特許第5912040号(P5912040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912040
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】虚像を表示する光学素子の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   G03B 35/00 20060101AFI20160414BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20160414BHJP
   G02B 27/22 20060101ALI20160414BHJP
   G03B 35/08 20060101ALI20160414BHJP
   G03B 35/18 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G03B35/00 A
   G02B3/00 A
   G02B27/22
   G03B35/08
   G03B35/18
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-517449(P2011-517449)
(86)(22)【出願日】2009年6月16日
(65)【公表番号】特表2011-527769(P2011-527769A)
(43)【公表日】2011年11月4日
(86)【国際出願番号】US2009047441
(87)【国際公開番号】WO2010005706
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年5月31日
【審判番号】不服2015-14967(P2015-14967/J1)
【審判請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】61/078,974
(32)【優先日】2008年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(72)【発明者】
【氏名】ゲイツ,ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マルティラ,チャールズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ポッツ,トラビス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウェッドゼルス,セルジェ
【合議体】
【審判長】 藤原 敬士
【審判官】 樋口 信宏
【審判官】 鉄 豊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−284726(JP,A)
【文献】 特開平4−30272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/00
G02B 3/00
G02B 27/22
G03B 35/08
G03B 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを表示するための虚像表示デバイスの製造方法であって、
前記オブジェクトに基づいて初期虚像フラックスパターンを計算する工程と、
前記初期虚像フラックスパターンに基づいて虚像アレイパターンを有する基板を製作する工程と、
前記基板を製作してから、複数のレンズを前記基板に付ける工程と、を含み、
前記初期虚像フラックスパターンを計算する工程が、i)前記オブジェクト上の異なるソース・ファセットによって生成される光線を像平面にバーチャルトレーシングすることと、ii)前記オブジェクトの各ソース・ファセットから、定められた立体角の全体にかけて複数の光線を発することと、iii)像平面における異なる場所で各ソース・ファセットからの光束を集計することと、iv)光束に関するグレースケールの二次元パターンを得ること、とを含む、方法。
【請求項2】
虚像素子の作製方法であって、
虚像パターンを有する虚像基板を形成する工程と、
前記虚像基板を形成してから、複数のレンズを前記虚像基板に近接して配置する工程と、を含み、
前記虚像パターンが、i)前記オブジェクト上の異なるソース・ファセットによって生成される光線を像平面にバーチャルトレーシングすることと、ii)前記オブジェクトの各ソース・ファセットから、定められた立体角の全体にかけて複数の光線を発することと、iii)像平面における異なる場所で各ソース・ファセットからの光束を集計することと、iv)光束に関するグレースケールの二次元パターンを得ることと、によって計算される、方法。
【請求項3】
前記虚像基板を形成する工程が、虚像マスターを作製することと、前記虚像マスターを使用して前記虚像基板を形成すること、とを含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を使用して1つ以上の合成画像を提供するオプティカルデバイスと、そのようなデバイスを作製する方法とに関するものであり、これらの合成画像は基板から離れて空中に浮いているように観察者に認知され、その合成画像の遠近感は視角とともに変化する。
【背景技術】
【0002】
グラフィック画像又は他のしるしを有するシーティング材料は、特に物品又は文書を認証するためのラベルとして、広く使用されている。例えば、米国特許第3,154,872号、同第3,801,183号、同第4,082,426号、及び同第4,099,838号に述べられているようなシーティングは、車のナンバープレートの証明シール、並びに運転免許証、公文書、音楽媒体、トランプ、飲料容器などのセキュリティーフィルムとして使用されている。他の使用としては、警察、消防その他の緊急車両などを識別するための、広告及び宣伝ディスプレイ内の、及びブランドの強化を提供する特色のあるラベルとしての、グラフィックの応用などが挙げられる。
【0003】
画像付きシーティングの別の形態は米国特許第4,200,875号に開示されており、そこには、結合剤層に部分的に埋め込まれておりかつその結合剤層より上に部分的に露出されている複数の透明ガラスのマイクロスフェアを、その複数のマイクロスフェアのそれぞれの埋め込まれた表面上にコーティングされる金属反射層と共に使用することが開示されている。画像は、マスク又はパターンを介したシーティングのレーザー照射によって形成される。画像は、レーザー照射がシーティングに向けられた角度と同じ角度からシーティングを見る場合にのみ見ることができる。したがって、画像は非常に限られた観測角にかけてのみ視認可能である。
【0004】
より広い観測角にかけて機能する浮遊画像シーティングを作製するための別の方法が米国特許第6,288,842号に開示されており、そこには、典型的には密にパックされて結合剤層に埋め込まれたマイクロスフェアのアレイが感光性材料の層に重なっている。画像は、パルスレーザで感光層に一度に1点の画像を書き込むことによってシートに書き込まれる。このプロセスには時間がかかり、費用がかさむ。加えて、浮遊画像の色は感光性材料の色又は感光層の周囲の材料によって決定されるので、画像の生成時ではなくむしろシートの製造時に設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、浮遊画像を表示しながらも同時に広い観測角を維持し、かつ浮遊画像での色の使用におけるフレキシビリティを増す、オプティカルシートの製造速度を向上し、かつその製造コストを削減する必要は尚、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、オブジェクトを表示するための虚像表示デバイスの製造方法を目的とする。この方法は、オブジェクトに基づいて初期虚像フラックスパターンを計算する工程と、次いでその初期虚像フラックスパターンに基づいて虚像アレイパターンを有する基板を製作する工程とを含む。次いで、複数のレンズをその虚像アレイパターンの上に適用することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、初期虚像フラックスを計算する工程は、オブジェクト上の異なるソース・ファセットによって生成される光線を画像平面にバーチャルトレーシングすることと、初期虚像フラックスパターンを形成するために、画像平面における異なる場所でオブジェクト上の異なるソース・ファセットからの光線を総和すること、とを含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、虚像素子を作製する方法を目的とする。この方法は、虚像基板を形成する工程と、次いで、虚像基板を形成した後にその虚像基板に近接して複数のレンズを配置する工程と、を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、オブジェクトを描写する虚像デバイスを作製するために使用される中間虚像マスクを作製する方法を目的とする。この方法は、オブジェクトに基づいて初期虚像フラックスパターンを決定する工程と、初期画像アレイパターンから派生される中間虚像パターンを有するマスクをパターン化する工程と、を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、オブジェクトの初期虚像フラックスパターンに対応するデータセットを生成するためにコンピュータを制御する方法を目的とする。この方法は、i)オブジェクト上の異なるソース・ファセットによって生成される光線を画像平面にバーチャルトレーシングする工程と、ii)初期虚像アレイパターンを形成するために、画像平面における異なる場所でオブジェクト上の異なるソース・ファセットからの光線を総和する工程と、を含む。
【0011】
本発明の別の実施形態は、オブジェクトを表示する方法を目的とする。この方法は、バーチャルオブジェクトから虚像パターンを計算する工程と、その虚像パターンを表示するためにレンズアレイの背後に配置される動的虚像基板を制御する工程と、を含む。虚像パターンがレンズアレイのレンズと整合されることにより、バーチャルオブジェクトの虚像を視認者にもたらす。
【0012】
本発明の別の実施形態は、VIパターンを決定する方法を目的とする。この方法は、レンズアレイを介してバーチャルオブジェクトからの光線をバーチャルトレーシングする工程を含む。
【0013】
本発明の別の実施形態は虚像表示デバイスを目的とし、このデバイスはレンズアレイと、このレンズアレイの背後に配置される静止虚像基板とを含む。虚像基板には、レンズアレイのレンズと整合された虚像パターンが提供される。虚像パターンはグレースケールの情報を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態は、オプティカルマスクデバイスを目的とし、このデバイスは、その上に基板及びパターンを有するオプティカルマスクを有する。そのパターンは、レンズアレイがマスクに適用されたときにオブジェクトの虚像が視認者に見えるように配列される。
【0015】
本発明の別の実施形態は、オプティカルマスクデバイスを目的とし、このデバイスは、その上に基板及びパターンを有するオプティカルマスクを有する。そのパターンは、虚像基板を製造するための情報を含む中間虚像パターンとして配列される。
【0016】
本発明の別の実施形態は虚像表示デバイスを目的とし、このデバイスはレンズアレイと、レンズアレイの後ろに配置される非動的虚像基板とを含む。虚像基板にはレンズアレイのレンズと整合された虚像パターンが提供され、虚像パターンは第1の色の第1のピクセルと、第1の色と異なる第2の色の第2のピクセルとを備え、虚像表示デバイスは第1の色及び第2の色を含む虚像を表示する能力を有する。
【0017】
本開示の上記の概要は、本発明のそれぞれの図示された実施形態又は全ての実施を説明しようとするものではない。図及び以下の詳細な説明がこれらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面と共に以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
図1A】浮遊画像及び沈下画像を表示するオプティカルシートを製造するための先行技術のアプローチを概略的に図示する。
図1B】浮遊画像及び沈下画像を表示するオプティカルシートを製造するための先行技術のアプローチを概略的に図示する。
図2】本発明の原理による虚像デバイスを作製する方法の工程を全体的な形式で示す工程図。
図3】本発明の原理による、初期虚像パターンを計算するために使用され得るようなコンピュータシステム全体を概略的に図示する。
図4A】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態で使用される光線トレーシングモデルを概略的に図示する。
図4B】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態で使用される光線トレーシングモデルを概略的に図示する。
図5A】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態を説明するフローチャート。
図5B】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態を説明するフローチャート。
図5C】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態を説明するフローチャート。
図5D】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態を説明するフローチャート。
図5E】本発明の原理による、虚像フラックスパターンを決定するためのアルゴリズムの実施形態を説明するフローチャート。
図6】本発明の原理によるフォトマスクを使用する虚像デバイスの製造工程を示す。
図7】本発明の原理によるVIデバイスの製作に使用され得るパターン化されたマスターの実施形態を図示する。
図8A】VI基板をリトグラフで製作するプロセス工程を概略的に図示する。
図8B】VI基板をリトグラフで製作するプロセス工程を概略的に図示する。
図8C】VI基板をリトグラフで製作するプロセス工程を概略的に図示する。
図9】本発明の原理によるVIデバイスの実施形態を概略的に図示する。
図10】本発明の原理による、動的基板を有するVIデバイスの実施形態を概略的に図示する。
図11】本発明の原理による、カラー虚像を示すVI基板の断面図を概略的に図示する。
【0019】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示されており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解すべきである。反対に添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の趣旨及び範囲内にあるすべての変更、等価物、及び代替物を網羅しようとするものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、浮遊画像を示すオプティカルデバイス及びこのデバイスの製造方法を目的とする。このオプティカルデバイスは、レンズアレイと連結されたときに表面の平面から離れて横たわっているように見える画像を表示する、表面上のパターンを含む。この画像は、「虚像」として知られている。虚像は、表面の平面より上又は表面の平面より下に浮いているように見えるコンポーネントを有することができる。デバイスの平面より下に見える画像のコンポーネントを指して、沈下していると言う場合もある。虚像は1次元のオブジェクトである場合も、2次元オブジェクトである場合も、3次元オブジェクトである場合もある。いくつかの虚像は、表面の平面より上及び下の両方に位置する複数のコンポーネントを有することができる。一般に受け入れられている虚像の別の名称は、「インテグラル画像」である。
【0021】
虚像は、例えば、パスポート、IDバッジ、催し物の入場券、アフィニティーカード、商品識別フォーマット及び広告販促における検証又は信憑性のためのタンパー防止画像として、ブランドの浮遊画像若しくは沈下画像、又は浮遊画像及び沈下画像を提供するブランド強化画像として、警察のバッジ、消防車又は他の緊急用車両のためのようなグラフィックアプリケーションにおける身分・識別証明提示画像として、キオスク、夜間電光表示、及び自動車ダッシュボードディスプレイのようなグラフィック用途における情報提示画像として、並びに業務用名刺、品質表示票、美術品、靴及びボトル製品のような製品上の合成画像の使用によるノベルティ強化としてなど、多様な用途に使用可能である。虚像製品のための用途のこのリストは、包括的であることを意図しない。
【0022】
虚像を表示するオプティカルデバイスを生産するためのこれまでのアプローチは、マイクロレンズアレイによって覆われた光学的に感応性の層に、レーザーを使用して画像情報を直接書き込むことに依存してきた。画像の形状は、マスクを使用して、又はシーティング材料に対して周りでレーザーを動かすことによって、生成される。これに対し、本発明では、レンズアレイを用いずに虚像パターンを含む基板を別途に調製しておいてから、それをレンズアレイと対にしてオプティカルデバイスを形成する。基板は、その基板上に形成されなくてはならない情報が何かをまず計算してからその情報を基板上に形成することによって調製される。情報は、印刷及びリトグラフィを含むがこれらに限定されない多くの異なる方法を使用して基板上に形成され得る。このプロセスは、複数のデバイス基板の大規模な同時調製を可能にし、各オプティカルデバイスがレーザー曝露によって別途に調製される現在のアプローチと比べて製造費を大幅に削減する。
【0023】
図1Aは、虚像を表示するオプティカルデバイスを製造するための先行技術のアプローチの一例を示す。結像される「オブジェクト」は、レーザーを使用して「オブジェクト」のアウトラインをレーザービームでトレーシングすることによって形成される。そのように記録される画像が合成アスペクトを有するようにするためには、「オブジェクト」からの光は広い角度範囲にわたって放射されなければならない。光がオブジェクトの単一点から来ており、広い角度範囲にわたって放射しているとき、それら全ての光線はそのオブジェクトに関する情報を運んでいるが、それはその単一点からのみの情報であり、にも関わらずその情報は、その光線のその角度の視点からのものである。光線によって運ばれるような、オブジェクトに関する比較的完全な情報を有するためには、光はオブジェクトを構成する点の集まりから広い角度範囲にわたって放射しなければならない。
【0024】
レーザー書き込みシステム100は、概してコリメートされた光104のビームを生成するレーザーユニット102を含む。レンズ106は、光104を焦点108に収束する。光学素子110は、焦点108の下流に配置される。光学素子110は、基板114内に部分的に埋め込まれたマイクロスフェア・レンズ112のアレイと、レンズ112の背後に配置された感光性材料116と、を含む。マイクロスフェア・レンズ112は、典型的には、15μm〜275μmの範囲の直径を有する。複数のマイクロレンズと関連付けられた感光性材料116に形成される個々の画像は、反射光又は透過光の下で観察者が見たときに、シーティングより上に、シーティングの面の中に、及び/又はシーティングより下に吊られている又は浮いているように見える合成画像を提供する。感光性材料は、金属材料、高分子材料、及び半導体材料、並びにこれらの混合物のコーティング及びフィルムを含む。所与のレベルの可視放射線に曝露された際に、曝露された材料の外観が変化して、その放射線に曝露されなかった材料との光コントラストを提供する場合、その材料は「感光性」である。いくつかの感光性金属フィルム材料の例は、アルミニウム、銀、銅、金、チタン、亜鉛、スズ、クロム、バナジウム、及びタンタルを含み、典型的には、金属の元来の色と、放射線曝露後の、すなわちアブレーションの結果としての、金属の変性された色との違いによるコントラストを提供する。
【0025】
よく発散する光の錐体を生成するために、レンズ106は高い開口数(NA,NA≧0.3以上)を有する。光の錐体の軸(光軸)118は、素子110の平面に対して垂直である。個々のマイクロスフェア・レンズ112のそれぞれが、光軸118に対して一意の位置を占めるので、各マイクロスフェア・レンズ112に到達する光は、他の全てのマイクロスフェア・レンズ112上の光の入射に対して一意の入射角を有する。したがって、光は各マイクロスフェア・レンズによって感光性材料層116上の一意の位置へと透過され、一意の画像を生成する。したがって、単一の光パルスは、材料層上に単一の結像されたドットのみを生成するので、各マイクロスフェア・レンズに隣接した画像を提供するためには、光の複数のパルスを使用して、複数の結像されたドットからその画像を作成する。各レーザーパルスに関して、レーザー102及びレンズ106がともに、及び/又は素子110が横方向に平行移動されることによって、光軸118は、前のパルスの中の光軸118の位置に対して素子110上の新しい位置に位置付けられる。マイクロスフェア・レンズ112に対する光軸の位置におけるこれらの連続した変化は、各マイクロスフェア・レンズ112への入射角における対応する変化と、その結果としての、そのレーザーパルスによって感光性材料116内に作り出される結像ドットの位置における変化と、をもたらす。結果として、マイクロスフェア・レンズ112の後側に集束する入射光は、選択されたパターンを感光層116に結像する。各レーザーパルスについて、各マイクロスフェア・レンズ112の位置は光軸118の位置に対して一意であるので、各マイクロスフェア・レンズ112に対して放射線感応性材料に形成される画像は他の全てのマイクロスフェア・レンズと関連付けられる画像と異なる。
【0026】
図示されている例では、素子110に書き込まれるオブジェクトは円である。実際には、光の焦点108は、素子110に対して円(破線)を描く軌跡120の周囲を移動する。その結果として素子に書き込まれる情報は、見られたときに円の虚像を生成する。見られる虚像が素子110より上に浮いて見えるようにするために、焦点108及びオブジェクトの両方がマイクロスフェア・レンズ112のアレイ及び基板114より上になるように、オブジェクトはレーザーレンズ106からの収束ビームの焦点108で書かれるように位置付けられる。図1Aに図示されている配列は、この配列を示す。
【0027】
見られる虚像が素子110より下に沈んで見えるようにするために、焦点108及びオブジェクトの両方がマイクロスフェア・レンズのアレイ112及び基板114より下になるように、オブジェクトはレーザーレンズ106からの収束ビームの焦点108で書かれるように位置付けられる。この配列は、図1Bに概略的に図示されている。
【0028】
書き込みの後、結像されている拡大されたオブジェクトのサイズに依存して、オブジェクトの全画像又は部分画像が、各マイクロスフェア・レンズ112の背後の放射線感応性材料の中に存在することになる。実際のオブジェクトが画像としてマイクロスフェア・レンズの背後に再生される程度は、マイクロスフェア・レンズ112に入射するエネルギー密度に依存する。拡大されたオブジェクトの部分は、マイクロスフェア・レンズ112の領域から十分な距離であり得るので、それらのマイクロスフェア・レンズ112へのエネルギー入射は、感光性材料116を変性するために必要とされる放射線のレベルより低いエネルギー密度を有する。更に、空間的な拡がりを有する画像では、NAが固定されたレンズで結像する場合、拡がったオブジェクトの全ての部分について、シーティングの全ての部分が入射放射光に曝露されるわけではない。結果として、オブジェクトのそれらの部分は、放射線感応性媒体において変性されず、オブジェクトの部分画像のみがマイクロスフェア・レンズの背後に現れる。
【0029】
更に、レーザー102からの光ビームは、典型的には、均一の強度プロファイルを有さず、むしろ強度が中央でより強く、それがレーザービームのエッジへ向かうにつれへ連続して下降する、プロファイルを有する。したがって、パターンを感光層116に書き込む能力は、この不均一性による影響を受けることになり、結果的な虚像の視角の低減につながる可能性がある。また、レーザービームのビームの形及び/又は何らかの非点収差も、虚像の視角の均一性に影響を及ぼし得る。例えば、視角の範囲は、書き込みレーザービームの断面軸にしたがった虚像において異なる。レーザービームのプロファイルが楕円形である場合、虚像の視角は楕円の長軸よりも楕円の短軸に平行な方向に沿って小さい。
【0030】
先行技術の方法と比べると、本明細書に記述されている、虚像を表示する光学素子を形成する新しい方法は、感光層にパターンを直接書き込むためにレーザーの使用に依存することがない。代わりに、光線トレーシングアルゴリズムを使用して、光源による層の照射をモデル化し、その結果得られる、層にわたる集合的フラックスプロファイルをパターンとして使用し、それに基づいて基板が物理的に実現される。このアプローチの光線トレーシングアルゴリズムは、光がいくつかの異なる波長から成る(例えば白色光が使用されている)、あるいは単一の波長から成る、と仮定することができる。直接書き込みでのレーザーの使用は、一方、ほぼ全てが単一の波長の使用に限定される。更に、書き込み波長は、虚像が見られる波長と同じである必要はない。例えば、虚像は、紫外線又は赤外線の波長を使用して画像がレーザー書き込みされていても、白色の周囲照明条件下で見ることができる。加えて、レーザーアブレーション書き込みプロセスの場合、感光層に焼き付けられるパターンはバイナリのパターンであり、感光性材料はそのままか、アブレーションされたかのいずれかである。一方、光線トレーシングアルゴリズムは、基板上の各点に到達するフラックスを総和し、グレースケールでデータを提示し、結果的により高い質の画像をもたらす。また、光線トレーシングアルゴリズムは、光ビームが均一の強度プロファイルを有すると仮定することができるので、上述のレーザー書き込みに伴う問題を回避する。
【0031】
本明細書に記述されているプロセスの特定の工程を取り上げて示す全体的なフローチャートを図2に示す。プロセスの第1の工程200は、光線トレーシングによって初期虚像(VI)パターンを生成する。次に、初期VIパターンを使用して虚像基板(VI基板)をパターン化するか(工程202)、テンプレートをパターン化(工程204)し、次にそれを使用してVI基板を生成する(工程206)。次に、レンズアレイをVI基板に付加して(工程208)、VI光学素子を形成する。
【0032】
図3は、本発明と共に使用するために好適であり得る典型的なコンピュータシステム300の線図を示す。このコンピュータは、1つ以上の中央演算処理装置(CPU)302と、メモリシステム304と、入力/出力(I/O)アダプタ306と、2次メモリストレージ308と、ネットワークインターフェイス310と、ユーザーインターフェイスアダプタ314と、ディスプレイアダプタ312とを含むことができる。これらのコンピュータ構成要素の全てはシステムバス315によって接続される。ディスプレイアダプタ312をディスプレイ316に接続して、データをユーザーに対して表示することができる。ユーザーインターフェイスアダプタ314は、キーボード、マウス、バーコードスキャナ又は同様のもののような、ユーザー入力装置318と接続することができる。コンピュータシステム300は、ネットワークインターフェイス310を介して、例えばローカルエリアネットワーク、広域エリアネットワーク、又はインターネットを介して、他のコンピュータと接続することができる。コンピュータシステム300は、異なる場所にある1つ以上のプロセッサを含むことができる。そのような場合、プロセッサは、ローカルエリアネットワーク、広域エリアネットワーク、又はインターネットのようなネットワークをつなぐ、入力/出力インターフェイスによってリンクすることができる。
【0033】
初期VIパターンを生成するために使用することができる光線トレーシングアルゴリズムの一例は、図4Aに概略的に示されているようなモデルを採用する。平行光ビーム402は、焦点距離fを有するレンズ404に入射する。レンズ404を通過した後、光は焦点406に集束してから発散する。オブジェクト408の表面の第1の点は、焦点406に直接位置付けられると仮定され、これは、レーザー及び集束レンズ404の好ましい配向によって達成される。光ビーム402の典型的であるが必要ではない配向は、レンズアレイ412及び基板414に対してその点で真っ直ぐ下に結像される配向である。結像される表面の周辺の点へは、それらの周辺点に順に集束し、基板414上に書き込み、焦点406が、空間におけるビームの配向を所望の角度に正しく維持しながらも異なる露出光パルス間の異なる点上に落ちるようなやり方で光ビーム402及びレンズ404を空間を通して移動することによって、アクセスする。
【0034】
オブジェクト408の下には、光学素子410があり、ここに虚像が書き込まれることになると仮定される。光学素子410は、典型的には、VI基板414を覆うレンズ412のアレイを含む。レンズ412のアレイは、任意の好適なタイプのレンズアレイであってよく、例えば、成形レンズアレイ又はマイクロスフェア・レンズのアレイである。また、レンズ412は任意の好適なパターンで配列されてよく、図の実施形態では、レンズは正方形のパターンで配列されているが、六角形のパターンのような他のパターンで配列されてもよい。
【0035】
光線416はオブジェクト408の表面の様々な点から基板414へとトレースされる。光線トレーシングアルゴリズムを実施するための1つの方法は、オブジェクト408を通して、x−y面に平行な、一連の水平スライス418を構築することである。各スライス418のエッジに沿って、光源を表現する一式のソース点が形成される。その一式にあるソース点を所望の任意のやり方で離間配置して、スライス418の十分に良好な解像度の画像を生成することができる。各スライス418のエッジに沿った一式のソース点の創出は、オブジェクト408の表面を表現する一式のファセットを有効に確立する。例えば、各ソース点は、表面表現アルゴリズムで一般に行われるように、他の三角形のファセットの近隣のソース点と接続されているオブジェクト408の表面上の三角形のファセットの中心であると考慮され得る。スライス416が水平であることは必須ではなく、事実、各ソース点がオブジェクト408の許容可能な再生画像を生成するために十分に小さいファセットを表現する限りは、表面はどのように分割されてもよい。ファセットは三角形と考慮される必要はなく、任意の周辺形が可能である。
【0036】
図のオプティカルモデルの実施形態では、光線416は、オブジェクトの全てのスライスのエッジの周囲のソース点から生じる、フラックスが基板414で総和されて、オブジェクト408によって生成される合計フラックスパターンが得られるまで、第1のスライス418のエッジの周囲、次いで第2のスライス418のエッジの周囲に、というふうに順に、エッジの周囲の連続的ソース点からトレースされる。
【0037】
図4Aに示されるモデルから生じる3D虚像は、透明のオブジェクト408から作製されている。すなわち、オブジェクト408をトレースする光線は、オブジェクトの表面上の各ソース点について独立して作用し、他のオブジェクト及びそれらのソース点の存在を無視して、効果的にそれらを透明に見せる。表現される全てのオブジェクトはソース及びそれらの特性によって画定されるので、このオブジェクトも透明である。
【0038】
光線トレーシング法はまた、固体オブジェクトの3D虚像を形成するためにも使用することができるが、これについて図4Bを参照して説明する。普遍性の損失を伴わずに、オブジェクト408は、レンズ412のアレイより完全に上にあると仮定される。いくつかのアルゴリズムでは、対応する各ソース点は定められた立体角の全体にかけて複数の光線を発すると考慮され、各光線がレンズのアレイを通してトレースされた後、各光線の寄与分が適切に総和される。しかし、3Dオブジェクト428を表現するときは、オブジェクトの表面周辺の範囲内にある定められた立体角の部分に向けてソースが発光することは可能でなく、このため、固体オブジェクト428を通過しない光線426のみが基板414にて入射する。この状態は、考慮されているソース点で直ちに生じることができ、例えば、ソース点がオブジェクトの1つの側にある場合、立体角の発光錐体の部分はそのオブジェクトの内側にあることになり、除外される。この状態はまた、考慮されているソース点から距離を開けて生じる場合もあり、例えば、ソース点から発している光線が、別の点を表現する第2のファセットに当たった場合である。これは、例えば、第1のファセットが発する光線の視線内に第2のファセットが位置するようなやり方でオブジェクトの表面が湾曲している場合に生じる可能性がある。3Dオブジェクト428を正確に表現するためには、他のファセットと交差する、1つのファセットから生じる光線を排除することが望ましい。発された光線の視線の範囲内にファセットが位置する場合は、その光線はそれ以上考慮されない。ファセットが発された光線の視線の範囲内に位置しない場合は、その光線は透明のオブジェクト408の場合で考慮されるのと同じように考慮される。結果として、オブジェクト428の隠されている表面、すなわち、発光錐体の角度のセットの範囲内でレンズのアレイから見えない表面は、結像されない。
【0039】
ここで、あるオブジェクトからの光線を基材にトレーシングするために使用することができるアルゴリズムの一例について、図5A〜5Eに表されているフローチャートを参照して説明する。データファイルの初期設定は第1の工程(工程500)であり、焦点406の位置及び回転角を含む(回転角は、レーザー集束レンズからの中央ビームの配向の記述であり、任意の便利な角度配向のシステムで記述され得る。その一例は、z軸周りのヨーを記述し、次いでx軸周りの転がりを記述し、次いでy軸周りのピッチを記述するオイラー形式である)。回転角によって記述される配向が垂線から垂線外へとなるように視角にバイアスを与えるためにビームの配向を操作することができる。データファイルの終わりに到達したことを確認するためにチェックが行われ(工程502)、回転マトリックスが生成される(工程504)。回転マトリックスは、空間における初期配向におけるベクトルから空間における最終的なベクトルの配向への回転を達成する伝達関数である。回転マトリックスは、多くの方法で実施され得る。上述のオイラー形式によれば、この例の回転マトリックスは3×1のベクトルを第1の配向から第2の配向に回転する3×3のマトリックスを記述する。工程502でデータファイルの終わりに達したことが決定されたら、工程506でアルゴリズムは終了する。
【0040】
この実施形態では、主座標系はレンズアレイ412の下側に固定された原点を有し、z軸は図示されている方向に、レンズアレイに対して垂直に上方を指している。レンズアレイ412はx−y面に対して平行に置かれており、x軸は典型的にはレンズアレイの中央軸に沿って、レンズ中心の1つを中心に設定され、続いて他のレンズの中心を通る。そのような座標系が便宜上選択されているが、x軸の他の可能な選択肢もある。回転マトリックスに使用される座標系は、その時点で考慮されている焦点にあるその原点とともに平行移動されたものであり、次いで、それを使用してレーザービームの配向を記述する。レンズの高さとは、レーザー集束レンズ404とレンズアレイ412の基底すなわち基板414の頂上との間の垂直距離を指す。レンズアレイ412に適用される用語であるレンズの高さは、レンズアレイのレンズの厚さを意味する。
【0041】
工程508で、レンズアレイ412の基底に対する焦点406の位置に基づいて、入射光416が収束しているか発散しているかの決定がなされる。光が収束している場合は、次いで、焦点406とレンズアレイ412の基底との間の距離の規模が、レンズ404の焦点距離に対して試験される(工程510)。その距離が焦点距離より大きい場合は、エラーが宣言される(工程512)。その距離が焦点距離より小さい場合は、焦点距離と焦点の位置の規模との差が計算される。その差がレンズアレイ412の高さ未満である場合は、焦点はレンズアレイ内に位置付けられ、エラーが宣言され(工程516)、プロセスは終了され得る(工程518)。工程508で光が発散していると決定された場合は、焦点のz位置がレンズアレイ412の高さと比較される。その高さがレンズアレイ未満である場合は、焦点はレンズアレイの内側であり(工程516)、プロセスは停止される。
【0042】
工程522で、x、y、及び錐体半径の初期光線条件が、そのレンズ404の位置での光線について設定される。工程524〜528は、考慮される光線の数のためのループを制御する。工程524で、光線指数カウンタが初期化され、工程526でインクリメントされる。工程528で決定された光線指数カウンタが最大値に達していたら、アルゴリズムは工程500に戻る。レンズ404での光線についてランダムな開始位置を決定するために、2つの乱数を選択することによって光線が生成される。例示のアルゴリズムでは、光線の開始位置はレンズの面積にわたって均一に分布されており、これは、照明強度がレンズにわたって均一であると仮定されているという事実を表している。他の照明強度プロファイルを使用してもよい。その光線について、非回転方向のベクトルが計算され(工程532)、次いで、回転方向のベクトルが計算される(工程534)。これらの用語「非回転」及び「回転」は、空間における光線の配向前と配向後の状態を指し、光線は概して、トレースされるための準備として回転されるので、これは必要な区別である。ランダムに生成された、トレースされる光線は、最初はz軸に対して平行かつ基板414の平面に対して垂直に配向されていると想定される。i)レーザー自体の任意の固有の傾斜及びii)レーザーレンズ404によって形成された錐体内の光線の特定の配向の両方を考慮するために、それらの光線は再配向される。
【0043】
光線の配向は、光源及びレンズ404か、又は光線自体のみかのいずれかとして考慮され得る。素子410に入射するときに光線416が収束している場合は、レーザー焦点は基板平面より下に位置する。レンズ412のアレイの存在は光線416の焦点406の位置に影響を与え、レンズ404のみから生じる焦点が光線416の配向のための回転中心として使用されることを防ぐ。代わりに、レンズ404自体を使用して光線416を配向することができる。素子410に入射するときに光線416が発散している場合は、焦点406は素子410より上に位置しており、レンズアレイ412の存在は焦点406の位置に影響しない。この場合、光線を配向するための回転中心として焦点406を使用することができる。この場合、当然、光源及びレンズ404の配向の別の可能性も機能する。結果的に、工程536で、レンズ404で入射光線が収束しているか発散しているかが決定される。光線が収束している場合は、ソースの位置が回転される(工程538)。
【0044】
アルゴリズムは、光線416がそのレンズによって結像され得るように所与の光線416が交差することになるのがアレイ412のどのレンズかを見出す。まず、レンズアレイが置かれていない状態で光線416が基平面とどこで交差するかを見出すための計算が実行される(工程540)。基平面はレンズアレイ412の下面であり、レンズアレイ412が基板414上に位置付けられている場合は基板414の上面でもある。中程度の傾斜角で素子410に到達している光線416については、この位置は通常、正しいレンズのフットプリントの範囲内にある。したがって、アルゴリズムは、どのレンズ内に光線416が落ち(工程542)、その光線がレンズのどこで交差するかを見出す(工程544)。そのレンズレットと光線との交差点を見出すための式は、正のz交差値(正しいレンズ)又は正でないz交差値(誤ったレンズ)のいずれかを示すが、これは工程546で試験される。工程546が正でないz交差値を見出した場合は、光線416は、かなり傾斜しているので、レンズの最上部に沿った水平面との光線の交差点を見出すために、試みがもう一度なされる(工程554及び556)。この第2の試みは、レンズの屈折率を使用して(工程554)光線416がレンズとどこで交差するかを決定すること(工程560)を含む。次いで、工程546と同じやり方でその交差点の真下のレンズが試験される(工程558)。光線416とそのレンズとのz交差が正であれば、光線416と交わっている正しいレンズは見出された。z交差がなお負であれば、それは正しいレンズではない。その場合は、グレージング光線条件が宣言され、プログラムは停止され得る。
【0045】
レンズとの正のz交差を有する光線416について、アルゴリズムはその交差点でレンズに対する垂線を計算し(工程548)、次いで、レンズの内側の光線の屈折方向及びフレネル透過係数を見出す(工程550)。
【0046】
レンズ内を移動する光線416は、その下に位置する基板414との境界面であるその基底へと投影される(工程562)。次いで、アルゴリズムは、レンズから基板へと通過した後の光線の方向(工程564)及びフレネル透過係数を計算する。次いで、光線は基板内で、基板の下側へと投影され(工程566)、ここで光線は終了すると仮定される。工程566の投影の部分は、光線が基板414とレンズアレイ412との間の境界面で終了する場合は省かれる場合がある。レンズから基板へと通過する光線について、フレネル透過係数の合計が計算される(工程568)。フレネル調製された光線と関連付けられるフラックスが基板のその面積(ピクセル)に追加される。次いで、アルゴリズムは工程526に戻り、所望の数の光線が考慮されるまで、光線指数カウンタをインクリメントし、新しい光線の投影を始める。
【0047】
アルゴリズムからの最終出力は、基板にわたる入射フラックスの変化を示すフラックスマップである。このプロファイルは計算上のVIフラックスパターンと呼ばれ、従来のレーザー書き込みのアプローチで虚像を書き込む光のプロファイルに相当する。しかし、この計算上のVIフラックスパターンは、いくつかの面でレーザー書き込みのパターンと異なる。第1に、計算上のVIフラックスパターンは任意の所望の波長又は波長の組み合わせを許容することができる。レーザー書き込みのパターンは、書き込みに使用されるレーザーの単一の波長で書き込まれる。第2に、任意のピクセルに関する計算上のフラックスは広範なユニットフラックスを網羅することができる。これは、材料のアブレーションに十分なフラックスか材料のアブレーションに不十分なフラックスという2つの可能な値のフラックスのみが記録される、アブレーションレーザー書き込みデバイスと対照的である。したがって、このグレースケールのフラックスパターンでは、より高い解像度の画像が可能である。
【0048】
それ故に、いくつかの実施形態では、計算上のVIフラックスパターンは、VI基板の製造における任意の好適なプロセスを命令するための入力として使用され得る、あるいは、VI基板の形成に使用する前に分析及び変換される初期データセットとして使用され得る。VI基板は多くの異なる方法で製造され得る。例えば、VI基板は、VIパターンを基板上に印刷することによって形成され得る。そのような場合の基板は、紙、ガラス、ポリマーシート、半導体、布、及び同様のもののような、印刷に好適な任意の材料で作製され得る。
【0049】
他の実施形態では、基板に動的VIパターン、すなわち基板上に恒久的に書き込まれたパターンでなく変更可能なパターンを、提供することができる。そのような場合に使用可能な基板の例としては、液晶表示(LDC)パネル及び発光ダイオード(LED)アレイが含まれる。これらの実施形態では、VIパターンは、LCDパネル又はLEDアレイによって表示される画像を制御するための命令の形態で基板に提供される。動的VI表示は、標識、広告、及び同様のもののために特に有用であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、計算上のVIフラックスを複製ツールの形成のための基礎として使用することができ、それを基にVI浮遊画像デバイスの複数のコピーを作製することができる。そのような複製ツールの一例はフォトマスクであり、これをリトグラフ手順又はリフトオフ手順に使用して、VI基板を製造することができる。他の実施形態では、VIフラックスをVI基板の製造のための命令を生成するために直接使用することができる。
【0051】
VIデバイスの異なるサイズを、異なるタイプの複製ツールを使用して複製することができる。例えば、VIデバイスが比較的大きい場合、後にVI基板を作製するために使用される複製ツールの作製に利用可能な様々な技法がある。複製ツールは、任意の好適な技法を用いて作製することができる。複製ツールを製造するためのアプローチの一例は、ダイヤモンドミリングのような従来の工作機を使用することである。別の例は、急速プロトタイピングである。急速プロトタイピングは、2光子法及びレーザー重合のような多様な方法を含む。複製ツールを使用して、成形、鋳造などのような任意の好適な方法によってVI基板を製造することができる。
【0052】
様々な技法を用いてVI基板を直接、製造することもまた可能である。例えば、ダイヤモンドミリング又は急速プロトタイピングのような、複製ツールの製造に使用可能ないくつかの技法を用いてVI基板を直接、製造することができる。VI基板を形成するためのその他の技法としては、印刷(カラー印刷を含む)、鋳造(マイクロレプリケーションを含む)、エンボス加工、及び成形が含まれるが、これらに限定されない。VI基板は透過性でも反射性でもよい。
【0053】
スケールが小さい場合は、より小さい特徴を作製するために応用可能な技法(例えばリトグラフ法)を用いてVI基板を作製することが可能である場合がある。リトグラフ法は、典型的には、基板のコーティング上のパターンを露出するために使用される、フォトマスクのようなマスクの形成を含む。マスク上のパターンは計算上のVIフラックスパターンから決定され、任意の好適な方法を用いてマスク上に形成され得る。例えば、フォトマスクのようなマスクは、レーザー書き込み、2光子プロセス、又は電子ビーム書き込み若しくは他のプロセスを使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、マスクは振幅フォトマスクである。振幅フォトマスクの1つの一般的な例は、シリカ基板上のCr層に形成されるパターンを使用するが、他の遮光層及び他の基板材料を使用してもよい。例えば、金、銀、ニッケル、及びチタンのような他の金属層を遮光層として使用してもよい。他のタイプの金属もまた好適であり得る。他の好適な基板材料としては、ガラス、シリコンカーバイド、サファイア、又は他の透明な金属酸化物、フッ化カルシウム又はフッ化マグネシウムのような金属フッ化物、結晶質又は溶融石英のような、他の無機材料などが挙げられる。
【0054】
典型的には、マスクは、フォトレジストのような感光層にパターンを形成するために使用されるが、コンタクトリトグラフィ又はプロジェクションリトグラフィにも使用され得る。フォトレジストパターンを露出した後、フォトレジストは、通常、現像され、露出又は未露出のエリアのいずれかが取り除かれる。フォトレジストのパターンをエッチングによって下層に平行移動してもよく、あるいはパターン化されたフォトレジストが、マスク自体のマスキング層を形成してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、マスクを使用して、基板上にバイナリのパターンを書き込む。バイナリパターンは、基板にわたり2つの値のうちの1つを取るプロパティを有する下層基板を結果としてもたらすパターンである。プロパティは、高さ、光透過率など、任意の適切な特性であってよい。一例では、パターン化された金属層は、金属が存在する領域で0%の透過率を示し、金属がない場所で高い透過率を示すことができる。他の実施形態では、マスク、又は異なるパターンを有する複数のマスクを使用して、グレースケールのパターン、すなわち基板にわたって2つを超える値を取ることができるプロパティを有するパターン、を有する基板を形成することができる。例えば、基板上の金属層にパターンが書き込まれる場合、基板にわたって2つだけの値でなく複数の値を有する光吸収率を金属層が示すように、一連のマスクを用いて金属層の異なる部分を異なる深さにエッチングすることができる。
【0056】
他の実施形態では、計算上のVIパターンを、振幅マスクでなく相マスクを製造するためのベースとして使用し、後にVI基板をリトグラフィで製造することができる。
【0057】
他の実施形態では、VI基板は、マスクを形成するために使用されるような技法を用いて直接製造され得る。例えば、レーザー書き込みプロセスか、電子ビーム書き込みプロセスか、又は2光子プロセスを使用して、VI基板を形成することができる。いくつかの実施形態では、VI基板はマスクであってよい。
【0058】
色は、様々な方法でVI基板に導入され得る。1つの方法では、VIパターンはVI基板上にカラー印刷される。リトグラフ法では、異なる色層を基板に適用して、順にパターン化することができる。例えば、基板に、異なる色の層の積層を提供することができる。層の異なる部分をパターン化して、下層の異なるエリアを露出することができる。これは図11に概略的に図示されており、図のデバイス1100は基板1102と4つの色層1104〜1110とによって形成されている。例えば、色層1104〜1110は、マジェンタ1104、黄色1106、シアン1108、及び黒1110の層を含むことができる。この実施形態では、最も上の色層1104が最初にパターン化されて、下層1106〜1110の色を見せることが望まれる露出エリア1112を作り出す。次に、第2の層1106が、その露出されたエリア1112内でパターン化されて、下層1108、1110の色を見せることが望まれる露出エリア1114を作り出す。最後に、第3の層1108が、その露出されたエリア1114内でパターン化されて、最も下の層1110を見せることが望まれる露出エリア1116を作り出す。
【0059】
別のアプローチでは、単一の色層を基板上に蒸着してからリトグラフでパターン化することができる。次いで、第2の色層を、そのパターン化された第1の色層の上に蒸着し、第2の色層をリトグラフでパターン化することができる。次いで、第3の層及び後続の層を、パターン化された色層の積層を構築するプロセスで順に蒸着及びパターン化することができる。最終的なVI基板は、図11に図示されているデバイス1100と類似した見た目であり得る。
【0060】
色層は、任意の好適な技法を用いて形成することができる。一実施形態では、色層は、薄膜積層物を備えることができ、個々の薄膜の厚さは、積層物が所望の色の範囲にかけて光を反射するように選択される。積層物は無機膜の積層物でも高分子膜の積層物でもよい。膜積層物を使用する実施形態では、膜の厚さは積層物の全体にかけて均一であっても、あるいは積層物の全体にかけて膜の厚さが勾配を有していてもよい。後者の場合、積層物の領域の色は、その領域を所望の深さまでエッチングすることによって変化され得る。別の実施形態では、色層は、所望の色をもたらす顔料又は染料を含有する層であってよい。他の実施形態では、色層は色カラープルーフ膜を含むことができる。
【0061】
別の実施形態では、パターン化された色層は、基板の表面上のカラーポリマー層の蒸着によって、及びそのカラーポリマー層の様々な領域を感光性樹脂にすることによって、形成され得る。例えば、染料又は顔料を含有する感光性樹脂を基板上にスパンし、得られたポリマー層をマスクを通して露出して、層の特定の領域を感光性樹脂にすることができる。次いで、未露出の領域を取り除き、第1の感光性樹脂層と異なる色の第2の感光性樹脂層を蒸着し、第2のマスクを用いて露出することができる。このプロセスを、所望の数の色層が基板上に形成されるまで繰り返すことができる。完成したVI基板は、図11に図示されているデバイス1100と類似した見た目であり得る。
【0062】
色層は不透明又は透明のVI基板上に形成され得るものと理解されたい。いくつかの実施形態では、色層は光を反射するためにパターン化される。他の実施形態では、色層は、VI基板を通して透過される光をフィルタするための透過フィルタとして作用する。
【0063】
基板を形成するためにマスクが使用される若しくは複数のマスクが使用される場合、そのマスクパターンは最終的なVI基板を製作するための中間工程で使用されるので、そのマスク上のパターンを中間VIパターンと呼ぶことができる。
【0064】
基板は、ガラス、半導体、ポリマー、金属、無機化合物など、任意の好適な材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、VIデバイスは反射において動作するので、基板は不透明であってよい。そのような場合、他の材料のほかに、VI基板に、金属及び半導体材料を使用することができる。他の実施形態では、VIデバイスは透過において動作し、この場合、基板は可視光に対して低吸収性を示すことが好ましい。そのような場合、ポリマー、ガラス、及び他の透明の無機材料を使用することができる。好適なガラスの例としてはBK7ガラス及び石英が挙げられるが、これらに限定されない。好適な半導体の例としてはシリコンが挙げられるが、これに限定されない。好適なポリマーの例としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられるが、これに限定されない。好適な無機材料の例としてはニッケル及び鉄が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
レンズアレイに使用されるレンズは、概して、画像の形成を生じさせるために画像形成屈折面を有し、これは典型的には曲面レンズ表面によって提供される。レンズに曲面を使用する場合、レンズは典型的には均一の屈折率を有する。勾配屈折率(GRIN)材料のような他の有用な材料は、光を屈折させるために曲面を必ずしも必要としない。レンズの表面は元来球面であっても、非球面であっても、あるいは球面と非球面の両方のコンポーネントを含んでいてもよい。更に、レンズアレイの全てのレンズが同一の焦点距離に制限されることはなく、いくつかのレンズが他のレンズより長い又はより短い焦点距離を有していてもよい。複数のレンズは、実像が屈折面によって形成されるという条件の下に、円筒又は球などのいずれかの対称性を有してもよい。レンズ自体は、円形平凸レンズレット、円形両凸レンズレット、ロッド、マイクロスフェア、ビーズ、又は円筒レンズレットなど、別個の形態のものであってもよい。レンズが形成されることができる材料には、ガラス、ポリマー、鉱物、結晶、半導体、並びにこれらの及び他の材料の組み合わせが挙げられる。別個になっていないレンズシートを使用してもよい。したがって、複製又はエンボス加工プロセス(この場合、シーティングの表面は形状を変更され、結像している特性を有する繰返しのプロファイルを生成する)から形成されるレンズもまた使用され得る。
【0066】
可視線及び赤外線波長にわたり約1.4〜3.0の均一な屈折率を有するレンズが一般的には使用される。好適なレンズ材料は、レンズに使用される材料の厚さに対して可視光線の低吸収を示すものであろう。
【0067】
約8μm〜150μmの範囲の半径を有する球体レンズが使用可能であるが、他の半径を有するレンズを使用してもよい。レンズ層から比較的短い距離で離れて見えることになる合成画像については、前述の範囲の下限値に近い半径を有するレンズを使用することによって、及び、レンズ層からより長い距離で離れて見えることになる合成画像については、より大きいレンズを使用することによって、良好な合成画像の解像度を得ることができる。
【0068】
VI素子で使用されるレンズは、レンズとして動作するために十分に透明である任意の好適な材料で形成され得る。一般的なレンズ材料としては、ポリマー及びガラスが挙げられるが、他の材料を使用してもよい。レンズを基板に個別に適用することができるが、概して、レンズをシート形状で基板に適用することによって製造時間及びコストが削減されることが理解される。しかし、下層のVI基板にレンズの位置を固定するための任意の好適な方法が使用可能である。多くの場合、レンズは基板に直接に適用され得るが、これは必ずしも必須要件ではない。しかし、この位置付けプロセスにおいてレンズを確実に下層のVI基板上のピクセルと整合することは重要である。
【0069】
そのための1つのアプローチは、上述のように、レンズシートをVI基板に接着することである。そのような場合、接着層は光学的に透明であり得るが、その接着剤はいくらかの所望の効果を提供する添加剤を含有することができる。例えば、特定の色付け効果が望まれる場合、接着剤は染料又は顔料を含有することができる。別のアプローチでは、例えばレンズシート及び基板を加熱ローラーに通過させることによってレンズシートを基板にラミネートすることができる。別のアプローチでは、レンズアレイを鋳造によって、言い換えれば、レンズの形を基板上に成形しながら流体層を硬化する又はさもなければ固化することによって、基板上に形成することができる。このアプローチは、例えば低融点ガラス及び熱硬化性ポリマーのような成形可能な材料では特に好適である。
【0070】
VI素子900の一実施形態の断面が図9に概略的に図示されている。VI素子900は、VI基板902と、基板902上のレンズアレイ904とを含む。VI素子900をユーザーが見たとき、ピクセルAにて入射光のいくらかは十分に大きい角度で反射されて、ピクセルAではなくその隣のピクセルBの上にあるレンズ素子908を通ってレンズアレイを出る場合がある。このクロストークは、観察される画像の解像度に悪影響を及ぼし得る。レンズ906間すなわち個々のレンズ素子908のカスプ間の最小高さは、基板表面910からの高さh1を有する。基板表面910の上のレンズ素子908の最大高さはh2と定義される。ピクセル間のクロストークを低減するための1つのアプローチは、h1対h2比を下げることである。h1の値が非常に小さいレンズシートは、薄いシートであるために傷つきやすい可能性がある。しかし、基板の表面にレンズアレイを鋳造することで、小さい値のh1対h2比を達成し得る。いくつかの実施形態では、h1対h2比は50%未満であり、他の実施形態ではh1対h2比は25%未満であり、他のアプローチではh1対h2比は10%未満である。
【0071】
追加的な層を所望により基板の下に、又は基板とレンズアレイの間に、又はレンズアレイの上に含めることもできると理解されたい。例えば、カラーフィルター又は偏光フィルターの層をVI素子に含めることができる。
【0072】
他の実施形態では、VI基板は、静止しているすなわち動的でない基板に恒久的に書き込まれたVIパターンでなく動的基板、すなわち時間と共に変化するVIパターンを示す基板であり得る。したがって、VIデバイスは異なる画像を表示することができ、かつ動画を表示することさえもできる。動的VI基板の1つのタイプは、多数の個々にアドレス可能な、プログラム可能な、素子を含むものである。動的VI基板の例としては、液晶表示(LDC)パネル及び発光ダイオード(LED)アレイが含まれる。動的VIデバイス1000の一実施形態を図10に概略的に図示する。デバイス1000は動的基板1002と複数のレンズ1004とを含む。上述の実施形態と同様に、複数のレンズ1004は個々のレンズとしても、あるいは例えばシートの形状をした一体化されたレンズアレイとしても提供され得る。VIパターンは動的基板1002にコントローラ1006から命令の形態で提供されて、動的基板によって表示される画像が制御される。本明細書で動的基板1002のスーパーピクセルと称される異なるエリア1008は、それぞれのレンズ1004と関連付けられる。各スーパーピクセル1008は、動的基板1002の個々にアドレス可能な素子を1つ以上含むことができる。例えば、各レンズ1004は、動的基板1002のアドレス可能な素子の10×10アレイを含むスーパーピクセルと関連付けられ得る。したがって、それらの10×10のアドレス可能な素子を個々に制御して、特定のレンズ1004と関連付けられるフラックスパターンを近似する(approximate)ことができる。動的VIディスプレイは、看板、広告など比較的大規模の用途で特に有用であり得る。
【実施例】
【0073】
実施例1.計算上のVIフラックスパターンに基づくフォトマスクの生成
モデル化されたすなわち計算上の素子的な画像の特徴を含むビットマップファイルを上述のアルゴリズムを用いて生成した。グレースケールであるこのファイルの特徴を、まず、フォトリトグラフマスクを生成するためにバイナリに変換した。Adobe(登録商標)Photoshop(登録商標)CS3(Adobe Systems Incorporatedより入手可能)を使用して、このビットマップをグレースケールに変換し、画像解像度をモデル出力の計算上の解像度(この場合は5000ピクセル/cm)と一致するように設定した。変換中のファイルサイズの管理を助けるために、モデル出力ではピクセルサイズとして2μm(5000ピクセル/cm)を使用した。Bicubic Smootherアルゴリズムを使用して、10,000ピクセル/cmの最終解像度に画像を再抽出した。次いで、ガウス型ぼかしフィルタを0.7〜1.5ピクセルの値で適用した。高い複雑度のVIでは、より鮮鋭な線を生成するためにアンシャープマスクのフィルタ.ルーチン(40%、3〜5ピクセル)を使用することができ、150〜200の値で閾値フィルタをデータに適用することができる(実際の値は画像の複雑度によって決定した)。最後に、ファイル圧縮率を10に設定して画像をjpegタイプのファイルとして保存した。
【0074】
jpegファイルをマスクレイアウトのファイルフォーマットに変換するために、ACE Translator 2007(カリフォルニア州サンディエゴ所在のNumerical Innovationsから入手可能)を使用して、jpegから業界標準GDSIIファイルフォーマットに転送した。次いで、GDSIIファイルを、マスクレイアウトのためのソフトウェアパッケージであるL−Editバージョン12.6(カリフォルニア州モンロビア所在のTanner EDAから入手可能)にロードし、様々なセルを最終フォーマットに配列して、フォトマスクの製造のために送った。図6は、フォトマスクの設計の作製に関わる工程を視覚的に説明する。フォトマスクを様々なアプローチに使用して、下記のようにVI基板を製造した。
【0075】
実施例2:フォトマスクマスターからのVI複製ツールの作製
厚さ10μmのSU−8 10フォトレジスト(マサチューセッツ州ニュートン所在のMicroChem Corporationより入手可能)を、ヘキサメチルジシリザン(HMDS)処理したシリコンウェハにスピンコーティングした。HMDS及びSU−8の両方とも、まず500回転/分で5秒間、次いで3000回転/分で30秒間、スピンした。コーティングされたウェハを65℃で2分間、次いで95℃で6分間、ソフトベーキングした。
【0076】
フォトレジストを、Quintel 7500 UVマスクアライナー上で、実施例1からのフォトマスクと接触させた。SU−8を21mW/cmの放射照度で6.7秒間露出した。次いで、露出後のベーキングを95℃で2分間、ウェハに施した。次いで、SU−8 Developer(同じくMicroChem Corporationより入手可能)に45秒間入れて、脱イオン水で漱いだ後、図7に示されているパターンが現れた現像されたウェハを、マスター複製ツールとして用いることができた。
【0077】
マスターツールをニッケルメッキしてハードドーターツールを得てもよく、あるいはマスターツールを剥離処理した後に直接ツールとして使用してもよい。反対のコントラスト及び色調が所望されていたならば、正のコントラストのレジストが使用可能であった。
【0078】
実施例3:ハイコントラストのVI基板の製作
上記の実施例2のようにフォトマスクを使用してマスターツールを製作するのでなく、これから図8A−Bを参照して説明するようにフォトマスク自体を複製マスターとして使用することができる。初期の基板802は、厚さ10nmのチタン層804でコーティングされた後に75nmのアルミニウム層806でコーティングされた、厚さ125μm(5ミル)のポリエステル(PET)フィルム片であった。次いで、この基板を、1.3μmの厚さのMICROPOSIT(商標)S1813フォトレジスト(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のRohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)808で、4000回転/分で40秒間、スピンコーティングによりコーティングした。実施例2と同じく、接着促進剤としてHMDSもまた使用した。コーティング後、PET基板を95℃で約30分間、ソフトベーキングした。
【0079】
ベーキングの後、基板をQuintel 7500 UVマスクアライナーに挿入し、実施例1に記述したフォトマスクをこのS1813レジストに接触させた。フォトレジストをiラインUV(i-line UV)に21mW/cmの放射線照度で6.0秒間露出した。次いで、フォトレジストをMICROPOSIT(商標)MF−319 Developer(Rohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)で45秒間現像し、脱イオン水で漱いだ。露出/現像されたフォトレジストのパターンを図8Bに示す。
【0080】
次いで、基板をアルミニウムエッチング槽(500mLのHPOと、19.4mLのHNOと、96.8mLの酢酸と、32.2mLの水と、0.6mLのエチレングリコール)に32℃で約2分間含浸して、フォトレジストのパターンをアルミニウム層に転写した。次いで、そのサンプルをチタンエッチング溶液(100mLのエチレンジニチロテトラ−酢酸すなわちEDTAと、8mLのNHOHと、20mLのH)に室温で約30秒間含浸した。レジストでカバーされなかったアルミニウム又はチタンは全て取り除いた。次いで、アセトンリンスで、次いでイソプロピルアルコールリンスで、フォトレジストを取り除いた。図8Cは、アルミニウム層806に転写されたパターンを示す。
【0081】
虚像光学素子は、複製されたマイクロレンズフィルム810の形態のマイクロレンズアレイをこのパターン化されたPETに接着することによって形成された。マイクロレンズアレイの付着のプロセスでは、接着剤812 Norland 61 UV硬化性接着剤(ニュージャージー州クランベリ所在のNorland Productsより入手可能)を基板上に配置し、VIパターン化された特徴のアルミニウム層806にマイクロレンズフィルムを被せて位置付けた。余分な接着剤は、ゴムローラの圧力を付加することにより絞り出した。マイクロレンズフィルム810を、VIパターンのピクセルを覆う各レンズと慎重に整合し、接着剤812を数秒間、UV光線で硬化した。このVI光学素子は、裸眼で見られたときに高い質及び解像度に見え得る浮遊画像を生成した。
【0082】
実施例4:リフトオフによるハイコントラストVI素子の製作
アルミニウムコーティングされたPETフィルムを使用する代わりに、プレーンなガラスウェハをまずS1813フォトレジストでコーティングし、次いで実施例3と同じやり方で露出及び現像して、ガラスウェハ上にパターン化されたフォトレジスト層を生成した。実施例3に記述したのと同じ厚さを有するアルミニウム層及びチタン層を、そのパターン化されたレジストのウェハ上に真空蒸着した。
【0083】
その後、金属コーティングしたウェハを、MICROPOSIT(商標)1165 Resist Remover(Rohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)を含有する超音波槽に65℃で数分間含浸し、次いで、DI水(訳注:脱イオン水)で漱いだ。パターンの裸ガラスであった部分にアルミニウム層/チタン層が残され、一方、フォトレジストがあったエリアの金属がリフトオフされることにより、ハイコントラストのパターンが創出される。このパターンは、実施例3で形成されたもののネガティブであった。レンズレットシートをラミネートして、パターン化されたガラスウェハにした。その結果得られた虚像は、クリアな背景の金属色の画像を含んでいた。
【0084】
実施例5:カラーVI基板の製作
カラー成分を含有するフォトパターン可能な材料を使用して、カラー虚像を創出することができる。実施例3と同じやり方で、Kodak Color−Key Analog Color Proofing Media(ニューヨーク州ロチェスター所在のEastman Kodakより入手可能)を、虚像素子を含むフォトマスクと接触しているi−ラインUVに露出した。UV露出は21ミリワット/センチメートルの放射線照度で10秒間持続した。
【0085】
次いで、その露出されたフィルムをKodak Polychrome Graphics Color Proofing Pre Mixed Hand Developer(ニューヨーク州ロチェスター所在のEastman Kodakより入手可能)に約1分間含浸し、槽から出す際、現像液を浸した布で、パターン化された材料を軽く擦り、パターンを露呈した。最後に、フィルムを脱イオン水で漱いでから乾燥した。
【0086】
単色虚像は、実施例3と同じやり方で、パターン化されたPETに複製マイクロレンズフィルムの片を接着することによって形成された。多色虚像の形成は、これらのパターン化されたカラーシートを多数重ね合わせることによって可能である。
【0087】
本発明は、上記の特定の実施例に限定されると考えられるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に適正に記載されるように、本発明のすべての態様を網羅すると理解されるべきである。本開示に関連する当業者には、本明細書を検討することにより、様々な修正、同等の方法、並びに、本開示を適用可能と思われる多くの構造は容易に明らかになるであろう。特許請求の範囲は、そのような修正及び工夫を網羅することを意図したものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11