特許第5911973号(P5911973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911973タービンコンポーネントの冷却プロセスの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911973
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】タービンコンポーネントの冷却プロセスの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20160414BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20160414BHJP
   F01D 5/08 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F01D25/00 X
   F01D25/12 B
   F01D5/08
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-553635(P2014-553635)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-508472(P2015-508472A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2012071982
(87)【国際公開番号】WO2013110365
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】12152446.6
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・リーマン
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−059904(JP,A)
【文献】 特開平03−294605(JP,A)
【文献】 特開平08−218811(JP,A)
【文献】 特開平11−270306(JP,A)
【文献】 特表2001−500943(JP,A)
【文献】 特開平09−177505(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02307887(DE,A)
【文献】 特開平06−159008(JP,A)
【文献】 特開2011−208634(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0251210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00、08、12、18
F01D 5/08
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンシャフトであるタービンコンポーネント(8、10、12)の冷却プロセスの制御方法であって、
ミスト冷却段階(P4)の最中に、水ミストが混ぜられた気流が、前記タービンコンポーネント(8、10、12)の冷却に利用され、
その最中に気流が前記タービンコンポーネント(8、10、12)の冷却に利用される空冷段階(P3)が、前記ミスト冷却段階(P4)に先行し、
前記空冷段階(P3)の最中と前記ミスト冷却段階(P4)の最中に、冷却プロセスのための、一定の時間的温度勾配が設定され、
10K/hの時間的温度勾配が設定され、
温度勾配を設定するために、前記空冷段階(P3)の最中に空気流量密度が調整され、前記ミスト冷却段階(P4)の最中に、気流に混ぜられる水ミストの量が調整され、
制御可能な制御弁(26)の弁位置を介して空気流量密度が調節され、
最大空気流量密度が達成されると、前記空冷段階(P3)から前記ミスト冷却段階(P4)に移り、
冷却プロセスにおいて、前記タービンコンポーネント(8、10、12)の相互の温度同化が行われる熱均衡段階(P2)が、前記ミスト冷却段階(P4)に先行し、
その最中に水蒸気が前記タービンコンポーネント(8、10、12)の冷却に利用される蒸気冷却段階(P1)が、冷却プロセスの初めに予定されており、
前記蒸気冷却段階(P1)の最中に、冷却プロセスのための一定の時間的温度勾配が設定され、当該温度勾配は、前記空冷段階(P3)の最中と前記ミスト冷却段階(P4)の最中の温度勾配とは異なることを特徴とする方法。
【請求項2】
気流あるいは水ミストが混ぜられた気流が、必要時には蒸気の導管システム(20)に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気流あるいは水ミストが混ぜられた気流が、複数の位置で、前記導管システム(20)に導入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水ミストとして、霧状の脱塩水が利用される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
脱塩水が、水ミストの生成にも作動媒体としても使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御弁(26)が完全に開くと、前記空冷段階(P3)から前記ミスト冷却段階(P4)に移る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸気冷却段階(P1)の最中に、冷却プロセスのための一定の時間的温度勾配が設定され、当該温度勾配は、前記空冷段階(P3)の最中と前記ミスト冷却段階(P4)の最中の温度勾配より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
気流あるいは水ミストが混ぜられた気流が、蒸気タービン(2)の各圧力段(8、10、12)の上流で、前記導管システム(20)に導入される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンコンポーネント、特に蒸気タービンシャフトの冷却プロセスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メンテナンス作業は、タービン、特に蒸気タービンの場合には、多くの時間消費を伴う。なぜなら、タービンを停止することができる前に、かつメンテナンス作業を行うことができる前に、タービンもしくは蒸気タービンのタービンコンポーネントの温度をまず下げなくてはならないからである。
【0003】
タービンコンポーネントの対応する冷却はその際通常、メンテナンス作業に必要な時間をできる限り少ない程度に減らすために、気流を使って速められる。その際、気流を発生させるために周囲空気が利用されるが、その温度は、このような強制冷却時の気流の冷却効果を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、本発明の課題は、タービンコンポーネントを強制冷却する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に従えば、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
本方法は、タービンコンポーネント、特に蒸気タービンシャフトの冷却プロセスの制御に使われ、ミスト冷却段階の最中に、水ミストが混ぜられた気流が、タービンコンポーネントの冷却に利用される。蒸気タービンの駆動時に作動媒体として使われる水蒸気とは異なり、水ミストとはエアロゾルすなわち空気と水滴との混合物であり、当該混合物は、含まれる水が液相から気相に相転移することによって、特に大規模に熱エネルギーを受容しかつ運び去ることができる。それゆえ、水ミストが混ぜられた気流とは、作動媒体ではない。作動媒体は、さらなる媒体として、冷却目的でタービンを通って運ばれる。このやり方で、強制対流による単純な冷却すなわちたとえば空冷が、付加的な沸騰冷却あるいは蒸発冷却で補われ、それによって、比較的単純な手段での冷却の有効性が著しく高まる。このような補足は、単純な空冷のための冷却システムがすでにあれば、特に有利である。なぜならこの場合、大きな技術的手間なしに追加装備を行うことができ、水ミストを発生させて空冷の気流に取り入れさせる装置のみを設置すればよいからである。単純な空冷を沸騰冷却と組み合わせることによって、単純な空冷と比較して拡大された温度領域にわたる冷却プロセスは、時間に依存した望ましい温度勾配が設定されるように、制御され得る。
【0007】
方法の一変形形態に従えば、冷却プロセスは多段階で構成されており、その最中に水ミストなしの気流だけがタービンコンポーネントの冷却に利用される空冷段階が、ミスト冷却段階に先行する。それに従って、必要に応じてタービンコンポーネントは、気流を使って、あるいは水ミストが混ぜられた気流を使って、強制的に冷却される。それで、冷却システムの種々の駆動モードによって、タービンから時間単位ごとの非常に様々な熱量が分離され得、かつ運び去られ得る。
【0008】
方法の一変形形態に従えば、空冷段階の最中とミスト冷却段階の最中に、冷却プロセスのための、均一かつ一定の時間的温度勾配が設定される。その際特に、約5K/hから15K/h、特に約10K/hの時間的温度勾配が好ましい。タービンをできる限り経済的に駆動するために、必要なメンテナンス作業のための必要時間をできる限り短く抑えることが合理的である。それに従って望ましいのは、対応するメンテナンスのために、タービンコンポーネントの温度をできる限り素早く下げることである。しかしながら、あまりに集中的な強制冷却は、タービンコンポーネントの破損をもたらしかねない応力が、たとえばタービンコンポーネント内で発生するというリスクをはらんでいる。それゆえ、タービンの計画の枠内でのタービンコンポーネントの設計時に、最大の時間的温度勾配が規定される。その結果、ここで紹介される方法に従った冷却プロセスは好ましくは、設定された最大の温度勾配ができる限り正確に達成され、かつ冷却プロセス全体にわたって維持されるよう、制御される。前に挙げられた、約10K/hという温度勾配の値は、この場合、蒸気タービンの典型的値を表わしている。その際そのような最大の時間的温度勾配は、通常限定された温度領域のために設定されており、その理由で、非常に大きな温度領域にわたる冷却プロセスの際には、充分に、複数の異なる値が設定されていてよい。この場合冷却プロセスは、対応する各温度領域において、そのために設定された温度勾配が達成され、かつ温度領域全体にわたって維持されるよう、制御される。
【0009】
方法の非常に合理的な一変形形態に従えば、温度勾配を設定するために、空冷段階の最中だけ気流の流量密度が調整され、ミスト冷却段階の最中だけ、気流に混ぜられる水ミストの量が調整される。これによって、タービンのための適切な冷却システムと、特に冷却システムのための制御システムが、技術的に特に容易に実現され得る。しかも、対応する制御は、比較的間違いをしにくい。なぜなら、常に1つの変数のみが、制御の枠内で変えられるからである。
【0010】
さらに、制御可能な吸入弁の弁位置を介して気流の流量密度を調節することが、合理的である。たとえば蒸気タービンでは頻繁に、対応する排気装置を介して蒸気タービン内で低圧が生じ、タービン入口とタービン出口との間での圧力差が、設定される。それによって、タービン入口に位置する吸入弁により、排気装置が一定駆動する際に、周囲空気を使って、蒸気タービンのタービンコンポーネントを冷却できる気流が発生させられる。それから弁位置を介して、気流の流量密度すなわち時間単位ごとの空気量が調整され得る。
【0011】
しかも、最大空気流量密度が達成されると、特に吸入弁が完全に開くと、空冷段階からミスト冷却段階に移ることは、有利である。タービンコンポーネントを冷却するための気流を発生させるために、排気装置と蒸気タービンの吸入領域における吸入弁とが利用される蒸気タービンの前述の冷却システムの場合には、冷却の有効性は、タービンコンポーネントの温度と、気流に利用される周囲空気の温度との間の温度差に左右される。この温度差は、設定された最大の温度勾配を達成し、かつある程度の温度領域にわたって維持するのに、冷却プロセスの初めでは全く充分である。しかしながら、タービンコンポーネントの温度が低下するにつれて、単純な空冷の有効性が低下し、吸入弁は、温度勾配を維持するために、さらに開けられなくてはならず、それによって気流の流量密度が上昇する。冷却プロセスがさらに進むと、弁が完全に開き、かつ気流の最大流量密度が達成される時点に、いつかは達する。設定された望ましい温度勾配を引き続き維持できるようにするために、この時点から水ミストが気流に混合され、引き続いて、冷却プロセスを制御するために、特に温度勾配を設定するために、水ミストの量が調整される。
【0012】
さらに好ましいのは、気流あるいは水ミストが混ぜられた気流が、必要時には蒸気の導管システムに導入される、方法の一変形形態である。特に、蒸気がタービンの作動媒体として使用され、かつ、作動媒体がタービンを貫流できるようにする蒸気のための対応する導管システムがいずれにせよ存在していれば、利点が伴う。この場合まさにこの導管システムが、駆動モードに応じて、作動媒体の誘導のために、あるいは冷媒の誘導のために、つまり空気の誘導かあるいは水ミストが混ぜられた空気の誘導のために、利用され得る。
【0013】
さらにまた、気流あるいは水ミストが混ぜられた気流が、複数の位置特に蒸気タービンの各圧力段の上流で、導管システムに導入されれば、有利である。このやり方で、タービン内部での位置に関係なく、すべてのタービンコンポーネントの特に均一な強制冷却が達成され得る。
【0014】
さらに冷却プロセスにおいて、タービンコンポーネント相互の温度同化がとりわけ熱導管によって行われる熱均衡段階が、ミスト冷却段階に先行する、方法の一変形形態が合理的である。これによって、タービン内部の局所的な温度差が軽減され、それによって、タービンの破損のリスクがさらに軽減される。
【0015】
その上、特に蒸気タービンの場合には、その最中に作動媒体つまりたとえば水蒸気がタービンコンポーネントの冷却に利用される蒸気冷却段階が、冷却プロセスの初めに予定されている、方法の一変形形態が好ましい。この場合作動媒体の温度は徐々に落ち、典型的にはこの冷却段階の最中にタービンは引き続いて駆動し、ゆえに特に電気エネルギーを発生させる。
【0016】
有利なさらなる形態において、蒸気冷却段階の最中に、空冷段階の最中とミスト冷却段階の最中の温度勾配とは異なる(特にそれより大きい)冷却プロセスのための一定の時間的温度勾配が設定される。
【0017】
その上、水ミストとして、極めて細かな霧状の脱塩水が用いられれば、有利である。これによって、水ミストの水滴が蒸発した際に、ミネラルがタービンコンポーネントに沈殿することが回避される。
【0018】
合理的なのは最後に、脱塩水が、水ミストの生成にも作動媒体としても使用される、方法の一変形形態である。脱塩水はある程度の技術的手間をかけて製造されなくてはならないので、脱塩水の使用は、とりわけ、いずれにせよ対応する脱塩水がタービンの作動媒体として備えられており、かつそれに応じていずれにせよ利用可能であれば、有利である。
【0019】
本発明の実施例は、以下に、概略図に基づいてより詳細に説明される。図に示されるのは以下である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】蒸気タービンにおける局所温度の時間的経過のグラフである。
図2】制御可能な冷却装置を有する蒸気タービンのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
互いに対応する部材は、すべての図においてそれぞれ同じ参照番号が付けられている。
【0022】
後述の方法は、蒸気タービン2のタービンコンポーネントの強制冷却プロセスの制御に使われ、図1に表わされているように、広範囲の温度領域にわたって、冷却プロセスのための、時間的に一定の温度勾配が設定されるように、制御が行われる。この場合温度勾配の設定は、蒸気タービン2内に設けられた温度センサ6からのセンサデータを分析し、これに基づいて冷却システムを制御する冷却制御ユニット4を使って行われる。
【0023】
冷却プロセスは、実施例において、互いに連続する4つの段階P1…P4に分けられている。冷却プロセスの第1段階P1において、作動媒体ここでは水蒸気の温度は調節して下げられ、それによって蒸気タービン2のタービンコンポーネントは、約30K/hの温度勾配で温度が下げられる。発生させられる時間単位ごとの電気エネルギーは低下し続けるが、蒸気冷却段階P1の最中に、蒸気タービン2は引き続いて電気エネルギーを発生させる。
【0024】
タービンコンポーネントの温度が約390℃になると、蒸気冷却段階から熱均衡段階P2に移行する。冷却プロセスのこの段階において、タービンコンポーネント相互の温度同化が熱導管によって行われ得るために、対流によるタービンコンポーネントの冷却が中断される。これによって、蒸気タービン2内部のより大きな温度差が無くなることになる。
【0025】
約6時間後に熱均衡段階P2が終了し、空冷段階P3が開始される。この空冷段階P3の最中に、タービンコンポーネントを介して誘導される気流が発生させられる。ゆえに、対流による冷却によって、タービンコンポーネントの冷却が再度強制されるが、冷媒はもはや水蒸気ではなく、その発生に周囲空気が考慮される気流である。その際、タービンコンポーネントの冷却プロセスのための、約10K/hのそのような温度勾配を設定するために、気流の流量密度は上昇し続ける。この場合、気流の流量密度の上昇とともに、タービンコンポーネントの温度と冷却のために考慮される周囲空気の温度との間のわずかになった差が解消され、その結果総計で、均等な冷却が強制される。
【0026】
冷却装置で達成可能な最大気流流量密度が達成されると、冷却プロセスのための望ましい温度勾配をさらに維持するためには、気流による単純な冷却ではもはや充分ではない。これは、周囲空気の温度に応じて、典型的にはタービンコンポーネントの温度が約200℃の場合に当てはまる。この時点から、以下にミスト冷却段階P4と呼ばれる、冷却プロセスの第4のかつ最後の段階が始まる。このミスト冷却段階P4の最中に、引き続いて最大限可能な流量密度が維持される気流に、極めて細かな霧状の脱塩水が付加的に混ぜられる。これによって、対流による冷却は蒸発冷却で補われ、冷却プロセスのための望ましい温度勾配の維持が可能になる。その際温度勾配を調整するために、極めて細かな霧状の水として気流に混ぜられる脱塩水の量が、調整される。
【0027】
タービンコンポーネントの温度が100℃から150℃の間になると最終的に、制御された冷却プロセスが終了し、典型的には蒸気タービン2の開放と特に、通常備わっているハウジングの開放とが続く。続いて、典型的には蒸気タービン2を停止し冷却する目的である、未完了のメンテナンス作業を行うことができる。
【0028】
ここで示された方法に従った強制冷却でのタービンコンポーネントの温度経過を描写している、図1に表わされている実線と並んで、付加的に、それから逸れた温度経過が破線で記入されている。逸れたこのタービンコンポーネントの温度経過は、付加的に水ミストを気流に取り込むことなく、気流のみを使って冷却を強制した場合の冷却プロセスの特徴を示している。この温度経過では、典型的にメンテナンス作業が開始される100℃から150℃の温度領域は、はるかに遅く達成されている。それに応じて、メンテナンス作業の際の蒸気タービン2の駆動中止時間は、ここで示された方法を用いることによって実質的に短縮され、蒸気タービン2の効率的な利用が可能となる。
【0029】
蒸気タービン2とここで示された方法を実行するための冷却装置とが使用される設備の考えられ得る構成は、図2に概略的に描写されている。その際例として、設備は、高圧段8と中圧段10と、低圧段12とを有する蒸気タービン2と、高圧段8と中圧段10との間に中間設置された過熱ユニット14と、蒸気発生器16と、凝縮器18と、作動媒体ここでは脱塩水と対応する水蒸気のための導管システム20とを備える。
【0030】
設備の一部はさらに、必要な場合には、脱塩水の損失を補うことのできる貯水槽22である。
【0031】
必要な場合に、ここで示された方法に従った、特に圧力段8、10の冷却を強制できるようにするために、かつ対応する強制冷却プロセスの際に、冷却を制御できるようにするために、設備は、好ましくは当該設備の中心的制御ユニットの一部である冷却制御ユニット4を備える。
【0032】
冷却プロセスがたとえば操作員によって起動されると、冷却制御ユニット4は、まず蒸気発生器16と過熱ユニット14とを制御し、その結果、圧力段8、10、12を通って誘導される気化した脱塩水の温度は、徐々に低下する。このやり方で、蒸気冷却段階P1が実行される。
【0033】
熱均衡段階P2への移行時に、2つの逆止弁24と2つの制御弁26、つまり高圧段8への導管システム20の供給管においてそれぞれのうち1つの弁と、中圧段10への導管システム20の供給管においてそれぞれのうち1つの弁とは閉じられ、それによって、その後、対流による冷却がストップされる。その代わりに、圧力段8、10、12内部で、熱導管による温度均衡が行われる。その最中に2つの供給管はそれぞれ、フランジFを介して周囲に向かって開かれる。
【0034】
それに続く空冷段階P3の初めに、制御弁26が次第に開かれ、その結果、周囲空気がそれぞれ開口部28を介して、導管システム20の供給管へ入って圧力段8、10、12に流入できる。同時に凝縮器18において、対応するが明示されていない排気装置によって低圧が設定されており、その結果、これによって、開口部28で周囲空気が流入し、圧力段8、10、12を貫流する。その際、制御弁26の弁位置を介して、それぞれの圧力段8、10、12を通る気流の流量密度が調節される。
【0035】
ミスト冷却段階P4の開始時に、付加的に、脱塩水が貯水槽22から散水装置30を使って、冷却に利用される気流に混入され、その結果、その後極めて細かな霧状の脱塩水が混ぜられた気流が、圧力段8、10、12を冷却するために、当該圧力段8、10、12を通って誘導される。その後、気流の流量密度は一定に保たれ、気流に混ぜられる脱塩水の量のみが、圧力段8、10、12が望ましい温度に下がるまで、変化する。
【0036】
本発明は、前述の実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明の対象から離れることなく、本発明の別のヴァリエーションも、当業者によって本発明から導き出されてよい。さらに特に、実施例に関連して記述された個々の特徴すべてが、本発明の対象から離れることなく、別のやり方で互いに組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0037】
2 蒸気タービン
4 冷却制御ユニット
6 温度センサ
8 高圧段
10 中圧段
12 低圧段
14 過熱ユニット
16 蒸気発生器
18 凝縮器
20 導管システム
22 貯水槽
24 逆止弁
26 制御弁
28 開口部
30 散水装置
F フランジ
P1 蒸気冷却段階
P2 熱均衡段階
P3 空冷段階
P4 ミスト冷却段階
図1
図2