特許第5911989号(P5911989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5911989高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5911989
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 305/14 20060101AFI20160414BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C07D305/14
   A61K31/337
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-106671(P2015-106671)
(22)【出願日】2015年5月26日
(62)【分割の表示】特願2012-547003(P2012-547003)の分割
【原出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-178520(P2015-178520A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0135668
(32)【優先日】2009年12月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511285358
【氏名又は名称】サムヤン バイオファーマシューティカルズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ジンスク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ムンソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジョンウン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ホジュン
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−533330(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/061474(WO,A1)
【文献】 特開2000−204090(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/051465(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0225291(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/006590(WO,A2)
【文献】 特表2008−515840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0116720(US,A1)
【文献】 特表2009−522351(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)未精製ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、
(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、
(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.2%(v/v)〜5%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および
(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
を含み、
前記酸が酢酸であり、前記ステップ(d)で使用される再結晶溶媒がアセトンおよびヘキサンである、
純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法。
【請求項2】
(a)未精製ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、
(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、
(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して1%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および
(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
を含み、
前記酸が酢酸であり、前記ステップ(d)で使用される再結晶溶媒がアセトンおよびヘキサンである、
純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法。
【請求項3】
(a)未精製ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、
(b)(a)ステップのドセタキセルの一次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.5%(v/v)〜5%(v/v)の濃度の酸を加えて、一次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、
(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、および
(d)二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップ
を含み、
前記酸が酢酸であり、前記ステップ(d)で使用される再結晶溶媒がアセトンおよびヘキサンである、
純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法。
【請求項4】
前記低圧順相クロマトグラフィーまたは高圧順相クロマトグラフィーを行う場合、炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類、炭素数1〜6の有機溶媒およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類が、ジクロロメタンおよびクロロホルムからなる群より選択される1種以上であり、前記炭素数1〜6の有機溶媒が、メタノール、ベンゼン、アセトン、ヘキサンおよびエチルアセテートからなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記低圧逆相クロマトグラフィーまたは高圧逆相クロマトグラフィーを行う場合、炭素数1〜3の有機溶媒、精製水およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素数1〜3の有機溶媒が、炭素数1〜3のアルコールおよびアセトニトリルからなる群より選択される1種以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アセトンが、ドセタキセルの濃度が1%(w/v)〜30%(w/v)となるように投与された後に、ヘキサンが、アセトンの投与量の1倍〜10倍の容量で投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法、より具体的には、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドセタキセルは、トキソイド族に属する広範な抗腫瘍および抗白血病活性を有する癌化学療法剤である。それは、欧州またはインドのイチイの葉および皮から抽出される10−デアセチルバッカチン(Deacetylbaccatin)IIIの化学修飾によって得られる半合成抗癌剤であり、欧州を含む世界の国々で幅広く認められ、乳癌および卵巣癌などに対する治療剤として市販されている医薬品である。
【0003】
現在、半合成ドセタキセルを再結晶化して無水結晶形ドセタキセルを製造するために、ジクロロメタンとヘキサンを用いた再結晶、アセトンとヘキサンを用いた再結晶、およびアセトニトリルと精製水を用いた再結晶の方法が知られているが、前記方法により製造された無水結晶形ドセタキセルは純度が顕著に低く、問題となっている。特に、医薬用途のためのドセタキセルの場合、純度を高めることが何より重要である。
【0004】
特に、高純度の無水結晶形ドセタキセルを製造する上で困難な点は、不純物や残留溶媒を除去することであり、特に、無水結晶形ドセタキセルを製造する場合、ドセタキセルの安定性が破壊され、7−エピマー(epimer)、つまり、4−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5−β,20−エポキシ−1,7α,10β−トリヒドロキシ−9−オキソ−タック−11−エン−13−α−イル(2R,3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−2’−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネートという不純物が生成されるため、高純度の無水結晶形ドセタキセルを製造することが非常に難しいのが実情である。
【0005】
したがって、不純物の含有量が少なく、高純度の無水結晶形ドセタキセルを製造するための方法の開発が切実に要求されているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、高純度無水結晶形ドセタキセルを製造するための方法を開発することにより本発明に至った。
【0007】
したがって、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)(a)ステップのドセタキセルの一次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、一次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、および(d)(c)ステップの二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
また、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)(a)ステップのドセタキセルの一次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、一次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、および(d)(c)ステップの二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
高純度無水結晶形ドセタキセルを製造するために、本発明の方法は、大きく3つで組み合わされた工程を含み、これにより、半合成ドセタキセルから純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。具体的には、図1に示される半合成ドセタキセル試料の純度HPLC結果と、図5図8および図11に示される本発明の精製工程を経て製造された無水結晶形ドセタキセルのHPLC結果とを比較すると、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルが本発明の方法にしたがって製造されうることが分かる。
【0014】
特に、低圧または高圧逆相クロマトグラフィーを行った後に得られるドセタキセル分取液の精製効率を向上させるために、分取液は逆相クロマトグラフィーに含まれる不純物を除去するために酸を添加して濃縮されて、不純物の含有量が減少したドセタキセル沈殿物を形成する。
【0015】
分取液は、クロマトグラフィーによって得られるドセタキセルを含む分画物を意味し、その収得方法は当業者が容易に決定することができる。
【0016】
低圧は、これに限定されないが、好ましくは5psi〜1000psiであり、高圧は、これに限定されないが、好ましくは1500psi〜4000psiである。
【0017】
以下、本発明を、工程別により詳細に説明する。
【0018】
1.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I
(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
半合成ドセタキセルを、まず、低圧順相クロマトグラフィーで一次精製する。
低圧順相クロマトグラフィーを行う場合、これに限定されないが、好ましくは、炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類、炭素数1〜6の有機溶媒およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用されうる。炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類には、ジクロロメタン、クロロホルムおよびその組み合わせが含まれ得、炭素数1〜6の有機溶媒には、メタノール、ベンゼン、アセトン、ヘキサン、エチルアセテートおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、アイソクラチック(isocratic)または段階溶出(step elution)方法を用いることができ、1.0%(v/v)〜20%(v/v)のメタノール/ジクロロメタン混合溶液(つまり、メタノール(v):ジクロロメタン(v)=1.0:99〜20:80)、より好ましくは2.5%(v/v)〜10%(v/v)のメタノール/ジクロロメタン混合溶液(つまり、メタノール(v):ジクロロメタン(v)=2.5:97.5〜10:90)を展開溶媒として使用することができる。
低圧順相クロマトグラフィーを行うために、当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得、好ましくは、カラムの充填剤として、シリカゲル60(63〜200μm)が使用され得る。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度94%程度に精製することができる。
【0019】
(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(a)ステップで得られた純度90%以上のドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーで二次精製する。
低圧逆相クロマトグラフィーを行う場合、これに限定されないが、好ましくは、炭素数1〜3の有機溶媒、精製水およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用されうる。炭素数1〜3の有機溶媒には、炭素数1〜3のアルコール、アセトニトリルおよびその組み合わせが含まれ得、アルコールには、メタノール、エタノール、プロパノールおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、アイソクラチック(isocratic)または段階溶出(step elution)方法を用いることができ、30%(v/v)〜90%(v/v)のメタノール/精製水混合溶液(つまり、メタノール(v):精製水(v)=30:70〜90:10)、好ましくは60%(v/v)〜85%(v/v)のメタノール/精製水混合溶液(つまり、メタノール(v):精製水(v)=60:40〜85:15)を使用することができる。
低圧順相クロマトグラフィーを行うためには、当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得、好ましくは、カラムの充填剤として、通常の疎水性樹脂、例えば、63〜200μmのODS(Octadecylsilylated、C18)、C8またはC4を使用することができる。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度99.4%程度に精製することができる。
【0020】
(c)二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ
(b)ステップで得られた純度99.4%のドセタキセル分取液に酸を添加して、二次精製されたドセタキセルを濃縮する。
有機溶媒を除去するために酸で濃縮する場合、これに限定されないが、好ましくは35℃〜60℃、より好ましくは40〜50℃で濃縮することができ、濃縮時間は、1〜10時間であり得る。
酸には、これに限定されないが、好ましくは、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸およびその組み合わせが含まれ得る。(b)ステップで得られたドセタキセル分取液(aliquot)に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)、より好ましくは0.2%(v/v)〜5%(v/v)の酸を加えて濃縮することができる。
濃縮後、必要に応じて、生成物を減圧乾燥して乾固物を得ることができる。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度99.5%以上に精製することができる。
【0021】
(d)濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)ステップで得られた純度99.5%以上のドセタキセルを再結晶して無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶溶媒には、これに限定されないが、アセトン、ヘキサンおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、(c)ステップで得られたドセタキセルをアセトンに溶かした後、ヘキサンを添加させて再結晶することができる。アセトンは、これに限定されないが、好ましくは、ドセタキセルの濃度が1%(w/v)〜30%(w/v)となるように投与され得、ヘキサンは、アセトンの投与量の1倍〜10倍の容量で投与され得る。
【0022】
2.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法II
(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(a)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
【0023】
(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(a)ステップで得られた純度90%以上のドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーで二次精製する。
高圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、圧力条件を除き、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(b)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。カラムの充填剤として、好ましくは、通常の疎水性樹脂、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜50μmのODS(Octadecylsilylated、C18)、C8またはC4などが用いられ得る。
本ステップにより、純度99.4%程度のドセタキセル分取液を製造することができる。
【0024】
(c)二次精製されたドセタキセルを酸を用いて濃縮するステップ
(b)で得られたドセタキセル分取液に酸を添加して濃縮する。
酸を用いる濃縮方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(c)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度99.7%以上のドセタキセルを得ることができる。
【0025】
(d)濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)で得られた純度99.7%以上のドセタキセルを再結晶して無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(d)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度99.8%以上の無水結晶形ドセタキセルを得ることができる。
【0026】
3.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法III
(a)半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーで一次精製することができる。
低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(b)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度80〜84%程度のドセタキセル分取液を分離することができる。
【0027】
(b)一次精製されたドセタキセルを酸で濃縮するステップ
(a)で得られたドセタキセル分取液に酸を添加して濃縮する。
酸による濃縮方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(c)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度90〜94%以上のドセタキセルを得ることができる。
【0028】
(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(b)で得られたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製することができる。
高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(a)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。ただし、カラムの充填剤として、好ましくは、シリカゲル20μmが用いられ得る。
本工程により、純度99.5〜99.6%のドセタキセルを得ることができる。
【0029】
(d)二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)で二次精製されたドセタキセルを再結晶して、無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶方法は、前記1の(d)に記載されるように実施され得る。
本工程により、純度99.7〜99.8%以上の無水結晶形ドセタキセルを得ることができる。
【0030】
純度99.5%以上、収率77%〜88%の高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法に関する結果を、下表1に要約する。
【表1】
【0031】
ドセタキセルの純度および回収率は、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて測定することができ、好ましくは、下表2に記載のHPLC分析方法を用いて測定することができる。
【表2】
【0032】
本発明の高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法は、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができ、さらに、残留溶媒含有量が医薬品残留溶媒基準より顕著に低く、抗癌剤として有用に使用できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】精製工程前の試料、つまり、半合成ドセタキセルの純度を分析したHPLC結果を示す。
図2】実施例<1−4−2>におけるドセタキセルの純度を分析したHPLC結果を示す。
図3】実施例<1−1>の低圧順相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す(X軸:時間(分)、Y軸:反応(mAU))。
図4】実施例<1−2>の低圧逆相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す(X軸:時間(分)、Y軸:反応(mAU))。
図5】実施例<1−1>、<1−2>、<1−3−2>および<1−4−2>の純度を分析したHPLC結果を上から示したものである。
図6】実施例<2−1>の低圧順相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す。
図7】実施例<2−2>の高圧逆相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す(X軸:時間(分)、Y軸:反応(mAU))。
図8】実施例<2−1>、<2−2>、<2−3>、<2−4>の純度を分析したHPLC結果を上から示したものである。
図9】実施例<3−1−1>の低圧逆相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す(X軸:時間(分)、Y軸:反応(mAU))。
図10】実施例<3−3>の高圧順相クロマトグラフィーの分取クロマトグラム結果を示す(X軸:時間(分)、Y軸:反応(mAU))。
図11】実施例<3−1−1>、<3−2−1>、<3−3>、<3−4>の純度を分析したHPLC結果を上から示したものである。
図12】実施例<1−4−2>のXRD結果を示す。
図13】実施例<1−2>の純度と、比較例1、2、3の純度とを比較したHPLC結果を上から示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施例および実験を参照して本発明をより詳細に説明する。
ただし、下記の実施例および実験は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I
<1−1>低圧順相クロマトグラフィー
半合成ドセタキセル180g(純度45%)を、ジクロロメタン1000mlに完全に溶かして試料として用意した。シリカゲル60(63〜200μm)を充填したカラムを用いて、下表3の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。
【表3】
【0036】
試料注入から約40分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取し、温度45℃で減圧濃縮して、ドセタキセル分取液を濃縮した。濃縮が完了すると、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
【0037】
回収された乾固物の量は98g、純度94%、収率は97%であった。
【0038】
<1−2>低圧逆相クロマトグラフィー
実施例<1−1>の乾固物98gを、メタノール1100mlに完全に溶かした後、精製水275mlを添加して試料として用意した。疎水性樹脂63〜200μmのODS(Octadecylsilylated、C18)を充填したカラムを用いて、下表4の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。
【表4】
【0039】
試料注入から約45分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した。
【0040】
前記ドセタキセル分取液は3510ml、純度99.4%、収率は97%であった。
【0041】
<1−3>酸による濃縮
1−3−1.酸による濃縮(0.2%)
実施例<1−2>のドセタキセル分取液2000ml(ドセタキセルの量43g、純度99.4)に対して酢酸4ml(0.2%(v/v))を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去してドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を2日間行った。
回収された乾固物の量は41g、純度99.7%、収率は98%であった。
【0042】
1−3−2.酸による濃縮(1%)
実施例<1−2>のドセタキセル分取液350ml(ドセタキセルの量7.6g、純度99.4)に対して酢酸3.5ml(1%(v/v))を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去してドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を2日間行った。
回収された乾固物の量は7.5g、純度99.6%、収率は98%であった。
【0043】
1−3−3.酸による濃縮(5%)
実施例<1−2>のドセタキセル分取液350ml(ドセタキセルの量7.6g、純度99.4)に対して酢酸17.5ml(5%(v/v))を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去してドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を2日間行った。
回収された乾固物の量は7.4g、純度99.7%、収率は98%であった。
【0044】
<1−4>再結晶
1−4−1.アセトン:ヘキサン=1:1.8(v/v)
実施例<1−3−1>の純度99.7%の乾固物7.17gを、室温でアセトン72mlに完全に溶かした後、ヘキサン129.6mlを撹拌しながら10分間添加した後、4℃の温度下に12時間保管して再結晶を誘導した。12時間経過後、ろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセルは、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量が6.7g、純度99.8%、収率が93%の無水結晶形ドセタキセルを得た。
【0045】
1−4−2.アセトン:ヘキサン=1:2.0(v/v)
実施例<1−3−2>の純度99.6%の乾固物7.2gを、室温でアセトン72mlに完全に溶かした後、ヘキサン144mlを撹拌しながら10分間添加した後、4℃の温度下に12時間保管して再結晶を誘導した。12時間経過後、ろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセルは、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量が6.9g、純度99.8%、収率が96%の無水結晶形ドセタキセルを得た。
【0046】
1−4−3.アセトン:ヘキサン=1:2.3(v/v)
実施例<1−3−3>の純度99.7%の乾固物7.3gを、室温でアセトン72mlに完全に溶かした後、ヘキサン165.6mlを撹拌しながら10分間添加した後、4℃の温度下に12時間保管して再結晶を誘導した。12時間経過後、ろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセルは、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量が6.9g、純度99.8%、収率が94%の無水結晶形ドセタキセルを得た。
【0047】
<1−5>実施例1の結果の要約
実施例1の各工程別の純度および収率を、下表5に要約する。
【表5】
【0048】
実施例1の残留溶媒含有量を、下表6に記載する。
【表6】
【0049】
前記のように、半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィー、低圧逆相クロマトグラフィー、酸による濃縮、および再結晶の工程を行うことにより、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができ、さらに、残留溶媒含有量が医薬品残留溶媒基準より顕著に低く、抗癌剤として有用に使用できることが分かる。
【0050】
<実施例2>高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法II
<2−1>低圧順相クロマトグラフィー
半合成ドセタキセル0.6g(純度45%)を、ジクロロメタン3.2mlに完全に溶かして試料として用意した。シリカゲル60(63〜200μm)を充填したカラムを用いて、下表7の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。
【表7】
【0051】
試料注入から約40分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取し、温度45℃で減圧濃縮して、ドセタキセル分取液を濃縮した。濃縮が完了すると、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の量は0.34g、純度94%、収率は96%であった。
【0052】
<2−2>高圧逆相クロマトグラフィー
実施例<2−1>の乾固物0.34gを、メタノール2.7mlに完全に溶かした後、精製水1.1mlを添加して試料を用意した。疎水性樹脂オクタデシルシリカ(C18、20μm)を充填したカラムを用いて、下表8の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。
【表8】
【0053】
試料注入から約45分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した。
前記ドセタキセル分取液は105mlで、純度99.4%、収率は97%であった。
【0054】
<2−3>酸による濃縮(1%)
実施例<2−2>のドセタキセル分取液105mlに対して酢酸1.05ml(1%(v/v))を添加し、混合物を減圧濃縮した。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去してドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.2)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過した後に得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の量は0.25g、純度99.8%、収率は98%であった。
【0055】
<2−4>再結晶
実施例<2−3>の純度99.8%のドセタキセル0.25gを、室温でアセトン2.5mlに完全に溶かした後、ヘキサン2.75ml(アセトンの2.3倍)を撹拌しながら10分間添加した後、4℃の温度下に12時間保管して再結晶を誘導した。12時間経過後、ろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセルは、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量が0.22g、純度99.9%、収率は92%の無水結晶形ドセタキセルを得た。
【0056】
<2−5>実施例2の結果の要約
実施例2における各工程別の純度および収率を、下表9に記載する。
【表9】
【0057】
実施例2の残留溶媒含有量を、下表10に記載する。
【表10】
【0058】
前記のように、半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィー、高圧逆相クロマトグラフィー、酸による濃縮、および再結晶の工程を行うことにより、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができ、さらに、残留溶媒含有量が医薬品残留溶媒基準より顕著に低く、抗癌剤に有用に使用できることが分かる。
【0059】
<実施例3>高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法III
<3−1>低圧逆相クロマトグラフィー
3−1−1.メタノール:精製水=65.5:34.5(v/v)
半合成ドセタキセル0.6g(純度45%)を、メタノール4.8mlに完全に溶かした後、精製水1.2mlを添加して試料を用意した。オクタデシルシリカ(C18、100μm)を充填したカラムを用いて、前記表4の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。試料注入から約45分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した。
前記ドセタキセル分取液は120mlで、純度84%、収率は95%であった。
【0060】
3−1−2.メタノール:精製水=67.5:32.5(v/v)
半合成ドセタキセル0.6g(純度45%)を、メタノール4.8mlに完全に溶かした後、精製水1.2mlを添加して試料を用意した。オクタデシルシリカ(C18、100μm)を充填したカラムを用いて、前記表4の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。試料注入から約45分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した。
前記ドセタキセル分取液は105mlで、純度84%、収率は94%であった。
【0061】
3−1−3.メタノール:精製水=70:30(v/v)
半合成ドセタキセル0.6g(純度45%)を、メタノール4.8mlに完全に溶かした後、精製水1.2mlの精製水を添加して試料を用意した。オクタデシルシリカ(C18、100μm)を充填したカラムを用いて、前記表4の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。試料注入から約45分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した。
前記ドセタキセル分取液は85mlで、純度80%、収率は96%であった。
【0062】
実施例<3−1>を、下表11に要約する。
【表11】
【0063】
<3−2>酸による濃縮
3−2−1.酸による濃縮(0.5%)
実施例<3−1−1>のドセタキセル分取液120mlに対して酢酸0.6ml(0.5%)を添加し、混合物を温度45℃で減圧濃縮をした。減圧濃縮でメタノールを最大限除去することによりドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.2)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の量は0.27g、純度94%、収率は99%であった。
【0064】
3−2−2.酸による濃縮(1%)
実施例<3−1−2>のドセタキセル分取液105mlに対して酢酸1.05ml(1%)を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮でメタノールを最大限除去することによりドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.2)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の量は0.27g、純度94%、収率は98%であった。
【0065】
3−2−3.酸による濃縮(5%)
実施例<3−1−3>のドセタキセル分取液85mlに対して酢酸4.2ml(5%)を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去するとドセタキセル沈殿物の生成を誘導し、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.2)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の量は0.26g、純度92%、収率は98%であった。
【0066】
<3−3>高圧順相クロマトグラフィー
実施例<3−2>で収得した乾固物を、ジクロロメタン2mlに完全に溶かして試料として用意した。シリカゲル20μmを充填したカラムを用いて、下表12の運転条件によりクロマトグラフィーを行った。試料注入から約40分経過後、ドセタキセルの活性分液を分取した後、温度45℃で減圧濃縮を行ってドセタキセル分取液を濃縮した。濃縮が完了すると、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を1日間行った。
回収された乾固物の純度および収率を、下表13に記載する。
【表12】
【表13】
【0067】
<3−4>再結晶
実施例<3−3>の純度99.8%のドセタキセルを、下表14に記載されるように処理して、4℃の温度下に12時間保管して再結晶を誘導した。12時間経過後、ろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセルは、温度45℃、760mmHgの減圧下に真空乾燥を6日間行って無水結晶形ドセタキセルを収得した。
回収された乾固物の純度および収率を、下表14に記載する。
【表14】
【0068】
<3−5>実施例3の結果の要約
実施例3における各工程別の純度および収率を、下表15に記載する。
【表15】
【0069】
実施例3の残留溶媒含有量を、下表16に記載する。
【表16】
【0070】
前記のように、半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィー、酸による濃縮、高圧順相クロマトグラフィー、および再結晶の工程を行うことにより、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができ、さらに、残留溶媒含有量が医薬品残留溶媒基準より顕著に低く、抗癌剤に有用に使用できることが分かる。
【0071】
<比較例1>低圧順相クロマトグラフィーで一次精製後、低圧逆相クロマトグラフィーで二次精製した後、酸を添加せずに濃縮した場合
実施例<1−2>で得られたドセタキセル分取液中、70ml(ドセタキセルの量1.0g、純度99.4%)を、酸を添加せずに直ちに温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去するとドセタキセル沈殿物が生成され、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量は0.94g、純度88%、収率は80%であった。
【0072】
<比較例2>低圧順相クロマトグラフィーで一次精製後、低圧逆相クロマトグラフィーで二次精製した後、0.01%の酸を添加して濃縮した場合
実施例<1−2>で得られたドセタキセル分取液70ml(ドセタキセルの量1.0g、純度99.4%)に対して酢酸0.007ml(0.01%(v/v))を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去するとドセタキセル沈殿物が生成され、この沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量は0.90g、純度85%、収率は77%であった。
【0073】
<比較例3>低圧順相クロマトグラフィーで一次精製後、低圧逆相クロマトグラフィーで二次精製した後、20%の酸を添加して濃縮した場合
実施例<1−2>で得られたドセタキセル分取液70ml(ドセタキセルの量1.0g、純度99.4%)に対して酢酸14ml(20%(v/v))を添加し、温度45℃で減圧濃縮を行った。減圧濃縮によりメタノールを最大限除去するとドセタキセル沈殿物が生成され、前記沈殿物をろ紙(Whatman No.42)を用いて減圧ろ過した。減圧ろ過して得られたドセタキセル沈殿物は、温度45℃、760mmHgの減圧下で真空乾燥を6日間行った。
回収された乾固物の量は0.87g、純度85%、収率は72%であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13