(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、アミロイド線維形成を阻止し、したがって、アミロイド関連疾患(例えば、II型糖尿病、アルツハイマー認知症またはアルツハイマー病、全身性および限局性のアミロイドーシス、眼の疾患または障害ならびにプリオン関連脳症など)の処置において使用することができる新規な治療剤に関連し、より具体的には、しかし、限定ではなく、アミロイド線維形成を防止し、したがって、そのような処置において使用することができるジペプチドおよびそのアナログに関連する。
【0044】
本明細書中に記載されるジペプチドは、以前に記載されたジペプチドD−Trp−Aib(これはまた、本明細書中およびこの技術分野ではEG030として示される)に基づく。なお、D−Trp−Aibは芳香族アミノ酸成分(Trp)をベータ−シート破壊剤成分(非天然アミノ酸Aib)にカップリングされて取り込み、アミロイド線維形成の非常に有効な阻害剤として明確化されている。したがって、本明細書中に記載されるジペプチドは、D−Trp−Aibと比較した場合、芳香族アミノ酸成分(Trp)およびベータ−シート破壊剤成分の1つまたは複数が、改善された成績をアナログに付与するように改変されるD−Trp−Aibジペプチドのアナログと見なされる小分子である。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0046】
アミロイド斑形成を防止するための新規な治療剤についての探索において、本発明者らは、改善された成績を有するジペプチドを設計し、これらを首尾よく調製し、実施している。より具体的には、新規なジペプチドが、改善された薬物動態学的特性を示すように、例えば、改善されたBBB透過性、および、アミロイド斑形成の改善された阻害活性、ならびに、場合により、改善された生物学的安定性(biostability)(例えば、増大した半減期)および改善された溶解性などを示すように設計された。
【0047】
本発明を実施に移している間に、本発明者らは、所望される薬物動態学的プロフィルをジペプチドアナログに付与するいくつかの構造的特性を特定している。これらには、非限定的な例ではあるが、(Aibと比較した場合)増大した立体障害および/または増大した親油性を有するベータ−シート破壊剤成分と、ベータ−シート破壊剤成分を取り込む芳香族成分と、増大した親油性を有し、かつ/または、分子の半減期を増大させる官能性を有する芳香族成分とを取り込むことが含まれる。
【0048】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、トリプトファン(Trp)成分をベータ−シート破壊剤成分にカップリングされて含むジペプチドアナログが提供される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、表現「トリプトファン成分」は、アミノ酸のトリプトファンに由来する化学的成分を表す。表現「トリプトファン成分」は、トリプトファンそれ自体、同様にまた、その誘導体および構造的アナログを包含する。
【0050】
用語「誘導体」は、記載された成分のいずれかに関連して本明細書中で使用される場合、新しい化学的官能性(すなわち、その成分に本質的に存在していない官能性)を含むように改変されている成分を表す。化学的成分の誘導体化には、1つの官能基を別の官能基によって置換すること、官能基を付加すること、または、官能基を除くことが含まれる。「官能基」によって、例えば、水素以外の置換基が意味される。
【0051】
したがって、「トリプトファン誘導体」には、本発明のいくつかの実施形態によれば、1つまたは複数の置換基をインドール環に含むように誘導体化されるトリプトファン誘導体、置換基をインドール窒素に含むように誘導体化されるトリプトファン誘導体、置換基をアルファ炭素に含むように誘導体化されるトリプトファン誘導体、および、1つまたは複数の置換基をアルファ窒素に含むように誘導体化されるトリプトファン誘導体が含まれる。他の誘導体もまた意図される。
【0052】
用語「アナログ」は、記載された成分のいずれかに関連して本明細書中で使用される場合、元の成分と同一ではないが、元の成分と類似する構造的特徴を有する化学的成分を表す。したがって、アナログは、飽和度、環における原子の数、ヘテロ原子のタイプ、アルキレン鎖の長さ、二重結合の配置、および、1つまたは複数の不斉炭素の形態などによって元の成分と異なり得る。
【0053】
したがって、「トリプトファンアナログ」には、本発明のいくつかの実施形態によれば、非限定的な例として、インドール成分がエチレン鎖を介して、または、二重結合を介してアルファ炭素に直接に結合するアミノ酸、インドール以外のヘテロ芳香族成分を含むように改変されるトリプトファンアナログ、および、インドール以外の本明細書中で定義されるような複素環式成分を含むように改変されるトリプトファンアナログが含まれる。
【0054】
本明細書中で使用される場合、表現「ベータ−シート破壊剤成分」は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸に由来する成分であって、約−120度〜−140度の典型的なベータシート・ファイ角度ではなく、むしろ、約−60度〜+25度の限定されたファイ角度によって特徴づけられ、それにより、アミロイド線維のベータシート構造を乱す成分を包含する。
【0055】
ベータ−シート破壊剤として知られている1つの例示的な天然アミノ酸がプロリンである。他のβ−シート破壊剤アミノ酸には、(ChouおよびFasman(1978)、Annu.Rev.Biochem.、47、258によれば)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リシンおよびセリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、β−シート破壊剤成分は、その立体配座的束縛が限定される合成アミノ酸(例えば、Cα−メチル化アミノ酸など)である[Balaram(1999)、J.Pept.Res.、54、195〜199]。水素原子がC
αに結合している天然アミノ酸とは異なり、Cα−メチル化アミノ酸は、メチル基が、アミノ結合のφ角度およびΨ角度に関してその立体的性質に広範囲に影響するC
αに結合している。したがって、アラニンは広範囲の様々な許容されるφ立体配座およびΨ立体配座を有するが、α−アミノイソ酪酸(Aib、上記の表2を参照のこと)は、限定されたφ立体配座およびΨ立体配座を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分は、Aibそれ自体であるか、あるいは、本明細書中で定義されるようなAibの誘導体またはアナログであるかのどちらかであるように、アルファ−アミノイソ酪酸(Aib)に由来する。
【0058】
Aibの誘導体には、本発明のいくつかの実施形態によれば、C−アルファにおけるメチル置換基の1つまたは複数を置換するように誘導体化されるAib、アルファ−カルボン酸を、例えば、エステル、アミド、アシルクロリド、チオカルボキシラートなどにより置換するように誘導体化されるAib、および、置換基をアルファ窒素に含むように誘導体化されるAibが含まれる。他の誘導体もまた意図される。
【0059】
いくつかの実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分はアルファ−メチル化アミノ酸であり、例えば、アルファ−メチル−リシン、アルファ−メチル−バリンおよびアルファ−メチル−フェニルアラニンなどである。
【0060】
示された成分が記載のジペプチドアナログとの関連で示されるときには、もう一方の成分へのカップリングのときに形成されるそれぞれの成分の一部が示されることを理解しなければならない。この関連において、用語「成分」は、残基が、アミノ酸あるいはそのアナログまたは誘導体の一部で、別のアミノ酸(あるいはその誘導体またはアナログ)にペプチド結合または類似の結合によりカップリングされたときにジペプチドに存在するそのような一部を表すように、ペプチドにおけるアミノ酸に関連して使用されるような用語「残基」と同等である。
【0061】
したがって、「ジペプチドアナログ」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようにTrp成分の残基およびベータ−シート破壊剤成分の残基から構成されるペプチドを表し、本明細書中に記載されるトリプトファン成分のいずれかを、ペプチド結合を1つの成分のアミン基と別の成分のカルボン酸基との間で形成することによって、本明細書中に記載されるようなベータ−シート破壊剤成分のいずれかに共有結合により連結されて含む。したがって、「ジペプチドアナログ」はまた、トリプトファン成分をAib成分に共有結合により連結されて含む化学的コンジュゲートとして示すことができる。ジペプチドアナログはまた、本明細書中では単に化合物または分子として示される。
【0062】
本発明の実施形態の範囲からは、ジペプチドのTrp−Aibおよびそのエステル誘導体が除外される。しかしながら、本発明の実施形態は、成分の一方がTrpまたはAib(そのエステルを含む)であるジペプチドアナログ(ただし、もう一方がそれぞれ、Aib(もしくはそのエステル)またはTrpでない)を包含する。
【0063】
本明細書に記載されるジペプチドアナログは、集合的に下記の一般式Iによって表わされることができる:
式中、
点線は、任意選択的な二重結合を表す;
*は、(R)配置または(S)配置のどちらかを表す(単結合の場合、つまり点線が存在しない場合には、NR
6R
7によって置換される炭素について当てはまる);
R
1は、水素、アルキル、アリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオール、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択される;
R
2およびR
3はそれぞれが独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ベンジルからなる群から選択されるか、あるいは、R
2およびR
3は一緒になって、3員〜8員の飽和環または不飽和環を形成する;
R
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシラートおよびチオカルボキシラートからなる群から選択されるか、あるいは、R
4およびR
3は一緒になって、4員〜8員の飽和環または不飽和環を形成する;
R
5は、水素およびアルキルからなる群から選択されるか、または、点線が二重結合を表す場合には非存在である;
R
6およびR
7はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシラートおよびチオカルボキシラートからなる群から選択されるか、あるいは、R
6およびR
7は一緒になって、4員〜8員の飽和環または不飽和環を形成する;
R
8は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、チオカルボニル、カルボキシラートおよびチオカルボキシラートからなる群から選択される;かつ
R
9〜R
12はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、チオール、カルボニル、カルボキシラートおよびカルバマートからなる群から選択される;
ただし、R
2がアルキルであり、かつ、R
3がメチルであるとき、R
4、R
5およびR
8〜R
12のうちの少なくとも1つが水素でない。
【0064】
一般式Iにおいて、フラグメントの−(R
4)−N−C(R
2)(R
3)−C(=O)−R
1はAib成分に由来すると見なされる。
【0065】
いくつかの実施形態において、ジペプチドアナログがアミノ−イソ酪酸(Aib)をベータ−シート破壊剤成分として含むように、R
4は水素であり、R
2およびR
3はそれぞれがメチルであり、R
1はヒドロキシである。
【0066】
いくつかの実施形態において、Aib成分は、他の置換基をアルファ炭素に含むように誘導体化される。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態において、R
2およびR
3の少なくとも1つがメチルよりも大きいアルキルである(すなわち、2個以上の炭素原子を有するものである)。
【0068】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3の一方または両方が嵩高いアルキルであり、例えば、イソプロピル、イソブチルおよびtert−ブチルなどであるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書中およびこの技術分野で使用されるように、置換基またはある種の基に関連する表現「嵩高い」は、大きい体積を占める化学的成分を表す。基の嵩高さは、基を構成する原子の数およびサイズによって、それらの配置によって、また、原子間の相互作用(例えば、結合の長さ、反発相互作用)によって決定される。本発明の実施形態との関連において、嵩高い基は、3個以上の炭素原子を含む基である。さらに本発明の実施形態との関連において、嵩高いアルキル基は、分岐したアルキルまたは置換されたアルキルを包含する。
【0070】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3の一方または両方が、嵩高い置換基を形成するようにアリールまたはシクロアルキルによって置換されるアルキルである。アルキルは、嵩高さを付与する他の基によって置換されることが可能である。例示的な実施形態において、R
2およびR
3の一方または両方がベンジルであり、ただし、この場合、フェニルは置換されるか、または非置換である。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるように、R
2およびR
3の一方がメチルであり、もう一方が、より大きいアルキルまたは置換されたアルキルである。例示的なそのようなベータ−シート破壊剤成分には、アルファ−メチル化アミノ酸、例えば、α−Me−バリン、α−Me−ロイシンおよびα−Me−フェニルアラニンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3は一緒になって、3員〜8員の飽和環または不飽和環を形成する。
【0073】
環は、脂環式(シクロアルキル)、ヘテロ脂環式、芳香族またはヘテロ芳香族が可能である。
【0074】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3は一緒になって、飽和した脂環式の3員環(シクロプロパン)、4員環(シクロブタン)、5員環(シクロペンタン)または6員環(シクロヘキサン)を形成する。
【0075】
代替において、R
2およびR
3は一緒になって、不飽和な非芳香族環(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン)を形成する。
【0076】
さらなる代替において、R
2およびR
3は一緒になって、本明細書中で定義されるようにヘテロ脂環式環を形成する。
【0077】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3は一緒になって、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロフラン環またはジヒドロピラン環を形成する。
【0078】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3は一緒になって、オキセタン環を形成する。
【0079】
R
2およびR
3によって形成される環は、本明細書中で定義されるように置換または非置換であることが可能である。
【0080】
下記の実施例の節において明らかにされるように、R
2およびR
3が、Aibにおける2つの対応するメチル基と比較して、より大きい嵩高さを有する基を表すジペプチドアナログ(例えば、R
2およびR
3が一緒になって環を形成するジペプチドアナログ)は、D−Trp−Aibジペプチドと比較した場合、優れた阻害活性を示すことが明らかにされている。
【0081】
いくつかの実施形態において、R
4は、Aibの場合と同様に水素である。
【0082】
いくつかの実施形態において、R
4は水素以外である。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態において、R
4はアルキル(例えば、メチル)である。
【0084】
いくつかの実施形態において、R
4およびR
3は一緒になって、R
2およびR
3について本明細書中に記載されるように環を形成する。そのような環は、本明細書中で定義されるように、置換または非置換のヘテロ脂環式環またはヘテロ芳香族環であり得る。
【0085】
例示的な実施形態において、R
4およびR
3が一緒になって、前記環を形成するとき、R
2はアルキルである。
【0086】
いくつかの実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分がα−Me−プロリンであるように、R
4およびR
3は一緒になって、飽和した5員環を形成する。
【0087】
いくつかの実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分は1つまたは複数のハロ基(例えば、クロロ、フルオロまたはブロモ)を含む。
【0088】
何らかの特定の理論によってとらわれないが、ハロ基の存在はジペプチドアナログの親油性を増大させ、かつ/または、ジペプチドアナログの半減期を増大させ、したがって、改善された薬物動態学的特性をペプチドアナログに付与することが示唆される。
【0089】
ハロ基を、R
2およびR
3の1つとして、あるいは、R
2、R
3またはR
4の1つまたは複数を形成するアルキル、シクロアルキルまたはアリールの置換基として、あるいは、R
2およびR
3によって形成される環ならびに/またはR
3およびR
4によって形成される環の置換基としてジペプチドアナログに導入することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3の1つまたは複数がハロアルキルであり、例えば、トリハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)である。例示的な実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分はアミノトリフルオロイソ酪酸である。
【0091】
いくつかの実施形態において、R
2およびR
3の1つまたは複数がハロゲン化ベンジルである。例示的な実施形態において、ベータ−シート破壊剤成分はハロゲン化α−Me−フェニルアラニンである。
【0092】
本明細書中に記載されるベータ−シート破壊剤成分のそれぞれが、式IにおけるR
1がヒドロキシであるように、カルボン酸基によって終結することが可能である。
【0093】
しかしながら、本発明者らは、エステルまたはアミドを含むようにカルボン酸基を誘導体化することにより、改善された阻害活性がもたらされ、また、そのような誘導体化により、改善された薬物動態学的特性(例えば、改善された親油性およびBBB透過性など)を有するジペプチドアナログもまたもたらされ得ることを明らかにしている。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるベータ−シート破壊剤成分のいずれについても、R
1はアルコキシまたはアミンである。
【0095】
いくつかの実施形態において、アルコキシは、アルコキシがO−アルキル基(式中、アルキルは、本明細書中で定義されるように嵩高いアルキルである)であるように、本明細書中で定義されるように嵩高い基である。代表的な例としては、t−ブトキシおよびイソプロポキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態において、式IにおけるR
1がアミンであるとき、アミンは、第一級アミン(−NH
2)、第二級アミン(−NHR’)または第三級アミン(−NR’R”)(式中、R’およびR”はそれぞれが独立して、アルキル、シクロアルキルまたはアリールが可能であり、好ましくはそれぞれが独立してアルキルである)が可能である。
【0097】
いくつかの実施形態において、R
1は第二級アミンである。
【0098】
次に、−(R
4)−N−C(R
2)(R
3)−C(=O)−R
1フラグメントに含まれないフラグメントによって式Iに示されるTrp成分を示す。
【0099】
いくつかの実施形態において、記載されたジペプチドアナログにおけるTrp成分は、ベータ−シート破壊剤成分を、例えば、Trp成分がα−Me−トリプトファンであるように、アルファ−炭素におけるメチル置換基の形態で含む。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態において、R
5はアルキルである。
【0101】
いくつかの実施形態において、R
5はメチルである。
【0102】
いくつかの実施形態において、Trp成分のアルファ−アミンは、R
6およびR
7の少なくとも1つが水素以外であるように誘導体化され、したがって、アルファ−アミンは第二級アミンまたは第三級アミンである。
【0103】
第二級アミンまたは第三級アミンにより、ジペプチドアナログには、改善された親油性およびBBB透過性が付与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、Trp成分のアルファ−アミンは、アミドまたはカルバマートを形成するように、カルボキシラート、カルボニル(アルデヒドを含む)、チオカルボニルおよび/またはチオカルボキシラートによって置換される。
【0105】
いくつかの実施形態において、Trp成分のアルファ−アミンはt−BOCによって置換される。
【0106】
いくつかの実施形態において、R
6およびR
7は一緒になって、R
4およびR
3について本明細書中上記で記載されるようにヘテロ脂環式環またはヘテロ芳香族環を形成する。
【0107】
いくつかの実施形態において、Trp成分は、インドール成分が、1つまたは複数の置換基を含むように誘導体化されるようにされる。いくつかの実施形態において、N−インドールが、R
8が水素以外であるように置換される。
【0108】
いくつかの実施形態において、R
8はアルキル(例えば、メチル)である。
【0109】
いくつかの実施形態において、R
8は嵩高いアルキル(例えば、イソプロピル、イソブチルまたはt−ブチル)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、R
8はt−ブチルである。
【0111】
いくつかの実施形態において、インドール基が、本明細書中上記で詳述されるように、R
9〜R
12として表される1つまたは複数の置換基によって置換される。
【0112】
いくつかの実施形態において、R
9〜R
12のうちの1つまたは複数が、本明細書中で定義されるようにハロである。
【0113】
何らかの特定の理論によってとらわれないが、1つまたは複数のハロ基をインドール成分に導入することにより、改善された薬物動態学的特性が、改善された親油性および/または長くなった半減期の結果としてもたらされることが示唆される。
【0114】
短いペプチドフラグメントを治療で使用することにおける主な障害の1つが、いくつかの実施形態では立体特異的な細胞プロテアーゼによるそれらのタンパク質分解であるので、場合による1つまたは両方の不斉炭素(式Iにおいて*によって表示される)が、示されたアミノ酸成分のD−異性体に由来し、したがって、(R)配置を有する。
【0115】
いくつかの実施形態において、Trp成分のアルファ−炭素は、(R)配置を有する不斉炭素である。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなインドール基が二重結合を介してアルファ−炭素に結合する。
【0117】
ジペプチドアナログに対して導入される修飾の数および性質が、得られた生成物の安定性と、その合成の実現可能性との両方に影響するかもしれない立体性および電子に関する問題によって左右されることには留意しなければならない。
【0118】
したがって、いくつかの実施形態において、ジペプチドアナログは、互いに極近傍における2つ以上の嵩高い基、または、互いに極近傍における2つ以上の電子陰性基を含有しないようにされる。
【0119】
本明細書で使用される用語「アミン」は、−NR′R′′基および−NR′−基の両方を記載し、ここでR′およびR′′はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0120】
本明細書中で使用される用語「アミン」は、アミンが本明細書中下記で定義される末端基である場合、−NR′R′′基を記載するために使用され、アミンが本明細書中下記で定義される連結基である場合、−NR′−基を記載するために使用される。
【0121】
本明細書中、句「末端基」は、一つの原子を介して化合物中の別の成分に結合されている基(置換基)を記載する。
【0122】
句「連結基」は、二つ以上の原子を介して化合物中の別の成分に結合されている基(置換基)を記載する。
【0123】
従って、アミン基は、第一級アミン(ここでR′およびR′′の両方は水素である)、または第二級アミン(ここでR′は水素でありかつR′′はアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールである)、または第三級アミン(ここでR′およびR′′はそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)であり得る。
【0124】
代替的に、R′およびR′′はそれぞれ独立してヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。
【0125】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。いくつかの実施形態において、他に示さない限り、アルキル基は、1個〜6個または1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。
【0126】
アルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0127】
用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたシクロアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0128】
用語「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されたアリールは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。アリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0129】
用語「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されたヘテロアリールは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。代表的な例はピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0130】
用語「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を記載する。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換された複素脂環は一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカーバメート、O−チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N−カーバメート、O−カーバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。複素脂環基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。代表的な例はピペリジン、ピペラジン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノおよびその類似物である。
【0131】
用語「ハロ」は、本明細書中「ハリド(ハライド)」としても示され、フッ素、塩素、臭素、または沃素を記載する。
【0132】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハリドによってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。「トリハロアルキル」は、例えばトリハロアルキル(例えば、−CX
3(Xはハリドである))を記載する。
【0133】
用語「カルボニル」は、−C(=O)−R′末端基または−C(=O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0134】
用語「チオカルボニル」は、−C(=S)−R′末端基または−C(=S)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0135】
用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」は、−OH基を記載する。
【0136】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義される通り−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を記載する。
【0137】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0138】
用語「チオヒドロキシ」または「チオール」は、−SH基を記載する。
【0139】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される通り−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を記載する。
【0140】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0141】
用語「シアノ」は、−C≡N基を記載する。
【0142】
用語「イソシアネート」は、−N=C=O基を記載する。
【0143】
用語「ニトロ」は、−NO
2基を記載する。
【0144】
用語「アシルハリド」は、−(C=O)R′′′′基(式中、R′′′′は本明細書中上記で定義される通りハリドである)を記載する。
【0145】
用語「カルボキシレート」は、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、C−チオカルボキシレート、およびO−チオカルボキシレートを包含する。
【0146】
用語「C−カルボキシレート」は、−C(=O)−OR′末端基または−C(=O)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0147】
用語「O−カルボキシレート」は、−OC(=O)R′末端基または−OC(=O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0148】
用語「C−チオカルボキシレート」は、−C(=S)OR′末端基または−C(=S)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0149】
用語「O−チオカルボキシレート」は、−OC(=S)R′末端基または−OC(=S)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0150】
用語「アミド」は、C−アミドおよびN−アミドを包含する。
【0151】
用語「C−アミド」は、−C(=O)−NR′R′′末端基または−C(=O)−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0152】
用語「N−アミド」は、R′C(=O)−NR′′−末端基またはR′C(=O)−N−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0153】
用語「N−カーバメート」は、R′′OC(=O)−NR′−末端基または−OC(=O)−NR′連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0154】
用語「O−カーバメート」は、−OC(=O)−NR′R′′末端基または−OC(=O)−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0155】
用語「O−チオカーバメート」は、−OC(=S)−NR′R′′末端基または−OC(=S)−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0156】
用語「N−チオカーバメート」は、R′′OC(=S)NR′−末端基または−OC(=S)NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0157】
用語「S−ジチオカーバメート」は、−SC(=S)−NR′R′′末端基または−SC(=S)−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0158】
用語「N−ジチオカーバメート」は、R′′SC(=S)−NR′末端基または−SC(=S)NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0159】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、−N=NR′末端基または−N=N−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0160】
用語「スルファート」は、−O−S(=O)
2−OR′末端基または−O−S(=O)
2−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0161】
用語「チオスルファート」は、−O−S(=S)(=O)−OR′末端基または−O−S(=S)(=O)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0162】
用語「スルファイト」は、−O−S(=O)−O−R′末端基または−O−S(=O)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0163】
用語「チオスルファイト」は、−O−S(=S)−O−R′末端基または−O−S(=S)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0164】
用語「スルフィナート」は、−S(=O)−OR′末端基または−S(=O)−O−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0165】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、−S(=O)R′末端基または−S(=O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0166】
用語「スルホネート」は、−S(=O)
2−R′末端基または−S(=O)
2−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0167】
用語「S−スルホンアミド」は、−S(=O)
2−NR′R′′末端基または−S(=O)
2−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0168】
用語「N−スルホンアミド」は、R′S(=O)
2−NR′′末端基または−S(=O)
2−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0169】
用語「ジスルフィド」は、−S−SR′末端基またはS−S−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0170】
用語「ホスホネート」は、−P(=O)(OR′)(OR′′)末端基または−P(=O)(OR′)(O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0171】
用語「チオホスホネート」は、−P(=S)(OR′)(OR′′)末端基または−P(=S)(OR′)(O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0172】
用語「ホスフィニル」は、−PR′R′′末端基または−PR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0173】
用語「ホスフィンオキシド」は、−P(=O)(R′)(R′′)末端基または−P(=O)(R′)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0174】
用語「ホスフィンスルフィド」は、−P(=S)(R′)(R′′)末端基または−P(=S)(R′)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0175】
用語「ホスファイト」は、−O−PR′(=O)(OR′′)末端基または−O−PH(=O)(O)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0176】
用語「尿素」(「ウレイド」とも称される)は、−NR′C(=O)−NR′′R′′′末端基または−NR′C(=O)−NR′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りであり、R′′′はR′およびR′′について本明細書中で定義される通りである)を記載する。
【0177】
用語「チオ尿素」(「チオウレイド」とも称される)は、−NR′C(=S)−NR′′R′′′末端基または−NR′−C(=S)−NR′′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0178】
用語「グアニル」は、R′R′′NC(=N)−末端基または−R′NC(=N)−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′およびR′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0179】
用語「グアニジン」は、−R′NC(=N)−NR′′R′′′末端基または−R′NC(=N)−NR′′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0180】
用語「ヒドラジン」は、−NR′−NR′′R′′′末端基または−NR′−NR′′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0181】
本明細書で使用される用語「ヒドラジド」は、−C(=O)−NR′−NR′′R′′′末端基または−C(=O)−NR′−NR′′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0182】
本明細書で使用される用語「チオヒドラジド」は、−C(=S)−NR′−NR′′R′′′末端基または−C(=S)−NR′−NR′′−連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0183】
本発明の実施形態との関連における使用のために好適であるベータ−シート破壊剤成分の限定されない例の列挙が表3(下記の実施例1を参照のこと)および
図1に示される。
【0184】
本発明の実施形態との関連における使用のために好適であるTrp成分の限定されない例の列挙が表2(下記の実施例1を参照のこと)および
図2に示される。
【0185】
本発明の実施形態は、本明細書中に記載されるTrp成分の1つと、本明細書中に記載されるベータ−シート破壊剤成分の1つとのどのような組合せをも包含することに留意しなければならない。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態によるジペプチドアナログの限定されない例の列挙が表1(下記の実施例1を参照のこと)に示される。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態によるジペプチドアナログの限定されない例の列挙がまた
図3に示される。
【0188】
本明細書中上記に示されるように、また、下記の実施例の節でさらに明らかにされるように、本発明者らは、これら2つの成分から構成されるジペプチドにおけるTrp成分および/またはAib成分のいくつかの構造的および機能的な特徴の改変により、以前に記載されたD−Trp−Aibのジペプチドアナログで、改善された成績によって特徴づけられ、したがって、アミロイド線維形成を阻害するための治療剤として効率的に利用することができるジペプチドアナログがもたらされることを発見している。
【0189】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、D−Trp−Aibおよび以前に記載されたその誘導体と比較した場合、改善された成績によって特徴づけられる。
【0190】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、D−Trp−Aibの当該阻害活性よりも大きいアミロイド線維形成阻害活性によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるジペプチドアナログの高まった阻害活性が、アミロイド−ベータタンパク質の球状体の形成を阻害するために要求される最小のアミロイド−ベータタンパク質:阻害剤比率によって測定される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるジペプチドアナログはアミロイド−ベータタンパク質の球状体の形成の実質的に完全な阻害を1:20のアミロイド−ベータタンパク質:阻害剤モル比で示す。そのような比率は、D−Trp−Aibのアミロイド−ベータタンパク質の球状体の形成を阻害するために要求される対応する最小のアミロイド−ベータタンパク質:阻害剤比率の1/2以下であり、本明細書中に記載されるジペプチドアナログの実質的に改善された阻害活性を示している。
【0191】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるジペプチドアナログはアミロイド−ベータタンパク質の球状体の形成の実質的に完全な阻害を1:10のアミロイド−ベータタンパク質:阻害剤モル比で示す。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるジペプチドアナログはアミロイド−ベータタンパク質の球状体の形成の実質的に完全な阻害を1:1のアミロイド−ベータタンパク質:阻害剤モル比で、また、それどころか、より低い比率で示す。
【0192】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、D−Trp−AibのBBB透過性よりも大きいBBB透過性によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、D−Trp−Aibの親油性よりも大きい親油性によって特徴づけられる。
【0193】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、D−Trp−Aibの半減期よりも大きい半減期によって特徴づけられる。
【0194】
まとめると、本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログは、以前に記載されたD−Trp−Aibおよびそのエステル誘導体と比較した場合、改善された治療効果によって特徴づけられる。そのような改善された効果が、本明細書中下記で詳述されるように、示された状態を処置するために要求されるジペプチドアナログの低下した量によって、および/または、D−Trp−Aibと比較した場合、ジペプチドアナログの低下した投与回数によって、および/または、低下した副作用によって明らかにされ得る。
【0195】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に記載されるジペプチドアナログのそれぞれが独立して、アミロイド線維形成の阻害剤として特徴づけられる。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、本明細書中に記載されるジペプチドアナログのそれぞれが独立して、アミロイド関連疾患またはアミロイド関連障害の処置における使用のために特定される。
【0197】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、アミロイド関連疾患またはアミロイド関連障害を処置するための医薬品の製造における、本明細書中に記載されるジペプチドアナログのいずれかの使用が提供される。
【0198】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、アミロイド関連疾患またはアミロイド関連障害をその必要性のある対象において処置する方法であって、前記対象に、治療上有効な量の本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログを投与することを含む方法が提供される。
【0199】
本発明の実施形態による好ましい個体対象が哺乳動物であり、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシおよびヒトなどである。
【0200】
本明細書中を通して使用されるように、表現「アミロイド線維形成を阻害(または防止)する」、表現「アミロイド斑形成を阻害(または防止)する」、表現「アミロイド線維を脱凝集させる」、表現「アミロイド−ベータ球状体化を阻害(または防止)する」、ならびに、それらの文法的変化形および組合せは交換可能に使用され、一般には、オリゴマーおよびポリマーへのアミロイドベータペプチドの凝集を生じさせ、したがって、アミロイド斑を形成させる生物学的プロセスを妨げることに関連する。したがって、これらの表現は、アミロイド斑形成を減少させるか、または防止すること、あるいは、患部組織における斑の出現を実質的に低下させることをもたらす記載されたペプチドアナログの活性を表す。
【0201】
表現「アミロイド斑」は、線維状アミロイド、同様にまた、線維状ではないが、凝集したアミロイド(以降、「プロト線維状アミロイド」)(これも同様に病原性であるかもしれない)を示す。
【0202】
アミロイド疾患の処置のために利用されるとき、本明細書中に記載されるジペプチドアナログは、線維形成を防止すること、線維形成を低下すること、または、形成された凝集物を、以前に形成された凝集物の競合的な脱安定化によって脱凝集することが可能であることが理解されるであろう。代替において、記載されたジペプチドアナログは、アミロイドフラグメントによって形成される同種分子の集合体と同じように秩序化されない異種分子の複合体の自己凝集および形成によって作用することができる。
【0203】
表現「アミロイド関連疾患またはアミロイド関連障害」は、本明細書中で使用される場合、アミロイド斑形成を伴う病理を有する医学的状態を表す。そのような医学的状態は他の病理を伴う可能性があるが、アミロイド斑形成を低下させるか、または防止するか、または阻害することによって、少なくともある程度は、処置可能である。
【0204】
本発明の実施形態に従って処置可能であるアミロイド関連疾患の例としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:II型糖尿病、アルツハイマー病(AD)、早期発症型アルツハイマー病、遅発型アルツハイマー病、発症前アルツハイマー病、パーキンソン病、SAAアミロイドーシス、遺伝性アイスランド型症候群(hereditary Icelandic syndrome)、多発性骨髄腫、髄様ガン、大動脈中膜アミロイド、インスリン注射アミロイドーシス、プリオン全身性アミロイドーシス、慢性炎症アミロイドーシス、ハンチントン病、老人性全身性アミロイドーシス、下垂体アミロイドーシス、遺伝性腎アミロイドーシス、家族性英国型認知症、フィンランド型遺伝性アミロイドーシス、家族性非神経障害性アミロイドーシス[Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]、アミロイド関連の眼の疾患および障害(例えば、緑内障[Guoら、PNAS(2007)、104(33)、13444頁〜13449頁]および加齢黄斑変性(AMD)など)、ならびに、プリオン病(これには、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、ならびに、畜牛のウシ海綿状脳症(BSE)[WilesmithおよびWells(1991)、Curr Top Microbiol Immunol、172:21〜38]、ならびに、ヒトのプリオン病((i)クールー、(ii)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(iii)ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)および(iv)致死性家族性不眠症(FFI)[Gajdusek(1977)、Science、197:943〜960;Medori,Tritschlerら(1992)、N Engl J Med、326:444〜449]を含む)が含まれる)。
【0205】
本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、ジペプチドアナログの本明細書中で定義されるような治療上有効な量が対象に与えられる。ジペプチドアナログは、様々な送達方法のいずれか1つを使用して与えることができる。送達方法および好適な配合物が医薬組成物に関して本明細書中下記で記載される。
【0206】
好適な投与経路としては、例えば、経口送達、舌下送達、吸入送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、海綿体内送達、局所的送達、腸管送達または腸管外送達(筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下腔内注射、直接の脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)を挙げることができる。
【0207】
本明細書中に記載されるジペプチドアナログは、個体対象にそれ自体で、または、ジペプチドアナログが医薬的に許容されるキャリアと混合される医薬組成物の一部として与えることができる。
【0208】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0209】
本明細書中において、用語「有効成分」は、生物学的効果を説明することができるジペプチドアナログを示す。
【0210】
本明細書中以降、表現「生理学的に許容されるキャリア(担体)」および表現「医薬的に許容されるキャリア(担体)」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に包含される。医薬的に許容されるキャリアに含まれる成分の1つは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であることができ、これは有機媒体および水性媒体の両方における広範囲の溶解性を有する生体適合性ポリマーである(Mutter他(1979))。
【0211】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0212】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0213】
あるいは、例えば、患者の身体の組織領域に直接的に調製物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に調製物を投与することができる。
【0214】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0215】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0216】
局所投与用の配合物としては、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐薬、滴剤、液体剤、噴霧剤および粉末剤が挙げられるが、これらに限定されない。従来のキャリア、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、および、増粘剤などが必要となる場合があるか、または、望ましい場合がある。
【0217】
経口投与用の組成物としては、粉末剤または顆粒剤、水または非水性媒体における懸濁物または溶液、サシェ剤、カプセル剤あるいは錠剤が挙げられる。増粘剤、希釈剤、香味剤、分散化剤、乳化剤または結合剤が望ましい場合がある。
【0218】
腸管外投与用の配合物としては、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加剤もまた含有し得る無菌溶液を挙げることができる、これに限定されない。徐放性組成物が処置のために想定される。
【0219】
本実施形態における使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量(治療上有効な量)」は、処置されている対象の疾患の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0220】
治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0221】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、動物モデルにおいて決定されることができ、そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0222】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0223】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0224】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0225】
本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログを適合性の医薬用キャリアに配合されて含む組成物はまた、本明細書中に記載されるように、示された状態の処置のために調製し、適切な容器に入れ、表示することができる。
【0226】
組成物は、所望されるならば、有効成分を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)など)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。
【0227】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は包装材に包装され、本明細書中に記載されるようにアミロイド関連疾患またはアミロイド関連障害の処置における使用のために包装材の内部または表面に印刷で特定される。
【0228】
本発明によるアミロイド関連疾患の処置は、この技術分野で知られている他の処置方法と組み合わされ得ること(すなわち、混合療法)が理解されるであろう。したがって、本発明の実施形態による化合物は、さらなる抗アミロイド薬物と(同時または別々に)共投与される場合がある。そのような抗アミロイド薬物の例には、アミロイド脱安定化抗体、アミロイド脱安定化ペプチドおよび抗アミロイド性の小分子が含まれるが、これらに限定されない(そのような薬物に関するさらなる詳細が上記の背景の節で示される)。本発明の実施形態による化合物は、示された疾患または障害を処置するためのさらなる抗アミロイド薬物と(同時または別々に)共投与される場合がある。
【0229】
さらに、本発明の実施形態の一態様によれば、トリプトファン成分およびベータ−シート破壊剤成分をカップリングすることによって行われる、本明細書中に記載されるジペプチドアナログを調製するプロセスが提供される。
【0230】
いくつかの実施形態において、上記プロセスはペプチドカップリング剤の存在下で行われる。アミノ酸をカップリングするための使用のために好適であるカップリング剤はどれも意図される。
【0231】
いくつかの実施形態において、上記プロセスはさらに、カップリングに先立って、トリプトファン成分およびベータ−シート破壊剤成分のどちらかまたは両方の1つまたは複数の官能基を保護することを含む。好適な保護基はどれも意図される。好適な保護基は典型的には、官能基が保護されるために好適であるとして、かつ、最終的なジペプチド生成物またはそのいずれかの中間体における他の官能性に影響を及ぼさない条件のもとで容易に除かれるとして選択される。
【0232】
保護されたTrp成分および/または保護されたベータ−シート破壊剤成分が使用される場合、上記プロセスはさらに、カップリング後、保護基を除くことを含む。2つ以上の保護基がカップリング後のジペプチドに存在する場合、これらの保護基の除去を、使用された保護基に依存して、同時または逐次的に行うことができる。
【0233】
好適な保護基を選択し、これを用いて、開示されたプロセスを実施することは当業者によって十分に認識されている。
【0234】
いくつかの実施形態において、上記プロセスはさらに、カップリング前またはカップリング後のどちらであれ、ジペプチドアナログのトリプトファン成分および/またはベータ−シート破壊剤成分を調製することを含む。
【0235】
したがって、いくつかの実施形態において、Trpが、本明細書中に記載されるようなベータ−シート破壊剤成分にカップリングされ、それにより、TrpをTrp成分として含むジペプチドアナログを得て、その後、このジペプチドアナログにおけるTrpが、Trpとは異なるTrp成分を含むジペプチドアナログについて本明細書中に記載されるようにTrp成分を有するジペプチドアナログを生じさせるように誘導体化される。
【0236】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるように既に修飾されている本明細書中に記載されるようなTrp成分が最初に調製され、その後、ベータ−シート破壊剤にカップリングされる。
【0237】
同様に、いくつかの実施形態において、AibがTrp成分にカップリングされ、それにより、Aibをベータ−シート破壊剤成分とするジペプチドアナログを得て、その後、このジペプチドアナログにおけるAibが、Aibまたはそのエステルとは異なるベータ−シート破壊剤成分を含むジペプチドアナログについて本明細書中に記載されるようにベータ−シート破壊剤成分を有するジペプチドアナログを生じさせるように誘導体化される。
【0238】
記載されたジペプチドアナログを調製するための例示的な一般的手順が下記の実施例の節において示される。
【0239】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0240】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0241】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0242】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0243】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0244】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0245】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0246】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0247】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0248】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0249】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0250】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0251】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0252】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0253】
実施例1
化学合成
材料および方法:
化学試薬を、別途示される場合を除き、Sigma−Aldrichから購入した。
【0254】
溶媒を、別途示される場合を除き、Bio−Labから購入した。
【0255】
NMR測定を、SiMe
4を標準として使用して、Bruker Avance−200MHz NMRで行った。
【0256】
エレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)測定を、Waters Micromass SYNAPT HDMS質量分析計で行った。
【0257】
一般的手順:
本明細書中に記載されるジペプチド化合物は、2つのアミノ酸をカップリングするための標準的な手順を使用して下記のように調製される:
D−Trpまたはそのアナログ(例えば、D/L−α−メチル−Trp)が、非天然アミノ酸の2−アミノ−イソ酪酸(Aib)に由来するベータ−シート破壊剤成分にカップリングされる。
【0258】
カルボン酸機能の保護:アミノ酸は、そのカルボン酸機能が、下記の変化を伴う、Bioorganic & medicinal chemistry、15(14):4903〜9(2007)に記載される手順に基づいて、塩化チオニルを試薬として、メタノール、エタノールまたはtert−ブタノールのいずれかを溶媒として使用して、メチルエステル、エチルエステルまたはtert−ブチルエステルを介して保護される:塩化チオニルが反応前に蒸留されず、中間生成物が、再結晶によるのではなく、むしろ、ヘキサンにおける酢酸エチルを溶離液として用いてシリカゲル60のカラムを使用して精製された。中間生成物が、CDCl
3を溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0259】
N−Boc保護:トリプトファン成分(例えば、D−Trp−メチル−エステルまたはD/L−アルファ−メチル−Trp−メチル−エステル)のN−Boc保護を、J.Org.Chem.、71、7106〜9(2006)に記載される手順に従って行う。中間生成物が、ヘキサンにおける20%〜50%の酢酸エチルを溶離液として使用してシリカゲル60のカラムを使用して精製される。中間生成物が、CDCl
3を溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0260】
Boc保護されたアミノ酸の脱エステル化:Boc保護されたTrp成分(例えば、D−Trp−メチル−エステルまたはD/L−アルファ−メチル−Trp−メチル−エステル)の脱エステル化を、水酸化リチウムを使用して下記のように行う:
保護されたアミノ酸を2体積のメタノールに溶解し、氷浴で冷却する。3当量の水酸化リチウムを1体積の水に溶解し、前記溶液に加え、混合物を2時間から一晩にまで及ぶ期間にわたって室温で撹拌し、その間、TLCによってモニターする。得られた生成物を、酢酸エチルにおける1%酢酸を溶離液として使用してシリカゲル60のカラムを使用して精製する。生成物が、CDCl
3を溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0261】
カップリング:Boc保護されたTrp成分(例えば、D−TrpまたはD/L−アルファ−メチル−Trp)のカップリングを、J.Med.Chem.、48(22)、6908〜6917(2005)に記載される手順に従って、HBTUをカップリング剤として、DIEAを触媒として、DMFを溶媒として使用して行う。カップリングはまた、他のカップリング剤を使用して行うことができる。生成物を、ヘキサンにおける20%〜50%の酢酸エチルを溶離液として使用してシリカゲルのカラムにより精製する。生成物の構造が、CDCl
3またはDMSO−d
6を溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0262】
Boc脱保護:Boc脱保護を、塩化メチレンにおける50%TFAを使用して6分間行い、その後、エバポレーションを減圧下で行う。TFAの残存物を除くために、ベンゼンの添加および減圧下でのエバポレーションを2回〜3回繰り返して行う。その後、水を加え、溶液のpHを中和する。その後、水を減圧下でのエバポレーションによって除き、その後、凍結乾燥を一晩行う。生成物が、d
6−DMSOを溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0263】
その後、必要に応じたさらなる脱エステル化を、所望されるならば、本明細書中上記の手順を使用して行う。最終生成物を、エタノールにおける1%酢酸を溶離液として使用してシリカゲルのカラムで精製する。生成物が、d
6−DMSOを溶媒として使用する200MHzの
1H−NMRによって確認される。
【0264】
例示目的のために、H
2N−Trp−Aib−OMeの合成を示す例示的な合成スキームが
図4に示される。
【0265】
本明細書中上記の一般的手順を使用して、下記の例示的なジペプチド化合物を下記のように合成した:
H
2N−Trp−Aib−OtBu((R)−(2−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)−2−メチルプロパン酸tert−ブチル;化合物1)の調製:
化合物1を、D−TrpおよびAib−OtBuを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0266】
【0267】
【0268】
(D/L)−H
2N−α−Me−Trp−Aib−OMe(2−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)−2−メチルプロパンアミド)−2−メチルプロパン酸メチル;化合物2)の調製:
化合物2を、L/D−α−Me−Trp(ラセミ混合物)およびAib−OMeを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0269】
【0270】
【0271】
(D/L)−H
2N−α−Me−Trp−シクロペンタン−OMe(1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)−2−メチルプロパンアミド)シクロペンタンカルボン酸メチル;化合物3)の調製:
化合物3を、L/D−α−Me−Trpおよび1−アミノシクロペンタンカルボン酸メチルを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0272】
【0273】
【0274】
H
2N−Trp−シクロペンタン−OH((R)−1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)シクロペンタンカルボン酸;化合物4)の調製:
化合物4を、D−Trpおよび1−アミノシクロペンタンカルボン酸を本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0275】
【0276】
【0277】
H
2N−Trp−シクロプロパン−OH((R)−(1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)シクロプロパンカルボン酸;化合物5)の調製:
化合物5を、D−Trpおよび1−アミノシクロプロパンカルボン酸を本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0278】
【0279】
【0280】
H
2N−Trp−シクロプロパン−OEt((1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)シクロプロパンカルボン酸エチル);化合物6)の調製:
化合物6を、D−Trpおよび1−アミノシクロプロパンカルボン酸エチルを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0281】
【0282】
【0283】
H
2N−Trp−シクロヘキサン−OH(1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)シクロヘキサンカルボン酸;化合物7)の調製:
化合物7を、D−Trpおよび1−アミノシクロヘキサンカルボン酸を本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0284】
【0285】
【0286】
H
2N−Trp−シクロヘキサン−OEt((1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)シクロヘキサンカルボン酸エチル;化合物8)の調製:
化合物8を、D−Trpおよび1−アミノシクロヘキサンカルボン酸エチルを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0287】
【0288】
【0289】
H
2N−Trp−α−Me−プロリン−OMe(1−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパノイル)−2−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル;化合物9)の調製:
化合物9を、D−Trpおよびα−Me−プロリン−OMeを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0290】
【0291】
【0292】
H
2N−Trp−オキセタン−OH((R)−3−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)オキセタン−3−カルボン酸;化合物10)の調製:
化合物10を、D−Trpおよび1−アミノオキセタンカルボン酸を本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0293】
H
2N−Trp−オキセタン−NH
2((R)−3−(2−アミノ−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド)オキセタン−3−カルボキサミド;化合物11)の調製:
化合物11を、D−Trpおよび1−アミノオキセタンカルボキサミドを本明細書中上記のようにカップリングすることによって調製した。
【0294】
記載されたコンジュゲートの化学構造が下記の表1に示される。
【0295】
表1では化学構造がD−Trp成分について示されるが、対応するL−Trp成分を含むコンジュゲートもまた意図されることには留意しなければならない。
【0296】
上記の一般的手順を使用して、下記の表2に示されるようなTrp成分を含む化合物が調製される:
【0297】
表2に示されるTrp成分のそれぞれが、下記の表3に示されるベータシート破壊剤成分の1つにカップリングされる。
【0298】
さらに、本明細書中上記の一般的手順を使用して、下記の化合物を下記のように調製した:
化合物Aの調製(
図3):
化合物Aを、下記のスキーム1に示されるように調製した。
【0299】
化合物A2の調製:化合物A1(5.10グラム、16.7mmol)および2−アミノ−2−メチルプロパン酸フェニルメチルHCl塩(3.60グラム、18.4mmol)のDMF(100ml)における撹拌溶液に、HOBT(3.40グラム、25.1mmol)、DIEA(8.9ml、50.1mmol)およびEDCI(4.50グラム、25.1mmol)を室温で加えた。N
2雰囲気下において室温で16時間撹拌した後、混合物を氷/水(100ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(100mlで2回)。有機相を、1NのHCl水溶液(80mlで2回)、飽和NaHCO
3溶液(80mlで2回)、ブライン(80ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した。その後、EtOAc溶媒を真空下で除いた。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=2:1)によって精製して、化合物A2(6.00グラム、75%)を白色の固体として得た。
【0300】
化合物A3の調製:化合物A2(6.00グラム、12.4mmol)のEt
2O/HCl(30ml、2.5M)における溶液を、N
2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後、NaHCO
3(飽和)を加えて、PHを7にし、その後、DCM(80ml)により抽出し、ブライン(80ml)により洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物A3(4.50グラム、96%)を白色の固体として得た。
【0301】
【0302】
化合物A4の調製:化合物A3(731mg、1.73mmol)のTHF(20ml)における撹拌溶液に、Ac
2O(4.0ml)を加えた。N
2雰囲気下において室温で2時間撹拌した後、反応混合物を真空下で濃縮した。この残渣に、DCM(30ml)を加え、飽和NaHCO
3(30mlで2回)およびブライン(30ml)により洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物A4(780mg、96%)を白色の固体として得た。
【0303】
【0304】
化合物Aの調製:化合物A4(780mg、1.85mmol)のTHF(10ml)における撹拌溶液に、10%Pd/C(330mg)を加え、H
2(1atm)下において室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮して、化合物A(321mg、52%)を白色の固体として得た。
【0305】
【0306】
LC−MS(移動相:90%水/10%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は97.9%である;保持時間=2.336分。
【0307】
MS:計算値:331.1;実測値:330.0(M−H)
−。
【0308】
化合物Cの調製(
図3):
化合物Cの合成が下記のスキーム2に示される。
【0309】
化合物C’の調製:HCOOH(1.5ml、30.4mmol)およびAc
2O(2.2ml、24.0mmol)の混合物を60℃で2時間撹拌し、その後、室温に冷却した。この反応混合物に、化合物A3(2.88グラム、7.60mmol、本明細書中上記)のTHF(20ml)における溶液を加えた。混合物をN
2雰囲気下において室温で2時間撹拌し、真空下で濃縮した。残渣をDCM(100ml)により希釈し、その後、飽和NaHCO
3(100mlで2回)およびブライン(100ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した。有機相を真空下で濃縮して、化合物C’(780mg、96%)を白色の固体として得た。
【0310】
【0311】
化合物Cの調製:化合物C’(350mg、0.86mmol)およびPd/C(10%、250mg)のTHF(10ml)における混合物を、N
2雰囲気下、H
2(1atm)下において室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を真空下で濃縮して、化合物C(200mg、73%)を白色の固体として得た。
【0312】
【0313】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は98.6%である;保持時間=2.309分。
【0314】
MS:計算値:317.1;実測値:316.0(M−H)
−。
【0315】
化合物Bの調製(
図3):
化合物Bの合成が下記のスキーム3に示される。
【0316】
化合物B1の調製:化合物C’(780mg、1.85mmol、本明細書中上記)の無水THF(20ml)における撹拌溶液に、BH
3・SMe
2(1.6ml、16mmol、THFにおける10M)を0℃で加えた。N
2雰囲気下において室温で3時間撹拌した後、反応混合物をHCl(濃)により0℃で反応停止させ、その後、NaHCO
3(飽和)を加えて、PHを8にし、EtOAcにより抽出した(40mlで2回)。一緒にした有機相をブライン(40ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)によって精製して、化合物B1(400mg、17%)を白色の固体として得た。
【0317】
化合物B2の調製:化合物B1(400mg、1.0mmol)のTHF(20ml)における撹拌溶液に、Ac
2O(2ml)を室温で加えた。N
2雰囲気下で2時間撹拌した後、反応混合物をDCM(30ml)により希釈し、飽和NaHCO
3(30mlで2回)およびブライン(30ml)により洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=1:1〜1:4)によって精製して、化合物B2(300mg、68%)を白色の固体として得た。
【0318】
【0319】
化合物Bの調製:化合物B2(300mg、0.690mmol)のTHF(10ml)における撹拌溶液に、10%Pd/C(200mg)を加え、混合物をH
2(1atm)下において室温で2時間撹拌し、その後、ろ過した。ろ液を真空下で濃縮して、化合物B(200mg、84%)を白色の固体として得た。
【0320】
【0321】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は97.2%である;保持時間=2.415分。
【0322】
MS:計算値:345.1;実測値:346.1(M+H)
+。
【0323】
化合物Uおよび化合物Tの調製(
図3):
化合物Uおよび化合物Tの調製が下記のスキーム4に示される。
【0324】
化合物U9の調製:化合物U8(5.00グラム、34.5mmol)のDCM(50ml)における撹拌溶液に、DMAP(2.10グラム、17.3mmol)およびDIEA(9.0ml、51.7mmol)およびBoc
2O(11.3グラム、51.7mmol)を加えた。混合物をN
2雰囲気下において室温で2時間撹拌し、1NのHCl(100mlで2回)、飽和NaHCO
3溶液(100mlで2回)およびブライン(80ml)により洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=30:1〜10:1〜4:1)によって精製して、化合物U9(8.10グラム、96%)を白色の固体として得た。
【0325】
【0326】
化合物U11の調製:化合物U10(1.60グラム、5.39mmol)のDCM(15ml)における撹拌溶液に、DBU(753mg、4.95mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、化合物U9の溶液(1.10グラム、4.49mmol、10mlのDCMにおいて)を滴下して加えた。N
2雰囲気下において室温で3時間撹拌した後、反応混合物を5%クエン酸(20mlで2回)およびブライン(80ml)により洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=25:1〜4:1)によって精製して、化合物U11(1.70グラム、89%)を黄色の固体として得た。
【0327】
【0328】
化合物U12の調製:化合物U11(1.70グラム、4.10mmol)のTHF/MeOH(1:1、20ml)における撹拌溶液に、KOHの溶液(1.80グラム、32.0mmol、10mlのH
2Oにおいて)を加えた。N
2雰囲気下において60℃で2時間撹拌した後、HCl(濃)を氷冷下で混合物に加えて、PH=3〜4にし、H
2O(80ml)により希釈し、EtOAcにより抽出した(100mlで2回)。一緒にした有機相をブラインにより洗浄し(80mlで2回)、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物U12(900mg、75%)を黄色の固体として得た。
【0329】
【0330】
化合物U13の調製:化合物U12(660mg、2.19mmol)および2−アミノ−2−メチルプロパン酸メチル(HCl)のDMF(20ml)における撹拌溶液に、HATU(1.70グラム、4.40mmol)およびDIEA(1.2ml、6.60mmol)を室温で加えた。混合物をN
2雰囲気下において室温で16時間撹拌し、その後、氷/水(50ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(50mlで2回)。一緒にした有機相を、1NのHCl(80mlで2回)、飽和NaHCO
3(50mlで2回)およびブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した。溶媒を真空下で濃縮し、残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=2:1)によって精製して、化合物U13(450mg、51%)を黄色の固体として得た。
【0331】
【0332】
化合物Uの調製:化合物U13(250mg、0.63mmol)のTHF/MeOH(1:1、20ml)における撹拌溶液に、LiOHの溶液(120mg、2.7mmol、3mlのH
2Oにおいて)を加えた。反応混合物をN
2雰囲気下において60℃で2時間撹拌し、その後、HCl(濃)を氷冷水のもとで加えて、PHを3にした。その後、混合物を30mlのH
2Oにより希釈し、EtOAcにより抽出した(50mlで2回)。一緒にした有機相をブラインにより洗浄し(50mlで2回)、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物U(200mg、83%)を赤色の固体として得た。
【0333】
【0334】
【0335】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は97.5%である;保持時間=3.415分。
【0336】
MS:計算値:387.1;実測値:388.1(M+H)
+。
【0337】
化合物Tの調製:化合物U(150mg、0.39mmol)およびNH
4Cl(70.0mg、1.30mmol)のDMF(10ml)における撹拌溶液に、HATU(240mg、0.630mmol)およびDIEA(0.5ml、2.80mmol)を加えた。N
2雰囲気下において室温で16時間撹拌した後、反応混合物を氷水(30ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(50mlで2回)。一緒にした有機相を、1NのHCl(50mlで2回)、飽和NaHCO
3(50mlで2回)およびブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=2:1)によって精製して、化合物T(120mg、80%)を黄色の固体として得た。
【0338】
【0339】
【0340】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は97.3%である;保持時間=2.782分。
【0341】
MS:計算値:386.2;実測値:387.1(M+H)
+。
【0342】
化合物Qおよび化合物Vの調製(
図3):
化合物Qおよび化合物Vを、下記のスキーム5に示されるように調製した。
【0343】
化合物18の調製(スキーム5):
化合物18を、下記のスキーム6に示されるように調製した。
【0344】
化合物15の調製:ジオキサン(150ml)およびNaOH(5%、150ml)における化合物14(10.0グラム、97.0mmol)の溶液を0℃に冷却し、その後、Boc
2Oを滴下して加えた。混合物をN
2雰囲気下において室温で16時間撹拌し、その後、HCl(濃)を加えて、PHを3にした。混合物をEtOAcにより抽出し(100mlで3回)、ブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮し、シリカゲルのカラムで精製し(PE/EtOAc=5:1)、生成物を白色の固体として得た(12.1グラム、61%の収率)。
【0345】
化合物16の調製:化合物15(8.60グラム、42.3mmol)およびK
2CO
3(8.80グラム、63.5mmol)のDMF(150ml)における撹拌された混合物に、BnBr(6.20ml、51.0mmol)を0℃で滴下して加えた。N
2雰囲気下において室温で15時間撹拌した後、反応混合物を水(200ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(200mlで3回)。一緒にした有機相をブライン(100ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮した。この残渣に、ヘキサン(50ml)を加え、30分間撹拌し、ろ過して、化合物16(8.50グラム、69%)を白色の固体として得た。
【0346】
【0347】
化合物17の調製:化合物16(5.00グラム、17mmol)のTHF(100ml)における撹拌溶液に、NaH(5.40グラム、60%、136mmol、ヘキサンにより洗浄されたもの)を氷冷下で加えた。反応混合物を氷/水浴で2時間撹拌し、その後、MeI(4.50ml、85.0mmol)を滴下して加えた。混合物をN
2雰囲気下において30℃で15時間撹拌し、その後、氷/水(100ml)にゆっくり注ぎ、EtOAcにより抽出した(100mlで3回)。一緒にした有機相をブラインにより洗浄し(100mlで2回)、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物17(4.00グラム、77%)を黄色のオイルとして得た。
【0348】
【0349】
化合物18の調製:化合物17(4.0グラム、13.0mmol)のEt
2O/HCl(30ml、2.5M)における溶液を、N
2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、残渣にヘキサン(40ml)を加えた。混合物を30分間撹拌し、ろ過して、化合物18のHCl塩(2.3グラム、74%)を白色の固体として得た。
【0350】
【0351】
化合物19の調製:化合物A1(3.60グラム、11.8mmol)および化合物18(HCl)塩のDMF(100ml)における撹拌溶液に、HATU(5.60グラム、14.8mmol)およびDMAP(3.60グラム、29.4mmol)を室温で加えた。混合物をN
2雰囲気下において室温で16時間撹拌し、その後、氷水(100ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(150mlで2回)。一緒にした有機相を、1NのHCl(aq)(100mlで2回)、飽和NaHCO
3(100mlで2回)およびブライン(100ml)により洗浄し、その後、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(PE/EtOAc=2:1)によって精製して、化合物19(2.70グラム、56%)を黄色の固体として得た。
【0352】
【0353】
化合物20の調製:化合物19(500mg、1.01mmol)のEt
2O/HCl(2.5M、20ml)における溶液を、N
2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。その後、反応混合物を真空下で濃縮して、化合物20(450mg、粗製物)を得た。
【0354】
化合物21の調製:化合物20(450mg、粗製物)およびAc
2O(2.0ml)およびDIEA(1.0ml)のTHF(20ml)における溶液を、N
2雰囲気下、室温で2時間撹拌した。その後、反応混合物を真空下で濃縮し、EtOAc(30ml)により希釈した。有機相を、1NのHCl(aq)(20mlで2回)、飽和NaHCO
3(20mlで2回)およびブライン(20ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を真空下で除いて、化合物21(400mg、91%)を黄色の固体として得た。
【0355】
化合物Qの調製:化合物21(500mg、粗製物)および10%Pd/C(250mg)のTHF(20ml)における混合物をH
2(1atm)下において室温で2時間撹拌し、その後、ろ過した。ろ液を濃縮して、化合物Q(250mg、88%)を白色の固体として得た。
【0356】
【0357】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから40%水/60%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は>95%である;保持時間=1.958分。
【0358】
MS:計算値:345.2;実測値:346.1(M+H)
+。
【0359】
化合物Vの調製:化合物Q(230mg、0.67mmol)およびMeNH
2・HCl(222mg、3.33mmol)のDMF(20ml)における撹拌溶液に、HOBT(135mg、1mmol)およびDIEA(0.8ml、4.70mmol)を加え、その後、EDCI(192mg、1.00mmol)を室温で加えた。反応混合物をN
2雰囲気下において室温で16時間撹拌し、真空下で濃縮し、Prep−HPLCによって精製して、化合物V(30mg、17%)を白色の固体として得た。
【0360】
【0361】
LC−MS(移動相:90%水(0.02%NH
4Ac)/10%CH
3CNから5%水(0.02%NH
4Ac)/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は>95%である;保持時間=2.090分。
【0362】
MS:計算値:327.2;実測値:328.1(M
++H)。
【0363】
化合物Rの調製(
図3):
化合物Rを、下記のスキーム7に示されるように調製した。
【0364】
化合物19(1.50グラム、3.8mmol)およびPd/C(10%、400mg)のTHF(40ml)における混合物をH
2(1atm)下において室温で15時間撹拌し、その後、ろ過した。ろ液を濃縮して、化合物R(1.20グラム、80%)を赤色の固体として得た。
【0365】
【0366】
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は98.6%である;保持時間=3.685分。
【0367】
MS:計算値:403.2;実測値:404.1(M
++H)。
【0368】
化合物D、化合物Eおよび化合物Fの調製(
図3):
化合物D、化合物Eおよび化合物Fを、下記のスキーム8に示されるように調製した。
【0369】
化合物40の調製:化合物A1(2.0グラム、6.6mmol)のDMF(10ml)における撹拌溶液に、アミン(1.1グラム、7.0mmol)、HOBt(945mg、7mmol)、EDC(1.9グラム、10mmol)およびDIEA(2.6グラム、20mmol)を加えた。N
2雰囲気下において室温で16時間撹拌した後、反応混合物を氷/水(20ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(20mlで3回)。一緒にした有機相をブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムで精製し(PE:EtOAc=8:1)、化合物40を得た(3.2グラム、81%の収率)。
【0370】
化合物41の調製:MeOH(50ml)およびH
2O(10ml)における化合物40(4.8グラム、12mmol)の溶液に、LiOH・H
2O(608mg、15mmol)を加えた。室温で4時間撹拌した後、HCl(濃)を反応混合物に加えて、PHを5にし、水(40ml)を加え、混合物をEtOAcにより抽出した(40mlで3回)。一緒にした有機相をブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮して、化合物41を白色の固体として得た(4.2グラム、90%の収率)。
【0371】
化合物42、化合物43および化合物44の調製:
化合物41(300mg、0.77mmol)のDMF(10ml)における溶液に、アミン塩(2.3mmol、これは、所望される生成物に従って選択された)、HOBt(157mg、1.2mmol)、EDC(2.23グラム、1.2mmol)およびDIEA(298mg、2.3mmol)を加えた。N
2雰囲気下において室温で16時間撹拌した後、混合物をH
2O(50ml)に注ぎ、EtOAcにより抽出した(50mlで3回)。一緒にした有機相をブライン(50ml)により洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムで精製し(PE:EtOAc=8:1)、生成物(42、43または44)を得た。
【0372】
化合物D、化合物Eおよび化合物Fの調製:
化合物42(または化合物43または化合物44)のEtOAc/HCl(4N、10ml)における溶液を室温で2時間撹拌し、その後、真空下で濃縮し、Prep−HPLCによって精製して、対応する生成物を白色の固体として得た。
【0373】
化合物D:90mg、51%の収率;
LC−MS(移動相:95%水(0.05%TFA)/5%CH
3CNから5%水(0.05%TFA)/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は>95%である;保持時間=2.308分。
MS:計算値:288.1;実測値:289.1(M
++H)。
【0374】
化合物E:75mg、57%の収率;
LC−MS(移動相:95%水(0.05%TFA)/5%CH
3CNから5%水(0.05%TFA)/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は>95%である;保持時間=2.391分。
MS:計算値:302.1;実測値:303.1(M
++H)。
【0375】
化合物F:50mg、47%の収率;
LC−MS(移動相:95%水/5%CH
3CNから5%水/95%CH
3CNにまで6分で、最後はこれらの条件のもとで0.5分間):純度は98.3%である;保持時間=2.568分。
MS:計算値:316.1;実測値:317.2(M
++H)。
【0376】
化合物Wの調製(
図3):
化合物Wを、下記のスキーム9に示されるように調製した。だが、その間に、ベンジルオキシカルボニル(Z)をジペプチドアナログのN末端の保護基として、フェナシルエステル(2−フェニル−2−オキソエチルエステル、Pac)をジペプチドアナログのC末端の保護基として利用し、それにより、Z−D−Trp−Aib−OPacを作製した。Z保護基およびPac保護基の両方が接触水素化によって除かれる。
【0377】
Z−D−Trp−Aib−OMe(化合物51)の調製
33.84グラム(100mmol)のZ−D−Trp−OHを150mlのEtOAcに溶解した。30.44グラム(110mmol)のN−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−N−メチルモルホリニウム塩化物を0℃〜5℃で加えた。H−Aib−OMeを28.56グラム(186mmol)の塩酸塩から遊離させ、反応混合物に加えた。20ml(150mmol、1.5当量)のトリエチルアミンもまた加え、反応混合物を室温で1日間撹拌した。その後、反応混合物を、150mlの水を加え、相を分離し、有機相を150mlの飽和NaHCO
3および150mlの飽和NaClにより洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、溶媒をエバポレーションすることによって処理した。粗化合物51をオレンジ色のオイルとして得た(45.0グラム、103mmol、103%)。これを(トルエン:MeOHの9:1を溶離液として使用する)シリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製し、その結果、化合物51をオレンジ色のオイルとして得た(40.0グラム、91.4mmol、91.4%の収率)。
【0378】
Z−D−Trp−Aib−OH(化合物52)の調製:
100mlのメタノール、10mlの水および2.2グラム(55mmol)のNaOHの混合物における20.0グラム(46mmol)のZ−D−Trp−Aib−OMeの溶液を室温で1日間撹拌した。その後、反応混合物を、溶媒をエバポレーションし、200mlの水を得られた残渣に加え、50mlのシクロヘキサンにより3回抽出し、水相のpHを10mlの85%H
3PO
4により3に設定し、形成した沈殿物をろ過し、沈殿物を400mlの水により洗浄し、40℃で真空乾燥することによって処理した。化合物52を白色の固体生成物として得た(17.0グラム、40mmol、87%の収率)。
【0379】
Z−D−Trp−Aib−OPac(化合物53)の調製:
20mlのEtOAcにおける4.23グラム(10mmol)のZ−D−Trp−Aib−OH(化合物52)および1.99グラム(10mmol)の2’−ブロモアセトフェノンの溶液に、1.4ml(10mmol)のトリエチルアミンを加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。その後、反応混合物を、50mlのEtOAcを加え、有機相を20mlの1M KHSO
4、20mlの水、20mlの1M NaHCO
3および20mlの水により洗浄し、溶媒をエバポレーションすることによって処理した。得られた粗生成物を(ヘキサン:EtOAcの1:1を溶離液として使用する)シリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物53を透明なオイルとして得た(4.3グラム、7.9mmol、79%の収率)。
【0380】
Z−(N−
tBu)−D−Trp−Aib−OPac(化合物54)の調製:
4.3グラム(7.9mmol)のZ−D−Trp−Aib−OPac(化合物53)を40mlのジクロロメタンおよび触媒としての0.24mlの濃H
2SO
4と一緒に金属リアクターに入れた。イソブチレンを(塩−氷浴で冷却される)−5℃のリアクターの中に凝縮させた。反応混合物を室温および2.5barの圧力で1日間撹拌し、その後、イソブチレンをエバポレーションし、残留有機相を50mlの10%NaOHにより洗浄し、有機相をエバポレーションすることによって処理した。このようにして得られた粗生成物を(CHCl
3:MeOHの98:2を溶離液として使用する)シリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物54を明黄色の固体生成物として得た(2.85グラム、4.8mmol、60%の収率)。
【0381】
H−(N−
tBu)−D−Trp−Aib−OH(化合物W)の調製:
1.2グラム(2mmol)のZ−(N−
tBu)−D−Trp−Aib−OPac(化合物54)を100mlのMeOHに溶解し、この溶液をリアクターに入れ、0.12グラムのSelCat Q6触媒(Pd/C型)をリアクターに加えた。反応混合物を室温および1.5barのH
2圧で1日間撹拌し、その後、ろ過し、触媒を50mlの熱メタノールにより2回洗浄し、有機相を一緒にし、溶媒をエバポレーションすることによって処理した。固体残渣を(トルエン:メタノールの1:1を溶離液として使用する)シリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Wを明黄色の固体として得た(126mg、0.36mmol、18%の収率)。
【0382】
1H−NMR(11.7テスラにおいて、Bruker Avance−500MHz(2チャネル)分光計で、DMSOにおいて300Kで記録された):δ=1.35(s)、1.64(s)、2.80、3.07、3.45(t)、6.98(t)、7.07(t)、7.58(d)、7.63(d)、8.37、8.52。
【0383】
実施例2
活性アッセイ
ペプチド溶液:
本明細書中に記載されるようなD−Trp−Aibアナログ、同様にまた、比較のために試験される他のペプチドを50mMおよび100mMの濃度にDMSOに溶解し、氷中で20秒間、超音波処理し、その後、それらの最終濃度にDMSOにより希釈した。
【0384】
オリゴマー形成(Hillenプロトコル):
Aβ
1−42の中間体および球状体をBarghornら[J.Neurochem.、2005(Nov)、95(3):834〜47]に従って生じさせた。合成された凍結乾燥β−アミロイドポリペプチド(Aβ1−42、98%超の純度)をBachem(Bubendorf、スイス)から購入した。事前の凝集を避けるために、合成された凍結乾燥Aβ
1−42をHFIPにより前処理した。Aβ
1−42を100%HFIPに溶解し、20秒間、超音波処理し、100RPMでの振とうのもとで37℃で2時間インキュベーションした。speedvacでのエバポレーションの後、Aβ
1−42を、試験ペプチドの有無にかかわらず、5mMになるようにDMSOに再懸濁し、400μMの最終濃度にするために、20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl(pH7.4)および1/10の体積の2%SDS(0.2%の最終濃度)により希釈した。Aβの球状体を、2体積のH
2Oによるさらなる希釈および18時間以上のインキュベーションによって作製した。その後、Aβの凝集生成物を、15%トリス−トリシンゲルを使用して分離し、Imperialタンパク質染色を使用して染色した。
【0385】
ウエスタンブロット分析:
毒性集合体へのAβ
1−42の転換に対するD−Trp−Aibアナログの影響を評価するために、試験ペプチドを、増大するモル比でAβ
1−42とインキュベーションし、反応混合物をSDS−PAGEによって分離し、その後、特異的な抗Aβ抗体(6E10)(SIGNET)によるウエスタンブロット分析を行った。
【0386】
チオフラビンT蛍光アッセイ:Aβ1−42ポリペプチドの線維化を、チオフラビンT(ThT)色素結合アッセイを使用してモニターした。10μMのAβ1−42溶液を上記のように調製し、Aβについての5μMの最終濃度および試験アナログの様々な濃度を達成するように試験アナログのストック溶液(100μM)と直ちに混合した。それぞれの測定のために、ThTを0.1mlのサンプルに加えて、0.3μMのThTおよび0.4μMのAβの最終濃度を得た。サンプルを37℃でインキュベーションした。蛍光測定(ThT溶液をそれぞれのサンプルに加えた後で37℃で行われる)を、Jobin Yvon FluroMax−3分光計(励起:450nm、2.5nmのスリット;放射:480nm、5nmのスリット、1秒の積算時間)を使用して行った。バックグラウンドをそれぞれのサンプルから引いた。それぞれの実験を四連で繰り返した。
【0387】
結果:
Aβ
1−42球状体生成についてHillenプロトコルを使用して試験された本明細書中に記載されるようなジペプチドアナログのすべてが、Aβ
1−42球状体生成の阻害を、1:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比で、また、それどころか、より低い濃度で、D−Trp−Aib(MRZ99030)について測定されるように、より大きい程度に示すことが見出された。試験されたアナログのすべてが完全な阻害を20:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比で示した。
【0388】
化合物2、すなわち、H
2N−α−Me−Trp−Aib−OMe(上記の表1を参照のこと)は、Hillenプロトコルを使用して、完全な球状体阻害を1:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比で示した(ウエスタンブロット分析を使用して得られるデータについては
図5Aを、また、15%トリス−トリシンゲルおよびImperialタンパク質染色を使用して得られるデータについては
図5Bを参照のこと)。
【0389】
化合物1および化合物7(本明細書中上記の表1を参照のこと)は、Hillenプロトコルを使用して、Aβ
1−42線維形成を10:1および20:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比で阻害することが示された(
図6を参照のこと)。
【0390】
化合物3および化合物5(本明細書中上記の表1を参照のこと)は、Hillenプロトコルを使用して、Aβ
1−42線維形成を10:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比で阻害することが示された(
図7を参照のこと)。
【0391】
比較のために、Hillenプロトコルを使用して、D−Trp−Aib(EG30)について測定される場合のAβ
1−42球状体生成の阻害について得られたデータは、完全な阻害を40:1の(阻害剤:Aβペプチド)モル比においてのみ示した(
図8を参照のこと)。
【0392】
さらなる比較のために、下記の試験されたペプチドは、Aβ
1−42球状体生成を阻害することにおいて何ら活性を示さなかったことは特筆される:dF−dF−Aib、Y−Aib−Aib、Aib−Y−Y、dY−AibおよびN−Y−Y−P。
【0393】
実施例3
活性アッセイ(SPR結合アッセイ)
表面プラズモン共鳴(SPR)研究を、2つのフローセルをセンサーチップ上に備えるBiacore X100バイオセンサー装置(GE Lifesciences、Uppsala、スウェーデン)を使用して行った。Aβモノマーを、Amine Coupling Kit(GE Lifesciences、Uppsala、スウェーデン)を使用して第一級アミンを介してCM7センサーチップ(GE Lifesciences、Uppsala、スウェーデン)の一方のフローセルに共有結合によりカップリングさせた。コントロールとして、エタノールアミンを参照チャネルに固定化した。3つの異なるチップが使用され、Aβについての固定化レベルは同程度であった(それぞれ、21605RU、22180RUおよび21929RU)。1RUはセンサーチップの表面マトリックスにおける約1pg/mm
2の分析物を表す。
【0394】
試験化合物をDMSOに溶解し、DMSOでさらに希釈して1000x濃度のストック溶液を得た。ストック溶液を、0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、3mM EDTAおよび0.005%の界面活性剤P20を含有するHBS−EP緩衝液で1:1000で希釈した。HBS−EP+0.1%(v/v)DMSOを、アッセイ実施緩衝液として使用した。試験溶液を、25℃で、10μl/分の流速で180秒間、0.1nMから300nMにまで及ぶ濃度でセンサーチップ上に注入した。様々な濃度を二連で試験した。
【0395】
エタノールアミンのコントロール用フローセルに注入された化合物によって生じるRUを参照応答とし、Aβ飽和のフローセルに注入された同じ化合物によって生じるRUから引いた。結合の定常状態で得られるそれぞれのRU(結合曲線のプラトー部)と、化合物のそれぞれの濃度との関係をプロットした。
【0396】
分析物注入が終わった後、HBS−EP緩衝液をチップに180秒間流して、結合した分析物を固定化Aβから解離させ、解離曲線を得た。解離期の後、再生溶液(1M NaCl、50mM NaOH)を注入し、チップに30秒間流して、残存する結合した分析物を固定化Aβから除いた。
【0397】
Biacore X100の制御ソフトウエア(Ver 1.1)を使用して、結合曲線を記録し、Biacore X100の評価ソフトウエア(Ver 1.1)を使用して、曲線を分析した(定常状態でのそれぞれのRUを分析物の濃度に対してプロットし、プロットをフィッティングし、K
D値を求めた)。固定化Aβに対する分析物の解離平衡定数K
Dを定常状態レベルから求めた。最大RU(R
max)を推定し、K
Dを、R
maxの1/2を生じさせた化合物の濃度として計算した。
【0398】
下記の表4は、本明細書中に記載されるような例示的な化合物について試験を繰り返すことを行うことによって得られたIC−50値を示す。
【0399】
実施例4
薬理学的パラメーター
本明細書中に開示されるような例示的なジペプチドアナログの水溶解度をpH7.4で試験した。得られたデータが下記の表5に示され、データは、試験化合物のすべてが、250μMを超える良好な溶解性を示したことを示している。
【0400】
本明細書中に開示されるような例示的なペプチドアナログを、腸管吸収を評価するために、ヒトPGPによりトランスフェクションされたMDCKII細胞において膜透過性について試験した。得られたデータが下記の表5に示され、表において、A−Bは頂端側から側底側への流束であり、AIは非対称性指数である。
【0401】
本明細書中に開示されるような例示的なペプチドアナログの代謝安定性をヒトおよびラットの肝臓ミクロソーム(それぞれ、HLMおよびRLM)において調べた。得られたデータが、30分後に残留している化合物の%として下記の表5に示される。ペプチドのすべてが十分に安定であることが見出された。
【0402】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0403】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。