静脈洞のいずれかの側面上、特にその中間部分付近で見られ、多くの場合、くも膜顆粒によって陥入され、それらは、横静脈洞及び直静脈洞付近にも存在する。それらは、下層の大脳静脈と連通し、板間静脈及び導出静脈とも連通する。
【0022】
脳硬膜の神経は、三叉神経節、舌咽神経節、迷走神経節、第二及び第三脊髄神経節、翼口蓋神経節、耳神経節、並びに上頸神経節に由来する線維であり、無髄及び有髄の知覚及び自律神経線維を供給する。
1.2.くも膜
【0023】
中間の髄膜層であるくも膜は、軟膜と硬膜との間にある繊細な無血管膜である。それは、硬膜下腔によって重なる硬膜から分離され、かつ脳脊髄液を含有するくも膜下腔によって下層の軟膜から分離される。
【0024】
くも膜は、低い立方形の中皮の外細胞層からなる。脳脊髄液が充填し、かつ小柱並びにコラーゲン原線維及び線維芽細胞に類似した細胞からなる膜が横断する可変の厚さの空間が存在する。内層及び小柱は、所々で平らにされて舗装形式になり、かつ内部の深い層上で軟膜の細胞と融合する、若干低い形式の立方中皮によって被覆される。くも膜は、三叉神経、顔面神経、及び副頭蓋神経の運動根に由来する神経叢をさらに含有する。
【0025】
くも膜の頭蓋部(脳くも膜)は、脳を緩く包囲し、大脳縦裂並びにいくつかの他のより大きな溝及び裂溝を例外として、脳回(脳表面の隆起したひだ又は上昇部)間の溝(脳表面の陥没又は裂溝)にも、裂溝にも入り込まない。脳上面上では、くも膜は、薄くて透明であり、基部では、より厚い。脳の中心部に向かってわずかに不透明であり、そこでは、それは橋と脳との間にかなりの空間を残すように橋の前方の2つの側頭葉の間に広がる。
【0026】
くも膜は、脳神経及び脊髄神経を包囲し、頭蓋からのそれらの出口点まで緩い鞘でそれらを取り囲む。
くも膜下腔
【0027】
くも膜及び軟膜の外側の細胞層の間の空間であるくも膜下腔(subarachnoid cavity)又はくも膜下腔(subarachnoid space)は、繊細な結合組織の小柱からなる組織及び脳脊髄液を含有する通気チャネルによって占有されている。この空洞は、脳の半球の表面上では小さく、それぞれの脳回の頂点では、軟膜及びくも膜は密に接触しているが、三角形の空間は、軟膜が溝に入り込むため、くも膜下線維柱帯組織が見られる脳回の間の溝内に残され、一方で、くも膜は、脳回から脳回までそれらを横断して架橋する。脳の基部のある特定の部分では、くも膜は、相互と自由に連通し、かつくも膜下槽と呼ばれる広い間隔によって軟膜から分離されており、これらの槽のくも膜下組織は、比較的豊富ではない。
くも膜下槽(subarachnoid cisternae)(くも膜下槽(cisternae subarachnoidal))
【0028】
小脳延髄槽(大槽)は、矢状断面が三角形であり、延髄と小脳の半球の下面との間の空間に架橋するくも膜に起因し、それは、大後頭孔の高さで脊髄のくも膜下腔に続く。
【0029】
橋槽は、橋の腹側面上のかなりの範囲の空間である。これは、脳底動脈を含有し、橋の後方で脊髄のくも膜下腔及び小脳延髄槽に続き、橋の前方で脚間槽に続く。
【0030】
脚間槽(基底槽)は、くも膜が2つの側頭葉の間に広がる広い空洞である。これは、大脳脚及び脚間窩に含まれる構造を取り囲み、かつ大脳動脈輪を含有する。前方で、脚間槽は、視束交差に前方に広がり、交叉槽を形成し、脳梁の上面まで続く。くも膜は、一方の大脳半球から他方へ大脳鎌の自由縁の直下で広がるため、前大脳動脈が含有される空間を残す。大脳外側窩槽は、外側溝を横断して架橋するくも膜によって、いずれかの側頭葉の前方で形成される。この空洞は、中大脳動脈を含有する。大脳大静脈槽は、脳梁の膨大部と小脳の上面との間の間隔を占有し、これは、第三脳室の脈絡膜の層間に延在し、かつ大大脳静脈を含有する。
【0031】
くも膜下腔は、3つの開口部によって全脳室腔と連通し、開口部の1つは、マジャンディ孔であり、第四脳室蓋の下部の正中線にあり、他の2つ(ルシュカ孔)は、上方の舌咽神経根の後方のその脳室の外側陥凹の先端にある。
【0032】
くも膜絨毛は、硬膜の髄膜層を通って突き出る軟膜くも膜の房状の延長部分であり、薄い境界膜を有する。硬膜静脈洞を貫通する多数のくも膜絨毛から成り、かつ静脈系への脳脊髄液の移動をもたらす軟膜くも膜の房状の延長部分は、くも膜顆粒と呼ばれる。
【0033】
くも膜絨毛は、くも膜による硬膜の浸潤を表し、それによって、くも膜中皮細胞は、結果として、大硬膜静脈洞の血管内皮の真下に直接位置する。それぞれの絨毛は、以下の部分からなる:(1)内側において、絨毛がくも膜に付着される狭い茎を通って全くも膜下組織の網目構造に続く、くも膜下組織の中核、(2)この組織周囲で、くも膜下組織を制限して取り囲むくも膜の層、(3)この外側で、潜在的な硬膜下腔に対応し、それに続く潜在的空間によってくも膜から分離される小窩の薄くなった壁、かつ(4)絨毛が矢状静脈洞に突き出る場合、単に内皮からなり得る洞の非常に薄くなった壁によって被覆される。くも膜下腔に注入される流体は、これらの絨毛に進入する。そのような流体は、絨毛からそれらが突き出る静脈洞内に通過する。
1.3.軟膜
【0034】
軟膜は、脳及び脊髄の表面に適用される、薄い結合組織膜である。脳に供給する血管は、軟膜を通って脳に進む。軟膜は、マジャンディ孔及び2つのルシュカ孔では不在であり、全ての血管が神経系に進入するか、あるいは神経系から出るときに、全ての血管によって穿孔されるため、不完全な膜であると見なされる。血管周囲腔において、軟膜は、その腔の外面の中皮裏層として進入するように見え、外側からの不定の距離で、これらの細胞は、認識不可能になり、かつ不足し、神経膠要素によって置き換えられるようである。血管周囲腔の内壁は、同様に、ある特定の距離を中皮細胞によって被覆されるように見え、これらの脈管がくも膜下腔を横断するにつれて、血管を伴って、これらの脈管のくも膜被覆から反転される。
【0035】
脳軟膜(cranial pia mater)(脳軟膜(pia mater encephali)、脳の軟膜)は、脳の全表面、大脳回と小脳薄膜との間の窪みを包囲し、かつ陥入されて、第三脳室の脈絡膜、並びに側脳室及び第三脳室の脈絡叢を形成する。第四脳室蓋上を通過する時、それは、第四脳室の脈絡膜及び脈絡叢を形成する。小脳上で、膜はより繊細であり、その深面からの血管はより短く、その皮質との関係は、それほど親密ではない。
【0036】
軟膜は、脳神経のために鞘を形成する。
2.脳の循環
【0037】
脳の基部のウィリス輪は、脳の動脈吻合の主幹である。血液は、主に椎骨及び内頸動脈を介してそれに達し(
図4を参照のこと)、吻合は、大脳半球上で、かつ種々の孔を通って頭蓋を貫通する頭蓋外動脈を介して、ウィリス輪の動脈枝間で起こる。
【0038】
ウィリス輪は、内頸動脈、脳底、前大脳、前交通、後大脳、及び後交通動脈の間の吻合によって形成される。内頸動脈は、前大脳及び中大脳動脈内で終了する。その終了付近で、内頸動脈は、後大脳動脈と尾側方向に連結する後交通動脈を生み出す。前大脳動脈は、前交通動脈を介して結合する。
【0039】
大脳皮質への血液供給は、主に、前大脳、中大脳、及び後大脳動脈を介し、軟膜内の皮質に達する。
図5は、大脳皮質への動脈供給の説明図を示し、1は、眼窩前頭動脈であり、2は、前ローランド動脈であり、3は、ローランド動脈であり、4は、前頭頂葉動脈であり、5は、後頭頂葉動脈であり、6は、眼角動脈であり、7は、後側頭動脈であり、8は、前側頭動脈であり、9は、眼窩動脈であり、10は、前極動脈であり、11は、脳梁縁動脈であり、12は、後内側前頭動脈であり、13は、脳梁周動脈である(Correlative Neuroanatomy & Functional Neurology,18
th Ed.,p.50,1982)。
【0040】
それぞれの大脳半球の外側面は、主に中大脳動脈によって供給される。大脳半球の内側面及び下面は、前大脳及び後大脳動脈によって供給される。
【0041】
内頸動脈の終枝である中大脳動脈は、外側大脳裂に進入し、隣接した前頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び後頭葉を供給する皮質枝に分かれる。レンズ核線条体動脈である小貫通動脈は、中大脳動脈の基部から生じ、内包及び隣接した構造に供給する。
【0042】
前大脳動脈は、内頸動脈を起点として大脳縦裂に入り、脳梁膝まで内側に延在し、そこで脳梁に近接して後方に曲がる。これは、内側前頭葉及び頭頂葉、並びにこれらの葉の内側面に沿って隣接した皮質への枝となる。
【0043】
後大脳動脈は、その吻端で、通常中脳の高さで脳底動脈から生じ、大脳脚の周囲で背方に曲がり、側頭葉の内側面及び下面並びに内側後頭葉に枝を送る。枝は、鳥距動脈並びに後視床及び視床腹部への穿通枝を含む。
【0044】
脳底動脈は、椎骨動脈の結合によって形成される。それは、短い傍正中枝、短い外周枝、及び長い外周枝を介して、脳幹上部に供給する。
【0045】
中脳は、脳底、後大脳、及び上小脳動脈によって供給される。橋は、脳底、前小脳、下小脳、及び上小脳動脈によって供給される。延髄は、椎骨、前脊髄神経、後脊髄神経、後下小脳、及び脳底動脈によって供給される。小脳は、小脳動脈(上小脳、前下小脳、及び後下小脳動脈)によって供給される。
【0046】
第三脳室及び側脳室の脈絡叢は、内頸動脈及び後大脳動脈の枝によって供給される。第四脳室の脈絡叢は、後下小脳動脈によって供給される。
【0047】
脳からの静脈排出路は、主として、硬膜の頑丈な構造内に位置する脈管である硬膜静脈洞に入る。硬膜静脈洞は弁を含有せず、大部分は三角形である。上縦洞は、大脳鎌内にある。
3.脳の出血状態
【0048】
毎年、世界中で2,000,000人を超える人々が自発性又は外傷性脳内出血(「ICH」)に罹患しており、それらはともに不良転帰を有し、治療が困難であり、かつ高い死亡率及び罹患率を有する。特発性ICHは、全ての脳卒中の最も高い罹患率及び死亡率を有する。慢性硬膜下血腫(「SDH」)も、脳神経外科のよくある問題である。その発生率についての疫学データはほとんど存在しないが、脳神経外科の実践は、発生率が、1年当たり、人口100,000名につき30症例を超えることを示唆する。
【0049】
脳内出血状態の治療は、開頭術を介する外科的排除、又は低侵襲的に穿頭孔を介する外科的排除を含み、それらは全て様々な有効性がある。これらの出血形態の重大な合併症は、術後再出血であり、これは10〜30%の症例で発生し、罹患率及び死亡率を増加させる。術後出血は、脳腫瘍、てんかん、感染、及び脳の血管奇形等の他の状態のための頭蓋内手術後に発生する場合もある。
3.1.脳内出血(ICH)
【0050】
本明細書で使用される「非外傷性ICH」という用語は、脳室、場合によっては、くも膜下腔内に延在し得る脳実質内の出血を指し、外傷及び特に外傷性損傷によって引き起こされないか、あるいはそれに伴わない。本明細書で使用される「外傷性ICH」という用語は、外傷、及び特に外傷性損傷によって引き起こされるか、あるいはそれに伴う出血を指す。
【0051】
自発性及び外傷性ICHは、世界中で罹患及び死亡の重大な原因である。特発性ICHの推定年間発生率は、15〜30/100,000人に及ぶ。治療は、徹底的なケアサポート、頭蓋内圧の上昇の管理、及び選ばれた症例では血腫の外科的排除からなる。これらの治療はあまり効果的ではなく、死亡率は50%を超え、生存者は、多くの場合、重度の病的状態にある。不良転帰の原因の1つは、血腫の外科的排除前もしくは外科的排除後、あるいは腫瘍、感染部、又は血管奇形の外科的切除後の再出血である。血腫成長は、ICHの3時間以内に撮像される患者の最大70%に発生する。さらに、出血拡大は、死及び障害の独立した決定要因である。ICH成長に加えて、他の不良転帰の予測判断要因には、年齢、出血のベースライン量、グラスゴーコーマスケールスコア、脳室内出血、及びテント下位置が含まれる。術後再出血はまた、最大6%の患者に発生するが、早期手術においてより一般的である(発作の4時間以内では40%)。しかしながら、早期手術を受けた患者が最も手術の恩恵を受けるため、早期の再出血の危険性を低下させることが重大であり得る。ICHを除去する手術を受けた患者に出血を阻止する薬物を投与する報告書が、医学文献において存在する。再出血を減少させるための抗線維素溶解薬又は活性化因子VIIaの全身(静脈内もしくは一般に体内を意味する)投与は、一つには薬物の全身性副作用のため、転帰を改善しなかった。例えば、組換え第VII因子で治療されるICHを有する患者は、上昇したトロポニンI濃度によって示されるように、動脈血栓塞栓性合併症、最も一般的には、脳梗塞及び心筋虚血の危険性が高い(Diringer,MN,et al.,Stroke13:850−56,2008)。
【0052】
外傷性脳損傷(TBI)によって引き起こされる外傷性ICHは、特発性ICHよりもさらに一般的である。TBIの約10%(米国における年間症例数1,400,000件)は、手術を必要とするICHを伴う。外傷後の挫傷した脳内でどれくらい一般に再発性出血が発生するかは、十分に立証されていない。いくつかの推定によると、外傷後の再発性出血は、最大10%の患者に発生するため、神経外科医にとって深刻な懸念である。
3.2.ICHの原因
【0053】
ICHは、一般に、基底神経節、視床、脳幹(主に橋)、大脳半球、及び小脳で発生する。脳室内拡大は、深く大きな血腫に関連して発生する。多くの場合、浮腫性実質が、ヘモグロビンの分解産物によって変色され、血餅に隣接して視認できる。組織切片は、血腫を包囲する領域における浮腫、神経損傷、マクロファージ、及び好中球の存在を特徴とする。出血は、白質切断面の間に広がり、脳構造のいくらかの破壊を引き起こし、血腫内及び血腫周囲に無傷の神経組織の巣を残す。この広がりのパターンは、血腫のすぐ近辺での生存可能及び救出可能な神経組織の存在を説明する。
【0054】
実質内出血は、一般に、脳底動脈、又は前大脳動脈、中大脳動脈、もしくは後大脳動脈に由来する小貫通細動脈の破裂に起因する。慢性高血圧による細動脈壁における変性変化は、整合性を減少させ、壁を弱体化させ、特発性破裂の可能性を増加させる。研究は、中膜及び平滑筋の顕著な変性を観察することができる罹患動脈の分岐点で、又はその付近で、大部分の出血が発生することを示唆する。
【0055】
ICHは、長期にわたって拡大する。コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを用いた研究は、血腫が、最初のCTスキャン後、1時間以内に26%の患者において拡大し、それに加えて12%が20時間以内に拡大したことを示した。他の研究は、血腫がICHを有する患者の20%において拡大し、出血の開始後3時間以内に呈した患者の36%に発生し、開始後3時間を超えて呈した患者の11%に発生したことを示した。この拡大は、主要源からの継続的な出血及び周囲の血管の機械的破砕の結果であると考えられている。急性高血圧症、局所的凝固欠陥、又はそれら両方ともに、血腫の拡大を伴い得る。
【0056】
血腫の存在は、周囲の実質において浮腫及び神経損傷を惹起する。血腫周囲の領域内で流体が即座に集まり始め、浮腫は、通常、最大5日間増大し、これは、脳卒中後2週間もの間観察されている。血腫周囲の早期の浮腫は、血餅からの浸透的に活性な血清タンパク質の放出及び蓄積に起因する。その後、血液脳関門の破損、ナトリウムポンプの障害、及びニューロン死により、血管原性浮腫及び細胞傷害性浮腫が続く。
【0057】
ICH後の血液脳関門の崩壊及び脳浮腫の発達における遅延は、神経損傷及び浮腫の両方の二次メディエータが存在し得ることを示唆する。血液及び血漿産物がICH後に開始される二次過程の大部分を媒介することが一般に考えられる。脳虚血が、機械的圧縮の結果か、血腫を包囲する領域における出血のある化学作用の結果として発生するかは不確かである。血腫周囲の領域におけるニューロン死は、主に、壊死である(いくつかの研究は、プログラム細胞死(アポトーシス)の存在も示唆する)。
3.3.ICHの分類
【0058】
出血の根本にある原因に応じて、ICHは、一次又は二次のいずれかに分類される。症例の78〜88%の割合を占める一次ICHは、慢性高血圧、アミロイド血管症、又は何らかの他の原因によって損傷した小血管の特発性破裂に由来する。少数の患者における二次ICHは、血管異常(動静脈奇形及び動脈瘤等)、腫瘍、又は凝固障害に関連して発生する。
3.4.ICHのバイオマーカー
【0059】
体内の全細胞の表面は、他のシグナル伝達分子に選択的に結合又は付着する能力を有する特殊なタンパク質受容体で覆われている(Weiss and Littman,Cell,76:263−74,1994)。これらの受容体及びそれらに結合する分子は、他の細胞と通信するために、また体内で適切な細胞機能を実行するために使用される。それぞれの細胞型は、受容体又はマーカーのある特定の組み合わせをそれらの表面上に有し、これにより他の種類の細胞と識別可能になる。
【0060】
本明細書で使用される「バイオマーカー(もしくは「バイオシグネチャー」)」という用語は、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、遺伝子、代謝産物、又は生物学的状態の指標として使用される任意の他の物質を指す。それは客観的に測定され、かつ標準の分子生物学的過程、発病過程、又は治療的介入への薬理学的応答の細胞もしくは分子指標として評価される特徴である。本明細書で使用される「指標」という用語は、時間の関数としての相対的変化、又は可視的であるか、あるいはその実在もしくは存在の証拠である信号、記号、印、兆候、もしくは症状を明らかにし得る一続きの観察された事実に由来する任意の物質、数、又は比率を指す。提案されたバイオマーカーが確証されると、これを用いて、疾患の危険性、個人における疾患の存在を診断するか、あるいは個人における疾患の治療(薬物治療又は投与計画の選択)を調節することができる。可能性のある薬物療法を評価する際、バイオマーカーを、生存又は非可逆的病的状態等の自然なエンドポイントの代理として用いることができる。治療がバイオマーカーを変化させ、かつその変化が改善された健康状態と直接関係がある場合、そのバイオマーカーは臨床的有益性を評価するための代理のエンドポイントとしての機能を果たし得る。臨床的エンドポイントは可変であり、患者がどのように感じ、機能し、又は耐え抜くかを測定するために使用することができる。代理のエンドポイントは、臨床的エンドポイントの代わりとなるよう意図されるバイオマーカーであり得、これらのバイオマーカーは、調節者及び臨床的コミュニティが許容できる信頼水準を用いて臨床的エンドポイントを予測するために実証される。
【0061】
研究は、ICHが、出血後1日以内に、ヒト血腫周辺組織における炎症性、抗炎症性、及び神経シグナル伝達システムにおける遺伝子発現の組織的ネットワークに影響を及ぼすことを示した。血腫周辺組織は、灰白質及び白質構造を含む。腫瘤効果を有する血腫周辺浮腫は、ほぼ共通のICHの合併症である。炎症誘発性シグナル伝達の分子ネットワークは、サイトカイン/ケモカインインターロイキン1β(IL−1β)、IL−8、IL−6受容体、CCRl、CXCL2/MIP2、及びCXCL3に端を発する。これらの分子はIL及びToll様の受容体に、Fasリガンド、核因子−κΒ(NF−κΒ)、及びMEKK/JNK経路を伴うシグナル伝達カスケードを活性化するように信号を送る。抗炎症性シグナル伝達は、アネキシンA1及びA2、IL−10、並びに形質転換成長因子−β(TGF−β)から、下流のカルシウム結合、細胞骨格及びリボソームタンパク質、並びにc−Mycを通って進行するカスケード中のICHにおいて活性化される。ICHは、血腫周辺組織において平行な神経シグナル伝達システムを下方調節する。これらの下方調節された神経遺伝子は、グルタミン酸シグナル伝達、シナプス前構造、シナプス後構造、並びに多数のイオンチャンネル及びカルシウムシグナル伝達タンパク質において機能する分子を含む。細胞レベルでは、特定の細胞型は、ICHに対してこれらの遺伝子の変化した発現で応答する。血腫周辺縁内の星状膠細胞は、アクアポリン9及び金属プロテアーゼ−1(TIMP−1)の組織阻害剤を発現する。アネキシンA2は、出血の炎症細胞及び出血部位に隣接する神経細胞中で誘導される。損傷した白質中の乏突起膠細胞は、炎症性ケモカインCCRlを発現する。接近した血腫周辺縁並びに出血部位内の炎症細胞及び内皮細胞は、IL受容体IL1R1を発現する。タンパク質レベルでは、ICH後に血腫周辺組織内で誘発される分子カスケード選択されたメンバーがこれらの2つの組織区画内に異なるグリア細胞及び神経細胞型とともに局在化する。
【0062】
したがって、ICHは、ICHを研究するために使用することができるいくつかのバイオマーカーを誘導する:(i)腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、IL−1β、及びIL−6を中心とする炎症性サイトカインシグナル伝達、(ii)アクアポリン4及び血管内皮成長因子(VEGF)を含むグリア浮腫関連遺伝子、並びに(iii)二次細胞外マトリックス損傷のメディエータとしてのマトリックス金属プロテアーゼ9(MMP9)及び血清プロテアーゼ(プラスミノーゲン)の発現。
【0063】
腫瘍壊死因子−α(TNF−α、TNF、カケキシン、カケクチン)は、全身性炎症、免疫細胞の調節、アポトーシス死、及び腫瘍形成阻害に関与するサイトカインである。2つの受容体(TNF−R1及びTNF−R2)は、TNF−αに結合する。TNF−R1は、大部分の組織で発現される一方で、TNF−R2は、免疫系の細胞において見出される。TNF受容体へのTNF−αの結合は、(i)(細胞生存及び増殖、炎症応答、並びに抗アポトーシス因子に関与する無数のタンパク質の転写を媒介する)NF−κΒの活性化、(ii)細胞分化、増殖に関与し、概して、アポトーシス促進性である、JNK経路を含むMAPK経路の活性化、並びに(iii)死シグナル伝達の誘導を含む、いくつかのカスケードの開始を可能にする受容体における立体構造変化を引き起こす。
【0064】
炎症促進及び抗炎症特性の両方を有するサイトカインであるインターロイキン−6(IL−6)は、とりわけ、外傷への免疫応答を刺激するT細胞及びマクロファージから、並びに多くの血管の中膜の平滑筋細胞から分泌される。IL−6は、発熱及び急性期応答の重要なメディエータである。IL−6シグナルは、細胞表面1型サイトカイン受容体(IL−6Rα(リガンド結合鎖)及びgpl30(信号伝達成分)からなる)を通る。IL−6がその受容体と相互作用する時、gpl30及びIL−6Rタンパク質に複合体を形成させ、したがって、受容体を活性化させる。これらの複合体は、ある特定の転写因子、ヤヌスキナーゼ(JAK)、並びにシグナル伝達物質及び転写活性化因子(STAT)を通るシグナル変換カスケードを開始するために、gpl30の細胞内領域をまとめる。
【0065】
インターロイキン1β(IL−1β)は、前駆タンパク質として活性化マクロファージによって生成されるサイトカインであり、これは、カスパーゼ1(CASP/ICE)によってタンパク質分解的に処理されて、その活性形態になる。IL−1βは、炎症応答の重要なメディエータであり、かつ細胞増殖、分化、及びアポトーシスを含むが、それらに限定されないいくつかの細胞活性に関与する。
【0066】
アクアポリン4は、細胞膜を通して水を誘導する内在性膜タンパク質である。これは、腎臓内の主要な集合管細胞の基底外側細胞膜内で構造的に発現される。アクアポリン4は、星状膠細胞内でも発現され、かつ中枢神経系への直接侵襲によって上方調節される。
【0067】
血管内皮成長因子(VEGF)は、新しい血管の成長を刺激する。VEGFファミリーの全てのメンバーは、(異なる部位、時間、及び程度であるが)細胞表面上でチロシンキナーゼ受容体(VEGFR)に結合し、それらを二量体化させ、かつリン酸転移を介して活性化させることによって、細胞応答を刺激する。
【0068】
マトリックス金属プロテアーゼ(MMP)は、種々の細胞外マトリックスタンパク質を分解することができる亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMPは、プロペプチド、触媒ドメイン、及び柔軟なヒンジ領域によって触媒ドメインに連結されるヘモペキシン様のC末端ドメインを含む共通のドメイン構造を共有する。MMPは、細胞表面受容体の切断、アポトーシスリガンド(FASリガンド等)の放出、及びケモカイン/サイトカイン不活性化/活性化に関与することが知られている。MMPが、細胞増殖、移動(付着/分散)、分化、血管形成、アポトーシス、及び宿主防衛に関与することが一般に考えられる。
3.5.ICH治療及びモデル系の必要性
【0069】
特発性ICHは、くも膜下出血(SAH)の2倍以上一般的であり、脳梗塞又はSAHよりも死亡又は重大な障害をもたらす可能性が高い。特発性ICHを有する患者への外科治療又は医療手当の利点は、結論が出ないままである。
【0070】
加齢及び高血圧症は、特発性ICHの重大な危険因子である。ICHの最も重大な原因は、概して、持続性高血圧症による小動脈及び細動脈の病態生理的変化と見なされる。さらに、脳アミロイド血管症は、ますます高齢者における脳葉型ICHの原因であると認識されてきている。ICHの他の原因には、血管奇形、動脈瘤破裂、凝固障害、抗凝固剤及び血栓溶解剤の使用、脳梗塞内出血、脳腫瘍内出血、並びに薬物乱用が含まれる。
【0071】
ICHの医療手当及び外科的除去のガイドラインが入手可能であるが、神経科医及び神経外科医によるICHの対応は、世界中で異なる。ICHを除去するための手術の利点が証明されていないにもかかわらず、米国では、7,000を超えるそのような手術が毎年行われていると推定される。主要な合併症は、再出血である。手術後の再出血は、最大30%の症例において発生し、罹患率及び死亡率を増加させる。
【0072】
ICHにおける出血再発を予防するための新規の治療薬及び治療方法の著しい必要性が未だに存在する。さらに、ICHの正確かつ再生可能なモデル系の欠如は、再出血を予防するための見込まれる新規の治療薬及び治療方法の研究並びに開発を阻害している。
4.1.硬膜下血腫(SDH)
【0073】
硬膜下血腫(SDH)は、血液が硬膜とくも膜との間に集まる外傷性脳損傷の形態である。硬膜下腔は、硬膜境界細胞層内の細胞の分離によって発達する潜在的な空間である。外壁は、硬膜、すなわち、乏しい血管新生を伴う濃密な線維膜であり、内壁は、毛細血管床を有しない血管新生化くも膜である。硬膜の内層及び残りの硬膜境界細胞は、細胞構成への高反応の可能性を有し、連続毛細血管の非常に微細なネットワークを含有する。通常、硬膜と頭蓋との間に血液の集積をもたらす動脈断裂によって引き起こされる硬膜外血腫とは異なり、硬膜下出血は、通常、硬膜下腔を横断する静脈断裂に起因し、それによって、血液を硬膜の髄膜内細胞層又は硬膜境界細胞層内に集める。その後、この出血は、多くの場合、硬膜及びくも膜層を分離する。
【0074】
硬膜下血腫は、それらの発現速度に応じて、急性、亜急性、及び慢性に分類される。
【0075】
急性SDHは、通常、外傷に起因し、全頭部外傷の最も致命的な外傷の1つである。ASDHは、外科的減圧術で早急に治療されない場合、高い死亡率を有する。急性血腫がくも膜断裂なく硬膜下腔に制限される時、血腫は、硬膜境界細胞の層内で分裂する。
【0076】
亜急性SDHは、概して、頭部外傷後2週間〜6週間以内に発現する血腫といわれている。
【0077】
慢性SDHは、硬膜とくも膜との間の「潜在的な」空間において発生する出血から生じ、通常、発現するのに約6週間を要するといわれている。この「潜在的な」空間は、普通の状況では、脳並びにくも膜及び軟膜のその被覆が硬膜に対して直接隣接するため、そのように説明される。しかしながら、加齢とともに、大脳皮質の萎縮が発生し、真の「硬膜下」の空間が、硬膜境界細胞層における細胞の分離によって発達し得る。その後、皮質を排出する小静脈は、硬膜に付着し得、これらの「架橋」静脈は、この拡大された硬膜下腔を横断する。したがって、これらの「架橋」静脈は、脳に慣性力を印加する任意の外傷に伴って、断裂及び出血する傾向がある。これは、高齢者におけるスリップもしくは転倒、出入口での頭部強打、又はいくつかの他の比較的些細な事象等の極めて些細な事象の後に発生し得る。深刻な出血は、通常、断裂した静脈が凝固する時、又は拡大した血餅によって生み出される圧力が出血する静脈の圧力を超える時に止まる。出血は、さらなる外傷に伴って再発し得るか、あるいは明確に理解されない理由によって、血餅自体の寸法は、最初の事象後から翌数週間にわたって拡大し得る。
4.2.慢性SDHの原因
【0078】
慢性SDHの原因は、1世紀以上にわたって物議を醸しており、依然として憶測の域を出ない問題のままである。最も顕著な理論は、血腫被膜からの繰り返して起こる出血及びそれに付随する線溶亢進を含む。慢性SDHは、後に続いて特有の外膜及び内膜を形成する血腫空洞の硬膜境界細胞層内に生じることが一般に考えられる。主にくも膜に由来する内膜にわずかの血管しか存在しない一方で、外膜は、多くの場合度重なる多発性出血の原因である多くの脆弱な巨大毛細血管(「洞様血管」とも呼ばれる)を含有する。したがって、この外膜からの度重なる大量出血は、血腫の進行性拡大の原因因子であると考えられる。
【0079】
慢性SDHは、高い頻度で、止血凝固の安定性を損なう線維素溶解活性の増加に付随し、繰り返し起こる出血及び血腫被膜をもたらす。
【0080】
通常、体内の漿膜腔の表面は、接触すると任意の異物を吸収する。硬膜下腔は、体内の他の箇所で必ずしも漿膜腔のようではないが、概して、同様に挙動するため、硬膜下腔内の血液、フィブリン、及びフィブリン分解産物(FDP)の蓄積は、硬膜下の収集物の再吸収を伴う細胞構成、又は徐々に拡大したSDHのいずれかの発現につながり得ると考えられている。脳の低い対圧、大きすぎる硬膜下の収集物、又は生理的脳萎縮は、慢性SDHの緩徐な進行性拡大の原因因子であり得る。硬膜境界細胞は、通常、血腫を2週目以降に組織化し、増殖し、かつ新生膜(外膜及び内膜)を生成し、最終的には、血腫は、コラーゲン及び弾性線維によって固定され、発芽毛細血管(洞様血管)を発芽する。これらの血管は、脆く、容易に出血することが知られている。血腫の内面は、それ自体の偽の膜を生み出し、くも膜から血餅を分離する。結果として、新生膜は、増殖性変化が続く限り、牽引に対して例外的に脆弱のままである。コラーゲンの増加は、新生膜を強化し、かつ損傷の線維治癒を完結させるが、些細な外傷並びに血腫流体における線維素溶解活性が、硬膜境界細胞のさらなる増殖及び外膜内の脆弱な洞様新生血管からの出血を誘発する悪循環が作り上げられ得、追加の新生膜、SDH内への出血、及びSDHの拡大の形成をもたらす。
【0081】
血腫外膜の組織学的調査は、多数の巨大毛細血管の相当の増殖可能性及び脆性を実証した。慢性SDHの外膜の最も特徴的な臨床病理学的側面は、巨大毛細血管からの反復的な多発性出血を経験するその傾向であるように思われる。巨大毛細血管の内皮細胞の一般的な特徴は、大きな管腔、弱毒化もしくは平らな内皮細胞、乏しい細胞質内嵌合、密接度の低い細胞結合、ギャップ結合、及び基底膜の薄さ又は不在である。これらの特質は、巨大毛細血管が非常に脆弱であり、出血を起こしやすく、かつ異常に高い血管透過性につながることを示唆する。0.6μm〜8μmの大きさの内皮細胞間の空間の数及び程度は、それらが、外膜の組織のみならず、血腫腔内漏出の大部分の割合を占め得ることを示唆する。いくつかの研究は、隣接した内皮細胞が一時的に分離され得、赤血球並びに血漿を、巨大毛細血管の管腔から脱出させることを示唆している。内皮の間隙が生じる機構は完全に理解されておらず、上昇した管腔内静水圧又は内皮収縮は、隣接した内皮細胞の分離、及び/又はそのような内皮の間隙を有する巨大毛細血管からの血液物質の血管周囲での漏出を誘発し得、不完全な基底膜は、慢性SDHの拡大に寄与し得る。
【0082】
さらに、いくつかの研究は、実験的に誘発された慢性SDHの成長の程度が、巨大毛細血管の層の厚さ及び漏出の程度に比例することを示唆している。いくつかの研究は、慢性SDH拡大の原因が、巨大毛細血管の直接大量出血、血腫空洞への類洞周囲の浮腫性流体の浸出、及び/又は外膜内で形成される小出血腔の破裂に起因したことを示している。
4.3.慢性SDHの分類
【0083】
慢性SDHいくつかの分類体系が提案されている。Nomura(Nomura,S.,et al.J.Neurosurg.81:910−13,1994)は、CTスキャンに基づく分類体系(高密度、同密度、低密度、混合密度、及び血腫の層化タイプ)を示唆した。Nakaguchi(Nakaguchi,H.,et al.J.Neurosurg.95:256−62,2001)は、CTスキャンに基づく血腫の4つの神経画像グループを定義した:1)均質密度タイプ、2)高密度の層が内膜に沿った、均質密度のサブタイプとして定義される薄膜タイプ、3)境界が2つの成分の間にある、異なる密度の2つの成分を含有する層化又は分離タイプ、及び4)内膜と外膜との間の高密度の隔壁が低密度〜同密度の背景に対するように見える、小柱密度タイプ。Frati(J.Neurosurg.100:24−32,2004)は、血腫を4つの異なるグループに分類するNomura及びNakaguchiの分類体系の組み合わせを提案した:グループ1、分離又は層化タイプ、グループ2、薄膜又は混合密度タイプ、グループ3、小柱タイプ(混合密度の血腫のグループ内でNomuraによって分類された)、及びグループ4、Nakaguchiによって均質密度タイプとしても定義されているNomuraによって説明された高密度、低密度、又は同密度タイプ。
4.4.慢性SDHのバイオマーカー
【0084】
いくつかの研究は、慢性SDHの病態生理学が炎症応答の病態生理学と類似していることを示唆している。1つの理論によると、外傷後、そして硬膜下腔が形成されると、CSF又は血液は、硬膜境界細胞層内に集まる。血液収集は、外傷後の架橋静脈の断裂によって引き起こされ得る。高齢の患者において、脳萎縮の結果として、硬膜境界細胞層及び架橋静脈の両方が伸ばされ、外傷事象により非常に容易に損傷を受け得る。この硬膜内の空間が形成されると、硬膜縁内の細胞が増殖し始め、慢性SDHの原因において第1のステップを表す。間葉細胞が増殖し、分化し、血餅又はCSFの周囲に外側膜もしくは外膜(炎症性被膜又は膜の一種)を形成する。慢性SDHの外膜は、いくつかの種類の炎症細胞(マスト細胞、好酸球、好中球、単球、マクロファージ、内皮細胞、及び線維芽細胞)が連続的に活性化及び補充される、肉芽組織の一種から成る。この膜は、未熟な血管並びに結合組織線維も含有し、全体的に見て、炎症性、血管新生、線維素溶解、及び凝固因子の源を構成する。
【0085】
免疫組織化学的分析は、主に、血漿細胞及び組織マクロファージにおける、慢性SDHの新生膜に浸潤する炎症細胞中のサイトカインVEGFの発現を実証した。新血管形成及び血管透過性増大におけるVEGFの役割を試験したいくつかの研究は、炎症が、外膜の血管形成(既存の血管からの新生血管の成長を伴う生理学的過程を意味する)に関与することを示唆する。したがって、外傷後、慢性SDHの自然経過における一連の事象は、局所炎症、血管形成、血管漏出又は浸透性(未熟な新血管に起因)、出血、凝固亢進活性、線溶亢進活性、及び現行の血管透過性(プラスミンによって高分子量のキニノゲンから活性化されるブラジキニンに起因)を含む。これは、サイトカイン及びブラジキニン等の炎症誘発性因子の放出によって引き起こされるさらなる炎症につながり、高頻度の再出血及び慢性SDHの拡大に関与する自己促進的悪循環を引き起こす。したがって、一部の人々は、バイオマーカーIL−6及びIL−8が慢性SDHの研究に適切であり得ることを示唆する。
【0086】
概して、IL−6及びIL−8は、炎症過程のマーカーである。IL−6及びIL−8は、刺激単球、マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、T細胞、B−リンパ球、顆粒球、平滑筋細胞、好酸球、軟骨細胞、骨芽細胞、マスト細胞、及びグリア細胞を含む、多くの異なる細胞型によって生成される。
【0087】
簡潔に、IL−6は、免疫及び炎症応答に影響を与え、急性期反応の主要な生理学的メディエータのうちの1つである。神経系の炎症の期間中、細菌性又はウイルス性髄膜炎を有する患者、並びに神経膠腫を担持する患者のCSFにおいて、非常に高いレベルのIL−6を、高い頻度で観察することができる。炎症過程におけるIL−8の役割は、十分に確立されている。IL−8は、好中性顆粒球上で接着分子の親和性を強化し、それらを活性化し、かつそれらの走化性を媒介するその特定の能力において、全ての他のサイトカインとは異なる。さらに、IL−8は、血管形成を支援し、肉芽組織等の血管形成依存性過程、創傷治癒、及び腫瘍成長に関与し得る。
【0088】
慢性SDHは、概して、慢性炎症過程の特性のうちのいくつかを示す。血腫において、IL−6及びIL−8は、外膜に浸潤する線維芽細胞、並びに内皮細胞及び炎症細胞から分泌される。IL−6及びIL−8の生成は、血小板活性化因子、ブラジキニン、及びトロンビン等の出血後に放出される炎症誘発性因子によって増加する。
4.5.慢性SDHの治療及びモデル系の必要性
【0089】
慢性SDHの推定上の危険因子には、年齢;アルコール依存症;肝機能障害、腎疾患、糖尿病、認知症、もしくは凝血障害等の内科疾患;血液透析;抗凝固剤、抗血小板薬、もしくは化学療法剤の使用;脳脊髄液シャントもしくは別の方法で治療された水頭症の存在;脳脊髄液の術後排出;及び/又は頭蓋の一定の寸法と関連した脳の寸法減少の他の原因が含まれる。CT又は磁気共鳴映像(MRI)上での慢性SDHの出現(他の種類と比較した、層化血腫)並びに慢性SDHの治療方法(穿頭孔、開頭術、及び灌注を伴うか、あるいは灌注を伴わないツイストドリル穿孔術)は、慢性SDHの発現に影響を与え得る。慢性SDHは、高齢者における共通の疾患であり、その発生率は、65歳を超える人において最高である(100,000人中58人)。約60%〜80%の事例において、軽度の外傷性事象が、出血に先行すると報告されているが、軽度の外傷エピソードは、場合によっては認識されないこともある。再発についてのこれらの推定上の危険因子は、議論の余地がある所見が珍しくないいくつかの報告書において議論されている。
【0090】
手術は、慢性SDHの最適な治療である。いくつかの異なる手術様式:開頭術、灌注及び/もしくは閉鎖排出システムを伴うか、あるいは伴わない穿頭孔、並びにその最大の厚さの部位で血腫に直接入るツイストドリル穿孔術が示唆されている。しかしながら、慢性SDHに関連した合併症は、その予後及び手術結果の両方を阻害し得る。さらに、手術後の慢性SDHの再発率は、3.7%〜30%である。再発は、慢性SDHによる死及び罹患の可能性を増加させる。
【0091】
慢性SDHの正確かつ再生可能なモデル系の欠如は、慢性SDHの再発を予防するための新規の治療薬及び治療方法を研究し、開発する尽力を阻害している。慢性SDHの動物モデルを開発する従前の試みは、再現性の欠如を含むが、それに限定されない著しい制限を呈している。
5.凝固
【0092】
止血は、損傷した血管からの失血の停止である。血小板は、最初に、損傷した血管の内皮下領域内の巨大分子に付着し、その後、それらは凝集して、一次止血血栓を形成する。血小板は、血漿凝固因子の局所的活性化を刺激し、血小板凝集を強化するフィブリン塊の生成につながる。その後、創傷治癒が起こるにつれて、血小板凝集及びフィブリン塊が分解される(Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Joel G.Hardman and Lee E.Limbird,Eds,McGraw−Hill,2001,p.1519−20)。
【0093】
凝固は、一連の酵素前駆体活性化反応を伴う。それぞれの段階において、前駆体タンパク質、又は酵素前駆体は、前駆体分子における1つ以上のペプチド結合の切断によって活性プロテアーゼに転換される。それぞれの段階において含まれ得る成分には、前段階由来のプロテアーゼ、酵素前駆体、非酵素的タンパク質共同因子、カルシウムイオン、並びにインビボで損傷した血管及び血小板によってもたらされる組織化表面が含まれる。生成される最終プロテアーゼは、トロンビン(第Ila因子)である。
【0094】
フィブリノゲンは、ジスルフィド結合によって共有結合した3つの対のポリペプチド鎖(α、β、及びγで示される)からなる330,000ダルトンのタンパク質である。トロンビンは、それぞれ、α鎖及びβ鎖のアミノ末端からフィブリノペプチドA(16個のアミノ酸残基)及びB(14個のアミノ酸残基)を切断することによって、フィブリノゲンをフィブリンモノマー(第IA因子)に転換する。フィブリノペプチドの除去は、フィブリンモノマーにゲルを形成させる。最初に、フィブリンモノマーは、相互に非共有的に結合される。その後、第XIIIa因子が、血餅の強度を強化するために隣接したフィブリンモノマーを架橋する鎖間グルタミン転移反応を触媒する。
【0095】
フィブリンは、トロンビンによる第XIII因子の活性化及びプラスミノーゲン活性化因子(t−PA)の活性化の両方に関与する。フィブリンは、活性化凝固因子である第Xa因子及びトロンビンに特異的に結合し、それらを線維ネットワークに封入するため、活性のままであり、かつ線維素溶解中に放出され得るこれらの酵素の一時的な阻害剤として機能する。近年の研究は、フィブリンが炎症応答において重要な役割を果たすことを示している。
【0096】
凝固に関与するプロテアーゼ酵素前駆体には、第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、及びプレカリクレインが含まれる。第V因子及び第VIII因子は、相同の350,000ダルトンのタンパク質である。第VIII因子は、フォン・ヴィレブランド因子に結合される血漿中に循環する一方で、第V因子は、血漿中に遊離して、かつ血小板の成分としての両方で存在する。トロンビンは、前駆体形態の少なくとも50倍の凝集活性を有する活性化因子(Va及びVIIIa)を産出するために、V及びVIIIを切断する。第Va因子及び第VIIIa因子は、それら自体、酵素活性を有しないが、それぞれ、Xa及びIXaのタンパク質分解効率を増加させる共同因子としての機能を果たす。組織因子(TF)は、VIIaのタンパク質分解効率を高度に増加させる非酵素的リポタンパク質共同因子である。これは、通常血漿と接触しない細胞(例えば、線維芽細胞及び平滑筋細胞)の表面に存在し、破裂した血管の外側で凝固を開始する。
【0097】
凝固の2つの経路:内因性凝固経路(成分の全てが血漿に対して内因性であるという理由からそのように呼ばれている)、及び外因性凝固経路が認識されている。外因性系及び内因性系は、フィブリン形成を引き起こす最後の共通経路を活性化するために収束する。
図6は、典型的な凝固カスケードの説明的描写を示す。概して、これらの系がともに機能し、インビボで相互作用することが認識される。
【0098】
外因性系(組織因子経路)は、トロンビンバーストを生成し、組織トロンボプラスチンが第VII因子を活性化するときに開始する。血管損傷の際、TFは、血液に曝露され、酵素凝固因子、第VII因子(プロコンバーチン)が血液内で循環する。TFに結合されると、FVIIは、トロンビン(第IIa因子)、第Xa因子、第IXa因子、第XIIa因子、及びFVIIa−TF複合体自体を含む、異なるプロテアーゼによって活性化されて、FVIIaになる。FVIIa−TF複合体は、第IX因子及び第X因子を活性化する。FVIIa−TFによるFXaの活性化は、ほぼ即座に組織因子経路阻害剤(TFPI)によって阻害される。第Xa因子及びその共同因子Vaは、プロトロンビンのトロンビンへの変換を活性化するプロトロンビナーゼ複合体を形成する。次に、トロンビンは、FV及びFVIII(FXIを活性化し、順に、FIXを活性化する)を含む凝固カスケードの他の成分を活性化し、FVIIIを活性化し、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)への結合からFVIIIを解放する。FVIIa及びFlXaは一緒になって、「テナーゼ」複合体を形成し、それがFXを活性化して、循環が続く。
【0099】
血液が正常な内皮細胞及び血液細胞を除く任意の表面に接触した時に、内因性系(接触活性化経路)が開始する。内因性系は、高分子量のキニノゲン(HMWK)、プレカリクレイン、及びFXII(ハーゲマン因子)によるコラーゲン上での一次複合体の形成から始める。プレカリクレインは、カリクレインに転換され、FXIIはFXIIaになる。FXIIaは、FXIをFXIaに転換する。第XIa因子は、FIXを活性化し、それは、その共同因子FVIIIaとともにテナーゼ複合体を形成し、FXを活性化してFXaにする。
【0100】
現在理解されているように、インビボ凝固は、細胞表面に集中した3段階の過程である。
図7は、インビボ凝固の細胞表面に基づくモデルの説明図を示す(Monroe Arterioscler Thromb Vase Biol.2002;22:1381−1389)。第1の段階において、凝固は、内皮下層に存在する組織因子での開始によって始まり、組織は通常、血液に曝露されず、炎症によって活性化される時に、単球及び内皮が活性化される。第VII因子及び第VIIa因子は、組織因子及び隣接したコラーゲンに結合する。組織因子複合体である第VII因子は、第X因子及び第IX因子を活性化する。第Xa因子は、第V因子を活性化し、細胞を発現する組織因子上に、プロトロンビナーゼ複合体(第Xa因子、第Va因子、及びカルシウム)を形成する。第2の段階では、凝固は、血小板が血管中の損傷部位に付着するにつれて増幅される。トロンビンは、血小板付着によって活性化され、次に、血小板を完全に活性化し、それらの付着を強化し、かつ血小板α顆粒から第V因子を放出するように作用する。活性化された血小板の表面上のトロンビンは、第V因子、第VIII因子、及び第XI因子を活性化し、その後、第IX因子を活性化する。よって、テナーゼ複合体(第IXa因子、第VIIIa因子、及びカルシウム)は、第Xa因子が生成され得る血小板上に存在し、トロンビンを大規模に生成することができるように、血小板上に別のプロトロンビナーゼ複合体を生成することができる。第3の段階である増殖は、大量のトロンビンをプロトロンビンから生成させるプロトロンビナーゼ複合体の活性化の組み合わせである。より多くの血小板を動員することができ、同様に、フィブリンポリマー及び第XIII因子を活性化することができる。
天然抗凝固機構
【0101】
血小板の活性化及び凝固は、通常、無傷の血管内では発生しない。血栓症(血小板凝集体及び/又はフィブリン塊が血管を閉塞する病理学的過程を意味する)は、正常な血管内皮を必要とするいくつかの調節機構によって阻止される。内皮細胞によって合成されるアラキドン酸の代謝産物であるプロスタサイクリン(PGI
2)は、血小板凝集及び分泌を阻害する。抗トロンビンは、内因性かつ共通の経路の凝固因子を阻害する血漿タンパク質である。内皮細胞によって合成されるへパラン硫酸プロテオグリカンは、抗トロンビン活性を刺激する。タンパク質Cは、第II因子、第VII因子、第IΧ因子、及び第X因子に類似した血漿酵素前駆体である。活性化タンパク質Cは、その非酵素的共同因子(タンパク質S)と組み合わされて、共同因子Va及びVIIIaを分解し、それによって、プロトロンビン及び第X因子の活性化速度を高度に下げる。タンパク質Cは、内皮細胞の内在性膜タンパク質であるトロンボモジュリンの存在下で、トロンビンのみによって活性化される。抗トロンビンと同様に、タンパク質Cは、無傷の内皮細胞周辺で抗凝固効果を与えるようである。第Xa因子に結合される時に、血漿のリポタンパク質画分に見出される組織因子経路阻害剤(TFPI)は、第Xa因子及び第Vlla因子−組織因子複合体を阻害する。
【0102】
線維素溶解
【0103】
フィブリンの分解は、「線維素溶解」と呼ばれる。線維素溶解系は、フィブリンを消化する酵素であるプラスミンの働きの結果として、血管内血栓を溶解する。不活性前駆体であるプラスミノーゲンは、単一ペプチド結合の切断によってプラスミンに転換される。プラスミノーゲン(EC3.4.21.7、PLG)は、フィブリン塊を含む多くの血漿タンパク質を分解する。
【0104】
創傷におけるフィブリンが止血を維持し続けながら、線維素溶解系は、不要なフィブリン血栓が除去されるように調節される。
図8は、線維素溶解経路の説明的図式である(Meltzer,et al.Seminars Thrombosis Hemostasis 2009,35:469−77)。セリンプロテアーゼ組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)は、血管閉塞によって生成されるうっ血を含む種々のシグナルに応じて、内皮細胞から放出される。これは、血液から迅速に一掃されるか、あるいは循環阻害剤(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1及びプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2)によって阻害されるため、循環プラスミノーゲンにわずかな影響しか与えない。tPAは、フィブリンに結合し、同様にフィブリンに結合するプラスミノーゲンをプラスミンに転換する。プラスミノーゲン及びプラスミンは、リジン(Lys、K)残基が豊富なそれらのN末端付近に位置する結合部位のフィブリンに結合する。これらの部位は、プラスミンの阻害剤α
2−抗プラスミンへの結合にも必要とされる。α
2−抗プラスミンは、プラスミンで安定した複合体を形成し、それによって、それを不活性化する。したがって、フィブリン結合プラスミンは、阻害から保護される(Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Joel G.Hardman and Lee E.Limbird,Eds,McGraw−Hill,2001,p.1531−32)。
【0105】
プラスミノーゲンは、プラスミノーゲン(又はプラスミン)のフィブリンへの結合を媒介する高親和性のアミノ末端リジン含有結合部位を含有し、これは、線維素溶解を強化する。これらの部位は、フィブリン(フィブリノゲン)のリジン及びアルギニン残基に特異的に結合する(「クリングル」として既知の)アミノ末端二次構造モチーフ内にあり、プラスミノーゲンからプラスミンに転換される時、プラスミンは、これらのリジン及びアルギニン残基へのアミノ酸のC末端の鎖を切断することによって、セリンプロテアーゼとして機能する。したがって、血餅上でのプラスミン作用は、最初に、フィブリンに切れ目を作成し、さらなる消化が可溶化につながる。これらの部位は、主要な生理学的プラスミン阻害剤であるα2−抗プラスミンでのプラスミンの複合体の形成も促進する。
6.抗線溶剤(anti-fibrinoltic agent)
【0106】
「抗線溶剤」(フィブリン塊の溶解を阻止するために使用される作用物質を意味する)は、いくつかの出血性障害の治療において使用されている。典型的にはリジン類似体であるこれらの作用物質は、線維素溶解経路に関与する酵素に有効な阻害剤である。手術中の出血を減少させるために使用されている、プラスミンを阻害するウシタンパク質であるアプロチニン(Trasylol(商標)として市販されているウシ膵臓トリプシン阻害剤又はBPTI)は、ヒトに投与される時、致命的なアナフィラキシーを伴う。
6.1.アミノカプロン酸
【0107】
アミノカプロン酸(AMICAR、6−アミノヘキサン酸、ε−アミノカプロン酸)は、アミノ酸リジン(Lys、K)の誘導体及び類似体であり、リジン残基に結合する酵素に有効な阻害剤である。
アミノカプロン酸 リジン
【0108】
AMICARは、プラスミノーゲンのクリングルドメイン(折り畳んで3個のジスルフィド結合によって安定化された大きなループにする自立したタンパク質ドメイン)に可逆的に結合する。そうすることによって、それは、プラスミンに対するその活性化因子によるプラスミノーゲンの活性化を阻止し、かつフィブリン上でのプラスミン作用を阻止する。
【0109】
AMICARは、線維素溶解が出血に寄与する時の止血の強化に有用である。線維素溶解出血は、高い頻度で、心臓手術及び他の種類の手術(心臓バイパス術の有無にかかわらず)及び門脈大静脈吻合術後の外科合併症;無巨核球性血小板減少症(再生不良性貧血を伴う)等の血液学的障害;急性及び生命にかかわる胎盤早期剥離;肝硬変;頭蓋内動脈瘤破裂;脳内及びSDH;並びに前立腺癌、肺癌、胃癌、及び頸癌等の腫瘍性疾患に付随し得る。通常、標準的な生理学的現象である尿の線維素溶解は、(前立腺切除術及び腎摘出術後の)外科的血尿又は(泌尿生殖器系の多嚢性疾患又は腫瘍性疾患を伴う)非外科的血尿に関連付けられる過度の尿路線維素溶解出血に寄与し得る。
【0110】
AMICARは、プラスミノーゲン活性化因子の作用及びプラスミン活性(より小さい程度で)の両方を阻害する。AMICARによる線維素溶解の阻害は、凝固又は血栓症を理論上もたらし得る。いくつかの研究は、くも膜下出血(SAH)の治療における抗線維素溶解薬の使用に関連付けられる、水頭症、脳虚血、又は脳血管痙攣等のある特定の神経学的欠損の発生率の増加を示している。薬物関連性は不明確なままであるが、1つの理論として、これらの合併症がこれらの薬物による血栓症の促進に起因することが挙げられる。したがって、血栓症の危険性が増加し得るので、AMICARを、第IX因子複合体濃縮物又は抗阻害剤凝固剤濃縮物とともに投与すべきでないことが忠告される。
6.2.トラネキサム酸
【0111】
リジンの合成誘導体であるトラネキサム酸(Cyklokapron(登録商標)、Transamin(登録商標)、Espercil(登録商標))は、プラスミノーゲン活性化の競合的阻害剤であり、はるかにより高い濃度で、プラスミンの非競合的阻害剤である。
トラネキサム酸
【0112】
これは、インビトロでAMICARよりも約10倍強力である。トラネキサム酸は、それらの化合物の間の効力の差異に相当する比率で、プラスミノーゲン分子の強い受容体部位及び弱い受容体部位の両方にAMICARよりも強力に結合する。
【0113】
トラネキサム酸は、子宮筋腫に関連した大量出血である機能不全性子宮出血の第一次非ホルモン治療、及び血友病における第VIII因子に対する第二次治療として使用される。
6.3.第VII因子
【0114】
組換え活性化因子VIIaは、北米及び欧州で、(阻害剤を伴う)血友病での使用を許可されている。第VII因子は、組織因子に結合することによって、組織損傷及び血管壁破損の部位で局所的に作用するため、血小板を活性化するのに十分な少量のトロンビンを生成する。薬理学的投与量で、第VII因子は、活性化血小板の表面で第X因子を直接活性化し、トロンビンバースト及び凝固加速をもたらす(Mayer,S.et al.,NEJM,2008,358:2127−2138)。
6.4.アプロチニン
【0115】
6,512ダルトンの分子量を有する58個のアミノ酸残基から成るウシタンパク質であるアプロチニンは、1930年代に、そのカリクレイン及びトリプシン阻害効果により単離され、1959年以降臨床使用されている。線維素溶解を阻害し、かつ血小板機能を保つことによって、アプロチニンは、心臓手術、肺、及び肝移植、並びに人工股関節置換手術における失血及び輸血の必要性を減少させることが示された。さらなる疾患関連適用は、線溶亢進止血障害及び血栓溶解療法の合併症である。最も一般的な市販の調製物は、Trasylol(商標)(Bayer AG,Leverkusen,Germany)及びAntagosan(商標)(Aventis Pharma,Frankfurt/M,Germany)(Beierlein,W.et al.,Ann.Thorac.Surg.,2005,79:741−748)である。
【0116】
その抗線維素溶解作用により、アプロチニンは、線維素溶解活性が増加する時でさえ止血を達成するために、フィブリン封止剤に添加される。既製のフィブリン封止剤キットは、1974年以降欧州で、1998年以降米国で市販されている。最も一般的なキットは、Beriplast(商標)(Centeon,Marburg,Germany)、Tissucol/Tisseel(商標)(Baxter Hyland Immuno Divisiion,Vienna,Austria)、及びHemaseel(商標)(Hemacure,Montreal,Canada)である。止血性固体ウマコラーゲンフリースであるTachoComb(商標)(Nycomed,Roskilde,Denmark)は、少量のアプロチニンも含有する(Beierlein,W.et al.,Ann.Thorac.Surg.,2005,79:741−748)。
7.生再吸収性ポリマーからの薬物送達
【0117】
薬物又は薬学的に活性な化合物との生分解性ポリマーの組み合わせは、体内に注入もしくは挿入される時、薬物を持続放出することができる製剤を許容し得る。
【0118】
部位特異的活性は、概して、体内で製剤が沈着する位置が、流体が充満した空間、あるいは例えば、くも膜下腔、慢性SDHの硬膜下腔、又は脳内の血腫、腫瘍、もしくは血管奇形の外科的排除後に残された空洞等の一種の空洞である場合に生じる。これは、活性が必要とされる部位において薬物の高濃度を、かつ体の他の部位においてより低い濃度を提供し、したがって、好ましくない全身性副作用の危険性を減少させる。
【0119】
部位特異的送達系は、例えば、(直径約1μm〜約100μmの)微小粒子、熱可逆性ゲル(例えば、PGA/PEG)、及び膜の形態であり得る生分解性ポリマー(例えば、PLA、PLGA)の使用を含む。
【0120】
インビボでの薬物及びポリマー分解の送達特性を修正することもできる。例えば、ポリマー接合は、体内の薬物の循環を変更し、かつ組織標的化を達成し、刺激を減少させ、薬物安定性を改善するために使用されてもよい。
【0121】
全てのこれらの可能性が存在する一方で、そのようなポリマーを適用して、治療薬をヒト脳内に局所的に送達して脳内出血状態を治療した者はいない。
【0122】
記載される発明は、治療的組成物、脳の出血状態を治療するための治療薬を特定するための方法、脳の出血状態を治療するための方法、並びに慢性SDH及びICHの正確かつ再生可能なモデル系を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0127】
典型的に、一方の末端に頭部及び口を有し、多くの場合、反対側の末端に肛門及び尾を有する動物を指す時、頭部末端が頭蓋末端と称され、尾末端は尾方端と称される。頭部自体内で、吻側は、鼻の末端に向かう方向を指し、尾側は、尾の方向を指すために用いられる。通常、引力をから離れて上方に配向される動物の体の表面又は側面は、背面であり、反対側の側面、典型的には、全ての脚で歩行するか、泳ぐか、あるいは飛行する時に、地面に最も近い側面は、腹側である。四肢又は他の付属肢において、主体に近い点が近位であり、主体から遠い点が遠位である。3つの基本的な基準面が動物解剖学において使用されている。「矢状」面は、体を左部分と右部分に分ける。「正中矢状」面は、正中線上であり、すなわち、脊椎等の正中線構造を通り、全ての他の矢状面はそれに平行である。「冠状」面は、体を背側部及び腹側部に分ける。「横断」面は、体を頭蓋部及び尾部に分ける。
【0128】
ヒトを指す時、体及びその部分は、常に、体が直立していることを想定して説明される。頭部端部に近い体の部分は、「上部」であり(動物の頭蓋に相当する)、一方で、頭部端部から遠い部分は、「下部」である(動物の尾に相当する)。体の前に近い物体は、「前部」と称され(動物の腹側に相当する)、体の後部に近い物体は、「後部」と称される(動物の背側に相当する)。横断面、軸面、又は水平面は、地面に平行なX−Y面であり、上頭部と下位/最下部を分ける。冠状面又は前額面は、地面に垂直なY−Z面であり、前部と後部を分ける。矢状面は、地面及び冠状面に垂直なX−Z面であり、左と右を分ける。正中矢状面は、体のちょうど中央である特定の矢状面である。
【0129】
正中線近くの構造は、中央構造と呼ばれ、動物の側面近くの構造は、側方構造と呼ばれる。したがって、中央構造は正中矢状面に近く、側方構造は正中矢状面から遠い。体の正中線上の構造は、中央である。例えば、ヒト対象の鼻の端部は、中線上である。
【0130】
同側とは、同一の側面にあることを意味し、対側とは、他方の側面にあることを意味し、両側とは、両方の側面にあることを意味する。体の中心に近い構造は近位又は中央であり、一方で、より遠位の構造は遠位又は末梢である。例えば、手は腕の遠位端にあり、一方で、肩は近位端にある。
【0131】
本明細書で使用される「活性」という用語は、薬理学的もしくは生物学的活性又は作用を有することを指す。「活性成分」(「AI」、「薬学的活性成分」、「API」、又は「バルク活性」)という用語は、薬学的に活性な薬物中の物質である。本明細書で使用される「追加の活性成分」という語句は、説明される組成物の化合物以外の薬理学的活性又は任意の他の有益な活性を与える作用物質を指す。
【0132】
本明細書で使用される「投与する」という用語は、与えるか、あるいは適用することを意味する。本明細書で使用される「投与」という用語は、インビボ投与、並びに組織への直接的なエクスビボ投与を含む。概して、経口的に、口腔的に、非経口的に、局所的に、吸入もしくは吹送によって(すなわち、口もしくは鼻を通して)、又は直腸的のいずれかで、要望に応じて、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、及び賦形剤を含有する単位用量製剤中の組成物を全身投与することができるか、あるいは、注入、埋め込み、グラフト、局所適用、又は非経口的等であるが、それらに限定されない手段で、局所投与することができる。
【0133】
本明細書で使用される「アゴニスト」という用語は、全体的又は部分的薬理学的応答を誘発するために受容体を活性化することができる化学物質を指す。受容体を、内因性もしくは外因性のいずれかのアゴニスト及びアンタゴニストによって活性化又は不活性化することができ、生物学的応答の刺激又は阻害をもたらす。生理学的アゴニストは、同一の身体的応答を引き起こすが、同一の受容体に結合しない物質である。特定の受容体の内因性アゴニストは、その受容体に結合し、かつそれを活性化する、体が自然に生成する化合物である。スーパーアゴニストは、標的受容体の内因性アゴニストよりも大きい最大応答を引き起こすことができるため、効率は100%を超える。このことは、それが内因性アゴニストよりも強力であることを必ずしも意味しないが、むしろ、受容体結合後に細胞の内側で引き起こされ得る最大可能応答の比較である。完全アゴニストは、受容体に結合し、かつそれを活性化し、その受容体において完全有効性を示す。部分アゴニストも、所与の受容体に結合し、かつそれを活性化するが、完全アゴニストと比較して、受容体において部分有効性しか有さない。逆アゴニストは、その受容体のアゴニストと同一の受容体結合部位に結合する作用物質であり、受容体構造的活性を逆転させる。逆アゴニストは、受容体アゴニストと反対の薬理効果を及ぼす。不可逆的アゴニストは、受容体が永久に活性化されるような様式で、受容体に永久に結合するアゴニストの一種である。これは、アゴニストの受容体への関連性が可逆的である一方で、受容体への不可逆的アゴニストの結合が不可逆的であると考えられるという点において、単なるアゴニストとははっきりと異なる。これは、化合物にアゴニスト活性の短期間のバーストを引き起こさせ、その後、受容体の脱感作及び内部移行が続き、長期にわたる治療を伴って、よりアンタゴニストに類似した作用を引き起こす。選択的アゴニストは、1つの特定の種類の受容体に特異的である。
【0134】
本明細書で使用される「同種」という用語は、遺伝的に異なるが、同一の種に属するか、あるいはそれから得られることを指す。
【0135】
本明細書で使用される「類似体」という用語は、別の構造に類似している構造を有するが、それとは異なる化合物、例えば、1つ以上の原子、官能基、又は下部構造を有するものを指す。
【0136】
本明細書で使用される「アンタゴニスト」という用語は、別の物質の効力に対抗する物質を指す。
【0137】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、一例として、自然発生及び非自然発生抗体の両方を含む。具体的には、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにその断片を含む。さらに、「抗体」という用語は、キメラ抗体及び完全合成抗体、並びにその断片を含む。
【0138】
抗体は、血清タンパク質であり、その分子は、それらの標的上の小さい化学的集団に相補的なそれらの表面の小さい領域を有する。1つの抗体分子につき少なくとも2個、及びいくつかの種類の抗体分子において、10個、8個、又はいくつかの種では、12個が存在する、これらの相補領域(抗体結合部位又は抗原結合部位と称される)は、抗原上のそれらの対応する相補領域(抗原決定基又はエピトープ)と反応して、多価抗原のいくつかの分子をともに結合し、格子を形成し得る。
【0139】
全体の抗体分子の基本構造単位は、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの同一の軽(L)鎖(それぞれ、約220個のアミノ酸を含有する)及び2つの同一の重(H)鎖(それぞれ、通常、約440個のアミノ酸を含有する)からなる。2つの重鎖及び2つの軽鎖は、非共有及び共有(ジスルフィド)結合の組み合わせによってともに保持される。分子は、2つの同一の半分から成り、それぞれ、軽鎖のN末端領域及び重鎖のN末端領域から成る同一の抗原結合部位を有する。軽鎖及び重鎖の両方ともに、通常、協働して抗原結合表面を形成する。
【0140】
ヒト抗体は、2種の軽鎖、κ及びλを示し、免疫グロブリンの個々の分子は、概して、どちらか1つのみである。正常な血清において、分子の60%がκ決定因子を有し、30%がλを有することが見出されている。多くの他の種が2種の軽鎖を示すことが見出されているが、それらの割合は異なる。例えば、マウス及びラットにおいて、λ鎖は、全体の数パーセントしか含まず、イヌ及びネコにおいて、κ鎖は非常に低く、ウマは、いかなるκ鎖も有さず、ウサギは、系統及びb遺伝子座アロタイプに応じて、5〜40%のλを有し得、ニワトリ軽鎖は、κよりもλに相同している。
【0141】
哺乳動物において、5つのクラスの抗体、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それぞれ、それ自身の重鎖クラス、α(IgAにおいて)、δ(IgDにおいて)、ε(IgEにおいて)、γ(IgGにおいて)、及びμ(IgMにおいて)を有する。加えて、それぞれ、γ1、γ2、γ3、及びγ4重鎖を有する、IgG免疫グロブリンの4つのサブクラス(IgGl、IgG2、IgG3、IgG4)が存在する。その分泌型において、IgMは、5つの4鎖単位から成る五量体であり、合計10個の抗原結合部位になる。それぞれの五量体は、2つの隣接したテール領域の間に共有結合的に挿入される1つのJ鎖のコピーを含有する。
【0142】
全ての5つの免疫グロブリンクラスは、それらが広範囲の電気泳動移動度を示し、かつ同質ではないという点で、他の血清タンパク質とは異なる。例えば、個々のIgG分子が正味荷電で相互と異なるこの異質性は、免疫グロブリンの内因性特性である。
【0143】
多くの場合、鍵と鍵穴の関係と比較される、相補性の原理は、比較的弱い結合力(疎水及び水素結合、ファンデルワールス力、並びにイオン相互作用)が関与し、2つの反応分子が相互に非常に密接して接近することができ、実際そのように密接するため、1つの分子の突出した構成原子もしくは原子群が、他方の相補的な陥没又は凹部に適合することができる時にのみ効果的に作用し得る。抗原抗体相互作用は、高度の特異性を示し、多くのレベルで著明である。分子レベルまで下げると、特異性とは、抗原への抗体の結合部位が、非連関抗原の抗原決定基に全く類似しない相補性を有することを意味する。2つの異なる抗原の抗原決定基がいくらかの構造的類似性を有するたびに、他の抗原へのいくつかの抗体の結合部位への1つの決定要因のある程度の適合が発生し得、その上、この現象は、交差反応を引き起こす。交差反応は、抗原抗体反応の相補性又は特異性を理解する上で主に重要である。免疫学的特異性又は相補性は、抗原における少量の不純物/汚染物質の検出を可能にする。
【0144】
マウス骨髄腫細胞株を有する免疫化されたドナー由来のマウス脾臓細胞を融合して、選択培地内で成長する確立したマウスハイブリドーマクローンを産出することによって、モノクローナル抗体(mAbs)を生成することができる。ハイブリドーマ細胞は、抗体分泌B細胞と骨髄腫細胞とのインビトロ融合に起因する不死化ハイブリッド細胞である。培養中の抗原特異的B細胞の一次活性化を指すインビトロ免疫化は、マウスモノクローナル抗体を生成するもう1つの十分に確立した手段である。
【0145】
末梢血リンパ球由来の免疫グロブリン重鎖(V
H)並びに軽鎖(V
K及びV
λ)可変遺伝子の様々なライブラリを、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅により増幅することもできる。重鎖及び軽鎖可変ドメインがポリペプチドスペーサ(単一鎖Fv又はscFv)によって結合される単一ポリペプチド鎖をコードする遺伝子を、PCRを用いて、重鎖及び軽鎖V遺伝子をランダムに組み合わせることによって作製することができる。次に、ファージの先端でのあまり重要ではない外殻タンパク質との融合によって、コンビナトリアルライブラリを、線維状のバクテリオファージの表面上での表示のためにクローン化することができる。
【0146】
誘導選択の技法は、齧歯類免疫グロブリンV遺伝子とシャッフルするヒト免疫グロブリンV遺伝子に基づく。本方法は、(i)ヒトλ軽鎖のレパートリーを、目的の抗原と反応するマウスモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)ドメインとシャッフルすること、(ii)その抗原上で半ヒトFabを選択すること、(iii)ヒト軽鎖遺伝子を有するクローンFab断片を単離するために、第2のシャッフルにおけるヒト重鎖のライブラリの「ドッキングドメイン」として、選択したλ軽鎖遺伝子を使用すること、(v)電気穿孔法によって、マウス骨髄腫細胞を、その遺伝子を含有する哺乳類細胞発現ベクターでトランスフェクトすること、及び(vi)マウス骨髄腫における完全なIgGl、λ抗体分子として、抗原と反応するFabのV遺伝子を発現することを伴う。
【0147】
本明細書で使用される「抗線維素溶解薬」という用語は、フィブリン塊を阻止又は溶解するために使用される作用物質を指す。抗線維素溶解薬は、線維素溶解経路に関与する酵素に有効な阻害剤であり、典型的には、リジン類似体を含む。
【0148】
「抗原」という用語及びその種々の文法形態は、抗体の生成を刺激することができ、かつそれらと特異的に結合することができる任意の物質を指す。「エピトープ」及び「抗原決定基」という用語は、本明細書で同義に使用され、抗体結合部位(ACS)が認識し、かつ抗体がそれ自体に結合/付着する分子上の抗原部位を指す。所与のエピトープは、一次、二次、又は三次配列関連であり得る。連続的な抗原決定基/エピトープは、本質的に直鎖である。らせん状ポリマー又はタンパク質等の秩序構造において、抗原決定基/エピトープは、本質的には、相互に接近し得る分子の異なる部分由来のアミノ酸側鎖を伴う構造内もしくは構造の表面上の限定領域又はパッチである。これらは、立体配座決定要因である。
【0149】
「抗血漿」は、哺乳動物又はヒトを抗原で免疫化した後に得ることができる血漿と定義される。それは、小体成分を全血から分離することによって得られる。
【0150】
「抗血清」は、ヒトを含む免疫化された哺乳動物から得られる、凝固が起こった後に再生した血液の液相である。
【0151】
「麻酔薬」は、感覚の減少又は喪失をもたらす作用物質を指す。本発明の文脈においての使用に好適な麻酔薬の非限定的な例には、リドカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、ジブカイン、エチドカイン、メピバカイン、テトラカイン、ジクロニン、ヘキシルカイン、プロカイン、コカイン、ケタミン、プラモキシン、及びフェノールの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0152】
本明細書で使用される「動脈瘤」という用語は、生物の一生における任意の時点で発生し得る体内の動脈又は静脈のいずれかの血管の異常な拡張を意味する。
【0153】
本明細書で使用される「自家」という用語は、同一の生物に由来することを意味する。
【0154】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、生きている組織に臨床的に関連する組織刺激、損傷、中毒反応、又は免疫学的反応を引き起こさないことを指す。
【0155】
本明細書で使用される「生分解性」という用語は、単純な化学過程によって、体酵素の作用によって、又は他の類似した生物学的活性機構によって、時間とともに能動的又は受動的に分解する物質を指す。
【0156】
本明細書で使用される「脳癌」という用語は、脳内で開始する新生物、又は体内のどこかで始まり脳に移動する転移性脳癌を指す。本明細書で使用される「脳癌」という用語は、良性癌細胞及び悪性癌細胞の両方を含む。
【0157】
本明細書で使用される「担体」という用語は、生物に著しい刺激を引き起こさず、かつ記載される発明の組成物の化合物の生物学的活性及び特性を抑制しない物質を表す。担体は、それらを治療される哺乳動物への投与に好適な状態にするために、十分に高い純度及び十分に低い毒性でなければならない。担体は、不活性であり得るか、あるいは薬学的利点を有し得る。「賦形剤(excipient)」、「担体」、又は「賦形剤(vehicle)」という用語は、同義に使用され、本明細書に記載の薬学的に許容される組成物の製剤化及び投与に好適な担体物質を指す。本明細書において有用な担体及び賦形剤には、非毒性であり、かつ他の成分と相互作用しない本技術分野で既知の任意の物質が含まれる。
【0158】
「化学療法剤」という用語は、その最も一般的な意味では、疾患の治療又は管理に有用な化学物質又は薬物を指す。本明細書で使用される「システマ」という用語は、リザーバとしての機能を果たす空洞又は取り囲まれた空間を意味する。
【0159】
本明細書で使用される「適合性」という用語は、通常の使用条件下で組成物の有効性を大幅に減少させる相互作用が存在しないような方法で、相互と組み合わせられることができる組成物の成分を指す。
【0160】
本明細書で使用される「成分(component)」という用語は、構成要素、要素、又は成分(ingredient)を指す。
【0161】
本明細書で使用される「状態」という用語は、多種多様の健康状態を指し、健康な組織及び臓器の任意の発症機序又は障害、損傷、並びに促進によって引き起こされる障害又は疾患を含むよう意図される。
【0162】
本明細書で使用される「接触」という用語及び全てのその文法形態は、触れた状況又は状態、あるいは直接的もしくは部分的近接の状況又は状態を指す。
【0163】
「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式及び特性が調節される任意の薬物含有製剤を指すよう意図される。これは、即時並びに非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤は、持続性放出製剤及び遅延放出製剤を含むが、それらに限定されない。
【0164】
本明細書で使用される「開頭術」という用語は、下層組織の手術のための頭蓋からの骨部分(例えば、骨弁)の外科的除去を指す。
【0165】
本明細書で使用される「サイトカイン」という用語は、細胞から分泌される、他の細胞に多種多様の影響を与える小さい可溶性タンパク質物質を指す。サイトカインは、成長、発現、創傷治癒、及び免疫応答を含む、多くの重要な生理学的機能を媒介する。それらは、細胞膜内に位置するそれらの細胞特異的受容体に結合することによって作用し、はっきりと異なるシグナル変換カスケードを細胞内で開始させ、最終的には、標的細胞における生化学的変化及び表現型の変化につながる。概して、サイトカインは、局所的に作用する。それらは、インターロイキンの多く、並びにいくつかの造血成長因子を包含するI型サイトカイン;インターフェロン及びインターロイキン−10を含むII型サイトカイン;TNFa及びリンホトキシンを含む腫瘍壊死因子(「TNF」)関連分子;インターロイキン1(「IL−1」)を含む免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー;並びに多種多様の免疫及び炎症機能において重要な役割を果たす分子のファミリーであるケモカインを含む。同一のサイトカインが、細胞の状態に応じて、細胞に異なる影響を与え得る。サイトカインは、多くの場合、他のサイトカインの発現を調節し、他のサイトカインのカスケードを誘発する。
【0166】
「遅延放出」という用語は、本明細書においてその従来の意味で使用され、製剤の投与とそれからの薬物の放出との間に時間遅延が存在する薬物製剤を指す。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の段階的な放出を伴っても伴わなくてもよく、したがって、「持続性放出」であってもなくてもよい。
【0167】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、1つ以上のステップにおいて類似した構造の別の化合物から生成され得る化合物を意味する。化合物の「1つの誘導体」又は「複数の誘導体」は、少なくともある程度の化合物の所望の機能を保有する。したがって、「誘導体」の代替用語は、「機能的誘導体」であり得る。
【0168】
本明細書で使用される「疾患」又は「障害」という用語は、健康状態又は異常機能状態の機能障害を指す。
【0169】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、治療薬、又は疾患の予防、診断、軽減、治療、もしくは治癒において使用される、食物以外の任意の物質を指す。
【0170】
「有効な量」という用語は、所望の生物学的効果を実現するのに必要又は十分な量を指す。
【0171】
本明細書で使用される「エマルジョン」という用語は、2つの不混和液体担体を混合することによって調製される二相系を指し、そのうちの1つは、他方の至る所で均一に分散し、かつ最も大きいコロイド粒子の直径と等しいか、あるいはそれよりも大きい直径を有する小球からなる。小球寸法は重要であり、系が最大安定性を達成するような寸法でなければならない。通常、第3の物質である乳化剤が組み込まれない場合、2つの相の分離が発生する。したがって、基本的なエマルジョンは、少なくとも3つの成分、すなわち、2つの不混和液体担体及び乳化剤、並びに活性成分を含有する。大部分のエマルジョンは、水相を非水相に(逆もまた同様に)組み込む。しかしながら、基本的に非水性、例えば、非水不混和系グリセリン並びにオリーブ油のアニオン性及びカチオン性界面活性剤であるエマルジョンの調製は可能である。
【0172】
本明細書で使用される「窩」という用語は、骨内の小さい空洞又は陥没を意味する。
【0173】
本明細書で使用される「血腫」という用語は、臓器、組織、空間、又は潜在的な空間内に比較的に又は全面的に制限される周囲の組織内に存在する血管の領域から抜け出した溢血の局部塊を指す。
【0174】
本明細書で使用される「血腫拡大」という用語は、血腫の体積、寸法、量、又は範囲の増加を指す。
【0175】
本明細書で使用される「出血状態」という用語は、異常に出血する障害又は疾患を指す。
【0176】
本明細書で使用される「水和物」という用語は、水又はその要素を別の分子に添加することによって形成される化合物を指す。水は、通常、加熱によって分裂し、無水化合物を産出し得る。
【0177】
本明細書で使用される「ヒドロゲル」という用語は、ゲル状又はゼリー状の塊を生成するのに必要な水性成分を含有する、固体、半固体、偽塑性、又は塑性構造物をもたらす物質を指す。
【0178】
本明細書で使用される「親水性」という用語は、水等の極性物質が親和性を有する材料又は物質を指す。
【0179】
本明細書で使用される「体内」、「空隙容量」、「切除ポケット」、「陥凹」、「注入部位」、「沈着部位」、又は「移植部位」という用語は、制限なく、体の全ての組織を包含するよう意図されており、その非限定的な例として、注入、外科的切開、腫瘍又は組織除去、組織損傷、膿瘍形成によってその中に形成される空間、あるいはゆえに臨床的評価、治療、又は疾患もしくは病態への生理学的応答によって形成される任意の他の類似した空洞、空間、又はポケットを指し得る。
【0180】
本明細書で使用される「損傷」という用語は、物理的もしくは化学的であり得る外部の作用物質又は力によって引き起こされる体の構造もしくは機能への損傷又は危害を指す。
【0181】
本明細書で使用される「インターロイキン」という用語は、他の白血球との通信の手段として白血球から分泌されるサイトカインを指す。
【0182】
「単離された」という用語は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質等であるが、それらに限定されない物質を指すために本明細書で使用され、それは、(1)その天然環境において見出される時に、通常、それを伴うか、あるいはそれと相互作用する成分を実質的に又は本質的に含まない。「実質的に含まない」又は「本質的に含まない」という用語は、大幅に、又は著しく含まない、あるいは約95%を超えて含まない、又は約99%を超えて含まないことを指すために本明細書で使用される。単離された物質は、その天然環境におけるその物質では見出されない物質を任意で含むか、あるいは(2)物質がその天然環境にある場合、その物質は、計画的な人間の介入によって組成物に合成的に(非自然に)変更され、かつ/又はその環境において見出される物質には本来存在しない細胞(例えば、ゲノム又は細胞内小器官)内の位置に置かれている。合成物質を産出するための変更を、物質内又はその天然状態から除去された物質上で行うことができる。
【0183】
本明細書で使用される「異性体」という用語は、同一の数及び種類の原子、したがって、同一の分子量であるが異なる化学構造を有する2つ以上の分子のうちの1つを指す。異性体は、原子(構造異性体)の結合性の点で異なり得るか、あるいはそれらは、同一の原子結合性を有し得るが、空間内の原子の配列又は配置の点でのみ異なり得る(立体異性体)。立体異性体には、E/Z二重結合異性体、鏡像異性体、及びジアステレオマーが含まれ得るが、それらに限定されない。立体異性を与えることができる構造部分には、適切に置換される時、オレフィン、イミン、又はオキシム二重結合;四面体炭素、硫黄、窒素、又はリン原子;及びアレン基が含まれるが、それらに限定されない。鏡像異性体は、重ね合わせることができない鏡像である。化合物の光学形態の等量の混合物は、ラセミ混合物又はラセミ化合物として知られている。ジアステレオマーは、立体異性体であるが、鏡像ではない。本発明は、本明細書に記載の化合物のうちのいずれかのそれぞれの純粋な立体異性体を提供する。そのような立体異性体には、鏡像異性体、ジアステレオマー、又はEもしくはZアルケン、イミンもしくはオキシム異性体が含まれ得る。本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、又はE/Z異性体混合物を含む立体異性体混合物も提供する。立体異性体を純粋な形態で合成することができるか(Ngradi,M;Stereoselective Synthesis,(1987)VCH Editor Ebel,H.and Asymmetric Synthesis,Volumes3−5,(1983)Academic Press,Editor Morrison,J.)、あるいはそれらを結晶化及びクロマトグラフ法等の多種多様の方法によって分解することができる(Jaques,J.;Collet,A.;Wilen,S.;Enantiomer,Racemates,and Resolutions,1981,John Wiley and Sons and Asymmetric Synthesis,Vol.2,1983,Academic Press,Editor Morrison,J)。加えて、記載される発明の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、異性体として存在し得るか、あるいはその化合物のうちの2つ以上は、ラセミ又はジアステレオマー混合物を形成するために存在し得る。
【0184】
本明細書で使用される「不安定な」という用語は、増加した劣化の影響を受けやすいことを指す。
【0185】
本明細書で使用される「親油性」という用語は、極性又は水性環境と比較して、非極性環境に対して親和性を好むか、あるいは保有することを指す。
【0186】
本明細書で使用される「長期間」放出という用語は、治療レベルの活性成分を少なくとも7日間、及び可能性として最大約30〜約60日間送達するために、埋め込みが構築及び配置されることを意味する。
【0187】
本明細書で使用される「進行の最小化」という用語は、一連の事象もしくは一続きの事象の発展の量、範囲、寸法、又は程度を減少させることを指す。
【0188】
本明細書で使用される「調節する(modulate)」という用語は、ある特定の測定値又は比率を調節する(regulate)か、変更するか、適応させるか、あるいは調整することを意味する。そのような調節は、検出不能な変化を含む、任意の変化であり得る。
【0189】
本明細書で使用される「非経口」という用語は、例えば、皮下(すなわち、皮膚の下への注入)、筋肉内(すなわち、筋肉への注入)、静脈内(すなわち、静脈への注入)、髄腔内(すなわち、脊髄周囲もしくは脳のくも膜下の空間への注入)、胸骨内注入、又は注入技術を含む、注入による体への導入(すなわち、注入による投与)を指す。非経口投与組成物は、針、例えば、外科用針を用いて送達される。本明細書で使用される「外科用針」という用語は、選択された解剖学的構造への流体(すなわち、流動することができる)組成物の送達に適応した任意の針を指す。無菌の注入可能な水性もしくは油性懸濁液等の注入可能な調製物を、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、既知の技術に従って製剤化することができる。
【0190】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、全体的に、又は一部分において、少なくとも1つの本明細書に記載の治療薬を含有し得る、極度に小さい構成物質(例えば、ナノ粒子又は微小粒子)を指す。
【0191】
本明細書で使用される「患者予後を改善する」という用語は、抗線溶剤の全身投与に関連した少なくとも1つの副作用の不在又は縮小を指す。副作用の例には、血圧低下、心不整脈、浮腫、横紋筋融解症、血栓症、脳梗塞又は脳卒中、及び心筋梗塞又は心臓発作が挙げられるが、それらに限定されない。
【0192】
「薬学的組成物」という用語は、標的状態又は疾患を予防するか、その強度を減少させるか、治癒するか、あるいはさもなければ治療するために採用される組成物を指すために本明細書で使用される。
【0193】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、記載される発明の生成物が安定し、かつ生物学的に利用可能なままである、記載される発明の組成物の製剤化及び投与に使用可能な任意の実質的に非毒性の担体を指す。薬学的に許容される担体は、それを治療される哺乳動物への投与に適合させるために、十分に純度が高く、かつ十分に毒性が低くなくてはならない。それはさらに、活性剤の安定性及び生物学的利用性を維持するべきである。薬学的に許容される担体は、液体又は固体であってもよく、かつ計画された投与方法を考慮して、活性剤及び所与の組成物の他の成分と混合される時に、所望の体積、粘稠度等を提供するために選択される。「薬学的に許容される塩」という用語は、健全医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なく、ヒト及び下等動物の組織との接触における使用に好適であり、かつ妥当な利益/危険性比に相応した塩を意味する。
【0194】
本明細書で使用される「骨膜」という用語は、筋肉が付着する高密度の線維外層、及び骨を形成することができるより繊細な内層からなる骨の正常な外皮を指す。
【0195】
本明細書で使用される「予防する」という用語は、事象、活動、又は作用が起こるか、発生するか、あるいは生じることを避けるか、妨害するか、あるいは回避することを指す。
【0196】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、不活性形態であり、かつ対象への投与後の生物学的変換によって活性形態に転換されるペプチド又は誘導体を意味する。
【0197】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、溶質分子への溶媒分子の付着によって形成される複合体を指す。「溶媒」という用語は、別の物質(「溶質」と呼ばれる)を溶解して、均一に分散した混合物(溶液)を形成することができる物質を指す。
【0198】
本明細書で使用される「組換え」という用語は、遺伝子操作によって生成される物質を指す。
【0199】
本明細書で使用される「減少した」もしくは「減少させる」という用語は、程度、強度、範囲、寸法、量、密度、又は数の縮小、減少、減衰、又は軽減を指す。
【0200】
「同類の」という用語は、「類似した」、「同程度の」、又は「似ている」という用語と同義に使用され、共通の特徴又は特性を有することを意味する。
【0201】
「洞」という用語及びその種々の文法形式は、導管又は管内の拡大した領域を意味する。
【0202】
「可溶性」及び「溶解性」という用語は、特定の流体(溶媒)中で溶解されやすい特性を指す。「不溶性」という用語は、特定の溶媒において、最小限又は限られた溶解性を有する物質の特性を指す。溶液中で、溶質(又は溶解した物質)の分子は、溶媒の分子の間で均一に分布する。「懸濁液」は、その中で細分化された種が別の種と混合される分散物(混合物)であり、前者は、迅速に沈殿しない程度に細分化かつ混合される。日常生活において、最も共通の懸濁液は、液体中の固体懸濁液である。採用され得る許容できる賦形剤及び溶媒としては、水、リンガー溶液、及び生理食塩液がある。
【0203】
本明細書で使用される「〜しやすい」という用語は、危険性のある集団のメンバーを指す。
【0204】
「対象」又は「個人」又は「患者」という用語は、ヒトを含む哺乳類系の動物種のメンバーを指すために同義に使用される。
【0205】
「硬膜下血腫を有する対象」という語句は、診断的マーカー及びSDHに関連した症状を呈する対象を指す。
【0206】
「持続性放出」(「徐放性」とも称される)という用語は、薬物の段階的な放出を長期間にわたって提供し、かつ好ましくは、必要ではないが、長期間にわたって実質的に一定の薬物血中濃度をもたらす薬物製剤を指すために、本明細書においてその従来の意味で使用される。あるいは、非経口投与薬物形態の遅延吸収は、油賦形剤中で薬物を溶解又は懸濁することによって達成される。持続性放出生分解性ポリマーの非限定的な例として、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールコポリマー、ポリアミノ由来の生体高分子、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、SAIB、光重合性バイオポリマー、タンパク質ポリマー、コラーゲン、多糖類、キトサン、及びアルギン酸塩が挙げられる。
【0207】
本明細書で使用される「症状」という用語は、特定の疾患又は障害に起因し、それに伴い、かつその兆候となる現象を指す。
【0208】
本明細書で使用される「症候群」という用語は、いくつかの疾患又は状態を示す症状のパターンを指す。
【0209】
本明細書で使用される「治療薬」という用語は、治療効果を提供する薬物、分子、核酸、タンパク質、組成物、又は他の物質を指す。本明細書で使用される「活性」という用語は、目的とする治療効果に関与する本発明の組成物の成分(ingredient)、成分(component)、又は構成物質を指す。「治療薬」及び「活性剤」という用語は、同義に使用される。本明細書で使用される「治療成分」という用語は、集団のある割合において、特定の疾患兆候の進行を排除するか、減少させるか、あるいは予防するのに治療的に有効な投薬量(すなわち、用量及び投与頻度)を指す。一般に使用されている治療成分の例は、ED
50であり、集団の50%において、特定の疾患兆候に治療的に有効な特定の投薬量における用量を示す。
【0210】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、治療の結果、すなわち、望ましくかつ有益であると判断される結果を指す。治療効果は、直接的もしくは間接的に、疾患兆候の停止、減少、又は排除を含み得る。治療効果は、直接的もしくは間接的に、疾患兆候の進行の停止、減少、又は排除も含み得る。
【0211】
活性剤のうちの1つ以上の「治療的に有効な量」又は「有効量」という用語は、治療の目的とする利益を提供するのに十分な量である。採用され得る有効な量の活性剤は、概して、0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重に及ぶ。しかしながら、投薬量レベルは、損傷の種類、患者の年齢、体重、性別、病状、病状の重症度、投与経路、及び採用される特定の活性剤を含む多種多様の要因に基づく。したがって、投与計画は大きく異なり得るが、標準の方法を用いて外科医が日常的に決定することができる。
【0212】
本明細書で使用される「増粘剤」という用語は、記載される発明の組成物を一貫して高密度又は粘性にする作用物質を指す。
【0213】
本明細書で使用される「遺伝子導入」という用語は、特定の外来遺伝子が動物のDNAに添加されるか、あるいはそれから削除されるように、実験室において遺伝子操作された動物の実験的系統を指す。共通の遺伝子導入動物モデルには、マウスが含まれるが、それらに限定されない。
【0214】
外傷性脳損傷(TBI)は、脳に継続的な損傷をもたらし得る頭部外傷によって引き起こされ、世界中で毎年最大1000万人の患者に影響を及ぼす。TBIの健康への影響は、衰弱であり得、長期間の障害をもたらし、かつ著しい経済的負担を有する。
【0215】
外傷性脳損傷は、頭強打、震盪力、加速減速力、又は推進等の外部からの機械力によって引き起こされる。これは、頭蓋骨骨折及び脳が直接貫通される時(開放性頭部損傷)及び頭蓋骨が無傷のままであるが、脳は依然として損傷を受ける時(閉鎖性頭部外傷)の両方で発生し得る。
【0216】
TBIの症状は、脳への損傷の程度に応じて、重症度に幅があり、頭痛、頸痛、錯乱、記憶困難、集中力の欠如、又は決断困難、眩暈、疲労感、情緒の変化、嘔気、短気、光恐怖症、視覚のぼけ、耳鳴り、味覚もしくは臭覚の喪失、発作、睡眠障害、低酸素血症、血圧低下、及び脳腫脹を含み得る。
【0217】
TBIは、蘇生後の意識又はグラスゴー昏睡尺度(GCS)スコアのレベルに基づいて、軽度(精神状態又は意識における短期変化を意味する)、中程度、又は重度(損傷後、長期間の無意識又は記憶喪失を意味する)に等級分けされる。GCSは、開眼(自発的に=4、話しかけに反応して=3、痛覚に反応して=3、なし=1)、運動応答(従う=6、局限する=5、後退する=4、異常屈曲=3、伸筋応答=2、なし=1)、及び音声応答(見当識がある=5、混乱=4、不適切=3、理解不能=2、なし=1)をスコア化する。軽度のTBI(13〜15のGCS)は、ほとんどの場合、脳震盪であり、これらの患者の多くが、短期記憶及び集中困難を有するが、神経学的に完全に回復する。中程度のTBI(9−13のGCS)では、患者は嗜眠状態又は昏迷状態であり、重度の損傷(3−8のGCS)では、患者は昏睡状態であり、開眼することも指令に従うこともできない。
【0218】
重度のTBI(昏睡状態)を有する患者は、血圧低下、低酸素血症、及び脳腫脹の著しい危険性を有する。これらの続発症が適切に予防又は治療されない場合、それらは、脳損傷を悪化させ、死の危険性を増加させる可能性がある。
【0219】
本明細書で使用される「外傷性脳内出血」(ICH)という用語は、外傷性損傷によって引き起こされるか、あるいはそれに付随する出血を指す。
【0220】
「治療する」もしくは「治療」という用語は、疾患、状態、又は障害の進行を、抑制するか、実質的に阻害するか、減速するか、あるいは逆転させること、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善すること、疾患、状態、又は障害の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に予防すること、及び有害又は厄介な症状から保護することを含む。 本明細書で使用される「治療する」もしくは「治療」という用語はさらに、以下のうちの1つ以上を達成することを指す:(a)障害の重症度を減少させること、(b)治療される障害に特徴的な症状の発現を制限すること、(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を制限すること、(d)以前に障害を経験した患者における障害の再発を制限すること、及び(e)以前に障害症状を示した患者における症状の再発を制限すること。
【0221】
「局所性」という用語は、適用点での、又はその直下での組成物の投与を指す。「局所的に適用する」という語句は、上皮表面を含む1つ以上の表面上での適用を示す。経皮投与とは対照的に、局所投与は、概して、全身的作用というよりはむしろ局所的作用を提供する。本明細書で使用される「局所投与」及び「経皮投与」という用語は、別途明記又は暗示されない限り、同義に使用される。
【0222】
本明細書で使用される「全血」という用語は、概して、血漿、細胞成分(例えば、赤血球、白血球(リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、及び好中球を含む)、並びに血小板)、タンパク質(例えば、フィブリノゲン、アルブミン、免疫グロブリン)、ホルモン、凝固因子、並びに線維素溶解因子を含むが、それらに限定されないその成分のうちの全てを含有する、未処理又は未修正の収集された血液を指す。「全血」という用語は、収集時にその血液と混合することができる任意の抗凝固剤を含む。
【0223】
本明細書で使用される「血管奇形」という用語は、血管の異常な収集又はパターンをもたらす脳内血管の発達異常を指す。
【0224】
本明細書で使用される「異種」という用語は、異なる種であることを指す。
I.脳内出血状態の非ヒト動物モデル
【0225】
一態様によると、記載される発明は、脳内出血状態の非ヒト動物モデル系を提供する。いくつかのそのような実施形態によると、脳内出血状態は、慢性SDHである。いくつかのそのような実施形態によると、脳内出血状態は、ICHである。一実施形態によると、非ヒト動物モデル系は、脳内出血状態を誘発するために、哺乳動物への開始剤組成物の投与を提供する。
【0226】
別の態様によると、記載される発明は、血腫をもたらす誘発性脳内出血状態を有する哺乳動物を提供する。いくつかのそのような実施形態によると、脳内出血状態は、慢性SDHである。いくつかのそのような実施形態によると、脳内出血状態は、ICHである。いくつかの実施形態によると、血腫は、時間が経過しても安定したままである。いくつかの実施形態によると、血腫は、時間経過とともに拡大する。いくつかの実施形態によると、血腫の拡大は、進行性である。
【0227】
いくつかの実施形態によると、哺乳動物は、マウスである。別の実施形態によると、哺乳動物は、遺伝子導入マウスである。別の実施形態によると、哺乳動物は、ラットである。別の実施形態によると、哺乳動物は、齧歯類目のメンバーである。
【0228】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、哺乳動物の皮下腔に投与される。
【0229】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、頭蓋内に投与される。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、哺乳動物の硬膜に近接して投与される。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、外科的注入によって投与される。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、移植片の上又は中に沈着される。
【0230】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、慢性SDHから得られる体液を含む。別の実施形態によると、開始剤組成物は、自家血液又はその成分を含む。別の実施形態によると、開始剤組成物は、同種血液又はその成分を含む。別の実施形態によると、開始剤組成物は、異種血液又はその成分を含む別の実施形態によると、開始剤組成物は少なくとも1つの血液凝固因子に対する抗体を含む。別の実施形態によると、開始剤組成物は、コラゲナーゼ等のコラーゲンの崩壊を触媒する酵素を含む。別の実施形態によると、開始剤組成物は、凝血促進剤、抗凝固剤、血餅構造因子、線維素溶解因子、及びリン脂質からなる群から選択される少なくとも1つの血液凝固因子に対する抗体を含む。別の実施形態によると、凝血促進剤は、血液凝固第II因子、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、キニノゲン、及び組織因子からなる群から選択される。別の実施形態によると、抗凝固剤は、タンパク質C、タンパク質S、抗トロンビンIII、及びヘパリン共同因子IIからなる群から選択される。別の実施形態によると、血餅構造因子は、フィブリノゲン及び第XIII因子からなる群から選択される。別の実施形態によると、線維素溶解因子は、プラスミノーゲン、組織型プラスミノーゲン活性化因子、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、及びα2−プラスミン阻害剤からなる群から選択される。別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける慢性SDHを誘発するための開始剤組成物は、全血を含む。いくつかの実施形態によると、全血は、自家である。いくつかの実施形態によると、全血は、同種である。いくつかの実施形態によると、全血は、異種である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1μL〜約20mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約100μL〜約15mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約500μL〜約12.5mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1mL〜約10mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約2mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約3mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約4mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約5mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約6mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約7mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約8mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約9mLである。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも全血の1成分を含む。全血の成分の例には、血漿、細胞成分(例えば、赤血球、白血球(リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、及び好中球を含む)、並びに血小板)、タンパク質(例えば、フィブリノゲン、アルブミン、免疫グロブリン)、ホルモン、凝固因子、並びに線維素溶解因子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0231】
別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤組成物は、慢性SDHから得られる体液を含む。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体は、約1μL〜約20mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体は、約100μL〜約15mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体は、約500μL〜約12.5mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体は、約1mL〜約10mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約2mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約3mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約4mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約5mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約6mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約7mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約8mLである。いくつかのそのような実施形態によると、慢性SDHから得られる流体量は、約9mLである。
【0232】
別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤組成物は、抗体を含む。
【0233】
別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤組成物は、モノクローナル抗体である。別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤は、ポリクローナル抗体である。
【0234】
別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤組成物は、1つの血液凝固因子又はその血液凝固因子の特定のエピトープに向けられる単一特異的抗体を含む。別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける血腫をもたらす脳内出血状態を誘発するための開始剤組成物は、少なくとも2つの血液凝固因子を認識する抗体を含む。例えば、開始剤組成物は、動物由来プラスミン又はプラスミノーゲンと交差反応するヒトプラスミン又はヒトプラスミノーゲンに対する抗体を含み得る。あるいは、開始剤組成物は、動物由来トロンビンと交差反応するヒトトロンビンに対する抗体を含み得る。あるいは、開始剤組成物は、例えば、プロトロンビン複合体の因子等のビタミンK依存性血液因子に対する抗体を含み得る。
【0235】
他の実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも1つの凝血促進剤(血液凝固第II因子、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、キニノゲン、及び組織因子を含むが、それらに限定されない)に対する抗体、抗凝固剤(タンパク質C、タンパク質S、抗トロンビンIII、ヘパリン共同第II因子を含むが、それらに限定されない)、血餅構造因子(フィブリノゲン及び第XIII因子を含むが、それらに限定されない)、線維素溶解因子(プラスミノーゲン、t−PA、PAI−1、及びα2−プラスミン阻害剤等であるが、それらに限定されない)、並びにリン脂質に対する抗体を含む。
【0236】
この目的のための抗体調製の適合性を、種々の試験に基づいて判断することができる。例えば、抗体調製が試験動物の脳脊髄液試料とインキュベートされ、かつ血液因子の阻害又は排除が決定される、インビトロ試験を行うことができる。
【0237】
変化した慢性SDHの再発の所望の効果は、血腫又はその形成もしくは溶解速度の測定によって、インビボ試験動物において示され得る。
【0238】
いくつかの実施形態によると、哺乳動物を血漿、血漿画分、又はその組換え等価物で免疫化すること、抗血漿又は抗血清を回収すること、その後、開始剤組成物が、哺乳動物における少なくとも1つの血液因子を選択的に機能的に阻害及び/又は排除することができる機能的抗体のみを含有するように、抗血漿又は抗血清の1つもしくはいくつかの抗体を吸収することによって、開始剤組成物を調製することができる。
【0239】
そのような開始剤組成物を調製するための方法は、以下のステップを含む:(a)哺乳動物を、血漿、血漿画分、又はその組換え等価物で免疫化すること、(b)(a)の免疫化された動物から抗血漿又は抗血清を回収すること、(c)(a)の抗血漿又は抗血清から抗体画分を任意で精製すること、及び(d)哺乳動物の硬膜、脳、又は皮下組織内又はそれに近接した注入に好適な組成物を製剤化すること。
【0240】
いくつかの実施形態によると、開始剤組成物が、哺乳動物を、ヒト慢性SDHから得られる体液、ヒト慢性SDHから得られる体液の画分、又はその組換え等価物で免疫化すること、抗血漿又は抗血清を回収すること、及びその後、哺乳動物における少なくとも1つの血液因子を選択的に阻害及び/又は排除することができる機能的抗体のみを含有するように、抗血漿又は抗血清から抗体を精製することによって、開始剤組成物を調製することができる。
【0241】
そのような開始剤組成物を調製するための方法は、以下のステップを含む:(a)哺乳動物を、ヒト慢性SDH体液、ヒト慢性SDH体液画分、又はその組換え等価物で免疫化すること、(b)(a)の免疫化された動物から抗血漿又は抗血清を回収すること、(c)(a)の抗血漿又は抗血清の抗体画分を任意で精製すること、及び(d)哺乳動物の硬膜内又はそれに近接した注入に好適な組成物を製剤化すること。
【0242】
別の実施形態によると、免疫化のために物質中に含有され得る他の血液因子と交差反応しないある特定の血液因子に特異的な抗体で開始剤組成物を調製することによって、慢性SDH又は類似した障害をより正確に誘発することができる。免疫化を行うことができる哺乳動物には、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウサギ、テンジクネズミ、ウマ、ラット、及びマウスが含まれるが、それらに限定されない。慢性SDHを誘発することができる哺乳動物には、マウス、ラット、及び齧歯類目の他のメンバーが含まれるが、それらに限定されない。
【0243】
別の実施形態によると、記載される発明は、哺乳動物における慢性SDHのインビトロもしくはエクスビボでの凝固時間又は再発が変更されるように、いくつかの血液因子を機能的に阻害及び/又は排除することによって、例えば、注入組成物における抗血漿抗体の使用ための方法を、血液因子を欠乏するモデルとしての哺乳動物の治療に提供する。いくつかの実施形態によると、ある特定の血液因子に対する抗体は、血液因子を動物に投与することによって、インビボで吸収される。
【0244】
いくつかの実施形態によると、血液因子を、再置換することができ、変更された慢性SDHの凝固時間及び特性は、再置換された血液因子に依存するものとして特定される。
【0245】
別の実施形態によると、記載される発明は、再発性慢性SDHの特性を決定するための方法をさらに提供し、本方法は、以下のステップを含む:(a)哺乳動物における慢性SDHを誘発すること、(b)慢性SDHから得られる体液を収集すること、(c)ステップ(b)の体液の血液因子成分を決定するステップ、及び(d)時間経過による慢性SDHの寸法の拡大又は減少の速度を決定するステップを含む。
【0246】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、担体をさらに含む。別の実施形態によると、担体は、薬学的担体である。いくつかの実施形態によると、開始剤は、薬学的組成物の形態である。
【0247】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.001mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.01mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約10mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約20mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約30mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約40mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約50mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約60mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約70mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約80mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約90mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約100mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約110mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約120mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約130mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約140mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約150mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約160mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約170mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約180mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約190mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約200mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約250mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約500mg/kg体重の量である。
【0248】
II.脳の出血状態の治療について物質を評価するための方法
【0249】
別の態様によると、記載される発明は、哺乳動物における脳の出血状態由来の度重なる大量出血を治療する能力について物質を評価するための方法を提供し、本方法は、以下のステップを含む:(a)哺乳動物に、評価される物質を投与すること、及び(b)少なくとも1つの凝固パラメータ、少なくとも1つの線維素溶解パラメータ(一組の測定可能な因子のうちの1つを意味する)、又は評価される物質による哺乳動物における出血状態の少なくとも1つのパラメータ特性の変化を測定すること。凝固パラメータ又は線維素溶解パラメータを、既知の方法に従って決定することができる。例えば、凝固因子又は線維素溶解因子を試験するための一連のインビトロ検査及び試料におけるそれらの効果が知られている。
【0250】
いくつかの実施形態によると、哺乳動物は、マウスである。別の実施形態によると、哺乳動物は、ノックアウトマウスである。別の実施形態によると、哺乳動物は、ラットである。別の実施形態によると、哺乳動物は、齧歯類目のメンバーである。
【0251】
一実施形態によると、脳の出血状態は、慢性SDHである。一実施形態によると、方法は、慢性SDHを誘発するための開始剤組成物で哺乳動物を処置するステップをさらに含む。別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける慢性SDHを誘発するための開始剤組成物は、全血を含む。いくつかの実施形態によると、全血は、自家である。いくつかの実施形態によると、全血は、同種である。いくつかの実施形態によると、全血は、異種である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1μL〜約20mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約100μL〜約15mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約500μL〜約12.5mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1mL〜約10mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約2mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約3mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約4mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約5mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約6mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約7mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約8mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約9mLである。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも全血の1成分を含む。全血の成分の例には、血漿、細胞成分(例えば、赤血球、白血球(リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、及び好中球を含む)、並びに血小板)、タンパク質(例えば、フィブリノゲン、アルブミン、免疫グロブリン)、ホルモン、凝固因子、並びに線維素溶解因子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0252】
別の実施形態によると、投与ステップ(a)、すなわち、哺乳動物に評価される物質を投与することは、齧歯類に開始剤組成物を投与することを含む。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、6−アミノニコチンアミドを含む。いくつかのそのような実施形態によると、6−アミノニコチンアミドの用量は、0〜10mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、6−アミノニコチンアミドの用量は、11〜20mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、6−アミノニコチンアミドの用量は、21〜30mg/kg体重である。
【0253】
別の実施形態によると、慢性SDHを誘発するための開始剤組成物は、ヒト慢性SDHから得られる体液を含む。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約1μL〜約20mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約100μL〜約15mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約500μL〜約12.5mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約1mL〜約10mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約2mLである。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約3mLである。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約4mLである。いくつかのそのような実施形態によると、ヒト慢性SDHから得られる流体は、約5mLである。いくつかのそのような実施形態によると、脳脊髄液量は、約6mLである。いくつかのそのような実施形態によると、脳脊髄液量は、約7mLである。いくつかのそのような実施形態によると、脳脊髄液量は、約8mLである。いくつかのそのような実施形態によると、脳脊髄液量は、約9mLである。
【0254】
いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、薬学的組成物の形態である。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、担体をさらに含む。いくつかの実施形態によると、担体は、薬学的担体である。
【0255】
別の実施形態によると、慢性SDHを誘発するための開始剤組成物は、抗体である。別の実施形態によると、を誘発するための開始剤組成物慢性SDHは、モノクローナル抗体である。別の実施形態によると、を誘発するための開始剤組成物慢性SDHは、ポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、抗血漿抗体調製物である。
【0256】
いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも1つの凝血促進剤(血液凝固第II因子、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、キニノゲン、及び組織因子を含むが、それらに限定されない)に対する抗体、抗凝固剤(タンパク質C、タンパク質S、抗トロンビンIII、ヘパリン共同第II因子を含むが、それらに限定されない)、血餅構造因子(フィブリノゲン及び第XIII因子を含むが、それらに限定されない)、線維素溶解因子(プラスミノーゲン、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI−1)、及びα2−プラスミン阻害剤等であるが、それらに限定されない)、並びにリン脂質に対する抗体を含む。
【0257】
いくつかの実施形態によると、試験される物質が誘発された慢性SDHを治療することができる程度を決定するために、誘発された慢性SDHを有する哺乳動物の慢性SDHの少なくとも1つのパラメータ特性の測定結果が、試験される化合物又は物質を投与された哺乳動物の慢性SDHの少なくとも1つのパラメータ特性の測定結果と比較される。そのようなパラメータの例には、出血挙動、慢性SDHの血液量、血腫領域の寸法、血腫領域の拡大又は収縮、慢性SDHの拡大動態、及び慢性SDHの収縮動態が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態によると、試験される化合物又は物質は、慢性SDHの誘発前に投与される。いくつかの実施形態によると、試験される化合物又は物質は、開始剤組成物と同時に投与される。いくつかの実施形態によると、試験される化合物又は物質は、慢性SDHの誘発後に投与される。
【0258】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、哺乳動物の背面の皮下腔に投与される。別の実施形態によると、開始剤組成物は、哺乳動物の脳に投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、開頭術後に、脳に投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、穿頭孔を通して脳に投与される。本明細書で使用される「開頭術」という用語は、頭蓋骨に切り込まれる任意の骨開口部を指す。骨弁と呼ばれる頭蓋骨部分は、真下の脳にアクセスするために除去される。多くの種類の開頭術があり、それらは除去される頭蓋骨領域に従って命名される。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、前頭部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、頭頂部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、側頭部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、後頭部の穿頭孔である。いくつかの一般的な開頭術には、前頭側頭開頭術、頭頂開頭術、側頭開頭術、及び後頭開頭術が含まれる。典型的には、骨弁は元に戻される。いくつかの実施形態によると、定位固定フレーム、画像誘導コンピュータシステム、又は内視鏡が、穿頭孔を通して器具を正確に配向するために使用される。
【0259】
手術の8時間前からの飲食は許可されない。全身麻酔が投与される。眠った時点で、手術中に頭部を適切な位置に保持するために、動物の頭部は頭蓋骨固定デバイスに設置される。
【0260】
目的とする切開領域の毛が剃られ、頭皮が消毒剤で処理された後、皮膚切開が行われる。皮膚及び筋肉が骨から外され、折り畳まれる。次に、外科ドリルを用いて1つ以上の小さい穿頭孔が頭蓋骨内に作製される。いくつかの実施形態では、骨弁が作成される。切断された骨弁が持ち上げられ、硬膜を曝露するために除去される。骨弁は、手術の最後に元に戻されるまで安全に保管される。場合によっては、手術領域から血液又は流体を除去するために、排出管を皮膚の下に2〜3日間設置する場合もある。筋肉及び皮膚がともに戻し縫合され、柔らかい絆創膏包帯が切開上に取り付けられる。
【0261】
いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、頭蓋内投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、灌流によって投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、硬膜下投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、脳内投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、外科的注入によって投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、移植片の上又は中に沈着される。
【0262】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.001mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.01mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約10mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約20mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約30mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約40mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約50mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約60mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約70mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約80mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約90mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約100mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約110mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約120mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約130mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約140mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約150mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約160mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約170mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約180mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約190mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約200mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約250mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約500mg/kg体重の量である。
【0263】
別の実施形態によると、脳の出血状態は、脳内血腫である。一実施形態によると、方法は、脳内血腫を誘発するための開始剤組成物で哺乳動物を処置するステップをさらに含む。別の実施形態によると、非ヒト動物モデルにおける脳内血腫を誘発するための開始剤組成物は、全血を含む。いくつかの実施形態によると、全血は、自家である。いくつかの実施形態によると、全血は、同種である。いくつかの実施形態によると、全血は、異種である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1μL〜約20mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約100μL〜約15mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約500μL〜約12.5mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液は、約1mL〜約10mLの量である。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約2mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約3mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約4mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約5mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約6mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約7mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約8mLである。いくつかのそのような実施形態によると、血液量は、約9mLである。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも全血の1成分を含む。全血の成分の例には、血漿、細胞成分(例えば、赤血球、白血球(リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、及び好中球を含む)、並びに血小板)、タンパク質(例えば、フィブリノゲン、アルブミン、免疫グロブリン)、ホルモン、凝固因子、並びに線維素溶解因子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0264】
別の実施形態によると、脳内血腫を誘発するための開始剤組成物は、コラゲナーゼを含む。本明細書で使用されるとき、コラゲナーゼ活性の1単位(U)は、37℃で1時間につき1mgのコラーゲン原線維を可溶化する。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約0.001U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約0.01U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約0.1U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約1U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約25U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約50U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、約75U/mg体重〜約100U/mg体重の量のコラゲナーゼを含む。
【0265】
別の実施形態によると、脳内血腫を誘発するための開始剤組成物は、少なくとも1つの抗体を含む。別の実施形態によると、脳内血腫を誘発するための開始剤組成物は、少なくとも1つのモノクローナル抗体を含む。別の実施形態によると、脳内血腫を誘発するための開始剤組成物は、少なくとも1つのポリクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、抗血漿抗体調製物を含む。
【0266】
他の実施形態によると、開始剤組成物は、少なくとも1つの凝血促進剤(血液凝固第II因子、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、キニノゲン、及び組織因子を含むが、それらに限定されない)に対する抗体、抗凝固剤(タンパク質C、タンパク質S、抗トロンビンIII、ヘパリン共同第II因子を含むが、それらに限定されない)、血餅構造因子(フィブリノゲン及び第XIII因子を含むが、それらに限定されない)、線維素溶解因子(プラスミノーゲン、t−PA、PAI−1、及びα2−プラスミン阻害剤等であるが、それらに限定されない)、並びにリン脂質に対する抗体を含む。
【0267】
いくつかの実施形態によると、試験される物質が誘発された脳内血腫を治療することができる程度を決定するために、誘発された脳内血腫を有する哺乳動物の脳内血腫の少なくとも1つのパラメータ特性が、試験される化合物又は物質を投与された哺乳動物の脳内血腫の少なくとも1つのパラメータ特性と比較される。脳内血腫のパラメータ特性の例には、出血挙動、脳内血腫の血液量、血腫領域の寸法、血腫領域の拡大又は収縮、脳内血腫の拡大動態、及び脳内血腫の収縮動態が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態によると、物質は、脳内血腫の誘発前に投与される。いくつかの実施形態によると、物質は、開始剤組成物と同時に投与される。いくつかの実施形態によると、物質は、脳内血腫の誘発後に投与される。
【0268】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、哺乳動物の脳に投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、開頭術後に、脳に投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、穿頭孔を通って脳に投与される。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、前頭部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、頭頂部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、側頭部の穿頭孔である。いくつかのそのような実施形態によると、穿頭孔は、後頭部の穿頭孔である。いくつかの実施形態によると、定位固定フレーム、画像誘導コンピュータシステム、又は内視鏡は、穿頭孔を通して器具を正確に配向するために使用される。
【0269】
手術の8時間前から飲食は許可されない。全身麻酔が投与される。眠った時点で、手術中に頭部を適切な位置に保持するために、動物の頭部は頭蓋骨固定デバイスに設置される。
【0270】
目的とする切開領域の毛が剃られ、頭皮が消毒剤で処理された後、皮膚切開が行われる。皮膚及び筋肉が骨から外され、折り畳まれる。次に、外科ドリルを用いて1つ以上の小さい穿頭孔が頭蓋骨内に作製される。いくつかの実施形態では、骨弁が作成される。切断された骨弁が持ち上げられ、硬膜を曝露するために除去される。骨弁は、手術の最後に元に戻されるまで安全に保管される。場合によっては、手術領域から血液又は流体を除去するために、排出管を皮膚の下に2〜3日間設置する場合もある。筋肉及び皮膚がともに戻し縫合され、柔らかい絆創膏包帯が切開上に取り付けられる。
【0271】
いくつかの実施形態によると、開始剤組成物は、脳内投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、灌流によって投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、硬膜下投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、外科的注入によって投与される。いくつかのそのような実施形態によると、開始剤組成物は、移植片の上又は中に沈着される。
【0272】
別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.000009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00002mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0003mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00004mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00005mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00006mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00007mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00008mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.00009mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0001mg/kg体重〜約10g/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.0005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.001mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.005mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.01mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約0.1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約1mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約10mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約20mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約30mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約40mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約50mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約60mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約70mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約80mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約90mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約100mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約110mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約120mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約130mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約140mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約150mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約160mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約170mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約180mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約190mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約200mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約250mg/kg体重の量である。別の実施形態によると、開始剤組成物は、約500mg/kg体重の量である。
III.脳の出血状態を治療するための薬学的組成物
【0273】
別の態様によると、記載される発明は、哺乳動物における脳の出血状態を治療するための薬学的組成物を提供し、薬学的組成物は、治療的に有効な量の治療薬及び薬学的担体を含む。一実施形態によると、脳の出血状態は、慢性SDHである。1つのそのような実施形態によると、薬学的組成物は、硬膜内又はそれに近接した投与のための薬学的組成物である。別の実施形態によると、脳の出血状態は、ICHである。1つのそのような実施形態によると、薬学的組成物は、ICH部位内又はそれに近接した投与のための薬学的組成物である。
【0274】
一実施形態によると、治療薬は、抗線維素溶解薬、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、アミノカプロン酸、アミノカプロン酸の機能的誘導体、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、第VII因子を含む。別の実施形態によると、治療薬は、組換え第VII因子を含む。別の実施形態によると、治療薬は、トラネキサム酸、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、アプロチニンを含む。別の実施形態によると、治療薬は、抗プラスミン、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、フィブリン断片D、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、ビタミンK、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、ビタミンK
1、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、ビタミンK
2、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、ビタミンK
3、又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。別の実施形態によると、治療薬は、4−アミノメチル安息香酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。
【0275】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、ゲル化合物である。
【0276】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、半固体化合物である。
【0277】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、持続放出性化合物である。
組成物
【0278】
別の態様によると、記載される発明は、脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性再出血を治療するための部位特異的な持続放出性薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物は、(a)治療的に有効な量の抗線溶剤と、(b)薬学的に許容される担体であって、持続放出性担体である、薬学的に許容される担体とを含む。
【0279】
一実施形態によると、脳内出血状態は、外傷性脳損傷後の再出血である。
【0280】
別の実施形態によると、脳内出血状態は、慢性SDHである。
【0281】
別の実施形態によると、脳内出血状態は、ICHである。
【0282】
別の実施形態によると、脳内血腫は、特発性ICHである。
【0283】
別の実施形態によると、脳内血腫は、外傷性ICHである。
【0284】
別の実施形態によると、脳内出血状態は、開頭術後の再出血である。
【0285】
別の実施形態によると、開頭術は、脳癌を治療するために行われる。
【0286】
別の実施形態によると、開頭術は、脳内血管奇形を治療するために行われる。
【0287】
別の実施形態によると、開頭術は、脳動脈瘤を治療するために行われる。
【0288】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)である。
【0289】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、第VII因子である。
【0290】
別の実施形態によると、第VII因子は、組換え第VII因子である。
【0291】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、トラネキサム酸である。
【0292】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、アプロチニンである。
【0293】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、制御放出性担体である。
【0294】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、持続放出性担体である。
【0295】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、持続放出性担体に包埋される。
【0296】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、持続放出性担体上にコーティングされる。
【0297】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、抗線溶剤を投与後少なくとも21日間放出する。
【0298】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、抗線溶剤を投与後約3〜5日間放出する。
【0299】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、微小粒子を含む。
【0300】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、ナノ粒子を含む。
【0301】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、生分解性ポリマーを含む。
【0302】
別の実施形態によると、生分解性ポリマーは、合成ポリマーである。
【0303】
別の実施形態によると、生分解性ポリマーは、天然ポリマーである。
【0304】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0305】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、ポリグリコール酸(PGA)である。
【0306】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、
トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸
のコポリマー
である。
【0307】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、ヒドロゲルである。
【0308】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、タンパク質ポリマーである。
【0309】
別の実施形態によると、タンパク質ポリマーは、絹フィブロイン、エラスチン、コラーゲン、又はそれらの組み合わせを含む、自己集合性タンパク質ポリマーから合成される。
【0310】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、天然多糖類である。
【0311】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む。
【0312】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む。
【0313】
組成物中の治療薬は、治療的に有効な量で送達される。本明細書で提供される教示と組み合わせて、種々の活性化合物の中から選択し、かつ効力、相対的な生物学的利用性、患者の体重、有害な副作用の重症度、及び好ましい投与方法等の要素を考慮することによって、実質的な毒性を引き起こさず、さらに特定の対象を治療するのに有効である、有効な予防的又は治療的な治療計画を計画することができる。任意の特定の適用に有効な量は、治療される疾患もしくは状態、投与される特定の治療薬、対象の大きさ、又は疾患もしくは状態の重症度等の要素によって異なり得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の治療薬の有効な量を実験的に決定することができる。概して、いくつかの医学的判断にしたがって、最大用量、すなわち、安全な最高用量を使用することが好ましい。「用量」及び「投薬量」という用語は、本明細書において同義に使用される。
【0314】
本明細書に記載の任意の化合物において、治療的に有効な量を、予備のインビトロ研究及び/又は動物モデルから最初に決定することができる。治療的に有効な用量を、ヒトにおいて試験された治療薬について、及び他の関連活性剤等の類似した薬理学的活性を呈することが知られている化合物についての人間のデータから決定することもできる。適用される用量を、投与される化合物の相対的な生物学的利用性及び効力に基づいて調整することができる。上述の方法及び本技術分野で周知の他の方法に基づいて、用量を調整して最大有効性を達成することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0315】
治療薬の製剤を、薬学的に許容される溶液で投与することができ、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバント、及び任意で他の治療成分を日常的に含有し得る。
【0316】
いくつかの実施形態によると、治療薬を含む記載される発明の組成物は、1つ以上の追加の適合性活性成分をさらに含む。
【0317】
治療での使用のために、治療薬を所望の表面に送達する任意の方法で、有効な量の治療薬を対象に投与することができる。薬学的組成物を投与することは、当業者に既知の任意の手段によって遂行され得る。投与経路には、硬膜下、脳内、髄腔内、動脈内、非経口(例えば、静脈内)、又は筋肉内が挙げられるが、それらに限定されない。治療薬は、慢性SDH、ICH等の基礎的状態もしくは副作用を治療するための手術中又は他の手術中に対象に送達され得る。
【0318】
治療薬を局所的に送達することが望ましい時、治療薬を、注入、例えば、ボーラス注入又は連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注入のための製剤を、防腐剤を添加した、単位剤形、例えば、アンプル又は多用量容器で提供することができる。組成物は、油性又は水性賦形剤中で懸濁液、溶液、又はエマルジョン等の形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤等の製剤化剤を含有してもよい。非経口投与のための薬学的製剤には、水溶性形態の活性化合物の水性溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注入懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒又は賦形剤には、ゴマ油、又はオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソーム等の脂肪油が含まれる。水性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意で、懸濁液は、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解性を増加させる好適な安定剤又は作用物質も含有し得る。あるいは、活性化合物は、使用前、好適な賦形剤、例えば、無菌のピロゲンを含まない水との構成のために、粉末形態であり得る。
【0319】
薬学的組成物は、好適な固体もしくはゲル相担体又は賦形剤も含み得る。そのような担体又は賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコール等のポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0320】
好適な液体又は固体薬学的調製形態は、例えば、マイクロカプセル化されるか、適切な場合、1つ以上の賦形剤を伴って、蝸牛状にされるか、微視的金粒子上にコーティングされるか、リポソーム中に含有されるか、組織への埋め込み用のペレットであるか、あるいは組織に塗り込まれる物体上で乾燥させられる。そのような薬学的組成物は、顆粒、ビーズ、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、液滴、又は活性化合物を持続放出する調製物の形態であってもよく、そのような調製物の中で、賦形剤及び添加剤、並びに/又は崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、もしくは可溶化剤等の補助剤が、上述のように習慣的に使用される。本薬学的組成物は、多種多様の薬物送達系における使用に好適である。薬物送達のための方法の簡単な概説については、参照により本明細書に組み込まれる、Langer 1990 Science 249,1527−1533を参照されたい。
【0321】
治療薬を、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。薬剤中で使用される時、塩は、薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容できない塩を好都合に使用して、その薬学的に許容される塩を調製することができる。そのような塩には、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、それらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸。また、そのような塩を、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類塩として調製することができる。薬学的に許容される塩は、本技術分野で周知である。例えば、P.H.Stahlらは、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”(Wiley VCH、Zurich,Switzerland:2002)で、薬学的に許容される塩を詳細に説明している。塩を、記載される発明内で説明される化合物の最終単離及び精製中に原位置で、又は遊離塩官能基を好適な有機酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸エステル塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。また、塩基性窒素含有基を、塩化、臭化、及びヨウ化メチル、エチエル、プロピル、及びブチル等の低級ハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、ジエチエル、ジプチル、及びジアミル等の硫酸ジアルキル;塩化、臭化、及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリル等の長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジル及びフェネチル等のハロゲン化アリールアルキル等の作用物質で四級化してもよい。水溶性もしくは油溶性又は分散性生成物は、それによって得られる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために採用され得る酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸等の無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸等の有機酸が挙げられる。発明内で説明される化合物の最終単離及び精製中に、カルボン酸含有部分を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは重炭酸塩等の好適な塩基と、あるいはアンモニア又は有機第一級、第二級、もしくは第三級アミンと反応させることによって、塩基性付加塩を原位置で調製することができる。薬学的に許容される塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づくカチオン、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン等を含む非毒性第四級アンモニウム及びアミンカチオンが挙げられるが、それらに限定されない。塩基性付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。薬学的に許容される塩を、本技術分野で周知の標準の手順を用いて、例えば、アミン等の十分に塩基性の化合物を、生理学的に許容できるアニオンを付与する好適な酸と反応させることによって得ることもできる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)又はアルカリ土類金属(例えば、カルシウムもしくはマグネシウム)塩も作製することができる。
【0322】
製剤を単位剤形で好都合に提供することができ、薬学の技術分野で周知の方法のうちのいずれかによって調製することができる。全ての方法は、治療薬又は薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物(「活性化合物」)と1つ以上の補助作用物質を構成する担体を会合に至らせるステップを含む。概して、製剤は、活性剤と液体担体もしくは微粉化した固体担体又はその両方を均一かつ密接な会合に至らせ、その後、必要に応じて、生成物を成形して所望の製剤にすることによって調製される。
【0323】
薬学的作用物質、又は薬学的に許容されるエステル、塩、溶媒和物、機能的誘導体、もしくはそのプロドラッグを、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は所望の作用を補完する物質と混合してもよい。非経口、皮内、皮下、硬膜下、脳内、髄腔内、又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液には、例えば、以下の成分が含まれ得るが、それらに限定されない:注入用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等の緩衝液;及び塩化ナトリウム又はブドウ糖等の張度調整のための作用物質。非経口調製物を、アンプル(ampoul)(もしくはアンプル(ampul))、使い捨てシリンジ、又はガラスもしくはプラスチックで作製された多用量バイアルに封入することができる。静脈内投与される特定の担体は、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0324】
非経口注入用の薬学的組成物は、薬学的に許容される無菌の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、及び無菌の注入可能な溶液又は分散液への再構成のための無菌の粉末を含む。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒、又は賦形剤の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、その好適な混合物、植物油(オリーブ油等)、及びオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散した場合の所要の粒径の維持によって、かつ界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。
【0325】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤を含むアジュバントも含有し得る。微生物作用の阻止を、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実にすることができる。例えば、糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことも望ましくあり得る。注入可能な薬学的形態の持続的吸収を、吸収を遅延する作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0326】
活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、並びにそれらの混合物等の懸濁化剤を含有し得る。
【0327】
注入可能なデポー形態を、ポリエステル(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせ)、ポリエステルポリエチレングリコールコポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、天然バイオポリマー、タンパク質ポリマー、コラーゲン、並びに多糖類等ではあるが、それらに限定されない生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製することができる。薬物とポリマーの比率及び採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。そのような長時間作用型製剤を、好適なポリマーもしくは疎水性物質(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化することができる。注入可能なデポー製剤はまた、体内組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによって調製される。
【0328】
ポリグリコール酸(PGA)は、縫合で使用するために開発された線状脂肪族ポリエステルである。研究は、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)、及びポリカプロラクトンで形成されるPGAコポリマーを報告している。これらのコポリマーのうちのいくつかを、持続性薬物放出のために微小粒子として製剤化してもよい。
【0329】
ポリエステルポリエチレングリコール化合物を合成することができ、これらは柔らかく、薬物送達に使用してもよい。
【0330】
ポリ(アミノ)由来バイオポリマーには、脂肪族ジアミンとして乳酸及びリジンを含有するもの(例えば、米国特許第5,399,665号を参照のこと)、並びにチロシン由来ポリカーボネート及びポリアクリル酸塩が含まれ得るが、それらに限定されない。ポリカーボネートの修飾が、エステルのアルキル鎖の長さ(エチルからオクチル)を変更し得るが、ポリアリレートの修飾は、二塩基酸のアルキル鎖の長さ(例えば、コハク酸からセバシン酸)を変更することをさらに含んでもよく、それはポリマーの大きな置換及びポリマー特性の高柔軟性を可能にする。
【0331】
ポリ無水物は、溶融重合により2つの二塩基酸分子を脱水することによって調製される(例えば、米国特許第4,757,128号を参照のこと)。これらのポリマーは、(バルク浸食によって分解するポリエステルと比較して)表面浸食により分解する。薬物の放出を、選択されるモノマーの親水性によって制御することができる。
【0332】
光重合性バイオポリマーには、乳酸/ポリエチレングリコール/アクリレートコポリマーが含まれるが、それらに限定されない。
【0333】
「ヒドロゲル」という用語は、ゲル状又はゼリー状の塊を生成するのに必要な水性成分を含有する固体、半固体、偽の偽塑性、又は塑性構造をもたらす物質を指す。ヒドロゲルは、概して、親水性ポリマー、アクリル酸、アクリルアミド、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む多種多様のポリマーを含む。
【0334】
天然バイオポリマーには、タンパク質ポリマー、コラーゲン、多糖類、及び光重合性化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0335】
タンパク質ポリマーは、例えば、絹フィブロイン、エラスチン、コラーゲン、及びそれらの組み合わせ等の自己集合性タンパク質ポリマーから合成されている。
【0336】
天然多糖類には、キチン及びその誘導体、ヒアルロン酸、デキストラン及びセルロース誘導体(概して、修飾なしでは生分解性ではない)、及びショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)が含まれるが、それらに限定されない。
【0337】
キチンは、主に、2−アセトアミド−2−デトキシ−D−グルコース基から成り、酵母、菌類、及び海生無脊椎動物(エビ、甲殻類)において見られ、外骨格の主要な成分である。キチンは、水溶性ではなく、脱アセチル化キチンであるキトサンは、酸性溶液(例えば、酢酸等)中でのみ可溶性である。研究は、水溶性、非常に高い分子量(200万ダルトンを超える)、粘弾性、非毒性、生体適合性であり、かつグルタルアルデヒド、グリオキサル、並びに他のアルデヒド及びカルボジイミドと架橋して、ゲルを形成することができる過酸化物である、キチン誘導体を報告している。
【0338】
交互のグルクロン及びグルコサミン結合から成り、かつこれが単離及び精製される哺乳類の硝子体液、滑液、臍帯、及び鶏冠中で見出されるヒアルロン酸(HA)を、発酵プロセスによって生成することもできる。
【0339】
局所的に注入可能な製剤を、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、あるいは使用直前に無菌の水又は他の無菌の注入可能な媒体中で溶解もしくは分散し得る無菌の固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。注入可能な調製物、例えば、無菌の注入可能な水性もしくは油性懸濁液を、好適な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、既知の技術に従って製剤化することができる。無菌の注入可能な調製物は、1,3−ブタンジオール中の溶液等の非毒性で非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の無菌の注入可能な溶液、懸濁液、又はエマルジョンであってもよい。採用され得る許容できる賦形剤及び溶媒としては、水、リンガー溶液、U.S.P.、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに生理食塩液がある。加えて、無菌の固定油が従来採用されるか、あるいは溶媒又は懸濁化剤として採用される。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油を採用してもよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が、注入可能物の調製において使用される。
【0340】
(脳内、硬膜下、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、髄腔内、及び関節内を含むが、それらに限定されない)非経口投与のための製剤には、抗酸化物質、緩衝液、静菌薬、及び目的とする受容者の血液で製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の無菌注入溶液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤を、単位用量又は多用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルで提供することができ、使用の直前に無菌の液体担体、例えば、食塩水、注入用の水の添加のみ必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注入溶液及び懸濁液を、先に説明した種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0341】
本明細書に記載の組成物の製剤の別の方法は、本明細書に記載の化合物を、水性溶解性を強化するポリマーと共役させることを伴う。好適なポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリ−(d−グルタミン酸)、ポリ−(1−グルタミン酸)、ポリ−(1−グルタミン酸)、ポリ−(d−アスパラギン酸)、ポリ−(1−アスパラギン酸)、ポリ−(1−アスパラギン酸)、及びそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。約5,000〜約100,000の分子量、約20,000〜約80,000の分子量を有するポリグルタミン酸を使用することができ、約30,000〜約60,000の分子量を使用することもできる。ポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,977,163号によって本質的に説明されるプロトコルを用いて、エステル結合を介して、治療薬の1つ以上のヒドロキシルと共役してもよい。
【0342】
好適な緩衝剤には、酢酸及び塩(1〜2%w/v)、クエン酸及び塩(1〜3%w/v)、ホウ酸及び塩(0.5〜2.5%w/v)、並びにリン酸及び塩(0.8〜2%w/v)が含まれる。好適な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v)、クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v)、パラベン(0.01〜0.25%w/v)、及びチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が含まれる。
【0343】
記載される発明の範囲内の薬学的組成物は、治療的に有効な量の少なくとも1つの治療薬、及び任意で薬学的に許容できる担体に包含される他の治療薬を含有する。薬学的組成物の成分は、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用が存在しないような方法で混合することもできる。
【0344】
治療薬を、粒子、ストリング、又はシートで提供することもできる。
【0345】
一実施形態によると、治療薬を粒子で提供してもよい。粒子は、コーティング
で覆われたコアにおいて治療薬を
含有し得るか、治療薬を粒子の至る所で分散することができるか、あるいは治療薬を粒子中に吸着することができる。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続性放出、即時放出等、及びそれらの任意の組み合わせを含む、任意の次の放出動態であり得る。粒子は、治療薬に加えて、浸食性、非浸食性、生分解性、もしく非生分解性物質、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、薬学及び薬剤の技術分野で日常的に使用される物質のうちのいずれかを含み得る。粒子は、溶液又は半固体状態中に治療薬を含有するマイクロカプセル、ナノカプセルであり得るか、あるいはいくつかの例においてはそれよりも大きくてもよい。粒子は、実質的には任意の形状であり得る。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つの治療薬を全体的に又はある程度含有し得る粒子は、微小粒子である。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つの治療薬を全体的に又はある程度含有し得る粒子は、ナノ粒子である。
【0346】
別の実施形態によると、治療薬をストリングで提供してもよい。ストリングは、コーティング
で覆われたコアにおいて治療薬を
含有し得るか、治療薬をストリングの至る所で分散することができるか、あるいは治療薬をストリング中に吸収することができる。ストリングは、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続性放出、即時放出等、及びそれらの任意の組み合わせを含む、任意の次の放出動態であり得る。ストリングは、治療薬に加えて、浸食性、非浸食性、生分解性、もしく非生分解性物質、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、薬学及び薬剤の技術分野で日常的に使用される物質のうちのいずれかを含み得る。
【0347】
別の実施形態によると、治療薬を、少なくとも1つのシートで提供してもよい。シートは、コーティング
で覆われたコアにおいて治療薬を
含有し得るか、治療薬をシートの至る所で分散することができるか、あるいは治療薬をシート中に吸収することができる。シートは、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続性放出、即時放出等、及びそれらの任意の組み合わせを含む、任意の次の放出動態であり得る。シートは、治療薬に加えて、浸食性、非浸食性、生分解性、もしく非生分解性物質、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、薬学及び薬剤の技術分野で日常的に使用される物質のうちのいずれかを含み得る。
【0348】
非生分解性ポリマー物質及び生分解性ポリマー物質の両方を、治療薬を送達するための粒子の製造において使用することができる。そのようなポリマーは、天然又は合成ポリマーであり得る。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて選択される。特定の関心の生体接着性ポリマーは、SawhneyらによってMacromolecules(1993)26,581−587で説明される生体内分解性ヒドロゲルを含み、その教示は、本明細書に組み込まれる。これらは、ポリエステル(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせ)、ポリエステルポリエチレングリコールコポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、及び光重合性バイオポリマー、天然バイオポリマー、タンパク質ポリマー、コラーゲン、多糖類、光重合性化合物、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、及びポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。いくつかの実施形態では、記載される発明の生体接着性ポリマーは、ヒアルロン酸を含む。いくつかのそのような実施形態によると、生体接着性ポリマーは、約2.3%未満のヒアルロン酸を含む。
【0349】
治療薬を、制御放出系中に含有してもよい。薬物の効果を長引かせるために、多くの場合、硬膜下、脳内、皮下、髄腔内、又は筋肉内注入からの薬物の吸収を遅延することが望ましい。これを、水溶性の低い結晶質又は非晶質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、次いで、結晶の寸法及び結晶形態に依存し得る。例えば、いくつかの実施形態によると、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)等の高粘度の主成分を含むSABER(商標)送達系が、薬物の制御放出を提供するために使用される(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,747,058号及び米国特許第5,968,542号を参照のこと)。高粘度のSAIBが薬物、生体適合性賦形剤、及び他の添加剤と共に製剤化される時、結果として生じる製剤は、標準のシリンジ及び針で容易に注入することができる程度の液体である。SABER(商標)製剤の注入後、賦形剤は拡散し、粘性デポーを放置する。
【0350】
本明細書で使用される「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式及び特性が制御される任意の薬物含有製剤を指すよう意図される。これは、即時放出製剤、並びに非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤は、持続性放出及び遅延放出製剤を含むが、それらに限定されない。「持続性放出」(「徐放性」とも称される)という用語は、長期間にわたる段階的な薬物放出を提供し、かつ必要ではないが好ましくは、長期間にわたって実質的に一定の薬物の血液レベルをもたらす薬物製剤を指すために、本明細書においてその従来の意味で使用される。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、油賦形剤中で薬物を溶解又は懸濁することによって達成される。「遅延放出」という用語は、製剤の投与とそれからの薬物の放出との間に時間遅延が存在する薬物製剤を指すために、本明細書においてその従来の意味で使用される。「遅延放出」は、長期間にわたる段階的な薬物放出を伴ってもよく、又は伴わなくてもよく、したがって、「持続性放出」であってもよく、又は「持続性放出」でなくてもよい。
【0351】
長期持続性放出移植片の使用は、特に、慢性状態の治療に好適であり得る。長期持続性放出移植片は、当業者に周知であり、上述の放出系のうちのいくつかを含む。
送達系
【0352】
別の態様によると、記載される発明は、半固体送達系を治療薬に、かつ半固体送達系、多粒子送達系、治療送達系の組み合わせを治療薬に提供する。例えば、記載される発明は、局所治療効果を支持するように、体内もしくは体の上での注入、沈着、又は埋め込みに、半固体、生分解性、生体適合性送達系を利用する送達系を提供する。あるいは、記載される発明は、局所治療効果を促進するように、体内もしくは体の上での注入、沈着、又は埋め込みに、半固体、生分解性、生体適合性、生分解性送達系において分散及び懸濁される生分解性、生体適合性多粒子を提供する。
【0353】
さらに、半固体送達系は、少なくとも部分的に、生体適合性、生分解性、粘性半固体を含み、半固体は、最終的には水性環境の存在下で平衡含量に達する、相当量のH
2Oを組み込み、かつ保持するヒドロゲルを含む。一実施形態によると、以下GMOと称されるモノオレイン酸グリセリルが、目的とする半固体送達系又はヒドロゲルである。しかしながら、多くのヒドロゲル、ポリマー、炭化水素組成物、及び粘度/硬度に関して類似した物理的/化学的特性を有する脂肪酸誘導体が、半固体送達系として機能し得る。
【0354】
一実施形態によると、ゲル系は、GMOをその融点(40℃〜50℃)を超えて加熱すること、及び例えば、リン酸緩衝液又は生理食塩水等の温かい水性緩衝液又は電解質溶液を添加することによって生成され、したがって、三次元構造を生成する。水性緩衝液は、半極性溶媒を含有する他の水性溶液又は組み合わせから成り得る。
【0355】
GMOは、親油性物質を組み込む能力を有する、主に脂質ベースのヒドロゲルを提供する。GMOは、親水性化合物を組み込み、かつ送達する内部水性チャネルをさらに提供する。ゲル系は、室温(約25℃)で、広範囲の粘度測定値を含む異なる相を呈し得ると認識される。
【0356】
一実施形態によると、2つのゲル系相が、それらの特性により、室温及び生理的温度(約37℃)並びにpH(約7.4)で利用される。2つのゲル系相内で、第1の相は、約5%〜約15%のH
2O含量及び約95%〜約85%のGMO含量の薄板相である。薄板相は、容易に操作し、注ぎ、かつ注入することができる適度に粘性の流体である。第2の相は、約15%〜約40%のH
2O含量及び約85%〜60%のGMO含量からなる立方相である。これは、約35重量%〜約40重量%の平衡含水比を有する。本明細書で使用される「平衡含水比」という用語は、過剰な水の存在下における最大含水量を指す。したがって、立方相は、約35〜約40重量%で水を組み込む。立方相は、高度に粘性である。粘度を、例えば、ブルックフィールド粘度計を介して測定することができる。粘度は、1,200,000センチポイズ(cp)を超え、1,200,000cpは、ブルックフィールド粘度計のカップ及びボブの構成を介して得ることのできる粘度の最大測定値である。いくつかのそのような実施形態によると、系にその持続的な連続送達を提供するように、治療薬を半固体に組み込んでもよい。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、トラネキサム酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アミノカプロン酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、第VII因子を含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、組換え第VII因子を含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アプロチニンを含む。いくつかのそのような実施形態によると、体内に局所的、生物学的、生理学的、又は治療的効果を種々の放出速度で提供するために、他の治療薬、生物学的活性剤、薬物、薬剤、及び不活性物を、半固体に組み込んでもよい。
【0357】
いくつかの実施形態によると、半固体の親油性が変更されるように、又は別の方法では、半固体内に含有される水性チャネルが変更されるように、代替の修正された半固体製剤及び生成方法を利用する。したがって、様々な濃度の種々の治療薬が、異なる速度で半固体から拡散し得るか、あるいは半固体の水性チャネルを介して長期にわたってそれから放出され得る。水性成分の粘度、流動性、表面張力、もしくは極性の変更によって、半固体の粘稠度又は治療薬放出を変更するために、親水性物質を利用してもよい。例えば、脂肪酸部分の炭素9及び炭素10が単一結合ではなく二重結合であることを除いてGMOと構造的に同一のモノステアリン酸グリセリン(GMS)は、加熱及び水性成分の添加時にGMOのようにゲル化しない。しかしながら、GMSが界面活性剤であるため、GMSは、最大約20%w/wでH
2Oに混和できる。本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、表面活性剤、したがって、限定された濃度でH
2Oに混和できる表面活性剤、並びに極性物質を指す。加熱及び撹拌時、80%のH
2O/20%のGMSの組み合わせは、ハンドローションに似た粘稠度を有する塗布可能なペーストを生成する。次に、ペーストは、上述のような高粘度を有する立方相ゲルを形成するように、溶かしたGMOと合わせられる。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、トラネキサム酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アミノカプロン酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、第VII因子又は組換え第VII因子を含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アプロチニンを含む。
【0358】
別の実施形態によると、水性成分を変更するために、市販のGelfoam(商標)等の加水分解されたゼラチンが利用される。約6.25重量%〜12.50重量%の濃度のGelfoam(商標)を、それぞれ、約93.75重量%〜87.50重量%の濃度のH
2O、又は他の水性に基づく緩衝液中に設置することができる。加熱及び撹拌時、H
2O(又は他の水性緩衝液)/Gelfoam(商標)の組み合わせは、濃厚なゲル状物質を生成する。結果として生じる物質をGMOと合わせることによって、そのように形成される生成物は膨張し、純粋なGMOゲル単独と比較して展性の低い高度に粘性の半透明ゲル形成する。
【0359】
別の実施形態によると、水性成分を変更して、薬物の可溶化を支援するために、ポリエチレングリコール(PEG)を利用することができる。約0.5重量%〜40重量%の濃度のPEG(PEGの分子量に応じて)が、それぞれ、約99.5重量%〜60重量%の濃度のH
2O、又は他の水性に基づく緩衝液中に設置される。加熱及び撹拌時、H
2O(又は他の水性緩衝液)/PEGの組み合わせは、粘稠液〜半固体物質を生成する。結果として生じる物質をGMOと合わせることによって、そのように形成される生成物は膨張し、高度に粘性のゲルを形成する。
【0360】
理論によって制限されるものではないが、例えば、治療薬は、恐らく二相様式で、拡散を介して半固体から遊離する。第1の相は、例えば、親油性膜内に含有される親油性薬物がそこから水性チャネルに拡散することに関係する。第2の相は、水性チャネルから外部環境への薬物の拡散を伴う。親油性であるため、薬物は、自身をその提案された脂質二層構造内のGMOゲルの内側に配向し得る。したがって、約7.5重量%を超える薬物をGMOに組み込むことは、三次元構造の完全性の喪失を引き起こし、それによって、ゲル系は、もはや半固体立方相を維持せず、粘性の薄板相液体に戻る。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、トラネキサム酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アミノカプロン酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、第VII因子又は組換え第VII因子を含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アプロチニンを含む。別の実施形態によると、約1〜約45重量%の治療薬は、正常な三次元構造の破損なく、生理的温度でGMOゲルに組み込まれる。結果として、この系は、薬物用量を伴って著しく増加する柔軟性の能力を可能にする。送達系が展性であるため、体内の壁、空間、もしくは他の空洞の輪郭に付着及び適合し、かつ存在する全ての空洞を完全に充填するように、それを、例えば、慢性SDHに隣接した、又は慢性SDH中の移植部位内で送達及び操作することができる。送達系は、移植部位にわたって薬物分布及び均一な薬物送達を確実にする。例であるが、限定されない脳の表面の空間内での送達系の送達及び操作の容易さは、半固体送達装置を介して促進される。半固体送達装置は、送達系の標的及び制御送達を促進する。
【0361】
一実施形態によると、多粒子成分は、ノンパレイル、ペレット、ストリング、シート、結晶、集塊物、微小粒子、又はナノ粒子を含むが、それらに限定されない固体構造を生成するために利用される、生体適合性、生分解性、ポリマー、又は非ポリマー系から成る。
【0362】
別の実施形態によると、多粒子成分は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)から成る。PLGAは、体内での治療薬の制御及び拡大された送達のために使用される生分解性ポリマー物質である。そのような送達系は、高頻度の周期的な全身投与と比較して、強化された治療有効性及び減少した全体の毒性を提供する。理論によって限定されるものではないが、例えば、異なるモル比のモノマーサブユニットのからなるPLGA系は、ポリマー分解速度の変化を介して標的治療薬送達を適応させるための正確な放出特性の操作における柔軟性を高める。一実施形態によると、PLGA組成物は、生体適合性であるように十分に純粋であり、生分解時は生体適合性のままである。一実施形態によると、PLGAポリマーは、治療薬又は薬物をその中に封入させる微小粒子となるよう設計及び構成され、それによって、治療薬は、その後、以下でより詳細に説明される方法によってそれから放出される。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アミノカプロン酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、トラネキサム酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、機能的誘導体もしくはプロドラッグを含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、第VII因子又は組換え第VII因子を含む。いくつかのそのような実施形態によると、治療薬は、アプロチニンを含む。
【0363】
別の実施形態によると、多粒子成分は、ポリd,l(ラクチド−co−カプロラクトン)から成る。これは、体内での治療薬の制御及び拡大送達のために使用される生分解性ポリマー物質に、PLGAポリマーの薬物放出機構と類似した薬物放出機構を提供する。一実施形態によると、GMS等の生分解性及び/又は生体適合性の非ポリマー物質を用いて、多粒子微小粒子も生成される。
【0364】
別の実施形態によると、多粒子成分は、同一もしくは異なる薬物物質を有する同一の組成物のポリマー、同一もしくは異なる薬物物質を有する異なるポリマーを用いて、又は薬物を含有せず、同一の薬物、異なる薬物、もしくは複数の薬物物質を含有する多層化プロセスで、多粒子成分をカプセル化又はコーティングするために使用される方法によってさらに変更される。これは、単一又は複数の薬物作用物質の幅広い薬物放出特性を有する多層化(カプセル化)多粒子系の同時生成を可能にする。別の実施形態によると、多粒子からの物理的な薬物拡散の速度を制御するコーティング材を、単独で、又は前述の好ましい実施形態及び想定される実施形態に呼応して利用することができる。
【0365】
別の実施形態によると、本発明は、PLGAを利用する送達系を提供する。PLGAポリマーは、加水分解に対して不安定なエステル結合を含有する。H
2OがPLGAポリマーに浸透する時、そのエステル結合は、加水分解され、水溶性のモノマーが、PLGAポリマーから除去され、したがって、封入された薬物の物理的な放出を長期にわたって促進する。いくつかのそのような実施形態によると、合成の生分解性生体適合性ポリマーの他の種類を、体内での治療薬の制御及び拡大送達のために使用することができ、それらはポリ無水物、ポリ(リン酸塩)、ポリジオキサノン、セルロース誘導体、及びアクリル樹脂を含み、非限定的な例として拡張される。いくつかのそのような実施形態によると、非ポリマー物質を、体内での治療薬の制御及び延長送達のために利用することができ、ステロール、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸、及びコレステリルエステルを含むが、それらに限定されず、これらは、非限定的な例として拡張される。
【0366】
別の実施形態によると、記載される発明は、治療薬の局所送達のために賦形剤として働く半固体送達系を提供し、親油性、親水性、又は両染性、固体もしくは半固体物質を含み、その融点を超えて加熱され、その後、含水量に基づく可変の粘度ゲル状組成物を生成するように、温かい水性成分の包含が続く。治療薬は、半固体系の混合及び形成前に、溶けた親油性成分又は水性緩衝液成分に組み込まれ、分散する。ゲル状組成物は、その後の設置、又は沈着のために半固体送達装置内に設置される。展性であるため、ゲル系は、半固体送達装置を介して、移植部位において容易に送達及び操作され、体内の埋め込み部位、空間、又は他の空洞の輪郭に付着及び適合し、かつ存在する全ての空洞を完全に充填する。あるいは、生体適合性ポリマー又は非ポリマー系から成る多粒子成分が、治療薬をその中に封入させる微小粒子を生成するために利用される。最後の処理方法に続いて、微小粒子は、半固体系に組み込まれ、その後、そこから移植部位又は同程度の空間に容易に送達されるように半固体送達装置内に設置され、それによって、治療薬は、後に薬物放出機構によってそこから放出される。
【0367】
別の実施形態によると、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)等の高粘度の主成分を含むSABER(商標)送達系が、薬物の制御放出を提供するために使用される。
IV.脳の出血状態を治療するための方法
【0368】
別の態様によると、記載される発明は、哺乳動物における脳の出血状態に起因する血腫拡大又は再発性出血を治療するための方法を提供し、本方法は、
【0370】
(i)治療的に有効な量の抗線溶剤と、
【0371】
(ii)薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供するステップと、
【0372】
(b)脳内の血腫中、又はそれに近接した距離の事前決定された位置に、(a)の薬学的組成物を投与するステップと、
【0373】
(c)患者予後を改善するステップとを含む。
【0374】
一実施形態によると、出血状態は、外傷性脳損傷(TBI)に起因する。
【0375】
別の実施形態によると、出血状態は、血腫の外科的排除後の再出血である。
【0376】
別の実施形態によると、出血状態は、慢性硬膜下血腫(SDH)である。
【0377】
別の実施形態によると、出血状態は、脳内血腫(ICH)である。
【0378】
別の実施形態によると、脳内血腫は、特発性脳内血腫(ICH)である。
【0379】
別の実施形態によると、脳内血腫は、外傷性脳内血腫(ICH)である。
【0380】
別の実施形態によると、出血状態は、開頭術後の再出血である。
【0381】
別の実施形態によると、開頭術は、脳癌を治療するために行われる。
【0382】
別の実施形態によると、開頭術は、脳内血管奇形を治療するために行われる。
【0383】
別の実施形態によると、開頭術は、脳動脈瘤を治療するために行われる。
【0384】
別の実施形態によると、投与は、埋め込みである。
【0385】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)である。
【0386】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、第VII因子である。
【0387】
別の実施形態によると、第VII因子は、組換え第VII因子である。
【0388】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、トラネキサム酸である。
【0389】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、アプロチニンである。
【0390】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、制御放出性担体である。
【0391】
別の実施形態によると、薬学的に許容される担体は、持続放出性担体である。
【0392】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、持続放出性担体に包埋される。
【0393】
別の実施形態によると、抗線溶剤は、持続放出性担体上にコーティングされる。
【0394】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、抗線溶剤を投与後少なくとも21日間放出する。
【0395】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、抗線溶剤を投与後約3〜5日間放出する。
【0396】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、微小粒子である。
【0397】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、ナノ粒子である。
【0398】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、生分解性ポリマーを含む。
【0399】
別の実施形態によると、生分解性ポリマーは、合成ポリマーである。
【0400】
別の実施形態によると、生分解性ポリマーは、天然ポリマーである。
【0401】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0402】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、ポリグリコール酸(PGA)である。
【0403】
別の実施形態によると、合成ポリマーは、トリメチレンカーボネート
、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸
のコポリマーである。
【0404】
別の実施形態によると、持続放出性担体は、ヒドロゲルである。
【0405】
別の実施形態によると、天然バイオポリマーは、タンパク質ポリマーである。
【0406】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む。
【0407】
別の実施形態によると、天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む。
【0408】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.5mm〜約1mmである。
【0409】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.6mm〜約1mmである。
【0410】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約67mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.7mm〜約1mmである。
【0411】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.8mm〜約1mmである。
【0412】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約0.9mm〜約1mmである。
【0413】
別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約1mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約2mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約3mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約4mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9.5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9.6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9.7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9.8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫に近接した距離は、約9.9mm〜約10mmである。
【0414】
別の実施形態によると、薬学的組成物は、局所的薬理効果を呈する。
【0415】
別の実施形態によると、薬学的組成物は、脳の至る所でその薬理効果を呈する。
【0416】
別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000002mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000003mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000004mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000005mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000006mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000007mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000008mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000009mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00002mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0003mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00004mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00005mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00006mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00007mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00008mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00009mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0005mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.001mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.005mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.01mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.1mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約1mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約10mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約20mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約30mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約40mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約50mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約60mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約70mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約80mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約90mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約100mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約110mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約120mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約130mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約140mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約150mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約160mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約170mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約180mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約190mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約200mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約250mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約500mg/kg体重である。
V.脳内出血状態に起因する血腫の外科的排除後の再出血の重症度を治療するための方法
【0417】
さらに、記載される発明は、脳内出血状態に起因する血腫の外科的排除後の再出血の重症度を予防又は減少させる方法を提供し、本方法は、(a)血腫の少なくとも1つの端に接近した距離に薬学的組成物を埋め込むステップを含み、薬学的組成物は、(i)治療的に有効な量の活性剤と、(ii)コーティングを含み、活性剤が局所的薬理効果を引き起こす。一実施形態によると、脳内出血状態は、慢性SDHである。別の実施形態によると、脳内出血状態は、脳内血腫である。
【0418】
一実施形態によると、脳の出血状態は、慢性SDHである。
【0419】
別の実施形態によると、脳の出血状態は、頭蓋内出血である。
【0420】
別の実施形態によると、脳の状態は、空洞である。いくつかのそのような実施形態によると、空洞は、腫瘍の除去後に作成される空洞である。いくつかのそのような実施形態によると、空洞は、感染部の除去後に作成される空洞である。いくつかのそのような実施形態によると、空洞は、脳の一部分の除去後に作成される空洞である。いくつかのそのような実施形態によると、空洞は、脳の血管奇形の除去後に作成される空洞である。
【0421】
別の実施形態によると、活性剤は、アミノカプロン酸を含む。別の実施形態によると、活性剤は、トラネキサム酸を含む。別の実施形態によると、活性剤は、第VII因子を含む。別の実施形態によると、活性剤は、組換え第VII因子を含む。別の実施形態によると、活性剤は、アプロチニンを含む。別の実施形態によると、活性剤は、抗プラスミンを含む。別の実施形態によると、活性剤は、フィブリン断片Dを含む。別の実施形態によると、活性剤は、ビタミンKを含む。別の実施形態によると、活性剤は、ビタミンK1を含む。別の実施形態によると、活性剤は、ビタミン
K2を含む。別の実施形態によると、活性剤は、ビタミンK3を含む。別の実施形態によると、活性剤は、4−アミノメチル安息香酸又はそのエステル、塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグもしくは機能的誘導体を含む。
【0422】
一実施形態によると、薬学的組成物は、ゲルを含む。別の実施形態によると、薬学的組成物は、徐放性固体を含む。別の実施形態によると、薬学的組成物は、半固体化合物を含む。
【0423】
別の実施形態によると、薬学的組成物は、制御放出性薬学的組成物である。別の実施形態によると、薬学的組成物は、徐放性薬学的組成物である。別の実施形態によると、薬学的組成物は、持続放出性薬学的組成物である。
【0424】
別の実施形態によると、コーティングは、少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマーを含む。いくつかの実施形態によると、コーティングは、活性剤でマトリックスを形成し、活性剤は、所望の放出パターンである。いくつかの実施形態によると、コーティングは、製剤の造粒段階中に活性剤と混合される。
【0425】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.5mm〜約1mmである。
【0426】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.6mm〜約1mmである。
【0427】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.7mm〜約1mmである。
【0428】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.8mm〜約1mmである。
【0429】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約9mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約8mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約7mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約6mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約5mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約4mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約3mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約2mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約0.9mm〜約1mmである。
【0430】
別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約1mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約2mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約3mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は血腫の少なくとも1つの端から、約4mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9.5mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9.6mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9.7mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9.8mm〜約10mmである。別の実施形態によると、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離は、血腫の少なくとも1つの端から約9.9mm〜約10mmである。
【0431】
別の実施形態によると、薬学的組成物は、外科的注入によって埋め込まれる。
【0432】
別の実施形態によると、治療的に有効な量の組成物は、約0.000001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000002mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000003mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000004mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000005mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000006mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000007mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000008mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.000009mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00002mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0003mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00004mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00005mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00006mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00007mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00008mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.00009mg/kg体重〜約10g/kg体重である。別の実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0001mg/kg体重〜約10g/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.0005mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.001mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.005mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.01mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約0.1mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約1mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約10mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約20mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約30mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約40mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約50mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約60mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約70mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約80mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約90mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約100mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約110mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約120mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約130mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約140mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約150mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約160mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約170mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約180mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約190mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約200mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約250mg/kg体重である。いくつかのそのような実施形態によると、治療的に有効な量は、約500mg/kg体重である。
【0433】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する当業者によって一般に理解される用語と同一の意味を有する。本明細書に記載の方法及び物質と類似又は同等の任意の方法及び物質を、記載される発明の実践又は試験において使用することもできるが、好ましい方法及び物質がこれから記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、刊行物が関連して引用される方法及び/又は物質を開示かつ記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0434】
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの介在値、及びその規定範囲内の任意の他の規定値又は介在値は、文脈が別途明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで本発明に包含されることが理解される。より小さい範囲に独立して含まれ得るこれらのより小さい範囲の上限及び下限も、規定範囲内の任意の明確に除外された限界に従って本発明に包含される。規定範囲がその限界の1つ又は両方を含む場合、それらの包含される限度のいずれかを排除する範囲も本発明に含まれる。
【0435】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される時、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形を含むことに留意されなければならない。本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、同一の意味を有する。
【0436】
本明細書で議論される刊行物は、単に本出願の出願日前のそれらの開示のために提供されているだけである。本明細書において、記載される発明が、先行発明によりそのような刊行物に先行する権利がないと承認するものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日と異なる場合もあり、独立して確認される必要があり得る。
【0437】
その精神又は本質的な属性から逸脱することなく、記載される発明を他の特定の形態で具現することができ、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲について言及すべきである。
実施例
【0438】
以下の実施例は、当業者に、どのように本発明を作製かつ使用するかの完全な開示及び説明を提供するようにまとめられ、本発明者が、それらの発明と見なす範囲を制限することも、以下の実験が、実行された全ての実験又は唯一の実験であることを表すことも意図しない。用いられる数(例えば、量、温度等)に関する正確度を確保すべく努力がなされたが、いくつかの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別途示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏であり、圧は、大気圧、又はそれに近い圧である。
実施例1.慢性硬膜下血腫(SDH)の非ヒト動物モデル
【0439】
1.1.マウスモデルにおける慢性硬膜下血腫の形成
【0441】
脊髄(medulla spinalis)(脊髄(spinal cord))周囲に緩んだ鞘を形成する脊髄硬膜(spinal dura mater)(脊髄硬膜(dura mater spinalis)、脊髄硬膜(spinal dura))は、脳硬膜の内層又は髄膜層のみを表し、外層又は骨内膜層は、大後頭孔で終わり、その位置は、脊柱管を並べる骨膜に取って変えられる。脊髄硬膜は、可能性のある空洞(「硬膜下腔」)によってくも膜から分離され、2つの膜は、並置される表面を湿らせる働きをする微量の流体によって分離される場合を除いて、実際には相互に接触している。脊髄硬膜は、空間(「硬膜外腔」)によって脊柱管の壁から分離され、それは、多数の緩んだ乳輪組織及び静脈叢を含有し、したがって、椎骨の硬膜と骨膜との間のこれらの静脈の状態は、脳硬膜の髄膜層と骨内膜層との間の硬膜静脈洞の状態に対応する。脊髄硬膜は、特に脊柱管の下端近くで、線維状スリップによって、大後頭孔の外周、第二及び第三頸椎、並びに後縦靱帯に付着している。硬膜下腔は、第二仙椎下縁で終わり、この高さよりも下位で、硬膜は、終糸(腰神経の起点(軟膜の最終部分)より下の脊髄の細い糸様の延長部分)を密接に包囲し、骨膜と融合する尾骨後部に下降する。硬膜鞘は、その含量の収容に必要な寸法よりもはるかに大きく、その寸法は、胸部よりも頸部及び腰部で大きい。それぞれの側面上で、対応する2つの脊髄神経根を通す二重開口部をそれぞれの側面上で見ることができ、硬膜は、それらが椎間孔を通過する時、神経上に管状延長部分の形態で続く。これらの延長部分は、脊柱の上部では短いが、下方で徐々に長くなり、下位の脊髄神経を取り囲み、かつ脊柱管に含有される、いくつかの線維膜管を形成する。
【0442】
脊髄硬膜は、脳硬膜の髄膜層又は支持層に構造上類似している。これは、大抵の場合、相互に平行であり、かつ縦方向の配列を有する、帯又は薄板で配置される白色の線維性及び弾性組織からなる。その内側面は滑らかで、中皮層によって被覆されている。これには血管がわずかに供給され、数個の神経がその中にたどられる。
【0443】
くも膜の脊髄神経部分(脊髄くも膜)は、周囲の脊髄を緩く取り巻く薄くて繊細な管状膜である。上方では、それは頭蓋くも膜に続き、下方では、広がって、馬尾(第一腰椎下方の脊柱管内のくも膜下腔の下方部分を通過する腰部及び仙骨脊髄神経からの脊髄神経根の束)を包囲し、神経はそこから進む。これは、硬膜下腔によって硬膜から分離されるが、この空間は、単離した合組織線維柱帯によって断続的に横断され、それは脊髄の後面上で最も多い。
【0444】
くも膜下腔の脊髄神経部分は、非常に広い空間であり、くも膜が馬尾を形成する神経を取り囲む脊柱管の下方部分で最も大きい。それは、上方では、頭蓋くも膜下腔に続き、下方では、第二仙椎下縁の高さで終わる。これは、くも膜を脊髄の後正中溝と反対側の軟膜と結び付ける縦方向の隔壁(くも膜下隔壁)によって部分的に分けられ、仕切りを形成し、上方では不完全かつ穿孔性であるが、胸部ではより完全である。脊髄くも膜下腔は、歯状靱帯(頸髄及び胸髄のうちのいずれかの側面から前額面に突き出る脊髄軟膜の鋸歯状かつ棚状の伸長部)によってさらに細分化される。
【0445】
脳軟膜よりも厚くて堅く、かつ血管性の低い脊髄軟膜(spinal pia mater)(脊髄軟膜(pia mater spinalis)、脊髄の軟膜)は、2つの層からなる。外側又は追加の軟膜層は、大抵の場合、縦方向に配置される、結合組織線維の束から成る。くも膜下腔に連通する裂け目状の空間及び血管周囲のリンパ鞘に取り囲まれるいくつかの血管は、層の間にある。脊髄軟膜は、脊髄の全表面を被覆し、それに非常に密接に付着しており、前方で、突起を前裂溝中に逆方向に送り込む。縦方向の線維帯(輝線)は、前表面の正中線に沿って延在し、歯状靱帯は、いずれかの側面上に位置する。脊髄円錐(脊髄の末端)の下方で、軟膜は、細長い線維(終糸)として続いており、それは、馬尾を形成する神経の塊の中心を通って下降する。それは、第二仙椎下縁の高さで硬膜と融合し、骨膜と融合する尾骨基底部まで下向きに延在する。軟膜は、胴体が動いている間、その位置での脊髄の維持を支持し、この状況から、脊髄の中央靱帯と呼ばれている。
【0447】
慢性SDHをマウスモデルにおいて形成する。成人C57BL6、CD1、又は25〜35グラムの重さの他の適切な系統のマウスを、腹腔内で、ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で鎮静する。直腸温度プローブ及び恒温パッドを用いて、体温を37℃で維持する。ドナーマウス(又はラット)を麻酔し(ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)、腹腔内)、21ゲージのカテーテルを用いて、外頸静脈から血液を収集する。収集した同種(又は異種)血液を、受容者マウスの胸椎の皮下腔に(2mL、5mL又は10mLのうちのいずれかの量で)即座に注入する。初期の血腫を、デジタルノギスを用いて即座に測定する。血腫測定を二重で行い、それぞれの測定を異なる熟練技術者が単独で行い、その後の測定を、注入後、1日おきに1日3回行う。動物に全身麻酔し、その後、(i)血腫の寸法が減少し始めるか、又は(ii)血腫の寸法が約6日連続して拡大するかのいずれかの場合、左室を通してNaCl(0.9%、50mL)及びパラホルムアルデヒド(4%、リン酸緩衝食塩水(PBS)中120mL)を20分間灌流する。
【0448】
血腫が無傷のままであるように、血腫を胸椎から広範囲にわたって解離し、その後、中央に沿って冠状に区分する。組織学研究のために、塊をパラフィンで包埋し、区分し(10μm)、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、(i)造粒及び組織の厚さについて定量的に、並びに(ii)炎症細胞、新生血管、マクロファージ、好酸球、及び他の組織学的特性について質量的に試験する。
【0449】
免疫組織化学を一部の冠状断上で行う。組織を一晩固定し(4%パラホルムアルデヒド)、例えば、最適切断温度(OCT)媒体(Biogenex,Markham,Ontario)等の好適な媒体に包埋し、ドライアイス上で凍結させる。低温保持装置を用いてその後の薄片化(10μm)を行い、薄片をブロックし(10%の正常なヤギ血清、1%のウシ血清アルブミン、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS))、緩徐振動で1時間透過処理する(0.3%のTriton X−100)。(Abcam,Cambridge,MA等の製造供給元から市販されている)免疫蛍光のための一次抗体は、マクロファージ(CD68)、組織型及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、TNFα、IL−6、並びにIL−8に対する抗体である。薄片を、1%BSAを有するPBS中で一次抗体とインキュベートし、その後、洗浄し、二次抗体(例えば、適切な種及びアイソタイプに対するAlexa Fluor 568(Invitrogen,Carlsbad,CA)ヤギ抗体)を適用する。最終洗浄後、薄片を、マニキュア液で密封された退色防止封入剤を有する被覆スリップで保護し、4℃で保存する。
【0450】
薄片を、電荷結合素子(CCD)カメラを有する保存共焦点顕微鏡上で観察する。一貫した捕捉パラメータ(露光時間、レーザ強度、及びピンホール寸法)を利用する。公平な計数規則及び染色した細胞を計数する2名の観察者(実験群に関して知らされていない)を伴って、細胞数を、ランダムに選択した血腫壁の画像(n=10)から定量化する。
【0451】
血腫量を、それぞれの血腫が楕円であるかのように計算する(量=4/3πABCであり、式中、A、B、及びCは、3つの直交半径である)。分散分析(ANOVA)又は反復測定のためのANOVAによって群の間の比較を行い、必要に応じて、Turkey多重比較試験が続く。群内で対応のあるt−検定、及び異なる群の間で対応のないt−検定によって、2つの測定の間の比較を行う。最小二乗法を利用した線形回帰を使用し、SigmaPlot(Statistical Package for the Social Sciences[SPSS],Chicago,IL)又はStata(Stata Corp.,College Station,TX)におけるLevenburg−Marquardtアルゴリズムを用いて曲線当てはめを行う。χ
2又はFisherの正確検定でノンパラメトリック測定を比較する。
実施例3.マウスにおける慢性硬膜下血腫の別のモデル
【0452】
別のモデルにおいて、生後5日目の新生マウスへの6−アミノニコチンアミド(25mg/kg体重)の単回腹腔内注入によって、慢性SDHを作成することができる。いくらかのこれらのマウスは、注入から20日後又はそれ以降、特発性SDHを自然発症的に発現する。対照に、同一の量の生理学的食塩水を注入してもよい。麻酔マウスを、左室を通して、50mLの0.9%NaCl、その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の120mLの4%パラホルムアルデヒドで20分間にわたって灌流した後に、血腫を評価する(
図9)。
実施例4.マウスにおける慢性硬膜下血腫の経時変化及び体液分析
【0453】
慢性SDHの形成の経時変化及び慢性SDHの体液分析を行う。同種血液量(2mL、5mL、又は10mL)を、受容者マウスの胸椎の皮下腔内注入し、血腫形成時間を監視する。動物の屠殺の直前に、血腫液を、硫酸プロタミン及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するシリコン処理した管に吸引する。対照静脈血を、大腿静脈から得る。全ての試料を遠心分離し(3000rpmで10分間)、その後、上清を除去し、保存する(−80℃)。(例えば、R and D Systems,Minneapolis,MN又はAmerican Diagnostica Stamford,CTからの)市販のELISAキットを用いて、試料を、α
2−抗プラスミン、プラスミン−α
2−抗プラスミン複合体、IL−6、IL−8、及びTNFaについて分析する。
実施例5.線維素溶解を操作するためのノックアウトマウス
【0454】
野生型マウス並びにt−PA及びα2−抗プラスミンのノックアウトマウスが、胸椎上の皮下腔への同種血液の注入を受ける。デジタルノギスを用いて血腫量を測定する。安楽死状態で、血腫を組織学的及び免疫化学的に評価し、プラスミノーゲン活性化因子、α
2−抗プラスミン、プラスミン−α
2−抗プラスミン複合体等の線溶マーカーについて血腫流体を分析する。
実施例6.線維素溶解の薬理学的操作
【0455】
PLGA又はトラネキサム酸を有する類似した生分解性ポリマーを含む薬学的組成物を合成する。簡潔に、様々な放出動態を有するトラネキサム酸及びPLGAの6つの製剤を合成する。放出動態が、PLGAの成分を変更することによって変化する。マウスモデルにおけるそれらのインビトロ放出動態について、異なる製剤を試験する。トラネキサム酸の放出をトロンボエラストグラフィーで測定する。
実施例7.ICHのラットモデル
【0456】
単回血液注射が投与される他のモデルよりも持続出血に関連付けられる可能性の高いICHのラットコラゲナーゼモデルにおいて、製剤を試験する(Eiger,B.et al,J.Stroke Cerebrovasc.Dis.7:10,1998)。
【0457】
10匹のラットの群は、記載される発明の製剤にと共に、尾状核にコラゲナーゼの注入を受ける。ケタミン(90mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注入で誘発されたラットは、全身麻酔下で手術を受ける。頭皮をポビドンヨードで殺菌調製し、ブレグマ(頭蓋の最上部にある矢状及び冠状縫合の結合部における頭蓋測定点)の前方から後頭骨まで正中切開を行う。頭蓋が曝露し、尾状核上に1mmのドリルで穴を開ける。所定の位置に縫合され、かつ0.9%のNaClを装填した剛性管で圧力変換器に接続されたPE10管を有するカテーテルを、尾動脈に挿入する。加温パッド及び直腸温度プローブを用いて、体温を維持かつ監視する。ベースラインの血圧及び体温を15分間記録し、その後、対照又は製剤とともに、又はそれを含まずに、コラゲナーゼ(IV型、0.15ユニット、例えば、Worthington Biochemicals,Lakewood,NJから)を注入する。
【0458】
ICHの1〜10日後に動物を安楽死させ、脳を除去し、肉眼的及び組織学的に試験する。脳をホルマリン中で固定し、その後、半球の区分を切断し、パラフィンに包埋し、薄片化し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色する。標準の形態学的方法を用いた面積測定で血腫の寸法を測定する。試料を試験し、全体の外観、注入部位周囲の結合組織中の浸潤多核好中球の数、単球の数、任意の壊死の存在、毛細血管増殖、及び線維化によって、脳実質炎症の程度を評価する。3点スケール(1=ほとんど又は全く炎症性要素を伴わない好中球浸潤、2=非化膿性の炎症、及び3=急性化膿性炎症を伴う細胞壊死)で、変化を評点する。
【0459】
2日目及び5日目に、本発明の組成物の血清作用をトロンボエラストグラフィーで決定する。
実施例8:持続放出性抗線溶剤組成物の合成
【0460】
PLGA又は類似した生分解性ポリマー等の持続放出性担体を含む薬学的組成物を、抗線維素溶解薬(例えば、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、第VII因子(野生型もしくは組換え)、アプロチニン、トラネキサム酸)と共合成することができる。例えば、持続放出性抗線溶剤を、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)で作製される微小粒子(50ミクロン)に包埋するか、あるいはその上にコーティングするかのいずれかを行うことができる。
【0461】
持続放出性抗線溶剤組成物の薬物動態を決定するために、様々な放出動態を有する線維素溶解薬及びPLGAの6つの製剤を合成することができる。放出動態は、PLGAの成分を変更することによって変化し得る。次に、異なる製剤を、コラゲナーゼをインビボ投与する時のICHのラットモデルにおけるICHの量を減少させるそれらの能力について試験する。線維素溶解薬の放出を、トロンボエラストグラフィーで測定することができる。
実施例9:持続放出性抗線溶剤組成物の部位特異的投与による血腫拡大又は再発性出血の治療
【0462】
CTスキャンによって脳内出血であると診断された患者を、抗線溶剤(ε−アミノカプロン酸、第VII因子、トラネキサム酸、又はアプロチニン)を含む複数の持続放出性微小粒子を埋め込むことによって治療することができる。例えば、ベースラインCTスキャン後72時間以内又は症状の開始後96時間までに、ε−アミノカプロン酸を含有するポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)で作製された複数の持続放出性微小粒子(50ミクロン)を、患者の脳内血腫に、又はその付近に埋め込むことができる。それぞれの抗線溶剤の投薬は、推定体重に基づき得る。埋め込まれた時点で、持続放出性微小粒子は、再出血が最も発生する時に、特定の時間窓(例えば、3〜5日)抗線溶剤を放出することができる。
【0463】
埋め込み後、24時間(21〜27時間の範囲)及び72時間(66〜78時間の範囲)の目標間隔でフォローアップCTスキャンを行う。神経放射線科医が、分析ソフトウェア(Mayo Clinic)を用いて、デジタルCTデータを分析することができる。脳内出血の量、脳室内出血の量、及び浮腫の量を、コンピュータ化された面積測定技術を用いて計算することができる。
【0464】
記載される発明がその特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、かつ等価物に置き換えることができることが、当業者によって理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、材料の組成、処理、1つの処理ステップ又は複数の処理ステップを、記載される発明の客観的精神及び範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。全てのそのような修正は、ここに添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
I.本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性出血を治療するための医薬の製造における、分散液であり流動性を有する部位特異的持続放出性薬学的組成物の使用であって、該薬学的組成物は、
(i)治療量の少なくとも1つの抗線溶剤と、
(ii)薬学的に許容される担体と、
を含み、該担体は複数の微小粒子を含み、該治療薬は各粒子の至る所に分散されており、 該組成物は、血腫に占められた空洞若しくは空間内へ又は脳の表面の硬膜下腔内へ局所的に投与するために製剤化されており、
該組成物は、該治療量が、未処置対照と比較したときに、好ましくない全身性副作用の危険性なしに血腫又は再発性出血を減少させるのに有効な量であるという点で特徴付けられる、使用。
〔2〕前記出血状態は、外傷性脳損傷(TBI)に起因する、前記〔1〕に記載の使用。
〔3〕前記出血状態は、前記血腫の外科的排除後の再出血である、前記〔1〕に記載の使用。
〔4〕前記出血状態は、慢性硬膜下血腫(SDH)である、前記〔1〕に記載の使用。
〔5〕前記出血状態は、脳内血腫(ICH)である、前記〔1〕に記載の使用。
〔6〕前記脳内血腫は、特発性脳内血腫(ICH)である、前記〔5〕に記載の使用。
〔7〕前記脳内血腫は、外傷性脳内血腫(ICH)である、前記〔5〕に記載の使用。
〔8〕前記出血状態は、開頭術後の再出血である、前記〔1〕に記載の使用。
〔9〕前記開頭術は、脳の新生物を治療するために行われる、前記〔8〕に記載の使用。
〔10〕前記開頭術は、脳内血管奇形を治療するために行われる、前記〔8〕に記載の使用。
〔11〕前記開頭術は、脳動脈瘤を治療するために行われる、前記〔8〕に記載の使用。
〔12〕前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)である、前記〔1〕に記載の使用。
〔13〕前記抗線溶剤は、第VII因子である、前記〔1〕に記載の使用。
〔14〕前記抗線溶剤は、組換え第VII因子である、前記〔13〕に記載の使用。
〔15〕前記抗線溶剤は、トラネキサム酸である、前記〔1〕に記載の使用。
〔16〕前記抗線溶剤は、アプロチニンである、前記〔1〕に記載の使用。
〔17〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体である、前記〔1〕に記載の使用。
〔18〕前記薬学的に許容される担体は、持続放出性担体である、前記〔1〕に記載の使用。
〔19〕前記少なくとも1つの抗線溶剤は、前記持続放出性担体に包埋される、前記〔18〕に記載の使用。
〔20〕前記少なくとも1つの抗線溶剤は、前記持続放出性担体上にコーティングされる、前記〔18〕に記載の使用。
〔21〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後少なくとも21日間放出することができる、前記〔18〕に記載の使用。
〔22〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後約3〜5日間放出することができる、前記〔18〕に記載の使用。
〔23〕前記持続放出性担体は、ナノ粒子である、前記〔18〕に記載の使用。
〔24〕前記持続放出性担体は、生分解性ポリマーを含む、前記〔18〕に記載の使用。
〔25〕前記生分解性ポリマーは、合成ポリマーである、前記〔24〕に記載の使用。
〔26〕前記生分解性ポリマーは、天然ポリマーである、前記〔24〕に記載の使用。
〔27〕前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔25〕に記載の使用。
〔28〕前記合成ポリマーは、ポリグリコール酸(PGA)である、前記〔25〕に記載の使用。
〔29〕前記合成ポリマーは、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマーである、前記〔25〕に記載の使用。
〔30〕前記持続放出性担体は、ヒドロゲルである、前記〔18〕に記載の使用。
〔31〕前記天然バイオポリマーは、タンパク質ポリマーである、前記〔26〕に記載の使用。
〔32〕前記天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む、前記〔26〕に記載の使用。
〔33〕前記天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む、前記〔32〕に記載の使用。
〔34〕前記血腫に近接した前記距離は、約0.5mm〜約10mmである、前記〔1〕に記載の使用。
〔35〕前記薬学的組成物は、局所的薬理効果を呈する、前記〔1〕に記載の使用。
〔36〕前記薬学的組成物は、拡散した薬理効果を呈する、前記〔1〕に記載の使用。
〔37〕前記薬学的組成物は、血腫の少なくとも1つの端に接近した距離に投与される、前記〔1〕に記載の使用。
〔38〕脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性再出血を治療するための、分散液であり流動性を有する部位特異的持続放出性薬学的組成物であって、
(a)治療量の少なくとも1つの抗線溶剤と、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含み、該担体は複数の微小粒子を含み、該治療薬は各粒子の至る所に分散されており、 該組成物は、血腫に占められた空洞若しくは空間内へ又は脳の表面の硬膜下腔内へ局所的に投与するために製剤化されており、
該組成物は、該治療量が、未処置対照と比較したときに、好ましくない全身性副作用の危険性なしに血腫又は再発性出血を減少させるのに有効な量であるという点で特徴付けられる、薬学的組成物。
〔39〕前記脳内出血状態は、外傷性脳損傷後の再出血である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔40〕前記脳内出血状態は、慢性硬膜下血腫(SDH)である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔41〕前記脳内出血状態は、脳内血腫(ICH)である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔42〕前記脳内血腫は、特発性脳内血腫(ICH)である、前記〔41〕に記載の薬学的組成物。
〔43〕前記脳内血腫は、外傷性脳内血腫(ICH)である、前記〔41〕に記載の薬学的組成物。
〔44〕前記脳内出血状態は、開頭術後の再出血である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔45〕前記開頭術は、脳の新生物を治療するために行われる、前記〔44〕に記載の薬学的組成物。
〔46〕前記開頭術は、脳内血管奇形を治療するために行われる、前記〔44〕に記載の薬学的組成物。
〔47〕前記開頭術は、脳動脈瘤を治療するために行われる、前記〔44〕に記載の薬学的組成物。
〔48〕前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔49〕前記抗線溶剤は、第VII因子である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔50〕前記抗線溶剤は、組換え第VII因子である、前記〔49〕に記載の薬学的組成物。
〔51〕前記抗線溶剤は、トラネキサム酸である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔52〕前記抗線溶剤は、アプロチニンである、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔53〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔54〕前記薬学的に許容される担体は、持続放出性担体である、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔55〕前記抗線溶剤は、前記持続放出性担体に包埋される、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔56〕前記抗線溶剤は、前記持続放出性担体上にコーティングされる、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔57〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後少なくとも21日間放出することができる、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔58〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後約3〜5日間放出することができる、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔59〕前記持続放出性担体は、ナノ粒子を含む、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔60〕前記持続放出性担体は、生分解性ポリマーを含む、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔61〕前記生分解性ポリマーは、合成ポリマーである、前記〔60〕に記載の薬学的組成物。
〔62〕前記生分解性ポリマーは、天然ポリマーである、前記〔60〕に記載の薬学的組成物。
〔63〕前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔61〕に記載の薬学的組成物。
〔64〕前記合成ポリマーは、ポリグリコール酸(PGA)である、前記〔61〕に記載の薬学的組成物。
〔65〕前記合成ポリマーは、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマーである、前記〔61〕に記載の薬学的組成物。
〔66〕前記持続放出性担体は、ヒドロゲルである、前記〔54〕に記載の薬学的組成物。
〔67〕前記天然ポリマーは、タンパク質ポリマーである、前記〔62〕に記載の薬学的組成物。
〔68〕前記タンパク質ポリマーは、自己集合性タンパク質ポリマーから合成される、前記〔67〕に記載の薬学的組成物。
〔69〕前記天然ポリマーは、天然多糖類である、前記〔62〕に記載の薬学的組成物。
〔70〕前記天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む、前記〔62〕に記載の薬学的組成物。
〔71〕前記天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む、前記〔70〕に記載の薬学的組成物。
〔72〕前記抗線溶剤が、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔1〕に記載の使用。
〔73〕前記抗線溶剤が、抗プラスミン、ビタミンK、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔1〕に記載の使用。
〔74〕前記ビタミンKが、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK3からなる群から選ばれる、前記〔73〕に記載の使用。
〔75〕前記抗線溶剤が、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔76〕前記抗線溶剤が、抗プラスミン、ビタミンK、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔38〕に記載の薬学的組成物。
〔77〕前記ビタミンKが、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK3からなる群から選ばれる、前記〔76〕に記載の薬学的組成物。
〔78〕脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性再出血の治療に用いるための、分散液であり流動性を有する部位特異的持続放出性薬学的組成物であって、
(i)治療量の少なくとも1つの抗線溶剤と、
(ii)薬学的に許容される担体と、
を含み、該担体は複数の微小粒子を含み、該治療薬は各粒子の至る所に分散されており、 該組成物は、血腫に占められた空洞若しくは空間内へ又は脳の表面の硬膜下腔内へ局所的に投与するために製剤化されており、
該組成物は、該治療量が、未処置対照と比較したときに、好ましくない全身性副作用の危険性なしに血腫又は再発性出血を減少させるのに有効な量であるという点で特徴付けられる、薬学的組成物。
〔79〕前記出血状態は、外傷性脳損傷(TBI)に起因する、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔80〕前記出血状態は、前記血腫の外科的排除後の再出血である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔81〕前記出血状態は、慢性硬膜下血腫(SDH)である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔82〕前記出血状態は、脳内血腫(ICH)である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔83〕前記脳内血腫は、特発性脳内血腫(ICH)である、前記〔82〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔84〕前記脳内血腫は、外傷性脳内血腫(ICH)である、前記〔82〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔85〕前記出血状態は、開頭術後の再出血である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔86〕前記開頭術は、脳の新生物を治療するために行われる、前記〔85〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔87〕前記開頭術は、脳内血管奇形を治療するために行われる、前記〔85〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔88〕前記開頭術は、脳動脈瘤を治療するために行われる、前記〔85〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔89〕前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔90〕前記抗線溶剤は、第VII因子である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔91〕前記抗線溶剤は、組換え第VII因子である、前記〔90〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔92〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔93〕前記薬学的に許容される担体は、持続放出性担体である、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔94〕前記少なくとも1つの抗線溶剤は、前記持続放出性担体に包埋される、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔95〕前記少なくとも1つの抗線溶剤は、前記持続放出性担体上にコーティングされる、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔96〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後少なくとも21日間放出することができる、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔97〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後約3〜5日間放出することができる、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔98〕前記持続放出性担体は、ナノ粒子である、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔99〕前記持続放出性担体は、生分解性ポリマーを含む、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔100〕前記生分解性ポリマーは、合成ポリマーである、前記〔99〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔101〕前記生分解性ポリマーは、天然ポリマーである、前記〔99〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔102〕前記合成ポリマーは、ポリグリコール酸(PGA)である、前記〔100〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔103〕前記合成ポリマーは、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマーである、前記〔100〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔104〕前記持続放出性担体は、ヒドロゲルである、前記〔93〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔105〕前記天然バイオポリマーは、タンパク質ポリマーである、前記〔101〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔106〕前記天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む、前記〔101〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔107〕前記天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む、前記〔106〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔108〕前記抗線溶剤が、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔109〕前記抗線溶剤が、抗プラスミン、ビタミンK、及びそれらの組合わせからなる群から選ばれる、前記〔78〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
〔110〕前記ビタミンKが、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK3からなる群から選ばれる、前記〔109〕に記載の部位特異的持続放出性薬学的組成物。
II.本発明のさらにまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕部位特異的薬学的組成物であって、
(a)治療量の少なくとも1つの抗線溶剤と、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含み、該治療量は、未処置対照と比較したときに、脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性再出血を減少させるのに有効であり、該担体は複数の微小粒子を含み、
(i)各微小粒子の至る所での該治療量の抗線溶剤の分散、コーティングで覆われた該微小粒子のコアにおける該治療量の抗線溶剤、又は、該微小粒子中に吸着された該治療量の抗線溶剤、
(ii)血腫に占められたヒト脳内の空洞若しくは空間内の又は脳の表面の硬膜下腔内の移植部位における移植片の上又は中での沈着、
(iii)該移植部位において該微小粒子から該抗線溶剤を持続的に放出して、局所的には高濃度で、かつ体の他の部位ではより低い濃度で該抗線溶剤を維持し、好ましくない全身性副作用の危険性を減少させること、及び、
(iv)移植部位から脳の中又は上の出血部位への、該抗線溶剤の脳脊髄液中の流動、
を特徴とする、薬学的組成物。
〔2〕前記脳内出血状態は、外傷性脳損傷後の再出血、慢性硬膜下血腫(SDH)、脳内血腫(ICH)、特発性脳内血腫(ICH)、外傷性脳内血腫(ICH)又は開頭術後の再出血である、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔3〕前記開頭術は、脳の新生物を治療するため、脳内血管奇形を治療するため又は脳動脈瘤を治療するために行われる、前記〔2〕に記載の薬学的組成物。
〔4〕前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、第VII因子、組換え第VII因子、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、抗プラスミン、ビタミンK、又はそれらの組合わせである、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔5〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体又は持続放出性担体である、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔6〕前記抗線溶剤は、前記持続放出性担体に包埋されるか、又は、前記持続放出性担体上にコーティングされる、前記〔5〕に記載の薬学的組成物。
〔7〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後少なくとも21日間又は投与後約3〜5日間放出することができる、前記〔5〕に記載の薬学的組成物。
〔8〕前記持続放出性担体は、ナノ粒子を含む、前記〔5〕に記載の薬学的組成物。
〔9〕前記持続放出性担体は、生分解性ポリマー又はヒドロゲルを含む、前記〔5〕に記載の薬学的組成物。
〔10〕前記生分解性ポリマーは、合成ポリマー又は天然ポリマーである、前記〔9〕に記載の薬学的組成物。
〔11〕前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔10〕に記載の薬学的組成物。
〔12〕前記天然ポリマーは、タンパク質ポリマー又は天然多糖類である、前記〔10〕に記載の薬学的組成物。
〔13〕前記タンパク質ポリマーは、自己集合性タンパク質ポリマーから合成される、前記〔12〕に記載の薬学的組成物。
〔14〕前記天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む、前記〔10〕に記載の薬学的組成物。
〔15〕前記天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む、前記〔14〕に記載の薬学的組成物。
〔16〕前記ビタミンKが、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK3からなる群から選ばれる、前記〔4〕に記載の薬学的組成物。
〔17〕前記薬学的に許容される担体は、マトリックスを含む、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔18〕前記薬学的に許容される担体は、ナノ粒子である、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔19〕前記ナノ粒子をカプセル化する、前記〔18〕に記載の薬学的組成物。
〔20〕前記抗線溶剤は、前記ナノ粒子の至る所に分散されるか、前記ナノ粒子中に吸着されるか、又は、コーティングで覆われた前記ナノ粒子のコアに存在する、前記〔18〕に記載の薬学的組成物。
〔21〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体及び持続放出性担体からなる群から選ばれる、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔22〕前記微小粒子をカプセル化する、前記〔1〕に記載の薬学的組成物。
〔23〕脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性出血を治療するための医薬の製造における、前記〔1〕に記載の部位特異的薬学的組成物の使用であって、
該組成物が、血腫に占められた空洞若しくは空間内へ又は脳の表面の硬膜下腔内へ局所的に投与されることを特徴とする、使用。
〔24〕前記出血状態は、外傷性脳損傷(TBI)に起因する、前記〔23〕に記載の使用。
〔25〕前記出血状態は、前記血腫の外科的排除後の再出血、慢性硬膜下血腫(SDH)、脳内血腫(ICH)、特発性脳内血腫(ICH)、外傷性脳内血腫(ICH)及び開頭術後の再出血からなる群から選ばれる、前記〔23〕に記載の使用。
〔26〕前記開頭術は、脳の新生物を治療するため、脳内血管奇形を治療するため又は脳動脈瘤を治療するために行われる、前記〔25〕に記載の使用。
〔27〕前記抗線溶剤は、ε−アミノカプロン酸(AMICAR)、トラネキサム酸、アプロチニン、4−アミノメチル安息香酸、フィブリン断片D、抗プラスミン、ビタミンK、又はそれらの組合わせである、前記〔23〕に記載の使用。
〔28〕前記薬学的に許容される担体は、制御放出性担体又は持続放出性担体である、前記〔23〕に記載の使用。
〔29〕前記抗線溶剤は、前記持続放出性担体に包埋されるか、又は、前記持続放出性担体上にコーティングされる、前記〔28〕に記載の使用。
〔30〕前記持続放出性担体は、前記抗線溶剤を投与後少なくとも21日間又は投与後約3〜5日間放出することができる、前記〔28〕に記載の使用。
〔31〕前記持続放出性担体は、ナノ粒子である、前記〔28〕に記載の使用。
〔32〕前記持続放出性担体は、生分解性ポリマー又はヒドロゲルを含む、前記〔28〕に記載の使用。
〔33〕前記生分解性ポリマーは、合成ポリマー又は天然ポリマーである、前記〔32〕に記載の使用。
〔34〕前記合成ポリマーは、ポリエステル、ポリエステルポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ由来バイオポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、光重合性バイオポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、トリメチレンカーボネート、ポリ乳酸(PLA)又はポリカプロラクトンと共に形成されるポリグリコール酸のコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記〔33〕に記載の使用。
〔35〕前記天然ポリマーは、タンパク質ポリマーである、前記〔33〕に記載の使用。
〔36〕前記天然ポリマーは、ヒアルロン酸を含む、前記〔33〕に記載の使用。
〔37〕前記天然ポリマーは、2.3%未満のヒアルロン酸を含む、前記〔36〕に記載の使用。
〔38〕前記ビタミンKは、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK3からなる群から選ばれる、前記〔27〕に記載の使用。
〔39〕部位特異的薬学的組成物であって、
(a)治療量の少なくとも1つの止血剤と、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含み、該治療量は、未処置対照と比較したときに、脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性再出血を減少させるのに有効であり、該担体は複数の微小粒子を含み、
(i)各微小粒子の至る所での該治療量の止血剤の分散、コーティングで覆われた該微小粒子のコアにおける該治療量の止血剤、又は、該微小粒子中に吸着された該治療量の止血剤、
(ii)血腫に占められたヒト脳内の空洞若しくは空間内の又は脳の表面の硬膜下腔内の移植部位における移植片の上又は中での沈着、
(iii)該移植部位において該微小粒子から該止血剤を持続的に放出して、局所的には高濃度で、かつ体の他の部位ではより低い濃度で該止血剤を維持し、好ましくない全身性副作用の危険性を減少させること、及び、
(iv)移植部位から脳の中又は上の出血部位への、該止血剤の脳脊髄液中の流動、
を特徴とする、薬学的組成物。
〔40〕前記止血剤は、第VII因子又は組換え第VII因子である、前記〔39〕に記載の薬学的組成物。
〔41〕脳内出血状態に起因する血腫拡大又は再発性出血を治療するための医薬の製造における、前記〔39〕に記載の部位特異的薬学的組成物の使用であって、
該組成物が、血腫に占められた空洞若しくは空間内へ又は脳の表面の硬膜下腔内へ局所的に投与されることを特徴とする、使用。
〔42〕前記止血剤は、第VII因子又は組換え第VII因子である、前記〔41〕に記載の使用。