【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ワイヤレス電気通信ネットワークにおいて、ユーザ機器と、ネットワーク・アクセス・ノードとの間で複数のサービス・リンクを確立する方法であって、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間で送信されるべきデータ・トラフィックが存在することを決定するステップと、データ・トラフィックの通信のための第1のサービス・リンクを確立するステップと、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間で送信されるべき、第2のサービス・リンクの確立を必要とするさらなるデータ・トラフィックが存在することを決定するステップと、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間の第2のサービス・リンクの上のさらなるデータ・トラフィックの通信の成功に必要とされる無線状態を示すプリセットされた無線状態パラメータを決定するステップと、ユーザ機器において経験される無線状態を評価し、前記無線状態パラメータが、満たされている場合に、さらなるデータ・トラフィックの通信のための第2のサービス・リンクを確立するステップとを含む方法を提供している。
【0007】
ワイヤレス・ネットワークにより、一般的に、モバイル・ユーザは、異なるタイプのアプリケーションまたはサービスをサポートするコールまたはサービス・リンクを確立することができるようになる。例えば、UMTSネットワークは、回路交換(CS:circuit switched)コールと、パケット交換(PS:packet switched)コールとの両方についてのサポートを提供する。CS無線アクセス・ベアラ(RAB:radio access bearer)は、一般的に、音声アプリケーションまたは音声コールをサポートするように確立され、またPS無線アクセス・ベアラ(RAB)は、一般的に、データの転送を必要とするアプリケーション、例えば、ウェブ・ブラウジング、写真のアップロード、および同様なものをサポートするように確立される。
【0008】
典型的なUMTSユーザ機器(UE:user equipment)は、CS RABと、PS RABとの両方を同時に処理する能力を有する。結果として、ユーザ機器は、広範な機能豊富なアプリケーションとサービスとをエンド・ユーザに提供するように動作可能である。UMTSネットワークはまた、特定のセルにおいて動作するユーザ機器との、回路交換無線アクセス・ベアラ接続と、パケット交換無線アクセス・ベアラ接続との両方を確立する能力もサポートする。
【0009】
ネットワークが、既存の回路交換RABに加えて、パケット交換RABを受け入れるべき要求を受け入れる場合があることが、見出されている。いくつかの場合には、この構成は、パケット交換RABと、回路交換RABとの両方についての失敗と、それゆえに、ユーザ機器との通信についての全体的な損失と、パケット交換コールと回路交換コールとの損失または脱落とをもたらす可能性がある。そのような脱落したコールのシナリオは、一般的に、UMTSネットワーク・セルにアタッチされるユーザ機器が、質の悪い無線周波数送信状態を経験しているエリアにあるときに、起こる。ユーザ機器とのサービス・リンクとして追加のパケット交換RABをサポートすることは、一般的に、より高い信号品質(例えば、信号対雑音干渉比)を必要とし、またそれゆえに、より多くのリソース(例えば、送信電力)を必要とする可能性がある。質の悪いRF状態において動作するユーザ機器が、例えば、アップリンク受信および/または質の悪いダウンリンク受信における使用可能な送信電力の不足に起因して、パケット交換RABサービス・リンクによって要求されるより高い信号品質要求をサポートすることができない可能性があるので、ユーザ機器に対するすべての接続が、影響を受けてしまう可能性が高い。そのような状況は、一般的に、質の悪い回路交換サービスとパケット交換サービスとをもたらし、また、最悪の場合には、コールの脱落をもたらす可能性がある。使用可能なアップリンク送信電力の不足を緩和するために、ユーザ機器からのより高い送信電力を要求することは、それが、セルの内部の他のユーザ機器に対して提案されるサービスに対して干渉を導入する可能性が高いので、全体としてネットワーク・オペレーションにとって都合がよくない可能性があることが、理解されるであろう。
【0010】
ユーザ機器において回路交換RABサービス・リンクに対する接続にパケット交換RABサービス・リンクを追加することは、質の悪いRF状態に起因して、無線インターフェースの上で検出されるエラーの数を増大させる可能性があることも指摘されている。結果として、ネットワーク、例えば、基地局またはRNCは、エラー・レートが、ユーザ機器の解放を保証するのに十分に高いことを決定するように動作可能であることもあり、ユーザ機器の解放後、すべての接続をなくしているユーザ機器は、ネットワークに対してそれ自体を再アタッチする必要がある。その再接続は、そのユーザ機器に対してより良いRF状態を提供する別のセルを経由して起こる可能性がある。
【0011】
回路交換無線アクセス・ベアラが、パケット交換無線アクセス・ベアラよりも高い優先順位で取り扱われることが、一般的である。結果として、電気通信ネットワークは、回路交換サービス接続を試み、また保護する様々な問題解決手法を実施するように動作可能であり、また、既存の回路交換接続を有して動作するユーザ機器に対してパケット交換接続を追加するシナリオを、それが回路交換リンクの脱落をもたらす可能性がある場合には特に、回避するように、動作可能であることもある。
【0012】
したがって、ネットワークは、既存の回路交換接続に対してパケット交換接続を追加する要求を拒否し、またはパケット交換コア・ネットワークからのページング要求を無視するように動作可能であることもあり、それによってユーザ機器が、パケット交換接続の確立を要求するトリガを受信することを防止している。代わりに、ユーザ機器が、回路交換接続の確立を要求する場合に、ネットワークは、既存のパケット交換接続を脱落させるように動作可能であることもあり、それによって、可能な限り、回路交換接続に対してサービスを提供している。
【0013】
そのような例と、さらなる例とは、単に、ユーザ機器が、パケット交換接続を確立することができないように、ネットワークの内部のかなりの追加の作業をもたらす可能性がある。ネットワークの内部のその追加の信号方式は、たとえネットワークがそれを拒否しているとしても、回路交換であれ、またはパケット交換であれ、接続を確立する任意の要求を絶えず反復するように一般的に動作可能であるユーザ機器によってさらに悪化させられる可能性が高い。
【0014】
本明細書において説明される態様は、ユーザ機器との複数のサービス・リンクを確立するときに、ネットワークに対する影響を低減させることを目指し、また同時に、パケット交換サービス・リンク、または他の類似したサービス・リンクの確立を要求する能力を、そのようなアクションの影響が悪影響を及ぼす可能性が低い場合にユーザ機器に提供する方法を実施するものである。
【0015】
第1の態様は、特定の「RFしきい値」または「しきい値」を実施する、ユーザ機器の能力を導入することにより、要求すべきかどうかを決定するときに、第2のサービス・リンク(例えば、PS RABサービス・リンク、CS RABサービス・リンク、またはLTE/4Gシステム・アーキテクチャにおける同等なサービス・リンク)の確立は、不必要なネットワーク信号を減少させ、また第2のサービス・リンクが、成功しないことになる可能性を低下させることもあることを認識している。
【0016】
一実施形態においては、第2のサービス・リンクは、第1のサービス・リンクが、データ・トラフィックを成功裏に送信するために一般的に必要とするよりも、さらなるデータ・トラフィックを成功裏に送信するために、より多くの送信電力を一般的に必要とする。したがって、第1のサービス・リンクは、異なる動作要件を有する、第2のサービス・リンクを確立する試みが、行われない場合に、動作したままである可能性がある。
【0017】
いくつかの実施形態においては、第2のサービス・リンクは、第1のサービス・リンクよりも多くの送信電力を必要としない可能性もあること、ただし、もっと正確に言えば、第1のリンクと第2のリンクとを維持するという組み合わされた要件は、たとえ第2のリンクが、第1のリンクよりも少ないリソースを必要とするとしても、全体の接続が、脱落するようにさせることもあることが、理解されるであろう。ユーザ機器において実施されるパラメータは、第1のサービス・リンクと、第2のサービス・リンクとの組み合わされたリソースの要件を明らかにするように設定されることもある。
【0018】
一実施形態においては、データ・トラフィックは、第1のデータ・トラフィック・タイプのデータを含んでおり、またさらなるデータ・トラフィックは、第2のデータ・トラフィック・タイプのデータを含んでいる。したがって、異なるデータ・トラフィック・タイプは、各サービス・リンクの上で搬送されることもある。例えば、第1のサービス・リンクは、音声コールを搬送することができるが、第2のサービス・リンクは、ユーザ・データ・トラフィックを搬送する。代わりに、第1のサービス・リンクは、ボイス・オーバーIPデータ・トラフィックを搬送することができるが、第2のサービス・リンクは、ストリーミングされたデータ、またはウェブ・ブラウジング・データを搬送する。各タイプのデータ・トラフィックのサービス要件は、異なる可能性があることが、理解されるであろう。したがって、一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、第2のデータ・トラフィック・タイプの送信特性に従って決定される。
【0019】
一実施形態においては、第2のデータ・トラフィック・タイプの送信特性は、第2のデータ・トラフィック・タイプに関連するサービス品質の表示を含んでいる。したがって、高い優先順位、または要求するサービス品質(QoS:Quality of Service)プロファイルを有するデータ・トラフィックでは、より強い無線リンクについての必要性を示す、より厳しいパラメータまたはしきい値、あるいはより良いRF通信環境を経験するユーザ機器が、実施されることもある。もちろん、第1のサービス・リンクと、第2のサービス・リンクとの優先順位が、実質的に同じである、または第2のサービス・リンクが、第1のサービス・リンクよりも低い優先順位のものである場合には、パラメータが満たされない場合の第2のサービス・リンクの拒否は、事前に確立されたサービス・リンクの切り離しが、ネットワークに対して妨害する可能性があるので、都合がよいものとすることができることが、理解されるであろう。
【0020】
一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、しきい値の受信信号コード電力値(threshold Received Signal Code Power value)の表示を含んでいる。一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、しきい値のチップ当たりエネルギー/雑音値(threshold Energy per Chip/Noise value)の表示を含んでいる。経験されている無線状態を示す、ユーザ機器によって行われるどのような直接の測定値、または間接の測定値も、プリセットされた無線状態パラメータとして成功裏に選択され得ることが、理解されるであろう。
【0021】
一実施形態においては、第1のサービス・リンクは、回路交換サービス・リンクを備える。一実施形態においては、第2のサービス・リンクは、パケット交換サービス・リンクを備える。そのようなサービス・リンクは、第1の態様をUMTSネットワーク・アーキテクチャにおいて使用するために特に適切にする。
【0022】
一実施形態においては、ユーザ機器において経験される無線状態を評価するステップは、一連の無線状態測定値を平均化するステップを含んでいる。したがって、変動するRF状態測定値には、フィルタがかけられて、ユーザ機器によって経験されているRF状態についてのより妥当な実態を与えることができる。
【0023】
一実施形態においては、本方法は、所定の安定期間にわたってユーザ機器において経験される無線状態を評価するステップと、無線状態パラメータが、所定の安定期間にわたって満たされる場合に、さらなるデータ・トラフィックの通信のために第2のサービス・リンクを確立するステップとをさらに含む。したがって、ユーザ機器において経験されている無線状態の安定性は、第2のサービス・リンクの確立の前に考慮に入れられることもある。
【0024】
一実施形態においては、本方法は、ユーザ機器において経験される無線状態を評価するステップと、無線状態パラメータが、満たされない場合に、ユーザ機器において経験される無線状態を再評価する前に、所定のバック・オフ期間にわたって無線状態を評価し続けるステップとをさらに含む。したがって、ユーザ機器は、第2のサービス・リンクについての要求を反復する前にネットワーク信号を最小にするように動作可能とすることができる。さらに、ユーザ機器における無線状態の評価は、内部のユーザ機器信号と測定とが、最小限にされるように定期的に実施されることもある。
【0025】
第2の態様は、コンピュータの上で実行されるときに、第1の態様の方法を実行するように動作可能なコンピュータ・プログラム製品を提供している。
【0026】
第3の態様は、ワイヤレス電気通信ネットワークにおいてネットワーク・アクセス・ノードとの複数のサービス・リンクを確立するように動作可能なユーザ機器であって、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間で送信されるべきデータ・トラフィックが、存在することを決定するように動作可能なデータ・トラフィック・ロジックと、データ・トラフィックの通信のための第1のサービス・リンクを確立するように動作可能な第1のサービス・リンク確立ロジックと、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間で送信されるべき、第2のサービス・リンクの確立を必要とするさらなるデータ・トラフィックが、存在することを決定するように動作可能なリンク確立ロジックと、ユーザ機器とネットワーク・アクセス・ノードとの間の、第2のサービス・リンクの上のさらなるデータ・トラフィックの通信の成功に必要とされる無線状態を示すプリセットされた無線状態パラメータを決定するように動作可能なパラメータ・ロジックと、ユーザ機器において経験される無線状態を評価して、無線状態パラメータが、満たされている場合に、さらなるデータ・トラフィックの通信のために第2のサービス・リンクを確立するように動作可能な評価ロジックとを備えるユーザ機器を提供している。
【0027】
一実施形態においては、第2のサービス・リンクは、第1のサービス・リンクが、データ・トラフィックを成功裏に送信するために一般的に必要とするよりも、さらなるデータ・トラフィックを成功裏に送信するために、より多くの送信電力を一般的に必要とする。
【0028】
一実施形態においては、データ・トラフィックは、第1のデータ・トラフィック・タイプのデータを含んでおり、またさらなるデータ・トラフィックは、第2のデータ・トラフィック・タイプのデータを含んでいる。
【0029】
一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、第2のデータ・トラフィック・タイプの送信特性に従って決定される。
【0030】
一実施形態においては、第2のデータ・トラフィック・タイプの送信特性は、第2のデータ・トラフィック・タイプに関連するサービス品質の表示を含んでいる。
【0031】
一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、しきい値の受信信号コード電力値の表示を含んでいる。
【0032】
一実施形態においては、プリセットされた無線状態パラメータは、しきい値のチップ当たりエネルギー/雑音値の表示を含んでいる。
【0033】
一実施形態においては、第1のサービス・リンクは、回路交換サービス・リンクを備えている。
【0034】
一実施形態においては、第2のサービス・リンクは、パケット交換サービス・リンクを備えている。
【0035】
一実施形態においては、評価ロジックは、一連の無線状態測定値を平均化することによりユーザ機器において経験される無線状態を評価するように動作可能である。
【0036】
一実施形態においては、評価ロジックは、所定の安定期間にわたってユーザ機器において経験される無線状態を評価するように動作可能であり、また無線状態パラメータが、所定の安定期間にわたって満たされている場合に、前記確立ロジックは、さらなるデータ・トラフィックの通信のために第2のサービス・リンクを確立するように動作可能である。
【0037】
一実施形態においては、評価ロジックは、ユーザ機器において経験される無線状態を評価し、また無線状態パラメータが、満たされていない場合に、ユーザ機器において経験される無線状態を再評価する前に所定のバック・オフ期間にわたって無線状態を評価し続けるように動作可能である。
【0038】
本発明のさらなる特定の態様と、好ましい態様とは、添付の独立請求項と従属請求項とにおいて詳しく説明される。従属請求項の特徴は、必要に応じて、また特許請求の範囲において明示的に詳しく説明される以外の組合せの形で、独立請求項の特徴と組み合わされることもある。
【0039】
実施形態は、次に、添付図面を参照してさらに説明されるであろう。