【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
また、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、(c)(b)ステップのドセタキセルの二次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、および(d)(c)ステップの濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、(a)半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ、(b)(a)ステップのドセタキセルの一次精製後に得られるドセタキセル分取液に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)の濃度の酸を加えて、一次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ、(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ、および(d)(c)ステップの二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップを含む、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造する方法を提供する。
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
高純度無水結晶形ドセタキセルを製造するために、本発明の方法は、大きく3つで組み合わされた工程を含み、これにより、半合成ドセタキセルから純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。具体的には、
図1に示される半合成ドセタキセル試料の純度HPLC結果と、
図5、
図8および
図11に示される本発明の精製工程を経て製造された無水結晶形ドセタキセルのHPLC結果とを比較すると、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルが本発明の方法にしたがって製造されうることが分かる。
【0014】
特に、低圧または高圧逆相クロマトグラフィーを行った後に得られるドセタキセル分取液の精製効率を向上させるために、分取液は逆相クロマトグラフィーに含まれる不純物を除去するために酸を添加して濃縮されて、不純物の含有量が減少したドセタキセル沈殿物を形成する。
【0015】
分取液は、クロマトグラフィーによって得られるドセタキセルを含む分画物を意味し、その収得方法は当業者が容易に決定することができる。
【0016】
低圧は、これに限定されないが、好ましくは5psi〜1000psiであり、高圧は、これに限定されないが、好ましくは1500psi〜4000psiである。
【0017】
以下、本発明を、工程別により詳細に説明する。
【0018】
1.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I
(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
半合成ドセタキセルを、まず、低圧順相クロマトグラフィーで一次精製する。
低圧順相クロマトグラフィーを行う場合、これに限定されないが、好ましくは、炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類、炭素数1〜6の有機溶媒およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用されうる。炭素数1〜2のハロゲン化アルカン類には、ジクロロメタン、クロロホルムおよびその組み合わせが含まれ得、炭素数1〜6の有機溶媒には、メタノール、ベンゼン、アセトン、ヘキサン、エチルアセテートおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、アイソクラチック(isocratic)または段階溶出(step elution)方法を用いることができ、1.0%(v/v)〜20%(v/v)のメタノール/ジクロロメタン混合溶液(つまり、メタノール(v):ジクロロメタン(v)=1.0:99〜20:80)、より好ましくは2.5%(v/v)〜10%(v/v)のメタノール/ジクロロメタン混合溶液(つまり、メタノール(v):ジクロロメタン(v)=2.5:97.5〜10:90)を展開溶媒として使用することができる。
低圧順相クロマトグラフィーを行うために、当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得、好ましくは、カラムの充填剤として、シリカゲル60(63〜200μm)が使用され得る。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度94%程度に精製することができる。
【0019】
(b)一次精製されたドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(a)ステップで得られた純度90%以上のドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーで二次精製する。
低圧逆相クロマトグラフィーを行う場合、これに限定されないが、好ましくは、炭素数1〜3の有機溶媒、精製水およびその組み合わせからなる群より選択される展開溶媒が使用されうる。炭素数1〜3の有機溶媒には、炭素数1〜3のアルコール、アセトニトリルおよびその組み合わせが含まれ得、アルコールには、メタノール、エタノール、プロパノールおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、アイソクラチック(isocratic)または段階溶出(step elution)方法を用いることができ、30%(v/v)〜90%(v/v)のメタノール/精製水混合溶液(つまり、メタノール(v):精製水(v)=30:70〜90:10)、好ましくは60%(v/v)〜85%(v/v)のメタノール/精製水混合溶液(つまり、メタノール(v):精製水(v)=60:40〜85:15)を使用することができる。
低圧順相クロマトグラフィーを行うためには、当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得、好ましくは、カラムの充填剤として、通常の疎水性樹脂、例えば、63〜200μmのODS(Octadecylsilylated、C18)、C8またはC4を使用することができる。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度99.4%程度に精製することができる。
【0020】
(c)二次精製されたドセタキセルを濃縮するステップ
(b)ステップで得られた純度99.4%のドセタキセル分取液に酸を添加して、二次精製されたドセタキセルを濃縮する。
有機溶媒を除去するために酸で濃縮する場合、これに限定されないが、好ましくは35℃〜60℃、より好ましくは40〜50℃で濃縮することができ、濃縮時間は、1〜10時間であり得る。
酸には、これに限定されないが、好ましくは、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸およびその組み合わせが含まれ得る。(b)ステップで得られたドセタキセル分取液(aliquot)に対して0.05%(v/v)〜10%(v/v)、より好ましくは0.2%(v/v)〜5%(v/v)の酸を加えて濃縮することができる。
濃縮後、必要に応じて、生成物を減圧乾燥して乾固物を得ることができる。
本工程により、半合成ドセタキセル(純度45%)を純度99.5%以上に精製することができる。
【0021】
(d)濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)ステップで得られた純度99.5%以上のドセタキセルを再結晶して無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶溶媒には、これに限定されないが、アセトン、ヘキサンおよびその組み合わせが含まれ得る。より好ましくは、(c)ステップで得られたドセタキセルをアセトンに溶かした後、ヘキサンを添加させて再結晶することができる。アセトンは、これに限定されないが、好ましくは、ドセタキセルの濃度が1%(w/v)〜30%(w/v)となるように投与され得、ヘキサンは、アセトンの投与量の1倍〜10倍の容量で投与され得る。
【0022】
2.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法II
(a)半合成ドセタキセルを、低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
低圧順相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(a)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
【0023】
(b)一次精製されたドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(a)ステップで得られた純度90%以上のドセタキセルを、高圧逆相クロマトグラフィーで二次精製する。
高圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、圧力条件を除き、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(b)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。カラムの充填剤として、好ましくは、通常の疎水性樹脂、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜50μmのODS(Octadecylsilylated、C18)、C8またはC4などが用いられ得る。
本ステップにより、純度99.4%程度のドセタキセル分取液を製造することができる。
【0024】
(c)二次精製されたドセタキセルを酸を用いて濃縮するステップ
(b)で得られたドセタキセル分取液に酸を添加して濃縮する。
酸を用いる濃縮方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(c)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度99.7%以上のドセタキセルを得ることができる。
【0025】
(d)濃縮されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)で得られた純度99.7%以上のドセタキセルを再結晶して無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(d)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度99.8%以上の無水結晶形ドセタキセルを得ることができる。
【0026】
3.高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法III
(a)半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップ
半合成ドセタキセルを、低圧逆相クロマトグラフィーで一次精製することができる。
低圧逆相クロマトグラフィーを行って一次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(b)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度80〜84%程度のドセタキセル分取液を分離することができる。
【0027】
(b)一次精製されたドセタキセルを酸で濃縮するステップ
(a)で得られたドセタキセル分取液に酸を添加して濃縮する。
酸による濃縮方法は、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(c)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。
本工程により、純度90〜94%以上のドセタキセルを得ることができる。
【0028】
(c)濃縮されたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップ
(b)で得られたドセタキセルを、高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製することができる。
高圧順相クロマトグラフィーを行って二次精製するステップは、前記「高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法I」の(a)ステップに記述されたのと同様の方法で実施され得る。ただし、カラムの充填剤として、好ましくは、シリカゲル20μmが用いられ得る。
本工程により、純度99.5〜99.6%のドセタキセルを得ることができる。
【0029】
(d)二次精製されたドセタキセルを再結晶するステップ
(c)で二次精製されたドセタキセルを再結晶して、無水結晶形ドセタキセルを製造することができる。
再結晶方法は、前記1の(d)に記載されるように実施され得る。
本工程により、純度99.7〜99.8%以上の無水結晶形ドセタキセルを得ることができる。
【0030】
純度99.5%以上、収率77%〜88%の高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法に関する結果を、下表1に要約する。
【表1】
【0031】
ドセタキセルの純度および回収率は、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて測定することができ、好ましくは、下表2に記載のHPLC分析方法を用いて測定することができる。
【表2】
【0032】
本発明の高純度無水結晶形ドセタキセルの製造方法は、純度99.5%以上の無水結晶形ドセタキセルを製造することができ、さらに、残留溶媒含有量が医薬品残留溶媒基準より顕著に低く、抗癌剤として有用に使用できることが分かる。