(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)の工程において、前記リードフレームの一端部を前記ハウジングの外部に引き出すとともに、前記一端部から前記ハウジングの内部に向かって延在するように前記リードフレームを配置して、前記リードフレームの他端部側に前記支持部を当接させて前記リードフレームを固定することを特徴とする請求項4に記載の物理量センサ装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来例における物理量センサ装置110の課題を説明するための断面図である。従来例の物理量センサ装置110は、樹脂で形成されたハウジング130と、物理量を検知するセンサチップ120とを有して構成される。センサチップ120は、圧力の変化に伴うダイヤフラム121の変形量に応じて電気信号を取り出すことが可能な圧力センサである。センサチップ120は、ハウジング130のキャビティ部132の底面132aに設置されており、ボンディングワイヤ123を介してリードフレーム140と電気的に接続されている。これにより、センサチップ120で検知した物理量の情報を外部へ取り出すことができる。
【0003】
キャビティ部132には、センサチップ120及びボンディングワイヤ123を保護するために、保護用樹脂125が充填されている。保護用樹脂125として、ダイヤフラム121の変形を阻害しないように、柔軟なゲル状の樹脂が用いられている。特許文献1には、このようなセンサチップ120及びボンディングワイヤ123が保護用樹脂125により保護されている構造の物理量センサ装置が開示されている。
【0004】
また、
図8に示す従来例の物理量センサ装置110において、ハウジング130とリードフレーム140とは、インサート成形により一体に成形されている。センサチップ120とリードフレーム140とは、キャビティ部132において電気的に接続されている。そのため、リードフレーム140の表面が、キャビティ部132の底面132aにおいて露出するように成形する必要がある。したがって、インサート成形時にリードフレーム140を裏面側から支持ピンで支持しながらハウジング130と一体に成形する方法が行われている。
【0005】
よって、
図8に示すように、従来例の物理量センサ装置110では、ハウジング130のキャビティ部132と平面視で重なる位置において、リードフレーム140の裏面には支持ピンで支持することにより形成された孔部134が設けられている。
【0006】
このような、キャビティ部132と平面視で重なる位置において、リードフレーム140の裏面において孔部134が設けられた構成の物理量センサ装置は、特許文献2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
図8に示す従来例の物理量センサ装置110において、孔部134が形成された箇所では、キャビティ部132の下側にハウジング130の樹脂が設けられず、キャビティ部132の内部と外部との間にリードフレーム140のみが介在する箇所が生じる。また、ハウジング130の樹脂とリードフレーム140とは密着性が不十分であり、ハウジング130とリードフレーム140との間にリーク経路が形成されてしまう場合がある。したがって、ハウジング130とリードフレーム140との間のリーク経路を通して、外部の空気が孔部134を通してキャビティ部132に流入するという課題が発生する。
【0009】
ハウジング130の樹脂とリードフレーム140との密着性を向上させるためには、樹脂の種類や成形温度を厳密に制御する方法や、リードフレーム140にめっき等の表面処理を施す方法等が考えられる。しかし、いずれも製造コストの増大につながるため好ましくない。また、ハウジング130とリードフレーム140とを完全に密着させて成形することは困難である。
【0010】
孔部134を通してキャビティ部132に流入した空気は、保護用樹脂125の内部において気泡として残留する。保護用樹脂125の内部の気泡は、保護用樹脂125の上面に加えられた圧力をセンサチップ120に正確に伝達することを阻害する要因となり、また、温度変化や気圧の変化に伴い気泡自体の大きさも変化するため、測定値のドリフトが発生する場合もある。したがって、外部の空気が孔部134を通してキャビティ部132に流入すると、物理量センサ装置110の測定誤差が増大してしまう。
【0011】
特に、エンジンの吸気圧などの負圧を測定する用途においては、測定時に保護用樹脂125がキャビティ132の開口部側に引っ張られる方向に圧力が作用するため、穴部134からキャビティ132内に空気が流入し易く測定誤差が顕著に発生してしまう。
【0012】
また、
図8に示す従来の物理量センサ装置110では、センサチップ120及びボンディングワイヤ123の全体を覆うように保護用樹脂125をキャビティ部132に充填しているが、センサチップ120のダイヤフラム121の上面やボンディングワイヤ123の接続箇所など、キャビティ部132の保護が必要な箇所にのみ保護用樹脂125を設ける方法も知られている。この場合であっても、外部の空気がハウジング130とリードフレーム140との間のリーク経路を通してキャビティ部132の内部に流入すると、測定すべきキャビティ部132の気圧に変動が生じてしまい、測定誤差が増大するという課題が生じる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決し、外部の空気がハウジングの孔部を通してキャビティ部に流入することを防止して、物理量測定の際の測定誤差を低減させることが可能な物理量センサ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の物理量センサ装置は、樹脂を用いて成形されたハウジングと、前記ハウジングに埋設されたリードフレームと、物理量を検知するセンサチップと、を有し、前記ハウジングに第1のキャビティ部が設けられて、前記センサチップは前記第1のキャビティ部に収納されており、
前記ハウジングには、前記第1のキャビティ部
の底面と平面視で重複しない位置において、前記リードフレームの裏面を底部とする孔部が形成されて
おり、前記ハウジングには、前記第1のキャビティ部とは別に、制御回路チップを収納する第2のキャビティ部が形成されており、前記孔部は、前記第2のキャビティ部の底面と平面視で重複する位置において形成されていることを特徴とする
これによれば、孔部が、第1のキャビティ部の底面に対して平面視で重複しない位置に形成されているため、第1のキャビティ部の底面側において、第1のキャビティ部と外部との間にリードフレームのみが介在する箇所が生じない。また、ハウジングとリードフレームとの密着性が十分ではない場合であっても、孔部の底部と第1のキャビティ部との距離を従来に比べて長くすることができ、孔部と第1のキャビティ部との間にリーク経路が連続して形成されることを防止することができる。したがって、外部の空気が孔部を通して第1のキャビティ部に流入することを防止して、物理量を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【0015】
また、センサチップを収納する第1のキャビティ部と平面視で重複しない位置に孔部が設けられるため、第1のキャビティ部に、外部の空気が孔部を通して流入することを防ぐことができる。また、同一のハウジング内にセンサチップと制御回路チップとを収納することができる。制御回路チップは、温度により素子の電気抵抗値が変わることを利用してハウジング内の温度を計測することが可能である。これに基づいてセンサチップが検知する物理量の温度補償を行うことができる。
【0016】
本発明の物理量センサ装置において、前記リードフレームは、前記ハウジングの外部から内部に向かって延在する形状を有し、前記リードフレームの一端部は前記ハウジングの外部に引き出されて、前記リードフレームの他端部は前記ハウジングの内部に向かって延在しており、前記孔部は、前記リードフレームの他端部側において形成されていることが好ましい。これによれば、ハウジングとリードフレームとを一体に成形する際に、リードフレームの一端部と他端側とを確実に固定した状態で樹脂成形することができる。このため、溶融樹脂を注入する際の圧力によるリードフレームの変形やずれを抑制することができ、リードフレームとハウジングとの間にリーク経路が形成されることを抑制できる。したがって、第1のキャビティ部の気密性を向上させて、外部の空気が孔部を通して第1のキャビティ部に流入することを確実に防止できる。
【0017】
本発明の物理量センサ装置において、前記センサチップは圧力センサであることが好適である。これによれば、外部の空気が孔部を通して第1のキャビティ部に流入することを防止して、圧力を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【0018】
本発明は、樹脂を用いて成形されたハウジングと、前記ハウジングに埋設されたリードフレームと、
前記ハウジングのキャビティ部内に配置され、かつ前記リードフレームと電気的に接続されたセンサチップと、を有する物理量センサ装置の製造方法であって、
(a)第1の凸部が形成された第1の金型と、前記リードフレームを支持する支持部を有する第2の金型とを用いて、前記第1の金型と前記第2の金型との間に前記リードフレームを配置して、前記リードフレームの表面に前記第1の凸部を当接させるとともに、前記第1の凸部と平面視で重複しない位置において前記リードフレームの裏面に前記第1の支持部を当接させて前記リードフレームを固定する工程と、
(b)前記第1の金型と前記第2の金型との間に形成される空間に溶融樹脂を充填して前記リードフレームと前記ハウジングとを一体に成形する工程と、を有
し、
前記第1の金型には、第2の凸部が形成されており、
前記(a)の工程において、前記リードフレームの表面に前記第2の凸部を当接させるとともに、前記第2の凸部と対向する位置において、前記リードフレームの裏面に前記支持部を当接させて前記リードフレームを固定することを特徴とする。
【0019】
これによれば、第1の凸部によって、センサチップを収納する第1のキャビティ部が形成される。また、第1の凸部と平面視で重複しない位置において、前記リードフレームの裏面に第1の支持部が当接した状態で固定されて樹脂成形される。よって、第1の支持部により孔部が形成されて、孔部は、第1のキャビティ部の底面に対して平面視で重複しない位置に形成される。したがって、第1のキャビティ部の底面の下方において、キャビティ部と外部との間にリードフレームのみが介在する箇所が生じない。また、ハウジングとリードフレームとの密着性が十分ではない場合であっても、孔部の底部と第1のキャビティ部の内部との距離を従来に比べて長くすることができ、孔部と第1のキャビティ部との間にリーク経路が連続して形成されることを防止することができる。したがって、外部の空気が孔部を通してキャビティ部の内部に流入することを防止して、キャビティ内の圧力等の物理量を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【0020】
また、リードフレームは、第2の凸部と第1の支持部とで対向して挟むように固定されるため、より確実に固定される。また、第1の支持部により形成されるハウジングの孔部は、第2の凸部により形成される第2のキャビティ部の底面側に形成される。したがって、第1のキャビティ部の内部に孔部を通して外部の空気が流入することを防止できる。
【0021】
本発明の物理量センサ装置の製造方法は、前記(a)の工程において、前記リードフレームの一端部を前記ハウジングの外部に引き出すとともに、前記一端部から前記ハウジングの内部に向かって延在するように前記リードフレームを配置して、前記リードフレームの他端部側に前記支持部を当接させて前記リードフレームを固定することが好ましい。これによれば、第1の金型と第2の金型との間でリードフレームを確実に固定することができるため、溶融樹脂を注入する際の圧力によるリードフレームの変形やずれを抑制することができ、リードフレームとハウジングとの間にリーク経路が形成されることを抑制できる。したがって、第1のキャビティ部の気密性を向上させて、外部の空気が孔部を通して第1のキャビティ部に流入することを確実に防止できる。
【0022】
前記(b)の工程において、熱可塑性樹脂を用いて前記リードフレームと前記ハウジングとを一体に成形することが好ましい。熱可塑性樹脂を用いることにより、あらかじめ加熱した溶融樹脂を低温の金型間のスペースに充填することにより成形可能である。例えば熱硬化型樹脂を用いる場合と比べて、金型を加熱して硬化する工程が不要であるため、工程時間を短縮して容易に成形することができる。
【0023】
本発明の物理量センサ装置の製造方法において、前記センサチップは圧力センサであることが好適である。これによれば、外部の空気が孔部を通して第1のキャビティ部に流入することを防止して、圧力を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の物理量センサ装置によれば、外部の空気がハウジングの孔部を通してキャビティ部に流入することを防止して、物理量測定の際の測定誤差を低減させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の物理量センサ装置及びその製造方法の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、説明が分かりやすいように、各図面の寸法は適宜変更して示している。
【0027】
<
参考例>
図1は、
参考例としての物理量センサ装置10の平面図である。また、
図2は、
図1のII−II線で切断して矢印方向から見たときの断面図である。
図1及び
図2に示すように、
参考例の物理量センサ装置10は、ハウジング30、リードフレーム40、センサチップ20を有して構成されている。
【0028】
ハウジング30は樹脂を用いて成形されており、
図2に示すように、ハウジング30は、ハウジング30の下部に形成された基部と、上部において設けられた第1のキャビティ部32とを有している。そして、第1のキャビティ部32には、物理量を検知するセンサチップ20が収納されている。また、リードフレーム40とハウジング30とは一体に成形されて、リードフレーム40はハウジング30に埋設されている。そして、センサチップ20とリードフレーム40とは、第1のキャビティ部32において、ボンディングワイヤ23を介して電気的に接続される。これにより、センサチップ20で検知した物理量が電気信号として外部に取り出される。
【0029】
参考例において、センサチップ20は、第1のキャビティ部32に加えられる圧力を測定する圧力センサである。センサチップ20の上面に、感応部としてダイヤフラム21が形成されており、ダイヤフラム21は、第1のキャビティ部32に加えられる圧力に応じて変形可能に形成されている。また、ダイヤフラム21には、ダイヤフラム21の撓みに応じて電気抵抗が変化する複数のピエゾ抵抗素子(図示しない)が設けられている。この複数のピエゾ抵抗素子によりブリッジ回路が構成されており、ピエゾ抵抗素子の抵抗変化に基づいて第1のキャビティ部32に加えられる気圧等を測定することができる。
【0030】
参考例の物理量センサ装置10は、例えば車載用の圧力センサ装置としてエンジンの吸排気系圧力検出用センサ装置に用いることができる。この場合、ガソリン、排気凝縮ガス、軽油等の薬品や水分が含まれる環境にて使用されることになる。また、物理量センサ装置10の適用対象は、これに限定されるものではない。例えば、携帯電話、腕時計、水中撮影カメラ等の携帯機器に搭載することも可能である。
【0031】
図2に示すように、第1のキャビティ部32には、センサチップ20及びボンディングワイヤ23を保護して腐食や断線等の発生を防止するために保護用樹脂25が充填されている。外部の圧力の変化は、保護用樹脂25を介してセンサチップ20のダイヤフラム21に伝達されることから、正確に圧力を測定可能とするために柔軟で低弾性であるフッ素系のゲル状絶縁材料が用いられている。なお、
図1では、図面を見やすくするために、ボンディングワイヤ23及び保護用樹脂25を省略して示している。
【0032】
図1及び
図2に示すように、センサチップ20の電気信号を外部に取り出すために複数のリードフレーム40が設けられており、リードフレーム40の一端部は、ハウジング30の外部に引き出されて、外部回路と接続するためのリード端子40cとして延出して形成されている。そして、リードフレーム40は、一端部からハウジング30の内部に向かって延在して形成されている。
【0033】
また、リードフレーム40はハウジング30に埋設されて一体に成形されており、リードフレーム40の表面40aは、第1のキャビティ部32の底面32aにおいてハウジング30に被覆されずに露出して形成されている。そして、リードフレーム40の表面40aとセンサチップ20とは、ボンディングワイヤ23を介して電気的に接続されている。リードフレーム40の表面40aの反対側である裏面40b側にはハウジング30の基部が形成されている。
【0034】
そして、
図1及び
図2に示すように、ハウジング30の第1のキャビティ部32の底面32aと平面視で重複しない位置において、リードフレーム40の裏面40bを底部34aとする第1の孔部34が形成されている。第1の孔部34は、リードフレーム40とハウジング30とを一体に成形する際に、成形金型の内部においてリードフレーム40を支持部によって固定することで形成されたものである。なお、平面視とは、第1のキャビティ部32の底面32aの法線方向から見た場合をいう。
【0035】
参考例において、第1の孔部34は、第1のキャビティ部32の底面32aに対して平面視で重複しない位置に形成されている。第1のキャビティ部32の底面32aの下方にはハウジング30の基部が設けられているため、
図8に示す従来例の物理量センサ装置110のように、第1のキャビティ部132の底面132a側において、第1のキャビティ部132と外部との間にリードフレーム140のみが介在する箇所が生じない。また、ハウジング30とリードフレーム40との密着性が十分ではない場合であっても、第1の孔部34の底部34aと第1のキャビティ部32との距離を従来に比べて長くすることができ、リーク経路が連続して形成されることを防止することができる。したがって、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止して、圧力等の物理量を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【0036】
参考例の物理量センサ10において、第1の孔部34を通して外部の空気が流入することを防止することができ、保護用樹脂25に気泡が発生することを防止することができる。よって、保護用樹脂25に加えられる圧力を正確に測定可能であり、測定誤差を低減して測定精度を向上させることができる。また、気泡の発生を防止できるため、温度変化に伴うドリフトの発生を抑制することが可能である。
【0037】
また、
参考例において、センサチップ20及びボンディングワイヤ23の全体を覆うように保護用樹脂25が第1のキャビティ部32に充填されているが、一部に保護用樹脂25が設けられている態様であってもよい。この場合であっても、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止することができる。よって、測定すべき第1のキャビティ部32の気圧が外部から流入した空気によって変動することを防止でき、測定誤差を低減させることができる。
【0038】
なお、
図1に示すように、第1の孔部34は複数形成されており、それぞれの第1の孔部34の底部34aがリードフレーム40の裏面40bとなるように設けられている。このような態様であっても外部の空気が第1のキャビティ部32に流入することを防止することができる。
【0039】
また、リード端子40cからハウジング30の内部に向かい延在するリードフレーム40の他端側において、第1の孔部34が形成されている。こうすれば、ハウジング30とリードフレーム40とを一体に成形する際に、リードフレーム40の一端側(リード端子40c)は一対の成形金型で挟まれて固定され、他端側は支持部によって固定される。したがって、支持部によってリードフレーム40を確実に固定した状態で樹脂成形される。
このため、溶融樹脂を注入する際の圧力によるリードフレーム40の変形や移動を抑制することができ、リードフレーム40とハウジング30との間にリーク経路が形成されることを抑制できる。したがって、第1のキャビティ部32の気密性を向上させて、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32の内部に流入することを確実に防止できる。
【0040】
<
本発明の実施形態>
図3は、
本発明の実施形態における物理量センサ装置11の平面図である。また、
図4は物理量センサ装置11の裏面図であり、
図5は、
図3のV−V線で切断して矢印方向から見たときの断面図である。なお、
図3では、図面を見やすくするために保護用樹脂25、26及びボンディングワイヤ23、24を省略して示している。
【0041】
本発明の実施形態の物理量センサ装置11において、
参考例と同様に、ハウジング30に第1のキャビティ部32が設けられており、第1のキャビティ部32には、物理量を検知するセンサチップ20が収納されている。また、
図3及び
図5に示すように、ハウジング30には、さらに第2のキャビティ部33が形成されており、第2のキャビティ部33には制御回路チップ22が収納されている。
【0042】
図3及び
図5に示すように、リードフレーム40の一端部は、ハウジング30の外部に引き出されており、外部回路と接続するためのリード端子40cとして延出して形成されている。そして、リードフレーム40の一端部からハウジング30の内部に向かって、第1のキャビティ部32を横断して第2のキャビティ部33まで延在して形成されている。
【0043】
リードフレーム40の表面40aは、第1のキャビティ部32の底面32a及び第2のキャビティ部33の底面33aにおいて、ハウジング30に被覆されずに露出して形成されている。そして、センサチップ20及び制御回路チップ22と、リードフレーム40の表面40aとは、ボンディングワイヤ23、24を介して電気的に接続されている。また、リードフレーム40は複数本設けられており、それぞれがセンサチップ20及び制御回路チップ22と接続されている。
図3及び
図5に示すように、リードフレーム40に加えてリードフレーム41が複数本形成されており、ボンディングワイヤ24を介して制御回路チップ22と接続されている。
【0044】
本実施形態においても、リードフレーム40及びリードフレーム41とハウジング30とは一体に成形されており、リードフレーム40の裏面40b、及びリードフレーム41の裏面41b側にはハウジング30の基部が形成されている。そして、
図4及び
図5に示すように、ハウジング30にはリードフレーム40の裏面40bを底部34aとする第1の孔部34、及びリードフレーム41の裏面41bを底部35aとする第2の孔部35が形成されている。
【0045】
そして、第1の孔部34及び第2の孔部35は、前記第2のキャビティ部33の底面33aと平面視で重複する位置において形成されている。すなわち、第1のキャビティ部32と平面視で重複する位置に第1の孔部34、第2の孔部35を設けることなく、ハウジング30とリードフレーム40、リードフレーム41とを一体に成形できる。よって、第1のキャビティ部32の底面32a側において、第1のキャビティ部32と外部との間にリードフレーム40のみが介在する箇所が生じない。また、ハウジング30とリードフレーム40との密着性が十分ではない場合であっても、第1の孔部34の底部34aと第1のキャビティ部32との距離を従来に比べて長くすることができ、第1の孔部34と第1のキャビティ部32との間にリーク経路が連続して形成されることを防止することができる。したがって、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止して、物理量を測定する際の測定誤差を低減できる。
【0046】
また、本実施形態において、第2のキャビティ部33は第1のキャビティ部32とは別に形成されているため、第1の孔部34及び第2の孔部35と第2のキャビティ部33との間にリーク経路が形成された場合であっても、センサチップ20が収納された第1のキャビティ部32に第1の孔部34及び第2の孔部35を通して外部の空気が流入することを防ぐことができる。
【0047】
また、
図5に示すように第1のキャビティ部32には、センサチップ20において物理量を測定可能とするために、柔軟性のあるゲル状の保護用樹脂25が充填されている。また、第2のキャビティ部33には制御回路チップ22及びボンディングワイヤ24を保護するために保護用樹脂26が充填されている。保護用樹脂26として、例えばエポキシ樹脂など、保護用樹脂25よりも硬度の高い材料を用いることができる。よって、第2のキャビティ部33において、リードフレーム40及びリードフレーム41とハウジング30との間にリーク経路が形成された場合であっても、保護用樹脂26によって密閉性を確保することができる。
【0048】
したがって、本実施形態の物理量センサ装置11によれば、外部の空気が第1の孔部34及び第2の孔部35を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止して、測定誤差を低減させることが可能となる。
【0049】
本実施形態において、制御回路チップ22としてシリコン基板からなる集積回路(IC:Integrated Circuit)を用いている。制御回路チップ22は、センサチップ20からの信号が入力されると、これを信号処理して検出信号として出力することができる。また、センサチップ20のピエゾ抵抗素子には温度特性があるため、物理量センサ装置11を広い温度範囲で使用するためには温度補償を行う必要がある。本実施形態において、ICを構成するトランジスタ等の素子は温度によって電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化からハウジング30内の温度を計測することができ、これに基づいてセンサチップ20が検知する物理量の温度補償を行うことができる。よって測定誤差を低減して、測定精度を向上させることが可能である。
<実施例>
図6のグラフには、本発明の実施例及び比較例について、圧力を繰り返し変化させた場合における測定誤差を示す。実施例の物理量センサ装置として、
図1及び
図2に示した
参考例の物理量センサ装置10を用い、比較例として、第1の孔部34を第1のキャビティ部32と重複する位置に設けた物理量センサを用いた。測定誤差の評価は、圧力コントローラによって20kPa〜160kPaの範囲で20kPa間隔で圧力を変化させて、実施例及び比較例の圧力データを取得した。これを10回繰り返して測定を行い、各圧力における圧力データのばらつきΔ(最大出力−最小出力)を評価した。なお、
図6に示すグラフは絶対圧基準で示しており、100kPaでほぼ常圧である。また測定は常温にて行った。
【0050】
図6に示すように、比較例の物理量センサ装置は、100kPa以下の減圧時において、測定誤差が大きくなる傾向を示しており、20kPaの圧力においてΔ=0.011kPaの測定誤差を示している。これは孔部から空気が流入して保護用樹脂内に気泡として残留したため、気泡が保護用樹脂内で膨張し、その際の応力が樹脂を介してセンサに伝達しノイズとなったことで、センサチップで正確な測定ができなかったと考えられる。これに対して、実施例の物理量センサ装置では、20kPa〜160kPaの範囲で0.001kPa程度以下のばらつきに抑えられており、特に、減圧時において比較例よりも大幅にばらつきが低減されている。以上の結果より、本実施例の物理量センサ装置では、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止して、測定誤差を低減できるという効果が示された。
【0051】
<物理量センサ装置の製造方法>
図7(a)〜
図7(c)は、
本発明の実施形態における物理量センサ装置11の製造方法を示す工程図である。
【0052】
図7(a)の工程では、第1の金型50と第2の金型55との間において、リードフレーム40、リードフレーム41を所定の箇所に配置する。
図7(a)に示すように、第1の金型50には第1の凸部51及び第2の凸部52が形成されている。また、第2の金型55には第1の支持部56及び第2の支持部57が形成されている。
【0053】
図7(b)の工程では、第1の金型50と第2の金型55とを型締めして、リードフレーム40、リードフレーム41を固定した状態で、溶融樹脂60を充填する。第1の金型50と第2の金型55とを型締めする際に、リードフレーム40の表面40aに第1の凸部51を当接させる。そして、第1の凸部51と平面視で重複しない位置において、リードフレーム40の表面40aの反対側である裏面40bに第1の支持部56を当接させる。このようにして、第1の凸部51と第1の支持部56とでリードフレーム40を挟むように固定することができる。
【0054】
さらに、リードフレーム40の一端部側において第1の金型50及び第2の金型55の外縁部で固定されて、また、リードフレーム40の他端部側においては、リードフレーム40の表面40aに第2の凸部52を当接させるとともに、第2の凸部52と対向する位置において、リードフレーム40の裏面40bに第1の支持部56を当接させてリードフレーム40を固定する。また、リードフレーム41についても、第2の凸部52と第2の支持部57によって挟むように固定されている。このようにして、第1の金型50と第2の金型55とが型締めされる。
【0055】
このように第1の金型50と第2の金型55との間でリードフレーム40を確実に固定することができるため、溶融樹脂60を充填する際の圧力によるリードフレーム40の変形や位置ずれを防止できる。よって、リードフレーム40とハウジング30との間にリーク経路が形成されることを確実に防止できる。
【0056】
そして、第1の金型50と第2の金型55との間に形成される空間に、ゲート58から溶融樹脂60を射出する。溶融樹脂60は、あらかじめ加熱して溶融されたものを射出して、第1の金型50と第2の金型55との形状に倣って溶融樹脂60が充填された状態で冷却され、硬化される。本実施形態において、溶融樹脂60として熱可塑性樹脂を用いることができ、例えばPPS(ポリフェニレンスルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネイト)等を用いることができる。熱可塑性樹脂を用いることにより、熱硬化型樹脂を用いる場合と比べて、金型を加熱して硬化する工程が不要であるため、工程時間を短縮して容易に成形することができる。
【0057】
その後、
図7(c)に示すように、第1の金型50及び第2の金型55を離型することによりリードフレーム40とハウジング30とが一体に成形される。ハウジング30には、第1の凸部51及び第2の凸部52に対応する第1のキャビティ部32及び第2のキャビティ部33が形成されており、また、第1の支持部56及び第2の支持部57に対応する第1の孔部34及び第2の孔部35が形成されている。
【0058】
そして、第1のキャビティ部32にセンサチップ20を、また、第2のキャビティ部33には制御回路チップ22を接着して、それぞれワイヤボンディングによりリードフレーム40及びリードフレーム41と接続する。その後、保護用樹脂25、26を充填して、
図3から
図5に記載の物理量センサ装置11が形成される。
【0059】
本実施形態の製造方法により、第1の孔部34を、第1のキャビティ部32の底面32aに対して平面視で重複しない位置に形成することができる。したがって、第1のキャビティ部32の底面32a側において、第1のキャビティ部32と外部との間にリードフレーム40のみが介在する箇所が生じない。また、ハウジング30とリードフレーム40との密着性が十分ではない場合であっても、第1の孔部34の底部34aと第1のキャビティ部32との距離を従来に比べて長くすることができ、第1の孔部34と第1のキャビティ部32との間にリーク経路が連続して形成されることを防止することができる。したがって、外部の空気が第1の孔部34を通して第1のキャビティ部32に流入することを防止して、圧力等の物理量を測定する際の測定誤差を低減させることができる。
【0060】
また、第1の支持部56により形成されるハウジング30の孔部は、第2の凸部52により形成される第2のキャビティ部33の底面33a側に形成される。したがって、第1のキャビティ部32に孔部を通して外部の空気が流入することを防止できる。
【0061】
なお、
図7各図において、第1の支持部56及び第2の支持部57について、第2の金型55と一体に設けているがこれに限定する物ではない。第1の支持部56及び第2の支持部57を別に形成して入れ子とする方法や、第2の金型55に支持部用の孔部を設けて支持ピンを移動可能として挿入する方法等であっても良い。