特許第5911863号(P5911863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911863ターボ機械の枢動羽根を制御するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911863
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】ターボ機械の枢動羽根を制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/56 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   F04D29/56 C
   F04D29/56 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-521198(P2013-521198)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-535610(P2013-535610A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】FR2011051833
(87)【国際公開番号】WO2012013909
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】1056338
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コレツト,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラランヌ,ベルナール
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−336698(JP,A)
【文献】 特開2002−115699(JP,A)
【文献】 特開2002−106499(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01188933(EP,A1)
【文献】 米国特許第04979874(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第01276720(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の軸(A)を中心にして少なくとも90°にわたって方位角方向に分布し、ターボ機械の軸(A)に対して実質的に半径方向に向けられている複数の枢動羽根(12)と、羽根(12)の枢動を制御するための制御リング部(16)とを有しており、各々の羽根(12)がリンク(18、19)によって制御リング部(16)へと接続され、制御リング部(16)が一式のリンク(18、19)によってターボ機械の軸(A)の周囲に保持されている、ターボ機械の枢動羽根を制御するための制御装置(10)であって、
少なくとも2つのリンク(18)が、それぞれのボールジョイント接続部(20)によってリング部(16)へと接続され、残りのリンク(19)の各々が、リング部(16)に対して実質的に半径方向に方向づけられたそれぞれの摺動枢支接続部(22)によってリング部へと接続されていることを特徴とする、制御装置。
【請求項2】
2つのボールジョイント接続部(20)が、方位角において約90°だけ離れていることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項3】
それぞれのボールジョイント接続部(20)によってリング部(16)へと接続された2つのリンク(18)が、剛体であり、それぞれの摺動枢支接続部(22)によってリング部(16)へと接続されたリンク(19)が、弾性的に変形できるようにより可撓であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(10)。
【請求項4】
より可撓なリンク(19)が、ねじりおよび曲げにて弾性的に変形できることを特徴とする、請求項3に記載の制御装置(10)。
【請求項5】
少なくとも2つの摺動枢支接続部(22)が存在しており、摺動枢支接続部(22)のうちの1つが、枢動のみの接続部を形成すべく摺動にての移動ができないようにされていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の枢動羽根制御装置(10)が取り付けられたターボ機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械の枢動羽根を制御するための装置に関し、さらに詳しくは、枢動ばねを同期方式にて制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械において、圧縮部を通過するガスの流れおよび流れの方向をターボ機械の動作速度に応じて調節するために、1つ以上のステータ羽根段を利用することが知られている。これらのステータ羽根段は、複数の羽根(可変ピッチベーンとしても知られる)を備えており、これらの羽根が、これらの羽根のピッチ角をターボ機械の動作速度に応じて変更できるよう、これらの羽根をステータへと接続するこれらの羽根の軸を中心にして枢動可能である。
【0003】
ターボ機械の枢動羽根を制御するための公知の装置は、通常は、ターボ機械の軸を中心にして少なくとも90°(90度の角度)にわたって方位角方向に分布し、ターボ機械の軸に対して実質的に半径方向に向けられている複数の枢動羽根と、羽根の枢動を制御するための制御リング部とを備えており、各々の羽根がリンクによって制御リング部へと接続され、制御リング部が一式のリンクによってターボ機械の軸の周囲に保持されている。
【0004】
軸流圧縮機を有するターボ機械においては、羽根がターボ機械の軸を中心にして半径方向に向けられ、半径方向のそれぞれの軸を中心にして枢動可能である。用語「実質的に半径方向に向けられ」が、羽根の枢動の中心となる半径方向の軸がターボ機械の軸と45°〜90°の範囲にある角度を形成するあらゆる構成を包含することに気付くべきである。
【0005】
さらに、用語「リング部」が、完全なリングまたは単なるリングの一部分のどちらも包含するように使用されていることに気付くべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リング部が、通常は、リング部をターボ機械の軸を中心にして一方向または反対の方向に回転させるアクチュエータによって制御される。この形式の装置の動きは複雑かつきわめて精密であり、精密なすき間が順守されない場合、装置が静的に不定になる可能性がある(すなわち、引っかかって動かなくなる)。これは、特に、ターボ機械の軸に対するリング部の配置および心出しにおける厳しい制約を意味する。すなわち、これらの位置から少し外れるだけで、きわめて簡単に制御装置の全体に高度の応力が加わり、制御装置が引っかかって動かなくなる可能性がある。この心出し(あるいは、より一般的には位置決め)の問題は、装置の種々の部品の間の熱膨張の相違によってさらに悪化する。
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも部分的に改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を、少なくとも2つのリンクが、それぞれのボールジョイント接続部によってリング部へと接続され、残りのリンクの各々が、それぞれの摺動枢支接続部によってリング部へと接続されるということによって達成する。
【0009】
枢支接続部(または、枢動のみの接続部)は、回転の自由度を1つだけしか持たず、残りのすべての自由度(2つの回転の自由度および3つの平行移動の自由度)が阻止されている接続部である。摺動枢支接続部は、枢動の回転軸に沿った平行移動の自由度が許されている枢支接続部である。したがって、摺動枢支接続部は、回転の1つの自由度および平行移動の1つの自由度による運動を許す一方で、残りの4つの自由度(平行移動の2つの自由度および回転の2つの自由度)は阻止される。ボールジョイント接続部は、回転の3つの自由度を有する一方で、平行移動の自由度は阻止される接続部である。
【0010】
したがって、枢支接続部が、それらの枢支軸の方向に沿って摺動でき、したがって枢支軸に対して横方向に作用する力だけを被ることを、理解できるであろう。結果として、リング部の重量は、大部分がボールジョイント接続部によって支持される。枢支接続部は、摺動接続部であるため、リング部の重量の一部だけを引き受け、その割合は、重力の方向に対する摺動枢支接続部の向きに応じて決まる。羽根が半径方向に向けられているため、摺動枢支接続部は、リング部を半径方向および方位角方向について案内するように機能する。換言すると、すべてのリンクがリング部の保持に貢献するが、リング部は、大部分はボールジョイント接続部によって保持される。
【0011】
さらに、枢支接続部が摺動接続部であるため、リング部がターボ機械の軸に心出しされた位置から移動しても(すなわち、リング部がターボ機械の軸に心出しされた位置から半径方向に移動しても)、枢支接続部および枢支接続部に接続されたリンクに生じる力は、わずかまたは皆無である。好都合には、この移動が、例えばリング部の幾何学的構成における基準点の角度および位置を最適化することによって、最小限にされる。
【0012】
加えて、リング部が、基本的に2つのボールジョイント接続部によって心出しされた位置の周囲に保持されるため、リング部を心出しされた位置の周囲に充分に正確に配置して、羽根の同期した枢動について確実かつ精密な制御をもたらすことができるとともに、この心出しされた位置の周囲のリング部の小さな移動に対応することもできる。本発明の発明者は、リング部における枢支部の回転軸と羽根の回転軸とがターボ機械の軸の近傍で交わる場合に、心出しが最適化され、移動が最小化されることに気が付いた。
【0013】
したがって、本発明の制御装置は、先行技術の装置において必要とされるリング部の心出しを回避することを可能にする。
【0014】
さらに、そのような心出しの必要を回避することにより、先行技術の装置に見られる種類の追加の設定システムを設置する必要がない。したがって、本発明の制御装置は、先行技術の装置よりも重量が軽く、より安価である。
【0015】
リング部の回転運動が、制御手段によって駆動され、例えばリング部の一点に2つのボールジョイント接続部によって案内される接線方向の移動を付与するアクチュエータによって駆動されることに、気付くべきである。これらのボールジョイント接続部は、ターボ機械の軸の周囲にある角度間隔にて配置され、この角度間隔が、リング部とリンクとの間のボールジョイント接続の点の平行移動での運動が防止されているということと組み合わさって、リング部をターボ機械の軸を中心にして主として回転運動するように制約する。リング部の半径方向の平行移動は、リングを中心からずらすように働くが、それでもなお制御の精度という意味では容認可能である。一変形例においては、これらの心ずれの移動を制限し、リング部の回転の案内においてボールジョイント接続部を補助するために、摺動枢支接続部のうちの1つが、枢動のみの接続部を形成すべく摺動にての移動ができないようにされる。
【0016】
さらに、枢支接続部は、摺動枢支接続部(または、枢動のみの接続部)と比べ、より重量が大きく、摩耗の影響を受けやすい。一部のリンクにおける少数の枢支接続部の使用を、残りのリンクの摺動枢支接続部(または、枢動のみの接続部)と組み合わせることによって、制御装置の重量が軽減される一方で、先行技術の制御装置(特に、ボールジョイント接続部または摺動ボールジョイント接続部だけを使用する装置)と比べて信頼性が改善される。これは、この制御装置が取り付けられた(あるいは、取り付けられる)ターボ機械の性能の向上に貢献する。
【0017】
好ましくは、2つのボールジョイント接続部が、方位角において約90°だけ離れている。
【0018】
ターボ機械の軸を中心とする2つのボールジョイントの間のこの角度間隔は、羽根の制御の際に各々の接続部に加わる力を最小にするように機能する。90°の角度間隔は、各々のボールジョイント接続部が、各々の力の垂直成分を支持するために他方のボールジョイント接続部とは別個独立に機能することで、特に円形の装置において力を一様な方式で分配することを可能にする。
【0019】
さらに、このボールジョイント接続部の90°配置は、リング部の回転移動の案内を改善する。
【0020】
好都合には、それぞれのボールジョイント接続部によってリング部へと接続された2つのリンクが、剛体である一方で、それぞれの摺動枢支接続部によってリング部へと接続されたリンクが、弾性的に変形できるようにより可撓である。
【0021】
ここで、剛体リンクが、リング移動の第1の制御位置から第2の制御位置への移動において弾性変形することがない一方で、より可撓なリンクは、リング部の第1の制御位置から第2の制御位置への移動の際に弾性的に変形する傾向にあることを、理解できるであろう。当然ながら、用語「より可撓」は、剛体リンクよりも可撓であることを意味して使用されている。換言すると、摺動枢支接続部によってリング部へと接続されたリンクが、ボールジョイント接続部によってリング部へと接続されたリンクよりも可撓である。
【0022】
弾性的に変形することによって、摺動枢支接続部によってリング部へと接続されたリンクが、制御装置に加わる力を引き受ける。さらに、力を引き受けることによって、この弾性変形が、これらのリンクの取り付け点の相対移動に追加の自由度を許すことによって、装置の運動が引っかかって動かなくなることがないように保証する。これが、特に、摺動枢支接続部によって制限されているが、ボールジョイント接続部によって許される回転運動を許容する。結果として、これらの弾性変形が、摺動枢支接続部への過度の応力を防止し、摺動枢支接続部を摩耗現象から保護する。さらに、これらの変形は、第1の制御位置と第2の制御位置との間のリング部の回転移動をより容易にする。結果として、制御アクチュエータによって生成される力が、より小さくてもよい。さらに、リング部の心ずれがより小さくなることで、羽根一式の枢動の制御の同期の精度がさらに向上する。
【0023】
加えて、ボールジョイント接続部が、リング部を保持する接続部であるため、それらの接続部へと接続されたリンクが、特にリング部の制御の運動の際に弾性的に変形することなくリング部をターボ機械の軸上の実質的に心出しされた位置(すなわち、心出しされ、あるいは心出しされた位置のすぐ近く)に保持するために充分に堅固である。
【0024】
さらに、剛体リンクは、ボールジョイント接続部によってリング部へと接続されているため、摺動枢支接続部を介してリング部へと接続されたリンクに加わるものと同様のねじりモーメントを被ることがない。各々の剛体リンクの2つの取り付け点の相対の回転移動は、剛体リンクのボールジョイント接続部によって補償される。
【0025】
ボールジョイント接続部によって得られる運動の制御の改善という観点からの利点が、ボールジョイント接続部のかなりの重量および摩耗しやすさによって相殺されることに、気付くべきである。この理由で、本発明の発明者は、剛体リンクへと接続されたボールジョイント接続部の数が、最小限(すなわち、2つ)であり、他の接続部が、より可撓な(好ましくは、ねじりの弾性変形が可能な)リンクへと接続された摺動枢支接続部である制御装置を設計した。
【0026】
好都合には、より可撓なリンクは、ねじりおよび曲げにて弾性変形可能である。
【0027】
これは、枢動接続部および枢動接続部へと接続された剛体リンクにおいて生じうる引っかかりを補償し、リング部の運動を容易にする一方で、摺動枢支接続部およびボールジョイント接続部の近傍の機械的な応力を軽減することを可能にする。
【0028】
以下では、用語「弾性リンク」が、より可撓であって弾性変形可能なリンクを指して使用される一方で、「剛体リンク」は、当然ながら、剛体であるリンクを指して使用される。
【0029】
さらに本発明は、上述のとおりの本発明の枢動羽根制御装置を備えるターボ機械を提供する。
【0030】
本発明およびその利点を、あくまでも本発明を限定するものではない例として与えられる実施形態についての以下の詳細な説明を検討することで、さらに良好に理解することができる。説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の制御装置の実施形態の一部分の斜視図である。
図2図1に示したとおりの摺動枢支接続部を有する弾性リンクを備えるアセンブリの分解斜視図である。
図3図1のボールジョイント接続部を有する剛体リンクを備えるアセンブリの分解斜視図である。
図4】制御リングの回転の際の弾性リンクの移動を示している。
図5図4の矢印Vに沿って見た図である。
図6】制御リングの回転の際の剛体リンクの移動を示している。
図7】本発明の枢動羽根制御装置が取り付けられたターボ機械を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1が、ターボ機械において枢動羽根を制御するための本発明の装置の実施形態を示している。この実施形態において、羽根は、ターボ機械の軸に対して半径方向に向けられている。図示の図は、一部分の図であり、装置全体は、ターボ機械(図示せず)の軸Aの周囲を360°にわたって広がっている。この軸Aが、長手方向を定めている。半径方向および方位角方向が、軸Aに対して定められる。
【0033】
制御装置10は、ステータ14に枢動可能に取り付けられた複数の羽根12を備えている。各々の羽根12の枢支軸Bが、半径方向を向いている。羽根12の各々が、枢動のみの接続23を介し、すなわち許容される唯一の運動(すなわち、自由度)が軸Bを中心とする回転運動である枢支接続を介して、ステータ14に取り付けられている。
【0034】
羽根12の各々は、リンクを介して制御リング16へと接続されている。各々の剛体リンク18が、羽根12をボールジョイント接続部20を介してリング16へと接続する一方で、各々の弾性リンク19が、羽根12を摺動枢支接続部22を介してリング16へと接続している。全体としての装置10が、2つの剛体リンク18および2つのボールジョイントリンク20を有する。2つの剛体リンク18は、方位角において軸Aを中心にして90°だけ離れている。したがって、2つの剛体リンク18は、方位角において90°だけ離れて位置する2枚の羽根12へと接続され、やはり方位角において90°だけ離れて位置する2つのボールジョイント接続部20によって、リング16へと接続されている。
【0035】
摺動枢支部22が許容する運動(すなわち、自由度)が、軸Cを中心とする回転運動および軸Cに沿った平行移動であることに、気付くべきである。
【0036】
また、剛体リンク18と比べて弾性リンク19に与えられる可撓性が、特に弾性リンク19の中央部の外形19dが剛体リンク18の外形18dよりも細い(図2および図3を参照)ことに起因することに、気付くべきである。
【0037】
図1は、まずはリング16を、羽根12の第1の制御位置に相当する実線で示し、さらにリング16を、第2の制御位置に相当する破線で示している。リング16を第1の制御位置から第2の制御位置へと動かすために、リング16へと接続されたアクチュエータ(図示せず)が、アクチュエータとリングとの間の接続点へと、リングの方位角方向に対して接線方向である平行移動の運動を加え、結果としてリング16が、ボールジョイント接続部20によって軸Aの周囲に保持されているがゆえに、方位角方向に動かされる。結果として、リング16が、軸Aを中心にしてある角度だけ回転する。
【0038】
リング16の方位角方向の運動の際に、リング16を支持するリンク18および19が枢動することで、リング16に軸Aに沿った平行移動の運動が加わることに、気付くべきである。この例では、第1の制御位置が、リンク18および19がリング16およびステータ14に対して実質的に垂直である位置に相当し、第2の位置におけるリンクの位置が、リング16を軸Aに沿ってステータ14に向かって移動させる。ステータ14がターボ機械(図示せず)において不動であるため、リング16がステータ14に対して移動する必要がある。この移動が、図4図5、および図6において矢印IIによって示されている。
【0039】
図2が、枢支リンク23によってケーシング14に取り付けられた羽根12を弾性リンク19および摺動枢支接続部22を介してリング16に接続するためのシステムの分解斜視図である。
【0040】
羽根22が、枢支接続部23によってケーシング14に取り付けられている。羽根12のロッド12aが、ステータ14のブシュ14aに係合し、ステータ14と羽根12との間の枢支接続部を形成している。さらにリンク19が、羽根12に直接接続されている。ロッド12aが、リンク19の小穴19aに係合し、ナット24およびリンク19の両面に押し付けられるワッシャによって固定されている。さらに、ナット24は、ロッド12aの段部12cをブシュ14aの端部14bに当接させることによって、羽根12のステータ14に対する平行移動を阻止することを可能にする。ロッド12aに形成された平坦部12bが、対をなす形状を介してリンク19の小穴19aと協働し、羽根12をリンク19と回転運動するように結合させる。
【0041】
リンク19の小穴19aとは反対側の端部に形成された小穴19bが、摺動枢支接続部22によってリング16へと接続される。小穴19bおよびリンク19に押し付けられたワッシャを貫いて延びるねじ22aが、リンク19をロッド22bへと接続するように機能する。ねじ22aが、リング16のブシュ16aに係合したロッド22bにねじ込まれる。ロッド22bは、ブシュ16aにおいて、軸Cに沿って自由に摺動でき、軸Cを中心にして枢動できる。
【0042】
図3が、枢支接続部23によってケーシング14に取り付けられた羽根12を剛体リンク18およびボールジョイント接続部20を介してリング16に接続するシステムの分解斜視図である。
【0043】
枢支接続部23は、上述した枢支接続部と同様である。図3においては、この接続部23を構成する構成要素が、組み立てられた状態で図示されている。
【0044】
ボールジョイント接続部20が、剛体リンク18をリング16へと接続する。リング16へとねじ込まれるねじ山付きのロッド20bの球状の末端部20aが、剛体リンク18の小穴18bに係合し、対をなす形状を介して小穴18bと協働する。このようにして、すべての回転運動(すなわち、回転における3つの自由度のすべて)が、剛体リンク18とリング16との間に許される。
【0045】
図4および図5が、リング16(図4には示されていない)へと接続された弾性リンク19の端部の運動を示している。実線が、リング16が図1の第1の制御位置にあるときの各構成要素の位置に相当する一方で、破線が、リングが図1の第2の制御位置にあるときの各構成要素の位置に相当する。
【0046】
第1の制御位置から第2の制御位置へと向かうリング16の運動の際に、弾性リンク19の小穴19bの中心に相当する基準点19cが、位置P1から位置P2へと移動する。
【0047】
したがって、位置P1から位置P2への移動のために、基準点19cの全体としての移動は、2つの基本的運動で構成される。この結果として、羽根22が矢印R(図4を参照)によって示されるとおりに枢動する。
【0048】
第1の基本的運動は、矢印Iによって示されており、ターボ機械の軸Aを中心とするリング16の回転に対応し、おそらくは(アクチュエータおよび剛体リンク18によってもたらされる)剛体の平行移動を伴う。この回転移動は、矢印Tによって示されるように弾性リンク19にねじり変形を加える。摺動枢支部22の軸Cが、リングに対しては位置合わせされた状態を保つが、枢支部23の軸Bに対しては位置合わせ状態を保たず、したがってリンク19に2つの小穴19aおよび19bの間を延びる軸(または、リンク19の軸)を中心とする回転運動を実行させる。小穴19aおよび19bは、リンク19の軸の方向を中心とする回転を行なうことができないため、リンク19がねじりを被る。
【0049】
この運動Iが、アクチュエータ(図示せず)およびリング16を案内する剛体リンク18によってリング16へと与えられることに、気付くべきである。
【0050】
第2の基本的運動は、矢印IIによって示され、上述のようなターボ機械の軸Aに沿った軸方向の平行移動に相当する。
【0051】
点19cとリング16との間の相対移動も生じる。この相対移動が、矢印IIIによって示されている。リング16の外周の位置が、図4においてロッド22b上の線26によって示されている。運動Iの際に、たとえリンク19が弾性的に変形可能であっても、リンク19は、点19cをリング16が第1の制御位置にあるときに点19cが占める平面と同じ平面に保とうとする。さらに、運動Iの際に、摺動枢支接続部22を介してリンク19へと接続されたリング16は、点19cが第1の制御位置において位置する平面から遠ざかるように移動する。これは、矩形の基準枠において、ホイールの外周に配置された点について、ホイールが回転するときの点の座標のうちの1つの従来の往復移動に相当する。図5において、この相対移動IIIが、リング16の摺動枢支接続部22の平面に位置する部位のシートの下方移動に相当する。この相対移動が、摺動枢支接続部22の摺動の性質によって可能にされる。
【0052】
上述の運動I、II、III、および変形Tが、集合体の運動の理解を単純にするための集合体の全体の運動および弾性リンク19の全体の変形のより単純な運動への分解に相当することに、気付くべきである。それでもなお、全体的な運動において、弾性リンク19が(矢印IIIの方向に沿ったリング16の剛体の移動を補償するために)曲げにても変形し、各々の弾性リンク19の全体としての弾性変形(すなわち、曲げ変形およびねじり変形)が、アクチュエータおよび剛体リンク18によってもたらされるリング16の全体としての剛体の(矢印Iおよび矢印IIIの方向の)移動を補償するように機能することを、忘れてはならない。
【0053】
図6が、リング16(図示せず)へと接続された剛体リンク18の端部の移動を示している。実線が、リング16が図1の第1の制御位置にあるときの各構成要素の位置に相当する一方で、破線が、リングが図1の第2の制御位置にあるときの各構成要素の位置に相当する。
【0054】
第1の制御位置から第2の制御位置へと向かうリング16の運動の際に、剛体リンク18の小穴18bの中心に相当する基準点18cが、位置P3から位置P4へと移動する。
【0055】
したがって、位置P3から位置P4への移動のために、基準点18cの全体としての移動を、上述の運動と同様であって矢印IおよびIIによって示されている2つの基本的運動IおよびIIとして分解することができる。
【0056】
リンク18がボールジョイント接続部20を介してリング16へと接続されているため、リンク18がねじりモーメントを被ることはない。結果として、リンク19と異なり、リンク18はねじり変形を生じることがない。さらに、リンク19は、制御装置10の通常の動作において曲げ変形を避けるために充分に堅固である。換言すると、この例において、第1の制御位置から第2の制御位置への移動のために、リンク18は弾性変形することがない。したがって、図4および図5に示した弾性リンク19の点19cと異なり、剛体リンク18の点18cは、図4および図5の矢印IIIに沿って移動することがない。
【0057】
図7が、枢動羽根を制御するための上述の装置10が取り付けられたターボ機械100を示している。
【0058】
本発明の技術的範囲を越えることなく、制御装置をヘリコプタのタービンエンジンに取り付けることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7