(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気ケーブルと、その先端の軸線方向に直交する撮像部を有する固体撮像素子と、前記固体撮像素子と前記電気ケーブルの間を電気的に接続したフレキシブル配線基板とを備え、
前記フレキシブル配線基板は、前記固体撮像素子を実装する素子実装部と、前記素子実装部の両側で屈曲されて前記素子実装部から遠ざかるほど互いに接近するように延出する2つの延出部と、前記2つの延出部のそれぞれの前記素子実装部とは反対側でそれぞれ前記電気ケーブルの先端軸線方向に沿って延在し、前記電気ケーブル接続用の端子部がそれぞれ設けられた2つの接続片部とを備える撮像モジュール。
前記フレキシブル配線基板は、前記素子実装部、前記延出部、および前記接続片部を外側の面に有する片側配線タイプのフレキシブル配線基板である請求項1に記載の撮像モジュール。
前記固体撮像素子は、前記撮像部が設けられた表側の面に形成された配線と、前記フレキシブル配線基板の素子実装部に電気的に接続された裏面側の配線とを有し、表裏両側の配線が、該固体撮像素子を貫通して形成された貫通配線を介して電気的に接続されている請求項1又は2に記載の撮像モジュール。
前記フレキシブル配線基板の素子実装部の両側の屈曲部は、素子実装部における前記固体撮像素子の投影範囲から突出している請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
前記フレキシブル配線基板の2つの接続片部を一括して収容してその前記電気ケーブルとの接続部の少なくとも一部を覆う絶縁チューブをさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
前記フレキシブル配線基板の2つの接続片部のそれぞれに外挿されて、前記電気ケーブルとの接続部の少なくとも一部を覆う絶縁チューブをさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
前記素子実装部と前記2つの延出部で形成される内部空間の少なくとも一部に樹脂を充填して前記2つの延出部の少なくとも一部を固定した請求項1〜10のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の撮像モジュールのフレキシブル配線基板および固体撮像素子を、その固体撮像素子に対して固定されたレンズユニットとともにスリーブ状の金属枠部材に収容してなる撮像先端ユニットを有するレンズ付き撮像モジュール。
フレキシブル配線基板が載置されるフレキシブル配線基板載置台と、このフレキシブル配線基板載置台に対して昇降可能な昇降台上にピンが突出され、このピンの外周に、細長形状のフレキシブル配線基板の長手方向中央部の素子実装部が当接される平坦な実装部当接面が形成されたピン付き昇降台と、前記フレキシブル配線基板載置台上に、その上面に沿ったスライド移動によって互いの離隔距離を可変として設けられた一対の可動押圧部材とを有し、前記ピン付き昇降台は、その昇降によって、昇降台上面がフレキシブル配線基板載置台上面に概ね一致する初期位置と、該初期位置から下方の退避位置とに移動可能であるフレキシブル配線基板成形装置を用い、
初期位置に配置されたピン付き昇降台のピンの実装部当接面にフレキシブル配線基板の素子実装部を当接させるとともに、フレキシブル配線基板の素子実装部を介して両側の部分を素子実装部に対して屈曲させ素子実装部からその実装面とは反対の後側へ延出させた後片部を、開状態の一対の可動押圧部材間の隙間に配置するフレキシブル配線基板載置工程と、
次いで、一対の可動押圧部材を互いに接近させ、フレキシブル配線基板の一対の後片部を互いに接近させて、2つの延出部及び各延出部から延びる2つの接続片部を形成する曲げ成形工程と、
次いで、ピン付き昇降台を初期位置から退避位置へ下降させて、素子実装部とその両側の延出部とによって囲まれる空間からピンを抜き去り、前記空間に樹脂を充填して固化させる接着固定工程と、
前記曲げ成形工程にて形成した2つの接続片部の外面側にそれぞれ設けられている端子部に電気ケーブルを接続するケーブル接続工程と、
フレキシブル配線基板の素子実装部に固体撮像素子を実装する素子実装工程と、
を有する撮像モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る1実施形態の撮像モジュール10及び該撮像モジュール10を用いて組み立てたレンズ付き撮像モジュール11の先端部(前端部)構造を示す。
【0011】
図1、
図5(b)に示すように、撮像モジュール10は、電気ケーブル1の導体(後述の内部導体2a及び外部導体2b)先端に、撮像部21を有する固体撮像素子22(以下、単に撮像素子とも言う)を実装したフレキシブル配線基板30(フレキシブルプリント基板)を電気的に接続して取り付けたものである。撮像素子22としては、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を好適に用いることができる。
この撮像モジュール10は、撮像素子22をフレキシブル配線基板30に実装してなる前端ユニット部110を有する。この撮像モジュール10は、撮像素子22を、フレキシブル配線基板30を介して、電気ケーブル1と電気的に接続した構成となっている。
【0012】
図5(b)に示すように、フレキシブル配線基板30は、撮像素子22が前側の実装面32aに実装された素子実装部32の両側で屈曲されて、素子実装部32からその後側へ延出された2つの後片部34、35を有する。なお、以下、2つの後片部34、35の一方を第1後片部34、他方を第2後片部35とも言う。
【0013】
このフレキシブル配線基板30は、
図2に示すように長手方向中央部に素子実装部32を有する細長形状に形成されたものを素子実装部32の両側で折り曲げて、素子実装部32の両側からその後側へ延出された2つの後片部34、35を形成したものである。
また、このフレキシブル配線基板30は、片側配線タイプのフレキシブル配線基板である。配線は、折り曲げられたフレキシブル配線基板30の外面側に設けられている。
【0014】
2つの後片部34、35の互いに対面する対向面34a、35aとは反対の外側面34b、35b(外面)には、それぞれパッド状の端子部34c、34d、35c、35dが設けられている。フレキシブル配線基板30は、両側の後片部34、35の端子部に、電気ケーブル1先端に口出しされた内蔵電気ケーブル2を電気的に接続して、電気ケーブル1先端に設けられている。
【0015】
図1、
図13に示すように、内蔵電気ケーブル2は同軸ケーブル(電気ケーブル)である。電気ケーブル1は、複数本(図示例では4本)の内蔵電気ケーブル2を外被3によって一括被覆したケーブルユニットである。
内蔵電気ケーブル2は、内部導体2aと、前記内部導体2aを被覆する一次被覆層2cと、金属細線によって網状に形成され一次被覆層2cの周囲に設けられた外部導体2bと、この外部導体2bを被覆する二次被覆層2dとを有する。
【0016】
図1、
図2に示すように、2つの後片部34、35の外面34a、35aには、内蔵電気ケーブル2先端に露出させた内部導体2aを電気的に接続するための内部導体用端子部34c、35cと、内蔵電気ケーブル2の外部導体2bを電気的に接続するための外部導体用端子部34d、35dとがそれぞれ設けられている。
【0017】
第1後片部34には、内部導体用端子部34cと、外部導体用端子部35dとが2つずつ設けられている。そして、第1後片部34には、内部導体2aを内部導体用端子部34cにはんだ付けし、外部導体2bを外部導体用端子部34dにはんだ付けした内蔵電気ケーブル2が2本接続されている。
【0018】
一方、第2後片部35には、2つの内部導体用端子部35cと、該内部導体用端子部35cに比べて格段にサイズが大きいひとつの外部導体用端子部35dとが設けられている。そして、第2後片部35には、内部導体2aを内部導体用端子部35cにはんだ付けし、外部導体2bを外部導体用端子部35dにはんだ付けした内蔵電気ケーブル2が2本接続されている。
【0019】
図1、
図2に示すように、撮像部21は撮像素子22に形成された電気回路を介して、フレキシブル配線基板30の配線36(
図2参照)と電気的に接続されている。
撮像素子22は、撮像部21が搭載されている表面とは反対の裏面に、該撮像素子22の電気回路と電気的に接続されたはんだバンプ、スタッドバンプ、又はめっきバンプ22a(以下、バンプ22aという)(
図1参照)を有する。撮像素子22は、フリップチップ方式で、フレキシブル配線基板30の素子実装部32の実装面32aに形成された端子部36a(
図14参照。以下、実装部端子部とも言う。)にバンプ22aを接合固定して配線36と電気的に接続され、フレキシブル配線基板30の素子実装部32に実装されている。
【0020】
なお、
図14に示すように、撮像素子22の電気回路は、例えば、撮像素子22の板厚を貫通するスルーホール22b内に形成されて撮像素子22の表裏両面の配線22c、22dに電気的に接続された貫通配線22e(スルーホール配線)を含んでいても良い。
【0021】
図2に示すように、フレキシブル配線基板30の実装部端子部36aは、フレキシブル配線基板30の配線36を介して、該配線36に一体に形成されている各端子部34c、34d、35c、35dと電気的に接続されている。
したがって、
図1、
図5(a)等に例示した撮像モジュール10において、撮像部21は、撮像素子22の電気回路、及びフレキシブル配線基板30の配線36を介して、内蔵電気ケーブル2の内部導体2a及び外部導体2bと電気的に接続されている。
【0022】
図5(b)、
図6に示すように、撮像モジュール10は、2つの後片部34、35と、各後片部34、35の端子部に内部導体2a、外部導体2bをはんだ付けして電気的に接続した内蔵電気ケーブル2の先端部とを収容して覆う電気絶縁性のチューブ25(絶縁チューブ)を有する。
絶縁チューブ25は、例えばシリコーン樹脂等の樹脂からなる樹脂製チューブである。シリコーン樹脂製の絶縁チューブ25は内部電気ケーブル2やフレキシブル配線基板30に対して低摩擦で円滑にスライド移動させることができる点で好適である。
【0023】
フレキシブル配線基板30の各後片部34、35には、それぞれ、内部導体用端子部34c、35cに内蔵電気ケーブル2の内部導体2aをはんだ付けした内部導体接続部37a(ケーブル接続部)、及び外部導体用端子部34d、35dに内蔵電気ケーブル2の外部導体2bをはんだ付けした外部導体接続部37b(ケーブル接続部)が形成されている。絶縁チューブ25は、各後片部34、35の内部導体接続部37a及び外部導体接続部37bを覆っている。
また、絶縁チューブ25は、その内側に充填され、硬化された樹脂26によって、その内側のフレキシブル配線基板30及び内蔵電気ケーブル2に対して固定、一体化されている。
【0024】
図1に示すように、レンズ付き撮像モジュール11は、前端ユニット部110を、その撮像素子22に固定したカバー部材23及びレンズユニット24(対物レンズユニット)とともに、例えば円筒状等のスリーブ状の金属枠部材41に収容した撮像先端ユニット12を有する。
カバー部材23は、前端ユニット部110の撮像部21の受光面21a(
図2参照)を覆う透明の板状部材である。
【0025】
レンズユニット24は、円筒状の鏡筒24a内に、対物レンズ(図示略)を組み込んだものである。このレンズユニット24は、撮像部21の受光面21aに光軸を位置合わせして、鏡筒24aの軸線方向一端をカバー部材23に固定して設けられている。レンズユニット24は、撮像先端ユニット12前側から鏡筒24a内のレンズを介して導いた光を撮像素子12の受光面21aに結像させる。
【0026】
また、この撮像先端ユニット12は、前端ユニット部110とともに、そのフレキシブル配線基板30の2つの後片部34、35にそれぞれ接続された内蔵電気ケーブル2先端部も金属枠部材41に収容した構成となっている。
図1に例示したレンズ付き撮像モジュール11において、電気ケーブル1先端(外被3で覆われた部分の先端)は、金属枠部材41の外側に配置されている。電気ケーブル1の外被3先端から延出する内蔵電気ケーブル2は、金属枠部材41のレンズユニット24を収容する前端部とは反対の後端から金属枠部材41に引き込まれている。
【0027】
金属枠部材41は、その内側に充填され、硬化された樹脂27によって、撮像モジュール10の絶縁チューブ25に接着固定されている。
撮像モジュール10の絶縁チューブ25は、フレキシブル配線基板30の2つの後片部34、35のそれぞれに形成された内部導体接続部37a及び外部導体接続部37bが、金属枠部材41に接触して短絡することを防ぐ。
【0028】
撮像モジュール10のフレキシブル配線基板30についてさらに説明する。
図1に示すように、フレキシブル配線基板30の2つの後片部34、35は、素子実装部32に対して鋭角に傾斜された延出部34e、35eと、この延出部34eから後側に延出する接続片部34f、35fとを有する。延出部34e、35eは、素子実装部32の実装面32aとは反対の実装部背面32bに対して鋭角に傾斜している。フレキシブル配線基板30の2つの後片部34、35の延出部34e、35eは、素子実装部32の基板長手方向(
図1において上下方向)両側から素子実装部32後側へ行くにしたがって互いに接近する。
【0029】
図示例のフレキシブル配線基板30は、2つの後片部34、35の接続片部34f、35f同士をその長手方向を揃えて対向面34a、35a同士を互いに当接させた延出尾部38を有する。2つの後片部34、35は、素子実装部32と、両側の延出部34e、35eと、延出尾部38とによって囲まれた内側の三角形状の空間31(以下、延出部間隙間とも言う)に充填され硬化した樹脂39によって互いに接着固定されている。
【0030】
フレキシブル配線基板30では、樹脂39を、延出尾部38を構成する接続片部34f、35fの間の少なくとも前端部(素子実装部32側の端部)に入り込ませて、接続片部34f、35f同士を接着固定している。この構成では、後片部34、35同士の接着固定がより確実になされ、フレキシブル配線基板30の形状安定性も高まる。
【0031】
また、フレキシブル配線基板30では、延出部34e、35e同士を互いに接着固定した部分と、接続片部34f、35f同士を互いに接着固定した部分との間に、後片部34、35同士を接着固定せず可撓性を有する部分を確保した構成も採用可能である。この構成は、例えば、接続片部34f、35fの延出部34e、35eから離隔した部分同士を互いに接着固定して、延出部34e、35e同士を互いに接着固定した部分と、接続片部34f、35f同士を互いに接着固定した部分との間に、後片部34、35同士を接着固定せず可撓性を有する部分を確保した構成である。
この構成では、前端ユニット部110の組立後に、フレキシブル配線基板30の、延出部34e、35e同士を互いに接着固定した部分と、接続片部34f、35f同士を互いに接着固定した部分との間の可撓性部分を変形させて、撮像素子22上の撮像部21の光軸調整を行える、といった利点がある。
【0032】
フレキシブル配線基板30では、延出部間隙間31に充填され硬化した樹脂39によって、延出部間隙間31の周囲に位置する部分の形状が拘束され、変形が生じにくくなっており、形状安定性が確保されている。フレキシブル配線基板30を用いる場合、延出部間隙間31を埋め込んで硬化した樹脂39によって、素子実装部32とその両側の延出部34e、35eとからなる前端部の形状を安定に維持できる。
このため、撮像モジュール10では、前端ユニット部110を金属枠部材41に収容して撮像先端ユニット12(
図1参照)を組み立てる際に、撮像部21及びレンズユニット24の金属枠部材41に対する位置、向きの調整を楽に精度良く行なうことができる。
【0033】
フレキシブル配線基板30は、素子実装部32の両側で素子実装部32に対して屈曲され、素子実装部32から遠ざかるほど互いに接近するように延出する2つの延出部34e、35eを有し、延出部34e、35e間に樹脂39が充填される空間31が確保された構成となっている。フレキシブル配線基板30では、素子実装部32から遠ざかるほど互いに接近するように延出する2つの延出部34e、35eを有する構成により、例えば既述の特許文献1、2のように素子実装部が片持ち状に張り出す構成に比べて、高い形状安定性を確保できる。また、フレキシブル配線基板30を用いる場合、延出部間隙間31に充填され硬化した樹脂39によって延出部34e、35e同士が接着固定されることで、一層高い形状安定性を確保できる。
【0034】
図示例の撮像モジュール10は、互いに接合された接続片部34f、35fの外面側(外側面34b、35bの側)の端子部に内蔵電気ケーブル2の導体をはんだ付けして接続した構成であるため、素子実装部32両側の屈曲部30dの間隔方向である前端ユニット部110幅方向の寸法を小さく抑えることができる。
したがって、この撮像モジュール10は、前端ユニット部110を金属枠部材41に内挿固定して組み立てる撮像先端ユニット12の細径化に有効に寄与する。また、この撮像モジュール10は、
図17に示すように、レンズ付き撮像モジュール11を挿入部71のルーメン72に収容してなる内視鏡70の細径化にも有効に寄与する。
図17に示す内視鏡70は、レンズ付き撮像モジュール11を収容したルーメン72(第1ルーメン)の他に、照光用(ライトガイド用)の光ファイバ73を収容したルーメン74(第2ルーメン)を挿入部71に有する構成となっている。
なお、本発明者は、0.75mm角の平板状の撮像素子22、外径1.05mmのシリコーン製絶縁チューブ25、外径1.2mmの円筒状金属枠部材41を用いてレンズ付き撮像モジュール11を試作した。また、このレンズ付き撮像モジュール11を用いて試作した内視鏡の挿入部外径は5mmであった。
【0035】
また、撮像モジュール10では、特許文献3に記載のブロックのような、フレキシブル配線基板を取り付けてその形状を保つための部材(形状維持部材)を使用しなくても、延出部間隙間31に充填された樹脂39によってフレキシブル配線基板30の前端部に充分な形状安定性を確保できる。撮像モジュール10は、形状維持部材が不要であるため、低コストで効率良く製造できる。
撮像モジュール10の組み立て(製造)は、例えば
図7(a)、(b)に示すフレキシブル配線基板成形装置50(以下、基板成形装置とも言う)を用いることで効率良く行なうことができる。
【0036】
図7(a)、(b)に示す基板成形装置50は、フレキシブル配線基板30が載置されるフレキシブル配線基板載置台51(以下、基板載置台とも言う)と、この基板載置台51に対して昇降可能な昇降台52上にピン53が突出されたピン付き昇降台54とを有する。
また、この基板成形装置50は、基板載置台51上に、その上面51aに沿ったスライド移動によって開閉動可能に設けられた一対の可動押圧部材55a、55bを有する。
【0037】
図7(a)、(b)に例示した基板成形装置50のピン付き昇降台54の昇降台52は、基板載置台51の側面から窪んで上下方向に延在する昇降台案内溝51b内面に案内されて、手動あるいはスイッチ操作により自動で上昇又は下降する。
このピン付き昇降台54は、その昇降によって、昇降台52の上面52aが基板載置台上面51aに概ね一致する初期位置541(
図7(b)に実線で示す位置)と、該初期位置541から下方へずれた退避位置542(
図7(b)に仮想線で示す位置)とに移動可能である。退避位置542は、ピン付き昇降台54のピン53上端を基板載置台上面51aと面一あるいは基板載置台上面51aよりも下方(
図7(b)下側)に位置させ、ピン53を基板載置台上面51aよりも上側へ突出させない位置である。
初期位置541はピン付き昇降台54の上昇限界位置、退避位置542はピン付き昇降台54の下降限界位置である。
【0038】
一対の可動押圧部材55a、55bは、基板載置台51上面51aに沿ったスライド移動によって、
図7(a)に実線で示す開位置から互いに閉じ合わせられる閉位置まで移動可能である。一対の可動押圧部材55a、55bは、開位置から閉位置方向への移動(閉動作)によって、フレキシブル配線基板30の一対の後片部34、35を挟み込むことができる。また、一対の可動押圧部材55a、55bは、フレキシブル配線基板30の一対の後片部34、35を挟み込む位置を閉位置として設定し、該閉位置から互いの離隔距離を縮小する方向への移動を規制しても良い。
【0039】
一対の可動押圧部材55a、55bの閉動作、及びフレキシブル配線基板30の一対の後片部34、35を挟み込む閉状態から開位置への移動(開動作)は、手動、あるいはスイッチ操作により自動で行なわれる。また、一対の可動押圧部材55a、55bは、その開動作及び閉動作を、互いに連動して行なうようになっている。一対の可動押圧部材55a、55bは、開動作及び閉動作において、互いに逆の方向へ同時に移動する。
【0040】
図7(a)に示すように、図示例の基板成形装置50において、開位置にある可動押圧部材55a、55bは、基板載置台上面51aの外周部に開口する昇降台案内溝51bを介してその溝幅方向両側の基板載置台51上から、昇降台上面52a上に張り出すように設けられている。
開位置にある一対の可動押圧部材55a、55b間の離隔距離は、
図1等に例示したフレキシブル配線基板30の素子実装部32の実装部背面32bにおける後片部34、35の間隔方向に一致する延在方向寸法と概ね同じに揃えられている。
図7(a)に示すように、フレキシブル配線基板30の後片部34、35は、一対の可動押圧部材55a、55b間の隙間55cに、それぞれ、一対の可動押圧部材55a、55bの間隔方向に垂直の向きで楽に挿入できる。
なお、実装部背面32bの延在方向は、
図2に示す屈曲(折り曲げ)前のフレキシブル配線基板30の長手方向(基板長手方向)に一致する。
【0041】
本明細書では、図示例の基板成形装置50について、一対の可動押圧部材55a、55bの間隔方向を幅方向(
図7(a)において上下方向)、基板載置台上面51aに沿い幅方向に垂直の方向(
図7(a)、(b)において左右方向)を、前後方向として扱う。また、本明細書では、図示例の基板成形装置50について、
図7(a)、(b)の左側を前、右側を後として説明する。
ピン付き昇降台54のピン53は、一対の可動押圧部材55a、55b間の隙間55cから装置前後方向前側に離隔した位置にある。このピン53は、一対の可動押圧部材55a、55b間の隙間55cから、基板載置台上面51aの中央部とは反対の側に位置している。
【0042】
ピン53の、一対の可動押圧部材55a、55b間の隙間55cとは反対の裏面側(前側)には、フレキシブル配線基板30の素子実装部32が当接される平坦な実装部当接面53aが形成されている。
この実装部当接面53aは、装置前後方向に垂直に形成されている。
実装部当接面53aは、
図1等に例示したフレキシブル配線基板30の素子実装部32の実装部背面32bにおける後片部34、35の間隔方向(フレキシブル配線基板30の基板長手方向に一致)に一致する延在方向寸法と同じに揃えられている。
また、実装部当接面53aは、ピン53の昇降台52上に位置する部分の前側全体にわたって形成されている。
【0043】
また、ピン53は、実装部当接面53aから装置後側(
図7(a)、(b)右側)へ行くにしたがって幅方向寸法が縮小する、断面(ピン53の軸線方向に垂直の断面)テーパ状に形成されている。
図7(a)、
図18(a)に示すピン53(図中符号53Aを付記する)は、その軸線方向に垂直の断面形状が半円状になっている。このピン53Aの周面は、実装部当接面53aから装置後側全体が、ピン53Aの軸線に平行な軸線を以て湾曲する湾曲面となっている。
ピン53としてはこれに限定されず、例えば
図18(b)に示すように、その軸線方向に垂直の断面形状が実装部当接面53aから装置後側へ向かって先細りの三角形状のもの(ピン53B)や、このピン53Bの装置後端部を湾曲させた断面形状で延在するピン53Cなども採用可能である。
【0044】
この基板成形装置50は、
図2に示す帯状のフレキシブル配線基板30の折り曲げ成形(曲げ成形工程)と、この折り曲げ成形によって形成した2つの後片部34、35同士の接着固定(接着固定工程)とに好適に用いることができる。
ここで、基板成形装置50を用いた工程を含む、撮像モジュール10の製造方法の一例を説明する。
【0045】
まず、
図2に示す帯状のフレキシブル配線基板30の素子実装部32に撮像素子22を実装する(素子実装工程)。
次いで、フレキシブル配線基板30を基板載置台51上、及び基板載置台51に対して初期位置に配置したピン付き昇降台54の昇降台上面52a上に載置する基板載置工程を行ない、
図8に示す状態とする。この基板載置工程は、一対の可動押圧部材55a、55bを開位置に配置した状態で行なう。
【0046】
図8に示すように、この基板載置工程では、フレキシブル配線基板30の素子実装部32(具体的にはその実装部背面32a)を、ピン付き昇降台54のピン53の実装部当接面53aに当接させる。
また、この基板載置工程では、フレキシブル配線基板30の基板長手方向における素子実装部32を介して両側の部分(後片部形成部340、350)を素子実装部32に対して屈曲(折り曲げ)して形成した後片部34、35を、一対の可動押圧部材55a、55b間の隙間55cに挿入する。一対の後片部34、35は、それぞれ、一対の可動押圧部材55a、55bの間隔方向に垂直の向きで隙間55cに挿入する。
【0047】
図2に示すように、フレキシブル配線基板30の素子実装部32の延在方向両側には、フレキシブル配線基板30長手方向に直交する幅方向(基板幅方向)両側に切り欠き部33が形成されている。
図8に示すように、基板載置工程では、切り欠き部33を利用して、フレキシブル配線基板30の基板長手方向における素子実装部32を介して両側の後片部形成部340、350を素子実装部32に対して屈曲(折り曲げ)して後片部34、35の形成を楽に行なうことができる。
また、素子実装部32は、その前面である実装面32aのほぼ全体にわたって配置されて実装面32aに一体化された撮像素子22によって変形が規制されている。このことも、素子実装部32に対して後片部形成部340、350を屈曲させる作業を楽に行えるようにすることに有効に寄与する。
【0048】
図2に示すように、フレキシブル配線基板30は、その基板長手方向における切り欠き部33が形成された領域が、該領域の両側に比べて幅狭の易変形部30cとなっている。
フレキシブル配線基板30は、素子実装部32と、その両側の後片部形成部340、350との間に易変形部30cが存在する構成となっている。
そして、フレキシブル配線基板30は、
図1、
図7(a)に示すように、素子実装部32に対して屈曲した後片部34、35を形成したときに、前記易変形部30cが屈曲部30dとなる。
図1において、フレキシブル配線基板30の後片部34、35は、具体的には、素子実装部32の両側の屈曲部30dから素子実装部32の後側へ延出している。
【0049】
なお、切り欠き部33は、必ずしもフレキシブル配線基板30の基板幅方向両側に形成する必要は無い。フレキシブル配線基板30としては、素子実装部32の延在方向両側における基板幅方向片側のみに切り欠き部33が形成された構成も採用可能である。
図1、
図7(a)に示すように、素子実装部32の両側の屈曲部30dは、素子実装部32における撮像素子22に対面する範囲から突出している。図示例の素子実装部32の両側の屈曲部30dは、撮像素子22が実装された素子実装部32の撮像素子22に対面する範囲(撮像素子の投影範囲)から両側に張り出す易変形部30cを曲げて形成される。易変形部30cが素子実装部32から張り出していて、素子実装部32の撮像素子22に対面する範囲に重ならない位置にある構成は、易変形部30cを曲げて屈曲部30dを形成する作業に撮像素子22が障害とならず、屈曲部30dの形成を円滑に行える。
【0050】
図2〜
図4に示すように、フレキシブル配線基板30は、フィルム状に形成された電気絶縁性の絶縁基材30aの片面側に形成された配線36のうち、後片部形成部340、350に位置する部分のほぼ全体が、絶縁基材30aに積層された電気絶縁性の被覆樹脂層30b(被覆層。例えばソルダーレジスト)によって覆われた構造になっている。
被覆樹脂層30bは、フレキシブル配線基板30の後片部形成部340、350のほぼ全体にわたって、絶縁基材30aの配線36側の面(配線形成面)に積層されている。フレキシブル配線基板30の後片部形成部340、350は、そのほぼ全体が、絶縁基材30aの片面側に被覆樹脂層30bが積層された構造の被覆部とされている。一方、素子実装部32及び易変形部30cは、被覆樹脂層30bは設けられておらず、配線36が露出された配線露出部30e(
図2等参照)とされている。したがって、易変形部30cは、後片部形成部340、350に比べて曲げやすくなっている。
【0051】
また、
図2、
図3(a)〜(g)に示すように、後片部形成部340、350は、その延在方向(基板長手方向)の中央部から素子実装部32とは反対の側の部分が、絶縁基材30aの配線形成面とは反対の面に、接着剤層30fを介して、シート状補強材30gを貼着、一体化した補強部34g、35gとされている。シート状補強材30gは、後片部形成部340、350の補強部34g、35gから素子実装部32側の部分、易変形部30c、素子実装部32には被着されていない。端子部34c、34d、35c、35dは、補強部34g、35gに配置されている。
フレキシブル配線基板30の後片部形成部340、350の補強部34g、35gから素子実装部32側の補強無し延在部34h、35hは補強部34g、35gに比べて曲げやすく、易変形部30cは、後片部形成部340、350の補強無し延在部34h、35hに比べて曲げやすくなっている。
【0052】
なお、補強部34g、35gは、
図1のように曲げ成形したフレキシブル配線基板30の後片部34、35の接続片部34f、35f(
図1、
図7(a)参照)を構成する部分として用いられる。また、
図1のように曲げ成形したフレキシブル配線基板30の延出部34e、35eは、補強無し延在部34h、35hによって形成される。
【0053】
また、
図2に示すように、フレキシブル配線基板30の2つの後片部形成部340、350の補強部34g、35gは、それぞれ、後片部形成部340、350の補強無し延在部34h、35hに比べて幅広に形成されている。フレキシブル配線基板30の2つの後片部形成部340、350は、この構成からも、補強部34g、35gに比べて補強無し延在部34h、35hの方が曲げやすくなっている。
なお、各後片部形成部340、350の補強無し延在部34h、35hの、補強部34g、35g側の端部は、補強部34g、35g側に従って幅寸法が増大するテーパ状に形成されたテーパ部とされている。
【0054】
図2において、被覆樹脂層30bは、後片部形成部340、350の端子部34c、34d、35c、35dを避けて形成されている。このため、端子部34c、34d、35c、35dは被覆樹脂層30bに覆われず、その絶縁基材30aとは反対側の面(端子面)が、後片部形成部340、350の被覆樹脂層30b側の面に露呈されている。
【0055】
なお、
図3(a)に示すように、図示例の端子部34c、34d、35c、35dは、配線36に一体に形成されたパッド部36dの絶縁基材30aとは反対側の面に、金等の端子部保護めっき36eを形成した構成となっている。端子部34c、34d、35c、35dの絶縁基材30aとは反対側の端子面は、端子部保護めっき36eによって形成されている。端子部保護めっき36eを形成する金属材料としては、既述の金等の、はんだ被着性に優れたものを採用する。
但し、端子部34c、34d、35c、35dとしては、端子部保護めっき36eを形成せずに、パッド部36dのみからなる構成のものも採用可能である。
【0056】
また、
図2〜
図4に示すように、フレキシブル配線基板30の配線36のうち、配線露出部30e及び後片部形成部340、350の素子実装部32側の端部に位置する部分は、その表面に形成された保護めっき36bに覆われた保護めっき付き配線部36cとされている。
フレキシブル配線基板30としては、例えば、銅製の配線36(銅配線)に、金めっき等の伸展性に優れる金属材料からなる保護めっき36bを形成した構成のものを用いる。この構成により、配線36は、易変形部30c、屈曲部30dに位置する部分の断線等が生じにくくなっている。したがって、フレキシブル配線基板30の易変形部30c、屈曲部30dは、補強無し延在部34h、35hに比べて折り曲げが容易でありながら、配線36の断線が生じにくい構成となっている。
【0057】
基板載置工程が完了したら、開位置にある一対の可動押圧部材55a、55bを閉動作させて後片部34、35を素子実装部32に対して曲げて、各後片部34、35に延出部34e、35eを形成する曲げ成形工程を行なう。
ここでは、
図1、
図5(a)に示す形状のフレキシブル配線基板30を得るべく、一対の可動押圧部材55a、55b間にフレキシブル配線基板30の一対の後片部34、35を挟み込む。一対の可動押圧部材55a、55bは、それぞれ、後片部34、35の補強無し延在部34h、35hの補強部34g、35g側端部に位置合わせして、一対の後片部34、35を挟み込む。一対の可動押圧部材55a、55bは、補強部34g、35gを挟み込まないように位置合わせする。
これにより、フレキシブル配線基板30の後片部34、35は、互いに対向面34a、35a同士を接合した状態となる。このとき、フレキシブル配線基板30は、ピン53の実装部当接面53aの幅方向寸法と、一対の可動押圧部材55a、55b間の離隔距離との関係によって、各後片部34、35に延出部34e、35eと接続片部34f、35fとが形成される。
【0058】
また、曲げ成形したフレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の前端部には、三角形状の延出部間隙間31が形成される。
基板成形装置50のピン53は、フレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の延出部間隙間31に挿入状態になっている。
【0059】
図2、
図6に示すように、フレキシブル配線基板30の第1後片部34の補強部34gは、その幅寸法W1が、第2後片部35の補強部35gの幅寸法W2に比べて若干小さく形成されている。
この構成により、フレキシブル配線基板30は、例えば、
図6に示すように、第1後片部34の補強部34gを、第2後片部35の補強部35gに対して、該第2後片部35の補強部35gからその幅方向へはみ出さないように位置合わせして接合することを容易に行える。このことは、延出尾部38の幅方向寸法(
図6上下)の無用な増大を確実に防ぐ点で有効であり、レンズ付き撮像モジュール11の撮像先端ユニット12の細径化にも有効に寄与する。
【0060】
曲げ成形工程を完了したら、
図9に示すように、一対の可動押圧部材55a、55b間にフレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の一対の後片部34、35を挟み込んだ状態を維持したまま、ピン付き昇降台54を初期位置から下降させて退避位置へ移動し、フレキシブル配線基板30の延出部間隙間31からピン53を抜き去る(ピン抜き去り工程)。
次いで、フレキシブル配線基板30の延出部間隙間31に樹脂39を充填し、この樹脂39を硬化させ、後片部34、35同士を接着固定する(接着固定工程)。
【0061】
図9に示すように、フレキシブル配線基板30の延出部間隙間31への樹脂39の充填は、例えば、延出部間隙間31に先端を挿入可能なノズル部59aを有する注入器59を用いることで、効率良く行なうことができる。
樹脂39としては、硬化性を有するものであり、硬化によって後片部34、35同士を接着固定可能なものが採用される。樹脂39としては、例えば、乾燥硬化型のもの、2液反応型等の複数液反応型のもの、湿気硬化型のもの、紫外線硬化型等の光硬化型のもの、加熱により硬化する加熱硬化型のもの等を挙げることができる。
また、樹脂39としては、粘度が4000〜7000cpsのものを好適に用いることができる。
好適な樹脂39の一例としては、熱硬化性エポキシ系樹脂を挙げることができる。
【0062】
接着固定工程が完了したら、基板成形装置50の一対の可動押圧部材55a、55bを開動作によって開き、基板成形装置50から取り出したフレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の端子部34c、34d、35c、35dに、内蔵電気ケーブル2の導体(内部導体2a、外部導体2b)をはんだ付けするケーブル接続工程を行なう。
次いで、
図5(a)に示すように、電気ケーブル1(あるいは、その外被先端から延出させておいた内蔵電気ケーブル2)に予め外挿しておいた絶縁チューブ25をフレキシブル配線基板30に対してその前側(素子実装部32側)へ向かって移動する。これにより、
図5(b)、
図6に示すように、絶縁チューブ25内側に、フレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の延出尾部38全体を、内蔵電気ケーブル2先端部及び導体接続部(内部導体接続部37a、外部導体接続部37b)とともに収容する。そして、
図5(b)に示すように、絶縁チューブ25内側に樹脂26を注入、充填し、硬化させることで、絶縁チューブ25をフレキシブル配線基板30及び内蔵電気ケーブル2先端部に接着固定し、一体化する。
【0063】
絶縁チューブ25内側に延出尾部38全体と、内蔵電気ケーブル2先端部及び導体接続部を収容し、絶縁チューブ25内側に充填して硬化させた樹脂26によって、絶縁チューブ25をその内側に収容した収容物(フレキシブル配線基板30等)に接着、一体化する工程を、以下、チューブ接着工程とも言う。
また、撮像モジュール10の製造方法(組み立て方法)にあっては、レンズユニット24を、カバー部材23を予め取り付けた撮像素子22に固定して取り付ける工程も行なう。レンズユニット24を取り付ける工程の実施タイミングは、フレキシブル配線基板30の素子実装部32に実装した撮像素子22を実装する素子実装工程の完了後であればいつでも良く、特に限定は無い。
撮像モジュール10の組み立ては、レンズユニット24を取り付ける工程、及びチューブ接着工程の完了によって終了する。
【0064】
撮像モジュール10の製造方法(組み立て方法)としては、基板載置工程の前に素子実装工程を行なうことにかえて、基板載置工程の完了以降に、素子実装部32に撮像素子22を実装する素子実装工程を行なうようにしても良い。
撮像モジュール10の製造方法における素子実装工程の実施タイミングは、カバー部材23及びレンズユニット24を取り付ける工程の前であれば良く、それ以外に特に限定は無い。
【0065】
本発明に係る実施形態の撮像モジュール10の製造方法では、特許文献3のような形状維持部材を使用することなく、フレキシブル配線基板30の形状安定性を確保できる。また、この製造方法では、形状維持部材を用いる場合の、形状維持部材に対するフレキシブル配線基板の位置決めの手間が不要である。
このため、この製造方法では、素子実装部32及びその近傍(フレキシブル配線基板30の前端部)の形状安定性の高いフレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)を、容易に低コストで得ることができる。
【0066】
絶縁チューブとしては、円筒状のもの(
図6参照)に限定されず、例えば
図15に示すように、一対のチューブ分割体25a、25bを互いに接合して一体化することで組み立てられる半割り構造のもの(絶縁チューブ25A)も採用可能である。
一対のチューブ分割体25a、25bとしては、既述の絶縁チューブ25と同様にポリイミド等の樹脂製のものを用いることができる。半割り構造の絶縁チューブ25Aは、チューブ分割体25a、25b同士を、例えば接着剤による接着固定、熱溶着等によって一体化して、筒状に組み立てる。
【0067】
この半割り構造の絶縁チューブ25Aを用いる場合、その内側にフレキシブル配線基板30の延出尾部38を収容する作業にあたり、筒状の一体成形品である絶縁チューブ25のようにフレキシブル配線基板30に対してその後側から前側へ向かってスライド移動させる必要が無い。この絶縁チューブ25Aを用いる場合、一対のチューブ分割体25a、25bを互いに接合して一体化することで組み立てることができるため、フレキシブル配線基板30に対するスライド移動によって導体接続部(内部導体接続部37a、外部導体接続部37b)に接触させて切り裂く、といった支障の発生を回避できるという利点がある。
【0068】
図1に例示した撮像モジュール10は、フレキシブル配線基板30の延出尾部38全体を絶縁チューブ25に収容し、樹脂26によって接着、一体化した構成となっている。
本発明に係る実施形態の撮像モジュールとしてはこれに限定されない。
例えば、
図10、
図11に示すように、フレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)に対するその前後方向(
図10、
図11において左右方向)における絶縁チューブ25の位置は変更可能である。
【0069】
図10、
図11は、後片部34、35の延出部35eから後側へ離隔させて配置した絶縁チューブ25に延出尾部38を収容している。
図10の撮像モジュール10Aの絶縁チューブ25は、その前端が、後片部34、35の内部導体接続部37aよりも前側に配置されている。
図11の撮像モジュール10Bの絶縁チューブ25は、後片部34、35の内部導体接続部37aの一部を覆い、該覆った部分よりも前側を覆わない位置に、その前端のフレキシブル配線基板30に対する前後方向の位置を調整して配置したものである。
なお、
図10、
図11の撮像モジュール10A、10Bは、
図1の撮像モジュール10との対比で、絶縁チューブ25のフレキシブル配線基板30に対する前後方向の設置位置のみが相違する構成となっている。
【0070】
また、本発明に係る実施形態の撮像モジュールとしては、
図12に示すように、絶縁チューブを省略した構成(撮像モジュール10C)も採用可能である。
【0071】
本発明に係る実施形態の内視鏡は、本発明に係る実施形態の撮像モジュールを、撮像素子に固定したレンズユニットとともにスリーブ状の金属枠部材に収容したものであり、撮像モジュールとしては、本発明に係る実施形態の撮像モジュールであれば特に限定は無い。内視鏡の金属枠部材に収容する撮像モジュールとしては、
図1等に記載の撮像モジュール10の他、
図11〜
図12に開示した撮像モジュール10A、10B、10Cも採用可能である。
【0072】
図16に示す撮像モジュール10Dは、フレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)の2つの後片部34、35の個々にひとつずつ絶縁チューブ28を外挿、一体化した点が、
図5(b)に例示した撮像モジュール10と相違する。
各絶縁チューブ28は、その内側に充填して硬化させた樹脂26によって、フレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)及びその後片部34、35の端子部に導体をはんだ付けした内蔵電気ケーブル2の先端部に接着固定して一体化されている。
【0073】
この撮像モジュール10Dのフレキシブル配線基板30の2つの後片部34、35は、素子実装部32の両側から素子実装部32に対して鋭角(実装部背面32bに対して鋭角)に傾斜された延出部34e、35eと、この延出部34eから後側に延出する接続片部34f、35fとを有する。但し、この撮像モジュール10Dのフレキシブル配線基板30は、2つの後片部34、35の接続片部34f、35f同士が直接接合されていない構成となっている。この撮像モジュール10Dのフレキシブル配線基板30(曲げ成形済み基板)に符号30Aを付記する。
【0074】
フレキシブル配線基板30Aは、素子実装部32と、その両側の延出部34e、35eとによって囲まれた内側の空間に充填され硬化された樹脂39によって一対の後片部34、35が互いに接着固定されている。
このフレキシブル配線基板30Aは、素子実装部32と、その両側の延出部34e、35eとで構成される前端部が前記樹脂39によって一体化され、前端部の形状安定性が確保されている。
【0075】
図16は、金属枠部材41に収容した撮像モジュール10Dの2つの絶縁チューブ28を、金属枠部材41と絶縁チューブ28との間に充填して硬化した樹脂27によって金属枠部材41に接着固定し、一体化した構成の撮像先端ユニット12Aを有するレンズ付き撮像モジュール11Aを示す。
撮像モジュール10Dの2つの絶縁チューブ28は、金属枠部材41内側の樹脂27によって互いに接着固定され、一体化されている。
【0076】
なお、この撮像モジュール10Dについても、絶縁チューブ28のフレキシブル配線基板30に対する前後方向の設置位置は、フレキシブル配線基板30A前端部の延出部34e、35eよりも後側であれば良く、適宜変更可能である。
また、絶縁チューブとしては、スリーブ状の一体成形品である絶縁チューブ28にかえて、樹脂による接着固定あるいは熱溶着等によって互いに一体化することで筒状に組み立てられる半割り構造のものを採用することも可能である。
【0077】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、本発明に係る撮像モジュールのフレキシブル配線基板(曲げ成形済み基板)としては、素子実装部の両側から後側へ延出する延出部がそれぞれ素子実装部に対して鋭角に傾斜した構成に限定されない。フレキシブル配線基板(曲げ成形済み基板)としては、2つの延出部の一方のみが、素子実装部に対して鋭角に傾斜し、他方の延出部が、素子実装部から概ね垂直にその後方へ延出し、各延出部の後端から後方へ接続片部が延出する構成も採用可能である。また、この場合、接続片部同士を接合した延出尾部を有する構成の他、2つの接続片部を互いに離隔させて配置した構成も採用可能である。ここで、2つの接続片部を互いに離隔させて配置した構成の場合は、例えば、2つの接続片部の互いに対向する対向面の一方又は両方に配線と電気ケーブル接続用の端子部とを有し、この配線が、後片部に設けられたスルーホール配線などを介して、素子実装部の実装面側の配線と電気的に接続されている構成を採用する。
【0078】
また、フレキシブル配線基板(曲げ成形済み基板)としては、素子実装部の両側から後側へ延出する各延出部の後端から後方へ接続片部が延出する構成に限定されず、接続片部が、それぞれ延出部後端から素子実装部側へ折り返され、2つの延出部の間に配置された構成も採用可能である。
この場合、フレキシブル配線基板としては、各接続片部の、それぞれが繋がっている延出部に臨む面に、配線と電気ケーブル接続用の端子部を有する構成を採用する。また、例えば延出部と接続片部との境界部にケーブル挿通孔を形成し、このケーブル挿通孔に通した内蔵電気ケーブルの導体を接続片部の端子部にはんだ付けして電気的に接続する。