特許第5911528号(P5911528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911528炭素クラスターの注入により半導体デバイスを製造するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911528
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】炭素クラスターの注入により半導体デバイスを製造するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20160414BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H01L21/265 F
   H01L27/08 321E
   H01L27/08 102B
   H01L21/265 W
   H01L21/322 J
   H01L29/78 301S
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-88858(P2014-88858)
(22)【出願日】2014年4月23日
(62)【分割の表示】特願2008-544499(P2008-544499)の分割
【原出願日】2006年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-160856(P2014-160856A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】60/748,797
(32)【優先日】2005年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508135253
【氏名又は名称】セムイクウィップ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】クリュル,ウェイド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスキー,トーマス・エヌ
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−190849(JP,A)
【文献】 特開平09−050970(JP,A)
【文献】 特表2005−531156(JP,A)
【文献】 特開平08−227863(JP,A)
【文献】 特開平10−125916(JP,A)
【文献】 特開平10−265944(JP,A)
【文献】 特開平08−301612(JP,A)
【文献】 特開平09−041138(JP,A)
【文献】 特表平04−504634(JP,A)
【文献】 特表2006−524427(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/095553(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0230986(US,A1)
【文献】 欧州特許第00717435(EP,B1)
【文献】 米国特許第5756391(US,A)
【文献】 米国特許第5212101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01L 21/322
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 21/8238
H01L 27/088
H01L 27/092
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタの接合特性を改善するための半導体基板へのイオンの注入方法であって、集積回路の製造において前記基板がホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素クラスターのイオンでドープされるときに、
(a)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子を提供する段階;
(b)炭化水素分子をイオン化してイオン化した分子を形成する段階;
(c)イオン化した分子を電界により前記半導体基板へ加速する段階;および
(d)続いて、ホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素クラスターのイオンのドーズ量を前記半導体基板へ注入する段階
を含む前記方法。
【請求項2】
トランジスタの接合特性を改善するための半導体基板へのイオンの注入方法であって、集積回路の製造において前記基板がホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素クラスターのイオンでドープされるときに、
(a)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子を提供する段階;
(b)炭化水素分子炭化水素分子からのイオン、および電子を含有するプラズマを形成する段階;
(c)前記イオンの一部を電界により加速して前記半導体基板に注入する段階;および
(d)続いて、ホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素クラスターのイオンのドーズ量を前記半導体基板へ注入する段階
を含む前記方法。
【請求項3】
基板を有する金属酸化物半導体(MOS)デバイスの形成方法であって、該方法が、
(a)前記基板の第1領域にウェルおよび対峙するトレンチアイソレーションを形成する段階;
(b)前記基板の暴露部分を定義する前記対峙するトレンチアイソレーションの間の前記基板上にゲートスタックを形成する段階;前記形成は、
i)ゲート誘電体を付着または成長させる段階;
ii)ポリシリコンゲート電極を付着させる段階、および
iii)パターニングしてゲートスタックを形成する段階
を含む;
(c)前記基板の前記暴露部分上および前記ゲートスタックの上面上にパッド酸化物を付着させる段階;
(d)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子からのイオンを注入して、意図するSDE領域の下に拡散抑制領域を形成する段階;
(e)続いて、Bまたはホウ素クラスターイオン、Bを注入して、前記ゲートスタックと前記対峙するトレンチアイソレーションの間にドレインエクステンションを形成する段階;
(f)前記ゲートスタックに隣接するスペーサーを形成する段階;
(g)ホウ素クラスターイオンを注入してソースおよびドレイン領域を形成する段階;
(h)熱処理を提供して前記ドーピング段階により注入した材料を活性化し、これによりP型金属酸化物半導体(MOS)デバイス(PMOS)を形成する段階、
を含む前記方法。
【請求項4】
基板を有する金属酸化物半導体(MOS)デバイスの形成方法であって、該方法が、
(a)前記基板の第1領域にウェルおよび対峙するトレンチアイソレーションを形成する段階;
(b)前記基板の暴露部分を定義する前記対峙するトレンチアイソレーションの間の前記基板上にゲートスタックを形成する段階;前記形成は、
i)ゲート誘電体を付着または成長させる段階;
ii)ポリシリコンゲート電極を付着させる段階、および
iii)パターニングしてゲートスタックを形成する段階
を含む;
(c)前記基板の前記暴露部分上および前記ゲートスタックの上面上にパッド酸化物を付着させる段階;
(d)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子からのイオンを注入して、意図するSDE領域の少し下に拡散抑制領域を形成する段階;
(e)続いて、Pまたはリンクラスターイオンを注入して、前記ゲートスタックと前記対峙するトレンチアイソレーションの間にドレインエクステンションを形成する段階;
(f)前記ゲートスタックに隣接するスペーサーを形成する段階;
(g)N型クラスターイオンを注入してソースおよびドレイン領域を形成する段階;
(h)熱処理を提供して前記ドーピング段階により注入した材料を活性化し、これによりN型金属酸化物半導体(MOS)デバイス(NMOS)を形成する段階、
を含む前記方法。
【請求項5】
基板を有する金属酸化物半導体(MOS)デバイスの形成方法であって、該方法が、
(a)前記基板の第1領域にウェルおよび対峙するトレンチアイソレーションを形成する段階;
(b)前記基板の暴露部分を定義する前記対峙するトレンチアイソレーションの間の前記基板上にゲートスタックを形成する段階;前記形成は、
i)ゲート誘電体を付着または成長させる段階;
ii)ポリシリコンゲート電極を付着させる段階、および
iii)パターニングしてゲートスタックを形成する段階
を含む;
(c)前記基板の前記暴露部分上および前記ゲートスタックの上面上にパッド酸化物を付着させる段階;
(d)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子からのイオンを注入して、ソースおよびドレイン領域中にSiC合金を形成する段階;
(e)Pまたはリンクラスターイオンを注入して、前記ゲートスタックと前記対峙するトレンチアイソレーションの間にドレインエクステンションを形成する段階;
(f)前記ゲートスタックに隣接するスペーサーを形成する段階;
(g)続いて、N型クラスターイオンを注入してソースおよびドレイン領域を形成する段階;
(h)熱処理を提供して前記ドーピング段階により注入した材料を活性化し、炭素をソースおよびドレイン中の格子構造中に組み込み、これによりN型金属酸化物半導体(MOS)デバイス(NMOS)を形成する段階、
を含む前記方法。
【請求項6】
トランジスタの接合特性を改善するための半導体基板へのイオンの注入方法であって、集積回路の製造において前記基板がホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素のドーパントイオンでドープされるときに、
(a)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子を提供する段階;
(b)炭化水素分子をイオン化してイオン化された分子を形成する段階;
(c)イオン化された分子を電界により前記半導体基板へ加速する段階;および
(d)続いて、ホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素のドーパントイオンのドーズ量を前記半導体基板へ注入する段階
を含む前記方法。
【請求項7】
トランジスタの接合特性を改善するための半導体基板をドープする方法であって、集積回路の製造において前記基板がホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素のドーパントイオンでドープされるときに、
(a)2,6−ジイソプロピルナフタレン(C1620)、n−オクタデン(C1838)、p−テルフェニル(C1814)、ビベンジル(C1414)、1−フェニルナフタレン(C1612)及びフルオランテン(C1610)からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素分子からのイオンを生成する段階;
(b)前記イオンを電界により前記半導体へ加速する段階;
(c)ホウ素、ヒ素、リン、又はホウ化水素のドーパントイオンを生成する段階;
(d)前記ドーパントイオンを前記半導体基板に注入する段階;
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書中で参考として援用する2005年12月9日提出の米国仮特許出
願第60/748797号に関連し、その利益を主張するものである。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、半導体製造の方法、より詳細には、集積回路中のPMOSトランジスタ構造
の製造において基板にホウ素、ヒ素およびリンをドープする場合に、ストレスエンジニア
リング(stress engineering)および拡散制御のために炭素含有クラスターを基板中に注入
して、トランジスタの接合特性を改善するための方法に関する。
【0003】
2.従来技術の説明
イオン注入プロセス
半導体デバイスの作製は、部分的に、イオン注入によりシリコン基板中にトランジスタ
構造を形成することを包含する。米国特許第5497006号でSferlazzo e
t.al.により開示されているように、イオン注入装置は、望ましいドーパント種を含
有するイオン流を作り出すイオン源、引出電極によりイオン源からイオンを引き出して加
速し、該イオン流を特定のエネルギーまたは速度を有するイオンビームにしてこれに集中
させるビームライン、イオンビーム中にはさまざまなイオン種が存在しうるので、関心の
あるイオンを選択するイオン濾過システム、ならびに、イオンビームを衝突させるシリコ
ン基板を格納するプロセスチャンバーを包含する;これに関し、イオンビームは特定の距
離で基板中に侵入する。トランジスタ構造は、基板表面上に直接形成されたマスクにイオ
ンビームを通すことにより作り出され、該マスクは、基板の離散した部分のみがイオンビ
ームに暴露されるように設計されている。ドーパントイオンがシリコン基板中に侵入する
と、基板の電気特性は局所的に改変され、電気キャリヤ、例えば、ホウ素またはインジウ
ムなどのp型ドーパントによる正孔およびリンまたはヒ素などのn型ドーパントによる電
子などの導入により、ソース、ドレインおよびゲート構造が作り出される。
【0004】
半導体の処理における最近の発展は、機械的応力を組み込んでトランジスタの性能を向
上させることである。この応力は、ケイ素以外の元素原子を格子構造に入れることにより
生じる。今日までにうまくいっているプロセスは、PMOSトランジスタのソースおよび
ドレイン領域中へのGe原子の組込である。Ge原子をシリコン基板中に入れると、Si
格子に適合した格子構造を有するSiGe合金が形成する。しかしながら、Ge原子はS
i原子より大きいので、SiGe合金の格子定数はより大きくなる。これは、入れるGe
の量により制御することができる。PMOSトランジスタのソースおよびドレイン領域に
この合金材料を形成することにより、その中のより大きな格子が圧縮応力下にチャネル領
域を配置し、これにより正孔の移動度が高まり、PMOSトランジスタの性能が向上する
。圧縮応力は電子の移動度にとって不利であり、NMOSトランジスタの性能を低下させ
るので、Ge原子を入れるのはPMOSトランジスタに対してのみ有効である。
【0005】
従来技術のイオン源
従来、Bernas型イオン源がイオン注入装置に用いられてきた。そのようなイオン
源は、ドーパントを含んだ供給ガス、例えばBF、AsHまたはPHなどをそれら
の原子またはモノマー構成要素に分解して、以下のイオンを大量にもたらすことが公知で
ある:B、AsおよびP。Bernas型イオン源はホットプラズマまたはアーク
放電源として知られ、典型的にはフィラメントがむきだしの陰極(naked filament cathod
e)または傍熱陰極のいずれかの電子エミッタが組み込まれている。このタイプのイオン源
は、磁界により限定されているプラズマを発生させる。最近、クラスター注入イオン源が
装置市場に導入されている。これらのイオン源は、“クラスター”、すなわち分子の形態
にあるドーパント原子の集塊、例えば、AS、P、またはB[式中、n
およびmは整数であり、2≦n≦18である]の形態のイオンを生じるように設計されて
いる点で、Bernas型源と異なっている。そのようなイオン化されたクラスターは、
それらのモノマー(n=1)対応物と比べ、シリコン基板のはるかに表面近くにより高い
ドーズ量で注入することができ、したがって、極浅p−nトランジスタ接合を例えば65
nm、45nmまたは32nm世代のトランジスタデバイスに形成するのに非常に興味深
い。これらのクラスター源は、イオン源に導入される供給ガスおよび蒸気の親分子を保持
する。これらのうちもっとも有効なものでは電子衝撃イオン化が用いられており、緻密な
プラズマは生じず、むしろ、従来のBernas源により生じるものより少なくとも10
0倍小さい低いイオン密度がもたらされる。例えば、クラスター注入法およびクラスター
イオン源は、本明細書中で参考として援用する米国特許第6452338号および米国特
許第6686595号においてHorsky et al.により記載されている。PM
OSデバイスの作成においてB18のイオン注入のための注入材料としてB18
22を使用することが、米国特許出願公開第US2004/0002202 A1号とし
て公開されている係属中の米国特許出願第10/251491号においてHorsky
et al.により開示されており、これを本明細書中で参考として援用する。
【0006】
背景:USJの課題
デバイス技術はすべての寸法においてスケール(scale)し続けているため、PMOSト
ランジスタの適切な形成に必要なp型の極浅接合すなわちUSJを形成することが次第に
難しくなってきている。PMOSトランジスタのもっとも厄介な特徴はソース/ドレイン
エクステンションすなわちSDEであり、これは、効果的であるためにはトランジスタに
おいてもっとも浅い接合でなければならないる。65nmノード技術(国際半導体技術ロ
ードマップすなわちITRSで定義されているとおりである)の場合、PMOSのSDE
は深さ約15〜25nmであることが必要であるが、45nm技術では8〜20nmのP
MOSのSDEの接合深さが必要である。接合深さを制御する主要な手段は二つある:(
1)ホウ素ドーパントの初期配置の制御、および(2)それに続く活性化中のそれらの移
動の制御。ドーパントは、インプラントアニールおよび活性化プロセス中のような高温を
経るとかならず移動する。ドーパントの初期配置は、ドーパントイオンのインプラントエ
ネルギーにより決定される。これまで、これらの手段の両方が、技術がより小さなゲート
長さにスケールするにつれてPMOSのSDEの垂直寸法をスケールするのに用いられて
きた。最近の世代においてPMOSのSDEの接合深さを低減する主要な手段は、活性化
段階中のアニーリング時間を短縮することによるものであり、これはドーパントの拡散を
低減し、それにより、より浅い接合の形成をもたらす。インプラントエネルギーも、ドー
パントの初期配置をより浅くする、すなわちシリコンのより表面近くにするために低減さ
れてきたが、インプラントビーム電流がより低いビームエネルギーに低減され、sub−
90nm形状のためのホウ素注入に必要なsub−keVのホウ素エネルギーでも実質的
に低減されるので、これはインプラント手段の生産性(ウエハ処理量)を著しく低下させ
、したがって接合深さを低減するための魅力的な手段ではない。
【0007】
拡散制御
拡散は、注入したホウ素を活性化する必要性の当然の結果である、すなわち、注入され
たウエハは、注入したホウ素がシリコン中で電気的に活性になるように高温でアニールし
なければならない。ホウ素を含有するシリコンを高温に暴露すると、ホウ素は高濃度の領
域からより低濃度の領域へかならず移動すなわち拡散する。このホウ素の移動は、非常に
浅い接合の形成にとって問題となる。アニールの開発における主な傾向は、正味の拡散を
管理するアニール時間の短縮である。最新のウエハ処理では、急速に高温(1000〜1
100℃)まで上昇させ再び降温する“スパイク”アニールが組み込まれている。この技
術は、拡散を低減してプロセスの解決に値する生産を提供するのに非常に効果的である。
しかしながら、sub−90nmノード技術の場合、より少ないホウ素の拡散が求められ
る;スパイクアニーリングシステムのランプ速度(ramp rate)限界(最高150℃/se
c)に達してしまっている。熱量を下げる次の段階において、この傾向は、“フラッシュ
アニーリング”またはレーザー熱処理のいずれかの“ミリ秒”技術を使用することになる
と思われる。これらの技術はともにまだ未完成であり、解決に値する生産を提供するのに
重要な課題に直面する。また、熱量はこれら超高速アニーリングのアプローチにより非常
に小さな値に低減するので、活性化プロセス自体が影響を受ける。例えば、より高いシー
ト抵抗が達成され、シート抵抗すなわちRsの空間的不均一性は、スパイクアニールによ
り達成される場合より高くなる。
【0008】
共注入
アニーリング時間の継続的短縮の代替案の一つは、ホウ素の拡散を妨害することが知ら
れ同じ熱量においてより浅い接合をもたらす可能性がある他の不純物の導入である。例え
ば、Fは、従来BF注入段階中に導入されており、ホウ素の拡散を低減することがで
きることが周知である。したがって、同じアニーリングプロセスを用いる場合、通常、B
インプラントにより形成される接合は、Bインプラントによる相当物より浅い。
しかしながら、Fはホウ素と同じ注入プロセスで、すなわち分子種BFの一部として導
入されるので、BFインプラントに起因する注入されたFの深さプロファイルは、B
の拡散の低減に関し最適化されていない;このことは、接合深さが低減されるほどBF
注入の魅力を低下させる。
【0009】
他の代替案は、同様に拡散を妨害することが知られる炭素の導入である。例えば、E.
J.Collart,S.B.Felch,H.Graoui,D.Kirkwood,
B.J.Pawlak,P.P.Absil,S.Sevri,T.Janssensお
よびW.Vandervorst,“Co−Implantation with Co
nventional Spike Anneal Solutions for 45
nm Ultra−Shallow Junction Formation”,Pro
ceedings of the Eight International Work
shop:Fabrication,Characterization and Mo
delling of Ultra−Shallow Doping Profiles
in Semiconductors,2005年6月,p.327;N.Cower
n,B.Colombeau,J.Graoui,およびM.Foad,“Comput
aional Modeling of Co−implanted Carbon f
or 65nm Node USJ Formation”,同書,p.300;S.R
izk,Y.M.HaddaraおよびA.Sibaja−Hernandez,“Mo
deling the Suppression of Boron Diffusio
n in Si/SiGe Due to Carbon Incorporation
”,同書,p.315;L.S.Robertson,R.Brindos,およびK.
S.Jones,“The effect of impurities and ac
tivation of ion implanted boron in silic
on”,Mat.Res.Soc.Symp.Vol.610,pp.B5.8.1−B
5.8.6(2000年);Mark E.Law,Michelle D.Grigl
ione,およびMisty Northridge,“Influence of C
arbon on the Diffusion of Interstitials
and Boron in Silicon”,同書,pp.B7.4.1−B7.4.
5;E.J.H.Collart et al.,“Co−implantation
with conventional spike anneal solutions
for 45nm ultra−shallow junction formati
on”,Internal Conference on Ultra−Shallow
Junctions,USJ2005年6月5〜8日,フロリダ州,米国(2005年
);P.A.Stolk,H.−J.Gossmann,D.J.Eaglesham,
D.J.Jacobson,H.S.Luftman,およびJ.M.Poate,“U
nderstanding and controlling transient e
nhanced dopant diffusion in silicon”,Mat
.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.354,pp.307−318(19
95年);M.Ueda,H.Reuther,R.Gunzel,A.F.Belot
o,E.Abramof,およびL.A.Berni,“High dose nitr
ogen and carbon shallow implantaion in S
i by plasma immersion ion implantaion”,N
uclear Instruments and Methods in Physic
s Research B175−177(2001年)pp.715−720;Joe
rg K.N.Lindner,“Ion beam synthesis of bu
ried SiC layers in silicon:Basic physica
l processes”,Nuclear Instruments and Met
hods in Physics Research B 178(2001年)pp.
44−54;J.K.N.Lindner,W.Reiber and B.Strit
zker,“Mechanisms of SiC Formation in the
Ion Beam Synthesis of 3C−SiC Layers in
Silicon”,Materials Science Forum Vols.26
4−268(1998年)pp.215−218;M.Ueda et al.,“Hi
gh dose nitrogen and carbon shallow impl
antation in Si by plasma immersion ion i
mplantation”,Nuclear Instruments and Met
hods in Physics Research B 175−177(2001年
)pp.715−720;Kah−Wee Ang et al.,“Thin bod
y silicon−on−insulator N−MOSFET with sil
icon−carbon source/drain regions for per
formance enhancement”,IEDM Workshop,Wash
ington,D.C.,2005年12月;Masahiro Deguchi,Ak
ihisa Yoshida,およびMasatoshi Kitagawa,“B−S
iC formation by low−energy ion−doping te
chnique”,Japanese Journal of Applied Phy
sics Vol.29,No.8,1990年8月,pp.L1493−L1496参
照。これらすべてを本明細書中で参考として援用する。
【0010】
ストレスエンジニアリングおよびキャリヤ移動度の向上
シリコンの処理におけるより新しい傾向の一つはストレスエンジニアリングとよばれ、
これにより、格子不整合に起因する機械的応力下に活性構造を意図的に置く構造が作り出
される。そのような試みの主要目的は、MOSトランジスタのチャネル領域を応力下に置
いてキャリヤ移動度を高めることである。PMOSトランジスタでは圧縮応力が有利に働
き、NMOSトランジスタでは引張応力が有利に働く。圧縮応力を作り出すための主要プ
ロセスは、Geをシリコンの格子中に組み込み、SiGe合金を形成することである。G
eはケイ素より大きな原子であり、Geを組み込むと格子が余儀なく膨張し、これにより
隣接領域が応力下に配置されるので、Geはこの役割に有用である。この概念をもっとも
一般的に使用しているのはIntel 90nm技術である。この技術において、PMO
Sのソース/ドレイン領域はエピタキシャル成長させたSiGe合金構造であり、該合金
構造によりチャネル領域が圧縮応力中に配置され、これによりPMOSトランジスタおよ
び回路全体の性能が向上する。
【0011】
sub−65nmのロジックおよびメモリアプリケーションに関するストレスエンジニ
アリング
65nm技術ノードでは、適切なトランジスタ構造を得るためにSDEの接合深さをさ
らに低減することが必要である。このノードで開始すると、PMOSのSDEはプロセス
制御および予想生産性の両方から非常に課題の多いものになる。ホウ素インプラントのエ
ネルギーを500eV以下のホウ素エネルギーに低減しなければならず、この場合生産性
は著しく低下する。また、アニーリング要件は、高度な低熱量スパイクアニールを必要と
するような要件であり、さらに新しい他のアニーリング技術を検討しなければならない。
これらのプロセスは目的の達成が難しいため、他のプロセスを検討しなければならない。
ストレスエンジニアリングを導入してより高性能のトランジスタを生産すると、速度およ
び駆動電力を高めるためにゲート長さを低減する当面の必要性を軽減することができる。
その概念は、活性チャネルが恒久的に応力下にあるトランジスタを生産すると、より高性
能のトランジスタの形成が可能になるというものである。この進歩のメカニズムは、応力
によりキャリヤ移動度が改変され、これによりトランジスタの駆動電力ひいては回路の速
度が直接改善されるというものである。NMOSトランジスタの性能は引張応力に伴い改
善される一方、PMOSトランジスタの性能は圧縮応力に伴い改善されるので、必要なス
トレスエンジニアリングは単純ではない。例えば、Intelは、PMOSチャネルを圧
縮応力下に配置し、それによりPMOSの性能を改善するSiGeソース/ドレイン技術
を導入し、NMOSトランジスタを引張応力中に配置してNMOSの性能を向上させる選
択的窒化ケイ素上層を使用することにより、90nmノードでストレスエンジニアリング
を統合している。これらのストレスエンジニアリング技術を組み合わせると、回路全体に
著しい性能向上がもたらされる。識者の中には、これらのプロセスに対抗するためには、
65nmノードで開始するすべての高性能製品にストレスエンジニアリングが必要になる
と考える者もいる。
【0012】
いわゆる無拡散アニール
アニーリング時間短縮の利点を最大限にするための最新の傾向は、アニーリングプロセ
スの時間(熱量)を継続的に削減し、これによりホウ素の拡散を低減することである。ド
ーパント原子の高い活性化を達成するために、ピーク温度は高いまま(典型的には100
0℃より高温)にする。最新の生産プロセスでは、温度まで昇温し、最高温度でゼロ時間
の後、もとの室温まで降温することを包含する“スパイクアニール”が使用されている。
典型的なランプ速度の値は100℃/s〜1000℃/sであり、昇温速度は加熱技術の
選択により決定される。冷却速度は一般に、能動的冷却を採用しない限り400℃/s未
満に制限される。ランプ速度を上昇させ、それにより高温における合計時間を削減する新
規システムが絶え間なく開発されている。
【0013】
現在開発中のこのアプローチの制限は、一般に“無拡散アニール”とよばれている。そ
のようなプロセスに選択肢を提供しうる開発中の技術が二つある:“フラッシュ”アニー
ルおよび“レーザー熱アニール”。これらの技術はともに、活性化が適切(ピーク温度は
典型的には1300℃)でホウ素の拡散が非常に少ないアニールプロセスを提供する可能
性を有する。これらの技術は、シリコンが活性化に必要な高温を1ミリ秒以下しか経ない
ので、“ミリ秒アニール”ともよばれる。この代替プロセスは非常に興味深いが、そのよ
うなプロセスに必要な技術は現在生産中のアニーリング技術とは根本的に異なる。これら
の手段は新しく、大規模生産の要件をまだ満たしていない。無拡散アニールが近い将来に
堅調な製造の解決策を提供するか否かは不確実である。
【0014】
炭素注入(ゲッタリング注入)
炭素注入は、かねて欠陥または汚染物をゲッタリングする方法として用いられてきた。
例えば、Stolk et alおよびUeda et alの上記参考文献参照。欠陥
はシリコン中のBおよびPの拡散を一時的に増大させることが示されているので、格子間
欠陥の捕捉は拡散を制限するための方法の候補であると考えられてきた。従来のプロセス
では、COまたはCOガス源のいずれかが従来のプラズマイオン源に用いられている。
のビームを発生させ、注入を工業的イオン注入システムで実施することができる。C
またはCOガスを使用すると、従来のプラズマ源の有効寿命は短くなる。これは、酸
化作用および該源に見いだされる絶縁体の炭素トラッキングが原因である。
【0015】
炭素インプラントの従来の施用の一つは、高エネルギー(MeV)の炭素をシリコン中
に深く、トランジスタ構造から離して注入することにより、金属不純物のゲッタリングを
提供することである。シリコン中では、存在するあらゆる金属原子が、おもに漏れを増大
させることにより活性構造の電気性能を低下させる可能性がある。活性デバイス領域から
金属不純物を除去する方法は数多く研究されている。用いられているアプローチの一つは
、活性デバイスから離してシリコン中に炭素を注入することである。シリコン中の炭素は
不純物トラップとして働くので、炭素と相互作用する金属原子はすべて高温を経てもその
位置にそのまま残る。このメカニズムはゲッタリングとよばれ、炭素インプラントはゲッ
タリングの選択肢の一つである。
【0016】
発明の概要
簡潔に述べると、本発明は、集積回路中のPMOSトランジスタ構造の製造において基
板にホウ素、ヒ素およびリンをドープする場合に、炭素クラスターを基板中に注入してト
ランジスタの接合特性を改善することを包含するプロセスに関する。この新規アプローチ
に由来するプロセスは二つある:(1)USJ形成のための拡散制御;および(2)スト
レスエンジニアリングのための高ドーズ量炭素注入。USJ形成のための拡散制御を、P
MOS中のソース/ドレイン構造のホウ素または浅いホウ素クラスターインプラントと併
せて説明する。より詳細には、C16のようなクラスター炭素イオンを、これに続
くホウ素インプラントとほぼ同じドーズ量でソース/ドレイン領域中に注入し;その後、
好ましくはB18またはB10のようなホウ化水素クラスターを用いて浅い
ホウ素インプラントを行って、ソース/ドレインエクステンションを形成する。これに続
くアニーリングおよび活性化において、炭素原子による格子間欠陥のゲッタリングにより
ホウ素の拡散は低減する。Stolk et al.およびRobertson et
alの上記参考文献では、一時的に増大したホウ素の拡散はシリコン格子中の格子間欠陥
によりもたらされると主張されている。
【0017】
本発明に従った方法には、経済的価値の大きな第2の利点がある:すなわち、炭素クラ
スターインプラントとそれに続くホウ素クラスターインプラントによるシリコンの非晶質
化である。とりわけ、大きなホウ素クラスターを注入すると結晶質シリコンの格子が非晶
質化して、イオンチャネリングが大幅に低下することが、当分野で公知である。チャネリ
ングはドーパントの接合深さを著しく増大させ、それによりUSJ形成が難しくなること
が知られている。チャネリングは、典型的には、最初に例えばGe原子により損傷イン
プラント(damage implant)を実施してシリコンを非晶質化した後、ホウ素注入によりPM
OSのソース/ドレインエクステンションを形成することにより制御する。Geインプ
ラントは実施費用が高いほか、その範囲の末端(end-of-range)に欠陥を作り出して、US
Jトランジスタにおける漏れ電流をある特定の場合には甚だしく増大させることも示され
ている。したがって、従来のホウ素インプラントをB18のようなホウ素クラスタ
ーにより置き換えると、多くの場合Geインプラントの必要性がなくなり、漏れと関連す
る欠陥構造が発生しなくなる。このことは、プロセスの流れから高価なインプラントが取
り除かれ、収量が増大し、集積回路における漏れ電流が減少するので、経済的価値が大き
い。残念ながら、非晶質化の臨界ドーズ量に達する前にホウ素クラスターインプラントの
一部分は実施されてしまっており、チャネリングテールの一因となっているので、ホウ素
クラスターインプラントによりチャネリングを完全に排除することはできない。例えば、
18イオンを注入してソース/ドレインエクステンションを形成することによる
チャネリングの80%削減が示されているが、もっとも浅い接合を達成するためには損傷
インプラントがなお必要である。しかしながら、本発明に従ったプロセスに従って、炭素
クラスターを注入した後ホウ素クラスターまたはモノマーホウ素のいずれかのインプラン
トを行う場合、シリコンは炭素インプラントにより十分に非晶質化しているのでチャネリ
ングを完全に排除することができる。
【0018】
最後に、熱的に推進されるホウ素拡散を適切な炭素の共注入により最低限に抑えること
ができる場合、無拡散アニールに対する必要性を回避することができる。例えば、図3
7は、標準的で商業的に実現可能なスパイクアニールがUSJ構造を形成するのに適して
いる可能性があることを示唆している。このことは、次世代の実験的な(exotic)アニール
技術を必要としないので、チップ作成産業にとって大きな経済的利益になる。
【0019】
したがって、本方法の利点は以下のとおりである:
・PMOSのUSJ形成に先立ちシリコンが非晶質化する;
・後に続くホウ素またはホウ素クラスターインプラントにおいてチャネリングテールが排
除されて、注入された状態でのプロファイルがもっとも浅くなる;
・アニーリング段階中のホウ素拡散が劇的に低減する;
・予備非晶質化インプラント、すなわち損傷インプラントが排除される;
・アニーリングプロセスにおける熱量要件が緩和されて、スパイクアニールでのUSJ形
成が可能になる。
【0020】
これに加えて、非常に浅い炭素インプラントが必要な場合、本発明に従ったプロセスに
より炭素クラスターを用いると、モノマー炭素インプラントを実施する場合と比較して実
効ドーズ率(および、したがってウエハ処理量)が上昇し、モノマーホウ素をホウ素クラ
スターで置き換えることにより達成される処理量と同様の上昇が提供される。
【0021】
リンの拡散制御
これまでの論考は、PMOSトランジスタの形成に炭素を使用してホウ素インプラント
の拡散を抑制することに焦点を当てていた。同様に、同論考は、リンをドーパント原子と
して用いる場合、NMOSトランジスタの形成に当てはまる。従来、NMOSのSDE構
造を形成するためにはヒ素インプラントが用いられており、ヒ素はシリコン中でゆるやか
な拡散を示すので、適切な構造を形成するための追加的手段は不要である。しかしながら
、先端技術のSDEにヒ素を使用することを妨げうる問題がある。これらの場合、リンが
実行可能な代替物になる可能性があるが、リンはシリコン中で迅速な拡散を示すので、炭
素による拡散抑制が興味深いプロセスになる。炭素がリンのインプラントでの拡散制御に
有用であることを示す結果の例は、A.Vanderpool,A.Budrevich
およびM.Taylor,“Control of Phosphorus Trans
ient Enhanced Diffusion using Co−Implant
ation,Proceedings of the 16th Internatio
nal Conference on Ion Implantation Techn
ology,2006年6月,p41である。
【0022】
炭素および/またはホウ素のイオン化クラスターの使用では、例えば本明細書中で参考
として援用する米国特許第6686595号に開示されているような新規のイオン源が必
要になる。蒸気、好ましくは炭化水素の蒸気をイオン源に導入する。該イオン源は、分子
を解離させることなくイオン化する。その後、引出システムによりイオン化炭素分子のイ
オンビームが引き出された後、これが従来のイオン注入装置のビームラインに運ばれて、
シリコンウエハに打ち込まれる。例えば’595特許に開示されているようなSemEq
uipにより開発されたClusterIon(登録商標)イオン源を、Cluster
Boron(登録商標)分子、例えばB1822の注入に用いることができる。
【0023】
現在、同技術が大きな炭化水素供給材料で有効であることが実証されている。例えば、
以下の炭化水素を場合によっては用いることができる:
・2,6ジイソプロピルナフタレン(C1620
・N−オクタデン(N-octadene)(C1838
・P−テルフェニル(C1814
・ビベンジル(C1414
・1−フェニルナフタレン(C1612
・フルオランテン(C1610
フルオランテンは、本開示に包含されるデータの多くを得るのに用いた材料である。一
般に、形態CnHy[式中、n≧4およびy≧0]の化学式を有するあらゆる炭化水素が
、上記特徴および利点を提供する。これは、すなわち、シリコン中への炭素の実効ドーズ
率が上昇することと、さまざまな程度の非晶質化が提供されることであり、すべての場合
においてモノマー炭素インプラントより有利である。
【0024】
1610は、上記係属中の米国特許出願第10/251491号に開示されている
ように、新規イオン源に適切でB1822の気化温度と同様である100℃の温度で気
化する。非常に低いエネルギー(炭素原子1個あたり約1keV)において、0.5mA
のビーム電流がウエハ上で8mAの炭素の等価物を可能にした。ClusterIon(
登録商標)源を用いると、>1mAのビーム電流が容易に実現される。
【0025】
モノマー炭素注入対クラスター炭素注入
1970年代中頃に開始した半導体製造のための商業的イオン注入システムの導入以来
、炭素注入は実質的に利用可能であった。利用可能な注入技術では、用いる供給材料にか
かわらず、1回に原子1個のインプラントが実施される。これは、従来のイオン源技術で
は材料をイオン化するのに強いプラズマが用いられ、該プラズマが分子をその構成原子に
分解するため起こる。ほとんどの用途でこれは当てはまる。従来技術に伴う問題は、浅い
インプラントを提供するためにイオンのエネルギーが低くなければならない場合(例えば
1または2keV)、単一原子による注入は非常に非効率的になるという点である。従来
のシステムは低い引出エネルギーにおいて高い電流を生じることができないので、注入プ
ロセスは非常に生産性が低い。これは低エネルギーのホウ素注入でまさしく問題であり、
物理的現象は低エネルギーの炭素インプラントに関しても同様である。本明細書中に記載
する発明により、低エネルギーでの炭素クラスターの注入が非常に高い生産性で可能にな
る。個々の原子の代わりに炭素含有分子を注入することにより、低エネルギー注入の物理
的現象は著しく改変される。分子は各炭素原子についてプロセスエネルギーを必要とし、
これにより引出システムが効率的に機能して高いビーム電流を作り出すことが可能になる
ので、引出エネルギーははるかに高い。
【0026】
クラスターでのプラズマドーピング
半導体のドーピングのためのビームラインイオン注入に対する他のアプローチは、いわ
ゆる“プラズマイマージョン”である。この技術は、半導体産業においていくつかの他の
名称、例えばPLAD(プラズマドーピング(PLAsma Doping))、PPLAD(パルス化
プラズマドーピング(Pulsed PLAsma Doping))、およびPI(プラズマイマージョンイ
オン注入(Plasma Immersion Ion Implantation))で知られている。プラズマドーピング
は当分野で周知である。例えば、A.RenauおよびJ.T.Scheuer,“Co
mparison of Plasma Doping and Beamline T
echnologies for Low energy Ion Implantai
on”,IEEE Proceedings of the 2002 14th In
ternational Conference on Ion Implantati
on Technology,Taos,NM,USA,2002年9月22〜27日,
pp.151−156;R.B.Liebert,S.R.Walther,S.B.F
elch,Z.Fang,B.Pedersen,D.Hacker,“Plasma
Doping System for 200mm and 300mm Wafers
”,Proceedings,13th Int.Conf.Ion Implant.
Tech.,IEEE,2000年,pp.472−475,ならびに米国特許第53
54381号;第5558718号;および第6207005号参照。これらすべてを本
明細書中で参考として援用する。
【0027】
これらの技術を用いるドーピングでは、排気した後、三フッ化ホウ素、ジボラン、アル
シンまたはホスフィンなど一般に好まれるドーパントを含有するガスを再充填した大きな
真空容器中で、プラズマを打ち込むことが必要である。自明のこととして、プラズマはそ
の中に陽イオン、陰イオンおよび電子を有する。その後、標的に負のバイアスをかけ、こ
れによりプラズマ中の陽イオンを標的まで加速させる。イオンのエネルギーは式U=QV
[式中、Uはイオンの運動エネルギー、Qはイオンの電荷、Vはウエハのバイアスである
]により表される。この技術には質量分析がない。プラズマ中のすべての陽イオンが加速
され、ウエハ中に注入される。したがって、極めて清浄なプラズマを発生させなければな
らない。このドーピング技術では、B1822のようなホウ素クラスターまたは形態A
およびP(式中、nは整数であり、x≧0である)のヒ素もしくはリンの
クラスターの蒸気を容器内に導入し、プラズマ点火した後、ウエハに負のバイアスをかけ
ることができる。バイアスは、時間に対し一定であるか、経時変化するか、パルス化され
ていることができる。ドーパント原子と水素の比率(例えば、B1822対B
よび例えばAs対AsHを使用)は単なる水素化物より水素化物クラスターの方
が大きく、ドーズ率もクラスターを用いる場合はるかに高くなる可能性があるので、これ
らのクラスターを用いると有利である。
【0028】
プラズマドーピングは炭素クラスターインプラントにも用いることができる。より詳細
には、As、BまたはPを用いる伝導性インプラントを実施する前に、形態Cの炭
素クラスターを用いてプラズマドーピングシステム中のシリコンウエハをドープし予備非
晶質化することに関し、類似の議論を行うことができる。プラズマドーピングシステムで
は、容器内の蒸気圧、温度、バイアス電圧のバイアシングの大きさおよびデューティサイ
クル、ならびに標的上のイオン到達率の間の関係を知ることにより、ドーズ量をパラメー
ター的に制御することができる。標的上の電流を直接測定することも可能である。ビーム
ライン注入と同様に、C16イオンを用いると、例えばCHイオンの場合に比
べ、ドーズ率が16倍上昇し、必要な加速電圧が18倍高くなる。
【0029】
注入深さの重要性
接合要件が浅くなるにつれ、ホウ素インプラントエネルギーを小さくしなければならな
い。同様に、効果的に拡散を低減するのに要する炭素インプラントエネルギーも小さくし
なければならない。炭素のクラスターまたは分子を使用すると、先端技術に必要な非常に
低いエネルギーでの非常に高い生産性が可能になる。炭素インプラントプロセスをより低
いエネルギーに至らせる他の重要な懸念は、漏れ電流の制御である。接合領域における高
濃度の炭素は、少ない漏れでの動作を危うくすることが知られている。ほとんどの活性接
合はソース/ドレインエクステンションの接合より深いので、より高いエネルギーの炭素
は、まさにもっとも漏れリスクの高い領域に配置される。この問題を処理するアプローチ
の一つは、炭素クラスターをできるだけ浅く維持し、ドーズ量を最小限に抑えることであ
る。このようにして、接合漏れ電流のあらゆる増大を最低限に抑える。
【0030】
予備非晶質化
拡散制御にクラスターでの炭素注入を用いることを後押しするさらに他の利点は、予備
非晶質化である。ホウ素インプラントのプロファイルをできるだけ浅くするためには、イ
オンチャネリングを回避しなければならない。トランジスタ形成の幾何学はインプラント
を法線入射で実施することを必要とするので、傾斜インプラントを用いてイオンチャネリ
ングを防ぐことはできない。従来のアプローチは、ホウ素インプラントを実施する前に他
のインプラントを用いてシリコンの格子構造を破壊するものであり、これは一般に“PA
I”すなわち予備非晶質化インプラントとよばれる。インプラントは一般にGe+イオン
を用いて実施される。これは、それらが高い質量を有し(そして、それにより比較的低い
ドーズ量で非晶質シリコン層を作り出す)、Geはデバイスの電気的性質に大きな影響を
及ぼすことなくシリコン中に組み込まれるためである。しかしながら、Geインプラント
は難しく高価であり、接合漏れを作り出すリスクのある他の損傷ネットワーク(damage ne
twork)を作り出す。提案した技術において、炭素クラスターインプラントは、クラスター
の質量が大きいためPAIの利点を提供する。最大の効果を得るためには炭素インプラン
トをホウ素インプラントの前に実施しなければならず、その結果クラスターの使用はPA
Iの機能も果たす。注入したホウ素の深さプロファイルの著しい低減は、本発明の重要な
観点に従ったこの炭素クラスターの使用によりもたらされる。
【0031】
プロセスの流れ
拡散制御においてもっとも効果的であるためには、炭素インプラントをホウ素インプラ
ントの前に実施しなければならないことを示す情報が文献中にある。これは、炭素インプ
ラントを、ゲートスタックの形成およびパターニングの後、ホウ素SDEインプラントの
前に行うことを意味する。必要なマスキング操作はホウ素インプラントと同一なので、追
加的または改変されたリソグラフィーは必要ない。実際、炭素クラスターおよびホウ素ま
たはClusterBoronのインプラントは、ウエハをイオン注入装置から取り出す
ことなく連鎖的に実施することができる;これはバッチ式手段の重要な経済的利点である
【0032】
ストレスエンジニアリング
上記参考文献Ang,et alで議論されているように、シリコン中のトランジスタ
のソース/ドレイン領域中に組み込まれる炭素はSi材料を形成することができ、
該材料は、純粋なシリコンに格子不整合をもたらし、したがって、トランジスタチャネル
に機械的に応力を加え、キャリヤ移動度を増大させることが示されている。Si
料はシリコンより小さな格子を有するので、この材料は、NMOSトランジスタの移動度
を改善するのに有用な引張応力をチャネルに作り出す。したがって、本発明の重要な観点
に従って、NMOSトランジスタのソース/ドレイン領域中でシリコンをSiに選
択的に転化する手段として、例えばC1610での炭素クラスター注入を用いて高ド
ーズ量インパクトを実施する。所定のイオン電流においてC1610のようなクラスタ
ーを使用すると炭素のドーズ量が16倍になり、高ドーズ量での極浅インプラントが可能
になる。
【0033】
注入によりSi材料を形成するさらなる利点は、注入装置によりもたらされる制
御である。イオン注入は一般に、装置の精度および制御が他の形態の半導体処理装置の能
力を大きく上回るため、半導体製造において有効なプロセスである。詳細には、提案した
用途に関し、炭素濃度の綿密なプロファイルをインプラントのエネルギーおよびドーズ量
の制御により詳細に管理することができる。実際、インプラント段階の手順をさまざまな
ドーズ量およびエネルギーと共に予見して、炭素プロファイルを任意の望ましいプロファ
イルの輪郭に合わせることができる。どのような詳細なプロセスがもっとも有利な結果を
もたらすか明らかでないため、イオン注入により利用可能な炭素プロファイルの制御によ
り、最終的なトランジスタの性質の詳細な最適化が可能になる。
【0034】
ストレスエンジニアリングで炭素を組み込むために炭素のクラスターを用いることの他
の利点は、クラスター注入の自己非晶質化(self-amorphization)の特徴に関する。適切な
応力を発生させるために、包含される炭素はSiC格子構造との置換部位を占有しなけれ
ばならない。置換部位における包含の程度は、炭素を組み込む手段と材料の暴露温度の両
方に依存する。従来の炭素組込手段は、エピタキシャルかモノマーインプラントかに関わ
らず、炭素を結晶質構造に加えることを包含するが、クラスター炭素インプラントは自己
非晶質化層を提供する。クラスター炭素インプラントにより形成した非晶質層は再結晶化
しなければならないが、これはドーパントインプラントのアニーリングにより自動的に達
成される。しかしながら、再結晶化プロセスは置換部位中への炭素の組込を促進する。そ
のようなプロセスは、再結晶化プロセスで周知である置換部位中へのドーパント原子の組
込と同様である。
【0035】
ストレスエンジニアリングを施したSiC格子をCMOSのプロセスの流れに組み込む
方法
ストレスエンジニアリングを施したデバイスを作り出すために、本発明は、ホウ素また
はホウ素クラスターのS/DインプラントまたはSDEインプラント)を実施する前に、
P型の深いソース/ドレイン領域中へのかなり深い炭素インプラントを、例えば炭素1個
あたり約10keV、1E15/cm〜5E15/cmという高ドーズ量で実施する
ことを含む。これは、モノマー炭素インプラントまたはクラスター炭素インプラントのい
ずれかであることができる。好ましい態様はクラスター炭素インプラントを含む。炭素ク
ラスターがポリシリコンゲート構造中に注入されるのを回避するために、ゲートポリ(gat
e poly)上面上に窒化物キャップを付着させてもよい。炭素をP型ソース/ドレイン(S
/D)領域中に注入した後、低温アニールを用いると、Si格子の置換部位を炭素に占有
させることができる。約600℃〜900℃のスパイクアニール、例えば5 sec R
TA処理で、所望の結果が得られる可能性がある。約80kVの引出においてC
注入を用いた10keV実効Cインプラントの後、700℃、900℃および1100℃
RTAアニールを用いて、裸のSiウエハ上でわれわれが得たデータを、図10に示す
。最低温度でのアニールが最良の結果、すなわち歪みの最高値をもたらした。このアニー
ルの後、図12〜17に要点をまとめたCMOS構造を実施して、ストレスエンジニアリ
ングを施した完成デバイスを作成することができる。窒化物キャップまたは他のマスクバ
リヤを炭素注入に先立ちポリゲート上に付着させた場合、バリヤを除去してからS/D構
造に注入する。
【0036】
あるいは、オン(on)は、図11に示すように単に炭素を注入し、S/Dインプラントが
実施されるまでアニーリング段階を見送ることができる。より高いアニール温度では応力
の損失がいくらかあると考えられるが、今のところ、どのようなアニール手順が最高の移
動度のデバイスをもたらすかわかっていない。
【0037】
詳細な説明
本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳述および添付図面を参照して容易に理解さ
れるであろう。
【0038】
図1は、イオン注入システムにより生じたB1822の質量スペクトルを示している
。例えば上記ClusterIon(登録商標)源を用いて、20kVで引き出され、分
析器の磁石により運ばれるイオンを発生させる。磁石が存在する分解開口部は、M/ΔM
=15の適度な質量分解能をもたらした;ビームを分解開口部の両端間で走査し、イオン
電流を分解開口部に通し、該源から約2メートル離して設置したファラデー(Faraday)に
より測定する。210amuにおける親ピークはB18で構成されている;おそら
く10<x<22である一連の保持されているH原子(retained H atom)が存在し、これ
がピークをブロードにしている。プロットのy軸はビーム電流に18を乗じたものである
ので(単位電荷につき18個のホウ素原子が存在するため)、ファラデー電流は質量21
0において約400uAであった。ホウ素の実効インプラントエネルギーは約20kV/
20(ホウ素の平均自然存在比質量(average natural abundance boron mass)は10.8
amuであり、イオン質量は約210amuであるため)=クラスター中のホウ素原子1
個あたり1keVである。図2は、イオン注入システムにより生じたフルオランテン、す
なわちC1610の質量スペクトルを示している。親ピークC16は211am
uにあり、ファラデー電流は引出電圧17kVにおいて約500uAであった。したがっ
て、炭素原子1個あたりの実効インプラントエネルギーは約1eVであり、炭素の実効電
流は約8mAであった。図2のCおよび図1のBの質量、実効電流、および注入エネルギ
ーがほぼ同じであることに留意されたい。図2のスペクトルは、イオン源、例えばClu
sterIon源の100℃に維持した気化器中に固体フルオランテンを置くことにより
発生させた。該源は、イオン注入装置、例えばEaton NV−100 GSD注入装
置に取り付けられていた。バッチ形式の回転盤上でウエハに注入して、図3〜7のデータ
を得た。
【0039】
当分野で公知のように、イオン注入装置の一部を形成するイオン源は、標的基板中に注
入するためのイオン化した原子または分子を製造するために用いられる。上記したものの
ようなイオン注入装置は、関心のあるイオン化分子を選択し、それらの分子を電界により
標的へ加速する。
【0040】
図3は、6kV(ホウ素1個あたり300eVの実効インプラントエネルギーをもたら
す)で引き出したB18によりシリコン中に注入したホウ素の二次イオン質量分析
法(SIMS)での深さプロファイルおよび活性化プロファイルに対するC16
注入の効果を示している。B18のドーズ量5.6E13、すなわちホウ素の実効
ドーズ量(注入されたB18とよぶ)1E15の注入された状態でのプロファイルを、A
xcelis Summit高速熱アニーリングシステム(AxcelisのRapid
Thermal Annealingシステムの説明については、例えばwww.ax
celis.com/products/summitXT.html参照)で5秒間に
わたり950℃でアニールした。アニール後のホウ素プロファイルを(B18)とよぶ。
実効接合深さは、アニール中にホウ素の拡散が一時的に増大するため、約10nmから約
25nmまで拡散した(接合深さの基準点として5E18cm−2のドーパント濃度を使
用)。他のウエハは、炭素クラスターC16を用いて1keV、2keV、3ke
V、4keVまたは5keVのいずれかの実効炭素ドーズ量の1E15ドーズ量で最初に
注入し、このプロセスでアニールした。(B18+1keV C)および(B18+5k
eV C)に関するアニールしたホウ素のSIMSプロファイルを図3に示す。これらの
接合深さははるかに浅く、炭素インプラントがホウ素拡散を順調に制限したことを示して
いる。これらのプロファイルの形状はまた、まったく異なっている。約15nmのもっと
も浅い(炭素がない場合の25nmの接合深さと比較して)アニールされた接合は(B1
8+1keV C)により得られたが、非常に急激で箱のような接合はプロセス(B18
+5keV C)により約18nmの接合深さで得られた。
【0041】
図4は、それぞれ約17kV、34kV、51kV、68kVおよび85kVの引出電
圧でC16を用い1keV、2keV、3keV、4keVおよび5keVの実効
注入エネルギーで注入された炭素のSIMSプロファイルを示している。注入深さは、実
効インプラントエネルギーでモノマーC注入を用いて得られるものに十分対応している
【0042】
図5は、1keV炭素インプラント後の300eVホウ素インプラントの注入された状
態およびアニール後の両方のSIMSプロファイルを示している。炭素プロファイル(ア
ニールの前後)も示しており、これは、ホウ素とは異なり、炭素がアニール中に拡散また
は濃度変化を起こさないことを示している。注入された状態およびアニール後のホウ素プ
ロファイルは、図5の注入されたホウ素のプロファイルがチャネリング効果を伴わないこ
とを示している点を除き、図3に示したものと同様である。これは、8E17cm−2
満の濃度で長く深いテール部を示している図3の注入されたホウ素のプロファイルと比較
すると明らかである。したがって、この効果は、図5のデータでは最初に実施されたが図
3のホウ素クラスターのインプラントの前には実施されていない炭素クラスターの注入に
のみ起因する。したがって、炭素クラスターインプラントは二つの重要な利点を提供する
:(1)シリコンを予備非晶質化して、これに続くホウ素インプラントのチャネリングを
低減または排除すること、および(2)アニール中の拡散制御。これら二つの利点は、ホ
ウ素インプラントがクラスターを用いず、モノマーBでも機能する場合であってももたら
される。
【0043】
図6は、さまざまな炭素+ホウ素インプラント条件でのアニール後の接合深さを示して
いる。予想どおり、300eVでのホウ素接合は500evでの接合より浅い。もっとも
浅い接合は、約2keVの炭素インプラントエネルギーの場合である。炭素に起因する漏
れの発生リスクは、浅い(S/Dエクステンション領域)接合の方がより深い(深いS/
D領域)接合においてより低下する可能性があるので、炭素をより深くではなくより浅く
注入することは有利である。理想的には、漏れを最小限に抑えるために、炭素をもっとも
浅いホウ素インプラントと同じ程度にすることが望ましい。炭素のクラスターを使用する
と、もっとも低い注入エネルギーにおいてモノマー炭素より高いドーズ量での浅い炭素イ
ンプラントが可能になる。
【0044】
図7は、図6で生じた接合に関連するシート抵抗値を示している。より浅い接合はより
高いシート抵抗を生じる傾向があるので、図7の傾向は図6の傾向とは異なる。しかしな
がら、2keVの炭素+300eVまたは500evのBのデータは、1keVの炭素イ
ンプラントを用いたデータと比較して、接合深さの低減とシート抵抗の低下の両方を示し
ている。これは、より高い炭素エネルギーを用いると活性化が実際に改善されることを示
している。
【0045】
図8は、ビベンジル(ジベンジルまたは1,2−ジフェニルエタンとしても知られる)
すなわちC1414から発生させたイオンビームの質量スペクトルを示している。該質
量スペクトルは、イオン種Cに対応する約91amuの強いピークを示している
。イオン化中にビベンジル分子は2つのC分子に分解する。約182amuのピー
クはC1414に対応する。他の炭素クラスター種、例えば、C、C
、C、C、C、およびCのイオンビームが形成する可
能性があり、これらの種を、さまざまな技術的理由により、例えば所定の分析用磁石の制
約内のより高いプロセスエネルギーで注入するために、炭素をシリコン中に注入するのに
用いてもよい。
【0046】
図9は、3つの異なるドーズ量(2E15、4E15および8E15原子/cm)に
関する10keVでのCインプラントのSIMSプロファイル(炭素濃度対深さ)
を示している。図10は、ドーズ量2e15で700℃、900℃および1100℃にお
いて5secにわたりアニールしたCインプラント(炭素原子1個あたり10ke
V)のラマンスペクトルを示している。各試料に関しラマンピークのシフトを測定し、G
ダイン/cmでの応力値に変換した。得られた値は、700℃でのより低いアニール温
度が、より高いアニール温度と比較してより高い応力値を与えたことを示している。この
炭素分子インプラントを用いて、かなりの置換炭素を達成しうることが示されている。
【0047】
N型およびP型の浅接合の形成
本方法の重要な施用は、CMOS作製手順の一部としてN型およびP型の浅接合を形成
するためにクラスターイオン注入を使用することである。CMOSは現行の使用において
主要なデジタル集積回路技術であり、その名称は同一チップ上にN−チャネルおよびP−
チャネルの両方のMOSトランジスタ(相補的(Complementay)MOS:NおよびPの両方
)を形成することを意味する。CMOSの成功は、回路の設計者が反対のトランジスタの
相補的性質を利用してより良い回路、具体的には、代替技術に比べ少ない有効電力を生じ
るものを作り出すことができる点である。NおよびPという専門用語は負(Negative)およ
び正(Positive)に基づいており(N型半導体は負の多数キャリヤを有し、逆の場合も同様
である)、N−チャネルおよびP−チャネルトランジスタは、各領域のタイプ(極性)が
反転している互いの複製物であることを指摘しておく。同一基板上に両方のタイプのトラ
ンジスタを作製するには、他のタイプのデバイスをフォトレジストのシールド層で保護し
つつ、N型不純物および次にP型不純物を順次注入することが必要である。各トランジス
タのタイプは正確に動作するために両方の極性の領域を必要とするが、浅接合を形成する
インプラントはトランジスタと同じタイプのもの、すなわち、N−チャネルトランジスタ
にはN型の浅いインプラント、P−チャネルトランジスタにはP型の浅いインプラントで
あることを指摘しておく。このプロセスの例を図12および13に示す。
【0048】
図11に、部分的に完了したプロセスを示す。完了したプロセスは、ウェル(N−ウェ
ル81およびP−ウェル81)の形成、トレンチアイソレーション構造85の形成、ゲー
ト誘電体84の形成、ならびにゲート電極材料83の付着およびパターニングを包含する
。これに加えて、NMOSトランジスタを形成するために、適したフォトレジストマスク
材料86を付着させパターニングしている。本発明の文脈中では、図11に例示するよう
に、クラスター炭素イオン88を、後にNMOSドレインエクステンションおよびNMO
Sソース/ドレイン構造になる領域中の基板の非マスキング領域[89ではなく、似てい
るが異なる領域]に、典型的には20〜50nmまたはこれをほんの少し下回る深さ、例
えば、目的のデバイスの接合深さまで最初に注入する。以下に記載するように、3E14
〜2E15のクラスター炭素イオンインプラントは、シリコンを炭素でドーピングするこ
とに加え、浅いシリコン層を非晶質化する。
【0049】
炭素クラスターイオンインプラントを注入した後、図12はN型クラスターインプラン
ト88によるN−チャネルドレインエクステンション89の形成方法を例示しており、図
13はP型クラスターインプラント91によるP−チャネルドレインエクステンション9
0の形成を示している。N型およびP型の両方のトランジスタが同様の幾何学の浅接合を
必要とし、したがってN型およびP型の両方のクラスターインプラントを有すると高度な
CMOS構造の形成に有利であることに留意されたい。
【0050】
NMOSトランジスタを形成する場合のこの方法の施用例を図14に示す。この図は、
半導体デバイスの製造のフロントエンドプロセス段階の一部を経た半導体基板41を示し
ている。例えば、該構造は、P−ウェル43、トレンチアイソレーション42、およびゲ
ートスタック形成44、45の段階を通じて処理したN型半導体基板41からなる。ゲー
トスタック、P−ウェルおよびトレンチアイソレーションを形成するための典型的プロセ
スは、2004年1月8日公開で“An Ion Implantaion Devic
e and a Method of semiconductor Manufact
uring By the Implantation of Boron Hydri
de Cluster Ions”という表題の国際公開第WO2004/003973
A2号に開示されており、これを本明細書中で参考として援用する。
【0051】
これまで、ヒ素インプラントがNMOSのSDE構造を形成するために用いられてきた
。これは、Asはシリコン中でゆるやかな拡散を示すので、適切な構造を形成するための
追加的手段が必要ないためである。しかしながら、先端技術のSDEにAsを使用するこ
とを妨げうる問題がある。例えば、シリコンはヒ素よりリンに対し高い固溶度(solid sol
ubility)を有するので、リンはヒ素より高濃度で活性化することができる。したがって、
リンはヒ素より低い抵抗率のS/D領域をもたらすことができる。抵抗率は、高度なデバ
イスのようにデバイスが浅く(小さく)なるほど上昇する傾向があるので、これは重要な
特徴である。これらの場合リンは実行可能な代替物になりうるが、ヒ素と異なり、リンは
シリコン中で迅速な拡散を示すので、炭素による拡散抑制が興味深いプロセスになる。P
−ウェル43は、N型基板41と、ウェル43においてトランジスタに接合アイソレーシ
ョンを提供する接合を形成する。トレンチアイソレーション42は、N−ウェルおよびP
−ウェル間の(すなわちCMOS構造全体に)横方向の誘電性アイソレーションを提供す
る。ゲートスタックは、ゲート酸化物層44およびポリシリコンゲート電極45とともに
構築され、トランジスタのゲートスタックを形成するようにパターニングされている。フ
ォトレジスト46を施用し、NMOSトランジスタのための区域は暴露されるが基板41
の他の区域はシールドされるようにパターニングする。フォトレジスト46を施用後、基
板41は、該デバイス作製プロセスで必要なもっとも浅いドーピング層であるドレインエ
クステンションのインプラントをいつでもできる状態になっている。
【0052】
0.10μm技術ノードのリーディングエッジデバイスに関する典型的なプロセス要件
は、1keV〜2keVのヒ素インプラントエネルギーおよび5×1014cm−2のヒ
素ドーズ量である。クラスターイオンビーム47は、この場合Asであり、典型
的にはイオンビームの伝搬方向が基板に対して放線状になるように半導体基板に誘導して
、ゲートスタックによるシャドーイングを回避する。Asクラスターのエネルギ
ーは所望のAsインプラントエネルギーの4倍、例えば4keV〜8keVであるべき
である。クラスターは基板との衝突により解離し、ドーパント原子は半導体基板の表面付
近の浅い層で停止し、該層がドレインエクステンション領域48を形成する。同じインプ
ラントがゲート電極の表面層49に入り、ゲート電極のための追加的ドーピングを提供す
ることに留意すべきである。したがって、図14に記載するプロセスは、提案した本発明
の重要な施用の一つである。
【0053】
この方法の他の施用例、すなわち深いソース/ドレイン領域の形成を図15に示す。こ
の図は、半導体デバイスの作製におけるさらなるプロセス段階を実行した後の図14の半
導体基板41を示している。追加的プロセス段階は、パッド酸化物51の形成およびゲー
トスタックの側壁上でのスペーサー52の形成を包含する。図14に記載したが明確にす
るために図15で確認するプロセス段階を繰り返して、P−ウェル43は、N型基板41
と、ウェル43においてトランジスタに接合アイソレーションを提供する接合を形成する
。トレンチアイソレーション42は、N−ウェルおよびP−ウェル間の(すなわちCMO
S構造全体に)横方向の誘電性アイソレーションを提供する。ゲートスタックは、ゲート
酸化物層44およびポリシリコンゲート電極45とともに構築され、トランジスタのゲー
トスタックを形成するようにパターニングされている。フォトレジスト46を施用し、N
MOSトランジスタのための区域は暴露されるが基板41の他の区域はシールドされるよ
うにパターニングする。フォトレジスト46を施用後。クラスターイオンビーム54は、
この場合Asであるが同様のドーズ量のリンインプラントを代わりに用いてもよ
く、典型的にはイオンビームの伝搬方向が基板に対して放線状になるように半導体基板に
誘導して、ゲートスタックによるシャドーイングを回避する。ドーパント原子は半導体基
板の表面付近の浅い層で停止し、該層がドレインエクステンション領域48を形成する。
同じインプラントがゲート電極の表面層49に入り、ゲート電極のための追加的ドーピン
グを提供することに留意すべきである。パッド酸化物51は、基板の暴露区域、ゲート電
極の上面49および暴露される可能性があるゲート誘電性エッジを保護するために用いら
れる酸化物(二酸化ケイ素)の薄層である。パッド酸化物51は、典型的には5〜10n
mの厚さまで熱成長させる。他方、スペーサー52は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、また
はこれらの組合せのいずれかの誘電性領域であり、ゲートスタックの側面上に存在してゲ
ート電極を絶縁する働きをする。ソース/ドレインインプラント(例えば54)のための
位置合わせガイドとしても働き、該ガイドは、トランジスタが適切に動作するようにゲー
トエッジから間隔を置いて配置されなければならない。スペーサー52は、二酸化ケイ素
および/または窒化ケイ素層を付着させた後、これを、ソース/ドレイン領域から誘電体
が除去される一方ゲートスタックの側面上に残存層が残るようにプラズマエッチングする
ことにより形成する。スペーサー52のエッチング後、フォトレジスト層53を施用し、
注入されるトランジスタ、この例ではNMOSトランジスタが暴露されるようにパターニ
ングする。つぎに、ソースおよびドレイン領域55を形成するためのイオンインプラント
を実施する。このインプラントは低いエネルギーにおいて高いドーズ量を必要とするので
、提案しているクラスター注入法の適切な施用である。0.13um技術ノードに典型的
なインプラントパラメーターは、5×1015cm−2のヒ素ドーズ量においてヒ素原子
(54)1個あたり約6keVであるので、24keV、1.25×1015cm−2
Asインプラント、12keV、2.5×1015cm−2のAsイン
プラント、または6keV、5×1015cm−2のAsインプラントを必要とする。
【0054】
図14に示すように、ソースおよびドレイン領域55はこのインプラントにより形成さ
れる。これらの領域は、回路インターコネクト(該プロセスにおいて後で形成される)と
、チャネル領域56およびゲートスタック44、45と併せてドレインエクステンション
48により定義される真性トランジスタ(intrinsic transistor)との間に、導電率の高い
接続を提供する。ゲート電極45はこのインプラントに暴露される可能性があり(図示す
るように)、その場合は、ソース/ドレインインプラントはゲート電極のための主要ドー
ピング源を提供する。これは、図15中にポリドーピング層57として示している。
【0055】
PMOSのドレインエクステンション148およびPMOSのソースおよびドレイン領
域155の形成を示す詳細な図を、それぞれ図16および17に示す。構造およびプロセ
スは図15および16と同じであり、ドーパントのタイプが反対である。したがって、図
16は、半導体デバイスの製造のフロントエンドプロセス段階の一部を経た半導体基板1
41を示している。例えば、該構造は、N−ウェル143、トレンチアイソレーション1
42、およびゲートスタック形成144、145の段階を通じて処理したP型半導体基板
141からなる。これまで、ホウ素インプラントがPMOSのSDE構造を形成するため
に用いられてきたが、本発明ではB18のようなホウ素クラスターイオンを用いる
【0056】
N−ウェル143は、P型基板141と、ウェル143においてトランジスタに接合ア
イソレーションを提供する接合を形成する。トレンチアイソレーション142は、N−ウ
ェルおよびP−ウェル間の(すなわちCMOS構造全体に)横方向の誘電性アイソレーシ
ョンを提供する。ゲートスタックは、ゲート酸化物層144およびポリシリコンゲート電
極145とともに構築され、トランジスタのゲートスタックを形成するようにパターニン
グされている。フォトレジスト146を施用し、PMOSトランジスタのための区域は暴
露されるが基板141の他の区域はシールドされるようにパターニングする。フォトレジ
スト146を施用後、基板141は、該デバイス作製プロセスで必要なもっとも浅いドー
ピング層であるドレインエクステンションのインプラントをいつでもできる状態になって
いる。0.10μm技術ノードのリーディングエッジデバイスに関する典型的なプロセス
要件は、0.5keV〜1keVのホウ素インプラントエネルギーおよび5×1014
−2のホウ素ドーズ量である。クラスターイオンビーム147は、この場合B18
であり、典型的にはイオンビームの伝搬方向が基板に対して放線状になるように半導体
基板に誘導して、ゲートスタックによるシャドーイングを回避する。B18クラス
ターのエネルギーは所望のBインプラントエネルギーの20倍、例えば10keV〜2
0keVであるべきであり、B18のドーズ量はホウ素のドーズ量の18分の1、
すなわち約2.8E13であるべきである。クラスターは基板との衝突により解離し、ド
ーパント原子は半導体基板の表面付近の浅い層で停止し、該層がドレインエクステンショ
ン領域148を形成する。同じインプラントがゲート電極の表面層149に入り、ゲート
電極のための追加的ドーピングを提供することに留意すべきである。したがって、図16
に記載するプロセスは、提案した本発明の重要な施用の一つである。
【0057】
この方法の他の施用例、すなわち深いソース/ドレイン領域の形成を図17に示す。こ
の図は、半導体デバイスの作製におけるさらなるプロセス段階を実行した後の図16の半
導体基板141を示している。追加的プロセス段階は、パッド酸化物151の形成および
ゲートスタックの側壁上でのスペーサー152の形成を包含する。図16に記載したが明
確にするために図17で確認するプロセス段階を繰り返して、N−ウェル143は、P型
基板141と、ウェル143においてトランジスタに接合アイソレーションを提供する接
合を形成する。トレンチアイソレーション142は、N−ウェルおよびP−ウェル間の(
すなわちCMOS構造全体に)横方向の誘電性アイソレーションを提供する。ゲートスタ
ックは、ゲート酸化物層144およびポリシリコンゲート電極145とともに構築され、
トランジスタのゲートスタックを形成するようにパターニングされている。フォトレジス
ト146を施用し、PMOSトランジスタのための区域は暴露されるが基板141の他の
区域はシールドされるようにパターニングする。フォトレジスト146を施用後。クラス
ターイオンビーム154は、この場合B18であり、典型的にはイオンビームの伝
搬方向が基板に対して放線状になるように半導体基板に誘導して、ゲートスタックによる
シャドーイングを回避する。ドーパント原子は半導体基板の表面付近の浅い層で停止し、
該層がドレインエクステンション領域148を形成する。同じインプラントがゲート電極
の表面層149に入り、ゲート電極のための追加的ドーピングを提供することに留意すべ
きである。パッド酸化物151は、基板の暴露区域、ゲート電極の上面149および暴露
される可能性があるゲート誘電性エッジを保護するために用いられる酸化物(二酸化ケイ
素)の薄層である。パッド酸化物151は、典型的には5〜10nmの厚さまで熱成長さ
せる。他方、スペーサー152は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、またはこれらの組合せの
いずれかの誘電性領域であり、ゲートスタックの側面上に存在してゲート電極を絶縁する
働きをする。ソース/ドレインインプラント(例えば154)のための位置合わせガイド
としても働き、該ガイドは、トランジスタが適切に動作するようにゲートエッジから間隔
を置いて配置されなければならない。スペーサー152は、二酸化ケイ素および/または
窒化ケイ素層を付着させた後、これを、ソース/ドレイン領域から誘電体が除去される一
方ゲートスタックの側面上に残存層が残るようにプラズマエッチングすることにより形成
する。
【0058】
スペーサー52のエッチング後、フォトレジスト層53を施用し、注入されるトランジ
スタ、この例ではPMOSトランジスタが暴露されるようにパターニングする。つぎに、
ソースおよびドレイン領域155を形成するためのイオンインプラントを実施する。この
インプラントは低いエネルギーにおいて高いドーズ量を必要とするので、提案しているク
ラスター注入法の適切な施用である。0.10um技術ノードに典型的なインプラントパ
ラメーターは、5×1015cm−2のホウ素ドーズ量においてホウ素原子(154)1
個あたり約4keVであるので、80keV、2.8×1014cm−2のB18
インプラント、または4keV、5×1015cm−2のBインプラントを必要とする
。これらの領域は、回路インターコネクト(該プロセスにおいて後で形成される)と、チ
ャネル領域156およびゲートスタック144、145と併せてドレインエクステンショ
ン148により定義される真性トランジスタとの間に、導電率の高い接続を提供する。ゲ
ート電極145はこのインプラントに暴露される可能性があり(図示するように)、その
場合は、ソース/ドレインインプラントはゲート電極のための主要ドーピング源を提供す
る。これは、図17中にポリドーピング層157として示している。
【0059】
一般に、イオン注入単独では有効な半導体接合の形成に不十分である:注入したドーパ
ントを電気的に活性化するために熱処理が必要である。注入後、半導体基板の結晶構造は
大きな損傷を受けており(基板原子が結晶格子の位置から移動する)、注入したドーパン
トは基板原子と弱い結合しか形成しないので、注入された層の電気的性質は不十分である
。半導体の結晶構造を修復し、ドーパント原子を置換的に、すなわち結晶構造中の基板原
子の1つの位置に位置決めするために、高温(900℃を超える)での熱処理すなわちア
ニールを典型的には実施する。この置換により、ドーパントが基板原子と結合し、電気的
に活性になる、すなわち、半導体層の導電率を変化させることが可能になる。しかしなが
ら、この熱処理は、注入したドーパントの拡散が熱処理中に起こるので、浅接合の形成に
は不利に働く。実際、熱処理中のホウ素拡散は、sub−0.1ミクロンの状況(regime)
でのUSJの達成において制限要因である。浅く注入したドーパントの拡散を最小限に抑
えるために、“スパイクアニール”のような高度なプロセスがこの熱処理に関し開発され
ている。スパイクアニールは、高温での滞留時間がゼロに近い迅速な熱的プロセスである
:温度を可能な限り急速に上昇および下降させる。このようにして、注入したドーパント
を活性化するのに必要な高温に達する一方、注入したドーパントの拡散は最小限に抑えら
れる。そのような高度な熱処理を本発明と併せて利用すると、完成した半導体デバイスの
作製において本発明の利点が最大限になると予想される。とりわけ、注入した炭素は、熱
的活性化プロセス中に一時的に増大したドーパントの拡散を低減する。
【0060】
明らかに、上記教示の観点から、本発明の多くの修正および変動が可能である。したが
って、添付する請求項の範囲内で、本発明を具体的に上記したものとは異なる方法で実行
してもよいことを、理解すべきである。
【0061】
特許証により保護されることが望ましいことを、添付する特許請求の範囲に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】イオン注入システムにより生じたB1822の質量スペクトルを示す図である。
図2】イオン注入システムにより生じたC1610の質量スペクトルを示す図である。
図3】B18によりシリコン中に注入したホウ素の二次イオン質量分析法(SIMS)での深さプロファイルおよび活性化プロファイルに対するC16共注入の効果を示す図である。
図4】C16を用い1keV、2keV、3keV、4keVおよび5keVの炭素インプラントエネルギーで注入された炭素のSIMSプロファイルを示す図である。
図5】1keV炭素インプラント後の300eVホウ素インプラントの注入された状態およびアニール後の両方のSIMSプロファイルを示す図である。炭素プロファイル(アニールの前後)も示している。
図6】さまざまな炭素+ホウ素インプラント条件での接合深さを示す図である。
図7図6で生じた接合に関連するシート抵抗値を示す図である。
図8】ビベンジル(ジベンジルまたは1,2−ジフェニルエタンとしても知られる)すなわちC1414から発生させたイオンビームの質量スペクトルを示す図である。該質量スペクトルは、イオン種Cに対応する91amuの強いピークと、C、C、C、C、およびCに対応する一連のより小さなピークを示している。
図9】3つの異なるドーズ量(2E15、4E15および8E15原子/cm)に関する10keVでのCインプラントのSIMSプロファイル(炭素濃度対深さ)を示す図である。
図10】ドーズ量2e15で700℃、900℃および1100℃において5secにわたりアニールしたCインプラント(炭素原子1個あたり10keV)のラマンスペクトルを示す図である。各試料に関しラマンピークのシフトを測定し、Gダイン/cmでの応力値に変換した。
図11】炭素クラスターの注入により炭素をドープし非晶質化した層の形成中のCMOS作製手順の略図である。非晶質化層に対応する区域を示す。
図12】NMOSドレインエクステンションの形成中のCMOS作製手順の略図である。
図13】PMOSドレインエクステンションの形成中のCMOS作製手順の略図である。
図14】NMOS半導体デバイスの製造プロセスにおけるN型ドレインエクステンションインプラントの段階での半導体基板の略図である。
図15】NMOS半導体デバイスの製造プロセスにおけるソース/ドレインインプラントの段階での半導体基板の略図である。
図16】PMOS半導体デバイスの製造プロセスにおけるP型ドレインエクステンションインプラントの段階での半導体基板の略図である。
図17】PMOS半導体デバイスの製造プロセスにおけるソース/ドレインインプラントの段階での半導体基板の略図である。
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