【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【文献】
Dev. Dyn.,1997年,vol. 210,344-353
【文献】
Junn E et al.,Vitamin D3 up-regulated protein 1 mediates oxidative stress via suppressing the thioredoxin function,J Immunol.,2000年 6月15日,164(12),6287-95
【文献】
斎藤達哉ら,小脳か粒細胞死におけるVitamin D3 Up-regulated Protein 1(VDUP1)mRNAの迅速な発現上昇,神経化学,2001年 9月 1日,Vol.40, No.2/3,,Page.279
【文献】
Lee WL et al.,Insulin-like growth factor I improves cardiovascular function and suppresses apoptosis of cardiomyoc,Endocrinology.,1999年10月,140(10),4831-40
【文献】
Saitoh T et al.,Rapid induction and Ca(2+) influx-mediated suppression of vitamin D3 up-regulated protein 1 (VDUP1),J Neurochem.,2001年 9月,78(6),1267-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組織細胞の減少を含む被検体の組織細胞の障害を治療するための医薬の製造における薬剤の使用であって、前記医薬は、被検体の組織内の原因組織の細胞増殖に有効な前記薬剤の量を含み、これにより前記被検体の組織細胞の障害を治療し、前記医薬は心筋内投与に適合しており、
前記薬剤が間質由来因子-1(SDF-1)であり、
前記医薬がGM-CSFの投与を受けている被検体に投与されるか、または前記医薬がSDF-1およびGM-CSFの双方を含んでいるかのいずれかである、使用。
【実施例】
【0083】
実験結果(I)
CXCケモカインは、内皮前駆体細胞の心臓への遊走を調節する。
本発明者らは、LAD結紮したヌードラットのモデルにおける心筋梗塞を使用して、ヒト内皮前駆細胞の虚血組織への走化性およびその後の血管形成の誘導を媒介したCXC受容体-リガンド相互作用のインビボにおける役割を調査した。
図1aに示すように、G-CSF動員によって得られるDiIラベルしたヒトCD34+細胞(98%>CD34純度、6〜12%のCD117
bright内皮前駆細胞を含む)は、静脈内注射の後に、梗塞心筋において選択的に検出されたが、偽操作したラット由来の心筋では検出されなかった。ラットCinc(ヒトIL-8およびGro-αのラット相同体)に対する、またはこれらのプロ血管形成のケモカインのCXCR1もしくはCXCR2のヒト表面受容体に対する遮断mAbsの同時投与により、対照抗体と比較して、48時間において40〜60%までヒト骨髄に由来するCD34+細胞の心筋への輸送を減少した(p<0.01)、
図1b。2週まででは、ヒトCD34+細胞を受けているラットは、塩類溶液を受けているラット(
図1c)と比較して、梗塞ベッドの微少血管分布の有意な増大を示し、これは、抗CXCR1/2 mAbsを同時投与したときに、50%まで減少した。本発明者らは、CD34+細胞の血管形成性の(vasculogenic)性質は、少数のCD117
bright血管芽細胞画分(7)の枯渇後になくなることを示しているので、これらの結果は、虚血組織への血管芽細胞の遊走を調節することによって、CXCケモカインがこれらの部位で血管形成の発生に影響を及ぼすことを示す。対照的に、非梗塞心臓に1.0μg/mlのIL-8またはSDF-1を直接的に心臓内注射すると、48時間においてヒトCD34+細胞による心筋の浸潤を2.3および2.5倍に増大させた(両者ともp<0.01)
図1d、血管形成は、2週においてこれらの条件下で観察されなかった。合わせると、これらの結果は、ケモカインで誘導される梗塞ゾーンへの遊走に続き、成熟した内皮細胞への内皮前駆細胞の分化、および血管形成の誘導は、さらなる因子を必要とし、まだ未決定であるが、これが虚血条件下で生じることを示す。
【0084】
CXCR4/SDF-1の相互作用の阻害は、内皮前駆細胞を心臓に転送する。
LAD冠動脈結紮により、静脈内に注射されたヒト内皮前駆細胞の虚血心筋部位への輸送を生じるが、これはラット骨髄へのヒト細胞の分布の増大も伴った。
図2aに示すように、2×10
6個のヒトCD34+細胞の静脈内注射後の2〜14日において、LAD結紮したラット由来の骨髄は、正常ラット由来の骨髄と比較して、5〜8倍高いレベルのヒトCD117
bright内皮細胞性前駆細胞を含んだ、p<0.001。本発明者らは、虚血血清と共に2日間培養すると、CD34+CD117
brightヒト内皮細胞性前駆細胞の増殖を4〜5倍まで増大することを以前に示しているので(7)、これはおそらく、虚血血清中の因子の増殖性効果によるものである。骨髄へ能動的に循環するCD34+細胞の遊走は、骨髄間質細胞によって構成的に産生されるSDF-1によって促進されるので(31)、本発明者らは、虚血ラット骨髄に対するヒトCD34+CD117
bright内皮細胞性前駆細胞の分布が、SDF-1/CXCR4の相互作用を含むかどうかを調査した。
図2bに示すように、ヒトCXCR4またはラットSDF-1のいずれかに対するmAbsの同時投与により、抗CD34対照抗体と比較して、静脈内投与した虚血ラット骨髄にヒト内皮前駆細胞の遊走を有意に阻害した(両者ともp<0.001)。さらに、ヒトCXCR4またはラットSDF-1のいずれかに対するmAbsの同時投与により、CD34+ヒト内皮細胞性前駆細胞の虚血ラット心筋への輸送を、それぞれ24%および17%までに増大した(両者ともp<0.001)、
図2c。
【0085】
毛細血管の内腔の大きさは、血管芽細胞の絶対数に依存的である。
次に、本発明者らは、筋細胞アポトーシスに対して血管芽細胞数、心筋の新血管新生、および保護の間の関係を調査した。LAD結紮の2日後の動物には、G-CSFで動員されたCD34+ヒト細胞を静脈内に注射し、種々の割合のCD117
bright内皮細胞性前駆体細胞(10
3、10
5、10
5プラス抗CXCR4 mAb、2×10
5、および2×10
5プラス抗CXCR4 mAb)で再構成した。同数のDiIラベルしたヒト細胞を、それぞれの細胞集団を注入して48時間後に梗塞ゾーンで検出した。データ示さず。2週における新血管新生の誘導は、それぞれ3〜6または>6の近接する内皮裏打ち細胞を有するものとして定義される中型および大型のサイズの毛細血管の定量分析を行うことによって測定した。中型の毛細血管は、0.020mm+0.002の平均内腔直径を有したが、大型のサイズの毛細血管は、0.053mm+0.004の平均内腔直径を有した(p<0.001)。特に、大型の内腔毛細血管は、細動脈(これは、ラット起源の2〜3の平滑筋細胞を含む薄層によって区別することができる)と大きさが重複する(これは、デスミンおよびラットMHCクラスI mAbsによるポジティブ染色法によって決定される)。
図3a-cに示すように、2×10
5の内皮細胞性前駆細胞を受けている群および10
5の内皮前駆細胞プラス抗CXCR4 mAbを受けているものは、両者ともその他の群と比較して、1.7倍高い数の中型の毛細血管を示した(p<0.01)。2×10
5の内皮細胞性前駆細胞を受けている群では、加えて、10
3または10
5の内皮細胞性前駆細胞を受けている群と比較して、3.3倍高い数の大型の内腔毛細血管を示し(p<0.01)、および10
5の内皮前駆細胞プラス抗CXCR4 mAbを受けている群と比較して、2倍高い数の大型の内腔毛細血管を示した(p<0.01)。
図3dに示すように、最も高濃度の内皮前駆細胞(2×10
5)と共に抗CXCR4 mAbを同時投与すると、大型の内腔毛細血管の増殖のさらに23%の増大を生じた。より顕著には、1.0μg/mlのSDF-1を心臓内に直接毛細血デリバリーした後に、2×10
5の内皮前駆細胞を静脈内に注射したときは、梗塞心臓においてさらに2倍の毛細血管の増加があった(p<0.01)。IL-8の心臓内のデリバリー後には、同様の梗塞周囲の毛細血管数の増加が見られなかったので、本発明者らは、これらの結果が、虚血ラット心臓内の内因性のIL-8濃度は、インビボで血管芽細胞CXCR1/2受容体を飽和させるために十分だったが、SDF-1の心臓内注射では、骨髄と心臓の間のSDF-1発現のバランスの変化を生じ、従って、虚血心臓への血管芽細胞の転送を生じたことを示すものであると解釈する。
【0086】
図3eに示すように、梗塞外周のアポトーシス心筋細胞の数は、10
5個の内皮前駆細胞プラス抗CXCR4 mAbを受けているラットおよび2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞を受けているものの両者において、10
3または10
5個の内皮細胞性前駆細胞を単独で受けている群と比較して、有意に減少した(両者とも、p<0.001)。さらに、抗CXCR4 mAbの同時投与またはSDF-1の心臓内注射により、それぞれ65%および76%の心筋細胞アポトーシスのさらなる減少を生じた、
図3f(両者とも、p<0.001)。合わせると、これらのデータは、筋細胞アポトーシスに対する梗塞後の心臓保護は、静脈内に注射された内皮前駆細胞の臨界数によって誘導される心筋の新血管新生に依存的なことを示す。この閾値は、CXCR4/SDF-1相互作用を妨害すること、または虚血心筋内のSDF-1発現の増強などの、骨髄への内皮前駆細胞再分布を防止するストラテジーによって明らかに低下させることができる。
【0087】
心機能の改善の決定因子としての毛細血管の内腔の大きさ。
次に、本発明者らは、長期の心筋機能に対する、虚血心筋へのヒト内皮前駆細胞輸送の数の増大の効果を検査し、これを静脈内注射の15週間後における、左心室駆出率(LVEF)の改善および収縮末期の左心室領域(LVAs)の減少の程度として定義した、
図4aおよびb。塩類溶液を単独で受けているラットと比較して、10
3または10
5個の内皮細胞性前駆細胞を受けている群では、これらのパラメータの改善は観察されなかった。対照的に、10
5個の内皮前駆細胞プラス抗CXCR4 mAbを受けているラットでは、22+2%のLVEFの平均回復および24+4%のLVAsの平均減少という、これらのパラメータの有意な改善を示した(両者とも、p<0.001)。より顕著なことに、2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞を受けていうる群では、34+4%のLVEFの平均回復および37+6%のLVAsの平均減少(両者とも、p<0.001)、または両方のパラメータのさらに50%の改善を有した。両群の動物は、初期の心筋細胞のアポトーシスに対して同様の保護レベルであると共に、2週において同程度の中型の毛細血管を含む新血管新生を示したので、これらの結果は本発明者らにとって非常に驚くべきものであった。これは、2×10
5のヒト内皮細胞性前駆細胞を受けているラットのさらなる機能の長期改善は、大型のサイズの毛細血管の初期発生に関与し、かつ筋細胞アポトーシスに対する保護とは異なる機構で媒介されることを示唆した。
【0088】
大型の毛細血管は、内因性の筋細胞の持続的な再生を誘導する。
筋細胞肥大および核倍数性の増大は、一般に虚血、損傷、および過負荷に対する主要な哺乳類の心臓応答であると考えられてきたが(1、2)、最近の観察では、ヒト心筋細胞が傷害に応答して、増殖および再生する能力を有することが示唆された(18、19)。したがって、本発明者らは、2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞の注射後に観察される心機能の相加的な改善は、心筋細胞増殖および/または再生の誘導に関与するかどうかを調査した。2×10
5個のヒト内皮前駆細胞を受けているLAD結紮ラットの2週後のラットでは、MHCクラスI分子の発現によって決定される多くのラット起源の心筋細胞の「フィンガー」を示し、梗塞周囲領域から梗塞ゾーン内に拡張した。同様の拡張は、10
3および10
5個の内皮細胞性前駆細胞を受けている動物では、あまり見られず、塩類溶液を受けているものでは、非常にまれであった。
図4cに示すように、2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞を受けている動物の梗塞外周における心筋細胞の島は、DNA活性を有するラット筋細胞を高頻度で含んでおり、これは、心筋細胞特異的なトロポニンIおよびラットKi-67に対して反応性のmAbsによって二重染色することによって決定された。対照的に、塩類溶液を受けている動物では、梗塞ゾーン内に、線維芽細胞形態およびラットKi-67との反応性を有するがトロポニンIを有さない細胞が高頻度で存在した。2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞を受けているラットの梗塞周囲領域において、細胞周期を進行している心筋細胞の数は、梗塞から遠い部位のもの(ここでは、筋細胞のDNA活性が偽操作をしたラットと少しも異ならなかった)よりも40倍高かった。
図4dに示すように、2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞を受けている動物は、梗塞外周において、非梗塞心臓において見いだされるものよりも20倍高い細胞サイクリング心筋細胞数を有し(1.19+0.2%対0.06+0.03%、p<0.01)および塩類溶液を受けているLAD結紮された対照の同じ領域よりも3.5倍高かった(1.19+0.2%対0.344+0.1%、p<0.01)。梗塞心臓に1.0μg/mlのSDF-1を直接的に心臓内にデリバリーした後に、2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞を静脈内注射した時に、梗塞外周の細胞サイクリング心筋細胞の数は、2×10
5個のヒト内皮細胞性前駆細胞の単独の静脈内注射と比較して、さらに1.9倍まで増大された(
図4e、p<0.01)。したがって、SDF-1の心臓内注射を2×10
5個のヒト内皮前駆細胞の静脈内注射と組み合わせると、2週において、塩類溶液を受けているLAD結紮された対照と比較して、細胞サイクリング心筋細胞のほぼ8倍の累積的増加を生じ、心エコー図法によって決定すると、2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞の単独の静脈内注射と比較して、4倍以上優れたLVEF改善に変化した(
図4f、p<0.01)。抗CXCR4 mAbの同時投与により、2.8倍までLVEF改善を増大し(p<0.01)、一方でIL-8の心臓内注射では、相加的な利益を与えなかった。
【0089】
15週での、筋細胞に対する繊維組織の比の定量では、2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞を受けている群および10
5個の内皮前駆細胞プラス抗CXCR4 mAbを受けているものの両者において、瘢痕/正常の左心室心筋の比率が、その他の群の各々についての37-46%と比較して、それぞれ13%および21%で有意に減少したことが示された(p<0.01)、
図4g。両群は、心筋細胞アポトーシスに対してほとんど同一レベルの初期の保護を有したので、本発明者らは、2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞を注射した群に見られる瘢痕/筋細胞の比のさらに38%の減少は、大型の血管新血管新生に由来する栄養供給によって誘導される内因性のラット心筋細胞の増殖/再生を実際に反映すると推測する。これは、おそらくこの群において見られる機能的な改善の増加の原因であろう。本発明者らは、左心室の筋肉質量に対する瘢痕の大きさの比は、一部には、初期の梗塞サイズのネガティブな効果および抗アポトーシスによる心臓保護機構のポジティブな効果に加えて、残りの心筋が増殖および再生する能力によって与えられるポジティブな効果を反映すると結論する。筋細胞アポトーシスの保護および筋細胞の増殖/再生の誘導の両者を組みあわせた、中型および大型のサイズの新生脈管構造(neovasculature)の全体的効果は、
図4hにおいて劇的であることが示してあり、ここでは、塩類の対照とは対照的に、2×10
5個の内皮細胞性前駆細胞の注射により、前心筋のほぼ完全なサルベージ、通常の中隔サイズ、および最小のコラーゲン沈着を生じた。
【0090】
再生を生じさせる
PAI-1を阻害する触媒核酸は、ヒト血管芽細胞依存的な心筋細胞再生を増大する。
本発明者らは、PAI-1の発現を阻害することができる触媒核酸(E2と命名)によって誘導される新血管新生が、心筋細胞再生と関係する可能性があるかどうかを調査した。E2単独の注射では、新血管新生を増加するにもかかわらず、心筋細胞再生を誘導しなかった。E2注射を静脈内にデリバリーしたヒト内皮前駆細胞と組み合わせると、心筋細胞再生の程度を塩類対象よりも7.5倍高いレベルに著しく増大した(p<0.01)。スクランブルされたDNA対照酵素(EO)は、このような効果を有さなかった。さらに、E2単独では心筋機能を改善しないのに対して、E2をヒト内皮前駆細胞と組み合わせて2週における左室駆出率の回復によって決定すると、内皮前駆細胞単独での心臓機能の回復のほぼ2倍のポジティブな効果を生じた。これらの結果は、梗塞後に心機能を改善させる主要な機構として心筋細胞再生が重要であることを強調する。E2をヒト内皮前駆細胞と組み合わせると、いずれかのアプローチを単独で使用するよりも、梗塞外周で62%多い数の大型の毛細血管の生じ、これらの結果は、PAI-1発現を阻害するストラテジーなどの相乗的なアプローチを用いて、血管芽細胞で誘導される心筋細胞再生および心機能の改善を最適化し、直接または血管芽細胞依存的なプロセスのいずれかを介して新血管新生を増大することができることを示す。
【0091】
本発明者らは、ヒトCD34+CD117
bright血管芽細胞の静脈内注射では、塩類の対照と比較して、トロポニンおよびKi67の二重染色によって決定すると、梗塞周囲領域のラット心筋細胞の増殖/再生の4倍の増加を生じることをさらに発見した(p<0.01)。E2注射を静脈内にデリバリーしたヒト血管芽細胞と組み合わせると、心筋細胞再生の程度を塩類の対照よりも7.5倍高いレベルに著しく増大した(p<0.01)。スクランブルされたDNA酵素E0では、このような効果を有しなかった。
【0092】
筋細胞増殖に対する遺伝子の効果
本発明者らは、心筋の新血管新生が、筋細胞増殖を引き出すために必要とされるシグナルを誘導し、これを模倣する治療的な介入により、虚血またはその他の発作の発症によって損傷を受けた心臓の回復および再生に顕著な意味を有し得ると仮定した。
【0093】
この複雑な問題へのアプローチを開始するために、本発明者らは、cDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション技術を使用した。この技術では、2つの異なる条件設定の間の遺伝子発現パターンを比較することができる。本発明者らの初期のアプローチは、通常のラット由来の心臓と左前下行(LAD)冠動脈結紮を48時間早く受けたラットとの間で、どの遺伝子が差動的に発現されるかについて比較した。本発明者らは、虚血の48時間後の遺伝子の過剰または過小発現の変化パターンが何であれ、新血管新生は、非虚血ラット心臓において見られるものの方へパターンが逆転されると仮定した。
【0094】
cDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーションを使用して、本発明者らは、遺伝子の機能が、酸化的なストレスおよびその他のDNA損傷の誘導因子に続く細胞のアポトーシスおよび細胞周期の進行におけるこれらの調節を介して関連する一群の遺伝子の発現に、顕著な相反的な変化を観察した。スーパーオキシドジスムターゼなどの特定の抗酸化物遺伝子の発現は、虚血組織においてアップレギュレートされたのに対して、ヘミン、特にヘム結合タンパク質23(HBP23)およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼによって誘導される抗酸化物ストレス応答性の遺伝子は、ダウンレギュレートされた。さらに、酸化的なストレスに続く過酸化水素(H
202)によってそのmRNA発現が誘導され、かつその機能はHBP23のものと均衡する、最近同定されたタンパク質のビタミンD3アップレギュレートタンパク質(VDUP1)は、虚血心においてアップレギュレートした。これらの知見は、抗酸化物の欠乏の存在および心筋梗塞に付随する酸化的なストレスの増大が、梗塞後の心不全の病原に直接関係すると思われるという以前の観察との関連を考慮したときに、特に顕著である(74、75)。
【0095】
図5に示すように、RT-PCRを使用して、虚血、対、正常ラットの心臓におけるHBP23およびVDUP1のmRNA発現の相反的な変化を確認した。さらに、これらの2つの遺伝子のmRNA発現は、ヒト成人の骨髄由来の前駆体の静注および梗塞ゾーンの新血管新生の2週間後にラット組織で正常に戻った。対照的に、塩類溶液を受けているLAD結合されたラット心臓では、48時間に観察されるパターンと比較して、これらの遺伝子のmRNA発現が2週において不変であることが観察された。虚血に続くHBP23およびVDUP1のこれらの変化した発現パターンに対する新血管新生の効果と、心筋細胞の増殖/再生の誘導と共に心筋細胞アポトーシスに対して観察される保護との間の関係を理解するためには、細胞アポトーシスおよび細胞周期の進行に対する、これらの遺伝子によってコードされる産物の分子効果を詳細に理解することが重要である。
【0096】
細胞が増殖するときに、分裂周期の進行は、正および負のシグナルの複雑なネットワークによって厳密に調節される。細胞周期の1つの期から次への進行は、サイクリンとして知られる周期的に発現されるタンパク質に分裂促進シグナルの伝達、およびその後にサイクリン依存的なキナーゼ(cdks)(67)として知られるセリン/スレオニン・プロテインキナーゼの保存されたファミリーのいくつかのメンバーの活性化または不活性化によって制御されている。DNA損傷、末端分化、および複製による老化などの多様なプロセスで観察される増殖停止は、2つの機能的に異なったファミリーのCdk阻害剤、Ink4およびCip/Kipファミリーによる細胞周期進行の負の調節による(64)。p21Cipl/WAF1の細胞周期阻害活性は、その核局在化並びにG1サイクリン-CDKに対するそのN末端のドメインを介した結合および増殖性の細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen:PCNA)に対するそのC末端ドメインを介した結合による細胞周期調節因子の四つの複合体の関与に本質的に相関する(68-71)。後者の相互作用は、PCNAがDNAポリメラーゼ(主要な複製的DNAポリメラーゼ)を活性化する能力を遮断する(72)。増殖停止した細胞が、その後にアポトーシス経路入るためには、細胞周期調節因子と協力して特異的なアポトーシス刺激によって提供されるシグナルが必要である。たとえば、サイクリンA-関連cdk2活性のアップレギュレーションと共にカスパーゼを媒介したp21の切断は、成長因子の欠乏(73)または心筋細胞(74)の低酸素のいずれによる細胞のアポトーシスの誘導にも重要な工程であることが示されている。
【0097】
アポトーシス・シグナルを調節するキナーゼ1(ASK1)は、サイトカインおよびストレスで誘導されるアポトーシスの機構の重要な成分である(75、76)。基底条件下では、ASK1を媒介したアポトーシスに対する耐性は、ASK1、細胞質p21Cipl/WAF1(77)、およびチオールレダクターゼチオレドキシン(TRX)(78)の間の複合体形成の結果のようである。無処理の細胞質のp21Cipl/WAFl発現は、ASK1に応答性のアポトーシスの阻止(75)および終末分化の状態の維持(77)の両方に重要であると思われる。さらに、酸化型でなく、TRXの還元型は、ASK1のN末端の部分に結合し、ASK1を媒介した細胞のアポトーシスの生理的な阻害剤である(78)。最近同定されたタンパク質VDUP1は、TRXの還元型の結合に対してASK1と競合して(78、79)、ASK1を媒介したアポトーシスの増強(augmention)を生じることが示された(80)。これは、ASK1を媒介した細胞のアポトーシスは、TRX-VDUP1複合体の生成または酸化的なストレスを伴う細胞のレドックス状態の変化による酸化TRXの生成などの、ASK1からTRXが正味の解離を生じるプロセスによって増大されることを示す。
【0098】
TRXおよびグルタチオンは、サイトゾルのチオール-ジスルフィド状態を維持する主要な細胞の還元系を構成する(81)。TRXのレドックス活性/ジチオール活性な部位は、全ての種Trp-Cys-Gly-Pro-Cys-Lys全体で非常に保存されている。活性部位Cys32およびCys35の2つのシステイン残基は、NADPH依存的な酵素TRXレダクターゼによって触媒される可逆的な酸化還元反応を受ける。これらの反応は、ペルオキシダーゼ活性を示すペルオキシレドキシン(Prxs)として既知の抗酸化物酵素ファミリーのメンバーで形成されるジスルフィド架橋を経た電子伝達に関与する(82、83)。Prxsは、これらが金属または補欠分子族などの補因子を有しないという点で、その他のペルオキシダーゼとは異なる。Prxsは、一般にNおよびC末端領域に2つの保存されたシステインを有し(84)、これらの抗酸化物効果は、TRX系の生理学的な電子供与体活性と連関する(82、85、86)。95〜97%の配列相同性を有するPrxsは、ラット(ヘム-結合タンパク質23、HBP23)(87)、マウス(マウスマクロファージストレスタンパク質23、MSP23)(88)、およびヒト(増殖関連遺伝子産物、PAG(89)およびヒトナチュラルキラー細胞増強因子A(90))において同定された。
【0099】
Prxsは、遺伝子の発現が、それぞれのプロモーターに存在する抗酸化剤応答配列(ARE)に結合するNF-E2関連因子2(Nrf2)によって調節される酸化的ストレス応答性の遺伝子のレパートリーのメンバーである(91)。これらには、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ-1、およびTRXを含む。基底条件下では、Nrf2は、サイトゾルの特異的なタンパク質(Keap1)に結合する(92)。しかし、酸化的ストレス条件下では、Nrf2はKeap1から分離し、核に移行し、ここでは、AREモチーフを含む抗酸化遺伝子の転写活性化を誘導する。正確な細胞外情報伝達経路は解明されていないが、Nrf2の核移行およびその後のARE活性化は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼによって活性化される経路に依存的なようである(93)。加えて、ヘミンは、Keap1からのNrf2の分離の強力な誘導因子であり、AREを介してTRX遺伝子の転写を生じる(94)。
【0100】
細胞の迅速なレドックス変化の期間の間に、Prxsは、おそらくTRXの酸化型から電子を受け入れることによって、還元されたTRXのサイトゾルレベルを維持する役割を果たす。この恒常性の機構は、還元されたTRXの十分なレベルの維持を可能にし、ASK1に対する適切な結合および細胞のアポトーシスの予防を確実にする可能性が高い。内因性のPrx系が負担をかけられすぎる場合には(これは、過剰酸化型のTRXが生じるときに細胞のレドックス変化の間に生じるかもしれない)、細胞のアポトーシスは、ASK1の反対効果を介して生じると考えられる。これに対抗するためには、Nrf2の核移行を介したPrxsの転写活性化が酸化的ストレス後に生じなければならない。これは、ヘミンおよびPI3キナーゼ依存的な機構を経たKeap1からのNrf2解離によるか(93、94)、または酸素分圧の増大に続いて生じるNrf2 mRNAおよびタンパク質の発現を増大することによるかのいずれかによって達成することができる(95、96)。
【0101】
TRXと直接相互作用することに加えて、Prx遺伝子産物(PAG、HBP23、MSP23、NKEF、その他)は、特異的にc-Abl(非受容体のチロシンキナーゼ)のSH3ドメインに結合し、DNAに損傷を与える薬剤を含む種々の刺激によってその活性化を阻害する(97)。SH3ドメインを介したc-Ablの活性化により、細胞周期のG1期での停止または細胞のアポトーシスを誘導する(98)。細胞周期阻止は、c-Ablのキナーゼ活性に依存的であり(96)、c-Ablが、サイクリン依存性キナーゼCdk2の活性をダウンレギュレートし、p21の発現を誘導する能力によって媒介される(99)。c-Ablのアポトーシス効果は、核のc-Ablが、p73(アポトーシスを誘導することができる主要抑制因子タンパク質のp53ファミリーのメンバー)をリン酸化する能力に依存的である(100、101)。最近、核ではなく、細胞質の形態のc-AblがH
2O
2によって活性化され、これがc-Ablのミトコンドリアの局在化、c-Abl依存的なチトクロームc放出、および酸化的ストレスに続く細胞のアポトーシスを生じことが示された(102、103)。インビボでc-Ablと結合することによって、PAG遺伝子産物(およびおそらくその他のPrxs)は、c-Ablの過剰発現によって誘導されるチロシン・リン酸化を阻害し、活性化されたc-Abl遺伝子産物の細胞分裂停止およびプロアポトーシス効果から細胞を救うことができる(97)。
【0102】
Nrf2依存的な酸化的ストレスに応答性の遺伝子が、心筋虚血症に続いてダウンレギュレートされるという本発明者らの知見は、ヘミンおよび酸素欠乏の直接的な効果を反映する可能性が高い。虚血心臓におけるPrxのダウンレギュレーションの最終結果は、ASK1依存的な細胞のアポトーシスの増大、並びにAbl依存的なアポトーシスおよび細胞周期阻止であろう。観察されたVDUP1発現の平行した増大は、ASK1依存的な細胞のアポトーシスをさらに増強するであろう。したがって、VDUP1 mRNAまたはタンパク質に対する、PAGまたはその他のPrx mRNAもしくのタンパク質の発現の比は、心筋細胞アポトーシスのリスクの程度を予測するための診断アッセイ法の基礎を形成することができ、並びに細胞周期が虚血(心筋虚血後の特異的な療法に対する反応をモニタリングし、アポトーシスによる死滅から心筋細胞を保護し、心筋の増殖/再生を増強することができる。
【0103】
c-Abl阻害および酸化されたTRXの減少の両者を介したアポトーシスから虚血心筋を保護するため、およびG1からS期への細胞周期の進行に対するc-Ablの効果を阻害することによって心筋細胞の増殖/再生を可能にするためには、心筋虚血症に続くPrxsの減少した発現を逆転させることにより、心臓のPrxsが増大するであろう。
【0104】
心筋虚血症の設定において、遺伝子発現が、Prxs、TRX、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含むこれらのプロモーターの抗酸化剤応答配列(ARE)に対するNrf2の結合によって調節される酸化的ストレスに応答性の遺伝子のレパートリーのメンバーの転写および活性の増大は、Nrf2 mRNAを増大すること、またはKeap1からNrf2タンパク質を解離を生じさせること、または好ましくは両方を同時に生じさせることにより、アポトーシスからの心筋細胞の保護、並びに酸化的ストレスに続く心筋細胞細胞周期の進行の誘導の両方を生じるであろう。
【0105】
心筋虚血症に続くVDUP1の発現を減少すると、VDUP1に対するTRXの結合を減少し、その結果TRX-ASK1の相互作用を増大することによって、虚血心筋をアポトーシスから保護する。
【0106】
骨髄由来の内皮前駆体または他のいかなるプロセスによる心筋の新血管新生も、心筋虚血後にPrx発現の誘導およびVDUP1発現の減少を引き起こし、レドックスを媒介したアポトーシスに対する保護および心筋の増殖/再生の誘導を生じる1つの方法の例である。
【0107】
Keap1に対するNrf2の結合を特異的に阻害する小分子は、心筋細胞アポトーシスに対して同様の保護作用を有し、虚血後の心筋の増殖/再生を誘導すると思われる。同様に、VDUP1にTRXの結合を特異的に阻害する小分子は、虚血後の心筋細胞アポトーシスに対して同様の保護作用を有すると思われる。
【0108】
心筋虚血症後のc-Ablチロシンキナーゼ活性化を特異的に阻害する小分子の使用は、心筋細胞アポトーシスに対する同様の保護作用を有し、虚血後の心筋の増殖/再生を誘導することが予想される。c-Ablチロシンキナーゼ活性化を阻害する小分子の具体例は、STI-571である。心筋梗塞後におけるこの分子または関連した分子の使用は、心筋細胞アポトーシスから保護し、心筋の増殖/再生を誘導する。
【0109】
VDUP-1に特異的なDNA酵素は、合成物ラットVDUP-1オリゴヌクレオチドを切断する
サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションによって、本発明者らは、タンパク質VDUP1のmRNA発現が、急性の虚血後の心臓において有意に増大されることを見いだした。VDUP1は、サイトゾルタンパク質チオレドキシンTRXに結合することが示されており、これは、サイトゾルのチオール-ジスルフィド状態を維持するように機能する。TRXの還元型に対する結合によって、VDUP1は、還元されたTRXが、NADPH依存性酵素TRXレダクターゼによって触媒される可逆的な酸化還元反応を受ける能力を妨げる。これは、サイトゾルおよびミトコンドリアの過剰な活性酸素の産生による細胞のアポトーシスを生じる。
【0110】
VDUP1は、TRX結合において、通常は還元されたTRXに結合する別のサイトゾルタンパク質のアポトーシス・シグナル調節キナーゼ1(apoptosis signal-regulating kinase1:ASK1)と競合する。ASK-1は、サイトカインおよびストレス誘発性のアポトーシスの機構に重要な成分である。その活性化は、p38 MAPキナーゼ(細胞のアポトーシスの主要なメディエーター)の過剰なリン酸化および活性化を生じる。還元型のTRXは、ASK1のN末端の部分に結合し、ASK1を媒介した細胞のアポトーシスの生理的な阻害剤であるが、酸化型はそうではない。TRXに対するVDUP1の結合により、TRXからASK1が正味の解離を生じ、潜在的に、p38 MAPキナーゼ依存的な経路を経て、ASK1を媒介したアポトーシスの増加を生じる。
【0111】
VDUP1の心臓過剰発現に関して、予想される効果は、心筋細胞アポトーシス、線維芽細胞増殖、コラーゲン分泌、および瘢痕形成を含む過剰なp38 MAPキナーゼ活性化および酸化的レドックス損傷によるものであると考えられる。同様の効果は、急性または慢性の虚血傷害を受けているその他の組織、たとえば脳血管の虚血/脳卒中後の脳におけるVDUP1の過剰発現の結果であると思われる。
【0112】
本発明者らは、VDUP1 mRNAをターゲットするDNA酵素を開発した。一旦虚血心筋(または、脳などのその他の虚血組織)にデリバリーされたDNA酵素は、局部的なVDUP1 mRNAおよびタンパク質の発現を阻害することができ、したがって、p38 MAPキナーゼの活性化および酸化的な損傷を減少する。
【0113】
図12に示すように、0.05μM〜5μMの範囲の酵素濃度では、配列特異的なVDUP1 DNA酵素は、濃度および時間依存的な様式で合成ラットVDUP1オリゴヌクレオチドを切断した。
【0114】
VDUP-1 DNA酵素は、線維芽細胞の増殖を減少し、心筋細胞をアポトーシスから保護する。
図13の(a)に示すように、LAD結紮の48時間後にラット配列特異的なVDUP1 DNA酵素の心筋内注射すると、スクランブルされたDNA酵素対照の注射と比較して、2週後における梗塞ゾーンにおける増殖性の心臓線維芽細胞の75%の平均阻害を生じた(p<0.01)。加えて、
図13(b)に示すように、VDUP1 DNA酵素の注射により、スクランブルされたDNA酵素対照での注射と比較して、梗塞周囲領域でアポトーシスの心筋細胞の20%の平均減少を生じた(p<0.05)。
【0115】
VDUP-1 DNA酵素は、心筋の瘢痕を減少し、急性の梗塞後に心機能を改善する。線維芽細胞増殖および心筋細胞アポトーシスの阻害により、対照のスクランブルされたDNA酵素を受けている動物の35%の平均から、VDUP-1 DNA酵素を受けているものの20%の平均に、梗塞ゾーンの成熟した瘢痕沈着の有意な減少を生じた、
図14(a)(p<0.01)。心機能に対する効果が最も劇的であった。
図14(b)に示すように、駆出率によって決定すると、VDUP1 DNA酵素を受けている動物では、心機能の50%の平均回復を示したが、スクランブルされた対照DNA酵素を受けている動物では、改善が見られなかった(p<0.01)。
【0116】
明らかに、VDUP1 DNA酵素は、心筋細胞アポトーシス、心臓線維芽細胞増殖、および瘢痕形成を防止し、急性の虚血後の心機能に有意な改善を生じる。これらの効果は、おそらくp38 MAPキナーゼ活性化の防止およびレドックス損傷からの保護によるものである。脳血管の虚血後の脳などの、血流の減少したその他の組織部位に対してVDUP1 DNA酵素を投与することによっても、同様の結果が得られるかもしれない。
【0117】
G-CSF
G-CSFは、GM-CSFよりも強力な心筋梗塞後の新血管新生の誘導因子である。
図15(a)に示すように、左前下行(LAD)冠動脈結紮によって誘導される心筋梗塞の2日後に開始して4日間、10μg/kgでヒトG-CSFを皮下に注射したラットでは、塩類溶液処理した対照と比較して、2週後において約7.5倍高い数の梗塞周囲領域の大型直径の血管を示した(p<0.01)。同じ投与計画で投与したラットGM-CSFは、あまり有効でなかったが、なおも対照動物よりも4倍多い数の大型内腔血管を誘導した。
【0118】
その上、G-CSFは、GM-CDFよりも強力な、心筋梗塞後の心筋細胞アポトーシスの阻害剤である。G-CSF注射は、同じ投与計画で使用したGM-CSFよりも強力な、心筋細胞アポトーシスから保護するための薬剤であった、
図15(b)。G-CSF投与は、塩類溶液処理した対照と比較して、2週までに梗塞周囲領域におけるアポトーシス心筋細胞数の36+16%の減少を生じた(p<0.01)が、GM-CDFでは、アポトーシスの心筋細胞数を12+9%まで減少しただけであった。
【0119】
G-CSFは、GM-CSFよりも強力な、心筋梗塞後の心筋細胞再生および機能的な心臓回復の誘導因子である。次に、本発明者らは、心筋細胞細胞サイクリング/再生に対する、および機能的な心臓回復に対する、骨髄動員の効果を検査した。
図16の(a)に示すように、心筋梗塞後の2日で開始して4日間、10μg/kgでヒトG-CSFを皮下に注射したラットでは、塩類溶液処理した対照と比較して、2週後において3.2倍多い数の梗塞周囲領域のサイクリング心筋細胞を示した(p<0.05)。同じ投与計画で投与したラットGM-CSFは、あまり有効でなく、2.6倍多い数のサイクリング心筋細胞を生じた。
図16(b)に示すように、これは、機能的な心臓回復と相関した。塩類溶液処理した動物は、駆出率によって測定すると、梗塞後の2日から14日において心機能の17%の平均減少を有したたが、GM-CSF処理した動物では、心機能の10%の減少だけを有し、G-CSF処理した動物では、実際に心機能の10%の平均改善を有した(P<0.01)。本発明者らは、これらの機能的なデータは、心筋の新血管新生、心筋細胞アポトーシスに対する保護、および心筋細胞細胞サイクリングの誘導に対する、G-CSFの骨髄動員の優れた効果を反映するものと解釈する。
【0120】
抗CXCR4抗体
抗CXCR4抗体の静脈内投与は、心筋の新血管新生を増大し、急性の梗塞後の心機能を改善する。G-CSFが骨髄エレメントの動員を引き起こす主要な機構は、骨髄常在性の幹細胞上のケモカイン受容体CXCR4とそのリガンドのSDF-1との間の相互作用の妨害を介する。G-CSFは、CXCR4のN末端の切断およびセリンプロテアーゼの蓄積の両方を誘導し、SDF-1を直接切断して不活性化する。同様の機構が、心筋の新血管新生および心機能の改善に対するG-CSF投与の効果の原因であるたかどうかを検査するために、本発明者らは、LAD結紮の48時間後にモノクロナル抗CXCR4抗体を静脈内に投与することによって、CXCR4-SDF1の相互作用を妨害する効果を調査した。
図17(a)に示すように、抗体投与の2週後において、抗CXCR4 mAbを受けている動物は、塩類溶液または抗CXCR2mAbを受けている対照動物と比較して、梗塞周囲領域の新血管新生の2倍の増大を示した。さらに、
図17(b)に示すように、抗CXCR4処理した動物は、2週において、10%の駆出率の平均回復を示したが、抗CXCR2 mAbを受けているものでは、8%の心機能の平均減少を有した(p<0.05)。これらのデータは、観察されたG-CSF投与の効果が骨髄におけるCXCR4相互作用を妨害して、内皮前駆細胞を末梢循環に動員し、かつ虚血心筋に誘導することができ、ここで、生じる新血管新生が心機能の改善を生じることによって生じるという概念を支える。
【0121】
SDF-1
SDF-1 mRNAの発現は、急性の虚血心筋の初期には誘導されず、その遅発型の誘導はGM-CSFによって阻害される。次に、本発明者らは、GM-CSFの効果が、急性の虚血心筋における走化性のシグナルを増大することなどの、G-CSF処理単独で見られるアプローチを増大することができるストラテジーを同定しようとした。CD34+骨髄幹細胞の走化性は、CD34+細胞上のCXCR4受容体とCXCケモカインSDF-1との間の相互作用によって調節されるので、本発明者らは、SDF-1 mRNAの発現が、急性の虚血心筋において誘導されるかどうかを調査した。
図18に示すように、心筋のSDF-1 mRNAの相違は、非虚血対照と比較して、実験動物のLAD結紮の48時間後には観察されなかった。梗塞の2週間後までに、心筋のSDF-1 mRNAの発現は、塩類溶液処理した対照と比較して、3.3倍に増大した(p<0.01)。本発明者らは、このSDF-1の遅延性の産生は、マクロファージなどの細胞を浸潤させることによる生成を最も反映する可能性があると解釈した。対照的に、全身GM-CSF投与では、2週において約4.5倍のSDF-1 mRNA発現の阻害を伴い、実際に非虚血対照よりも低いレベルになった。SDF-1は、内皮前駆細胞の強力な走化因子であるので、これらのデータは、全身GM-CSF投与により、SDF-1などの走化性のリガンドの減少した心筋発現によって、内皮前駆体の最適以下の心筋ホーミングを生じるであろうことを示唆した。
【0122】
急性心筋梗塞後のSDF-1の心筋内の注射により、新血管新生および心筋細胞アポトーシスに対する保護を生じる。急性の虚血心臓のSDF-1発現の変化が、内皮前駆細胞の走化性および心筋細胞機能に影響を及ぼすかどうかを決定するために、本発明者らは、LAD結紮の48時間後におけるSDF-1タンパク質の心筋内への直接注射の効果を検査した。19(a)および(b)に示すように、LAD結紮の2日後に0.2mlの総容積で4μg/kgのヒト組換えSDF-1を5箇所の梗塞周囲部位に心筋内注射すると、2週までに、心筋内に塩類溶液の注射を受けている対照動物と比較して、梗塞周囲領域で新血管新生を5倍に増大し、アポトーシスの心筋細胞を44+9%減少した(両方とも、p<0.05)。新血管新生に対する、および心筋細胞アポトーシスに対する保護範囲に対する、心筋内のSDF-1注射の効果は、G-CSFの全身投与によって得られる結果と顕著なことに非常に類似した。皮下に投与されたGM-CSFの添加により、心筋の新血管新生の相乗的な増加を生じたが、心筋細胞アポトーシスに対する保護におけるさらなる利益は観察されなかった。これらの結果は、新血管新生によって誘導され得る心筋細胞アポトーシスに対する保護の量は有限であり、これをさらに新たな血管を誘導することによって改善することができないことを示唆する。
【0123】
SDF-1の心筋内の注射は、心筋細胞再生を誘導する。
図20(a)に示すように、LAD結紮の2日後に0.2mlの総容積で4μg/kgのヒト組換えSDF-1を5箇所の梗塞周囲部位に心筋内注射すると、塩類溶液を受けている対照動物と比較して、梗塞周囲領域におけるサイクリング心筋細胞の数の4.5倍の増加を生じた(p<0.01)。全身GM-CSF投与の添加により、心筋細胞再生に対して相乗的な効果を生じた。特に、有意にSDF-1およびGM-CSFによる併用療法を受けている動物の梗塞周囲領域におけるサイクリング心筋細胞の数は、G-CSF単独を受けている動物に見られるものを上回った(7倍、対塩類溶液処理した対照の3.2倍以上、p<0.01)。梗塞周囲領域の大型内腔血管の平均数がSDF-1およびGM-CSFによる併用療法を受けている動物において、およびG-CSF単独を受けているものにおいて同様であったので(8.0対7.5/強拡大の視野)、これらのデータは、SDF-1が新血管新生の誘導に加えて、その他の機構によって心筋細胞のサイクリング/再生を増強したことを示唆する。
【0124】
SDF-1の心筋内の注射は、心機能を改善し、骨髄動員と相乗的である。SDF-1の心筋内の注射は、全身G-CSF投与によって見られるものと同様の機能的な心筋回復の程度を生じた(G-CSF処理した動物に対する10%の平均改善および塩類溶液処理した対照に対する17%の平均減少と比較して、LAD結紮後2日および14日の間の駆出率に10%の平均改善、両処理アームについてp<0.01)。最も顕著には、GM-CSFによる骨髄動員とSDF-1注射を組み合わせると、機能的な回復の有意な増加を生じた(駆出率の21%の平均改善、p<0.01)、
図20(b)。これらのデータは、SDF-1の心筋内の投与が、心筋細胞のサイクリングおよび再生の誘導に関与する直接的機構並びに動員された骨髄由来の内皮前駆体の走化性および心臓新血管新生の増強を介して作動する間接的な機構という2つの別々の機構を介して急性虚血後の心機能の改善を引き起こすことを示す。最適な結果は、心筋内のSDF-1処理を、G-CSFおよび骨髄のSDF-1とCXCR4の相互作用を阻害するその他の薬剤を含む、骨髄内皮前駆体の最も強力な動員剤(mobilizers)と組み合わせたときに見られる可能性が高い。
【0125】
方法および材料
サイトカインで動員されるヒトCD34+細胞の精製および特性付け:単一ドナーの白血球フェレーシス(leukopheresis)産物は、組換えG-CSF10mg/kg(Amgen CA)で4日間毎日sc処理したヒトから得た。ドナーは、同種の幹細胞移植体のために、骨髄動員、回収、および単離の標準的な施設内手順を受けている健康な個々であった。単核細胞をFicoll-Hypaqueによって分離し、高度に精製したCD34+細胞(>98%陽性)を抗CD34モノクローナル抗体(mAb)で被覆した磁気ビーズ(Miltenyi Biotech, CA)を使用して得た。精製したCD34細胞を、CD34およびCD117に対するフルオレッセイン結合mAbs(Becton Dickinson, CA)、AC133(Miltenyi Biotech, CA)、CD54(Immunotech, CA)、CD62E(Bio Source, MA)、VEGFR-2、Tie-2、vWF、eNOS、CXCR1、CXCR2およびCXCR4(全てSanta Cruz Biotech, CA)で染色し、FACScan(Becton Dickinson, CA)を使用して4色パラメーター蛍光によって解析した。また、CD34発現について陽性のものを選択した細胞をフィコエリトリン(PE)結合抗CD117 mAb(Becton Dickinson, CA)で染色し、Facstar Plus(Becton Dickinson)およびPEフィルターを使用して明るい蛍光および暗い蛍光のものをソートした。GATA-2の細胞内染色は、Pharmingen Cytofix/Cytoperm(商標)キットを使用して、10μlのCD117およびCD34表面抗原(Becton Dickinson, CA)に対する蛍光色素結合mAbsと共に氷上で30分間インキュベートして、各々の明るい蛍光および暗い蛍光を発する細胞群から1,000,000細胞を透過させることによって行った250μlのCytofix/Cytoperm(商標)溶液に4度Cで20分間再懸濁した後、細胞をGATA-2(Santa Cruz Biotech, CA)またはIgG対照に対する蛍光色素ラベルmAbと共に4度Cで30分間インキュベートし、3-パラメータのフローサイトメトリーによって解析した。
【0126】
ヒト骨髄由来の内皮前駆体の走化性:高度に精製したCD34+CD117
bright細胞(>98%純度)を膜(8mmの細孔)(Neuro Probe, MD)に適合する48ウェル走化性チャンバーにまいた。37℃で2時間インキュベーションした後、チャンバーを逆にして、細胞はIL-8、SDF-1α/β、およびSCFを0.2、1.0、および5.Oμg/mlで含む培地中で3時間培養した。膜は、メタノールで固定し、Leukostat(商標)(Fischer Scientific,Ill)で染色した。走化性は、10個の強拡大の視野における移動細胞を計数することによって算出した。
【0127】
動物、外科的手技、ヒト細胞の注射、および組織への細胞の遊走の定量:ローワット(Rowett)(rnu/rnu)胸腺欠損ヌードラット(Harlan Sprague Dawley, Indianapolis, Indiana)を「動物看護および使用委員会のためのコロンビア大学研究所(Columbia University Institute for Animal Care and Use Committee)」によって承認された研究に使用した。麻酔後、左の開胸術を行い、心膜を切開して、左前下行(LAD)冠動脈を結紮した。偽操作したラットでは、冠動脈周辺に位置する縫合を伴わずに同様の外科的手技をした。細胞の遊走の研究のためには、G-CSF動員後の単一のドナーから得られる2.0×10
6個のCD34+細胞を、単独で、またはヒトCXCR1、ヒトCXCR2、ヒトCXCR4、ラットSDF-1(全てR&DSystems, MN)、ヒトCD34(Pharmingen, CA)、もしくはラットIL-8(ImmunoLaboratories, Japan)に対して機能的な阻害活性を有することが既知の50μg/mlのモノクローナル抗体(mAb)と共に、LAD結紮の48時間後に尾静脈に注射した。対照には、LAD結紮後に同濃度のアイソタイプ対照抗体または塩類溶液を受けさせた。注射前に、2.0×10
6個のヒト細胞を2.5μg/mLの蛍光性カルボシアニンDiI色素(Molecular Probes)と共に、37℃で5分および4℃で15分間インキュベートした。PBSで洗浄後、DiIでラベルされたヒト細胞を塩類溶液中に再懸濁し、静脈内に注入した。また、2.0×10
6個のCD34+ヒト細胞を偽操作したものまたは1.0μg/mlの組換えヒトIL-8、SDF-1、SCF、または塩類溶液の3回の心筋内注射を受けているLAD結紮したラットの尾静脈に注入した。各群は、6〜10匹のラットからなった。ヒト細胞の注射後の心筋の浸潤の定量は、注射の2日後に屠殺したラットからの心臓のDiI蛍光の評価によって行った(強拡大の一視野あたりのDiI陽性の細胞数として表してあり、試料あたり最小でも5つの視野を検査した)。ヒト細胞によるラット骨髄浸潤の定量は、12匹のラットにおいて、ベースライン、2、7、および14日に総ラット骨髄個
体群と比較して、HLAクラスI陽性細胞の比率のフローサイトメーター解析およびRT-PCR解析によって行った。新血管形成および心筋の生存戸および機能に対する効果についての研究のためには、G-CSF動員後に単一のドナーから得た2.0×10
6個のDiIラベルされたヒトCD34+細胞を10
3、10
5、または2.0×10
5個の免疫精製したCD34+CD117
bright細胞と共に再構成し、LAD結紮の48時間後に、CXCR4に対する阻害活性が既知のmAbの存在下または非存在下において、ラット尾静脈に注射した。各群は、6〜10匹のラットからなった。組織学的および機能的な研究は、2週および15週に行った。
【0128】
ラットCXCケモカインmRNAおよびタンパク質の発現の測定:ポリ(A)+mRNAは、3匹の正常および12匹のLAD結紮したラットの心臓から標準的な方法によって抽出した。GAPDH発現によって測定したように、ベースライン、LAD結紮後の6、12、24、および48時間における、ラットIL-8およびGro-αmRNAの心筋での発現を、総ラットRNAについて基準化した後に、RT-PCRを使用して定量した。オリゴ15merおよびランダム(dT)六量体でプライミングして、モロニー・マウスリンパ増殖性ウイルス逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)で逆転写した後、Taqポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、放射性ラベルしたジデオキシヌクレオチド([a32P]-ddATP:3、000Ci/mmol、Amersham, Arlington Heights, IL)、およびラットCincのためのプライマー(ヒトIL-8/Gro-αおよびGAPDHのラット相同体(Fisher Genosys, CA))を使用するポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)でcDNAを増幅した。ラットCincおよびGAPDHのためのプライマー対(センス/アンチセンス)は、それぞれgaagatagattgcaccgatg(配列番号:4)/catagcctctcacatttc(配列番号:5)(gcgcccgtccgccaatgagctgcgc(配列番号:6)/cttggggacacccttcagcatcttttgg(配列番号:7)、およびctctacccacggcaagttcaa(配列番号:8)/gggatgaccttgcccacagc(配列番号:9)であった。ラベルされた試料を2%のアガロースゲルに充填し、電気泳動法によって分離して、放射線写真法のために6時間-70℃に曝露した。ラットIL-8/Gro-αの血清レベルは、ベースライン、並びにLAD結紮後の6、12、24、および48時間で、ラットIL-8/Gro相同体Cincに対するポリクローナル抗体(ImmunoLaboratories, Japan)を使用する市販のELISAによって、4匹のラットで比較した。それぞれの血清試料中のタンパク質量は、ラットIL-8/Gro-αタンパク質の既知のレベルについて構築された光学濃度(OD)値の検量線に従って算出した。また、抗Cinc抗体は、製造業者の説明書に従って、1:200の希釈で免疫組織化学的な研究に使用して、LAD結紮後のラット心筋におけるCinc産生の細胞供与源を同定した。陽性に染色している細胞は、下記の記述したようにアビジン/ビオチン系を介して褐色に視覚化された。
【0129】
梗塞サイズの組織学および測定:2週および15週に切除した後、それぞれの実験動物由来の左心室を尖部から基部に10〜15横断面でスライスした。代表的な切片をホルマリン中で固定し、ルーチン組織学(H&E)で染色して心筋の細胞性を決定し、強拡大の視野(HPF)(600×)あたりの細胞数として表した。マソン・トリクローム染色法を行って、コラーゲンを青および心筋を赤にラベルし、1+淡青色、2+淡青色および濃青色のパッチ、並びに3+濃青色の染色として、半定量的なスケール(0〜3+)でコラーゲン量を評価した。これにより、デジタル・イメージアナライザを使用して心筋の瘢痕の大きさを測定することができた。心外膜領域および内心膜領域の両方を含む梗塞表面の長さをプラニメータ・デジタル・イメージアナライザーによって測定し、全心室の外周の割合として表した。最終的な梗塞サイズを、それぞれの心臓からの全てのスライスの平均として算出した。全ての研究は、盲検で病理学者によって行われた。梗塞サイズは、全左心室領域の割合として表した。最終的な梗塞サイズを、それぞれの心臓からの全てのスライスの平均として算出した。
【0130】
毛細血管の密度の定量:毛細血管の密度および毛細血管の種起源を定量するために、さらなる切片を、ラットまたはヒトCD31(それぞれSerotec, UK, and Research Diagnostics, NJ)、第VIII因子(Dako, CA)、およびラットまたはヒトMHCクラスI(Accurate Chemicals, CT)に対するmAbsで新たに染色した。細動脈を平滑筋層の存在下で大型の毛細血管に分化させて、筋肉特異的なデスミン(Dako, Ca))に対して、切片をモノクローナル抗体で染色することによって同定した。染色は、アビジン/ビオチン・ブロッキング・キット、ラット吸着したビオチン化抗マウスのIgG、およびペルオキシダーゼ抱合体(全てVector Laboratories Burlingame, CA)を使用して免疫ペルオキシダーゼ法によって行った。毛細血管の密度を梗塞の2週後に抗CD31 mAbでラベルした切片から決定し、抗第VIII因子mAbで確認して、障害のない心筋の毛細血管の密度と比較した。値は、HPF(400×)あたりのCD31陽性の毛細血管の数として表してある。
【0131】
心筋細胞増殖の定量:心筋細胞DNA合成および細胞サイクリングは、塩類溶液またはCD34+ヒト細胞のいずれかの注射の2週間後にLAD結紮したラットから、およびネガティブ対照として健康なラットから得たラット心筋の組織切片の、心筋細胞特異的なトロポニンIおよびヒトまたはラット特異的なKi-67に対する二重の染色によって決定した。簡単には、パラフィン包埋した切片を0.1MのEDTA緩衝液中でマイクロ波処理して、1:3000希釈のラットKi-67(Giorgio Catoretti、コロンビア大学の寄贈)または1:300希釈のヒトKi-67(Dako, CA)に対する一次モノクローナル抗体のいずれかで染色し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、1:200希釈のアルカリホスファターゼと結合された種特異的な二次抗体(Vector Laboratories Burlingame, CA)と共に切片を30分間インキュベートして、陽性染色の核をBCIP/NBT基質キット(Dako, CA)によって青く視覚化した。次いで、心筋細胞特異的なトロポニンIに対するモノクローナル抗体(Accurate Chemicals, CT)と共に切片を4℃で一晩インキュベートし、陽性染色細胞を上記したアビジン/ビオチン系で褐色に視覚化した。梗塞ゾーン、梗塞周囲領域、および梗塞から遠い領域の細胞周期を進行している心筋細胞を、Ki-67を同時発現する強拡大の一視野あたりのトロポニンI陽性細胞の比率として算出した。
【0132】
パラフィン組織切片のDNA末端ラベリングによる筋細胞アポトーシスの測定:単一細胞レベルでアポトーシスをインサイチュウで検出するために、本発明者らは、デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)によって媒介されるDNA末端ラベリングのTUNEL方法を使用した。ラット心筋の組織切片は、塩類溶液またはCD34+ヒト細胞のいずれかの注射の2週間後にLAD結合されたラットから、およびネガティブ対照としての健康なラットから得た。簡単には、組織をキシレンによって脱パラフィン化(deparaffinized)し、エタノールの段階的な希釈およびリン酸塩緩衝食塩水(PBS)の2回の洗浄液によって再水和した。次いで、組織切片をプロテイナーゼK(10μg/mlのトリス/HCl溶液)で、37℃において30分間消化した。次いで、スライドをPBSで3回洗浄し、50μlのTUNEL反応混合物(TdTおよびフルオレッセインでラベルしたdUTP)と共にインキュベートし、湿気のある大気中で37℃において60分間インキュベートした。ネガティブ対照については、TdTを反応混合物から除いた。PBS中での3回の洗浄液に続いて、次いで切片をフルオレッセイン結合アルカリホスファターゼ(AP)(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)に対して特異的な抗体と共に30分間インキュベートした。TUNEL染色は、DNA断片化を有する核が青を染色される基質系(BCIP/NBT基質系、Dako, Carpinteria, CA)によって視覚化した。反応は、PBSで3分照射後に終了させた。筋細胞内の青く染色しているアポトーシス核の比率を決定するために、組織をデスミンに特異的なモノクローナル抗体で対比染色した。内因性のペルオキシダーゼは、3%の水素ペルオキシダーゼ(perioxidase)のPBS溶液で15分間に続き、20%のヤギ血清溶液での洗浄を使用することによって遮断した。抗トロポニンI抗体(Accurate Chemicals, CT)は、40℃で一晩(1:200)インキュベートした。3回洗浄後、次いで切片を抗ウサギIgGで、続いてビオチン結合二次抗体で30分間処理した(Sigma, Saint Louis, Missouri)。次いで、アビジン-ビオチン複合体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)をさらに30分間添加して、筋細胞をDAB溶液混合物(Sigma, Saint Louis, Missouri)に5分照射に続いて褐色に視覚化した。組織切片は、200×の拡大率で顕微鏡で検査した。梗塞周囲部位およびこの部位の遠位の両方において、それぞれの200×の視野内で、領域につき少なくとも250細胞を含み、かつ累積的に組織の1mm
2に近づけた4つの領域を検査した。組織の縁で染色された細胞は計数しなかった。結果は、検査したそれぞれの部位でのmm
2あたりのアポトーシス筋細胞の平均数として表した。
【0133】
心筋機能の解析:高頻度ライナー・アレイ・トランスデューサ(SONOS 5500, Hewlett Packard, Andover, MA)を使用して心エコー研究を行った。二次元イメージは、中間の乳頭(mid-papillary)および尖端レベルで得た。拡張終期(EDV)および収縮終期(ESV)の左心室容積は、双面領域-長さ法(bi-plane area-length method)によって得て、%左心室駆出率を[(EDV-ESV)/EDV]×100として算出した。
【0134】
cDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション:簡単には、メッセンジャーRNAをそれぞれの心臓から単離し、1μgをランダムプライマーによる第1ストランドcDNA合成のために使用した。製造業者の推奨に従って、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションは、PCR-セレクトcDNAサブトラクション・キット(CLONTECH)で行った。第2ストランドの合成後、2本のcDNAライブラリーをRsaIで消化した。「テスター」ライブラリーの消化産物を特異的なアダプター(T7プロモータ)にライゲーションし、次いで、30倍過剰の、サブトラクションのための「ドライバー」ライブラリーとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、残りの産物をPCRによってさらに増幅した。フォワード・サブトラクションでは、虚血試料中に過剰発現された遺伝子を決定し、虚血組織が「テスター」であり、および正常組織が「ドライバー」である。リバース・サブトラクションでは、虚血試料中でダウンレギュレートされた遺伝子を決定するために、「テスター」および「ドライバー」を切替える。
【0135】
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実験結果II
ヒト骨髄に由来する内皮細胞性前駆細胞の静脈内投与は、新血管新生を誘導し、梗塞5日後以内の心筋細胞アポトーシスを防止する。
本発明者らは、骨髄に由来する内皮前駆細胞の静脈内注射後に、48時間よりも前に持続的なLAD結紮を受たラットの心臓において、どれくらい早く新血管新生を発生するかを決定しようとした。G-CSF動員によって得たDiIラベルしたヒトCD34+細胞(>98%のCD34純度、6〜12%のCD117
bright血管芽細胞を含んでいる)の静脈内注射の2日後に動物を屠殺したときに、多くのDiI陽性の間質細胞が梗塞周囲領域において見られたが、定義されたDiIを発現する血管の構造を同定することはできなかった、データ示さず。対照的に、ヒトCD34+細胞の注入の5日後に屠殺した動物は、梗塞周囲領域に多くのDiI陽性の血管構造を示し、塩類溶液を受けているラットと比較して、3.5倍高い毛細血管数であった、
図21(a)(p<0.01)。5日目における微少血管分布の増大(トロポニンIおよびTUNELの二重陽性によって定義される)は、塩類溶液を受けている対照と比較して、梗塞周囲領域のアポトーシス心筋細胞の数の3.3倍間での低下を伴った、
図21(b)(p<0.01)。合わせると、これらのデータは、骨髄由来の血管芽細胞が、虚血心筋の毛細血管において成熟した、機能的なネットワークに分化および組織化する血管形成プロセスは、2〜5日かかることを示す。
【0136】
ヒト骨髄に由来する内皮細胞性前駆細胞の静脈内投与は、心筋細胞前駆体の細胞サイクリングおよび心筋細胞分化を誘導する。
本発明者らは、急性の虚血後の成人心臓にまれに生じることが示されている、サイクリング心筋細胞の検出のために、5日目に屠殺した実験動物および対照動物に由来する心臓組織を免疫組織化学および共焦点顕微鏡観察によって検査した。成熟したトロポニン陽性のサイクリング心筋細胞は、梗塞の5日後の対照または実験動物のいずれにおいても検出されなかったが、ヒト骨髄由来CD34+細胞を受けている動物では、梗塞周囲領域にラット起源の小さな、サイクリング細胞(ラットKi67に特異的なモノクローナル抗体に定義される)の多くのクラスターを示した、
図22(a)。これらの細胞は、心筋細胞特異的なトロポニンI(心筋細胞分化のマーカー)に陰性であったが、αサルコメア・アクチンに陽性に染色し、これらが心筋細胞系統の未熟な細胞であることを示した。サイクリング心筋細胞前駆体の同様のクラスターは、塩類溶液を注入した対照動物では見られなかった。
【0137】
ヒトCD34+投与の2週後に屠殺した動物から得られた組織では、もはや小さな、サイクリング心筋細胞前駆体のクラスターを示さなかったが、その代わりに梗塞周囲領域において、検出可能なDNA活性を有する、大きな、成熟したラット心筋細胞(心筋細胞特異的なトロポニンIおよびラットKi67に対して反応性のmAbsで二重染色することによって決定される)を高頻度で示した、
図22(b)および(c)。梗塞周囲領域のサイクリングする成熟した心筋細胞の数は、ヒト内皮前駆細胞を受けている動物において、塩類溶液を受けているLAD結紮した対照よりも4倍高く(p<0.01)、その中には、線維芽細胞形態およびラットKi67との反応性を有するがトロポニンIは有さない細胞が、高頻度に存在した。本発明者らは、ヒト内皮前駆細胞を受けた動物において、梗塞の14日後に見られるサイクリングする、成熟した心筋細胞は、5日目に同じ解剖学的な位置においてみられる小さな、サイクリングする未成熟な心筋細胞前駆体の分化したで子孫であり、新血管新生の開始期に付随するものであると推測する。サイクリング心筋細胞前駆体が、通常は静止状態の心臓に存在するインサイチュウの心臓幹細胞を表すどうか、またはこれらの細胞が骨髄などの体のどこか他の所から心臓に移ったどうかは、決定されないままである。
【0138】
HBP23(活性酸素による損傷から細胞を保護するラットペルオキシレドキシン)の心筋における発現は、虚血によって減少し、新血管新生によって増大される。
【0139】
次に、本発明者らは、梗塞周囲領域の新血管新生と隣接した心筋細胞前駆体の増殖/再生との間の関係を説明するための分子機構を同定しようとした。本発明者らは、正常ラット心臓とLAD結紮の48時間後のラット心臓との間の遺伝子発現の変化パターンを同定するために、最初にcDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーションを行った。心筋梗塞に伴う抗酸化物の欠乏および増大された酸化的ストレスは、梗塞後の心不全の原因に直接関係していたので(13〜15)、本発明者らは、特定の抗酸化物遺伝子の発現の変化を検査することを選択した。ペルオキシレドキシンは、ペルオキシダーゼ活性を示し(16)、酸素によって誘導され(17)、虚血などの酸化的なストレス期間の間の細胞生存の調節において重要な役割を果たすことが知られる抗酸化酵素のファミリーである。これらは、チオレドキシン(TRX)と形成されるジスルフィド架橋を経た電子伝達に関与する可逆的な酸化還元反応を受けることによって、サイトゾルのチオール-ジスルフィド状態の維持に寄与し、これは哺乳類の主要な細胞の還元系のうちの1つを構成する(18)。加えて、ペルオキシレドキシンは、酸化的ストレスによって誘導されるc-Ablチロシンキナーゼ活性を阻害することができ(19、20)、活性化されたc-Abl遺伝子産物によって誘導されるプロアポトーシス状態および細胞周期阻止から細胞を救出することができる(21)。cDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーションにより、本発明者らは、ラットペルオキシレドキシンHBP23 mRNAの発現が、正常ラット心臓と比較して、LAD結紮の48時間後のラット心臓において減少することを見いだした。RT-PCRによって、ラット心臓のHBP23 mRNAレベルは、正常ラット心臓と比較して、34%の平均までLAD結紮の2週後に減少した、
図23(p<0.01)。対照的に、ヒト血管芽細胞を受けて2週間後のLAD結紮されたラット心臓のHBP23 mRNAレベルは、非虚血対照のものよりも、14%だけ低いレベルに戻った。ペルオキシレドキシンのmRNA発現は、酸素によって誘導されるので、これらのデータは、HBP23 mRNAの発現は、急性の虚血イベントによって阻害され、血管芽細胞に依存的な新血管新生に続いて誘導されたことを示唆する。
【0140】
HBP23 mRNAを切断するDNA酵素の作製。誘導されたHBP23の発現は、新血管新生が心筋細胞のアポトーシス、再生/増殖、および機能に影響を及ぼす機構に関与するかかどうかを調査するために、本発明者らは、ラットHBP23遺伝子特異的な配列をターゲットする触媒DNA酵素を作製した(22、23)。本発明者らは、ラットHBP23のメッセンジャーRNAの翻訳開始部位AUG(種の間で保存され、かつ相対的に低い自由エネルギーを有する領域(24))で、またはその近くで、ピリミジン-プリン結合を特異的にターゲットすることを選択した。この領域において、ラットHBP23配列は、ヒト相同体の増殖関連遺伝子(PAG)とは1塩基のみが異なる。対照DNA酵素を産生するために、HBP23 DNA酵素の2つの隣接するアーム内のヌクレオチド配列を触媒ドメインを変えずにスクランブル化した。それぞれの分子の3'末端は、3'-から-5'エキソヌクレアーゼ消化に耐性にするのために、反転した3'-3'-チミジン結合でおおった。
【0141】
HBP23に対するDNA酵素は、用量および時間依存的な様式で、ラットHBP23 mRNAの配列から合成される23塩基のオリゴヌクレオチドを切断した、
図24(a)。対照的に、DNA酵素は、ヒラットHBP23オリゴヌクレオチドとは1塩基のみが異なるト相同体PAG由来の23塩基のオリゴヌクレオチドを切断せず、その精巧な標的特異性を示す。ヒトPAG遺伝子の同じ翻訳開始部位に対する特異性を有するDNA酵素は、効率的にPAGオリゴヌクレオチドを切断したが、HBP23に由来するものでは切断しなかった(データ示さず)。スクランブルされたコントロールDNA酵素は、どちらのオリゴヌクレオチドも切断しなかった。内因性のHBP23産生に対するDNA酵素の効果を決定するために、ラット胎児の心臓から得た心筋細胞の単一層をコンフルエントに培養し、種特異的なDNA酵素またはスクランブルされた対照をトランスフェクトした。細胞のmRNAの逆転写に続くRT-PCR産物の濃度測定の解析では、HBP23 DNA酵素が、スクランブルされたDNAと比較して、培養ラット細胞の定常状態のmRNAレベルを80%以上阻害したことを示した、
図24(b)。
【0142】
ラット心筋のHBP23 mRNAの誘導を妨げるためのDNA酵素のインビボ投与:新血管新生は、影響を受けなかったが、心筋細胞アポトーシス、再生、および機能に対するその効果はなくなった。
実験の心筋梗塞において誘導されたHBP23の発現のインビボの関連性を調査するために、LAD結紮の48時間後のラットに、HBP23 DNA酵素またはスクランブルされた対照のいずれかの心筋内の注射と共に、ヒト骨髄由来する内皮細胞性前駆細胞を静脈内に注射した。
図25(a)に示すように、HBP2 3DNA酵素は、ヒト骨髄血管芽細胞による新血管新生の誘導に対して効果を有さなかった。注入の5日後に屠殺すると、ヒト内皮前駆体を受けたラットは、HBP23 DNA酵素またはスクランブルされた対照が同時注入されたかどうかに関係なく、塩類の対照と比較して、心筋の毛細血管の密度の増大を示した。対照的に、HBP23 DNA酵素の注射では、新血管新生の抗アポトーシスの効果、
図25(b)および心機能の改善、
図25(c)がなくなったが、スクランブルされた対照ではなくならなかった。ヒト内皮前駆細胞を受け、かつ心筋の新血管新生を示す動物の中で、HBP23 DNA酵素で処理すると、1.7倍高いレベルの心筋細胞アポトーシス(p<0.01)、および心機能の38%平均の悪化(p<0.01)を生じた(心エコー図法によって評価される)。加えて、HBP23 DNA酵素は、心筋細胞前駆体の増殖/再生に対して著しい効果を及ぼした。Ki67およびαサルコメアアクチンを発現する小さなラット細胞の梗塞周囲のクラスターは、スクランブルされたコントロールDNAと共に血管芽細胞を受けている動物では容易に検出されたのに対して、HBP23 DNA酵素を受けている動物においては、いずれも同定されなかった。これらの結果は、血管芽細胞依存的な新血管新生は、心筋細胞をアポトーシスから保護し、ペルオキシレドキシン遺伝子産物によって調節される経路を経た常在心筋細胞系統前駆体の増殖/再生を誘導することを明らかに示す。
【0143】
考察
この研究において、本発明者らは、血管芽細胞由来のヒト骨髄による虚血心筋における新血管新生は、梗塞周囲領域の成熟した心筋細胞のアポトーシスに対する保護および同じ部位における心筋細胞前駆体の刺激の両方を生じて、細胞周期に入り、増殖し、再生したことを示した。さらに、本発明者らは、血管芽細胞依存的な新血管新生が心筋細胞の生存および自己再生を調節する機構は、酸化的ストレス(ペルオキシレドキシン)に伴う、抗アポトーシスおよびプロ増殖性の経路に関与する遺伝子の少なくとも1つのファミリーに関与するようにみえることを示した。酸素による緊張状態(oxigen tension)は、ポジティブにペルオキシレドキシン遺伝子の発現を調節するが(17)、HBP mRNA発現に対する血管芽細胞を媒介した新血管新生のポジティブな効果がこれだけで説明されるかどうかは、明らかでない。ペルオキシレドキシンmRNAの発現は、プロテインキナーゼCデルタによって誘導されるので(25)、骨髄血管芽細胞は、FGF-1などの、プロテインキナーゼCデルタ活性化および結果的に細胞生存を調節する細胞外シグナルの供与源であるかもしれない(26)。
【0144】
心筋梗塞に付随する抗酸化物の欠乏および酸化的ストレスの増大は、梗塞後の心不全の原因に直接関係していた(13〜15)。本発明者らの研究は、梗塞後のペルオキシレドキシのレベルの減少は、次のリモデリングおよび左心室不全の直接的な因果関係があろうことを示唆する。ペルオキシレドキシンの抗酸化効果は、TRX系の生理学的な電子供与体活性に連関する(27〜29)。TRXと直接相互作用することに加えて、ペルオキシレドキシン遺伝子産物は、特異的にc-Abl(非受容体チロシンキナーゼ)のSH3ドメインに結合し、その活性化を阻害する(21)。DNAに損傷を与える薬剤などの刺激によるSH3ドメインを介したるc-Ablの活性化は、G1期における細胞周期の停止または細胞のアポトーシスを誘導する(30)。細胞周期の停止は、c-Ablのキナーゼ活性に依存的であり、サイクリン依存的キナーゼCdk2の活性をダウンレギュレートし、かつp21の発現を誘導する(31)。インビボでc-Ablと結合することによって、ペルオキシレドキシンは、c-Ablの過剰発現によって誘導されるチロシン・リン酸化を阻害することができ、活性化されたc-Abl遺伝子産物の細胞分裂停止およびプロアポトーシス効果から、細胞を救出することができる(32)。ラットペルオキシレドキシンHBP23に対するDNA酵素の同時投与では、梗塞ラット心臓のヒト血管芽細胞依存的な新血管新生の抗アポトーシス性およびプロ増殖性の効果をなくしたという本発明者らのインビボの証明は、新血管新生が心機能の改善および心不全の予防を生じる作用機序に、このファミリーの遺伝子が直接関係することを強く証明する。
【0145】
生命の全体にわたって、通常の心筋には、若い細胞および古い細胞の混合物が存在する。大部分の筋細胞は、高度に分化されたようにみえるが、(33)複製脳を保持する若い筋細胞の画分が存在する。本研究では、ヒト血管芽細胞依存的な新血管新生により、5日以内に、梗塞周囲領域の小さな、内因性のラット心筋細胞前駆体の増殖を生じた。分裂している筋細胞前駆体は、付随するαサルコメアアクチン(トロポニンIではない)の細胞表面発現、およびラットKi67に特異的な抗体によって定義される増殖する核構造に基づいて、免疫組織化学的な基準によって同定することができる。このプロセスは、14日以内に、同じ位置で、成熟したサイクリングする心筋細胞(形態、トロポニンIの細胞表面発現、およびKi67の核発現に基づいて定義される)の数の増大を伴ったので、本発明者らは、サイクリング心筋細胞前駆体は、インサイチュウで新たな成熟した機能的な心筋細胞に分化すると結論する。これらの前駆体は、心筋細胞幹細胞の常在性のプールに由来するか、または損傷を受けた心筋に誘導する骨髄由来の幹細胞の再生可能な供与源に由来するかどうかは、決定されないままである。さらに、心筋細胞前駆体のインサイチュウでの増殖に必要とされるシグナルは、少なくとも一部において、ペルオキシレドキシン遺伝子ファミリーのメンバーによって調節される経路を含むが、心筋細胞の分化に必要とされるシグナルは、現在知られていない。これらの問題の理解を得ることによって、心筋虚血後の治癒過程を増強するために、内因性の心筋細胞の生態を操作する可能性が開けるかもしれない。
【0146】
方法および材料
サイトカインで動員されるヒトCD34+細胞の精製および特性付け。単一ドナーの白血球フェレーシス(leukopheresis)産物は、組換えG-CSF10mg/kg(Amgen CA)で4日間毎日sc処理したヒトから得た。ドナーは、同種の幹細胞移植体のために、骨髄動員、回収、および単離の標準的な施設内手順を受けている健康な個体であった。単核細胞をFicoll-Hypaqueによって分離し、高度に生成したCD34+細胞(>98%陽性)を抗CD34モノクローナル抗体(mAb)で被覆した磁気ビーズ(Miltenyi Biotech, CA)を使用して得た。精製したCD34細胞を、CD34およびCD117に対するフルオレッセイン結合mAbs(Becton Dickinson, CA)、AC133(Miltenyi Biotech, CA)、CD54(Immunotech, CA)、CD62E(Bio Source, MA)、VEGFR-2、Tie-2、vWF、eNOS、CXCR1、CXCR2およびCXCR4(全てSanta Cruz Biotech, CA)で染色し、FACScan(Becton Dickinson, CA)を使用して4色パラメーター蛍光によって解析した。また、CD34発現について陽性のものを選択した細胞をフィコエリトリン(PE)結合抗CD117 mAb(Becton Dickinson, CA)で染色し、Facstar Plus(Becton Dickinson)およびPEフィルターを使用して明るい蛍光および暗い蛍光のものをソートした。GATA-2の細胞内染色は、Pharmingen Cytofix/Cytoperm(商標)キットを使用して、10μlのCD117およびCD34表面抗原(Becton Dickinson, CA)に対する蛍光色素結合mAbsと共に氷上で30分間インキュベートして、各々の明るい蛍光および暗い蛍光を発する細胞群から1,000,000細胞を透過させることによって行った250μlのCytofix/Cytoperm(商標)溶液に4度Cで20分間再懸濁した後、細胞をGATA-2(Santa Cruz Biotech, CA)またはIgG対照に対する蛍光色素ラベルmAbと共に4度Cで30分間インキュベートし、3-パラメータのフローサイトメトリーによって解析した。
【0147】
動物、外科的手技、およびヒト細胞の注射。ローワット(rnu/rnu)胸腺欠損ヌードラット(Harlan Sprague Dawley, Indianapolis, Indiana)を「動物看護および使用委員会のためのコロンビア大学研究所(Columbia University Institute for Animal Care and Use Committee)」によって承認された研究に使用した。麻酔後、左の開胸術を行い、心膜を切開して、左前下行(LAD)冠動脈を結紮した。偽操作したラットでは、冠動脈周辺に位置する縫合を伴わずに同様の外科的手技をした。
【0148】
梗塞サイズの組織学および測定。2週および15週に切除した後、それぞれの実験動物由来の左心室を尖部から基部に10〜15横断面でスライスした。代表的な切片をホルマリン中で固定し、ルーチン組織学(H&E)で染色して心筋の細胞性を決定し、強拡大の視野(HPF)(600×)あたりの細胞数として表した。マソン・トリクローム染色法を行って、コラーゲンを青および心筋を赤にラベルし、1+淡青色、2+淡青色および濃青色のパッチ、並びに3+濃青色の染色として、半定量的なスケール(0〜3+)でコラーゲン量を評価した。これにより、デジタル・イメージアナライザを使用して心筋の瘢痕の大きさを測定することができた。心外膜領域および内心膜領域の両方を含む梗塞表面の長さをプラニメータ・デジタル・イメージアナライザーによって測定し、全心室の外周の割合として表した。最終的な梗塞サイズを、それぞれの心臓からの全てのスライスの平均として算出した。全ての研究は、盲検の病理学者によって行われた。梗塞サイズは、全左心室領域の割合として表した。最終的な梗塞サイズを、それぞれの心臓からの全てのスライスの平均として算出した。
【0149】
毛細血管の密度の定量。毛細血管の密度および毛細血管の種起源を定量するために、さらなる切片を、ラットまたはヒトCD31(それぞれSerotec, UK, and Research Diagnostics, NJ)、第VIII因子(Dako, CA)、およびラットまたはヒトMHCクラスI(Accurate Chemicals, CT)に対するmAbsで新たに染色した。細動脈を平滑筋層の存在下で大型の毛細血管に分化させて、筋肉特異的なデスミン(Dako, Ca))に対して、切片をモノクローナル抗体で染色することによって同定した。染色は、アビジン/ビオチン・ブロッキング・キット、ラット吸着したビオチン化抗マウスのIgG、およびペルオキシダーゼ抱合体(全てVector Laboratories Burlingame, CA)を使用して免疫ペルオキシダーゼ法によって行った。毛細血管の密度を梗塞の2週後に抗CD31 mAbでラベルした切片から決定し、抗第VIII因子mAbで確認して、障害のない心筋の毛細血管の密度と比較した。値は、HPF(400×)あたりのCD31陽性の毛細血管の数として表してある。
【0150】
心筋細胞増殖の定量。心筋細胞DNA合成および細胞サイクリングは、塩類溶液またはCD34+ヒト細胞のいずれかの注射の2週間後にLAD結紮したラットから、およびネガティブ対照として健康なラットから得たラット心筋の組織切片の、心筋細胞特異的なトロポニンIおよびヒトまたはラット特異的なKi-67に対する二重の染色によって決定した。簡単には、パラフィン包埋した切片を0.1MのEDTA緩衝液中でマイクロ波処理して、1:3000希釈のラットKi-67(Giorgio Catoretti、コロンビア大学から寄贈)または1:300希釈のヒトKi-67(Dako, CA)に対する一次モノクローナル抗体のいずれかで染色し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、1:200希釈のアルカリホスファターゼと結合された種特異的な二次抗体(Vector Laboratories Burlingame, CA)と共に切片を30分間インキュベートして、陽性染色の核をBCIP/NBT基質キット(Dako, CA)によって青く視覚化した。次いで、心筋細胞特異的なトロポニンIに対するモノクローナル抗体(Accurate Chemicals, CT)と共に切片を4℃で一晩インキュベートし、陽性染色細胞を上記したアビジン/ビオチン系で褐色に視覚化した。梗塞ゾーン、梗塞周囲領域、および梗塞から遠い領域の細胞周期を進行している心筋細胞を、Ki-67を同時発現する強拡大の一視野あたりのトロポニンI陽性細胞の比率として算出した。共焦点の顕微鏡観察については、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)結合ウサギ抗マウスIgGを核の中のKi67を検出するための二次抗体として使用した。心筋細胞を検出するためにαサルコメアアクチンに対するCy5結合マウスmAb(クローン5C5;Sigma)を使用し、全ての核を同定するためにヨウ化プロピジウムを使用した。
【0151】
パラフィン組織切片のDNA末端ラベリングによる筋細胞アポトーシスの測定。単一細胞レベルでアポトーシスをインサイチュウで検出するために、本発明者らは、デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)によって媒介されるDNA末端ラベリングのTUNEL方法を使用した。ラット心筋の組織切片は、塩類溶液またはCD34+ヒト細胞のいずれかの注射の2週間後にLAD結合されたラットから、およびネガティブ対照としての健康なラットから得た。簡単には、組織をキシレンによって脱パラフィン化(deparaffinized)し、エタノールの段階的な希釈およびリン酸塩緩衝食塩水(PBS)の2回の洗浄液によって再水和した。次いで、組織切片をプロテイナーゼK(10μg/mlのトリス/HCl溶液)で、37℃において30分間消化した。次いで、スライドをPBSで3回洗浄し、50μlのTUNEL反応混合物(TdTおよびフルオレッセインでラベルしたdUTP)と共にインキュベートし、湿気のある大気中で37℃において60分間インキュベートした。ネガティブ対照については、TdTを反応混合物から除いた。PBS中での3回の洗浄液に続いて、次いで切片をフルオレッセイン結合アルカリホスファターゼ(AP)(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)に対して特異的な抗体と共に30分間インキュベートした。TUNEL染色は、DNA断片化を有する核が青を染色される基質系(BCIP/NBT基質系、Dako, Carpinteria, CA)によって視覚化した。反応は、PBSで3分照射後に終了させた。筋細胞内の青く染色しているアポトーシス核の比率を決定するために、組織をデスミンに特異的なモノクローナル抗体で対比染色した。内因性のペルオキシダーゼは、3%の水素ペルオキシダーゼ(perioxidase)のPBS溶液で15分間に続き、20%のヤギ血清溶液での洗浄を使用することによって遮断した。抗トロポニンI抗体(Accurate Chemicals, CT)は、40℃で一晩(1:200)インキュベートした。3回洗浄後、次いで切片を抗ウサギIgGで、続いてビオチン結合二次抗体で30分間処理した(Sigma, Saint Louis, Missouri)。次いで、アビジン-ビオチン複合体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)をさらに30分間添加して、筋細胞をDAB溶液混合物(Sigma, Saint Louis, Missouri)に5分照射に続いて褐色に視覚化した。組織切片は、200×の拡大率で顕微鏡で検査した。梗塞周囲部位およびこの部位の遠位の両方において、それぞれの200×の視野内で、領域につき少なくとも250細胞を含み、かつ累積的に組織の1mm
2に近づけた4つの領域を検査した。組織の縁で染色された細胞は計数しなかった。結果は、検査したそれぞれの部位でのmm
2あたりのアポトーシス筋細胞の平均数として表した。
【0152】
心筋機能の解析。高頻度ライナー・アレイ・トランスデューサ(SONOS 5500, Hewlett Packard, Andover, MA)を使用して心エコー研究を行った。二次元イメージは、中間の乳頭(mid-papillary)および尖端レベルで得た。拡張終期(EDV)および収縮終期(ESV)の左心室容積は、双面領域-長さ法(bi-plane area-length method)によって得て、%左心室駆出率を[(EDV-ESV)/EDV]×100として算出した。
【0153】
cDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション。簡単には、メッセンジャーRNAをそれぞれの心臓から単離し、1μgをランダムプライマーによる第1ストランドcDNA合成のために使用した。製造業者の推奨に従って、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションは、PCR-セレクトcDNAサブトラクション・キット(CLONTECH)で行った。第2ストランドの合成後、2本のcDNAライブラリーをRsaIで消化した。「テスター」ライブラリーの消化産物を特異的なアダプター(T7プロモータ)にライゲーションし、次いで、30倍過剰の、サブトラクションのための「ドライバー」ライブラリーとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、残りの産物をPCRによってさらに増幅した。フォワード・サブトラクションでは、虚血試料中に過剰発現された遺伝子を決定し、虚血組織が「テスター」であり、および正常組織が「ドライバー」である。リバース・サブトラクションでは、虚血試料中でダウンレギュレートされた遺伝子を決定するために、「テスター」および「ドライバー」を切替える。
【0154】
HBP23 mRNA発現の逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析:総RNAは、Qiagen(Valencia, CA)からのRNeasy Kitsを使用して、正常ラット心臓から、または2週前にLAD結紮を受け、かつ塩類溶液もしくはヒト血管芽細胞のいずれかを受けたラットの心臓から抽出した。RNAは、SMART cDNA Synthesisキット(Clontech, Palo Alto, CA)で逆転写した。増幅反応は、25μl体積で、TITANIUM Taq PCR Kits(Clontech, Palo Alto, CA)を使用して、94℃において5分間の初期工程、続く94℃において30秒および68℃において1分を26〜32サイクル行った。HBP23のためのプライマーは、5'-GCTGATGAAGGTATCTCTTTCAGGGGCCTC(配列番号:10)および5'-GATGGTCTGCCCCTTACCAATAGTGGAAG(配列番号:11)であった。ラットGAPDHを内部標準として使用した(フォワードプライマー5'TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTG3''(配列番号:12)、リバースプライマー5'CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC3'(配列番号:13))。増幅された断片の臭化エチジウム染色されたバンドを濃度測定によって定量した。
【0155】
DNA酵素およびRNA基質:3'-3'の反転チミジンを有するDNA酵素は、組み込みDNA技術(Integrated DNA technologies)(Coralville(IA))によって合成し、RNA分解酵素フリーのIE-HPLCまたはRP-HPLCによって精製した。標的DNA酵素に対応する短いRNA基質を化学的に合成し、続いてRNAseフリーのPAGEで精製し、またDNA鋳型からのインビトロ転写によっても作製した。ラットHBP23 cDNAおよびヒトPAG cDNAは、それぞれ、培養ラット胎児心筋細胞およびHUVECの総RNAから、以下のプライマーを使用してRT-PCRによって増幅した:5'TTTACCCTCTTGACTTTACTTTTGTGTGTCCCAC3'(フォワードプライマー)および5'CCAGCTGGGCACACTTCACCATG3'(リバースプライマー)。HBP23およびPAGcDNAをpGEM-Tベクター(Promega)にクローン化して、プラスミド構築物pGEM-ratHBP23およびpGEM-ヒトPAGを得た。cDNA配列を自動シーケンシング装置を使用して検査した。32PラベルしたヌクレオチドのラットHBP23およびヒトPAG RNA転写物は、20mlの体積で、32℃で1時間のインビトロ転写(SP6ポリメラーゼ、Promega)によって調製した。取り込まれなかったラベル、および短いヌクレオチド(<350塩基)を、Chromaspin-200カラム(Clontech, Palo Alto, CA)での遠心によって放射標識された種から分離した。合成RNA基質は、T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して32Pで末端のラベルし、0.05
3/
45μM HBP23またはスクランブルされたDNA酵素と共にインキュベートした。反応を37℃で進行させて、90%のホルムアミド、20mMのEDTA、およびローディング色素を含むチューブに一定分量を移すことによって「停止」させた。試料を15%のTBE-尿素変性ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動法によって分離し、-80℃でのオートラジオグラフィーによって検出した。初代ラット胎児の心筋細胞は、Clonetic(USA)から得て、2%のFCS、100μg/mlストレプトマイシン、および100IU/mlペニシリンを含む培地中で、37℃で5%のCO
2の加湿された雰囲気中で培養した。細胞は、6〜8継代の間で実験に使用した。サブコンフルエントな(70〜80%)ラット胎児の心筋細胞には、0.05
3/
45μM HBP23またはスクランブルされたDNA酵素および20μg/mlのカチオン性の脂質(DOTAP)を含む0.5mlの無血清培地を使用して、トランスフェクトした。8時間のインキュベーション後、細胞をTrizol試薬(Life Sciences, CA)を使用して溶解し、上記のようにHBP23発現のRT-PCRのためにRNAを単離した。
以下に、出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 心筋細胞の減少を含む被検体の心臓の障害を治療する方法であって、前記被検体の心臓内で心筋細胞増殖を引き起こすために有効な薬剤の量を被検体に投与することを含み、これにより前記障害を治療する方法。
[2] 前記薬剤がヒト内皮前駆細胞である、[1]に記載の方法。
[3] [2]に記載の方法であって、前記ヒト内皮前駆細胞によって引き起こされる前記心筋細胞増殖を増大する第2の薬剤の有効な量を投与することをさらに含む方法。
[4] 前記薬剤が、ビタミンD3アップレギュレートタンパク質-1(VDUP-1)のmRNAの翻訳を特異的に阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオチドである、[3]に記載の方法。
[5] 前記薬剤が、ビタミンD3アップレギュレートタンパク質-1のmRNAの翻訳を阻害する触媒核酸である、[3]に記載の方法。
[6] 前記触媒核酸がデオキシリボヌクレオチドを含む、[5]に記載の方法。
[7] 前記触媒核酸がリボヌクレオチドを含む、[5]に記載の方法。
[8] 前記第2の薬剤がプロ血管形成薬である、[3]に記載の方法。
[9] 前記プロ血管形成薬が血管内皮の成長因子、線維芽細胞成長因子、またはアンジオポエチン(angiopoietin)である、[8]に記載の方法。
[10] 前記第2の薬剤がプロ血管形成因子の発現を誘導する、[3]に記載の方法。
[11] 前記第2の薬剤が低酸素誘導性因子-1(Hypoxia Inducible Factor-1)である、[10]に記載の方法。
[12] 前記第2の薬剤が被検体の心臓への前記内皮前駆細胞の輸送を促進する、[3]に記載の方法。
[13] 前記輸送を促進する第2の薬剤が、CXCR4のエピトープに対する抗体である、[12]に記載の方法。
[14] 前記輸送を促進する第2の薬剤がCCケモカインである、[12]に記載の方法。
[15] 前記CCケモカインが、RANTES、EOTAXIN、単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)、MCP-2、MCP-3、またはMCPである、[14]に記載の方法。
[16] 前記第2の薬剤がCXCケモカインである、[12]に記載の方法。
[17] 前記CXCケモカインが、インターロイキン-8、Gro-Alpha、または間質由来因子-1(Stromal-Derived factor-1)である、[16]に記載の方法。
[18] 前記間質由来因子-1が間質由来因子-1αまたは間質由来因子-1βである、[17]に記載の方法。
[19] 前記第2の薬剤が被検体の血流への血管芽細胞の動員を促進する、[3]に記載の方法。
[20] 前記薬剤がG-CSF、GM-CSF、SDF-1、またはVEGFである、[19]に記載の方法。
[21] 前記第2の薬剤が心筋細胞前駆細胞である、[3]に記載の方法。
[22] 前記第2の薬剤が骨格筋前駆細胞である、[3]に記載の方法。
[23] 前記ヒト内皮前駆細胞の有効な量が、被検体の体重のkgにつき2.5×105〜7.5×105個の間の内皮前駆細胞である、[2]に記載の方法。
[24] 前記有効な量が、被検体の体重のkgにつき5×105個の内皮前駆細胞である、[23]に記載の方法。
[25] 前記内皮前駆細胞が被検体に関して同種のものである、[2]に記載の方法。
[26] 被検体が成体である、[25]に記載の方法。
[27] 前記被検体が胎児または胚である、[25]に記載の方法。
[28] 前記投与が、被検体の末梢循環、心筋、左心室、右心室、冠動脈、脳脊髄液、神経組織、虚血組織、または虚血後組織に直接注射すること含む、[2]に記載の方法。
[29] 前記ヒト内皮前駆細胞は、CD117、CD34、またはAC133を発現する、[2]に記載の方法。
[30] 前記内皮前駆細胞が高レベルの細胞内GATA-2活性を発現する、[2]に記載の方法。
[31] 前記薬剤がペルオキシレドキシン(peroxiredoxin)をコードするmRNAの発現を誘導する、[1]に記載の方法。
[32] 前記薬剤が2(3)-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールである、[31]に記載の方法。
[33] 前記薬剤がNF-E2関連因子2(Nrf2)をコードするmRNAの発現を誘導する、[1]に記載の方法。
[34] 前記薬剤がKeap-1からのNrf2タンパク質の解離を誘導する、[1]に記載の方法。
[35] 前記薬剤がKeap-1とNrf2タンパク質の会合を阻害する、[1]に記載の方法。
[36] 前記薬剤がVDUP-1タンパク質とチオールレダクターゼチオレドキシンの会合を阻害する、[1]に記載の方法。
[37] 前記薬剤がc-Ablチロシンキナーゼの活性化を阻害する、[1]に記載の方法。
[38] 前記薬剤がSTI-571である、[37]に記載の方法。
[39] 前記薬剤がCXCケモカインである、[1]に記載の方法。
[40] 前記ケモカインが間質由来因子-1、IL-8、またはGro-Alphaである、[39]に記載の方法。
[41] 前記薬剤が間質由来因子-1であり、心筋内に投与される、[40]に記載の方法。
[42] 前記薬剤が間質由来因子-1であり、冠内に投与される、[40]に記載の方法。
[43] 前記薬剤が間質由来因子-1であり、およびステント、足場(scaffold)を経て、または緩効性製剤として投与される、[40]に記載の方法。
[44] 前記第2の薬剤を投与することをさらに含む、[39]に記載の方法。
[45] 前記第2の薬剤がGM-CSF、G-CSF、IL-8、またはGroファミリーケモカインである、[44]に記載の方法。
[46] 前記第2の薬剤がCXCR4の阻害剤またはSDF-1の阻害剤である、[44]に記載の方法。
[47] 前記薬剤がプラスミノーゲンアクティベーター阻害剤-1の阻害剤である、[1]に記載の方法。
[48] 前記薬剤がCXCR4のエピトープに対する抗体である、[1]に記載の方法。
[49] 前記薬剤がG-CSF、GM-CDF、VDUP1発現の阻害剤、またはGroファミリーケモカインである、[1]に記載の方法。
[50] 前記被検体が循環器病を有する、[1]に記載の方法。
[51] 前記被検体が鬱血性心不全を有する、[50]に記載の方法。
[52] 前記被検体が心筋梗塞に罹患した、[50]に記載の方法。
[53] 前記被検体が心筋虚血症に罹患した、[50]に記載の方法。
[54] 被検体がアンギナを有する、[50]に記載の方法。
[55] 被検体が心筋症を有する、[50]に記載の方法。
[56] 前記被検体が哺乳類である、[1]に記載の方法。
[57] 前記哺乳類がヒトである、[56]に記載の方法。
[58] 被検体の心筋細胞のアポトーシスに対する感受性を決定する方法であって:(a)心筋細胞のペルオキシレドキシンをコードするmRNAの量を定量することと;(b)心筋細胞のビタミンD3アップレギュレートタンパク質-1をコードするmRNAの量を定量することと;および、(c)ペルオキシレドキシンをコードするmRNAの量:ビタミンD3アップレギュレートタンパク質-1のmRNAをコードする量の比を決定することとを含み、被検体において、低い比は、アポトーシスに対して心筋細胞が高い感受性であることを示し、高い比は、アポトーシスに対して心筋細胞が低い感受性であることを示す方法。
[59] 被検体の筋細胞のアポトーシスに対する感受性を決定する方法であって:(a)心筋細胞のペルオキシレドキシンタンパク質の発現を定量することと;(b)心筋細胞のビタミンD3アップレギュレートのタンパク質-1発現を定量することと;および、(c)ペルオキシレドキシンタンパク質の発現:ビタミンD3アップレギュレートタンパク質-1の発現の比を決定することとを含み、被検体において、低い比は、アポトーシスに対して心筋細胞が高い感受性であることを示し、高い比は、アポトーシスに対して心筋細胞が低い感受性であることを示す方法。
[60] 心臓前駆細胞。
[61] 被検体の心臓組織の心臓前駆細胞の細胞サイクリングを誘導する方法であって、前記被検体の心臓組織の新血管新生を誘導するために有効な薬剤の量を前記被検体に投与することを含み、これにより前記被検体の心臓組織内で心臓細胞サイクリングを誘導する方法。
[62] 被検体の心機能を改善する方法であって、前記被検体の心臓組織の新血管新生を誘導するために有効な薬剤の量を前記被検体に投与することを含み、これにより前記被検体の心機能を改善する方法。
[63] 被検体の心機能を改善する方法であって、前記被検体の心臓組織の心筋細胞の増殖を誘導するために有効な薬剤の量を前記被検体に投与することを含み、これにより前記被検体の心機能を改善する方法。
[64] 前記被検体が心筋虚血症または心筋梗塞に罹患した、[62]または[63]に記載の方法。
[65] 前記薬剤がG-CSF、GM-CSF、IL-8、Groファミリーケモカイン、CXCR4の阻害剤、またはSDF-1の阻害剤である、[62]または[63]に記載の方法。
[66] 前記CXCR4の阻害剤が小分子またはモノクローナル抗体である、[65]に記載の方法。
[67] 前記CXCR4の阻害剤が小分子であり、およびAMD3100である、[65]に記載の方法。
[68] 前記CXCR4の阻害剤がAMD070である、[65]に記載の方法。
[69] 前記CXCR4の阻害剤が、触媒核酸、オリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、RNAi、または小分子である、[65]に記載の方法。
[70] 前記SDF-1の阻害剤が小分子またはモノクローナル抗体である、[65]に記載の方法。
[71] 前記GroファミリーケモカインがGro Alfaである、[65]に記載の方法。
[72] 細胞のペルオキシレドキシンの発現を阻害することを含む細胞のアポトーシスを誘導する方法。
[73] 前記細胞がペルオキシレドキシンを発現する、[72]に記載の方法。
[74] 前記細胞が脈管構造によって供給され、該脈管構造がペルオキシレドキシンの発現を誘導する、[73]に記載の方法。
[75] ペルオキシレドキシンが、ペルオキシレドキシンにI、ペルオキシレドキシンII、ペルオキシレドキシンIII、ペルオキシレドキシンIV、またはペルオキシレドキシンVである、[72]に記載の方法。
[76] [72]に記載の方法であって、ペルオキシレドキシンの発現阻害が、ペルオキシレドキシンをコードするmRNAに結合する触媒核酸と前記細胞を接触させることによって生じ、これによりこれらの発現を阻害する方法。
[77] 前記細胞が腫瘍細胞である、[72]に記載の方法。
[78] 組織細胞の減少を含む被検体の組織細胞の障害を治療する方法であって、被検体の組織内の原因組織の細胞増殖に有効な薬剤の量を被検体に投与することを含み、これにより被検体の組織細胞の障害を治療する方法。
[79] 前記薬剤がG-CSF、SDF-1、GM-CSF、IL-8、またはVEGFである、[78]に記載の方法。
[80] 前記薬剤がCXCR4/SDF-1相互作用の阻害剤である、[78]に記載の方法。
[81] 前記阻害剤が、触媒核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、小分子、またはRNAiである、[80]に記載の方法。
[82] 前記薬剤がペルオキシレドキシン発現の誘導因子である、[78]に記載の方法。
[83] 前記組織が、心臓組織、脳組織、末梢の維管束組織、肝臓の組織、腎組識、胃腸組織、肺組織、平滑筋組織、または横紋筋組織である、[79]または[80]に記載の方法。
[84] [20]、[45]、[65]、または[79]に記載の方法であって、前記薬剤はG-CSFであり、該G-CSFは組換えメチオニル・ヒトG-CSFとモノメトキシポリエチレングリコールとの共有結合されているものである方法。
[85] 組織の細胞のアポトーシスを含む被検体の組織の障害を治療する方法であって、被検体内の組織の細胞のアポトーシスを阻害するために有効な薬剤の量を被検体に投与することを含み、これにより障害を治療する方法。
[86] 前記薬剤がVDUP-1発現の阻害剤である、[85]に記載の方法。
[87] VDUP-1発現の阻害剤が、触媒核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、小分子、またはRNAiである、[86]に記載の方法。
[88] 前記組織が心臓組織、脳血管の組織、または大脳の組織である、[86]に記載の方法。
[89] 組織の線維芽細胞または炎症細胞の増殖を阻害し、これによりコラーゲン形成を阻害する方法であって、組織の線維芽細胞または炎症細胞の増殖を阻害するために有効なVDUP-1発現の阻害剤の量と組織を接触させることを含む方法。
[90] 前記VDUP-1発現の阻害剤が、触媒核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、小分子、またはRNAiである、[89]に記載の方法。
【0156】
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