(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリイミド樹脂は重量平均分子量(GPC(Gel Permeation Chromatography)測定法に基づく)が40,000〜80,000g/molである請求項1に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
前記ジアジド系感光性化合物は、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート、および(1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネートの中から選ばれた1種以上を含む請求項1又は2に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
前記ポジティブ型感光性樹脂組成物は、1.5±0.05μmの厚みの膜における波長550nmでの光透過率が95%以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
前記ポリイミド樹脂を、芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドとを第1溶媒の存在下で重合してポリアミド酸溶液を製造し、前記ポリアミド酸溶液を化学硬化剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化させた後、第2溶媒に投入し、濾過および乾燥させることにより製造する請求項9に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
前記芳香族ジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AP−AF)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた1種以上を含む請求項10に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
前記芳香族ジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(HBDA)、3,3’−(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)(ODPA)および3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の中から選ばれた1種以上を含む請求項10又は11に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
前記第1溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびジエチルアセテートの中から選ばれた1種以上を含み、前記第2溶媒は、水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選ばれた1種以上を含む請求項10〜12のいずれか1つに記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
前記化学硬化剤は、酢酸無水物(AA)、無水フタル酸(PA)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)およびメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)の中から選ばれた1種以上を含む請求項10〜13のいずれか1つに記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
前記イミド化触媒は、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン、トリエチルアミンおよびジメチルアニリンの中から選ばれた1種以上を含む請求項10〜14のいずれか1つに記載のポジティブ型感光性樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体分野では、素子の高密度化および高集積化により、加工が容易で200℃以上の焼成工程にも耐えられる安定な材料が好まれており、特にポリイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐熱酸化性などに優れた特性を有しており、TFT−LCDの電極保護膜などの電子材料から自動車、航空機などの耐熱素材に至るまで広範囲に用いられている。
【0003】
初期のポリイミド樹脂は、パターン形成のために、単純に上部にフォトレジストをコートしてそれをエッチングする方法が使用されたが、ポリイミド自体に感光機能を与えた感光性ポリイミドを使用しながら、フォトレジストによるリソグラフィー工程が省略されて工程簡素化および生産性の向上に寄与することができることになった。
【0004】
ポジティブ感光性ポリイミド樹脂に関する従来の技術としては、ポリアミド酸(polyamic acid)に感光基たる光酸発生剤を混合する化学増幅法や、ポリアミド酸と溶解抑制剤たるナフトキノンジアジド(naphtoquinonediazide)化合物とを混合する方法、可溶性ポリイミドとナフトキノンジアジド化合物とを混合して使用する方法などが提案された。ところが、これらの従来の技術は、硬化後に素子の信頼性が低下するうえ、高解像度のパターンの実現が難しく、多量の感光剤により物性が脆化するという問題点を持っている。
【0005】
また、本来のポリイミド樹脂は、高い芳香族環の密度により色相が黄色を帯びており、可視光線領域における透過度が低く、光透過率が低いという欠点も持っている。
【0006】
一般に、ポリイミド樹脂は、芳香族ジアミン(diamine)と芳香族ジアンヒドリド(dianhydride)とを重合してポリアミド酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化させることにより製造する。ポリイミド樹脂を製造するために、芳香族ジアミン成分としてはオキシジアニリン(ODA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)、メチレンジアニリン(MDA)などを主に使用しており、芳香族ジアンヒドリド成分としてはピロメリト酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)などを主に使用している。
【0007】
一方、有機発光素子(Organic light Emitting Diode)は、2つの電極の間に有機発光材料を用いて薄膜を形成し、両電極に電流を加えると、陽極と陰極においてキャリアたる電子および正孔が有機薄膜層内に注入され、これらのキャリアが再結合しながら発生するエネルギーが光の形態で放出されるディスプレイを意味する。これは、電圧を加えると有機物が光を発する特性を利用したもので、有機物によって赤色(red)、緑色(green)および青色(blue)を発する特性を用いて色調を実現する。
【0008】
有機発光素子を製造する方法の一例としては、ITOなどの透明電極を蒸着した透明基板上にフォトレジストをコーティング、露光、現像、エッチング、剥離などの過程を経てパターン化し、ここにフォトレジストを用いて絶縁層を形成し、絶縁層パターン上には隔壁をさらに形成する。前記作業の後、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層および正孔注入層の順に有機薄膜を蒸着し、その上に金属電極層を蒸着する。最終的に封止材を用いて密封した後、モジュールを組み立てて有機発光素子を製作する。
【0009】
上述したような絶縁層パターン工程は、一般に、基材上に液状のポジティブ型感光性樹脂組成物を滴下してスピンコーティングによって基材の全面にわたって均一に塗布した後、予備熱処理(prebake)と露光工程によって回路を形成する。ITO縁部の劣化防止と上下短絡防止のために1000〜1200Åの厚さに絶縁層を形成する。
【0010】
前記絶縁層は無機絶縁膜または有機絶縁膜から構成される。無機絶縁膜の材料としては、SiO
2、SiN
xなどよりなる群から1種以上が選択できる。
【0011】
絶縁用感光性樹脂組成物としては、無機絶縁膜と共に、イミド系高分子やアクリル系高分子などの有機絶縁膜を大部分使用しているが、工程上で一部の残渣発生などにより工程マージンを確保することが容易でなく、高感度のパターンにおける適用が難しいという欠点を持っている。その上、ジアミンと酸無水物から得られる従来のポリイミドは、固有な褐色の色相を持っており、光透過性の改善に限界がある。
【0012】
よって、現像において残渣なしで高感度回路の実現が可能であり、従来のポリイミドの色相を改善して光透過性を高めるうえ、絶縁抵抗性も同時に確保することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、パターン工程における優れた現像性、および可視光線波長領域(400nm〜650nm)での95%以上の光透過性を有するポジティブ型感光性樹脂組成物、並びにこれから形成された絶縁膜および有機発光素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施態様は、アルカリ可溶性樹脂、ジアジド系感光性化合物および感度増進剤を含んでなり、前記アルカリ可溶性樹脂はイミド化度(DI、degree of imidization)が50%〜75%の範囲にあるポリイミド樹脂である、ポジティブ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明の一実施態様において、前記ポリイミド樹脂は、粘度100cps〜700cpsのポリアミド酸溶液をイミド化させて製造された樹脂であってもよい。
【0016】
本発明の一実施態様において、前記ポリイミド樹脂は、重量平均分子量(GPC(Gel Permeation Chromatography)測定法に基づく)が40,000〜80,000g/molであってもよい。
【0017】
本発明の一実施態様において、前記ポリイミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドを第1溶媒の存在下で重合してポリアミド酸溶液を得て、得られたポリアミド酸溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液を第2溶媒に投入し、濾過および乾燥させることにより製造できる。
【0018】
本発明の一実施態様において、前記芳香族ジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AP−AF)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施態様において、前記芳香族ジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(HBDA)、3,3’−(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)(ODPA)および3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施態様において、前記第1溶媒はm−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびジエチルアセテートの中から選ばれた1種以上であり、前記第2溶媒は水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施態様において、前記化学硬化剤は、酢酸無水物(AA)、無水フタル酸(PA)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)およびメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施態様において、前記イミド化触媒は、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン、トリエチルアミンおよびジメチルアニリンの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0023】
本発明の一実施態様において、前記ジアジド系感光性化合物は、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート、および(1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネートの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0024】
本発明の一実施態様において、前記感度増進剤は、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物は、光透過率が95%以上であってもよい。
【0026】
本発明の一実施態様において、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物は、誘電率が5以下であってもよい。
【0027】
本発明の他の実施態様は、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物から形成された絶縁膜を提供する。
【0028】
本発明の別の実施態様は、前記絶縁膜を備えた有機発光素子を提供する。
【0029】
本発明の別の実施態様において、前記有機発光素子はアクティブマトリクス型有機発光素子であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、ポジティブ型感光性樹脂組成物、並びにこれから形成された絶縁膜および有機発光素子に関するもので、具体的には、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、ジアジド系感光性化合物および感度増進剤を含んでなり、イミド化した重合樹脂のイミド化度(DI、degree of imidization)が50%〜75%の範囲にあるポリイミド樹脂を用いて、パターン工程における優れた現像性および可視光線波長領域(400nm〜650nm)での95%以上の光透過性を利点として有する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施態様によれば、アルカリ可溶性樹脂、ジアジド系感光性化合物および感度増進剤を含んでなり、前記アルカリ可溶性樹脂はイミド化度(DI)が50%〜75%の範囲にあるポリイミド樹脂である、ポジティブ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0033】
前記アルカリ可溶性樹脂は、粘度100cps〜700cpsのポリアミド酸をイミド化させたポリイミド樹脂であって、その重量平均分子量(GPC(Gel Permeation Chromatography)測定法に基づく)は40,000〜80,000g/molである。
【0034】
これを具体的に説明すると、前記ポリイミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドを第1溶媒の存在下で重合してポリアミド酸溶液を製造し、前記ポリアミド酸溶液を化学硬化剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化させた後、第2溶媒に添加し、濾過および乾燥させることにより製造されたものである。
【0035】
前記芳香族ジアミンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AP−AF)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた1種以上を使用することができる。特に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AP−AF)を使用することが、優れた光透過率および耐熱性を有する観点から好ましい。
【0036】
前記芳香族ジアンヒドリドとしては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(HBDA)、3,3’−(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)(ODPA)および3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の中から選ばれた1種以上を使用することができる。特に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)を使用することが、優れた光透過率および耐熱性を有する観点から好ましい。
【0037】
上述した芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドは、等モル量となるようにして、第1溶媒に溶解して反応させ、ポリアミド酸溶液を製造する。
【0038】
反応時の条件は特に限定されないが、反応時の温度は−20〜80℃が好ましく、反応時の攪拌時間は1〜48時間が好ましい。また、反応の際にアルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることがより好ましい。
【0039】
前記単量体の溶液重合反応のための第1溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であれば特に限定されない。
【0040】
前記第1溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびジエチルアセテートの中から選ばれた1種以上の極性溶媒を使用することができ、その他にもテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムおよびγ−ブチロラクトンを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
前記第1溶媒の含量について特に限定されないが、適切なポリアミド酸溶液の粘度を得るために、第1溶媒の含量は全体ポリアミド酸溶液に対して50〜95重量%であり、好ましくは70〜90重量%である。
【0042】
上述した製造方法で製造されたポリアミド酸溶液は、100cps〜700cpsの粘度を有するが、前記ポリアミド酸溶液の粘度が100cps未満である場合には、化学イミド化法による重合反応時間が遅くなって樹脂収得率および感光性が著しく低下し、700cpsを超える場合には、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が80,000g/mol以上と大きくなってパターン現像性が低下するという欠点がある。
【0043】
前記ポリアミド酸溶液をイミド化させるときは化学イミド化法を使用するが、前記ポリアミド酸溶液を化学硬化剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化させた後、第2溶媒に添加し、濾過および乾燥させることにより、固形化ポリイミドを製造する。
【0044】
前記化学硬化剤は、酢酸無水物(AA)、無水フタル酸(PA)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)およびメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)の中から選ばれた1種以上を含む。
【0045】
前記イミド化触媒は、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン、トリエチルアミンおよびジメチルアニリンの中から選ばれた1種以上を含む。
【0046】
前記第2溶媒は、ポリイミド樹脂の固形分を得るために、得られたポリアミド酸重合体を溶解することができない溶媒を用いて溶解度の差により固形分として析出される原理を適用することが可能な溶媒のうち、第1溶媒より極性が低いものを使用し、具体的には水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選ばれた1種以上であってもよい。
【0047】
この際、前記第2溶媒の含量について特に限定されるものではないが、製造されたポリアミド酸溶液100重量部に対して3〜20重量部を使用することが好ましい。
【0048】
前記濾過および乾燥させる条件は、第2溶媒、および固形化ポリイミド樹脂内に残存している第1溶媒の沸点を考慮して80〜100℃の温度で2〜6時間乾燥させることが好ましい。
【0049】
前記ポリイミド樹脂の乾燥温度が80℃未満である場合には、イミド化度が低くなって誘電率および漏れ電流特性が著しく低下し、100℃を超える場合には、イミド化度が高くなって解像度の低下および透過率の低下が生ずるという欠点がある。
【0050】
上述した方法で製造されたポリイミド樹脂は、重量平均分子量(GPC測定法に基づく)が40,000〜80,000g/molであることが好ましい。前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が上記の範囲内にある場合、パターン工程における良好な解像度の実現が可能な効果を得ることができる。
【0051】
前記ポリイミド樹脂が含まれた光分解性転写材料のコーティング厚さが1.0〜2.0μmであるとき、波長550nmにおける光透過率で表わすことができ、光透過率が85%以上、好ましくは90〜95%である。
【0052】
もし光分解性転写材料の波長550nmにおける光透過率が85%より低い場合であれば、フォトリソグラフィー工程において感度が低下して残渣が残るおそれがあり、絶縁性を阻害するおそれがある。
【0053】
上記および下記において、「重量平均分子量」は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、ポリスチレン当量の換算値として定義される。
【0054】
前記ジアジド系感光性化合物は、ポリヒドロキシ化合物とキノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって合成することができる。前記ジアジド系感光性化合物を得るためのエステル化反応は、ポリヒドロキシ化合物とキノンジアジドスルホン酸化合物をジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、クロロホルム、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペラジンまたは4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基性触媒を滴下して縮合させた後、得られた生成物を洗浄、精製、乾燥させて得られる。
【0055】
この際、キノンジアジドスルホン酸化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸および1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸などのo−キノンジアジドスルホン酸化合物、その他のキノンジアジドスルホン酸誘導体などを挙げることができる。
【0056】
前記キノンジアジドスルホン酸化合物は、アルカリ可溶性樹脂の溶解度を低める溶解阻止剤としての機能を有する。ところが、露光の際にはアルカリ可溶性であるため、それによりむしろアルカリでアルカリ可溶性樹脂の溶解を促進させる特性を持つ。
【0057】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類;2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,5−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類;2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノ、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノンなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類;2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,2’、3,3’,4,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類;没食子酸アルキルエステル類;オキシフラボン類などを挙げることができる。
【0058】
これらから得られたジアジド系感光性化合物の具体的な一例としては、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネートおよび(1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネートの中から選ばれた1種以上を挙げることができる。
【0059】
このようなジアジド系感光性化合物は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して30〜80重量部であることが現像性または溶解性の観点から有利である。もしアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して前記ジアジド系感光性化合物が30重量部未満で含有される場合には、解像度の問題により残渣が発生するおそれがあり、80重量部を超える場合には、造液の際に溶解性が低下して長期保管安定性および透過率に問題点が発生するおそれがある。
【0060】
前記ジアジド系感光性化合物は、アルカリ可溶性樹脂のアルカリに対する溶解度を減少させる溶解抑制剤として作用し、光が照射されると、アルカリ可溶性物質に変わってアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解度を増加させる役割を果たす。このように光照射による溶解度の変化により、本発明の光分解性転写材料は露光部位が現像される。
【0061】
前記感度増進剤は、感度を向上させるためのもので、その一例としては2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンの中から選ばれた1種以上であってもよい。
【0062】
前記感度増進剤は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して3〜15重量部であることが、感光効果の向上およびウィンドウ工程(window process)マージンの観点から有利である。
【0063】
一方、本発明における絶縁抵抗性は、光分解性転写材料のコーティング厚さが1.0〜2.0μmであるときの誘電率で表わすことができ、誘電率が5以下であるときに絶縁膜として好ましい。
【0064】
その他に、本発明の一実施態様に係る光分解性転写材料は、シリコンなどのレベリング剤、充填剤、酸化防止剤などのその他の成分または添加剤を含むことができ、このような添加剤は、本発明の属する分野で広く用いられる物質の中から任意に選択して使用することができる。
【0065】
上述したアルカリ可溶性樹脂であるポリイミド樹脂、ジアジド系感光性化合物および感度増進剤などを含む組成物を一定量の溶媒に分散させると、本発明の一実施態様に係るポジティブ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
前記溶媒の一例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、キシレン、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種以上を挙げることができる。
【0067】
本発明の他の実施態様によれば、上述したポジティブ型感光性樹脂組成物から形成された絶縁膜を提供する。
【0068】
本発明において、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物を用いて有機発光素子の絶縁層を形成する方法は、一例として、次のとおりである。前述の成分を造液して基板の表面に塗布し、予備熱処理(prebake)によって膜を形成することができる。コーティング方法はスピンコーターを使用し、予備熱処理の条件は組成物の比率によって異なるが、通常、ホットプレート(hot plate)を用いて90〜120℃で1〜10分間行う。この際、塗布膜の厚さは1.0〜2.0μmの範囲となるように調節する。次に、予備熱処理された塗布膜にマスクを位置させ、紫外線を照射した後、アルカリ水溶液によって現像して無駄な部分を除去することによりパターンを形成する。露光量は解像度によって決定される。現像液は、アルカリ水溶液であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類を使用するが、特にTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)2.38%水溶液で60〜180秒間行う。現像方法はスプレー法やディッピング法などを使用することができる。このパターンをホットプレートを用いて後熱処理(postbake)することにより、絶縁膜を完成することができる。この際、後熱処理は150〜260℃で4〜60分間加熱することにより行われることが好ましい。
【0069】
本発明において、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、改善されたポリイミド樹脂により優れたパターン現像性および光透過性を有するとともに、過絶縁抵抗性を有する。
【0070】
本発明の別の実施態様によれば、上述した絶縁膜を備えた有機発光素子を提供する。
【0071】
前記有機発光素子の製造方法は、特に限定されないが、次のとおり製造することができる。
【0072】
ITOなどの透明電極を蒸着した透明基板上に、フォトレジストをコーティング、露光、現像、エッチング、剥離などの過程を経てパターン化し、上述した方法によって絶縁層を形成し、絶縁層パターン上には隔壁をさらに形成する。前記作業の後、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層および正孔注入層の順に有機薄膜を蒸着し、その上に金属電極層を蒸着する。最終的に封止材を用いて密封した後、モジュールを組み立てて有機発光素子を製作する。
【0073】
本発明に係るポジティブ型感光性樹脂組成物は、露光の前にはジアジド系感光性化合物の溶解抑制作用によってアルカリ現像液に対して不溶性または難溶性特性を示し、露光によってジアジド系感光性化合物が変化することにより、アルカリ現像液に対して溶解する特性に変化するいわゆる「ポジティブ型」である。
【0074】
よって、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物から形成された絶縁膜を備えた有機発光素子は、アクティブマトリクス型有機発光素子である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の好適な実施例および比較例を説明する。ところが、下記実施例は本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0076】
<実施例1>
a.ポリイミド樹脂の重合
反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三つ口丸底フラスコに窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)81.051gを充填し、反応器の温度を0℃に降温した後、Bis−AP−AF9.1565g(0.25mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここに6FDA11.10625g(0.25mol)を添加し、1時間攪拌して6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して1時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度が470cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0077】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として酢酸無水物(SamChun社)とピリジン(SamChun社)をそれぞれ2当量添加し、ポリアミド酸溶液を80℃で1時間攪拌してポリアミド酸溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液30gを水300gに投入して沈澱させ、沈澱した固形分を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約18gの樹脂固形分粉末(イミド化樹脂の重量平均分子量が48,000g/molの樹脂)を得た。
【0078】
b.感光性樹脂組成物の製造
前記重合製造したポリイミド樹脂(重合中間体たるポリアミド酸溶液の粘度が470cpsであり、これをイミド化させた樹脂の重量平均分子量が48,000g/molの樹脂)100重量部に対して、感光性化合物((1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート)50重量部、感度増進剤(1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)12.5重量部、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)660重量部、その他の添加剤としてレベリング剤の用途にシリコン添加剤4.2重量部を添加して2時間攪拌させることにより、感光性樹脂組成物を製造した。
【0079】
<解像度の評価>
上述のように製造された感光性樹脂組成物をITO基材上に3.0μmの厚さにスピンコートした後、120℃のホットプレートで100秒間予備熱処理することにより、乾燥後の厚さが1.5±0.05μmのコーティング膜を形成した。前記基材をフォトマスクを用いて80mJ/cm
2程度の紫外線に照射した後、2.38%のTMAHアルカリ現像液で60秒間現像し、40秒間水洗すると、未露光部分は残り、回路を形成するが、この際の解像度を電子顕微鏡で観察した(最終厚さ1.5μm)。
【0080】
<残渣の評価>
解像度の評価と同一の方法で回路を形成するが、15μmの解像度パターンで残渣なしに現像が可能であるか否かを電子顕微鏡で観察した。
【0081】
<イミド化の評価>
前述のように製造されたポリイミド重合樹脂をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に50%溶液として製造し、ITO基板(50mm×50mm)にスピンコートした後、それぞれの試料をオーブンで100℃、150℃、200℃、250℃、300℃でそれぞれ30分ずつ硬化(curing)して各温度でのFT−IRスペクトルを得る。一般に、スペクトル測定結果、ポリイミドC−N−Cに由来する1370cm
−1とベンゼン環に由来する1496cm
−1の相対的なピークの積分比を測定し、下記数式でイミド化度(DI)を計算した。この際、100%イミド化が起こる条件である300℃で30分を基準として各吸収強度の比を計算した。
【0082】
[数式1]
【0083】
<光透過性の評価>
上述のように製造された感光性樹脂組成物をITO基材上に3.0μmの厚さにスピンコートした後、120℃のホットプレートで90秒間予備熱処理することにより、乾燥後の厚さが1.5±0.05μmのコーティング膜を形成した後、磁気分光光度計(UV−3101PC、SHIMADZU)法によって波長550nmでの光透過率を測定した。
【0084】
<誘電率の評価>
上述のように製造された感光性樹脂組成物をITO基材上に3.0μmの厚さにスピンコートした後、120℃のホットプレートで100秒間予備熱処理することにより、乾燥後の厚さが1.5±0.05μmのコーティング膜を形成した。前記基材をフォトマスクを用いて40〜80mJ/cm
2-の紫外線に照射した後、2.38%のTMAHアルカリ現像液で60秒間現像し、40秒間水洗した。230℃のホットプレートで1時間加熱して絶縁膜を形成した(最終厚さ1.5μm)。形成された絶縁膜上に金属電極(AI)を2,000Åの厚さに蒸着した(蒸着装備:Thermal Evaporator Model E306)。誘電率はPrecision Impedance Analyzer(Model:4294A、HP)を用いて測定した。
【0085】
<漏れ電流の評価>
前記製造された有機発光素子の電流流れから、漏れ電流量を漏れ電流測定器(JM Tech社製)を用いて測定した。
【0086】
<輝度の評価>
前記製造された有機発光素子の輝度を輝度計(Minolta社製)を用いて測定した。
【0087】
<比較例1>
a.ポリイミド樹脂の重合
実施例1と同一の組成でポリイミド樹脂を製造するが、但し、6FDAを完全に溶解させた後、溶液を常温に放置して1時間30分間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度が750cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0088】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として酢酸無水物(SamChun社)およびピリジン(SamChun社)をそれぞれ2当量添加し、ポリアミド酸溶液を80℃で1時間攪拌してポリアミド酸溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液30gを水300gに投入して沈澱させ、沈澱した固形分を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、120℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させることにより、約16gの樹脂固形分粉末(イミド化樹脂の重量平均分子量が65,000g/molの樹脂)を得た。
【0089】
b.感光性樹脂組成物の製造
実施例1と同一の組成を有する感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜の形成および評価は、実施例1と同様の方法で行った。
【0090】
<比較例2>
a.ポリイミド樹脂の重合
実施例1と同一の組成でポリイミド樹脂を製造するが、但し、6FDAを完全に溶解させた後、溶液を常温に放置して50分間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度が300cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0091】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として酢酸無水物(SamChun社)およびピリジン(SamChun社)をそれぞれ2当量添加し、ポリアミド酸溶液を80℃で1時間攪拌してポリアミド酸溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液30gを水300gに投入して沈澱させ、沈澱した固形分を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、60℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させることにより、約18gの樹脂固形分粉末(イミド化樹脂の重量平均分子量が38,000g/molの樹脂)を得た。
【0092】
b.感光性樹脂組成物の製造
実施例1と同一の組成を有する感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜の形成および評価は、実施例1と同様の方法で行った。
【0093】
<比較例3>
a.ポリイミド樹脂の重合
実施例1と同一の組成でポリイミド樹脂を製造するが、但し、FDAを完全に溶解させた後、溶液を常温に放置して2時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度が900cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0094】
前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として酢酸無水物(SamChun社)およびピリジン(SamChun社)をそれぞれ2当量添加し、ポリアミド酸溶液を80℃で1時間攪拌してポリアミド酸溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液30gを水300gに投入して沈澱させ、沈澱した固形分を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、120℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させることにより、約18gの樹脂固形分粉末(イミド化樹脂の重量平均分子量が100,000g/molの樹脂)を得た。
【0095】
b.感光性樹脂組成物の製造
実施例1と同一の組成を有する感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜の形成および評価は、実施例1と同様の方法で行った。
【0096】
<比較例4>
ノボラック樹脂(クレゾールホルムアルデヒドノボラック樹脂、メタクレゾール/パラクレゾールの配合比が重量を基準として4:6であり、重量平均分子量8,000のクレゾールノボラック樹脂と重量平均分子量2,000のクレゾールノボラック樹脂が7:3の重量比で混合されたクレゾールノボラック樹脂)12重量%、感光性化合物((1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホネート)6重量%、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)80重量%、感度増進剤(1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)1.5重量%、その他の添加剤としてレベリング剤の用途にシリコン添加剤0.5重量%を添加して2時間攪拌させることにより、感光性樹脂組成物を製造した。
【0097】
得られた感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜の形成および評価は、実施例1と同様にして行った。
【0098】
【表1】
表1の結果より、感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、改善されたポリイミド樹脂により解像度および光透過性に優れたパターンを持つことが分かった。実施例1において樹脂前駆体たるポリアミド酸溶液が適正水準の重合粘度と分子量によるイミド化度を持つことになり、所望の解像度および光透過性を有することを確認した。比較例1〜3において、ポリアミド酸溶液のイミド化度が適正の範囲から外れると、所望の解像度および透過度を持つことができなかった。また、漏れ電流と輝度性能の観点からも劣ることが分かった。比較例4によって前記条件を満足するポリイミド重合樹脂が含まれていなければ、解像度、絶縁性および光特性を満足することができないことを確認することができた。
【0099】
図1は実施例1に係る感光性樹脂組成物を用いてパターン形成時の残渣発生を確認するための15μm解像度パターンのSEM写真である。
図1に示すように、露光部分、および露光部位と非露光部位との境界面においても残渣がないことが分かった。
【0100】
図2は実施例1に係る感光性樹脂組成物を用いてパターン形成時のイミド化度を測定するためのFT−IR写真である。
図2から分かるように、スペクトル内のポリイミドC−N−Cに由来する1370cm
−1とベンゼン環に由来する1496cm
−1の相対的なピークの積分比を測定してイミド化度(DI)を計算した。
【0101】
本発明の単純な変形又は変更はいずれも当該分野における通常の知識を有する者によって容易に実施でき、それらの変形又は変更についても本発明の領域に含まれるものと理解されるべきである。