(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
原発事故に伴い発生した放射性核種による汚染土壌の除染や飛散流出防止の有効な対策の立案は、わが国における焦眉の急の課題である。
本発明者は、長年の環境対策の知見に基づき、硝酸第二鉄と、ポリ硫酸第二鉄および塩化第二鉄とに着目して、その対策を検討した。
【0003】
特許文献1においては、液状化或いは泥状化された対象物から有害物質を凝結させる工程の固化剤として、塩素を含まない溶媒にホスホン酸と硫酸マグネシウムを混合し、数分間撹拌し、その後、硫酸アルミニウムとポリ硫酸第二鉄を投与し、数分間撹拌してなる無機電解凝集剤とすることが示された有害物質を含む焼却灰や土壌等の再生浄化処理方法が提案されているが、これは、ダイオキシン類、PCB、アスベスト及び各種重金属類等の有害物質を含むものを処理の対象とするであり、放射性核種で汚染された土壌を対象とするものではなかった。
【0004】
特許文献2においては、原子力発電所から発生する放射性廃棄物を、水硬性無機固化材を用いて固化する際に、自由電子及び水和電子と反応速度が大きい電子捕捉剤を添加するものであり、この電子捕捉剤を硝酸鉄として固化材重量に対し、0.01%以上、5%以下の添加量とする放射性廃棄物の固化方法が提案されているが、放射性核種で汚染された土壌を対象とするものではなかった。
非特許文献1においては、土壌における放射性セシウムなどの挙動に関する研究結果が示されている。
【0005】
一般に粘土鉱物は、カオリナイトやハロイサイトのような1:1型粘土鉱物と、モンモリロナイトやバーミキュライトのような2:1型粘土鉱物があるといわれる。1:1型粘土鉱物は、ケイ素四面体層とアルミニウム八面体層とが結合して単位層となり、これらの単位層が重なっている。2:1型粘土鉱物は、ケイ素四面体層とアルミニウム八面体層とケイ素四面体層との3層が結合して単位層となり、これらの単位層が重なっている。ケイ素四面体層には、直径約264pmの空間がSi−O原子面を構成する酸素6員環によって作られ、この空間中に、カリウムイオンやアンモニウムイオンが入り込み固定化されるといわれる。セシウムイオンはカリウムイオンと化学的性質およびイオン直径が似ているため、同様に固定される。非特許文献1においては、複数種類の土壌に対して、セシウム−137を含む水溶液を加えて、1時間震盪後1昼夜静置した後、遠心分離して得られた上澄液画分を水溶態画分とするなどの操作を行い、交換態(水溶態を含む)におけるセシウム−137と、土壌中に留まる固定態におけるセシウム−137との量を比較し、2:1型粘土鉱物のモンモリロナイは、1:1型粘土鉱物のカオリナイトよりも固定態画分のセシウム−137が多いことを明らかにした。
【0006】
このように、セシウム−137は土壌構成成分のうち、粘土画分を構成する粘土鉱物および腐植によって吸着される。土壌に降下したセシウム−137は、その一部が粘土鉱物および腐植の表面に交換態として吸着されるが、他は結晶性粘土鉱物に固定態として吸着される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。以下の説明で、工程などの後ろに付した符号は、
図1における符号である。
(2液性の洗浄機能剤による汚染土壌の浄化処理)
本発明においては、前処理剤と、浄化用処理剤とを組み合わせた2液性の洗浄機能剤を提供し、これを用いて汚染土壌を浄化処理する方法を提案する。
【0020】
(前処理剤)
まず、前処理剤から説明する。
前処理剤(A)は、下記の(1a)(1b)を含有し、これらを(1c)水と混合する。
(1a)強酸(塩酸、硝酸なども使用可能であるが好適には硫酸)とエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムの少なくとも何れか一方。
(1b)硝酸第二鉄と硝酸ソーダとの少なくとも何れか一方。
【0021】
配合量については、
(1a)硫酸は30〜37.5質量部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムは40〜50質量部を配合することが望ましく、(1b)硝酸第二鉄は8〜20質量部、硝酸ソーダは5.6〜11.2質量部を配合することが望ましい。(1c)水は30〜50質量部を配合することが適当である。
放射線核種を処理する場合には、(1a)硫酸と、(1b)硝酸第二鉄とを含有させることが望ましく、重金属を処理する場合には、(1a)エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムと、(1b)硝酸ソーダとを配合することが好ましく、両者の複合汚染の場合は、全てを含有させることが望ましい。
【0022】
(成分の説明)
(1a)の強酸(好適には硫酸)は、金属の溶解性に優れ、前述の粘土鉱物中の結晶構造を破壊すると考えられる。
(1a)のエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムは、金属イオンのキレート剤で、金属イオン捕集剤としての効果が期待される。特に、重金属イオンと強固な可溶性錯塩を形成するもので、金属イオンが有機多座配位子によって中心に包み込まれるような構造を形成しているキレート化合物には、錯塩安定性が大きい。
(1b)の硝酸第二鉄は、硝酸に金属を溶解したもので、腐食性に著しいものがあると言われており、放射性物質の吸着剤として用いられる。
(1b)の硝酸ソーダ(硝酸ナトリウム)は、強力な酸化力を有することから、金属表面の処理剤などに用いられる。
【0023】
(第一攪拌工程1)
前記の前処理剤は、土壌とこれに添加する水(以下、一次被処理物という)と、混合攪拌される。土壌と水との配合率は、質量比で1対2が好ましい。この一次被処理物に対して、上記の前処理剤(1a)(1b)(1c)を3質量%加え、十分に攪拌する。これが第一攪拌工程である。
【0024】
(第一攪拌工程1の目的)
第一攪拌工程は、土壌と前処理剤とを十分に混合攪拌するものであり、前処理剤の添加によって、pH1.5〜1.8の強酸性と酸化力に優れた(Fe
3+−SO
42-)
+1の洗浄雰囲気とし、土壌粘土鉱物中において放射性核種・重金属が吸着しているケイ素四面体とアルミニウム八面体を破壊し、頑固な固定態核種や重金属を水溶態又は交換態に移行させる。即ち、前処理剤による強酸性・酸化雰囲気により、ケイ素四面体に結合している放射性核種の溶出促進とアルミニウム八面体の吸着基となる結晶構造の破壊・溶解を図り、水溶態及び交換態に移行させることを目的とする。
【0025】
(第一固液分離工程2)
第一固液分離工程は、前記第一攪拌工程を経た前記一次被処理物を固相と液相とに実質的に固液分離する工程である。具体的には、前記一次被処理物を静置し、その上澄液を吸引等で引き抜くことで、液相と、沈殿物である固相とに実質的に固液分離する。また、サイクロン分離機やシックナーなどの他の固液分離手段を用いてもよい。なお、固相と液相との完全な分離は不可能であり、また、不要であるため、上澄液を吸引して分離する程度の固液分離が図れれば足りる。
【0026】
(浄化用処理剤)
次に、浄化用処理剤について説明する。
浄化用処理剤(B)は、下記の(2a)(2b)(2c)を含有し、好ましくは(2d)を加えたもので、これらを(2e)水と混合する。
(2a)ポリ硫酸第二鉄と塩化第二鉄との少なくとも何れか一方(好適な配合量35〜50質量部)。
(2b)硝酸第二鉄(好適な配合量11〜30質量部)。
(2c)強酸(塩酸、硝酸なども使用可能であるが好ましくは硫酸)(好適な配合量0.75〜3質量部)。
(2d)硝酸ソーダと硝酸カルシウムとの少なくとも何れか一方(好適な配合量5.6〜11.2質量部)。
(2e)水(好適な配合量13〜19質量部)。
放射線核種を処理する場合には、(2a)ポリ硫酸第二鉄と、(2d)硝酸ソーダとを含有させることが望ましく、重金属を処理する場合には、(2a)塩化第二鉄と、(2d)硝酸カルシウムとを配合することが好ましく、両者の複合汚染の場合は、全てを含有させることが望ましい。
【0027】
(成分の説明)
(2a)のポリ硫酸第二鉄は、鉄系の無機高分子凝集剤であり、アルミ系よりも金属含有量が高く低添加量で使用できる利点がある。塩化第二鉄よりもpHが下がりにくく効果幅が広いと言われ、また腐食の問題も比較的少ないとされる。
(2a)の塩化第二鉄も、無機系凝集剤であり、アルミ系よりも金属含有量が高く低添加量で使用できるが、pHが下がりやすいので効果幅が狭く、腐食の問題に注意が必要となると言われている。
【0028】
(第二攪拌工程3)
第二攪拌工程は、前記浄化用処理剤と、前記第一固液分離工程により得られた固相と、水(清水)と、を二次被処理物として混合攪拌する工程である。
具体的には、前記の第一固液分離工程にて固相と分離された液相と略同量の水(清水)を加える。この固相と加えた水(清水)の総重量に対して、前述の浄化用処理剤を4%添加する。なお、二次被処理物は、pH6.5〜7.0に調整することが好ましく、pH調整剤として水酸化ナトリウムなどを必要に応じて添加し、十分に攪拌する(第二攪拌工程)。
【0029】
(第二攪拌工程の目的)
第二攪拌工程は、酸化雰囲気下で攪拌を行うものであり、前述の第一攪拌工程の強酸性雰囲気で攪拌されながらもなおもケイ素四面体とアルミニウム八面体の吸着基に残存する放射性核種の固定態及び交換態の核種イオンを、浄化用処理剤の多価金属イオンにより中和し、硝酸鉄イオンに吸着させ、限界値に至る除染を極めることを目的とする。即ち、強力な酸化雰囲気において放射性核種の固定態イオン及び浄化用処理剤の金属イオンを活性化し、プラスイオンの増加により固定態イオンの減少を促進すると同時にイオン交換による吸着除染を図る。
【0030】
(第二固液分離工程4)
第二固液分離工程は、前記第二攪拌工程を経た前記二次被処理物を固相と液相とに実質的に固液分離する工程である。具体的には、前記二次被処理物を静置し、その上澄液を吸引等で引き抜くことで、液相と、沈殿物である固相とに実質的に固液分離する。また、サイクロン分離機やシックナーなどの他の固液分離手段を用いてもよい。
【0031】
前述の第二攪拌工程において、ポリ硫酸第二鉄などに吸着された放射性核種は水中に溶存しているため、第二固液分離工程によって、液相を、固相である土壌粒子から分離することで、土壌の除染を達成することができる。
【0032】
サイクロン分離機は75μmアップの土壌粒子の固液分離を目的とし、75μmアンダーの微細粒子は、必要に応じて、シックナーにより固液分離を図る。特に、農地の土壌粒子は、95%以上が75μmアンダーであるため、シックナーによる自然沈降を複数回繰り返し行なって固液分離を行なうことが望ましい。この場合には、シックナーの攪拌作動は停止状態とする。
【0033】
なお、上記のとおり、ポリ硫酸第二鉄などに吸着された放射性核種は水中に溶存しているが、長時間(3〜6時間以上)静置した場合は、沈降現象が起る。従って、固液分離工程の際(特に第二固液分離工程の際)に、シックナーによる固液分離を行なう際には、オーバーフローの緩やかな流水を維持しつつ沈降分離を図ることが望ましい。又、土壌の性状に応じて、複数のシックリーの連結を自在化とし、先のシックナーで沈降分離を確認した後、次に連結されたシックナーに流入させるようにしてもよい。この連結されたシックナーは、放射性核種を含む液相の処理とリサイクルの項で、より詳しく説明する。
前述の第一と第二の攪拌工程及び第一と第二の固液分離工程は、必要に応じてそれぞれ複数回繰り返すことも可能である。
【0034】
(除染された土壌6)
以上の前記第二固液分離工程により得られた前記固相は、除染された土壌として、元に戻すことができる程度に安全なものとなっている。従って、固液分離されて除染された土壌は、例えば、農地グランド上に遮水シートを敷きつめた上に山形に盛土して、自然脱水作用により完全脱水を確認した後、農地に均等に敷き戻すことができる。上記の自然脱水の際に流出した汚水は、遮水シートの周囲に形成したU字溝によって回収し、シックナーによる分離された液相に合流させる。以上の固液分離手段は、除染地域の広がりに応じて、何箇所又は何十箇所も設置することができる。
【0035】
(放射性核種を含む液相の処理工程7)
前述の第二固液分離工程によって得られた放射性核種を含む液相5は、今日行なわれている除染方法などの適当な方法によって、処理すればよいが、これに関しても、本発明者は次の方法を提案する。
【0036】
凝集用シックナーを2連結にし、前述のように、先のシックナーにおいて第二固液分離工程を実施し、ここで得られた放射性核種を含む液相を、先のシックナーに連結された凝集清澄化処理を行なうシックナーに、緩やかに連続注入を図りながら、前述の浄化用処理剤を注入して攪拌する。この浄化用処理剤は、洗浄汚染水に対して0.3〜0.6質量%の割合となるように自動注入を図ると同時に、シックナー攪拌機の作動を開始し、苛性ソーダ等のpH調整剤の添加によって、pH6.5〜7に自動調整する。
【0037】
この混合攪拌後に、高分子凝集剤(アニオン系)の水溶液を注入する。この高分子凝集剤(アニオン系)の水溶液は、0.8〜1.5質量%の割合となるように自動注入を続ける。その結果、放射性核種及び重金属等の有害物質は、浄化用処理剤中の吸着成分と共にフロックとなり、水中より分離沈殿される。つまり、2つのシックナーの2連続オーバー水は、完全に清澄化される。なお、浄化用処理剤やpH調整剤の投入などは、自動的に連続処理することができる。
【0038】
以上のように、前述の放射性核種を含む液相5に関して、液相中の放射性核種については凝集しフロックとして沈殿させることができる。この放射性核種を含むフロック9と分離された清澄化された水8は、河川や海等にそのまま流すことができる他、種々の処分が可能である。この処分の一つとして、清澄化された水8を、第一攪拌工程1や第二攪拌工程3にて加える水、としてリサイクルすることができる。また、放射性核種を含むフロック9については、処理前の汚染土壌に比して、充分に減容されており、この減容された形態で最適な最終処分を待つことになる。
【0039】
(2液性の飛散流出防止剤による汚染土地の飛散流出防止処理)
以上の説明においては、汚染された土地から土壌を回収して、その除染を行うことを提案したが、以下の説明では、その回収除染が困難な土地(例えば、山間の傾斜地)の表面に散布することで、放射性核種などの有害物質の飛散や流出を防止する方法を提案する。
具体的には、次に述べる無機系のバインダー水溶液と前述の浄化用処理剤とを汚染地に噴霧する。
【0040】
(無機系のバインダー水溶液)
無機系のバインダー水溶液(3)は、下記の(3a)(3b)を含有し、これらを(3c)水と混合する。
(3a)ポリアクリル酸ナトリウム(好適には0.2〜0.5質量部)
(3b)珪酸ナトリウム(好適には20〜40質量部)
(3c)水(好適には59.5〜79.8質量部)
【0041】
(成分の説明)
(3a)ポリアクリル酸ナトリウムは、高吸水性高分子の一種であり、網目構造の中に多数の水分子を取り込み、ゲル構造を作る。
(3b)珪酸ナトリウムは、水ガラスとも呼ばれ、本発明では珪酸塩と鉄塩との接触により触媒反応なを惹起させるなど、後述の作用を果たす。
【0042】
(浄化用処理剤)
浄化用処理剤については、先に述べた通りである。放射性核種汚染地を処理する場合には、前記ポリ硫酸第二鉄が必須となる。
【0043】
(放射性核種汚染地の処理方法)
汚染された山間傾斜地などの土地の下草を刈り取り、枯れ葉なども除去し、裸地が露出した状態で、噴霧作業を行う。まず、無機系のバインダー水溶液を噴霧し、続いて(望ましくは5〜10分間の浸透時間付与後)、浄化用処理剤を噴霧する。
【0044】
(反応)
無機系のバインダー水溶液は、これを裸地に吹き付け噴霧することによって、地表の微細粘土粒子及び腐植微細物質に付着浸透する。5〜10分間の浸透時間付与後、浄化用処理剤を噴霧することにより、珪酸塩と鉄塩との接触により、迅速な触媒反応が起こり、粘土粒子を巻き込みながら、珪酸塩析出結晶体が形成され、経時と共に粘土粒子間に架橋となるエトリンガイドが完成される。
即ち、地表面粘土粒子が保持する多種の元素との反応に預かり、粘土粒子間に以下の架橋等の結晶体が析出される。
【0045】
アルミン酸三石灰3CaO・Al
2O
2、アルミン酸四鉄石灰4C
2O・Al
2O
3・Fe
2O
3が水と反応し、3CaO・Al
2O
2・6H
2Oの立方系の結晶体などが次々と析出されると共に珪酸鉄塩石灰の水和物によるエトリンガイドの転化による安定した不溶性の珪酸鉄カルシウム系の結晶体でポーラス状のエトリンガイド2Ca
3SiO
5+Fe
2O
3・6H
2O等々が完成され、傾斜面などの地表一体にマイクロメーター単位の網目ネットが架かることになる(
図2参照)。
【0046】
(目的と効果)
放射性核種汚染地の処理方法の目的は、山間傾斜面が風雨に晒された場合を勘案し、放射性核種が付着する微細粘土粒子の飛散防止及び流出防止を図ることにより、河川や湖沼・水経路への流入を阻止することを主目的とする。
即ち、シリカ系ポーラス結晶構造体は、放射性物質の付着・拘束は無力であるが、前述のとおり、粘土粒子間の拘束力は無類の優れた能力を発揮すると同時に、前述の浄化用処理剤を併用することにより、無機特有のイオン増加が起こり、夫々の特徴的役割を担いつつ、粘土粒子が持つ異電荷とイオン衝突を起して中和され、拘束水分子の親水基が破壊されるため、粒子間より付着水が散出する。その結果、シュルツ・バーデイの法則に従い、粘土粒子間に誘引反応(水素結合)が起こり、
図3の団粒子に成長する。一方、硝酸第二鉄Fe(NO
3)
3は、放射性物質の吸着剤に用いられる通り、放射性核種の吸着に優れた能力を発揮する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の理解を高めるために、実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
【0048】
(実施例1)洗浄機能剤による放射性核種汚染土壌の浄化処理
前処理剤(A)
(1a)硫酸…33.75質量部(即ち、硫酸75%水溶液…45質量部)
(1b)硝酸第二鉄…15質量部
(1c)水(清水)…40質量部
を混合して1液の前処理剤(A)を作成した。
浄化用処理剤(B)
(2a)ポリ硫酸第二鉄…39.4質量部
(2b)硝酸第二鉄…14.8質量部
(2c)硫酸…1.5質量部(即ち、硫酸75%水溶液…2.0質量部)
(2d)硝酸ソーダ…8.61質量部(即ち、硝酸ソーダ70%水溶液…12.3質量部)
(2e)水…31.5質量部
を混合して1液の浄化用処理剤(B)を作成した。
【0049】
第一攪拌工程…土壌(福島県飯館村公民館の敷地土:表1に放射線量の測定結果を示す)と水とを、質量比で1対2で混合し、この混合物に対して前記前処理剤(A)を3質量%加えて、サンドポンプによって15分攪拌した。
【0050】
第一固液分離工程…上記第一攪拌工程を経たものを一昼夜静置し、固相と液相とに分離した後、液相である上澄液をポンプで吸引して引き抜いた。引き抜いた液相は、さらに固液分離して沈降した微細土粒子の沈降シルトを、前記固相に加えた。液相は、ポリ硫酸第二鉄などによる高分子の凝集剤によって凝集処理を施して清浄化し、放射性核種を含む沈降フロックは、自然乾燥によって脱水を行なった。
【0051】
第二攪拌工程…上述のポンプで吸引して引き抜いた上澄液と等量の水(清水)を、上記の第一固液分離工程後の固相に加えると共に、これらの固相と加えた水(清水)の総重量に対して、前述の浄化用処理剤(B)を4%添加して、サンドポンプによって15分攪拌した。
【0052】
第二固液分離工程…上記第二攪拌工程を経たものを一昼夜静置し、固相と液相とに分離した。液相である上澄液をポンプで吸引して引き抜いた。当該固相である浄化処理済の土壌について、75μの篩アップの土について放射線量の測定を行った。その結果を表2に示す。また、同浄化処理済の土壌から、溶出500年分の溶出液を作成し、その放射線量を測定した。その結果を表3に示す。
【0053】
考察…処理前の表1と、処理後の表2との比較から明らかなように、土壌からの放射線量は約26分の1に減少しているものであり、また、表3の溶出試験から明らかなように、処理済土壌からの溶出の危険性は実質的に無視できる程度の僅かな量であると判断できるものであった。
なお、表1〜表3の測定は、千葉県千葉市緑区の内外テクノス株式会社関東環境技術センターに依頼して行なった。
なお、参考として、表4に放射性物質に関する暫定規制値等を示しておく。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
(実施例2)洗浄機能剤による放射性核種汚染飛灰の浄化処理
処理対象物として、実施例1の土壌に代えて、千葉県柏市で採取した飛灰及び溶融飛灰を用いた。
処理対象物を変更した以外は、先の実施例1と同じ処理を施したものであり、その結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
(実施例3)洗浄機能剤による重金属汚染土壌の浄化処理
処理対象物として、実施例1の土壌に代えて、重金属を含まない土壌に鉛とベンゼンとを混合して作成した試験用土壌を用いた。
処理対象物を変更した以外は、先の実施例1と同じ処理を施したものであり、その結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
(実施例4)洗浄機能剤による重金属汚染土壌の浄化処理
処理対象物として、実施例1の土壌に代えて、仙台市地下鉄掘削土を用いた。
処理対象物を変更した以外は、先の実施例1と同じ処理を施したものであり、その結果を表7に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
(実施例5)洗浄機能剤による重金属汚染土壌の浄化処理
処理対象物として、実施例1の土壌に代えて、千葉県袖ヶ浦市の海泥砂と農水池の土壌を用いた。
処理対象物を変更した以外は、先の実施例1と同じ処理を施したものであり、その結果を表8に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
(実施例6)放射性核種汚染地の処理方法
浄化用処理剤(B)
(2a)ポリ硫酸第二鉄…39.4質量部
(2b)硝酸第二鉄…14.8質量部
(2c)硫酸…1.5質量部(即ち、硫酸75%水溶液…2.0質量部)
(2d)硝酸ソーダ…8.61質量部(即ち、硝酸ソーダ70%水溶液…12.3質量部)
(2e)水…31.5質量部
を混合して1液の浄化用処理剤(B)を作成した。
バインダー水溶液(C)
(3a)ポリアクリル酸ナトリウム(好適には0.4質量部)
(3b)珪酸ナトリウム(好適には30質量部)
(3c)水(好適には69.6質量部)
を混合して1液のバインダー水溶液(C)を作成した。
【0067】
実験装置:山の傾斜面を想定した45度の斜面板11を作成し、福島県飯館村公民館の敷地土を約2cm厚に練り付けた実験装置(イ)(ロ)を製作した。斜面板11の下端には、噴霧水を受けるための容器12を配置した。
【0068】
実験方法:実験装置(イ)には、浄化用処理剤(B)500gを噴霧し、その後、バインダー水溶液(C)500gを噴霧した。実験装置(ロ)は、対照区として、何も噴霧しなかった。実験装置(イ)(ロ)に対して、河川水を、1日3回、間歇的に噴霧した。噴霧量は毎回100ccとした。実験期間中に容器12に溜まった水について、放射線量を測定した。
【0069】
測定結果:
原土の汚染濃度…平均3.716μSv(練り付けた敷地土の表面に対する接触測定を7回行い、最上値と最小値とを除外した5回の測定値の平均)
実験装置(イ)…0.080μSv(実験装置(イ)の容器12に溜まった水に対する間接接触測定(測定子を合成樹脂フィルムで被覆して水に接触させた)を1回行なった。)
実験装置(ロ)…2.916μSv(実験装置(ロ)の容器12に溜まった水に対する間接接触測定(測定子を合成樹脂フィルムで被覆して水に接触させた)を1回行なった。)
測定器:米国製SEREALNER51324
測定単位:μSv
【0070】
以上の測定結果により、本発明に係る放射性核種汚染地の処理方法は、阿武隈川汚染水等々の雨水による水系汚染を防止するために有益な処理方法を提供したものであると考える。