特許第5911760号(P5911760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911760
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20160414BHJP
   B41J 2/155 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B41J2/01 209
   B41J2/155
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-137695(P2012-137695)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-724(P2014-724A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 衛
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−56942(JP,A)
【文献】 特開2012−61818(JP,A)
【文献】 特開2008−143093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上を搬送される記録媒体に対してインクヘッドのノズルからインクを吐出して画像を形成する際に、前記記録媒体の搬送により生じる搬送気流に対応して前記ノズルによるインクの吐出タイミングを制御する画像形成装置であって、
単位時間当たりにおける前記ノズルのインク吐出量に基づいて算出される、前記ノズルから吐出されたインクを前記搬送気流に抗して直進させる自己気流の発生度合いを示す自己気流度に基づいて、前記吐出タイミングの制御内容を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記単位時間当たりにおける前記ノズルのインク吐出回数と、前記記録媒体におけるインクの着弾ずれ量とを関連付けたプロファイルデータを記憶する記憶手段と、
前記単位時間当たりにおける前記ノズルのインク吐出量と、前記自己気流度に対応するインク吐出量の閾値との比較結果に基づいて、前記吐出タイミング制御の調整の要否を判断する判断手段とをさらに備えており、
前記調整手段は、前記吐出タイミング制御の調整が必要と前記判断手段が判断したノズルの前記単位時間当たりにおけるインク吐出量から前記インク吐出回数を算出し、該インク吐出回数に対応する前記対象画素におけるインクの着弾ずれ量を前記プロファイルデータに基づいて決定して、決定した着弾ずれ量に対応する前記自己気流度に基づいて決定した調整内容で、前記吐出タイミングの制御内容を調整する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記単位時間当たりにおけるインク吐出量と前記閾値との比較結果として、前記記録媒体の搬送方向における前記ノズルの下流側に位置する記録媒体上の連続所定数の各画素に、前記ノズルが少なくとも1ドロップ以上のインクをそれぞれ吐出したか否かを判断し、各画素に少なくとも1ドロップ以上のインクをそれぞれ吐出したと判断した場合に、前記ノズルの吐出タイミング制御の調整が必要と判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体の厚みに関する情報を取得する用紙種別取得手段と、
前記用紙種別取得手段から取得された前記厚みに関する情報に基づいて、前記搬送経路から前記ノズルの吐出面までの距離を変動させる駆動制御手段とをさらに備え、
前記記憶手段は、前記距離に応じた複数の前記プロファイルデータを記憶しており、
前記調整手段は、前記駆動制御手段によって変動された前記距離に応じた調整内容で前記吐出タイミング制御を調整する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録媒体を前記搬送経路に吸引する吸引手段をさらに備えており、
前記調整手段は、前記ノズルが前記記録媒体における前端及び後端からそれぞれ所定距離内の領域にあるときには、前記吐出タイミング制御を、前記吸引手段により生じる気流に応じて調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式など、搬送経路上を搬送される印刷用紙に、インクを吐出して画像を形成する印刷装置の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の一つとして、ライン型のインクジェット記録装置がある。ライン型のインクジェット記録装置では、インクを吐出するノズルが印刷範囲の幅以上に配列された長尺な記録ヘッド(ライン型長尺記録ヘッド)を用いる。そして、記録ヘッド自体は動かさずにノズルの配列方向と交差した方向に記録媒体を相対的に移動搬送させつつ、インクヘッドの下方において、インクヘッドのノズルよりインク液滴を記録媒体に向かって吐出させることで画像を形成させている。
【0003】
ところで、記録媒体をヘッド直下に搬送すると、図16(a)に示すように、搬送方向上流から下流に向けて気流W1(以下、搬送気流と称する)が発生する。したがって、インク液滴20をインクヘッド120のノズル121から印刷用紙10に対して吐出させる非接触の印刷手法では、この搬送気流W1の影響を受け、インク液滴20が印刷用紙10の搬送方向下流側に流されてしまい、目的の軌道からずれて印刷用紙10に付着するという、所謂、着弾ずれが生じ、画質劣化の要因となっていた。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1がある。特許文献1の技術では、複数のノズルを有するインクヘッドと記録媒体とを、ノズルの配列方向と交差する方向に相対移動させながらインク液滴を吐出するときに、滴量が少ない液滴ほど吐出速度が速くなるように制御する。これにより、搬送気流によるインク液滴の着弾ずれを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−173178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクヘッド120の直下では、図16(b)に示すように、ノズル121からインク液滴20が吐出されることで、搬送気流W1の他に、インクヘッド120から記録媒体へ向かう気流W2(以下、自己気流と称する)が発生している。
【0007】
このインク滴による自己気流W2は、例えば、ベタ部分に存在する画素に対応するノズルから最大インク液滴数を吐出する場合に、定常的なものとなる。特に、ノズルが副走査方向(用紙搬送方向)の複数の画素にわたって最大インク液滴数を連続して吐出する場合には、自己気流W2の定常性が顕著となる。この自己気流W2は、真下に流れる気流であるため、搬送気流W1の影響が少なくなり、インク液滴20の着弾位置のずれ量が少なくなる。
【0008】
一方、例えば、5画素毎に1ドロップのインク液滴を吐出するような、単発吐出の場合には、自己気流W2の定常性がないため、搬送気流W1の影響を多く受け、吐出したインク滴は、より流され、着弾位置のずれ量が多くなる。
【0009】
このように、インク液滴の吐出時間間隔に応じて、搬送気流W1によって流される着弾ずれ量にバラツキが生じるため、特許文献1に開示されたような、一律に液量が少ないインク液滴の吐出速度を速くするように制御するのみでは、インク液滴の着弾ずれを解消することができず、画質劣化を防止できないという問題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、搬送された記録媒体に対して、ノズルからインク液滴を吐出させる際に、インクヘッド下で生じる搬送気流及び自己気流の影響を解消することで、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を形成できる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、
搬送経路(例えば、図1のプラテンベルト160)上を搬送される記録媒体(例えば、図2の印刷用紙10)に対してインクヘッド(例えば、図1のインクヘッド120)のノズル(例えば、図4のノズル121)からインクを吐出して画像を形成する際に、前記記録媒体の搬送により生じる搬送気流に対応して前記ノズルの吐出タイミングを制御する画像形成装置(例えば、図1のインクジェット記録装置100)であって、
単位時間当たりにおけるノズルのインク吐出量に基づいて算出される、ノズルから吐出されたインクを搬送気流に抗して直進させる自己気流の発生度合いを示す自己気流度(例えば、特定吐出周波数f(x)、補正係数α)に基づいて、吐出タイミングの制御内容を調整する調整手段(例えば、図5の吐出制御部333b)と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、ノズルと記録媒体(搬送経路)との間には、記録媒体の搬送に伴い搬送方向上流側から下流側に向かって搬送気流が発生する。また、単位時間当たりのノズルのインク吐出量が増えると、ノズルと記録媒体(搬送経路)との間にインクの吐出方向に沿った自己気流が発生する。この自己気流がノズルからの吐出インクを搬送気流に抗して直進させる度合いは、単位時間当たりのノズルのインク吐出量が増えるほど高くなる。そして、自己気流の発生度合いを示す自己気流度に基づいて、吐出タイミングの制御に対する調整内容が決定され、決定した調整内容で吐出タイミングの制御内容が調整される。
【0013】
したがって、インクの吐出方向に沿った自己気流の発生度合いに応じ、自己気流が搬送気流によるインクの着弾ずれを緩和させる分を考慮して、ノズルのインク吐出タイミング制御を調整し、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を形成できる。
【0014】
また、上記発明において、単位時間当たりにおけるノズルのインク吐出回数と、記録媒体におけるインクの着弾ずれ量とを関連付けたプロファイルデータ(例えば、図6のプロファイルデータ)を記憶する記憶手段(例えば、図5の記憶部334)と、
単位時間当たりにおけるノズルのインク吐出量と、自己気流度に対応するインク吐出量の閾値との比較結果に基づいて、吐出タイミング制御の調整の要否を判断する判断手段(例えば、図5の補正判断部333c)とをさらに備えており、
調整手段は、吐出タイミング制御の調整が必要と判断手段が判断したノズルの単位時間当たりにおけるインク吐出量からインク吐出回数を算出し、該インク吐出回数に対応する対象画素におけるインクの着弾ずれ量をプロファイルデータに基づいて決定して、決定した着弾ずれ量に対応する自己気流度に基づいて決定した調整内容(例えば、補正時間Δt)で、吐出タイミングの制御内容を調整する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、単位時間当たりに自己気流度に対応するインク吐出量の閾値を超える量のインクが吐出されると、そのインク吐出量から単位時間当たりにおけるノズルのインク吐出回数が算出され、その回数に対応するインクの着弾ずれ量がプロファイルデータから求められる。また、求めた着弾ずれ量に応じた調整内容で、搬送気流に対応したノズルのインク吐出タイミング制御が調整される。
【0016】
したがって、インクの吐出方向に沿った自己気流が定常的に発生する場合は、自己気流が搬送気流によるインクの着弾ずれを緩和させる分を考慮して、ノズルのインク吐出タイミング制御を調整し、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を形成できる。
【0017】
また、上記発明において、判断手段は、過去所定期間のインク吐出量と閾値との比較結果として、記録媒体の搬送方向におけるノズルの下流側に位置する記録媒体上の連続所定数の各画素に、ノズルが少なくとも1ドロップ以上のインクをそれぞれ吐出したか否かを判断し、各画素に少なくとも1ドロップ以上のインクをそれぞれ吐出したと判断した場合に、ノズルの吐出タイミング制御の調整が必要と判断することを特徴とする。
【0018】
上記発明によれば、連続所定数の画素にそれぞれ1ドロップ以上インクが吐出されると、所定画素数連続してインクが吐出されて自己気流が定常的に発生することが想定できる。そこで、過去所定期間のインク吐出量から算出される平均インク吐出回数を元にインクの着弾ずれ量を決定して、決定した着弾ずれ量に応じた調整内容で吐出タイミング制御を調整することで、自己気流によるインクの着弾ずれの変化分を考慮して、ノズルのインク吐出タイミング制御を調整することができる。
【0019】
さらに、上記発明において、記録媒体の厚みに関する情報を取得する用紙種別取得手段(例えば、図5の用紙種別取得部335)と、用紙種別取得手段から取得された厚みに関する情報に基づいて、搬送経路からノズルの吐出面までの距離を変動させる駆動制御手段(例えば、図5のヘッドギャップ制御部332a)とをさらに備え、記憶手段は、搬送経路からノズルの吐出面までの距離に応じた複数のプロファイルデータを記憶しており、調整手段は、駆動制御手段によって変動された距離に応じて、吐出タイミング制御を調整することを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、インクヘッドの吐出面と搬送ベルトとの間隔が広くなる場合であっても、その間隔に応じて吐出タイミング制御の調整内容を補正するので、ヘッドギャップによる自己気流の変化が生じる場合であっても、適切に着弾位置を補正して、着弾ずれのない良好な画像を提供することができる。
【0021】
また、上記発明において、記録媒体を搬送経路に吸引する吸引手段をさらに備え、調整手段は、ノズルが記録媒体における前端(例えば、図12の先端領域A1)及び後端(例えば、図12の後端領域A2)からそれぞれ所定距離内の領域にあるときには、吐出タイミング調整を、吸引手段により生じる気流に応じて調整することを特徴とする。
【0022】
上記発明によれば、吸引手段によって生じる気流の影響を受けやすい、印刷用紙の先端及び後端に対する着弾ずれについても、その気流に応じて吐出タイミング制御を調整することができ、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、搬送された記録媒体に対して、ノズルからインク液滴を吐出させる際に、インクヘッド下で生じる搬送気流及び自己気流の影響を解消することで、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を示す概略断面図である。
図2図1の画像形成が行われる画像形成経路を側方から示す説明図である。
図3】(a)は、図1のインクジェット記録装置における搬送経路の上方に配置されるヘッドホルダーを下方から示す説明図であり、(b)は、そのヘッドホルダーの側断面を拡大して示す説明図である。
図4図1の画像形成経路の一部を拡大した側面図である。
図5図1の演算処理部における吐出タイミングの補正機能に係る機能モジュールを示すブロック図である。
図6図5の記憶部に記憶されたインクの吐出周波数に対する着弾ずれ量のプロファイルデータを示す説明図である。
図7】(a)及び(b)は、図6のプロファイルデータが表すインクの吐出周波数と着弾ずれ量の関係を示すグラフ図である。
図8図1の演算処理部が選択する単位ラインを説明する上面図である。
図9図1のインクジェット記録装置における吐出タイミングの補正動作の概要を示すフローチャート図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置のインクヘッドの直下に生じる吸引気流を示す側面図である。
図11】(a)〜(c)は、図10における印刷用紙の搬送位置によって生じる吸引気流の有無を示す側面図である。
図12図1の演算処理部が判断する印刷用紙の先端領域及び後端領域を示す上面図である。
図13図10におけるインクヘッド直下における吸引気流の発生の有無と、インクヘッド側面からノズルまでの距離の関係を示す説明図である。
図14図5の記憶部に記憶されたプロファイルデータにおけるノズル直下の位置から印刷用紙の端部までの距離による着弾ずれ量の変化を示すグラフ図である。
図15】(a)及び(b)は、吐出タイミングを補正する前後における図10のノズルからのインク液滴の軌道を示す説明図である。
図16】(a)は、印刷用紙を搬送させた場合に発生する搬送気流を示す説明図であり、(b)は、ノズルからインク液滴を吐出させた場合に発生する自己気流を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0026】
(インクジェット記録装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を示す概略断面図であり、図2は、画像形成が行われる画像形成経路を側方から示す説明図である。また、図3(a)は、図1のインクジェット記録装置における搬送経路の上方に配置されるヘッドホルダーを下方から示す説明図であり、図3(b)は、ヘッドホルダーの側断面を拡大して示す説明図である。図4は、図1の画像形成経路の一部を拡大した側面図である。
【0027】
なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、画像形成部であるヘッドユニットに備えられたインクヘッドのノズルから、黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行うインクジェット方式のラインカラープリンタであるものとする。
【0028】
図1に示すように、このインクジェット記録装置100は、搬送経路上を搬送される印刷用紙10に、インクを吐出して画像を形成する印刷装置である。本実施形態では、印刷用紙10の供給を行う給紙機構、印刷用紙10を搬送する用紙搬送部(プラテンベルト160を含む)、及び印刷済の印刷用紙10を排出する排紙機構としての排紙口150等を備えたインクジェット方式のラインカラープリンタである。
【0029】
このインクジェット記録装置100は、印字機構として、用紙搬送方向に直交する方向に伸び、多数のノズルが形成された複数のインクヘッド120を備え、それぞれのインクヘッド120のノズル121から黒又はカラーのインクを吐出してライン単位で画像形成を行う。
【0030】
また、インクジェット記録装置100は、CPU、メモリ等が配置されたコントローラ基板等で構成される演算処理部330や、メニューを表示したりユーザからの操作を受け付けたりする操作パネル、及びその他の機能部(図示しない)を備えている。
【0031】
サイド給紙台や給紙トレイ等の給紙機構から1枚ずつ給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路に沿って搬送され、レジストローラ240に導かれる。ここで、レジストローラ240は、印刷用紙の先端の位置合わせと斜行修正を行うために設けられた一対のローラである。給紙された印刷用紙はレジストローラ240で一時停止し、所定のタイミングでヘッドユニット110方向に搬送される。
【0032】
レジストローラ240のさらに搬送方向側には、図2に示すように、画像形成経路CR1が設けられている。
【0033】
本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、その搬送経路として画像形成経路CR1を含んでおり、この画像形成経路CR1では、プラテンベルト160によって、印刷条件により定められる速度で印刷用紙10が搬送される。この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドユニット110が、プラテンベルト160に対向配置され、ヘッドユニット110に備えられた各インクヘッド120のノズルから、プラテンベルト160上の印刷用紙10に対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0034】
詳述すると、画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルトであるプラテンベルト160、プラテンベルト160の駆動機構である駆動ローラ161及び従動ローラ162等から構成され、この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドホルダー500が設けられ、インクヘッド120が保持されている。
【0035】
ヘッドホルダー500は、ヘッドホルダー面500aを底面に有する函体であり、インクヘッド120を保持して固定するとともに、インクヘッド120からインクを吐出させるための他の機能部分をユニット化して収納する。また、このヘッドホルダー500の底面であるヘッドホルダー面500aは、搬送経路に対して平行となるように対向配置されている。このヘッドホルダー面500aには、ヘッドユニット110を構成する複数のインクヘッド120それぞれの水平断面と同形状の取付開口部500bが複数配列され、複数のインクヘッド120は、取付開口部500bにそれぞれ挿通されて、その吐出口をヘッドホルダー面500aから突出させている。
【0036】
また、画像形成経路CR1では、インクヘッド120に印刷用紙10が衝突することを防ぐために、インクヘッド120の吐出面からプラテンベルト160までの距離(ヘッドギャップ)を切り替える機構を有している。この機構は、プラテンベルト160をインクヘッド120に対して上下移動させることで、インクヘッド120の吐出面とプラテンベルト160との距離を変化させるようになっている。
【0037】
インクヘッド120は、図3(a)に示すように、搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に、複数列にわたって配置され、これら複数列内において、各列に含まれるインクヘッド120は、隣接する他の列に含まれるインクヘッド120と搬送方向に重ならない部分が生じるように千鳥状に配置されている。これらインクヘッド120の各列は、搬送方向に所定間隔をおいて配置され、列間に主走査流路111が形成されているとともに、同列内において隣接する各インクヘッド120は、所定間隔おいて配置されてインクヘッド120,120間に副走査流路112を形成している。そして、これら主走査流路111と副走査流路112は、相互に連通して網目状のミスト排出路を形成する。
【0038】
また、各主走査流路111には、段付ガイドローラ510が設けられている。この段付ガイドローラ510は、異なる径のガイドローラを連結して一本のローラとして形成したものであり、例えば、金属製のロッドを削り出すことにより成型される。具体的に、この段付ガイドローラ510は、径の大きい上流側ガイドローラ510aと、上流側ガイドローラ510aよりも径の小さい下流側ガイドローラ510bとを同一の回転軸上に交互に連結して配置した構成となっている。
【0039】
上流側ガイドローラ510aは、搬送方向において、各インクヘッド120の上流側に設けられ、下方に向けて付勢され、搬送経路上面に押しつけられて回転する。一方、下流側ガイドローラ510bは、搬送方向において、各インクヘッド120の下流側に設けられ、搬送経路上面から所定距離離隔されて回転可能に軸支されている。
【0040】
そして、各インクヘッド120の千鳥配置に対応させて、上流側ガイドローラ510a及び下流側ガイドローラ510bも千鳥状の配置となっている。また、段付ガイドローラ510が主走査流路111内に配置されていることから、これら上流側ガイドローラ510a及び下流側ガイドローラ510bも、主走査流路111内に交互に配置されることとなる。
【0041】
一方、プラテンベルト160は、記録媒体を搬送する無端状のベルト部材であり、図2に示すように、駆動ローラ161により周回移動され、インクヘッド120と対向する範囲において摺動し、印刷用紙10を搬送する。具体的に、このプラテンベルト160は、印刷用紙10が搬送される搬送方向に直交させて配置された一対の駆動ローラ161及び従動ローラ162間に掛け回されて、駆動ローラ161の駆動力により、搬送方向に周回される。
【0042】
また、プラテンベルト160は、図4に示すように、印刷用紙10を吸着させるベルト穴165を多数有しており、プラテンベルト160の下方には、プラテンプレート620が配置されている。このプラテンプレート620は、プラテンベルト160をインクヘッド120と対向する位置において摺動可能に支持するとともに、ベルト穴165が通過する箇所に貫通された吸引穴622を多数有する板状の部材である。そして、このプラテンプレート620の下方には、吸引手段であるサクションファン650が備えられている。
【0043】
サクションファン650は、吸引穴622及びベルト穴165を通じて、プラテンベルト上面の印刷用紙10を吸着するための負圧を発生させる吸引手段である。そして、このサクションファン650により発生した負圧により、プラテンベルト160上に印刷用紙10を吸着させるようになっている。また、サクションファン650により発生した負圧により、プラテンベルト160のベルト穴165、プラテンプレート620の吸引穴622を通過して、下方へ流れる気流が生じるようになっている。
【0044】
このように構成された画像形成経路CR1において、印刷用紙10は、インクヘッド120の対向面に設けられた環状のプラテンベルト160によって印刷条件に応じた速度で搬送されながら、複数のインクヘッド120の各々が吐出したインクによりライン単位で画像形成される。
【0045】
インクヘッド120は、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色のインクを吐出するように構成され、各インクヘッド120の下面には、インクを吐出する複数のノズル121が、主走査方向に配列されている。
【0046】
この複数のノズル121から、画素毎に所定のインク液適量(ドロップ量)を吐出させることで、階調処理された画像が形成される。詳しくは、ノズル121から吐出されるインクは、演算処理部330から送出される駆動信号に応じて、各画素に対し、ドロップ単位で吐出されるようになっている。この吐出するインクの液滴数(ドロップ数)により、各色の濃度を変化させるとともに、液滴量をドロップのサイズとして調整する。この際、印刷用紙10をヘッド直下に搬送することで、搬送方向上流から下流に向けて搬送気流が発生している。また、ノズル121から連続してインク液滴20が吐出されることで、インクヘッド120から印刷用紙10へ向かう自己気流が定常的に発生している。
【0047】
演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。演算処理部330は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。特に、本実施形態において、演算処理部330は、画像形成経路CR1において発生する搬送気流、及び自己気流による着弾ずれを補正するために、インク吐出のタイミングを補正する機能を有する。
【0048】
(演算処理部330の内部構成)
上述したインク吐出のタイミング補正機能は、インクジェット記録装置100に備えられた演算処理部330によって、ヘッドユニット110及び各駆動手段の動作を制御することにより実現される。
【0049】
図5は、演算処理部330における吐出タイミングに係る機能モジュールを示すブロック図であり、図6は、記憶部334に記憶されたインクの吐出周波数に対する着弾ずれ量のプロファイルデータを示す説明図である。図7(a)及び(b)は、図6のプロファイルデータが表すインクの吐出周波数と着弾ずれ量の関係を示すグラフ図であり、図8は、演算処理部330が選択する単位ラインを説明する上面図である。
【0050】
なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0051】
図5に示すように、演算処理部330は、主として、ジョブデータ受信部331と、画像処理部333と、駆動制御部332と、記憶部334と、操作信号取得部336と、用紙種別取得部335とを備えている。
【0052】
ジョブデータ受信部331は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれる印刷データを画像処理部333に受け渡すモジュールである。ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0053】
操作信号取得部336は、操作パネル361からユーザによる操作信号を受信するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザ操作に応じた処理を他のモジュールに実行させる。特に、本実施形態において、この操作信号取得部336は、操作パネル361、又は外部通信を通じて接続されたプリンタドライバなどから、ドロップ量補正処理に関する指示操作や、印刷用紙10の種別などの印刷設定情報を受け付ける。
【0054】
用紙種別取得部335は、ジョブデータ受信部331や操作信号取得部336によって検出された、給紙に係る印刷用紙10のサイズ、種類又は厚み等の用紙種別データとして取得するモジュールである。そして、用紙種別取得部335は、印刷処理に際し、取得した用紙種別データを駆動制御部332へ送信する。
【0055】
記憶部334は、画像処理に関する各種データやプログラムを記憶保持するメモリ装置等である。記憶部334が記憶保持するデータには、印刷用紙を搬送する搬送速度の情報や、印刷用紙10の厚み情報に基づいて定義された、プラテンベルト160からインクヘッド120の吐出面までの距離に関する情報である、ヘッドギャップの設定情報が含まれている。
【0056】
さらに、記憶部334が記憶保持するデータには、図6に示すように、吐出周波数に応じた、理論上の吐出位置から実際に形成される吐出位置までの距離を着弾ずれ量として定義したプロファイルデータが含まれている。このプロファイルデータでは、ヘッドギャップの距離毎に、すなわち、プラテンベルト160からインクヘッド120の吐出面までの距離に応じて、吐出周波数に対応する着弾ずれ量が記述されている。
【0057】
ここで、吐出周波数と、ヘッドギャップにおける自己気流W2の発生の有無との関係、さらに、搬送気流W1や自己気流W2により発生する着弾ずれ量について、図7を用いて説明する。ここで、図7(a)及び図7(b)の横軸は、インク液滴を所定の単位時間あたりに吐出させる平均吐出数を示す吐出周波数(単位=[Hz])を示し、縦軸は、着弾ずれ量(単位=[μm])を示している。
【0058】
この吐出周波数とは、所定時間においてインク液滴20を吐出させる回数を定めたものであり、吐出周波数1Hzでは、吐出の時間間隔が長く、吐出周波数150KHzに近づくほど、吐出の時間間隔が短くなる。すなわち、図7(a)及び図7(b)に示すように、吐出周波数1Hzによるインク吐出では、ノズル121からの自己気流W2が発生せず、搬送気流W1のみの影響による着弾ずれ量を示しており、吐出周波数150KHzに近づくほど、自己気流W2の影響が大きい着弾ずれ量を示している。
【0059】
なお、本実施形態において、吐出周波数1Hzは、30ドット当たりの総インク吐出量が1ドロップ未満であった場合に算出される周波数と定義し、また、吐出周波数150KHzは、30ドット当たりの総インク吐出量が最大インク量であった場合に算出される周波数を示している。ここで、最大インク量とは、全30ドットに対して、マルチドロップによる7ドロップ数が吐出されたインク量である。
【0060】
このプロファイルデータは、各インクジェット記録装置100における固体差を含めて、装置毎に個別に設定してもよい。この固体差による情報には、例えば、インクヘッド120の吐出面からプラテンベルト160までの距離(ヘッドギャップ)、印刷用紙10を搬送するプラテンベルト160の蛇行情報に応じた、各種の気流の変化に関する情報が含まれる。さらに、このプロファイルデータを取得するタイミングは、本実施形態においては、工場出荷時としている。しかし、この取得タイミングは、工場出荷時に限定されず、例えば、印刷開始時、環境変化時、経時変化時やメンテナンス時などを契機とすることもできる。
【0061】
駆動制御部332は、各搬送経路を駆動させる各駆動手段350など、インクジェット記録装置100内の各機能の動作を制御するモジュールである。また、本実施形態において、この駆動制御部332は、ヘッドギャップ制御部332aを備えている。
【0062】
ヘッドギャップ制御部332aは、印刷ジョブによって取得された印刷用紙10の厚み情報に基づいて、記憶部334に記憶されたヘッドギャップの設定情報を参照し、印刷用紙10の厚み毎のインクヘッド120とプラテンベルト160との間隔(ヘッドギャップ)が所定距離になるように、ヘッドギャップ調整機構350aを制御するモジュールである。
【0063】
ヘッドギャップ調整機構350aは、インクヘッド120に印刷用紙10が衝突することを防ぐために、インクヘッド120とプラテンベルト160との距離を変化させる機構である。ヘッドギャップ調整機構350aは、例えば、電気信号により制御される駆動機構を用いて、プラテンベルト160をインクヘッド120に対して上下移動させることで、インクヘッド120とプラテンベルト160との距離を変化させる。ただし、インクヘッド120をプラテンベルト160に対して移動させるようにしてもよい。
【0064】
画像処理部333は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部333は、吐出制御部333b、色変換回路333aとを備えている。
【0065】
色変換回路333aは、取得した画像データであるRGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換するモジュールである。また、本実施形態においては、色変換回路333aは、画像データをハーフトーン処理して、インクヘッド120のドロップ量に関する画像データに変換する。
【0066】
吐出制御部333bは、印刷用紙10にインクを吐出させる各ノズル121からの吐出を制御するモジュールである。吐出制御部333bは、画像処理後の画像データに基づいてドット毎のインク吐出量を算出し、各ドットに対して階調に応じたドロップ数を所定タイミングで吐出するようになっている。ここで、本実施形態において、吐出制御部333bは、予め、搬送気流W1によって生じる着弾ずれ量をなくすために、正規のタイミングに対して補正を加えた補正後の吐出タイミングで吐出するように設定されている。この吐出タイミングの補正量(デフォルトの補正量)は、補正判断部333cからの再補正指示によって変更することができる。
【0067】
また、画像処理部333には、搬送気流W1による着弾ずれ量の、自己気流W2の発生による変化分に応じて、吐出制御部333bが吐出タイミングを補正する際に用いるデフォルトの補正量を変更させる量を決定する機能として、補正判断部333cと、補正時間算出部333dとを備えている。
【0068】
補正判断部333cは、特定のノズル121からインクを吐出する場合に、定常的な自己気流W2が生じるか否かを判断するモジュールであり、本実施形態では、同一のノズル121から吐出される複数の画素が含まれる所定範囲における吐出履歴を参照して、所定の閾値と比較することで、定常的な自己気流W2が生じるか否かを判断する。
【0069】
具体的に、補正判断部333cは、図8に示すように、インクを吐出させる特定ノズルE1の搬送方向下流に連続して配列された30ドット分を単位ライン(所定範囲)D1として選択する。そして、単位ラインD1の吐出履歴を参照し、1ドロップのインク液滴量と、各ドットに対するドロップ数と、ドット数(30ドット)とを積算して、単位ラインD1における総インク吐出量を算出する。また、閾値には、定常的な自己気流W2が生じる単位ラインD1当たりのインク量が設定されている。
【0070】
そして、総インク吐出量が所定の閾値以下である場合には、定常的な自己気流W2が発生しないと判断し、その判断結果を、デフォルトの補正量の変更不要という内容の再補正指示として、吐出制御部333bに送信する。一方、総インク吐出量が、所定の閾値以上である場合には、定常的な自己気流W2が発生すると判断して、判断結果を補正時間算出部333dへ送信する。
【0071】
なお、本実施形態では、補正判断部333cは、単位ラインD1当たりの総インク吐出量を閾値と比較したが、さらに、補正判断部333cは、単位ラインD1中のすべてのドットに対して、1ドロップ以上のインク液滴が吐出されているか否かについても判断してよい。この際、補正判断部333cは、連続して1ドロップ以上のインク液滴がある場合に、定常的な自己気流W2が発生すると判断する。
【0072】
要するに、補正判断部333cが定常的な自己気流W2が発生すると判断するために使用する閾値は、定常的な自己気流W2が発生する状況が反映される、インク吐出量や単一ドットに対するインク液滴のドロップ数等のパラメータにおいて設定することができる。これらは、自己気流の発生度合いとしての自己気流度を推し量るパラメータとなる。
【0073】
補正時間算出部333dは、補正判断部333cから送出された自己気流W2有りとの判断結果に応じて、総インク吐出量に基づいて搬送気流W1と自己気流W2による着弾ずれ量を算出して、吐出タイミングを調整する補正時間を算出するモジュールである。
【0074】
具体的には、補正時間算出部333dは、補正判断部333cが自己気流W2有りと判断した場合に、搬送気流W1による着弾ずれ量が、自己気流W2の影響によって変化することを考慮して、その変化分に応じて、吐出制御部333bが吐出タイミングの補正に用いるデフォルトの補正量に対する変更量を、補正時間Δtとして算出する。詳細には、補正時間算出部333dは、搬送気流W1のみが生じた場合における着弾ずれ量と、搬送気流W1及び自己気流W2が生じた場合における着弾ずれ量との差分を算出し、この差分から、デフォルトの補正量に対する変更量である補正時間Δtを算出する。
【0075】
ここで、搬送気流W1のみが生じた場合における着弾ずれ量とは、自己気流W2による影響がない状態での着弾ずれ量であるため、図7(a)及び図7(b)に示すように、吐出時間間隔が長い、吐出周波数1Hzでの着弾ずれ量f(1)となる。
【0076】
また、搬送気流W1及び自己気流W2が生じた場合における着弾ずれ量は、自己気流W2による影響によって、着弾位置が搬送方向上流側に戻されて着弾ずれがない地点に近づくため、図7(a)及び図7(b)に示すように、吐出周波数2Hzから最大吐出周波数150KHzまでにおける着弾ずれ量のいずれか(f(x))となる。
【0077】
したがって、補正時間Δt(単位=[μs])は、以下の式(a)
Δt=(f(1)−f(x))/v…式(a)
から求める。ここで、f(1)は、吐出周波数1Hzでの着弾ずれ量(単位=[μm])であり、f(x)は、特定の吐出周波数xHzでの着弾ずれ量(単位=[μm])であり、vは、プラテンベルト160の搬送速度(単位=[μm/μs])である。
【0078】
ここで、補正時間算出部333dは、自己気流W2を含めた着弾ずれ量f(x)を算出するために、特定吐出周波数xHzを求める必要がある。そのために、本実施形態では、単位ラインD1の最大ドット数及び最大インク吐出数に対する単位ラインD1のドット数及びインク吐出数の割合から、インク液滴20の着弾位置に対して自己気流W2が影響を及ぼす度合いを示す補正係数αを算出し、補正係数αと最大周波数(150KHz)とを積算することで特定吐出周波数xHzを求める。
【0079】
具体的に、補正係数αは、以下の式
単位ラインD1内における補正係数α
=(吐出されたドット数/単位ラインD1の全ドット数)
×(全ドットの平均ドロップ数/1ドット中に吐出される最大ドロップ数)
(但し、全ドットの平均ドロップ数=総吐出ドロップ数/吐出されたドット数)
から求める。
【0080】
そして、この補正係数αから求めた特定吐出周波数xHzを用いて、補正時間Δtを算出する。ここで、この補正時間Δtの算出について、具体的に説明する。なお、ここでは、プラテンベルト160の搬送速度が0.632μm/μsであり、ヘッドギャップ3mmである場合について説明する。
【0081】
例えば、単位ラインD1の吐出履歴が、30ドットに対してすべて最大7ドロップで吐出されている場合には、(30ドット/30ドット)×(7ドロップ/7ドロップ)となり、補正係数αは1となる。
【0082】
これにより、特定吐出周波数xHzは、150KHzとなり、吐出周波数150KHzにおける着弾ずれ量f(150000)は、図6に示すように、87.69μmである。
【0083】
したがって、この場合の補正時間Δtは、
Δt=(98.91−87.69)/0.632
=17.72[μs]
となる。
【0084】
また、例えば、単位ラインD1の吐出履歴が、15ドットに対して、すべて最大7ドロップで吐出した場合には、(15ドット/30ドット)×(7ドロップ/7ドロップ)となり、補正係数αは0.5となる。
【0085】
これにより、特定吐出周波数xHzは、100Hzとなり、吐出周波数100Hzにおける着弾ずれ量f(100)は、図6に示すように、89.96μmとなる。
【0086】
したがって、この場合の補正時間Δtは、
Δt=(98.91−89.96)/0.632
=14.16[μs]となる。
【0087】
そして、算出された補正時間Δtの補正データは、吐出制御部333bに送信され、吐出制御部333bでは、この補正データに基づいて、単発でインクを吐出させた場合の、搬送気流W1による着弾ずれ量を補正した後の着弾位置と同じ位置に着弾するように、吐出タイミングを早めるように駆動信号を補正し、補正された信号をインクヘッド120に入力する。例えば、補正係数が1である場合には、搬送気流W1に対応する吐出タイミングよりも17.72マイクロ秒、吐出が早くなるように制御する。
【0088】
即ち、吐出制御部333bは、搬送気流W1による着弾ずれ量に応じた吐出タイミングのデフォルトの補正量を、自己気流W2による着弾ずれ量の変化分に対応する自己気流度に応じて、補正時間Δtにより変更(調整)する。
【0089】
(吐出タイミングの補正動作)
次に、以上の構成を有する、インクジェット記録装置100における吐出タイミングの補正動作について説明する。図9は、インクジェット記録装置100における吐出タイミングの補正動作を示すフローチャート図である。
【0090】
図9に示すように、先ず、ジョブデータ受信部331が、ジョブデータを受信する(ステップS101)と、ジョブデータを画像処理部333及び用紙種別取得部335に送信する。用紙種別取得部335では、ジョブデータに含まれる印刷用紙10の種別から用紙の厚み情報を取得して、この厚み情報を駆動制御部332及び画像処理部333に入力する。厚み情報を取得した駆動制御部332のヘッドギャップ制御部332aでは、記憶部334のヘッドギャップ設定情報を参照して、プラテンベルト160からインクヘッド120の吐出面までの距離を決定し、ヘッドギャップ調整機構350aを駆動制御する。
【0091】
一方、画像処理部333では、用紙種別に関する情報に基づいて、記憶部334に記憶されたプラテンベルト160からインクヘッド120の吐出面までの距離(ヘッドギャップ)情報を取得する。また、画像処理部333では、プラテンベルト160の搬送速度の設定情報についても、記憶部334から取得する(ステップS102)。
【0092】
また、画像処理部333では、ジョブデータを受信すると、先ず、色変換回路333aにおいて、ジョブデータ中の画像データをハーフトーン処理して、各ノズル121から吐出される、各ドットに対するドロップ数及びドロップ量などの画像データを生成し、補正判断部333c及び吐出制御部333bに入力する。
【0093】
吐出制御部333bでは、色変換回路333aで算出した画像データに基づいて、印刷用紙10の搬送方向先端部分から順次、インクを吐出させる。この際、吐出制御部333bは、補正判断部333cから送出される、各ノズルについての定常的な自己気流W2が生じるか否かの判断結果に応じて、搬送気流W1の影響による着弾ずれをなくすための吐出タイミング制御に対する、自己気流W2の影響による着弾位置の変化をキャンセルするための調整(補正)を、行うか否かを決定する。
【0094】
具体的に、補正判断部333cでは、インクを吐出させる特定ノズルE1の搬送方向下流に配列された30ドット分を単位ライン(所定範囲)D1として選択する。そして、単位ラインD1の吐出履歴を参照して、1ドロップのインク液滴量と、各ドットに対する吐出ドロップ数と、ドット数(30ドット)とから総インク吐出量を算出する(ステップS104)。さらに補正判断部333cは、この総インク吐出量が所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS105)。
【0095】
総インク吐出量が所定の閾値以上でない場合には(ステップS105におけるNO)、定常的な自己気流W2が発生しないと判断し、その判断結果を、デフォルトの補正量の変更不要という内容の再補正指示として、吐出制御部333bに送信する(ステップS109)。ここで、例えば、初めにインクを吐出させる場合、吐出履歴はないため、総吐出量は0となる。したがって、定常的な自己気流W2が発生しないと判断されることとなり、吐出制御部333bでは、その判断結果に応じて、予め定められた搬送気流W1によって生じる着弾ずれ量に対応する吐出タイミング(正規の吐出タイミングをデフォルトの補正量で補正した補正後の吐出タイミング)で、ノズル121からインクを吐出させる(ステップS110)。なお、この際、吐出された履歴情報は、補正判断部333cに送出される。
【0096】
一方、総インク吐出量が、所定の閾値以上である場合には(ステップS105におけるYES)、定常的な自己気流W2が発生すると判断して、判断結果を補正時間算出部333dに送信する。
【0097】
補正時間算出部333dは、補正判断部333cから送出された自己気流W2有りとの判断結果を取得すると、先ず、単位ラインD1の30ドット分の吐出履歴から補正係数αを算出する(ステップS106)。そして、この補正係数αと最大周波数(150KHz)とを積算することで特定吐出周波数xHzを求める。
【0098】
次に、補正時間算出部333dは、特定吐出周波数xHzに基づいて、図6のプロファイルデータを参照して(ステップS107)、次のインク吐出時における自己気流W2を含めた着弾ずれ量f(x)を算出する。
【0099】
そして、算出された着弾ずれ量f(x)に基づいて、上記の式(1)から補正時間Δtを補正データとして算出する(ステップS108)。そして、この補正時間Δtに関する補正データは、吐出制御部333bに入力される。
【0100】
吐出制御部333bでは、この補正データに基づいて、デフォルトの補正量を変更(調整)して、変更前よりも吐出タイミングが早くなるように変更した後の補正量を用いて、吐出タイミングを補正して、ノズル121からインクを吐出させる(ステップS110)。これにより、定常的な自己気流W2が発生していても、定常的な自己気流W2が発生していないときにデフォルトの補正量で吐出タイミングを補正した場合の着弾位置と同じ位置に着弾されるようにする。
【0101】
そして、インクヘッド120では、すべてのノズル121からの吐出を、搬送気流W1によって生じる着弾ずれ量に対応する吐出タイミングで吐出する(ステップS112)。その後、ジョブデータを参照して、次のドットに対してインクを吐出させるか否かを判断し(ステップS113)、インクを吐出させる場合には(ステップS113のYES)、ステップS103からステップS112までの処理を実行する。一方、次のドットにインクを吐出させない場合には(ステップS113のNO)、処理を終了する。
【0102】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、同一ノズル121から吐出された吐出履歴を参照し、次のインク吐出時に、定常的な自己気流W2が生じるか否かを、閾値によって判断する。さらに、本実施形態では、定常的な自己気流W2が生じる場合には、吐出履歴のインク量から、自己気流W2が生じる要因である吐出周波数を求めて、その吐出周波数による着弾ずれ量に基づいて、吐出タイミングを早めるように補正制御する。このため、搬送気流W1の影響のみならず、自己気流W2の影響も考慮して吐出タイミング補正を行って、自己気流W2が発生するようなパターンを含むあらゆる吐出パターンに対しても、インクを適切な位置に着弾させることができる。このように、本実施形態では、定常的な自己気流W2が生じる場合であっても、インクの着弾位置を、定常的な自己気流W2が発生していない場合と同じく正しい着弾位置に補正させて、着弾ずれのない良好な画像を提供することができる。
【0103】
また、本実施形態では、補正判断部333cは、単位ラインD1中の30ドットに対して連続して1ドロップ以上のインク液滴を吐出しているか否かによって、定常的な自己気流W2が発生するか否かを判断するので、複数の画素に対して連続して吐出することで生じる自己気流W2を適切に判断することができる。
【0104】
また、本実施形態では、ヘッドギャップの距離や、搬送速度に応じて、異なる補正時間Δtを算出して吐出タイミングを補正制御するので、印刷用紙10の種類や、搬送速度に応じて変化する、着弾位置のバラツキについても適切に解消し、着弾位置精度を向上させて、着弾ずれのない良好な画像を提供することができる。
【0105】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、上述した機能に加え、サクションファン650によって生じる吸引起因の気流に対する吐出タイミングの補正機能について説明する。
【0106】
図10は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置のインクヘッドの直下に生じる吸引気流を示す説明図であり、図11(a)〜(c)は、印刷用紙の搬送位置によって生じる吸引気流の有無を側面より示す説明図である。また、図12は、印刷用紙の先端領域及び後端領域を示す上面図であり、図13(a)及び(b)は、インクヘッドの直下における吸引気流の発生の有無と、インクヘッド側面からノズルまでの距離の関係を示す説明図である。
【0107】
本実施形態において、プラテンベルト160の下方には、上述したように、吸引手段であるサクションファン650が備えられている。図10に示すように、このサクションファン650により発生した負圧により、プラテンベルト160のベルト穴165、プラテンプレート620の吸引穴622を通過して、下方へ流れる気流が生じるようになっている。
【0108】
ここで、プラテンベルト160のベルト穴165は、搬送される印刷用紙10の位置に応じて閉塞されることとなるため、例えば、図11(b)に示すように、印刷用紙10の中央部分がノズル121の直下に位置している場合には、ベルト穴165へ抜ける気流が生じないため、吐出されるインク液滴20は、搬送気流W1のみの影響となる。
【0109】
一方、図11(a)及び(c)に示すように、ノズル121の直下に印刷用紙10の先端又は後端が位置している場合、サクションファン650による負圧により、ベルト穴165へ抜ける気流が生じ、吐出されるインク液滴20は、この吸引起因による気流(以下、吸引気流W3と称する)の影響を受けることとなる。
【0110】
そこで、本実施形態では、ノズル121の直下を搬送する印刷用紙10の位置に応じて、吸引気流W3に対する吐出タイミングの補正機能を備えている。
【0111】
先ず、画像処理部333の補正判断部333cは、図12に示すように、インクを吐出する画素部分が、印刷用紙10における先端領域A1又は後端領域A2内か否かを判断する。ここで、この先端領域A1及び後端領域A2の幅L21は、図13(a)に示すように、インクヘッドの側面120aからノズル121までの距離L22となる。
【0112】
ここで、図12に示す先端領域A1及び後端領域A2の幅L21を決定する、インクヘッドの側面120aからノズル121までの距離L22との関係について説明する。例えば、図13(a)に示すように、印刷用紙10の先端がインクヘッド120における一方の側面120aに到達していない場合には、印刷用紙10の先端からノズル121の直下における位置P1までの距離が所定距離L22以下となる。
【0113】
このような場合、インクヘッド120の下方に位置するベルト穴165から下方へ抜ける気流が生じ、搬送方向上流及び下流から空気が入り込むこととなるため、ノズル121から吐出されるインク液滴20は、この吸引による影響を受けることとなる。
【0114】
一方、図13(b)に示すように、印刷用紙10の先端がインクヘッド120における一方の側面120aに到達している場合には、印刷用紙10の先端からノズル121の直下における位置P1までの距離が所定距離L22以上となる。
【0115】
この場合には、インクヘッド120の下方に位置するベルト穴165は、すべて閉塞されることとなる。この場合、インクヘッド120の外側に位置するベルト穴165は、インクヘッド120が位置しない空間から空気が入り込むこととなり、インクヘッド120下の空間に対して吸引の作用は働かない。そのため、ノズル121から吐出されるインク液滴20は、吸引気流W3による影響を受けないこととなる。この現象は、印刷用紙10の後端においても同様である。
【0116】
したがって、本実施形態では、吸引気流W3による影響を受ける先端領域A1及び後端領域A2の幅を、インクヘッド120の側面120aからノズル121までの距離L22として決定する。
【0117】
本実施形態において、インクヘッド120の側面120aからノズル121までの距離は、15mmとなっており、インクを吐出させる画素部分が、先端又は後端から15mmの範囲内であるかは、例えば、搬送経路上のセンサーから取得してもよいし、印刷用紙10の搬送条件などから取得する。
【0118】
そして、補正判断部333cは、印刷用紙10の先端領域A1及び後端領域A2については、吸引起因による気流の影響を受ける範囲であるとして、吸引起因による吐出タイミングの補正制御を行うことと判断する。一方、印刷用紙10の先端領域A1及び後端領域A2以外の中央領域A3については、吸引起因による気流の影響を受けない範囲であるとして、吸引起因による吐出タイミングの補正制御の対象外と判断し、例えば、第1実施形態のような制御を行う。
【0119】
次いで、吸引起因による吐出タイミングの補正制御について説明する。図14は、本実施形態に係るノズル121の直下の画素から印刷用紙10の端部までの距離による着弾ずれ量の変化を示すグラフ図であり、図15(a)及び(b)は、吸引気流W3の吐出タイミングを補正する前後における、インク液滴の軌道を示す説明図である。
【0120】
本実施形態では、記憶部334に、図14に示すような、ノズル121の直下における位置P1から印刷用紙10の端部までの距離に対する、吸引気流W3の影響によって生じる着弾ずれ量を示す吸引プロファイルデータを有している。
【0121】
そして、補正時間算出部333dは、補正判断部333cから吸引気流W3の補正制御有りとの判断結果を受信すると、インクを吐出する画素部分から印刷用紙10の端部までの距離を算出する。そして、吸引プロファイルデータを参照して、算出された距離に応じた着弾ずれ量を求め、この着弾ずれ量に基づいて、先ず、吸引気流W3の影響による着弾ずれ量の変化分に応じた、吐出制御部333bが吐出タイミングの補正に用いるデフォルトの補正量に対する変更量を、補正時間Δtとして算出する。
【0122】
この補正時間Δt(単位=[μs])は、以下の式(b)
Δt=g(y)/v…式(b)
から求める。ここで、g(y)は、印刷用紙10の端部からの距離に応じた着弾ずれ量であり、vは、プラテンベルト160の搬送速度である。
【0123】
その後、補正時間算出部333dは、搬送気流W1、自己気流W2、及び吸引気流W3の影響を含めた全体の吐出タイミングを制御する補正時間Δtを算出する。ここで、印刷用紙10の先端領域A1及び後端領域A2では、吸引気流W3の方向が異なるため、それぞれの補正時間Δtを算出する。
【0124】
具体的に、印刷用紙10の先端領域A1では、搬送気流W1と吸引気流W3とが同じ方向に向かって流されているため、図15(a)に示すように、吐出タイミングを補正しない場合におけるインク液滴の軌道T12は、搬送方向下流に大きく流される。したがって、補正時間算出部333dは、これらの時間を遅らせる補正時間Δtを、式(a)+式(b)によって算出して、この補正時間Δtを補正データとして、吐出制御部333bに送出する。
【0125】
吐出制御部333bでは、この補正データ(補正時間Δt)に基づいて、図15(a)に示すように、吸引気流W3の無しの場合におけるインク液滴の軌道T11となるように、着弾ずれの吐出タイミングを早めたり遅めたりというように補正し、補正された信号をインクヘッド120に入力する。
【0126】
一方、印刷用紙10の後端領域A2では、搬送気流W1と吸引気流W3とが反対方向に向かって流されているため、図15(b)に示すように、吐出タイミングを補正しない場合におけるインク液滴の軌道T22は、搬送方向の上流側へ流される。したがって、補正時間Δtは、式(a)−式(b)によって算出して、この補正時間Δtを補正データとして、吐出制御部333bに送出する。
【0127】
吐出制御部333bでは、この補正データ(補正時間Δt)に基づいて、図15(b)に示すように、吸引気流W3の無しの場合におけるインク液滴の軌道T21となるように、着弾ずれの吐出タイミングを早めたり遅めたりというように補正し、補正された信号をインクヘッド120に入力する。
【0128】
なお、補正判断部333cでは、印刷用紙10の先端側から、各画素を選択して、吸引気流W3の補正制御対象か否かを判断しているが、例えば、印刷画像を解析して、先端領域A1及び後端領域A2が余白部分であって、印字処理を行わないと判断した場合には、この吸引気流W3の補正制御対象か否かの判断処理を省略してもよい。
【0129】
このような第2実施形態によれば、搬送気流W1及び自己気流W2によるインク吐出タイミングを補正することに加え、吸引気流W3の影響による印刷用紙10の先端領域A1及び後端領域A2での着弾ずれについても解消することができる。このため、定常的な自己気流W2や吸引気流W3の影響を受けるか否かに関わらず、すべての吐出に対して、適切な位置に着弾させることができる。これにより、着弾位置精度の向上を図り、着弾ずれのない良好な画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0130】
10 印刷用紙
100 インクジェット記録装置
110 ヘッドユニット
111 主走査流路
112 副走査流路
120 インクヘッド
120a 側面
121 ノズル
122、125 インク液滴
150 排紙口
160 プラテンベルト
161 駆動ローラ
162 従動ローラ
165 ベルト穴
240 レジストローラ
330 演算処理部
331 ジョブデータ受信部
332 駆動制御部
332a ヘッドギャップ制御部
333 画像処理部
333a 色変換回路
333b 吐出制御部
333c 補正判断部
333d 補正時間算出部
334 記憶部
335 用紙種別取得部
336 操作信号取得部
350 駆動手段
350a ヘッドギャップ調整機構
361 操作パネル
500 ヘッドホルダー
500a ヘッドホルダー面
500b 取付開口部
510 段付ガイドローラ
510a 上流側ガイドローラ
510b 下流側ガイドローラ
620 プラテンプレート
622 吸引穴
650 サクションファン
A1 先端領域
A2 後端領域
A3 中央領域
D1 単位ライン
E1 特定ノズル
W1 搬送気流
W2 自己気流
W3 吸引気流
図1
図2
図3
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