特許第5911564号(P5911564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911564マルチカラードフューズドデポジションモデリングプリント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911564
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】マルチカラードフューズドデポジションモデリングプリント
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20160414BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20160414BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20160414BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-509648(P2014-509648)
(86)(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公表番号】特表2014-516829(P2014-516829A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012056009
(87)【国際公開番号】WO2012152510
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】102011075540.3
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス プリデール
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ポッペ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コールシュトルーク
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ハマン
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】クリス ベクス
(72)【発明者】
【氏名】リュド デヴァエルヘインス
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06129872(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327479(US,A1)
【文献】 特開2006−192616(JP,A)
【文献】 特表2004−532753(JP,A)
【文献】 特開2005−138422(JP,A)
【文献】 特開2001−047518(JP,A)
【文献】 特表2013−506581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する装置であって、
支持材料をプリントする第1のプリントヘッドと、
造形材料をプリントする第2のプリントヘッドであって、該第2のプリントヘッドに前記造形材料がフィラメント(2)の形態で供給される第2のプリントヘッドと、
を備え、該第2のプリントヘッドは、少なくとも2つの領域からなるノズル(1)を有し、該ノズルの上側の領域ではポリマーが固形である一方、下側の領域では溶融(5)されている、フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する装置において、
前記ノズルの上側の領域でまだ固形のフィラメントが、調量装置を有する複数の貯蔵容器(3)からの添加剤及び/又は着色剤によりコーティングされることを特徴とする、フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する装置。
【請求項2】
前記着色剤及び/又は添加剤は、コーティング前にダイナミックミキサ(4)内で、該ダイナミックミキサに種々異なる添加剤及び/又は着色剤が供給され、前記まだ固形のフィラメントが、前記ダイナミックミキサ内で形成された混合物によりコーティングされるように、互いに混合される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第2のプリントヘッドは、前記ダイナミックミキサ(4)に加え、スタティックミキサを前記ノズルの下側の領域に有する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する方法であって、
当該方法によって、請求項1から3までの少なくとも1項記載の装置を用いて、フィラメント(2)の形態の造形材料を着色剤及び/又は添加剤によりコーティングし、かつ
ダイナミックミキサ(4)に種々異なる添加剤及び/又は着色剤を供給し、該着色剤及び/又は添加剤をコーティング前に前記ダイナミックミキサ(4)内で互いに混合し、前記ノズルの上側の領域でまだ固形のフィラメントを、形成された混合物によりコーティングすることを特徴とする、フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する方法。
【請求項5】
前記着色剤は、少なくとも3原色及びブラックを含み、それぞれ調量装置を有する別個の貯蔵容器(3)内に提供されている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤は、単数又は複数の付着を改善する添加剤であり、別個の貯蔵容器(3)から提供されているか、又は単数又は複数の着色剤と混合されて提供されており、かつ前記添加剤により、それぞれの造形材料及び/又は支持材料を、溶融後にフィラメント相互の付着を改善する作用が達成されるようにコーティングする、請求項4記載の方法。
【請求項7】
3次元の物体を製造する装置は、前記第2のプリントヘッドと同様に形成されている第3のプリントヘッドを備え、該第3のプリントヘッドは、第2の造形材料のためのフィラメントを有する、請求項4から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記第2のプリントヘッドは、着色前は無色の不透明の造形材料を有し、前記第3のプリントヘッドは、着色前は無色の透明の造形材料を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
両プリントヘッドは、それぞれの固有の混合装置でもって、同じ着色剤貯蔵容器にアクセスする、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記造形材料は、熱可塑性の材料である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第2のプリントヘッド及び/又は任意選択的な前記第3のプリントヘッドからの造形材料は、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン‐ターポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、HDPE、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)又はこれらのポリマーのうちの少なくとも2つからなる混合物である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
第3のプリントヘッドからの造形材料は、ポリメタクリレート又はポリカーボネートである、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記第1のプリントヘッドからの支持材料は、酸、塩基又は水に溶ける性質を有するポリマーである、請求項4から12までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項14】
それぞれの色調をコンピュータを基礎とするCADプログラムに入力し、その際に、座標に加えて製造のための色情報並びに材料及び色の設定の調整のための色情報を含むデータを提供し、これにより調量装置の調整と、貯蔵容器からの各原色あるいはブラックの制御された調量供給とによって、それぞれの色調を調節する、請求項4から13までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項15】
着色剤又は添加剤に加えて別の顔料を有する別の着色剤貯蔵容器を備える、請求項4から14までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項16】
前記顔料の少なくとも1つはメタリック顔料又は蛍光顔料である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
添加剤及び/又は着色剤は、定着剤、接着剤又はマイクロ波、熱、UV光若しくは磁界によって活性化可能な添加剤を含み、任意選択的には無色である、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多色の3次元のオブジェクトを製造する改良型のフューズドデポジションモデリング(Fused Deposition Modeling(FDM):熱溶解積層)法に関する。特に本発明は、従来技術と比較して特に良好な彩色を有する3D‐オブジェクトを製造可能な3D‐プリント法に関する。本発明に係る方法は、本来のオブジェクトを製造するために使用されるポリマーストランド又はこのポリマーストランドから結果的に生じる溶融物が、表面的にノズル内で着色されるか、又は添加剤によりコーティングされる点に基づく。
【0002】
従来技術
ラピッド・プロトタイピング(Rapid‐Prototyping(RP):迅速成形)法あるいはラピッド・マニュファクチャリング(Rapid‐Manufacturing(RM):迅速製造)法は、手元にある3次元のCADデータを、できる限り手作業による回り道又は手作業による成形を行うことなく、直接かつ迅速にワークピースにおいて具現化することを目的とする製造方法である。
【0003】
ラピッド・プロトタイピング法には、現在、種々異なる方法が存在する。これらの方法は、2つのグループ、すなわちレーザを基礎とする方法と、レーザを使用しない方法とに大別される。
【0004】
最もよく知られ、かつ同時に最も歴史のあるレーザを基礎とする3D‐プリント法は、ステレオリソグラフィ(Stereolithographie(SLA):光造形法)である。ステレオリソグラフィの場合、レーザによって、その照射を受けて硬化可能なポリマーの液状の組成物が、層状に硬化される。当業者にとって、こうして製造されたワークピースの表面が、事後的にのみカラーリング可能であることは、自明である。このことは、手間あるいはコスト及び時間のかかる作業である。
【0005】
類似の方法は、セレクティブレーザシンタリング(Selective Laser Sintering(SLS):粉末焼結造形)法である。セレクティブレーザシンタリング法の場合、粉末状の原材料、例えば熱可塑性樹脂又は焼結可能な金属が、上述のSLAと同様に、レーザによって層毎に選択的に焼結される。この方法をもってしても、第1の工程では、単色の3D‐オブジェクト又は不特定に着色された3D‐オブジェクトが入手されるにすぎない。同じことは、第3のレーザを基礎とする方法である「ラミネーテッドオブジェクトマニュファクチャリング(Laminated Object Manufacturing(LOM):薄膜(板)積層法)」でも云える。ラミネーテッドオブジェクトマニュファクチャリングの場合、接着剤の付いた紙ウェブ又はプラスチックシートが、積層されて層毎に接着され、レーザによって切断される。オブジェクトの事後的な着色は、例えばUS6713125号に記載されている。
【0006】
多色のオブジェクトを製造するためにも使用可能な公知の3D‐プリント法は、UV‐インクジェット(UV‐Inkjet)法である。この3工程よりなる方法の場合、粉末状の材料が敷かれて薄層が形成され、この薄層上にUV硬化型の液体が、最終的に形成される3次元の製品の各層の形状にプリントされ、最終的に、プリントされた層が、UV源によって硬化される。この工程は、層毎に繰り返される。
【0007】
EP1475220号では、硬化剤を含むそれぞれ異なって着色された液体が使用され、WO2008/077850号では、付加的に1つのチャンバ内でプリント直前に混合される。こうして選択的な着色が可能である。しかし、混合チャンバによっては、鮮明な色の移り変わりは不可能である。さらに、このような方法は、硬化の境界が不鮮明であり、このことは、平滑性の低い表面、及び場合によっては不均質な着色に至りかねない。WO01/26023号には、それぞれ異なる弾性特性を有するオブジェクト部分を生じる、それぞれ異なる色の硬化剤組成物を有する2つのプリントヘッドが記載されている。しかし、2以上の色については記載されていない。
【0008】
UV光の代わりに熱放射を利用して硬化を実施し、やはりそれぞれ異なる色の硬化剤組成物を使用する変化態様は、WO2008/075450号に記載されている。
【0009】
GB2419679号には、それぞれ異なって着色されたポリマー粒子が選択的に敷かれ、それぞれ異なる波長で硬化可能な方法が開示されている。この方法は、著しく手間及びコストがかかると同時に、不鮮明な彩色に至る。
【0010】
WO2009/139395号に記載のインクジェット‐3D‐プリントに類似の方法では、色のついた液体が層状に塗工され、選択的に、第1の液体と硬化反応するに至る第2の液体がプリントされる。このような方法は、硬化されない液体層間で混合が生じる点は度外視して、色を層状に形成可能なだけである。
【0011】
別の方法は、スリーディメンジョンプリンティング(Three Dimension Printing(TDP))である。この方法の場合、インクジェット法と同様、粉末状の材料、ただし好ましくはセラミックである粉末状の材料が、熱可塑性のポリマーの溶融物の1つにより、層毎に選択的に含浸される。プリント層毎に、粉末状の材料からなる新しい層が敷き詰められねばならない。熱可塑性樹脂が硬化すると、3次元のオブジェクトが形成される。
【0012】
US2004/0251574号に記載の方法の場合は、熱可塑性樹脂のプリントに続いて、選択的に着色剤がプリントされる。この方法の利点は、極めて選択的にプリント可能である点にある。しかし、この方法の欠点は、(セラミック)粉末と結合剤とからなる複合材中への着色剤の均質な浸透を実現することは不可能であるため、均質かつ鮮烈な彩色が実現不能である点にある。
【0013】
EP1491322号に記載の方法の場合は、2つのそれぞれ異なる材料がプリントされる。第1の材料は、結合剤と、第2の材料と接触すると沈殿して選択的に表面を着色する着色剤とを含む。こうして、比較的良好な色特性がオブジェクトの表面に実現可能である。しかし、問題は、両材料の均質な混合と、手間及びコストのかかる2段階のプロセスである。如何にして良好な彩色を多色プリント時において保証するのか、あるいはそもそも多色プリント時に良好な彩色を保証し得るのかについては、記載されていない。
【0014】
US6401002号では、それぞれ異なる着色剤と結合剤とを含むそれぞれ異なる液体が使用される。これらの液体は、別々に滴下されるか、又は管路を介して1つのノズル内で滴下前にまとめられる。当業者であれば、どちらの方法も最適な彩色には至らないことを認識している。第1の方法の場合、粘性の液体中の着色剤の混合が表面上で実施される。この混合が完全に実施されることは、極めて稀である。第2の方法の場合、管路内の圧力差に基づいて極めて強い色のばらつきが発生し得る。
【0015】
プリント法による3次元のオブジェクトの製造に関して最も省材料であり、機械的な構成に関しても最も好適と云える方法は、フューズドデポジションモデリング(FDM)である。この方法は、小さな変更が加わると、セレクティブデポジションモデリング(Selective Deposition Modeling(SDM))とも称呼される。
【0016】
FDM法の場合、2つの異なるポリマー細線が1つのノズル内で溶融され、選択的にプリントされる。一方の材料は、支持材料(サポート材料)である。支持材料は、例えばプリントプロセス中に支持すべき3D‐オブジェクトのオーバハング部をいずれプリントすることになる場所にのみ必要とされる。この支持材料は後に、例えば酸、塩基又は水中に溶解させることで除去可能である。他方の材料(造形材料あるいはモデル材料)は、本来の3D‐オブジェクトを成形する。この場合も、プリントは、通常は層状に実施される。FDM法が初めて記載されたのは、US5121329号である。着色の概略は、US2000/20111707号に言及されているものの、詳細については説明されていない。
【0017】
EP1558440号に記載の方法の場合は、個々の層が、続く工程でカラープリントされる。この方法は、時間がかかり、既に硬化した熱可塑性樹脂にカラープリントしても、分解能の低い彩色にしか至らない。
【0018】
US6165406号に記載のカラーの3D‐プリント法の場合は、各々の着色剤のために別々のノズルが使用される。しかし、これにより混合色は、著しく限定的にのみ可能であり、彩色は、極めて単純である。
【0019】
US7648664号に記載のFDMの変化態様の場合は、それぞれ異なって着色された顆粒状の造形材料が使用され、互いに別々に溶融され、かつプリントされる前に、色に応じて、接続された押出機によって互いに混合される。この方法は、装置コストが極めて高く、FDMの多くの利点を喪失してしまう。
【0020】
EP1432566号に記載の極めて類似のシステムでは、溶融された顆粒が、直接プリントされる前に、加熱されたプリントヘッド内で直接混合される。この混合は、完全には実施され得ず、プリントの画質は、相応に悪い。さらにこのシステムには、顆粒又は粉末を使用しなければならず、これらを機械内で別々に保管して溶融しなければならないという欠点も存在する。
【0021】
US6129872号には、造形材料が1つのノズル内で溶融され、ノズルの端部でこの溶融物に種々異なる着色剤混合物が選択的に調量供給される方法が記載されている。しかし、この方法は、不十分な混合及び不鮮明な彩色につながる。
【0022】
課題
課題は、鮮明かつ明瞭な彩色を有する選択的に着色された多色の3次元のオブジェクトを製造可能な3D‐プリント法を提供することである。
【0023】
別の課題は、多色のオブジェクトをプリントする、迅速に実施可能な好適な3D‐プリント法を提供することである。
【0024】
さらに別の課題は、付加的な加工工程によって色付けせずに済むカラーのオブジェクトを提供することである。
【0025】
明示しない別の課題は、以下の説明、特許請求の範囲及び実施例の全体構成から読み取れる。
【0026】
解決手段
プリントヘッドなる概念は、本発明の範囲内で、FDM‐3D‐プリント法でフィラメントを送給し、溶融し、着色しかつ塗工する装置全体と解される。
【0027】
組成物なる概念は、本発明の範囲内で、本発明においてポリマーストランド上に塗工される組成物と解される。組成物は、染料、顔料及び/又は添加剤を含む。
【0028】
フィラメントなる概念は、本発明の範囲内で、ストランドの形態の造形材料あるいは支持材料の原形状と解される。フィラメントは、プリントヘッド内で本発明により溶融され、その後、プリントされて3D‐オブジェクトを形成する。フィラメントは、熱可塑性の加工可能な材料である。フィラメントは、通常、ポリマーフィラメントであるが、これに限定されるものではない。また、ポリマーフィラメントは、例えば部分的にのみ熱可塑性ポリマーのマトリックス材料と、別の充填剤又は例えば金属とからなっていてもよい。
【0029】
上記課題は、フィラメントから単色又は多色の3次元のオブジェクトを製造する新型の装置を提供することで解決される。特に装置は、フューズドデポジションモデリング(FDM)法で作業する装置である。本発明に係る装置は、少なくとも、支持材料をプリントする第1のプリントヘッドと、フィラメントの形態で供給される造形材料をプリントする第2のプリントヘッドとを有している。その際、第2のプリントヘッドは、ノズルを有している。ノズルは、他方、少なくとも2つの領域からなっている。ノズルの第1の上側の領域では、ポリマーは固形であり、第2の下側の領域では、ポリマーは溶融している。その際、プリントヘッド内での上側の領域における固形状態と、下側の領域における溶融状態との間の移行は、連続的である。
【0030】
特に本発明に係る装置は、第2のプリントヘッドにおいて、調量装置を有する複数の貯蔵容器からの添加剤及び/又は着色剤がコーティングされることを特徴とする。コーティングは、溶融前のまだ固形のフィラメントにおいてノズルの上側の領域で実施可能であり、またノズルの下側の領域で造形材料の溶融物ストランドにおいても実施可能である。さらにコーティングは、直接ノズルの出口においてか、又はノズルの出口の直後において実施されてもよい。さらにこの実施の形態においては、すべてのコーティング装置がプリントヘッドの一部と見なされ得る。
【0031】
こうして、表面的にのみ着色された造形材料が得られる。これにより、当該方法は、全体が着色されたポリマーマトリックスと比較して、省材料の方法である。さらに、添加剤、特に定着剤は、こうして、3D‐オブジェクトの安定性を向上させるために必要とされる場所に正確に被着される。
【0032】
任意選択的な実施の形態において、組成物のための導入部の上流には、プリントヘッドの外面に混合装置が設けられている。特に混合装置は、ダイナミックミキサである。このダイナミックミキサには、種々異なる添加剤及び/又は着色剤がまず供給される。ダイナミックミキサ内で形成された混合物は、その後、プリントヘッドに導入される。
【0033】
本実施の形態は、2つの異なる変化態様で実施可能である。第1の変化態様では、ダイナミックミキサは、混合物がポリマー溶融物中にノズルの下側の領域において導入されるように、ノズルに取り付けられている。
【0034】
第2の変化態様では、ダイナミックミキサは、ノズルの上側でプリントヘッドに取り付けられており、着色剤及び/又は添加剤からなる混合物は、固形のフィラメントの表面に塗工される。その際、混合物の分配は、部分的に溶融物中への拡散によって実施可能である。しかし、溶融物中への均質な分配は、上述のように、3次元のオブジェクトのいずれ形成される表面が専ら溶融物ストランドの表面によって形成されるために不要である。これにより、この変化態様によって特に、比較的低い着色剤消費量で利用可能な方法を提供可能である。同じことは、添加剤、とりわけ3次元のオブジェクト内の個々の層間の付着改善を達成すべき添加剤についても云える。このような添加剤は、専ら溶融物ストランドの表面において必要となる。
【0035】
別の実施の形態において、プリントヘッドは、ダイナミックミキサに加え、スタティックミキサをノズルの下側の領域に有している。
【0036】
装置内で使用される着色剤は、種々異なる着色剤の組成物、例えば3原色、例えばマゼンタ、シアン及びブルーあるいはイエローの減法混色、又は光の3原色であるレッド、グリーン及びブルーの加法混色である。3原色の使用時、好ましくは付加的にブラックが第4の着色剤として追加可能である。択一的には、造形材料に応じて、ホワイトも第4又は第5の着色剤として使用可能である。しかし、トゥルーカラーシステム(true color Systeme)のためには、システム次第で20色までの着色剤が必要な場合もある。
【0037】
種々異なる組成物の上述の色系は、当業者にとって既に以前より2D‐プリントにおいて公知である。使用されるすべての着色剤は、それぞれ固有の調量装置を有する別々の貯蔵容器内にそれぞれ存在し、貯蔵容器から、実施の形態次第でノズル又はダイナミックミキサ内に調量されて供給される。
【0038】
添加剤は、好ましくは単数又は複数の付着を改善する添加剤である。添加剤は、択一的又は付加的には、別の添加剤、例えばUV架橋剤又は熱若しくは磁気によって活性化可能な接着剤であってもよい。さらに、触覚を改善する添加剤、防汚性あるいは耐スクラッチ性を改善するコーティング成分、又は表面を安定化させる添加剤、例えばUV‐安定剤を添加してもよい。さらに、産業上の利用にとって興味深いのは、熱伝導性、電気伝導性又は帯電防止性を改善する添加剤の添加である。
【0039】
添加剤は、別個の貯蔵容器から提供されるか、又は単数又は複数の着色剤と混合されて提供される。それぞれの造形材料及び/又は支持材料は、この添加剤によって、溶融後にフィラメント相互の付着を改善する作用が達成されるようにコーティングされる。
【0040】
特別な実施の形態において、3次元の物体を製造する装置は、第3のプリントヘッドを有している。この任意選択的な第3のプリントヘッドは、第2のプリントヘッドと同様に形成されている。特にこの第3のプリントヘッドによって、第1の造形材料とは異なる第2の造形材料のためのフィラメントがプリントされる。着色剤組成物は、任意選択的には、プリント時に必要とあれば透明の造形材料に不透明の外観を呈させる充填剤を含んでいてもよい。
【0041】
例えば第2のプリントヘッドは、着色前には無色の不透明の造形材料を有し、第3のプリントヘッドは、着色前には無色の透明の造形材料を有していてもよい。この場合、好ましくは、両プリントヘッドは、それぞれ、同じ貯蔵容器にアクセスする固有の混合装置を有している。
【0042】
好ましくは、造形材料は、それぞれ、熱可塑性の材料である。好ましくは、第2のプリントヘッド及び/又は任意選択的な第3のプリントヘッドからの造形材料は、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン‐ターポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、HDPE、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)又はこれらのポリマーのうちの少なくとも2つからなる混合物若しくは少なくとも50質量%がこれらの上述のポリマーのうちの1つからなる混合物である。(メタ)アクリレートなる表記は、本明細書においては、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等及びアクリレート、例えばエチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート等並びに両者の混合物を意味している。
【0043】
第3のノズルからの第2の任意選択的な造形材料に関して、とりわけポリメタクリレート又はポリカーボネートが好適である。
【0044】
第1のプリントヘッドからの支持材料に関して、好適であるのは、酸、塩基又は水に溶ける性質を有するポリマーである。
【0045】
本発明においてフューズドデポジションモデリング(FDM)法で使用される装置は、一般には従来技術に相当し、これにより通常、それぞれの色調がコンピュータを基礎とするCADプログラムに入力され、その際に、座標に加えて製造のための色情報並びに材料及び色の設定の調整のための色情報を含むデータが提供されるように形成されている。その際、調量装置の調整と、貯蔵容器からの各原色あるいはブラックの制御された調量供給とによって、それぞれの色調が調節される。
【0046】
任意選択的には、装置の第2あるいは第3のプリントヘッドは、ブラック及び彩色着色剤若しくは原色着色剤又は添加剤に加えて別の顔料を有する別の貯蔵容器を有していてもよい。これらの別の顔料の例は、メタリック顔料及び/又は蛍光顔料である。
【0047】
既述のように貯蔵容器は、添加剤を有していてもよい。その際、組成物は、マイクロ波又は磁界によって加熱可能な添加剤、定着剤又は接着剤を含んでいる。これらは、1つ又はすべての組成物に添加されていてもよいし、又は別々の貯蔵容器から添加されてもよい。上述の場合、これらの組成物は無色である。適当な添加剤の具体的な選択肢は、当業者であれば組成物及び使用される造形材料に基づいて選択可能である。
【0048】
さらに単数又は複数の貯蔵容器は、第2及び/又は第3のプリントヘッドからのフィラメントと接触して架橋に至らしめ、その結果、完全に又は部分的にエラストマー又は熱硬化性樹脂からなる3次元のオブジェクトが得られる架橋剤、開始剤又は促進剤を有していてもよい。これらの添加剤がフィラメントの熱可塑性樹脂と合流すると、マトリックスの硬化に至る化学反応が実施される。
【0049】
表面的な架橋は、まずマイクロ波、熱、UV光又は磁界によって活性化可能な添加剤がコーティングとして塗工され、これらが事後的に後続の工程において相応に活性化されることによって、事後的に実施されてもよい。こうして、旧フィラメントの表面において特に好適な架橋が起こる。しかし、拡散によって、これらの事後的な架橋は、旧フィラメント内で実施されてもよい。
【0050】
択一的には、それぞれ異なる貯蔵容器からの添加剤は、混合後、自ら互いに反応して、例えばフィラメント表面における化学的な架橋及び/又はプリント後のフィラメント相互の付着改善に至らしめ得る。
【0051】
一般に貯蔵容器は、カラープリントのために2D‐インクジェット‐カラープリンタのための従来技術において公知であるような可動のカートリッジである。カートリッジは、簡単かつ個別に交換可能あるいは更新可能であるように形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】未溶融フィラメントを表面的にコーティングするとともに、着色剤及び/又は添加剤の組成物を先行してダイナミックミキサ内で均質に混合する一実施の形態を例示する図である。図中、以下の符号が存在する。
【符号の説明】
【0053】
1 ノズル
2 フィラメント
3 貯蔵容器(本図では1つのみを例示した。)
4 ダイナミックミキサ
5 造形材料の溶融物
6 コーティングユニット
図1