特許第5911688号(P5911688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911688
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】複列円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/38 20060101AFI20160414BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20160414BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20160414BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F16C19/38
   F16C33/58
   F16C33/76 A
   F16C35/063
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-207279(P2011-207279)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-68275(P2013-68275A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】大江 展希
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−045117(JP,U)
【文献】 特開平08−105449(JP,A)
【文献】 特開2006−077962(JP,A)
【文献】 特開2012−167750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/38
F16C 33/58
F16C 33/76
F16C 35/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両列のころの軌道面を有する一体型の外輪と、各列のころの軌道面を各々有する一対の分割型の内輪と、保持器に保持され前記内外輪間に配置された2列のころとを備え、前記内輪が軸に嵌合する複列円すいころ軸受において、
前記各内輪は小鍔部を有する鍔付きの内輪であって、一対の内輪のうち内輪小端面軸受のアキシアルすきまの調整用の軸方向すきまを介して非接触で互いに対向、前記各内輪における小鍔部の外周面の内輪小端面に沿う縁部に、環状凹み部それぞれ設けられ、これら環状凹み部に渡って嵌合した内輪間座があり、これら環状凹み部と内輪間座との嵌合はすきま嵌めであり、前記内輪の前記小鍔部が形成された軸方向部分の内周面が前記軸の外周面に接することを特徴とする複列円すいころ軸受。
【請求項2】
請求項1または請求項2において、前記内輪間座の内周面と、環状凹み部の底面との径方向すきま0.2mm以上0.4mm以下である複列円すいころ軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記複列円すいころ軸受は、密封型複列円すいころ軸受または開放型複列円すいころ軸受である複列円すいころ軸受。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記一体型の外輪に代えて、各列のころの軌道面を各々有する分割型の外輪とし、この外輪と前記分割型の内輪とを複列組み合わせたものとした複列円すいころ軸受。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、4列以上とした複列円すいころ軸受。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、鉄道車両用車軸軸受である複列円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄道車両用車軸および産業用機械などに使用される複列円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用車軸軸受として使用される複列円すいころ軸受は、部品管理の容易性および作業工数の削減を目的に、図8に示す内輪間座無しタイプ50が適用されることがある(特許文献1)。
複列円すいころ軸受において内輪間座を無くすことで、内輪間座が回転して車軸を傷つける問題の解決を図ることができる。また、内輪間座無しタイプにおいては、内輪小鍔側内径部と軸とに発生するスタンプ疵対策のため、図9に示すように、内輪鍔部51を薄肉化して内輪小鍔側内径面52と車軸表面とに生じる接触面圧を低減し、スタンプ疵の発生を抑制する対策がとられることがある(特許文献2)。
【0003】
スタンプ疵の発生のメカニズムは、鉄道車両の運転中に径方向荷重が軸受に作用することによって、車軸が回転軸中心に対して垂直方向に撓みながら回転する。このとき、車軸と軸受の内輪との間で起こる微小滑りつまりフレッティングによって、内輪の内径面端部が車軸に干渉して、車軸の外周面に疵いわゆるスタンプ疵が発生する。内輪小鍔部を軸方向に延長し且つ薄肉化することにより、車軸と軸受の内輪との接触面圧を低くすることができ、スタンプ疵を抑制する効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−151142号公報
【特許文献2】特開2006−300215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、内輪間座無しタイプの複列円すいころ軸受においては、部品管理の容易性、作業工数の削減および間座の回転による車軸の疵の抑制のメリットがあり、小鍔部の薄肉化を適用することでスタンプ疵の抑制が図れる。
一方で、内輪間座無しの複列円すいころ軸受の製造時のアキシアルすきまの調整は、内輪小鍔側端面を研磨することで行う必要があり、生産工程が煩雑で非効率である。また内輪小鍔側端面の調整代の無い内輪については、廃棄せざるを得ないため、内輪の歩留まり向上が図れない。
【0006】
この発明の目的は、内輪の小鍔側内径部および軸にスタンプ疵が発生することを抑制できると共に、アキシアルすきまの調整が容易で、生産工程の簡略化を図ることができる複列円すいころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の複列円すいころ軸受は、両列のころの軌道面を有する一体型の外輪と、各列のころの軌道面を各々有する一対の分割型の内輪と、保持器に保持され前記内外輪間に配置された2列のころとを備え、前記内輪が軸に嵌合する複列円すいころ軸受において、前記各内輪は小鍔部を有する鍔付きの内輪であって、一対の内輪のうち内輪小端面が、軸受のアキシャルすきまの調整用の軸方向すきまを介して非接触で互いに対向、前記各内輪における小鍔部の外周面の内輪小端面に沿う縁部に、環状凹み部それぞれ設けられ、これら環状凹み部に渡って嵌合した内輪間座があり、これら環状凹み部と内輪間座との嵌合はすきま嵌めであり、前記内輪の前記小鍔部が形成された軸方向部分の内周面が前記軸の外周面に接することを特徴とする。
【0008】
この構成によると、各内輪における小鍔部の外周面の内輪小端面に沿う縁部に、環状凹み部をそれぞれ設け、これら環状凹み部に渡って嵌合される内輪間座を設けたため、内輪間座が軸の表面に直接接触することを防ぐことができる。このため、間座無しタイプと同様に、内輪間座の回転による軸の疵を防止できる。また小鍔部の外周面に環状凹み部を設けたことで、小鍔部の薄肉化を図ることができる。このため、軸と内輪との接触面圧を低くすることができ、これら軸、内輪へのスタンプ疵を抑制することが可能となる。
また一対の内輪のうち内輪小端面を、軸方向すきまを介して非接触で互いに対向させ、隣接する小鍔部の環状凹み部に渡って設けた内輪間座の間座幅を調整することで、アキシアルすきまの調整が可能となる。この場合、従来の間座無しタイプでは欠かせなかった内輪小鍔側端面の研磨加工によるアキシアルすきまの調整作業が不要となる。これまで、内輪小鍔側端面の調整代の無い内輪については、廃棄せざるを得なかったが、間座幅によるアキシアルすきまの調整が可能となることで、内輪の歩留まり向上を図ることができる。また内輪に表面処理などの工程を行う場合、この工程をアキシアルすきまの調整前に施すことが可能となり、生産工程の自由度が広がる。
【0009】
前記各環状凹み部のうち、内輪間座の間座端面が接触する端面は、それぞれ熱処理後に機械加工されたものであっても良い。この場合、環状凹み部を機械加工後に熱処理する場合よりも、小鍔部を薄肉化した部分の軸方向長さの寸法精度を高精度化することができる。したがって、内輪間座を環状凹み部に挿入し易くでき、且つ、アキシアルすきまの調整作業を容易にすることができる。
【0010】
前記内輪間座の内周面と、環状凹み部の底面との径方向すきまを0.2mm以上0.4mm以下としても良い。内輪間座を環状凹み部へ、かじりやこじり無くスムーズに取り付けるためには、環状凹み部の底面と、内輪間座の内周面の真円度、円筒度なども考慮すると、経験的に最低0.2mmの径方向すきまが必要である。但し、径方向すきまが大き過ぎると、内輪間座が内輪端面を押える位置が周方向に不均一になり過ぎるため、軸受の機能に影響を及ぼし兼ねない。内輪間座の内周面の加工精度を考慮し、径方向すきまの上限は0.4mmと定めている。
【0011】
前記複列円すいころ軸受は、密封型複列円すいころ軸受または開放型複列円すいころ軸受であっても良い。
前記一体型の外輪に代えて、各列のころの軌道面を各々有する分割型の外輪とし、この外輪と前記分割型の内輪とを複列組み合わせたものとしても良い。
複列円すいころ軸受は4列以上としても良い。
複列円すいころ軸受は鉄道車両用車軸軸受であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
この発明の複列円すいころ軸受は、両列のころの軌道面を有する一体型の外輪と、各列のころの軌道面を各々有する一対の分割型の内輪と、保持器に保持され前記内外輪間に配置された2列のころとを備え、前記内輪が軸に嵌合する複列円すいころ軸受において、前記各内輪は小鍔部を有する鍔付きの内輪であって、一対の内輪のうち内輪小端面が、軸受のアキシアルすきまの調整用の軸方向すきまを介して非接触で互いに対向、前記各内輪における小鍔部の外周面の内輪小端面に沿う縁部に、環状凹み部それぞれ設けられ、これら環状凹み部に渡って嵌合した内輪間座があり、これら環状凹み部と内輪間座との嵌合はすきま嵌めであり、前記内輪の前記小鍔部が形成された軸方向部分の内周面が前記軸の外周面に接するため、内輪の小鍔側内径部および軸にスタンプ疵が発生することを抑制できると共に、アキシアルすきまの調整が容易で、生産工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の第1の実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図2】同複列円すいころ軸受の要部の拡大断面図である。
図3】同複列円すいころ軸受の内輪の断面図である。
図4】この発明の他の実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図5】この発明のさらに他の実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図6】この発明のさらに他の実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図7】この発明のさらに他の実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図8】従来例の複列円すいころ軸受の断面図である。
図9】同複列円すいころ軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。
この実施形態に係る複列円すいころ軸受は、例えば、鉄道車両用車軸軸受として用いられる。但し、鉄道車両用に限定されるものではなく、産業用機械などに使用しても良い。図1に示すように、この複列円すいころ軸受は、それぞれ1列の軌道面1aを有する一対の分割型の内輪1,1と、2列の軌道面2aを有する一体型の外輪2と、各列の対向する軌道面1a,2a間に介在した複列の円すい形のころ3とを有する。各列のころ3は、各列毎に環状の保持器4のポケットPt内に保持されている。両列の軌道面1a,2aは、接触角が背面合わせ、つまり外向きとなるように設けられている。外輪2は鍔無しとされる。各内輪1は、大鍔部5および小鍔部6を両端に有する。一対の内輪1,1のうち内輪小端面1b,1bを、軸方向すきまδ1を介して非接触で互いに対向させている。この例の外輪2は、一対の内輪1,1を組合わせた幅寸法よりも幅広に設けられている。
【0015】
図3に示すように、内輪1の小鍔部6は、内輪端面側の薄肉部7と、この薄肉部7に繋がる厚肉部8とを有する。薄肉部7の径方向厚さは、軸方向に沿って均一な肉厚に形成されるうえ、厚肉部8の径方向厚さよりも薄く形成されている。小鍔部6の外周面の内輪小端面1bに沿う縁部に環状凹み部9を形成することで、前記小鍔部6に、薄肉部7と厚肉部8とがそれぞれ設けられる。厚肉部8の外周面8aは、軸方向中央側に向かうに従って厚肉となるように傾斜する断面形状に形成されている。また小鍔部6において、薄肉部7の外周面と厚肉部8の端面8bとの隅部には、前記厚肉部8の端面8bを研磨加工するための断面円弧状の研磨盗み10が形成されている。
【0016】
図2に示すように、各内輪1,1における小鍔部6,6の外周面の内輪小端面1b,1bに沿う縁部に、環状凹み部9,9をそれぞれ設け、これら環状凹み部9,9に渡って嵌合される内輪間座11を設けている。各環状凹み部9のうち、内輪間座11の間座端面が接触する端面、すなわち厚肉部8の端面8bは、それぞれ内輪1の熱処理後に機械加工、具体的には研磨加工されたものである。各内輪1の内周面には、接触部12と非接触部13と稜線部14とを有する。接触部12は、各内輪1の内周面における軸方向中央部に設けられて軸に嵌合する。非接触部13は、前記薄肉部7における内周面の外縁部に軸から径方向外方に離れて設けられている。稜線部14は、前記薄肉部7における、接触部12と非接触部13との境界に位置する。
前記薄肉部7の径方向外側に配置された内輪間座11の軸方向長さL5は、薄肉部7の軸方向長さをL1(図3)とすると、L1×2<L5の関係を満たし、前記軸方向すきまδ1を確保する。
【0017】
内輪間座11は、内周面11aおよび外周面11bがそれぞれ円筒面状となる円筒状である。内輪間座11の外周面11bは、小鍔部6における厚肉部8の端面8bの外径縁部よりも若干小径に形成されている。また前記内輪間座11の内周面11aと、環状凹み部9の底面9aとの径方向すきまδ2を0.2mm以上0.4mm以下としている。すなわち内輪間座11の内周面11aについては、環状凹み部9への挿入性およびアキシアルすきまの調整の作業の容易性を図るため、内輪間座11の内周面11aと、環状凹み部9との関係を、すきま嵌めとする。望ましくは、内輪間座11の内周面11aの直径寸法をD、環状凹み部9の底面9aの直径寸法をdとすると、D=d+(0.2mm〜0.4mm)とする。内輪間座11を環状凹み部9へ、かじりやこじり無くスムーズに取り付けるためには、環状凹み部9の底面9aと、内輪間座11の内周面11aの真円度、円筒度なども考慮すると、経験的に最低0.2mmの径方向すきまδ2が必要である。但し、径方向すきまδ2が大き過ぎると、内輪間座11が内輪端面を押える位置が周方向に不均一になり過ぎるため、軸受の機能に影響を及ぼし兼ねない。内輪間座11の内周面11aの加工精度を考慮し、径方向すきまδ2の上限は0.4mmと定めている。
【0018】
以上説明した円すいころ軸受によると、各内輪1,1における小鍔部6,6の外周面の内輪小端面1b,1bに沿う縁部に、環状凹み部9,9をそれぞれ設け、これら環状凹み部9,9に渡って嵌合される内輪間座11を設けたため、内輪間座11が軸Shの表面に直接接触することを防ぐことができる。このため、間座無しタイプと同様に、内輪間座11の回転による軸Shの疵を防止できる。また小鍔部6の外周面に環状凹み部9を設けたことで、小鍔部6の薄肉化を図ることができる。このため、軸Shと内輪1との接触面圧を低くすることができる。特に、小鍔部6の稜線部14を含む部分を薄肉化した薄肉部7としたため、軸Shと内輪1との接触面圧を格段に低くすることができる。したがって、これら軸Sh、内輪1へのスタンプ疵を抑制することが可能となる。
【0019】
また一対の内輪1,1のうち内輪小端面1b,1bを、軸方向すきまδ1を介して非接触で互いに対向させ、隣接する小鍔部6,6の環状凹み部9,9に渡って設けた内輪間座11の軸方向長さ(間座幅)L5を調整することで、アキシアルすきまの調整が可能となる。この場合、従来の間座無しタイプでは欠かせなかった内輪小鍔側端面の研磨加工によるアキシアルすきまの調整作業が不要となる。これまで、内輪小鍔側端面の調整代の無い内輪については、廃棄せざるを得なかったが、間座幅L5によるアキシアルすきまの調整が可能となることで、内輪1の歩留まり向上を図ることができる。また内輪1に表面処理などの工程を行う場合、この工程をアキシアルすきまの調整前に施すことが可能となり、生産工程の自由度が広がる。
【0020】
各環状凹み部9のうち、内輪間座11の間座端面が接触する端面、すなわち厚肉部8の端面8bは、それぞれ内輪1の熱処理後に研磨加工されたものであるため、厚肉部8の端面8bを研磨加工後に熱処理する場合よりも、小鍔部6における薄肉部7の軸方向長さL1の寸法精度を高精度化することができる。したがって、内輪間座11を環状凹み部9に挿入し易くでき、且つ、アキシアルすきまの調整作業を容易にすることができる。
【0021】
他の実施形態について説明する。以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
図4に示すように、複列円すいころ軸受は、密封型複列円すいころ軸受であっても良い。この例の複列円すいころ軸受では、軸受の両端部を密封するシール部材15,15がそれぞれ設けられている。外輪内周面にシール溝2bが形成され、このシール溝2bに、外輪幅方向に突出するシール部材15が取付けられている。例えば、軸Shに嵌合され、内輪1,1の軸方向両側にそれぞれ配設される蓋部材16,17に、各シール部材15,15がそれぞれ摺接するようになっている。
前記シール部材15により、軸受内の潤滑剤が軸受外に漏れることを防止することができ、軸受外の異物が軸受内に侵入することを防止することができる。
【0023】
図5に示すように、複列円すいころ軸受は、シール部材が設けられていない開放型複列円すいころ軸受であっても良い。
複列円すいころ軸受は、一体型の外輪2に代えて、図6に示すように、各列のころ3の軌道面2aを各々有する分割型の外輪2,2とし、この外輪2と前記分割型の内輪1とを複列組み合わせたものとしても良い。
【0024】
図7に示すように、4列以上(図7では4列)の複列円すいころ軸受としても良い。この例の複列円すいころ軸受は、内輪1,1と外輪2,3,2とを有し、各外輪2,2A,2はいずれも鍔無しの外輪とされている。軸方向両側の外輪2,2は、それぞれ単列の軌道面2aを有し、これら外輪2,2間に設けられる外輪2Aは、2列の軌道面2a,2aを有する。軸方向両側の外輪2,2と、軸方向中間の外輪2Aとの間には、外輪間座18,18が設けられている。
【0025】
各内輪1,1は、軸方向中間の中鍔部19および軸方向両側の小鍔部6,6を有し、小鍔部6,6と中鍔部19との間に2列の軌道面1a,1aを有する。これら内輪1,1のうち内輪小端面1b,1bを、軸方向すきまδ1を介して非接触で互いに対向させている。また、各内輪1,1における小鍔部6,6の外周面の内輪小端面1b,1bに沿う縁部に、環状凹み部9,9をそれぞれ設け、これら環状凹み部9,9に渡って嵌合される内輪間座11を設けている。
この場合にも、内輪1の小鍔側内径部および軸にスタンプ疵が発生することを抑制できると共に、アキシアルすきまの調整が容易で生産工程の簡略化を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…内輪
1a…軌道面
1b…内輪小端面
2…外輪
2a…軌道面
3…ころ
4…保持器
6…小鍔部
9…環状凹み部
11…内輪間座
δ1…軸方向すきま
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9