(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
任意の形状の閉ループを形成し、1つ又は複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムであって、前記1つ又は複数の入口部は、前記閉ループの周りに延在するチャネルと連通しており、前記チャネルは、前記閉ループの内部周囲によって取り囲まれて画定された内部領域の中に吸引力を導入するように構成され、前記閉ループの前記内部周囲の内部にガードが配置されており、前記1つ又は複数の入口部を少なくとも覆い、又は部分的に覆い、その結果、前記1つ又は複数の入口部を通して、前記連続的ダムの前記内部領域の中に吸引力が加えられることが可能になっており、前記連続的ダムの内部に、該連続的ダムの反対側の部分を分離された状態に維持するスペーサが設けられ、前記閉ループは、前記内部領域の周りに延在する対向する第1および第2の面を画定し、前記ダムは、前記第1および第2の面がそれぞれ曲がることができ、同時に前記第1および第2の面が対面シール係合で隣接する体の組織に並置して立体構造的に係合するのに十分な可撓性を有し、前記1つ又は複数の入口部は、前記第1および第2の面が隣接する体の組織と対面シール係合した状態で、前記隣接する体の組織が前記内部領域の方へ吸い込まれるのに十分な吸引力を導入するように構成され、前記ガードは、前記隣接する体の組織が前記1つ又は複数の入口部の中に吸い込まれるのを防止する可撓性の連続的ダムを備える、吸引式リトラクタ。
吸引チャネルを画定する吸引チューブであって、前記吸引チューブは、前記連続的ダムに取り付けられているか、又は取り付け可能になっており、取り付けられると、前記吸引チャネルが、前記1つ又は複数の入口部に接続され、前記吸引チューブが前記連続的ダムに横方向に配置される吸引チューブをさらに備える、請求項1に記載の吸引式リトラクタ。
前記可撓性の連続的ダムが、挿入のためにコンパクトにされた第1の構成、および牽引のために開かれた第2の構成を取り得る、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の吸引式リトラクタ。
任意の形状の閉ループを形成し、前記閉ループの周りに延在するチャネルと連通する1つ又は複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムを形成するステップであって、前記チャネルは、前記閉ループの内部周囲によって取り囲まれて画定された内部領域の中に吸引力を導入するように構成され、前記閉ループの前記内部周囲の内部にガードが配置されており、前記1つ又は複数の入口部を少なくとも覆い、又は部分的に覆い、その結果、前記1つ又は複数の入口部を通して、前記連続的ダムの前記内部領域の内部に吸引力が加えられることが可能になっており、前記連続的ダムの内部に、該連続的ダムの反対側の部分を分離された状態に維持するスペーサが設けられ、前記閉ループは、前記内部領域の周りに延在する対向する第1および第2の面を画定し、前記ダムは、前記第1および第2の面がそれぞれ曲がることができ、同時に前記第1および第2の面が対面シール係合で隣接する体の組織に並置して立体構造的に係合するのに十分な可撓性を有し、前記1つ又は複数の入口部は、前記第1および第2の面が隣接する体の組織と対面シール係合した状態で、前記隣接する体の組織が前記内部領域の方へ吸い込まれるのに十分な吸引力を導入するように構成され、前記ガードは、前記隣接する体の組織が前記1つ又は複数の入口部の中に吸い込まれるのを防止するステップを含む吸引式リトラクタを製造する方法。
吸引チャネルを画定する吸引チューブを形成するか、又は取り付けるステップであって、前記吸引チャネルおよび1つ又は複数の入口部が連続的であり、前記吸引チューブが前記連続的ダムに横方向に配置される、ステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
任意の形状の閉ループを形成し、1つ又は複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムであって、前記1つ又は複数の入口部を通して吸引力が加えられることが可能であり、前記1つ又は複数の入口部は、前記閉ループの周りに延在するチャネルと連通しており、前記チャネルは、前記閉ループの内部周囲によって取り囲まれて画定された内部領域の中に吸引力を導入するように構成され、前記閉ループの前記内部周囲の内部にガードが配置されており、前記1つ又は複数の入口部を少なくとも覆い、又は部分的に覆い、その結果、前記1つ又は複数の入口部を通して、前記連続的ダムの前記内部領域の中に吸引力が加えられることが可能になっており、前記連続的ダムの内部に、該連続的ダムの反対側の部分を分離された状態に維持するスペーサが設けられ、前記閉ループは、前記内部領域の周りに延在する対向する第1および第2の面を画定し、前記ダムは、前記第1および第2の面がそれぞれ曲がることができ、同時に前記第1および第2の面が対面シール係合で隣接する体の組織に並置して立体構造的に係合するのに十分な可撓性を有し、前記1つ又は複数の入口部は、前記第1および第2の面が隣接する体の組織と対面シール係合した状態で、前記隣接する体の組織が前記内部領域の方へ吸い込まれるのに十分な吸引力を導入するように構成され、前記ガードは、前記隣接する体の組織が前記1つ又は複数の入口部の中に吸い込まれるのを防止する可撓性の連続的ダムを備える吸引式リトラクタと、
前記連続的ダムに横方向に配置された吸引チューブであって、該吸引チューブが吸引チャネルを画定し、前記吸引チューブは、前記連続的ダムに取り付けられているか、又は取り付け可能になっており、取り付けられると前記吸引チャネルが前記1つ又は複数の入口部に接続される、吸引チューブとを備える、体の一部分、組織、臓器、および/又はその一部分を牽引するシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、1つまたは複数の上記の先行技術の不利な点を克服および/もしくは緩和すること、ならびに/または、有用な選択もしくは商業上の選択を消費者に提供することである。
【0006】
1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引するために吸引力を使用するリトラクタを提供することは好適な目的である。
【0007】
さらなる目的は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、広く言えば、吸引式リトラクタ、および、吸引式リトラクタを使用する手術の方法、吸引式リトラクタを製作する方法、ならびに、吸引式リトラクタを含むキットを提供することに関する。多くの手術手順を簡単にし、上部消化管手術などのような手術手順の結果として生じる外傷および傷跡を低減することが可能な新規で進歩的なリトラクタを、本発明者は提供した。
【0009】
多くの手術方法を簡単にすることは、本発明の吸引式リトラクタおよび方法によって実現されることが好ましく、重要な利点である。これらの利点のいくつかは、手術ミスのリスクの低減を通して関連する安全性、および、外傷の少ない手術方法の取り込みを促進することである。また、吸引式リトラクタは、使い捨て可能であり、それによって、消毒および洗浄に要求されるコストおよび労力を削減するので、本発明は、商業上も重要な利点がある。
【0010】
第1の観点では、それは、唯一の観点である必要はなく、または実に最も広い観点である必要はないが、本発明は、任意の形状の閉ループを形成し、1つまたは複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムであって、前記1つまたは複数の入口部は、前記閉ループの内部へ開口しており、その結果、前記1つまたは複数の入口部を通して、前記連続的ダムの内部に吸引力が加えられることが可能になっている、可撓性の連続的ダムを含む、吸引式リトラクタに存在する。
【0011】
吸引チャネルを画定する吸引チューブであって、前記吸引チューブは、前記連続的ダムに取り付けられているか、または取り付け可能になっており、取り付けられると、吸引チャネルが、前記1つまたは複数の入口部に接続される、吸引チューブを、吸引式リトラクタはさらに含むことも可能である。
【0012】
第2の観点では、本発明は、第1の観点に記載のリトラクタを使用して、1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引する方法に存在する。
【0013】
第3の観点では、本発明は、リトラクタを通して吸引力を加えるステップであって、前記リトラクタは、可撓性の連続的ダムの中に画定された1つまたは複数の入口部を含み、前記連続的ダムは、任意の形状の閉ループを形成し、前記1つまたは複数の入口部は、前記閉ループの内部へ開口しており、それによって、1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対するシールを形成し、前記1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引することを可能にする、ステップを含む、1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引する方法に存在する。
【0014】
第3の観点の方法は、前記連続的ダムに取り付けられた吸引チューブを通して吸引力を加えるステップであって、前記吸引チューブが、前記1つまたは複数の入口部に接続された吸引チャネルを画定する、ステップをさらに含むことも可能である。
【0015】
第4の観点では、本発明は、任意の形状の閉ループを形成し、前記閉ループの内部へ開口する1つまたは複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムを形成し、それによって吸引式リトラクタを製造するステップを含む、吸引式リトラクタを製造する方法に存在する。
【0016】
第4の観点の方法は、吸引チャネルおよび1つまたは複数の入口部が接続されるように、前記吸引チャネルを画定する吸引チューブを形成するまたは取り付けるステップをさらに含むことも可能である。
【0017】
第5の観点では、本発明は、任意の形状の閉ループを形成し、1つまたは複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムであって、前記1つまたは複数の入口部を通して吸引力が加えられることが可能であり、前記1つまたは複数の入口部は、前記閉ループの内部へ開口する、可撓性の連続的ダムと、吸引チャネルを画定する吸引チューブであって、前記吸引チューブは、前記連続的ダムに取り付けられているか、または取り付け可能になっており、取り付けられると、吸引チャネルが、前記1つまたは複数の入口部に接続される、吸引チューブとを含む、体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分を牽引するためのシステムに存在する。
【0018】
第5の観点によるシステムは、前記吸引チューブおよび前記1つまたは複数の入口部を通して吸引力を加えるための装置をさらに含むことも可能である。
【0019】
第6の観点では、本発明は、任意の形状の閉ループを形成し、1つまたは複数の入口部を画定する可撓性の連続的ダムであって、前記1つまたは複数の入口部を通して吸引力が加えられることが可能であり、前記1つまたは複数の入口部は、前記閉ループの内部へ開口する、可撓性の連続的ダムと、吸引チャネルを画定する吸引チューブであって、前記吸引チューブは、前記連続的ダムに取り付けられているか、または取り付け可能になっており、取り付けられると、吸引チャネルが、前記1つまたは複数の入口部に接続される、吸引チューブとを含む、体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分を牽引するためのキットに存在する。
【0020】
第6の観点によるキットは、前記吸引チューブおよび1つまたは複数の入口部を通して吸引力を加えるための装置をさらに含むことも可能である。
【0021】
第6の観点によるキットは、使用説明書を含むことも可能である。
【0022】
任意の上記観点によれば、1つまたは複数の入口部は、内部領域の中に延在することが可能である。
【0023】
任意の上記観点によれば、入口部は、凹んで設けられることが可能である。
【0024】
任意の上記観点によれば、1つまたは複数の入口部は、前記閉ループの内部を通して延在する連続的チャネルに開口することが可能である。
【0025】
任意の上記観点によれば、前記連続的チャネルは、開口チャネルを含むことが可能である。
【0026】
任意の上記観点によれば、前記連続的チャネルは、複数の有窓部を含むことが可能である。
【0027】
任意の上記観点によれば、連続的チャネルは、中央リブに連結されることが可能である。
【0028】
中央リブは、1つまたは複数の半径方向リブに連結されることが可能である。
【0029】
中央リブは、窓があることが可能である。
【0030】
1つまたは複数の半径方向リブは、窓があることが可能である。
【0031】
任意の上記観点によれば、ガードが、1つまたは複数の入口部を覆うことが可能である。
【0032】
任意の上記観点によれば、前記吸引チューブが、前記連続的ダムに取り付けられると、前記吸引チューブが、前記連続的ダムに横方向に配置されることが可能である。
【0033】
吸引チューブが横方向に配置されると、連続的ダムおよび吸引チューブが、平面的、または実質的に平面的な構成になることが可能である。
【0034】
平面的、または実質的に平面的な構成は、接触がなされる体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対する立体構造的な適合を適切に可能にすることができる。
【0035】
任意の上記観点による連続的ダムは、平面的、または実質的に平面的であることが可能である。
【0036】
任意の上記観点によれば、連続的ダムの可撓性によって、ダムが、接触がなされる体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対して立体構造的に適合することを可能にする。
【0037】
任意の上記観点による可撓性の連続的ダムは、挿入のためにコンパクトにされた第1の構成、および牽引のために開かれた第2の構成を含むことが可能である。
【0038】
任意の上記観点による可撓性の連続的ダムは、折り曲げられたり広げられたり、巻かれたり解かれたり、および/または、折り畳まれたりおよび/または開かれたりされることによって、コンパクトにされた構成から開かれた構成に移行することが可能である。
【0039】
移行は、リトラクタに動作可能に結合された開放機構によって操縦されることが可能である。
【0040】
任意の上記観点によるリトラクタは、1つまたは複数の付勢部材を含むことが可能である。
【0041】
付勢部材は、ロッドであることが可能である。
【0042】
ロッドは、連続的ダムにわたされることが可能である。
【0043】
任意の上記観点による連続的ダムは、柔軟である(malleable)ことが可能である。
【0044】
任意の上記観点による連続的ダムは、形状記憶を有することが可能である。
【0045】
任意の上記観点による連続的ダムは、膨張可能であることが可能である。
【0046】
膨張可能な連続的ダムは、膨張チューブを含むことが可能である。
【0047】
任意の上記観点による連続的ダムは、対向する第1および第2の壁部を含むことが可能である。
【0048】
第1および第2の壁部は、連続的チャネルによって部分的に分離されることが可能である。
【0049】
第1および/または第2の壁部は、内側方向に角度が付けられていることが可能である。
【0050】
第1および/または第2の壁部は、外側方向に角度が付けられていることが可能である。
【0051】
第1および/または第2の壁部は、テーパを付けられることが可能である。
【0052】
第1および/または第2の壁部は、1つまたは複数の補強部材を含むことが可能である。
【0053】
1つまたは複数の補強部材は、連続的チャネルの中の有窓部と同一場所に設置されることが可能である
【0054】
任意の上記観点による連続的ダムは、穿孔された膜を含むことが可能である。穿孔された膜は、中央オリフィスを含むことが可能である。穿孔された膜は、ダムの壁部によって画定された領域の少なくとも一部分にわたされることが可能である。
【0055】
任意の上記観点によるリトラクタは、1つまたは複数の突起部を含むことが可能であり、突起部は、つかんで操縦されて、組織、臓器、および/またはその一部分を二次的に牽引または再配置することができるようになっている。
【0056】
任意の上記観点によれば、連続的チャネルは、第1および第2の壁部によって画定された領域への開口部を含むことが可能である。
【0057】
任意の上記観点によれば、第1および/または第2の壁部は、凸面状の外側表面を含むことが可能である。
【0058】
第1および/または第2の壁部は、面取り部を含むことが可能である。
【0059】
第1および/または第2の壁部は、漸進的な高さもしくは段階的な高さの隆起部を含むことが可能である。
【0060】
第1および/または第2の壁部は、1つまたは複数のリップを含むことが可能である。
【0061】
1つまたは複数のリップは、しなやかであることが可能である。
【0062】
1つまたは複数のリップは、剛性が高いことが可能である。
【0063】
1つまたは複数のリップは、凸凹のないことが可能である。
【0064】
1つまたは複数のリップは、小塔のある形状であることが可能である。
【0065】
好適な実施形態では、第1および/または第2の壁部は、しなやかな外側リップを含むことが可能である。
【0066】
別の好適な実施形態では、第1および/または第2の壁部は、剛性の高い小塔のある形状の内側リップを含むことが可能である。
【0067】
さらに別の好適な実施形態では、第1および/または第2の壁部は、しなやかな外側リップと、剛性の高い小塔のある形状の内側リップとを含むことが可能である。
【0068】
任意の上記観点によれば、連続的チャネルは、溝または細溝を含むことが可能である。
【0069】
任意の上記観点によれば、溝または細溝は、C字形状を含むことが可能である。
【0070】
任意の上記観点によれば、連続的チャネルは、凹面状表面を含むことが可能である。
【0071】
任意の上記観点によれば、連続的ダムは、円形、一定の形を持たないもの、三角形であることが可能であり、または、牽引されることになる体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分に一致するように形状付けされることが可能である。
【0072】
任意の上記観点によれば、スペーサーは、連続的ダムの内部に含まれることが可能である。
【0073】
スペーサーは、複数のスペーシング・リブを含むことが可能である。
【0074】
1つまたは複数のスペーシング・リブは、半径方向または同心円状であることが可能である。
【0075】
1つまたは複数のスペーシング・リブは、平行であることが可能である。
【0076】
1つまたは複数のスペーシング・リブは、横方向であることが可能である。
【0077】
スペーサーは、網目状物を含むことが可能である。
【0078】
網目状物は、入口部または連続的チャネルの上方および/または下方に位置付けられることが可能である。
【0079】
任意の上記観点によれば、内部領域の中に加えられる吸引力は、一方の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を、別の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に、リトラクタを通して効果的に保持または固定するのに十分である。また、この保持または固定は、一方の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分が、他の一方の体の一部分、組織、または臓器の方へ移動させられるように、牽引を作動させることも好ましい。
【0080】
本発明のさらなる特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0081】
この明細書において、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、および「含む(including)」、または同様の用語は、非排他的な包含を意味することが意図されており、要素のリストを含む方法、システム、または装置は、単にそれらの要素を含むだけでなく、リストアップされていない他の要素を含むこともできるようになっている。
【0082】
本発明が容易に理解され、実用的効果を得るために、ここで、添付の説明図が参照されるであろう。説明図において、同様の参照番号は、同様の要素を参照するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1A(i)】本発明の第1の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1A(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1B】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1C】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1D】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1E(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1E(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1F(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1F(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1G(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1G(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1H(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1H(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1I(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1I(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1J(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1J(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1K】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1L(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1L(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1M(i)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図1M(ii)】本発明の他の実施形態による吸引式リトラクタの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による吸引式リトラクタの切り欠き図を示す概略図である。
【
図3A】本発明による手術の方法の実施形態を示す図である。
【
図3B】本発明による手術の方法の実施形態を示す図である。
【
図4A】本発明によるリトラクタを製造する方法の実施形態を示す概略図である。
【
図4B】本発明によるリトラクタを製造する方法の実施形態を示す概略図である。
【
図5A】本発明によるキットの実施形態を示す概略図である。
【
図5B】本発明によるキットの実施形態を示す概略図である。
【
図6A】使用中の第1の実施形態による吸引式リトラクタの切り欠き図を示す概略図である。
【
図6B】使用中の第1の実施形態による吸引式リトラクタの切り欠き図を示す概略図である。
【
図6C】使用中の第1の実施形態による吸引式リトラクタの切り欠き図を示す概略図である。
【
図7A】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図7B】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図8】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図9A】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図9B】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図10】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図11A】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図11B】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図12A】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図12B】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図12C】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【
図12D】本発明による吸引式リトラクタのさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明は、体の一部分、臓器、組織、および/またはその一部分を牽引するために吸引力を使用するリトラクタに、少なくとも部分的に関する。本発明者は、多くの手術方法を簡単にする新規で進歩的なリトラクタを提供した。正真正銘のSILSと両立できること、ならびに、使用するのが簡単および迅速であることを含む、本発明に関連した多くの利点がある。そのうえ、吸引式リトラクタは、有利には、任意の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引するために使用されることが可能であり、吸引力は、従来の機械的なマニピュレーションよりも外傷が少ない程度であることが可能であるので、さらなる利点を有する。吸引式リトラクタは、牽引されることになる体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分の表面の周りに、必要な力が、より均一に分配されることを可能にし、それによって、外傷のリスクを最小化する。
【0085】
さらに、本発明の吸引式リトラクタは、使い捨て可能であり、安価に製造することが可能である。
【0086】
本発明者は、手術において臓器の牽引を実現するように設計された新規なリトラクタを提供しており、単一の切開部の腹腔鏡手術または従来の腹腔鏡手術に特に応用される。本発明の新規な吸引式リトラクタは、取り囲まれたダムを含み、ダムの中に吸引の力が加えられる。一適用例では、ダムは、内臓(名称上は、肝臓および横隔膜)の間に設置され、吸引力が加えられ、それによって、内臓の並置(apposition)が維持される。肝臓および横隔膜の場合、腹腔鏡手術において、重力の影響のもと、肝臓は、通常、横隔膜から離れて下に落ちるのであるが、ダムは、これらの内臓の間の通常の解剖学的関係を単に維持しているということが留意されるべきである。
【0087】
必要な牽引を実現するために大きな力が加えられなければならない場合、本発明の吸引式リトラクタは、十分に強くはないということを本発明者は注意する。肝臓または非常に大きな臓器の下に癒着がある場合などのこれらの状況は、少数であり、従来の機械的な牽引を使用して処理されることが最善である。
【0088】
本明細書の中で使用されるように、「可撓性の」は、曲がることが可能であるということを意味する。以下に明瞭にされるように、本発明のリトラクタの可撓性は、リトラクタが、コンパクトにされた第1の構成から、開かれた第2の構成へ移行することが可能であるということを意味する。
【0089】
図1A(i)は、本発明による吸引式リトラクタ100の一実施形態を示している。吸引式リトラクタ100は、入口部120を画定する連続的ダム110を含み、入口部120を通して、吸引チューブ130から吸引力が加えられる。入口部120は、吸引チューブ130に含まれた吸引チャネル140から内部領域150への開口部またはオリフィスを含んでいる。
【0090】
以下に説明されるように、ガード191は、1つまたは複数の入口部120を部分的に覆うことが可能であり、牽引されることになる体の一部分、臓器またはその一部分などのような物体が、吸引によって1つまたは複数の入口部120に吸い込まれないようになっている。
【0091】
別の実施形態の入口部120は、ダム110の中に凹んで設けられ、入口部120の中に物体が吸い込まれるのを防止することが可能である。
【0092】
図1A(ii)は、吸引式リトラクタ100の別の実施形態を示しており、入口部120が、連続的チャネル121に開口しており、連続的チャネル121を通して、吸引力が加えられることが可能である。連続的チャネル121の構造は、
図2を参照して詳細に後述される。
【0093】
図1A(i)および
図1A(ii)に示されているように、連続的ダム110は、内部領域150を取り囲んで画定するループ111を形成している。リトラクタ100を使用して、内部領域150の中に吸引力が加えられることが可能である。
【0094】
理解されるように、内部領域150の中に加えられる吸引力は、一方の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を、別の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に、リトラクタ100を通して効果的に保持または固定するのに十分である。また、一方の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分が、他の一方の体の一部分、組織、または臓器の方へ移動させられるか、または、他の一方の体の一部分、組織、または臓器に隣接して保持されるように、この保持または固定は、牽引を作動させることが好ましい。
【0095】
図1A(i)に示されている実施形態では、入口部120は、内部領域150の中に延在してはいない。他の実施形態では、入口部120は、内部領域150の中に延在している。
【0096】
また、吸引式リトラクタ100は、吸引チャネル140を画定する可撓性の吸引チューブ130を含むことも可能である。
図1A(i)および
図1A(ii)に示されているように、吸引チャネル140は、入口部120および連続的チャネル121にそれぞれ接続されている。また、吸引チューブ130は、近位チューブポート131も含み、近位チューブポート131は、吸引チャネル140を通して吸引力を加えるための装置に取り付けられることが可能である。
【0097】
別の実施形態では、吸引チューブ130は、連続的ダム110に取り外し可能に取り付け可能である。これによって、吸引チューブ130は、必要に応じて取り外されることおよび取り付けられることが可能になる。
【0098】
連続的ダム110は、平面的、または実質的に平面的である。
図6A〜
図6Cに見ることができるように、平面的な、または実質的に平面的な形状によって、連続的ダム110が、2つの隣接するおよび/または当接する体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分の間に位置付けられ、または挟まれることが可能になる。可撓性のおよび平面的なまたは実質的に平面的な構成によって、牽引される体の一部分、組織、臓器、またはその一部分への立体構造的な適合が、適切に可能になる。
【0099】
連続的ダム110の位置付けを可能にするために、吸引チューブ130は、連続的ダム110に横方向に配置されることが可能である。この横方向の構成は、
図1A(i)、
図1A(ii)、
図1B、
図1C、
図1D、ならびに、
図1E(i)および
図1E(ii)に図示された実施形態に示されているような平面的なまたは実質的に平面的な形状を有するリトラクタ100を結果として生じる。
【0100】
図1A(i)および
図1A(ii)に示されているリトラクタ100のダム110は環状である。本明細書の中の教示に基づいて、当業者は、ダム110について他の適切な形状を選択することが容易に可能である。例えば、
図1Bおよび
図1Cは、ダム110が、それぞれ、一定の形を持たないものおよび三角形である実施形態を示している。ダム110の他の適切な形状には、長方形、正方形、五角形、および六角形が含まれる。ダム110は、牽引されることになる特定の体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分に一致するように形状付けされることが可能である。
【0101】
図1Dは、膜114を含むリトラクタ100の別の実施形態を示している。膜114は、多数の穿孔115を含み、中央オリフィス116を画定している。
図1Dが見づらくなるのを避けるために、すべての穿孔115は、ラベル表示されてはいない。穿孔された膜は、壁部112、113によって画定された内部領域150の少なくとも一部分にわたされている(
図2および後述のさらなる説明を参照)。
【0102】
穿孔された膜115は、ダム110よりも薄いことが好ましい。
【0103】
図1E(i)は、リトラクタ100の別の実施形態の上面図を示している。
図1E(i)および
図1E(ii)に示されているリトラクタ100は、窓のある連続的チャネル121を含んでいる。窓のあるということは、長さまたは連続的チャネル121に沿った一連の有窓部、開口部、または窓121aを意味する。他の実施形態では、例えば、
図1A(ii)、
図1B、
図1C、
図1D、および
図2に示されている実施形態では、連続的チャネル121は開口している。
図1Eに示されている実施形態では、連続的チャネル121は、中央リブ125に連結され、そして、中央リブ125は、1つまたは複数の半径方向リブ126に連結されている。中央リブ125および1つまたは複数の半径方向リブ126の両方とも、内部領域150の中に吸引力を供給するために窓がある。リブ125、126は、内部領域150をセクション150aに分割している。
【0104】
図1E(i)および
図1E(ii)に示されている実施形態では、連続的チャネル121の近位セクション、すなわち、入口部120から第1の半径方向リブ126へ延在するそれらのセクション121−1および121−2は、閉止されている。連続的チャネル121の遠位セクション、すなわち、半径方向リブ126の間に延在するそれらの中央セクション121−3および121−4、ならびに、半径方向リブ126と入口部120の反対側の中央リブとの間に延在するそれらの端部セクション121−5および121−6は、窓のあるチャネル121を含んでいる。他の実施形態では、遠位セクション121−3、121−4、121−5、および121−6は、溝(gutter)または細溝(furrow)122を含んで開口しており、有窓部121aを含んでいない。さらなる別の実施形態では、連続的チャネル121全体に窓がある。
【0105】
図1E(ii)は、
図1E(i)に示されているリトラクタ100の切り欠き斜視図を示しており、リブ125、126は省略されている。切り欠き図は、第1および第2の壁部112、113を示し、外側リップ193および内側リップ193aを含んでいる。外側リップ193はしなやかであり、接触する体の一部分、組織、または臓器に一致し、それらに対してシールが作られる。接触する体の一部分、組織、または臓器を把持する間、ダム110を支持するために、内側リップ193は、より剛性が高く、小塔のある形状(turreted)をしている。小塔のある形状のリップ193aは、一連の谷部193cによって分離された一連の小塔部(turret)または間隔の空いた歯部193bを含んでいる。
【0106】
図7および
図9を参照して以下に明瞭にされるように、スペーサー190が、内部領域150の中に挿入され、連続的ダム110の反対側の部分を分離された状態に維持することを助けることが可能である。
【0107】
スペーサー190は、任意の適切な形状および材料であることが可能である。スペーサー190は、発泡材料またはメッシュ材料を含むことが可能である。スペーサー190は、メッシュであることが好ましい。以下に説明されるように、スペーサー190は、複数の半径方向または同心円状のスペーシング・リブ194、1つまたは複数の平行スペーシング・リブ195、および/または、1つまたは複数の横方向スペーシング・リブ196を含むことが可能である。
【0108】
図1F(i)および
図1F(ii)は、付勢部材127を含むリトラクタ100の別の実施形態の上面図および斜視図をそれぞれ示している。簡潔にするために、チャネル121は、
図1F(ii)から省略されている。
図1F(i)および
図1F(ii)に示されている実施形態では、付勢部材127はロッド127aであり、ロッド127aは、連続的ダム110にわたされており、コンパクトにされた構成から開かれた構成へ付勢力を提供する。付勢力によって、コンパクトにされた構成から開かれた構成への良好な跳ね返りが与えられる。付勢部材127は、開放機構によって作動されることが可能である。本明細書の中の教示に基づいて、当業者は、他の適切な付勢部材127を選択することが容易に可能である。他の実施形態では、リトラクタ100は、複数の付勢部材を含む。
【0109】
図1G(i)および
図1G(ii)は、内側方向に角度の付けられた壁部またはV字形状の壁部112、113を含むリトラクタ100のさらに別の実施形態の上面図および斜視図をそれぞれ示しており、壁部112、113は、内部領域150に向かって内側方向に角度が付けられている。内側方向に角度の付けられた壁部112、113は、接触する体の一部分、組織、または臓器への立体構造的な装着を改善し、シールを改善および/または強化することが可能である。
【0110】
図1H(i)および
図1H(ii)は、さらなる実施形態の上面図および斜視図をそれぞれ示しており、リトラクタ100が、チャネル121の中に位置付けられた補強部材126を含んでいる。補強部材126は、連続的ダム110よりも実質的に剛性が高く、チャネル121を折り畳ませることになる圧縮力の下で、開かれた構成を維持する。補強部材は、複数の開口部または有窓部124と同一場所に設置されることが可能である。仮に壁部112、113が折り畳まれたとしても、補強部材は、吸引力の喪失を防止することが可能である。
【0111】
図1I(i)および
図1F(ii)の上面図および斜視図に図示されたリトラクタ100の実施形態は、それぞれ、壁部112、113を有しており、壁部112、113は、外側方向に角度が付けられており、すなわち、内部領域150から離れる方向に角度が付けられており、吸盤のような効果を作り出し、吸引力を増加させることが可能である。有利には、壁部112、113を外側方向に曲げることによって、接触表面積が増加され、シールが改善されることが可能である。
【0112】
したがって、リトラクタ100の任意の適切な実施形態に対して、シールを改善するために、壁部112、113に、テーパが付けられることが可能である。テーパが付けられた壁部112、113の改善されたシーリング効果は、
図1Gおよび
図1Iに示されているそれらの実施形態のような、内側方向および外側方向に曲げられた壁部112、113によって、とりわけ明らかとなるであろう。
【0113】
図1J(i)および
図1J(ii)は、リトラクタ100の実施形態の上面図および斜視図をそれぞれ示しており、リトラクタ100は、その折り畳まれた構成から膨張させられることによって開かれた構成に移行する。膨張および収縮は、膨張チューブ135を通して引き起こされ、膨張チューブ135は、膨張チャネル145を画定し、ダム110の中の膨張入口部136の中に開口している。膨張可能なリトラクタ100は、有利には、シーリング表面との良好な接触および一致を有することとなる。また、膨張可能なリトラクタ100は、比較的柔らかい接触表面を提供し、膨張可能なリトラクタ100によって接触された体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対する任意の損傷を低減または限定することとなる。
【0114】
図1Kは、突起部129を含むリトラクタ100の実施形態を示しており、突起部129が、つかまれて操縦されて、組織、臓器、および/またはその一部分を二次的に牽引または再配置することができるようになっている。
図1Kに示されている実施形態では、突起部129はタブ129aであり、タブ129aは、ダム110から延在し、吸引チューブ130の遠位側に配置されている。他の実施形態では、リトラクタ100は、ダム110の様々な配置に位置付けられた複数の突起部129を含むことが可能である。
【0115】
図2に示されているように、連続的ダム110は、互いに接合され対向する第1の壁部112および第2の壁部113を含んでいる。壁部112および113は、ダム110の実質的に中間において接合され、すなわち、中央チャネル121を含むリトラクタ100の実施形態では、壁部112、113は、連続的チャネル121によって部分的に分離されている。
図2に示されているリトラクタ100の実施形態では、第1および第2の壁部112、113は、半球状の断面を含み、任意の縁部を有さない湾曲したまたは凸面状の外側表面を含み、それによって、リトラクタ100が任意の内部損傷を引き起こすリスクを最小化している。本明細書の中の教示に基づいて、当業者は、壁部112、113のための代替的な断面プロファイルを選択することが容易に可能である。例えば、壁部112、113は、面取り部180を含むことが可能であり(
図7B参照)、または、漸進的な高さもしくは段階的な高さの隆起部を含むことが可能である。
【0116】
加えて、
図1E(i)および
図1E(ii)を参照して上述されたように、そして、
図11Aおよび
図11Bを参照して後述されるように、壁部112、113は、リップ193および/または内側リップ193aを含むことが可能である。
【0117】
他の実施形態では、壁部112、113の外側表面は湾曲しておらず、その代わりに平坦または平面的である。平坦な表面は、縁部または角部を有することが可能であり、または、テーパの付いた縁部を有することが可能である。本明細書の中の教示に基づいて、当業者は、壁部112、113のための適切な形状を選ぶことが容易に可能である。
【0118】
図2に示されている実施形態では、連続的チャネル121は、凹面状表面123を含むC字形状の溝または細溝122である。他の実施形態では、チャネル121は、V字形状などの別の形状を含むことが可能である。当業者は、チャネル121のための代替的な形状を選択することが容易に可能である。
【0119】
図2に示されているように、内部領域150の中に吸引力を発生させるために、リトラクタ100は、内部領域150に開口する連続的チャネル121の中に開口部124を含んでいる。
図1A(ii)および
図2に示されている実施形態では、単一の開口部124が、連続的チャネル121の長さにわたって延びている。
図1E(i)および
図1E(ii)に示されている実施形態では、リトラクタ100は、連続的チャネル121の長さの一部分にだけ延在する複数の有窓部121aを含んでいる。それぞれの有窓部121aは、独自の開口部124aを有している。複数の有窓部121aおよび関連の開口部124aは、窓のある連続的チャネル121の長さに沿って、等距離および間欠的に間隔を空けられ、均一な吸引力を得るようになっていることが可能である。
【0120】
開口部124によって、連続的チャネル121を通して加えられる吸引力が、吸引式リトラクタ110を間に挟む2つの内部構造体の間にシールを形成することが可能になる。このシールが形成されると、内部構造体は牽引されることが可能である。
【0121】
図1D、
図1E(i)および
図1E(ii)に示されている実施形態では、体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対する吸引力は、それぞれ、多数の穿孔115および多数の開口部124aを通して加えられる。
【0122】
図1A(i)、
図1A(ii)、および
図1Dに示されている連続的ダム110は、50mmの直径を有しており、30〜80mmの適切な範囲であれば、小児患者から「特大サイズ」の患者までに適用することを可能にする。
図1Bに示されている連続的ダム110は、60mmの最長スパンおよび40mmの最短スパンを有する。
図1Cに示されているダム110の辺の長さは50mmである。
【0123】
壁部112、113は、それぞれ3mmの厚さを有し、組み合わせた厚さは、6mmである。壁部112および113の厚さの適切な範囲は、3〜6mmである。
【0124】
穿孔された膜114は、4mmの厚さを有する。穿孔された膜114の厚さの適切な範囲は、3〜6mmである。
【0125】
穿孔115は、4mmの直径を有する。穿孔115の直径の適切な範囲は、2〜5mmである。
【0126】
オリフィス116は、10mmの直径を有する。オリフィス116の直径の適切な範囲は、2〜30mmである。
【0127】
連続的チャネル121は、2mmの直径を有する。連続的チャネル121の直径の適切な範囲は、1〜3mmである。
【0128】
開口部124は、2mmの幅を有する。開口部124の適切な範囲は、1〜3mmである。
【0129】
吸引チューブ130は、5mmの直径を有し、吸引チャネル140は、3mmの直径を有する。吸引チューブ130および吸引チャネル140の直径の適切な範囲は、それぞれ、4〜7mmおよび3〜5mmである。
【0130】
吸引チューブは、50cmの長さを有する。長さは、個々の外科技術に合わせることが可能であり、10cm〜3mの範囲内にある可能性が高い。
【0131】
本明細書の中の教示に基づいて、当業者は、上述の寸法について適切な値を選択することが容易に可能である。また、本明細書の中に含まれる寸法は、単に指標となるものであって、本発明はそのように限定されないということも理解されるべきである。
【0132】
上述のように、腹腔鏡手術の管孔(tract)を通して挿入されるために、リトラクタ100は、可撓性および/または折り畳み可能であることが好ましい。この可撓性であることおよび/または折り畳み可能であることの結果として、リトラクタ100は、挿入のためにコンパクトにされた第1の構成、および収縮のために開かれた第2の構成を有することが可能である。
【0133】
コンパクトにされた構成と開かれた構成との間を移行するために、リトラクタ100は、折り曲げられたり広げられたり、巻かれたり解かれたり、および/または、折り畳まれたり開放されたりされることが可能である。移行は、可逆的であることが好ましい。
【0134】
図1L(i)は、開かれた構成のリトラクタ100の一実施形態を示しており、
図1L(ii)は、コンパクトにされた構成の
図1L(i)のリトラクタを示している。
図1L(ii)のコンパクトにされた構成は、巻かれた構成である。
【0135】
開放機構(図示せず)をリトラクタ100に動作可能に結合させことによって、移行は、手動または自動で達成されることが可能である。開放機構は、付勢部材127に作用することが可能である。本明細書の中の教示から、当業者は、適切な開放機構を選択することが容易に可能である。
【0136】
柔軟であることに加えて、リトラクタ100は、形状記憶を有することも可能である。この形状記憶によって、リトラクタが、例えば、外科的ポートを通るのに適するようコンパクトにされた後、その元の意図された形状に戻り、または牽引のために位置付けられることが可能になる。
【0137】
所望のレベルの柔軟性を実現するために、ダム100は、柔らかくおよび/またはしなやかなシリコーンおよび/またはプラスチックなどの適切な生体適合性医療グレードの合成材料から構成される。
【0138】
後述されるように、柔軟性によって、リトラクタ100が、コンパクトなサイズに折り曲げられ、外科的ポートを通して挿入できることが可能になる。また、柔軟性は、リトラクタ100が牽引されることになる体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分の形状に適合することを助ける。本発明のこの特徴は、有利には、加えられる吸引力を改善する。
【0139】
図1M(i)は、スペーサー190が網目状物の形態である、本発明のリトラクタ100のさらに別の実施形態を示している。
図1M(i)では、網目状物は、連続的チャネル121の一方の側、例えば下側、または使用するときの下部表面に配置されている。
図1M(ii)では、網目状物は、連続的チャネル121の両方の側、例えば上側および下側、または使用するときの下部表面および上部表面に配置されている。他のスペーサー190と同様、網目状物は、物体が入口部120またはチャネル121の中に吸い込まれることを防止する点において有用である。
【0140】
また、リトラクタ100は、従来の外科技術で使用されることも可能である。これらの技術では、リトラクタ100を、外科的ポートを通して挿入するという要求はなく、そのような場合、リトラクタ100は、関心のある体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分を牽引するのに要求される大きさと同じサイズを有することが可能である。
【0141】
リトラクタ100は、任意の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引するために使用されることが可能である。例えば、リトラクタ100は、SILSの間に肝臓の左葉または右葉のいずれかを牽引するために、または任意の適切な体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引するために使用されることが可能である。
【0142】
また、上記のように、本発明は、リトラクタ100を使用して1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分を牽引する方法200も提供する。
【0143】
図3Aに示されている方法200の一実施形態によれば、ステップ210において、リトラクタ100を通して吸引力が加えられ、1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分に対するシールが形成され、それによって、1つまたは複数の体の一部分、組織、臓器、またはその一部分の牽引が可能になる。
【0144】
吸引力を加えられる前に、リトラクタ100は、牽引されることになる体の一部分、組織、臓器、またはその一部分の上に位置付けられ、または、牽引されることになる体の一部分、組織、臓器、またはその一部分と別の構造体との間に挟まれ、牽引を促進するために十分な吸引力および真空が作り出されることが可能になっている。別の構造体は、別の体の一部分、組織、臓器、および/またはその一部分であることが可能である。
【0145】
また、
図3Bに示されているように、方法200は、連続的ダム110に取り付けられた吸引チューブ130を通して吸引力を加えるステップ220を含むことも可能であり、吸引チューブ130は、1つまたは複数の入口部120に接続された吸引チャネル140を画定する。
【0146】
また、本発明は、吸引式リトラクタ100を製造する方法300も提供する。
図4Aに示されているように、方法300は、1つまたは複数の入口部120を画定する連続的ダム110を形成し、それによって、吸引式リトラクタ100を製造するステップ310を含む。また、形成された連続的ダムは、連続的チャネル121も画定する。
【0147】
図4Bは、吸引チャネル140と1つまたは複数の入口部120が接続されるように、吸引チャネル140を画定する吸引チューブ130を形成または取り付けるさらなるステップ320を含む方法300の別の実施形態を示している。
【0148】
図5Aは、連続的ダム110および吸引チューブ130を含むリトラクタ100を含む本発明の一実施形態によるキット400を示している。吸引チューブ130は、遠位チューブポート132をダムポート117に接合することによって連続的ダム110に取り付けられることが可能であり、吸引チャネル140が、入口部120および/または連続的チャネル121に接続されるようになっている。
【0149】
本発明によるキット400の別の実施形態が、
図5Bに示されており、それは、吸引チャネル140を通して吸引力を加えるための吸引装置160を含んでいる。吸引チューブ130は、近位チューブポート131を吸引装置ポート161に接合することによって、装置130に連結されている。吸引力は、連続的に加えられることが可能であるか、または、シールが獲得されると、吸引力は、停止されるか、もしくは単に間欠的に加えられることが可能である。
【0150】
吸引装置160は、吸引チューブ130などのようなチューブを通して吸引力を加えるのに適切な任意の従来の電子吸引デバイスであることが可能である。一実施形態では、吸引装置160は、従来の「壁吸引」デバイスであり、それを通して、様々な吸引圧力が加えられ、レバーによって調節されることが可能である。別の実施形態では、吸引装置160は、所定の設定に従って加えられた吸引の力の程度を監視および維持することが可能な電子吸引デバイスであることが可能である。さらに別の実施形態では、吸引装置160は、注射器であることが可能であり、これまでの試験において、これは、組織の並置を維持するのに効果のないことが実証されているが、注射器は、吸引力を加えるために引き出され、吸引の力を維持するためにロックまたは三方タップ(3 way tap)を使用してシールを発生させる。
【0151】
また、キット400は、1つまたは複数の腹腔鏡ポート173(図示せず)および/または使用説明書を含むことも可能である。
【0152】
その結果、本発明は、容易に理解されること、および、実用的効果を奏することが可能であり、以下の非限定的な例が提供される。
【実施例1】
【0153】
LiVAC − 肝臓真空牽引(Liver Vacuum Retraction)
それに限定されないが、腹腔鏡手術の間、肝臓の下の臓器を露出させるための肝臓の牽引に関連して、本発明の方法をさらに説明する。腹部または胆嚢に実施される手術において、肝臓の上方向への牽引が要求される。これらの臓器にアクセスするために牽引が必要である。本発明の新規な吸引式リトラクタ100とともに使用されるとき、この技術は、LiVACまたは肝臓真空牽引と称される。
【0154】
腹腔鏡手術および観血的手術では、肝臓を上方向に持ち上げるために肝臓の下面に対して力を適用することが要求される。腹腔鏡手術において、リトラクタの挿入および牽引のメンテナンスのための専用の管孔またはポートが作り出される。本発明のリトラクタ100および方法200は、肝臓の上側(上部)表面と横隔膜との間で吸引力を使用して肝臓を牽引する手段を提供する。
【0155】
図6Aに示されているように、ダム110は、横隔膜170と肝臓171との間に位置付けられることが可能であり、次いで、チューブ130を通して吸引力が加えられ、肝臓171および横隔膜170が並置して一緒に保持され、それによって牽引されるようになっている。横隔膜に対して肝臓の左葉を横方向に取り付けることによって、吸引牽引に対する反作用の力が分割されて低減される。
【0156】
図6Aに示されている実施形態では、ダム110は、患者の腹部174の切られた外科的切開部172の中に位置付けられた腹腔鏡ポート173を通して挿入される。ダム110は、コンパクトにされ、ポート173を通してまたは切開部172を通して挿入され、次いで、チュービングが、ポート173の中のチャネルまたは連結部を通して連れ戻される。また、チューブ130は、ポート173を通して部分的に挿入される。
【0157】
吸引式リトラクタ100が、単孔式腹腔鏡手術(SILS)技術と両立可能であるだけでなく、SILSを非常に簡単にするということは有利である。
図6Aに示されているように、吸引チューブ130がポート173を通過することができるように、吸引チューブ130は適切に細くなっているが、それでも他の腹腔鏡器具を受け入れるためにポート173の環状部の大部分が空いている状態にしている。このように、リトラクタ100は、ポート173を通してさらに挿入される他の腹腔鏡器具に対して対抗する力を働かせない。
【0158】
図6Bは、吸引チューブ130が外科的ポート173と一体になっている実施形態を示している。
【0159】
図6Cは、本発明のリトラクタ100が、修正されたSILS技術とも両立可能であるということも示しており、修正されたSILS技術では、ポート173に加えて、中空の針またはトロカール175が、患者の腹部174を通して挿入される。中空の針またはトロカールは、近位ポート131を通して吸引チューブ130に取り付けられることが可能である。
【0160】
この修正されたSILS技術では、より短い長さの吸引チュービング130が、腹部内で要求され、針またはトロカール175を収容するための極めて小さな切開部の追加だけを伴う。
【0161】
リトラクタ100は、肝臓の左葉または右葉のいずれかを牽引するために使用されることが可能である。
【実施例2】
【0162】
アセタール・プロトタイプ
図7Aに写されているものと類似した剛性の高いアセタール・リングから製作されたリトラクタ100を使用して、最初の試験が実行された。リトラクタ100を肝臓の2つの半分部分の間に設置して、試験が実施された。
図9Aに示されているように、アセタール・プロトタイプのリトラクタ100は、入口部120を含んでいる。
【0163】
アセタール連続的ダム110の中央部分に設置されたワイヤ・メッシュ・ディスクを含むスペーサー190は、肝臓の2つの部片の分離の役に立ち、したがって、真空に露出された肝臓表面の面積を最大化した。
図9Bに示されているスペーサー190を参照されたい。これは、成功であるということが判った。
【0164】
真空によって肝臓表面に作用する力が増加されるということによって、アセタール・リングの硬い縁部が、肝臓の表面に対する押し付け跡および組織損傷を引き起こしていた。面取り部180が、この損傷を低減するために壁部112、113の上に挿入された。
図7Aは、アセタール・プロトタイプのリトラクタ100を示しており、
図7Bは、面取り部180を追加した断面形状の変更を示している。リトラクタ100は、肝臓の上のシールを依然として維持したので、これは、吸引力の結果に対して非常に小さな影響しかなかった。
【0165】
次いで、ワイヤ・メッシュ・スペーサー190の代わりに、肝臓を分離する手段として1つまたは複数の低密度の泡を含むスペーサー190を使用して試験が始められた。泡の形状だけでなく、様々な発泡材料が試験された。1つの変化例が
図8に示されており、そこでは、スペーサー190は、内部領域150の中に設置されたディスク形状の泡であり、ポート120に切除部を備え、中央オリフィスを備えている。真空下にあるとき、肝臓は、材料を圧縮し、また、入口部120に引き込まれるので、ワイヤ・メッシュ挿入スペーサー190と同等に効率的に働く泡はないと結論付けられた。
【0166】
流量を変化させるために、ニードル弁(図示せず)が、吸引装置160に取り付けられており、最初の吸引力が一旦作り出されると、リトラクタ100は、流量がほとんどゼロになった場合にだけ機能しなくなるということが判明した。最初のシールが作り出される前に流量を低下させるということは、単に、真空を作り出すのにかかる時間を長くさせた。
【0167】
次いで、アセタール・リトラクタ100は、内側面の中央部分を通るチャネルまたはアンダーカット121を特徴付けるために加工された。
図9Aを参照されたい。次いで、入口部120の真正面のセクションは、薄いテープを含むガード191によって覆われた(
図9B参照)。ガード191は、肝臓が入口部120を遮ることを防止した。また、アンダーカット・チャネル121の中に露出された真空ボイドを有することによって、その結果が強化された。
【0168】
ダム110の接触表面の上に、漸進的な高さの隆起部192を包含するように、追加のリトラクタ100が作り出された(図示せず)。シールは、最も外側の隆起部の上に作り出されることが可能であり、次いで、重力の下で肝臓の皮がむけて、シールの一部分が機能しなくなるとすれば、次の隆起部の上に対して再度シールするであろうという仮説が立てられた。最初のシールは常に最も内側の縁部の上に作られたので、これは、成功しなかったと結論付けられた。
【0169】
縁部をテーピングすること、および、チャネル121の中に黄銅チュービング(図示せず)を挿入することなどのような様々な手段によって、有窓部121aを追加するということは、真空を通して、わずかにより方向性のある空気の流れを作り出すことであると思われるが、全体効率は最小であった。
【0170】
次いで、シンク・ストレーナおよびファイバーグラス・メッシュなどの代用品を使用して、ワイヤ・メッシュ・スペーサー190の役割がさらに調査された。
図10Aおよび
図10Bを参照されたい。次いで、肝臓の表面に与える影響が、時間をかけて観察された。「あざのような」跡の形態の肝臓に対する小さな損傷、および、急速に薄れる表面の押し付け跡は、設計において重大な問題ではないということが判断された。水膨れおよび断裂などのような、より深刻な損傷は、避けられるべきである。損傷を引き起こすのは、必ずしも分離する表面ではなく、むしろ、肝臓がボイドの中に移動できる距離であるということが観察された。
【0171】
次いで、壁部112、113の上のリップ193の効果が試験された。
図11Aおよび
図11Bを参照されたい。壁部112、113、またはダム110の極めて内側の縁部の上にある接触表面に対して付勢力があり、したがって、幅広いリップ193は、シール表面として作用しないということが判明した。この実施形態のリップ193は、シリコーンから形成されており、それによって、しなやかであり、わずかに不均一な表面に対してより柔軟であり、硬い部品を使用した以前の試験と比較して、より良いシールの品質を作り出すということが判明した。
【0172】
また、ダム110の接触面をスペーサー190から高くすると、これが、肝臓表面をより大きな真空面積へ露出させるので、真空効果が強化されたということも観察された。
【実施例3】
【0173】
ラピッド・プロトタイピング − プロトタイプ1、2、3、および4
肝臓とシールを作り出すことについて、
図12A、
図12B、
図12C、および12Dにそれぞれ示されている4つのプロトタイプ1、2、3、4の結果が、以下に説明される。
【0174】
図12Aに示されているように、プロトタイプ1は、円形であり、半径方向または同心円状の溝194aによって分離された一連の半径方向または同心円状のスペーシング・リブ194を含むスペーサー190を有している。また、プロトタイプ1は、中央オリフィス116も含んでいる。そのうえ、プロトタイプ1は、可撓性の外側リップ193、および、より剛性の高い小塔のある形状の内側リップ193aを特徴としている。
【0175】
図12Bに示されているように、プロトタイプ2は、円形であり、剛性の高い外側壁部112、113と、その長さに沿った小さな溝(見えない)を伴う一連の平行スペーシング・リブ195を含むスペーサー190と、ダム110の外部にわずかに延在する入口部120とを有している。スペーシング・リブ195は、中央部において最大スペースとなることが可能となるように段階的に配列されている。
【0176】
図12Cに示されているように、プロトタイプ3は、円形であり、その長さに沿った小さな溝(見えない)を伴う一連の平行スペーシング・リブ195を含むスペーサー190と、ダム110の内部にわずかに延在する入口部120とを有している。また、プロトタイプ3は、可撓性の外側リップ193、および、より剛性の高い小塔のある形状の内側リップ193aを特徴としている。
【0177】
図12Dに示されているように、プロトタイプ4は、楕円形であり、剛性の高い外側壁部112、113と、その長さに沿った小さな溝(見えない)を伴う一連の平行スペーシング・リブ195と、平行スペーシング・リブ195を連結する中央横方向スペーシング・リブ196とを有している。横方向スペーシング・リブ196は、曲線を成す。
【0178】
試験は撮影され、ビデオ映像が貯蔵された。
【0179】
これらのラピッド・プロトタイプのための入口部は、ダムの内部周囲の中に十分に突出しており、組織(肝臓)が入口部の中に引き込まれる傾向を導き、それによって、ダム内の吸引力の分配を妨げるけれども、すべてのプロトタイプは、肝臓とシールを作り出した。将来のプロトタイプは、入口部を凹所に設けるであろう。
【0180】
プロトタイプ1および3のリトラクタ100は、両方とも、薄くて可撓性の外側リップ193の外側壁部の構造を有しており、それは、より剛性が高く小塔のある形状の内側リップ193aと同一の構造であった。この可撓性の外側リップ193は、肝臓の輪郭に従っており、より剛性の高い小塔のある形状の内側のリップ193aが、リトラクタ100に対する支持部を提供していた。
【0181】
シリコーンおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されたチュービング130の検討が実施された。シリコーン・チュービング130は、可撓性であるので、最も適切であるように思われ、接触表面およびモデルのシールに与える影響は最小である。そのうえ、内径3mmのチュービングの流量は、十分であって、可能であるならば減少させられることもできる可能性があった。
【0182】
PTFEチュービング130は、その剛性が設置場所の選択肢を限定するので効果的でなく、それは、吸引リングの上に力を伝達するので、シールの質に強い影響を与えた。
【0183】
吸引チュービングは、ダムの内側領域の中に吸引の力を実現するように導入される。身体の組織(例えば、肝臓または横隔膜)が、吸引入口部120において、最大の吸引の力の点の中に吸い込まれる傾向にあるということが観察された。これが発生すると、次いで、ダムの領域の残りの部分の中で吸引力が失われ、結果的に並置が喪失される。ダムの領域の中の吸引の力を均一化することを目的として、このことが発生することを防止するために、様々な方策が用いられることが可能である。そのような方策には、ダムの内側周囲部の深い溝122が含まれる。また、そのような方策には、加えられる吸引力とつながり、窓のあることが可能な1つまたは複数のリブ125、126;加えられる吸引力とつながった多数の穿孔115を含むことが可能な膜114;1つまたは複数の半径方向リブ194、平行リブ195、および/または横方向リブ195を含むことが可能な1つまたは複数のスペーサー190;および/またはガード191などのような、この内側周囲部の中の構造体が含まれる。
【0184】
上部消化管SILSでの挑戦は、追加的なポートに頼ることなく、肝臓の下の臓器を露出させることである。本発明のリトラクタ100および方法200は、より簡単な、肝臓を上方向に牽引する手段を提供する。このように、それに限定されないが、本発明リトラクタ100および方法200は、正真正銘のSILSまたは従来の複数ポートの腹腔鏡手術のいずれを使用するにせよ、正確な上部消化管(GI)手術を非常に簡単にする。
【0185】
上記で明瞭にされた本発明の利点に加え、リトラクタ100、方法200、および方法300は、複雑な外科手術を非常に簡単にし、以前には提供されなかった使用の迅速さを提案することは明らかである。
【0186】
上記で明瞭にされたように、ダムの様々なサイズおよび形状が利用されることが可能である。それに制限されないが、プロトタイプの試験によって、リングを含むダム110が最も安定するということが示された。
【0187】
有利には、リトラクタ100は、スタンドアロンのデバイスとして使用されることが可能であり、または、既存の単一の切開部の腹腔鏡ポートの範囲の中に組み込まれることが可能である。リトラクタ100は、外科的切開部を通して腹膜腔の中に直接導入されることができるか、または、逆に、腹腔鏡ポートを通して折り畳み可能な形態で導入されることができると考えられる。後者の実施形態では、記憶によって、または、潜在的に膨張可能な構造によって、ダムは、その所望の形状へ拡張するであろう。標準的な手術室吸引デバイスによって、または、所定の設定値の中に吸引力を監視および維持するように設計されたスタンドアロンの吸引デバイスによって使用されるために、デバイスが供給されることが可能である。
【0188】
明細書を通して、目的とするところは、任意の1つの実施形態、または特定の特徴の集合に本発明を限定することなく、本発明の好適な実施形態を説明することであった。したがって、ここでの開示に照らして、特定の例示された実施形態において、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な修正および変更をすることが可能であるということが当業者に認識されるであろう。
【0189】
本明細書の中で参照されたすべてのコンピュータ・プログラム、アルゴリズム、産業上の特許および科学文献は、参照により本明細書の中に組み込まれる。