【実施例】
【0023】
ここで、特定の積層板構造を添付の図面を参照して説明する。
二層積層板
図1は、表面層12およびコア層14を有する二層積層板10を示している。表面層12およびコア層14は、図面に示したように単層であっても、複数の副層から製造されていてもよい。表面層12は、以下に限られないが、TFT、OLED、またはカラーフィルタなどの機能要素(図示せず)を製造するための基礎となれるフュージョン成形された光学表面16を有する。フュージョン成形された光学表面16は、成形装置により触れられず、例えば、耐火材により汚染されず、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を有する。表面層12は、ディスプレイ用途の要件を満たす平面性および均一な厚さを有する。コア層14は、表面層12よりも高い弾性率を有し、表面層12上に機能要素(図示せず)を製造し包装する間に、積層板10の構造の健全性が維持されるように表面層12に機械的支持を与える。
【0024】
コア層14の外側の面を、積層板10の厚さの中立軸からできるだけ遠くに配置することが好ましい。これは、積層板10の断面係数が、中立軸から高弾性率の層14の距離の平方に依存するからである。それゆえ、コア層14の外側の面が、積層板の厚さの中立軸から離れているほど、積層板10の機械的剛性および断面係数が高くなる。
【0025】
ある実施の形態において、表面層12およびコア層14は、ガラスおよび/またはポリマーまたはガラスおよび/またはガラスセラミックから製造されている。ガラスの例としては、以下に限られないが、アルカリ土類ホウアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸亜鉛、およびソーダ石灰ガラスが挙げられる。ポリマーの例としては、以下に限られないが、ポリペルフルオロシクロブタンエーテル、多環式オレフィン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびポリビニルブチラール(PVB)が挙げられる。ガラスセラミックの例としては、以下に限られないが、酸化マグネシウム、イットリア、ベリリア、アルミナ、ジルコニアが豊富なガラスが挙げられる。
【0026】
表面層12およびコア層14を形成するのに使用される材料が透明であることが好ましい。表面層12およびコア層14を形成するのに使用される材料のタイプは、同じであっても異なっていても差し支えない。例えば、表面層12およびコア層14は両方とも、ガラスまたはポリマーから製造されていてもよい。あるいは、表面層12がガラスから製造され、コア層14がポリマーから製造されても、またその逆であってもよい。あるいは、表面層12がガラスから製造され、コア層14がガラスセラミックから製造されていてもよい。一般に、層形成材料は、ディスプレイ用途の要件に基づいて選択される。例えば、低温ポリシリコン(LTPS)TFTの製造を含むディスプレイ用途では、基板が加熱されたときの収縮および/またはそりを最小にするために、高い、例えば、600℃より高い歪み点を持つ基板が必要である。これらの用途では一般に、シリコンのものに似た熱挙動を有する基板が必要とされる。
【0027】
一般に、表面層12およびコア層14の形成に用いられる材料は、積層板10が加熱されたときに所望の熱膨張挙動を生じるように選択される。ディスプレイ用途で特に関心があるのは、加熱による積層板10の全体の収縮が無視できるような材料を選択することである。層形成材料は、低密度、柔軟性、強靱性、透明性、およびことによると、水分とガスに対する低透過性を達成するように選択されるであろう。表面層12の光学的性質は、目的とする用途のために最適化でき、一方でコア層14の機械的性質は、例えば、所望の強靱性および柔軟性を達成するように最適化できる。
【0028】
ある実施の形態において、コア層14は、熱的手段、化学的手段、機械的手段、電磁放射線、または他の手段などの手段によって、表面層12から分離できる。ある実施の形態において、コア層14の表面層12からの分離は、コア層14の形成に使用する材料を、表面層12の形成に使用する材料よりも、適切な溶媒中により可溶性であるように選択することによって行われる。コア層14を表面層12から分離できるように製造することの利点は重要である。表面層12は、ディスプレイ用途の要件を満たすのに必要なほど薄く、例えば、1mm未満ほど薄く製造できる。積層板10の取扱いと包装および表面層12上への機能要素の製造中に、コア層14は、表面層12への要求される機械的支持を与えるであろう。表面層12に機能を加えた後、次いで、コア層14を表面層12から分離して、ディスプレイ用途の要件を満たす薄い表面層12を残すことができる。
【0029】
コア層14が表面層12から分離できる場合、コア層14に用いられる材料の選択に許容範囲が広くなる、すなわち、コア層14は、最終製品の一部とはならないので、ディスプレイ用途に要求される厳しい要件を満足する必要がない。それゆえ、たとえば、コア層14は、表面層12に所望の機械的剛性を与える安価なガラスまたはポリマーもしくはガラスセラミックから製造されていてもよい。コア層14は、低熱収縮を有するガラス、例えば、よく焼鈍されたガラスから製造されていてもよい。あるいは、コア層14は、ゼロの熱収縮を達成するために膨張させられる材料、例えば、ポリスチレンなどの発泡材料から製造されていてもよい。コア層14は、表面層12に必要な機械的支持を与えるのに必要なだけ厚く製造でき、無垢でファイヤー・ポリッシュの品質のものであるフュージョン成形された光学表面を有する必要はない。
【0030】
積層板10に一層以上のコーティングを加えても差し支えない。例えば、
図2は、積層板10の光学表面16上に形成されたコーティング層18を示している。コーティング層18は、金属、半導体、もしくは非金属の有機または無機材料から製造しても差し支えない。ある実施の形態において、コーティング層18は、環境に対するバリアとして働く、例えば、ガスと水分の透過を減少させるように働く。保護コーティング(図示せず)をコア層14に加えてもよい。表面層12および/またはコア層14の光学的性質を向上させる光学コーティング、もしくは電極、ダイオード、またはトランジスタなどの能動電子素子を製造する基礎として使用できる導電性コーティング、もしくはディスプレイのコントラストを向上できる暗いまたは暗色コーティング、もしくはディスプレイの輝度を向上させられる反射金属コーティングなどの、他のタイプのコーティングを積層板10に加えてもよい。
三層積層板
図3は、表面層22、犠牲中間層24、およびコア層26を含む三層積層板20を示している。表面層22およびコア層26は、図面に示したように単層であっても、複数の副層から製造されていてもよい。表面層22は、能動および受動電子素子を製造するための基礎として働けるフュージョン成形された光学表面28を有する。フュージョン成形された光学表面28は、成形装置に触れない、例えば、耐火材料により汚染されず、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を有する。コア層26は、前述したように、表面層22よりも高い弾性率を有し、表面層22に機械的支持を与える。二層積層板(
図1および2における10)に使用する材料に関する上述の議論が三層積層板20にも当てはまる。
【0031】
犠牲中間層24は、表面層22をコア層26に結合するものであり、表面層22をコア層26から分離できるように除去されてもよい。例えば、犠牲中間層24は、少なくとも表面層22に使用する材料よりも適切な溶媒中にいっそう溶性である材料から製造されていてもよい。このようにして、コア層26は、犠牲中間層24を溶解し除去することによって、表面層22から分離できる。
図1に示したものよりも優れたこの実施の形態の利点は、犠牲中間層24は、溶解し除去する材料の量が非常に少なくなるように非常に薄く製造できることである。このようにして、コア層26は、犠牲中間層24を介して表面層22に結合しながら、表面層22に必要な機械的支持を与えるのに必要なほど厚く製造できる。
【0032】
積層板20に一層以上のコーティングを加えてもよい。例えば、
図4は、積層板20の光学表面28上に形成されたコーティング層30を示している。コーティング層30は、金属、半導体、もしくは非金属の有機または無機材料から製造しても差し支えない。ある実施の形態において、コーティング層30は、環境に対するバリアとして働く、例えば、ガスと水分の透過を減少させるように働く。保護コーティング(図示せず)をコア層26に加えてもよい。表面層22および/またはコア層26の光学的性質を向上させる光学コーティング、もしくは電極、ダイオード、またはトランジスタなどの能動電子素子を製造する基礎として使用できる導電性コーティング、もしくはディスプレイのコントラストを向上できる暗いまたは暗色コーティング、もしくはディスプレイの輝度を向上させられる反射金属コーティングなどの、他のタイプのコーティングを積層板20に加えてもよい。
サンドイッチ型積層板
図5は、表面層34、コア層36、および底層38を有する積層板32であって、コア層36が表面層34と底層38との間に挟まれている積層板32を示している。表面層34、コア層36、および底層38は、図示したように単層であっても、複数の副層から製造されていてもよい。表面層34は、TFT、OLED、またはカラーフィルタなどの機能素子(図示せず)を製造するための基礎として働けるフュージョン成形された光学表面40を有する。フュージョン成形された光学表面40は、成形装置に触れない、例えば、耐火材料により汚染されず、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を有する。底層38は、一般に非機能性であり、表面層34の厳しい要件を必ずしも満たす必要はない。表面層34および底層38は非常に薄く製造することができる。コア層36は、表面層34および底層38よりもずっと厚く製造でき、積層板32の全体の構造の健全性を改善するように表面層34および底層38よりも高い断面係数を有してもよい。コア層36は、周期的熱履歴を経ている間積層板32の収縮を抑制する低熱収縮材料から製造できる。
【0033】
一般的に言えば、積層板32の高強度は、耐圧縮性の表面層34、耐引張性の底層38、および剪断応力に耐性のコア層36によってもたらされる。ある実施の形態において、表面層34、コア層36、および底層38の熱膨張係数は、積層板32の破壊靭性を向上させ、応力を制御するように調節される。所望であれば、コア層36に機能を加えても差し支えない。例えば、コア層36は、ディスプレイの視角を広げおよび/または輝度を向上させるために光学的に向上させることができる。上述した二層と三層の積層板について記載したように、一層以上のコーティング層(図示せず)、例えば、保護コーティング、光学コーティング、または導電性コーティングを表面層34および/または底層38に加えてもよい。
積層板の製造方法
本出願の発明者等は、無垢で、ファイヤー・ポリッシュの品質の少なくとも1つのフュージョン成形された光学表面を有する積層板の製造方法をここに提案する。本発明の方法を用いて、積層板に一層以上のコーティングを加えることもできる。コーティング層は、例えば、ガスおよび水分の透過性を減少させるための、保護層であってよい。コーティング層は、基板の光学的性質を向上させる、例えば、輝度を向上させたり、視角を広げたりするであろう。コーティング層は、導電性であっても、または他の機能的特徴を有していてもよい。
【0034】
一般に、本発明の積層板の製造方法は、フュージョン・プロセスによるシート材の形成から始まる。このフュージョン・プロセスにおいて、粘性流動性材料が、オーバーフロー流路中に流れ込み、次いで、フュージョン成形装置の構成に応じて、オーバーフロー流路の片側または両側から制御された様式でオーバーフローして、板状流れを形成する。積層板の他の層は、板状流れの片面または両面に他の材料を堆積させることによって形成してもよい。層の厚さは、所望の厚さを持つ積層板を形成するように制御される。
【0035】
積層板の層を形成するのに用いられる粘性流動性材料は、以下に限られないが、ガラス溶融物またはポリマー溶融物などの材料であってよい。ある実施の形態において、粘性流動性材料は、一種類以上の元素または酸化物の添加によって、いくつかの特定のガラスに容易に転換できる基礎ガラス溶融物であってよい。これらの元素または酸化物は、ガラスセラミックの核形成剤であっても差し支えなく、基礎ガラスは、これらの剤を含まないか、重要な組成レベル未満でしかこれらの剤を含まない前駆体ガラスである。これらの元素または酸化物は、形成された層に得られる弾性率に重大な制御された変化を生じるであろうガラス成分であって差し支えない。
【0036】
コンピュータを利用した流体力学を用いたフュージョン・プロセスのモデル化における近年の進歩によって、完成した板の任意の位置で最終的に終わる、ガラス(またはポリマー)の供給システムにおける正確な位置のマッピングが可能になった。それゆえ、元素または酸化物は、所望の層構造を持つ最終的なフュージョン・ドロー板を製造するためにコンピュータ・モデル作製マップにしたがって、ガラス溶融物に導入することができる。これらの元素または酸化物は、例えば、所望の層構造を達成するために、フュージョン・パイプにおける特定の位置で元素または酸化物を含有する消耗(溶解できる)材料のブロックを位置決めすることによって、導入しても差し支えない。
両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ
図6Aは、合流側壁46,48によって境界がつけられた楔形成形体44を有する両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ42を示している。成形体44の上部にオーバーフロー流路50が形成されている。オーバーフロー流路50は、側壁(または堰堤)52,54および輪郭のある底面56によって境界がつけられている。輪郭のある底面56の形状は、オーバーフロー流路50の高さが、流路の入口58から堰提60に外方に延在するにつれて減少するようなものである。動作中、粘性流動性材料をオーバーフロー流路50に供給するために、供給パイプ(図示せず)が流路の入口58に連結される。
【0037】
フュージョン・パイプ42は、堰提52,54の上面が水平に対して所望の傾斜角を有するように、ローラ、楔、またはカム62などの任意の適切な手段によって旋回調節できる。堰提52,54の傾斜角、粘性流動性材料がオーバーフロー流路50に供給される速度、および流動性材料の粘度は、均一な厚さを有する1つの板状流れが形成されるように選択できる。
【0038】
動作中、粘弾性材料、例えば、ガラスまたはポリマー材料はブレンドされ、溶融され、よく混合される。次いで、
図6Bに示すように、均質な流動性粘弾性材料64が流路の入口58に供給される。流動性粘弾性材料64は、うねりも揺動もなく、オーバーフロー流路50に流れるような低効果頭部を有する。流動性粘弾性材料64は、堰提52,54を超えて溢れ出し、成形体44の合流側壁46,48を分岐流れ64a,64bとして流れ落ちる。成形体44の底部で、別々の分岐流れ64a,64bが再結合して、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を有する無垢の表面66a,66bを備えた1つの板状流れ66を形成する。
【0039】
板状流れ66の初期厚さは、合流側壁46,48を流れ落ちる材料の量によって決まり、ここで、合流側壁46,48を流れ落ちる材料64a,64bの量は、流動性粘弾性材料64の頭部圧力およびオーバーフロー流路50の幾何学形状に依存する。
片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ
図7Aは、真っ直ぐな側壁74および合流側壁76により境界がつけられた楔形成形体72を有する片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70を示している。成形体72の上部にオーバーフロー流路78が形成されている。オーバーフロー流路78は、側壁(または堰提)82,84および輪郭のある底面86により境界がつけられている。堰提82は堰提84よりも高く、したがって、堰提84のみでオーバーフローが生じる。動作中、粘性流動性材料をオーバーフロー流路78に供給するために、オーバーフロー流路78の入口88に供給パイプ(図示せず)が連結される。輪郭のある底面86の形状は、オーバーフロー流路78の高さが、入口88から堰提80に外方へと進むに連れて減少するようなものである。
【0040】
フュージョン・パイプ70は、堰提82,84の上面が水平に対して所望の傾斜角を有するように、ローラ、楔、またはカム90などの任意の適切な手段によって旋回調節できる。堰提82,84の傾斜角、粘性流動性材料がオーバーフロー流路78に供給される速度、および流動性材料の粘度は、均一な厚さを有する1つの板状流れが形成されるように選択できる。
【0041】
動作中、粘弾性材料、例えば、ガラスまたはポリマー材料はブレンドされ、溶融され、よく混合される。次いで、
図7Bに示すように、均質な流動性粘弾性材料102が流路の入口88に供給される。流動性粘弾性材料102は、うねりも揺動もなく、オーバーフロー流路78に流れるような低効果頭部を有する。流動性粘弾性材料102は、堰提84を超えて溢れ出し、成形体72の合流側壁76を流れ落ちて、ファイヤー・ポリッシュの表面品質の無垢の表面104aを有する1つの板状流れ104を形成する。表面104bは、合流側壁76と接触するので、無垢ではない。
【0042】
板状流れ104の初期厚さは、合流側壁76を流れ落ちる材料102の量によって決まり、ここで、合流側壁76を流れ落ちる材料102の量は、流動性粘弾性材料102の頭部圧力およびオーバーフロー流路78の幾何学形状に依存する。
多区画オーバーフロー・フュージョン・パイプ
図8Aは、合流側壁108,110により境界が付けられた楔形成形体107を有するオーバーフロー・フュージョン・パイプ106を示している。成形体107の上部に独立したオーバーフロー流路112,114が形成されている。オーバーフロー流路112は、側壁(または堰提)118,120および輪郭のある底面122により境界がつけられている。堰提120は堰提118よりも高く、したがって堰提118のみでオーバーフローが生じる。オーバーフロー流路114は、側壁(または堰提)120,124および輪郭のある底面126によって境界がつけられている。堰提120は堰提124よりも高く、したがって、堰提124でのみオーバーフローが生じる。動作中、供給パイプが、オーバーフロー流路112,114の入口128,129にそれぞれ接続される。輪郭のある底面122,126の形状は、オーバーフロー流路112,114の高さが、入口128,129から堰提131に外方へと進むに連れて減少するようなものである。
【0043】
動作中、
図8Bに示したように、第1の流動性粘弾性材料130が流路の入口(
図8Aの128)に供給され、第2の流動性粘弾性材料132が流路の入口(
図8Aの129)に供給される。流動性粘弾性材料130,132は、うねりも揺動もなく、それぞれ、オーバーフロー流路112,114に流れるような低効果頭部を有する。流動性粘弾性材料130,132は、それぞれ、堰提118,124を超えて溢れ出し、成形体107の合流側壁108,110を流れ落ちる。成形体107の底部で、材料130,132が再結合して、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を持つ無垢の表面134a,134bを持つ積層板状流れ134を形成する。
【0044】
板状流れ134の初期厚さは、合流側壁108,110を流れ落ちる材料130,132の量によって決まり、ここで、合流側壁108,110を流れ落ちる材料130,132の量は、流動性粘弾性材料130,132の頭部圧力およびオーバーフロー流路112,114の幾何学形状に依存する。
ダウン・ドロー・プロセス
板状流れを形成するために、様々なタイプのオーバーフロー・フュージョン・パイプを先に記載してきた。フュージョン・プロセスはさらに、板状流れを、所望の厚さを持つ板に引き出す工程を含む。
図9Aは、本発明の実施の形態による引出装置140を示している。引出装置140は、板状流れ(図示せず)を受け入れるための通路142を備えている。通路142は、垂直に示されているが、いくつかの他の方向、例えば水平であっても差し支えない。重力の作用のために引出しに垂直の条件下が有利に働くので、垂直通路が一般に好ましい。通路142の幅により、最終的な板(図示せず)の幅が決まる。一般に、最終的な板の横幅は約120cm(約4フィート)よりも大きい。しかしながら、横幅の小さな板を形成してもよい。
【0045】
板状流れ(図示せず)を通路142に通して搬送し、板状流れの厚さを制御(薄く)するために、通路142の長手方向に沿って、数組のローラ(またはエッジ・ガイド)144が配置されている。一連の被加熱区域146が通路142の内部に画成されている。被加熱区域146は、矢印148によって示される方向に次第に冷たくなる。区域146は、電気加熱素子、電磁誘導加熱器、または他の加熱手段(図示せず)によって加熱されてよい。
【0046】
図9Bは、フュージョン・パイプ152から通路142中に進行する板状流れ150を示している。板状流れ150は、エッジ・ガイド(図示せず)によって通路142中に案内されてもよい。
図9Cを参照すると、通路142の内部で、対になったローラ144が板状流れ150の垂直の縁を穏やかに把持(または押)し、板状流れ150を通路142の下方に搬送している。対のローラ144の間の間隔は、板状流れ150の厚さが、通路142の下方に搬送されるにつれて徐々に減少するようなものである。必要であれば、板状流れ150の厚さを「微調整」するために温度を使用しても差し支えない、すなわち、流れ150を薄くまたは厚くするために、流れの選択された領域に、高温または低温スポットを設けても差し支えない。
【0047】
板状流れ150が被加熱区域146の低温領域を通って搬送されながら、非常に平らで均一な板に形成される。
図9Dは、通路142から排出されている板154を示している。板154は、必要に応じて、刻みをつけ、切断することができる。一般に、ローラ144と接触していた板154の垂直の縁は、無垢ではないので、切り落とす必要があるであろう。
片側および両側オーバーフロー・フュージョン・パイプを用いた二層積層板の形成方法
図10は、二層積層板を製造するための装置156を示している。装置156は、両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ42(先に
図6Aに示した)および片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70(先に
図7Aに示した)を備えている。両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ42は片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70の上に配置されている。一般に、フュージョン・パイプ42,70は、フュージョン・パイプ42によって製造された板状流れが、フュージョン・パイプ70によって製造された板状流れと合流できるような様式で配置されている。
【0048】
動作中、フュージョン・パイプ42中のオーバーフロー流路78は、第1の流動性粘弾性材料158、例えば、ガラスまたはポリマー材料で満たされている。流動性粘弾性材料158は、堰提52,54を超えて溢れ出て、別個の分岐流れ158a,158bとして合流側壁46,48を流れ落ちる。分岐流れ158a,158bがフュージョン・パイプ42の底部で再結合して、1つの板状流れ160を形成する。
【0049】
同様に、フュージョン・パイプ70中のオーバーフロー流路78は第2の流動性粘弾性材料162、例えば、ガラスまたはポリマー材料で満たされている。流動性粘弾性材料162は、堰提84を超えて溢れ出て、合流側壁76を流れ落ちて、1つの板状流れ162を形成する。1つの板状流れ162は1つの板状流れ160の表面160aと合体して、積層流れ164を形成する。積層流れ164の表面164a,164bは、無垢であり、ファイヤー・ポリッシュの表面品質のものである。次いで、積層流れ164は、引出装置(
図9Aの140)を用いて板に引き出される。
【0050】
表面164a,164bのいずれも、無垢であるので、機能要素を形成するための基礎として働けることに留意されたい。一般に、積層板の各層の最終的な厚さと光学的特性によって、その層が表面層またはコア層として作用できるか否かが決まる。
2つの片側オーバーフロー・フュージョン・パイプおよび1つの両側オーバーフロー・
フュージョン・パイプを用いた三層積層板の形成方法
図10に示した装置156を容易に改造して三層板を形成することができる。
図11に示すように、別の片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70bを用いて単層の板状流れ170を形成することができ、次いで、この流れを板状流れ164の表面164aと合体させて、三層積層流れ168を形成することできる。積層流れ168は、引出装置(
図9Aの140)を用いて板に引き出せる。オーバーフロー・フュージョン・パイプ70,70bの下方に配置された追加の片側オーバーフロー・フュージョン・パイプを用いて、積層流れ168に一層以上を加えることもできる。
2つの片側オーバーフロー・フュージョン・パイプを用いた二層積層板の形成方法
図12は、二層積層板を形成するための装置166を示している。装置166は、ここでは、フュージョン・パイプ70Rおよび70Lと識別される、2つの片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70(先に
図5に示した)を備えている。フュージョン・パイプ70Rおよび70Lは、同じ高さに配置されている。しかしながら、所望であれば、一方のフュージョン・パイプを他方の上に持ち上げても差し支えない。一般に、フュージョン・パイプ70Rおよび70Lは、それらが製造する板状流れが合体して1つの積層流れを形成するように配置されている。
【0051】
動作中、第1の粘弾性材料174、例えば、ガラスまたはポリマー材料がオーバーフロー流路78Lに供給される。それと同時に、第2の粘弾性材料176、例えば、ガラスまたはポリマー材料がオーバーフロー流路78Rに供給される。粘弾性材料174,176は、それぞれ、堰提84L,84Rを超えて溢れ出て、それぞれ合流側壁76L,76Rを流れ落ちて、それぞれ、単層の板状流れ178,180を形成する。単層板状流れ178,180が合体して、ファイヤー・ポリッシュの表面品質を持つ無垢な表面182a,182bを有する積層流れ182を形成する。次いで、積層流れ182は、引出装置(
図9Aの140)を用いて板に引き出される。フュージョン・パイプ70L,70Rの下に1つ以上の片側オーバーフロー・フュージョン・パイプを配置することによって、積層流れ182に層を加えても差し支えない。
【0052】
ここでも、表面182a,182bのいずれも、両方とも無垢であるので、機能素子を形成するための基礎として働ける。一般に、積層板の各層の最終的な厚さと光学的特性によって、その層が表面層またはコア層として作用できるか否かが決まる。
2つの両側オーバーフロー・フュージョン・パイプを用いた二層積層板の形成方法
図13は、二層積層板を形成するための装置184を示している。装置184は、ここでは、フュージョン・パイプ42Rおよび42Lと識別される、2つの両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ42(先に
図6Aに示した)を備えている。フュージョン・パイプ42R,42Lは、水平に間隔がおかれている。フュージョン・パイプ42Lは、フュージョン・パイプ42Rの上に持ち上げられている。フュージョン・パイプ42R,42Lの下には、フロート浴186がある。フュージョン・パイプ42R,42Lは、それらが製造する板状流れを、垂直から水平に変換し、フロート浴186上に浮かせられるように配置されている。ローラなどのエッジ・ガイド装置192,194を設けて、板状流れを垂直の向きから水平の向きに案内しても差し支えない。フロート浴186は、空気、溶融スズ、溶融ポリマー、または積層板を形成するのに用いられる材料に適合する他のフロート用材料の層であって差し支えない。
【0053】
動作中、フュージョン・パイプ42L,42Rは、それぞれ、粘性流動性材料187,189で満たされる。粘性流動性材料187,189は、それぞれ、堰提52L,54Lおよび52R,54Rをオーバーフローして、板状流れ188,190を形成する。板状流れ188は、エッジ・ガイド192によってフロート浴186に案内され、フロート浴186上に浮かぶ。板状流れ190は、エッジ・ガイド194によって板状流れ188に案内され、板状流れ188と合体して、積層流れ195を形成する。積層流れ195は、フロート浴186から、積層板に引き出すための引出装置(
図9Aの140)中に移行させることができる。三層以上を持つ積層板を製造するために、この装置184に追加の両側オーバーフロー・フュージョン・パイプおよび/または片側オーバーフロー・フュージョン・パイプを加えても差し支えない。
片側オーバーフロー・フュージョン・パイプおよびスロット・ドロー・
フュージョン・パイプを用いた二層積層板の形成方法
図14は、二層積層板を形成するための装置196を示している。装置196は、片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70およびスロット・ドロー装置198を備えている。スロット・ドロー装置198は、粘性流動性材料204を受け入れるための流路202を有する成形体200を含む。成形体200は、流路202に連結された縦スロット206も有する。流路202中の粘性流動性材料204はスロット206を流れ落ちて、板状流れ208を形成する。フュージョン・パイプ70中のオーバーフロー流路78は、粘性流動性材料210で満たされ、この材料は、堰提84を超えて溢れ出し、合流側壁76を流れ落ちて、板状流れ212を形成する。板状流れ208,212は合体して、無垢な表面214bを有する積層流れ214を形成する。他の表面214aは、板状流れ208がスロット206を流れ落ちるときにスロット・ドロー装置198と接触するので無垢ではない。積層流れ214は、前述したように、積層板に引き出せる。
スロット・ドロー装置を備えた両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ
を用いた二層積層板の形成方法
図15は、フュージョン・プロセスとスロット・ドロー・プロセスの組合せによって積層板を形成できる、別のタイプの両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ216を示している。フュージョン・パイプ216は、合流側壁220,222により境界がつけられている成形体218を有する。成形体218の上部にオーバーフロー流路224が形成されている。成形体218の基部に流路226が形成されている。流路226は、縦スロット228を通って成形体218の底部に開いている。オーバーフロー流路224中の粘性流動性材料230が、堰提232,234を超えて溢れ出て、成形体218の合流側壁220,222を、それぞれ、分岐流れ230a,230bとして流れ落ちる。流路226中の粘性流動性材料236は、板状流れ238として縦スロット228を流れ落ちる。別個の流れ230a,230bが板状流れ238の表面238a,238bと合体して積層流れ240を形成する。
【0054】
図16Aは、フュージョン・プロセスとスロット・ドロー・プロセスの組合せによって積層板を形成できる、別のタイプの両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ215を示している。フュージョン・パイプ215は成形体217を有する。成形体217内に流路219が形成されている。
図16Bに示すように、流路219は、成形体217を貫通し、成形体217の頂部に開口部221を、成形体217の底部に開口部223を有する。
図16Aに戻ると、流路219は側壁(または堰提)225,227,229により境界がつけられている。粘性流動性材料233を流路219中に供給するための入口231が設けられている。
【0055】
動作中、粘性流動性材料233は、堰提225,227を超えて流れると同時に、開口部223を通って流出する(または引き出される)。開口部223を通って排出された粘性流動性材料は板状流れ235を形成する。堰提225,227を超えて流れ出した粘性流動性材料は、2つの別個の分岐流れ237,239を形成し、これらの流れは、板状流れ235の表面と合流して、三層積層流れ241を形成する。積層流れ241は、引出装置(
図9Aの140)を用いて板に引き出せる。この場合、積層流れ241の全ての層は同じ材料から製造されるが、機械的剛性の向上した積層板を提供するために、中央のコア層(板状流れ235により形成される)が外側層(分岐流れ237,239により形成される)よりもずっと厚くても差し支えないことに留意されたい。
連続ゾルゲル・プロセスおよび片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ
を用いた二層積層板の形成方法
図17において、242として示された連続ゾルゲル・プロセスを用いて、積層板のコアを形成するエアロゲル244を製造する。エアロゲル244は、連続多孔を有し、透明な多孔質固体として調製できる。次いで、片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70を用いて、エアロゲル244の表面244aと合体して、二層積層板248を形成する板状流れ246を形成し、この積層板は、引出装置(
図9Aの140)を用いて板に引き出せる。サンドイッチ型(三層型)積層板を形成するために、別の片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ(図示せず)を用いて板状流れ(図示せず)を形成し、これを、エアロゲル244の表面244bと合体させても差し支えない。
【0056】
ゾルゲル・プロセスはよく知られている。このプロセスは一般に、金属アルコキシドなどの金属有機化合物や無機金属塩を用いて「ゾル」を調製する工程を有してなる。出発材料は典型的に、一連の加水分解および縮合反応が行われて、コロイド状懸濁液、すなわち、「ゾル」が形成される。ゾルは、「ウエット・ゲル」と呼ばれる軟らかい多孔質塊への転移を経る。ウエット・ゲル中の液体は、空気乾燥または超臨界抽出のいずれかによって除去して、エアロゲルを形成できる。エアロゲルは典型的に硬い。ゾルに繊維を加えて、繊維強化ゾルをゲル化させ、ゲルから液体を抽出することによって柔軟に製造できる。
サンドイッチ型積層板の製造方法
上述した方法を用いて、
図5に示したサンドイッチ型積層構造を形成できる。別の実施の形態において、サンドイッチ型積層構造のコアを別個に調製する。次いで、フュージョン・プロセスを用いて、コアに各層を加える。コアを別に形成することの動機の1つは、機械的性質や熱的性質などの、コアの性質を向上させる追加の工程を考慮することにある。例えば、サンドイッチ構造のコアは、サンドイッチ構造の形成前に、焼鈍工程が施されるガラス材料であってもよい。
【0057】
図18は、2つの片側オーバーフロー・フュージョン・パイプ70R,70Lの間に挟まれたコア基板250を示している。粘性流動性材料252,254がフュージョン・パイプ70R,70Lに供給され、それぞれ、板状流れ256,258を形成するように制御された様式でオーバーフローさせることができる。板状流れ256,258は、コア基板250の表面250a,250bと合体して、所望の厚さに引き出される、サンドイッチ構造を形成する。
フュージョン成形された表面にコーティングを施す方法
図19において、両側オーバーフロー・フュージョン・パイプ42(先に
図6Aに示した)を用いて、無垢な表面262a,262bを有する板状流れ262を形成する。板状流れ262がまだ粘性流動性形態にある間に、スロット/トラフタイプの供給システム264を用いて、板状流れ262の表面262aにコーティング材料266を供給する。
【0058】
スロット/トラフタイプの供給システム264以外の他の供給システムを用いて、コーティング材料266を供給しても差し支えない。例えば、
図20は、オーバーフロー流路268により供給されているコーティング材料を示している。コーティング材料266は、流路268中に供給され、制御された様式で堰提270を超えてオーバーフローさせられる。堰提270は、コーティング材料266が、堰提270からオーバーフローするときに表面262aと合流するように表面262aに対して配置されている。板状流れ262の他の表面262bを被覆するために、別のオーバーフロー流路268b(または他の供給システム)を提供しても差し支えない。
【0059】
フュージョン成形された表面262aをコーティングする別の方法は、フュージョン成形された表面262a上にコーティング材料を吹き付ける工程を有してなる。
図21は、板状流れ262の表面262aに吹き付けられているコーティング材料266を示している。コーティング材料266は、板状流れ262を引き出しながら吹き付けても差し支えない。コーティング材料266がポリマーである場合、放射線、マイクロ波、または熱により、272で示されるようにその後硬化させることができる。
【0060】
上述した全てのコーティング方法について、板状流れ262は、流動性または溶融形態にあるときに非常に反応性が高く、接着剤を用いずに、コーティング材料266が、板状流れ262の表面と強力な結合を形成することができる。
ガラスセラミック層を有する積層板の製造方法
ガラスセラミック層の核形成剤が適切な位置で供給システムに導入されるという改造が加えられた上述した方法を用いて、ガラスセラミック層を有する積層板を形成することができる。核形成剤は、供給システムの適切な位置に消耗材料(核形成剤を含有する)のブロックを配置することによって、ガラス供給システムに導入できる。ある実施の形態において、ガラスセラミック層は、積層板の内部に埋め込まれている。そのような埋め込み積層体を形成する方法をここに説明する。
【0061】
前述したように、フュージョン・プロセスのモデル化における近年の進歩によって、完成した板の任意の位置で最終的に終わる供給システムにおける正確な位置をマッピングすることが可能になった。
図22Aは、そのようなマップの例を示している。マップ300は、所望の層構造を形成するために溶融物304内のどこに消耗材料のブロック302を配置するべきかを示している。線306は、成形された板の表面で最終的に終わる溶融物304の部分の境界を画定している。線310は、形成された板内に埋め込まれる溶融物304の部分の境界を画定している。
図22Bは、形成された板の表面に対応する表面ガラス組成物312および形成された板のコア層に対応する埋め込まれたガラス組成物314を示している。
【0062】
動作中、例えば、
図22Aおよび22Bのマップ300に示された組成変異を有する溶融物が、前述したように両側オーバーフロー・フュージョン・パイプに供給されて、板状流れを形成する。最終的なガラス板は、消耗材料からの元素を含む埋め込まれた層を有するであろう。次いで、最終的なガラス板にセラミック化プロセスを施して、埋込み型ガラスセラミック層を形成することができる。
【0063】
一般に上述した方法を用いて、表面層とは異なる組成の埋込み層を有する積層板を形成することができ、ここで、所望の組成変異を導入するために消耗材料が用いられることに留意されたい。
【0064】
ガラスセラミック層を有する積層板を形成する代わりのプロセスは、ガラスセラミック層を別個に形成し、次いで、フュージョン・プロセスを用いて、サンドイッチ型積層板について上述したものと同様の様式でガラスセラミック層に表面層を加える各工程を有してなる。
【0065】
上述した方法の様々な組合せを用いて、積層板を形成できることが当業者には理解されるであろう。
【0066】
本発明を、限られた数の実施の形態を参照して説明してきたが、この開示を受けた当業者には、ここに開示された本発明の範囲から逸脱しない他の実施の形態を考え出せることが認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。