【文献】
Protein Expr. Purif.,1996年,vol.7, no.4,p.400-6
【文献】
Rising A. et al. 'Euprosthenops australis partial mRNA for major ampullate spidroin 1 (MaSp1 gene) ', GenBank [online], 2006年11月15日, Database Accession No.AM259067, [2014年8月26日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/am259067>
【文献】
Rising A. et al. 'Major ampullate spidroin 1 precursor', UniProtKB/Swiss-Prot [online], 2006年11月28日, Database Accession No.Q05H60_9ARAC, [2014年8月26日検索], インターネット< http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/q05h60>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単離したスパイダーシルクタンパク質であって、170ないし760のアミノ酸残基からなり、式NT2−REP−CT及びNT−REP−CTによって規定されるタンパク質の群から選択され;
NTが100ないし160のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のN末端断片であるタンパク質断片であり、前記N末端断片が配列番号6と少なくとも80%同一であり;
REPが70ないし300のアミノ酸残基であって、L(AG)nL、L(AG)nAL、L(GA)nL、L(GA)nGLからなる群から選択されるタンパク質断片であり;
nが2ないし10の整数であり;
各々の独立したAセグメントが8ないし18のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、0ないし3の前記アミノ酸残基がAlaではなく、残余の前記アミノ酸残基がAlaであり;
各々の独立したGセグメントが12ないし30のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、少なくとも40%のアミノ酸残基がGlyであり;
各々の独立したLセグメントが0ないし20のアミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列であり;
CTが70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のC末端断片であるタンパク質断片であり、前記C末端断片が配列番号7と少なくとも80%同一であることを特徴とする、単離したスパイダーシルクタンパク質。
【発明の概要】
【0011】
スパイダーシルクタンパク質の重合体を産生する方法であって、スパイダーシルクタンパク質の溶解度及び重合が制御される方法を提供することが本発明の目的である。
【0012】
更に、スパイダーシルクタンパク質の繊維を産生する方法であって、スパイダーシルクタンパク質の溶解度および繊維形成が制御される方法を提供することが本発明の目的である。
【0013】
新規性があり、スパイダーシルクの繊維、薄膜、発泡樹脂、ネット及びメッシュを提供できるスパイダーシルクタンパク質を提供することが本発明の別の目的である。
【0014】
水溶性であって、所望の時点(at wish)で繊維に重合するよう容易に操作されうるスパイダーシルクタンパク質を提供することが本発明の一目的である。この特性によって総ての以下のステップを生理学的条件下で行うことが可能となり、毒性及びタンパク質変性に対するリスクを低減する。
【0015】
新規のスパイダーシルクタンパク質の繊維を提供することが本発明の更に別の目的である。
【0016】
所望の時点で繊維に重合するよう容易に操作されうるスパイダーシルクタンパク質を大規模に提供することが本発明の一目的である。
【0017】
更に、スパイダーシルクタンパク質とスパイダーシルクタンパク質の繊維とを産生する方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
以下の開示から明確になるこれらの目的、及び他の目的のために、本発明は第1の態様によって、単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生し、
(i)170ないし760のアミノ酸残基からなり:
スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片からなるN末端断片と;
スパイダーシルクタンパク質の反復断片由来の70ないし300のアミノ酸残基の反復断片と;
を含み;
70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質のC末端断片由来であるC末端断片;
を任意に含むスパイダーシルクタンパク質を提供するステップと;
(ii)pHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である液体培地において、前記スパイダーシルクタンパク質の溶液を提供するステップであって、リポ多糖類及び他の発熱物質の除去を任意に含むステップと;
(iii)6.3以下のpH、及び前記スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成に、前記液体培地の特性を調節するステップと;
(iv)スパイダーシルクタンパク質が前記液体培地において重合体、好適には、固形重合体を形成できるようにするステップであって、前記液体培地はpHが6.3以下であり、かつ前記スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成であるステップと;
(v)スパイダーシルクタンパク質の重合体を前記液体培地から単離するステップと;
を具える方法を提供する。
【0019】
一実施形態においては、ステップ(iii)及びステップ(iv)の液体培地のpHは6.2以下、例えば6.0以下である。一実施形態においては、ステップ(iii)及びステップ(iv)の液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上である。特定の実施形態においては、ステップ(iii)及びステップ(iv)の液体培地のイオン強度の範囲は1ないし250mMである。
【0020】
ある実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上である。一実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0021】
別の態様によると、本発明はスパイダーシルクタンパク質の重合体を提供し、該タンパク質は170ないし760のアミノ酸残基からなり:
スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片からなるN末端断片と;
スパイダーシルクタンパク質の反復断片由来の70ないし300のアミノ酸残基の反復断片と;
を含み、
70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質のC末端断片由来であるC末端断片;
を任意に含んでいる。
【0022】
これらの2の態様の特定の実施形態において、スパイダーシルクタンパク質は170ないし600のアミノ酸残基からなり、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の単一のN末端断片を含んでいる。これらの2の態様の特定の他の実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片は、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも2の断片を含んでいる。
【0023】
これらの2の態様の好適な実施形態においては、タンパク質は式NT
2−REP−CT、NT−REP−CT、NT
2−REP、及びNT−REPによって規定されるタンパク質の群から選択され;
NTは100ないし160のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のN末端断片であるタンパク質断片であり;
REPは70ないし300のアミノ酸残基であって、L(AG)
nL、L(AG)
nAL、L(GA)
nL、L(GA)
nGLの群から選択されるタンパク質断片であり;
nは2ないし10の整数であり;
各々の独立したAセグメントは8ないし18のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、0ないし3のアミノ酸残基はAlaではなく、残余のアミノ酸残基はAlaであり;
各々の独立したGセグメントは12ないし30のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、少なくとも40%のアミノ酸残基はGlyであり;
各々の独立したLセグメントは0ないし20のアミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列であり;
CTは70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のC末端断片であるタンパク質断片である。
【0024】
ある実施形態においては、重合体は重合した該タンパク質の二量体からなる。
【0025】
好適な実施形態においては、リポ多糖類及び他の発熱物質の含量は単離したタンパク質の1EU/mg以下である。
【0026】
一実施形態においては、重合体は繊維、薄膜、発泡樹脂、ネット、又はメッシュである。好適な実施形態においては、重合体は直径が0.1μmを超え、長さが5mmを超える繊維である。
【0027】
一態様によると、本発明は単離したスパイダーシルクタンパク質の二量体を産生する方法であって:
(i)170ないし760のアミノ酸残基のスパイダーシルクタンパク質を提供するステップであって、該タンパク質が:
スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片からなるN末端断片と;
スパイダーシルクタンパク質の反復断片由来の70ないし300のアミノ酸残基の反復断片と;
を含み、
70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質のC末端断片由来であるC末端断片;
を任意に含むステップと;
(ii)pHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である液体培地において、スパイダーシルクタンパク質の二量体の溶液を提供するステップと;
(iii)ステップ(ii)で得られた二量体を単離するステップであって、リポ多糖類及び他の発熱物質の除去を任意に含むステップ;
とを具える方法を提供する。
【0028】
ある実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上である。一実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0029】
一実施形態においては、前記スパイダーシルクタンパク質を提供するステップ(i)は:
(a)好適な宿主において前記スパイダーシルクタンパク質をコードするポリ核酸分子を発現するステップと;
(b)ステップ(a)で得られたタンパク質を単離するステップであって、リポ多糖類及び他の発熱物質の除去を任意に含むステップと;
を具える。
【0030】
ある態様によると、本発明はスパイダーシルクタンパク質の二量体を提供し、該タンパク質は170ないし760のアミノ酸残基からなり:
スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片からなるN末端断片と;
スパイダーシルクタンパク質の反復断片由来の70ないし300のアミノ酸残基の反復断片と;
を含み、
70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質のC末端断片由来であるC末端断片;
を任意に含んでいる。
【0031】
これらの2の態様の特定の実施形態において、スパイダーシルクタンパク質は170ないし600のアミノ酸残基からなり、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の単一のN末端断片を含んでいる。これらの2の態様の特定の他の実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片は、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも2の断片を含んでいる。
【0032】
別の態様によると、本発明は単離したスパイダーシルクタンパク質を提供し、170ないし760のアミノ酸残基からなり、式NT
2−REP−CT、NT−REP−CT、NT
2−REP、及びNT−REPによって規定されるタンパク質の群から選択され;
NTは100ないし160のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のN末端断片であるタンパク質断片であり;
REPは70ないし300のアミノ酸残基であって、L(AG)
nL、L(AG)
nAL、L(GA)
nL、L(GA)
nGLの群から選択されるタンパク質断片であり;
nは2ないし10の整数であり;
各々の独立したAセグメントは8ないし18のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、0ないし3のアミノ酸残基がAlaではなく、残余のアミノ酸残基がAlaであり;
各々の独立したGセグメントは12ないし30のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、少なくとも40%のアミノ酸残基がGlyであり;
各々の独立したLセグメントは0ないし20のアミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列であり;
CTは70ないし120のアミノ酸残基であって、スパイダーシルクタンパク質由来のC末端断片であるタンパク質断片である。
【0033】
一実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質は170ないし600のアミノ酸残基からなり、式NT−REP−CT及びNT−REPによって規定されるタンパク質の群から選択される。
【0034】
特定の実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質は配列番号3ないし5、17、19ないし23、25、及び31からなる群から選択される。
【0035】
ある態様によると、本発明はスパイダーシルクタンパク質の二量体を産生するための、本発明のスパイダーシルクタンパク質の使用を提供する。
【0036】
一態様によると、本発明はスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生するための、本発明のスパイダーシルクタンパク質の使用を提供する。
【0037】
ある態様によると、本発明は単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生するための、本発明によるスパイダーシルクタンパク質の二量体の使用を提供する。
【0038】
これらの態様の好適な実施形態においては、前記重合体は、pHが6.3以下であり、かつ前記スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成である液体培地において産生される。
【0039】
一態様によると、本発明は、pHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である液体培地において溶解される、本発明による単離したスパイダーシルクタンパク質を含む組成物を提供する。
【0040】
ある実施形態においては、液体培地のpHは7.0以上である。一実施形態においては、液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0041】
特定の実施形態においては、組成物におけるリポ多糖類及び他の発熱物質の含量は単離したタンパク質の1EU/mg以下である。
【0042】
別の態様によると、本発明は:
配列番号14ないし16、18及び24からなる群から選択される核酸配列と;
配列番号3ないし5、17、19ないし23、25及び31をコードする核酸配列と;
本発明によるスパイダーシルクタンパク質をコードする核酸配列と;
その相補的な核酸配列と;
を含む、単離したポリ核酸分子を提供する。
【0043】
更に別の態様によると、本発明は、本発明によるスパイダーシルクタンパク質を産生する方法であって:
(i)好適な宿主において前記スパイダーシルクタンパク質をコードするポリ核酸分子を発現するステップと;
(ii)ステップ(i)で得られたタンパク質を単離するステップであって、リポ多糖類及び他の発熱物質の除去を任意に含むステップと;
を具える方法を提供する。
【0044】
更に、1種類の分子又は異なる数種類の分子の重合体又は低重合体を可逆形成する方法であって:
(i)前記分子を提供するステップであって、各々の分子が:
(a)スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の少なくとも1の第1の結合成分と;
(b)タンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質から別個に選択される第2の成分と;
を含むステップと;
(ii)pHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記結合成分を介して該1以上の分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成である液体培地に、前記分子の溶液を提供するステップと;
(iii)6.3以下のpH、及び前記結合成分を介して前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成に、前記液体培地の特性を調節するステップと;
(iv)前記分子が液体培地において、前記結合成分を介して重合体又は低重合体を形成できるようにするステップと;
を具える方法が提供され、前記液体培地はpHが6.3以下であり、前記結合成分を介して前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である。
【0045】
ある実施形態においては、ステップ(i)の前記分子は同一であり、ステップ(iv)の前記重合体又は低重合体は同種重合体又は同種低重合体(homooligomer)である。別の実施形態においては、ステップ(i)の前記分子は同一ではなく、ステップ(iv)の前記重合体又は低重合体が異種重合体又は異種低重合体(heterooligomer)である。
【0046】
好適な実施形態においては、ステップ(iv)の前記重合体又は低重合体は、pHが6.3以下であり、かつ前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である前記液体培地において溶解される。
【0047】
一実施形態においては、ステップ(iii)及びステップ(iv)の液体培地のpHは6.2以下、例えば6.0以下であり、かつ/あるいは、ステップ(iii)及びステップ(iv)の液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上である。
【0048】
特定の実施形態においては、ステップ(iv)の液体培地のイオン強度の範囲は1ないし250mMである。
【0049】
ある実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上である。一実施形態においては、ステップ(ii)の液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0050】
好適な実施形態においては、前記第2の成分はタンパク質である。
【0051】
一実施形態においては、本方法は更に:
(v)6.4以上のpH、及び/又は前記重合体若しくは低重合体を分解すべく前記分子の重合若しくは低重合を阻止するイオン組成に、前記液体培地の特性を調節するステップ;
を具える。
【0052】
ある実施形態においては、ステップ(ii)及び/又はステップ(v)の液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上である。一実施形態においては、ステップ(ii)及び/又はステップ(v)の液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0053】
好適な実施形態においては、ステップ(iv)の重合体又は低重合体は相互作用の調査、選別、酵素複合体の誘発活性、又はFRET分析に用いられる。
【0054】
一実施形態においては、ステップ(i)の少なくとも1の分子型は固形担体又はアフィニティ培地の基質に固定化される。
【0055】
分子の集合に含まれる分子の部分集合間の結合相互作用を検出する方法であって:
(i)前記分子の集合を提供するステップであって、各々の分子が:
(a)スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の少なくとも1の第1の結合成分と;
(b)タンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質から別個に選択される第2の成分と;
を含むステップと;
(ii)pHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成である液体培地に、前記分子の集合の溶液を提供するステップと;
(iii)6.3以下のpH、及び前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成に、前記液体培地の特性を調節するステップと;
(iv)前記分子が液体培地において、前記結合成分を介して重合体又は低重合体を形成できるようにするステップであって、前記液体培地はpHが6.3以下であり、前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成であるステップと;
(v)6.4以上のpH、及び/又は前記重合体若しくは低重合体を分解すべく前記分子の重合若しくは低重合を阻止するイオン組成に、前記液体培地の特性を調節するステップと;
(vi)2以上の異なる分子間で前記結合成分を介して媒介されず、前記分子の部分集合を形成する結合相互作用の存在を判定するステップと;
を具える方法が更に提供される。
【0056】
新規性のある1以上の分子の使用であって、各々が:
(a)スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の少なくとも1の第1の結合成分と;
(b)タンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質から別個に選択される第2の成分と;
を含み、pHが6.3以下であり、かつ前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である溶液において、前記結合成分を介して前記分子の重合体又は低重合体を可逆形成するための使用が更に提供される。
【0057】
好適な実施形態においては、重合体又は低重合体は相互作用の調査、選別、酵素複合体の誘発活性、又はFRET分析に用いられる。
【0058】
別の態様においては、本発明は基質と、当該基質と結合した親和性相互作用のためのリガンドとを含むアフィニティ培地を提供し、そのリガンドはスパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片を含んでいる。
【0059】
好適な実施形態においては、基質は粒子及びフィルタからなる群から選択される。
【0060】
本発明の他の態様及び実施形態は説明により明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は一般的には、これまで理解が不十分であったスパイダーシルクタンパク質のN末端の非反復断片がこれらのタンパク質の重合において関与しているという発明の見識、特にこの断片を含む重合体の形成が特定のパラメータを変えることによって密に制御できるという発明の見識による。この見識は単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生する新規の方法に発展している。実施例は必然的に特定のタンパク質、この場合にはEuprosthenops australisの大嚢状腺(major)スピドロイン1(MaSp1)由来のタンパク質に関連づけているが、本明細書中に開示の方法は重合体を産生する目的で任意の類似するタンパク質に適用可能であることは考慮すべきである。
【0064】
この見識は更に、新規のスパイダーシルクタンパク質モチーフの、スパイダーシルク繊維を組換え産生するのに十分な同定に通じている。新規のスパイダーシルクタンパク質モチーフは、本明細書中に報告するような、新規のスパイダーシルクタンパク質及び遺伝子の構成の開始点として有用であると導かれる。新規のスピドロインから得られるタンパク質で形成される重合体は、その物理学的特性、特に強度の高さ、弾性、及び重量の軽さの有用な組合せについて有用である。更に、細胞接着及び増殖を支持する性能について有用である。牽引糸のシルクの特性は医用目的又は技術目的のための新規の材料の開発の点で魅力的である。特に、本発明によるスパイダーシルクは移植片といった医用デバイス、ならびに創傷閉止システム、バンドエイド、縫合糸、創傷ドレッシング剤、及び組織操作及び細胞再産生の誘導用の骨格といった医用製品に有用である。本発明によるスパイダーシルクは更に、パラシュート、防弾衣、シートベルト等といった生地又は織物として用いるのに特に有用である。この方法を用いると、開裂剤を用いて重合が所望されるプロセス中に開裂される開裂可能な融合パートナーの導入を必要としなくなる。このことによって、スパイダーシルクタンパク質及びその重合体の産生及び収率が向上し、工業上の産生プロセスに利点を与える。
【0065】
本明細書中で用いられるような用語「繊維(fiber)」は、厚さが少なくとも0.1μmの重合体、好適にはヒトの肉眼で認識できるマクロ的な重合体、すなわち1μmの重合体と関連付けられ、その厚さと比べて長さが相当に、好適には5mmを超えて伸展する。用語「繊維」は不定形の凝集体又は沈殿物を包含しない。
【0066】
用語「スピドロイン(spidroin)」及び「スパイダーシルクタンパク質(spider silk protein)」は本記載にわたって互換的に用いられ、総ての既知のスパイダーシルクタンパク質を包含し、ニワオニグモの場合には一般的には「MaSp」又は「ADF」と略記される大嚢状腺スパイダーシルクタンパク質を含む。これらの大嚢状腺スパイダーシルクタンパク質は一般的には1型と2型の2種類ある。これらの用語は更に、添付の特許請求の範囲及び項目別の実施形態に規定されるような、本発明による新規のタンパク質と、既知のスパイダーシルクタンパクと同一度及び/又は類似度が高い、他の非天然性のタンパク質とを含む。
【0067】
従って、本発明は単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生する方法を提供する。第1のステップにおいて、組換え型のスパイダーシルクタンパク質が提供される。スパイダーシルクタンパク質は一般的には170ないし600のアミノ酸残基といった170ないし760のアミノ酸残基、好適には300ないし400のアミノ酸残基といった280ないし600のアミノ酸残基、更に好適には340ないし380のアミノ酸残基からなる。スパイダーシルクタンパク質が長くなると、不定形の凝集体を形成し、可溶化及び重合のための強い(harsh)溶媒の使用が必要となる傾向があるため大きさは小さいのが有利である。組換え型のスパイダーシルクタンパク質は特に、スパイダーシルクタンパク質がスパイダーシルクタンパク質のN末端部分由来の2を超える断片を含む場合においては、760を超える残基を含んでもよい。スパイダーシルクタンパク質は、スパイダーシルクタンパク質の対応する部分由来の少なくとも1の断片(NT)と、スパイダーシルクタンパク質の対応する内部断片由来の反復断片(REP)とを含む。任意に、スパイダーシルクタンパク質は、対応するスパイダーシルクタンパク質断片由来のC末端断片(CT)を含む。スパイダーシルクタンパク質は一般的には、スパイダーシルクタンパク質のN末端部分由来の単一断片(NT)を含むが、好適な実施形態においては、N末端断片はスパイダーシルクタンパク質のN末端部分由来の少なくとも2の、例えば2の断片(NT)を含む。このように、スピドロインは概略的に式NT
m−REP、代替的にはNT
m−REP−CTで表現できる。ここで、mは1以上、例えば2以上の、好適には1ないし2、1ないし4、1ないし6、2ないし4、又は2ないし6の範囲にある整数である。好適なスピドロインは概略的に式NT
2−REP又はNT−REP、代替的にはNT
2−REP−CT又はNT−REP−CTで表現できる。タンパク質断片は一般的にはペプチド結合を介して共有結合される。一実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質はREP断片に結合した1以上のNT断片からなり、そのREP断片は任意にCT断片と結合する。
【0068】
NT断片はスパイダーシルクタンパク質のN末端のアミノ酸配列と類似度が高い。
図1に示すように、このアミノ酸配列は多様な種及びスパイダーシルクタンパク質の間で都合良く維持されており、MaSp1及びMaSp2を含んでいる。
図1においては、以下のスピドロインのNT断片は配列され、該当する場合にはGenBankアクセス項目で表示される。
【0069】
[表1:スピドロインのNT断片]
【表1】
【0070】
N末端断片に対応する部分のみが、各々の配列で示されており、シグナルペプチドを省略している。Ncフラッグ部及びNlmフラッグ部は「Rising Aら、Biomacromolecules7,3120−3124(2006)」で翻訳及び編集されている。
【0071】
NTは酸性残基及び塩基性残基が対向する極のクラスターに局在化する場合に双極子モーメントが明確になることが観察される。限定を所望しないが、観察したNTの重合は、NT二量体の線形アレイの形成に関与し、アレイにおける隣の二量体において、1のサブユニットの負の表面が隣接するサブユニットの正の表面に対面して、極が向かい合って積層されることは予測されよう。
【0072】
NT断片が完全には欠損していない限りにおいては、特定のNT断片が本発明によるスパイダーシルクタンパク質に存在することは重要ではない。従って、本発明によるNT断片は
図1に示されるアミノ酸配列、あるいは類似度の高い配列のいずれかから選択できる。広範で多様なN末端配列は本発明によるスパイダーシルクタンパク質で用いることができる。
図1の相同配列によると、配列:
QANTPWSSPNLADAFINSF(M/L)SA(A/I)SSSGAFSADQLDDMSTIG(D/N/Q)TLMSAMD(N/S/K)MGRSG(K/R)STKSKLQALNMAFASSMAEIAAAESGG(G/Q)SVGVKTNAISDALSSAFYQTTGSVNPQFV(N/S)EIRSLI(G/N)M(F/L)(A/S)QASANEV(配列番号8)
;はコンセンサスNTアミノ酸配列を構成する。
【0073】
本発明によるNT断片の配列は、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と少なくとも50%同一、好適には少なくとも60%同一であり、
図1のアミノ酸配列に基づいている。好適な実施形態においては、本発明によるNT断片の配列は、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と少なくとも65%同一、好適には少なくとも70%同一である。好適な実施形態においては、本発明によるNT断片は更に、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と70%、好適には80%類似している。
【0074】
本発明による代表的なNT断片は、Euprosthenops australis配列の配列番号6である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%同一である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列、特にEa MaSp1と同一である。
【0075】
NT断片は100ないし160のアミノ酸残基を含む。NT断片は少なくとも100の、又は110を超え、好適には120を超えるアミノ酸残基を含むことが好適である。NT断片は最大で160の、又は140未満のアミノ酸残基を含むことが更に好適である。一般的なNT断片は約130ないし140のアミノ酸残基を含む。
【0076】
スパイダーシルクタンパク質のN末端断片が、スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の2以上の断片(NT)を含む場合、更に1以上のリンカーペプチドを含んでもよい。1以上のリンカーペプチドは2のNT断片の間に配置され、スペーサーを提供できる。
【0077】
タンパク質断片REPの特徴は反復性であり、アラニンリッチな伸展部ないしグリシンリッチな伸展部が交互に現れる。REP断片は一般的には70を超え、例えば140を超え、かつ300未満、好適には240未満、例えば200未満のアミノ酸残基を含み、以下に更に詳細に説明されるように、それ自体が数個のL(リンカー)セグメント、A(アラニンリッチ)セグメント、及びG(グリシンリッチな)セグメントに分割できる。一般的には、前記リンカーセグメントは任意であり、REP断片の末端に配置されるが、残余のセグメントはアラニンリッチ部とグリシンリッチ部が交互となる。従って、REP断片は一般的には以下の構造:
L(AG)
nL、例えばLA
1G
1A
2G
2A
3G
3A
4G
4A
5G
5L;
L(AG)
nAL、例えばLA
1G
1A
2G
2A
3G
3A
4G
4A
5G
5A
6L;
L(GA)
nL、例えばLG
1A
1G
2A
2G
3A
3G
4A
4G
5A
5L;又は、
L(GA)
nGL、例えばLG
1A
1G
2A
2G
3A
3G
4A
4G
5A
5G
6L
のいずれかとなる。ここでnは整数である。アラニンリッチセグメント及びグリシンリッチセグメントのいずれがN末端又はC末端のリンカーセグメントに隣接しているかは重要ではないと導かれる。nが、2ないし10、好適には2ないし8、好適には4ないし8、更に好適には4ないし6の整数であること、すなわち、n=4、n=5、又はn=6であることが好適である。
【0078】
好適な実施形態においては、本発明によるREP断片のアラニン成分は20%超、好適には25%超、更に好適には30%超であり、かつ50%未満、好適には40%未満、更に好適には35%未満である。アラニン成分が高くなると、繊維が硬くなり、かつ/あるいは、強くなり、かつあるいは伸展性が低くなることが予期されるため有効である。
【0079】
特定の実施形態においては、REP断片はプロリン残基を欠いている。すなわち、REP断片においてPro残基がない。
【0080】
本発明によるREP断片を構成するセグメントによると、各々のセグメントは独立であることは強調すべきであろう。すなわち、特定のREP断片の任意の2のAセグメント、任意の2のGセグメント、任意の2のLセグメントは同一であっても、あるいは同一でなくてもよい。従って、各々の種類のセグメントが特定のREP断片で同一であることは本発明の一般的な特徴ではない。逆に、以下の開示によって、当業者は別個のセグメントの設計方法及びREP断片への集結方法の指針が提供され、それは、本発明によるスパイダーシルクタンパク質の機能性の一部となる。
【0081】
各々の独立したAセグメントのアミノ酸配列は8ないし18のアミノ酸残基である。各々の独立したAセグメントは13ないし15のアミノ酸残基を含むことが好適である。更に、多数又は3以上のAセグメントが13ないし15のアミノ酸残基を含み、少数、例えば1又は2のAセグメントは8ないし18のアミノ酸残基、例えば8ないし12又は16ないし18のアミノ酸残基を含むことが可能である。これらのアミノ酸残基の大多数はアラニン残基である。更に特異的なことに、0ないし3のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく、残余のアミノ酸残基はアラニン残基である。従って、各々の独立したAセグメントにおける総てのアミノ酸残基は、例外なく、あるいは1、2、又は3のアミノ酸残基が任意のアミノ酸にできることを除いては、アラニン残基である。アラニンで置換した1以上のアミノ酸は天然アミノ酸であることが好適であり、好適にはセリン、グルタミン酸、システイン、及びグリシンからなる群から別個に選択され、更に好適にはセリンである。当然ながら、1以上のAセグメントは総てがアラニンセグメントであるが、残余のAセグメントは1ないし3の非アラニン残基、例えばセリン、グルタミン酸、システイン、又はグリシンを含むことが可能である
【0082】
好適な実施形態においては、各々のAセグメントは13ないし15のアミノ酸残基を含み、上述のように10ないし15のアラニン残基と0ないし3の非アラニン残基とを含む。更に好適な実施形態においては、各々のAセグメントは13ないし15のアミノ酸残基を含み、上述のように12ないし15のアラニン残基と、0ないし1の非アラニン残基とを含む。
【0083】
各々の独立したAセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基7ないし19、43ないし56、71ないし83、107ないし120、135ないし147、171ないし183、198ないし211、235ないし248、266ないし279、294ないし306、330ないし342、357ないし370、394ないし406、421ないし434、458ないし470、489ないし502、517ないし529、553ないし566、581ないし594、618ないし630、648ないし661、676ないし688、712ないし725、740ないし752、776ないし789、804ないし816、840ないし853、868ないし880、904ないし917、932ないし945、969ないし981、999ないし1013、1028ないし1042、及び1060ないし1073の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には少なくとも90%、更に好適には95%、もっとも好適には100%同一であることが好適である。この群の各配列は、Euprosthenops australisのMaSp1タンパク質の天然に存在する配列のセグメントに対応し、対応するcDNAのクローン化で推定される。国際公開第2007/078239号参照。代替的に、各々の独立したAセグメントは、配列番号3のアミノ酸残基143ないし152、174ないし186、204ないし218、233ないし247、及び265ないし278の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には少なくとも90%、更に好適には95%、もっとも好適には100%同一である。この群の各配列は、発現した本発明による非天然のタンパク質のセグメントに対応し、そのタンパク質は好適な条件下でシルク繊維を形成する能力がある(実施例2参照)。従って、本発明による特定の実施形態においては、各々の独立したAセグメントは上述のアミノ酸セグメントから選択されるアミノ酸配列と同一となる。任意の特定の理論によって結びつけられることを望まないが、本発明によるAセグメントがヘリックス構造又はβシートを形成することは予測される。
【0084】
本明細書及び添付の特許請求の範囲にわたって用いられるような用語「同一度(〜%同一:% identity)」は以下のように算出される。問い合わせ配列はCLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson,J.D.、Higgins,D.G.、及びGibson,T.J.、Nucleic Acids Research,22:4673−4680(1994))を用いて標的配列に整列される。比較は整列した配列のうち最短のものに対応する領域にわたってなされる。各々の位置でのアミノ酸残基を比較し、標的配列において同一に対応する問い合わせ配列における位置の割合が、同一度として報告されている。
【0085】
本明細書及び添付の特許請求の範囲にわたって用いられるような用語「類似度(〜%類似:% similarity)」は、疎水性残基Ala、Val、Phe、Pro、Leu、Ile、Trp、Met、及びCysが類似であり、塩基性残基Lys、Arg、及びHisが類似であり、酸性残基Glu及びAspが類似であり、疎水性の非荷電性残基Gln、Asn、Ser、Thr、及びTyrが類似であることを除いては、「同一度」に記載のように算出される。残余の天然アミノ酸Glyはこの状況においてはその他のアミノ酸と類似ではない。
【0086】
本記載にわたって、本発明による代替的な実施形態は、特定の同一性の割合に代わって、対応する類似性の割合を実現する。他の代替的な実施形態は、特定の同一性の割合、ならびに、各配列に対する好適な同一性の割合の群から選択される別の高類似性の割合を実現する。例えば、ある配列は別の配列と70%類似であってもよく、別の配列と70%同一であってもよく、別の配列と70%同一及び90%類似であってもよい。
【0087】
更に、各々の独立したGセグメントが12ないし30のアミノ酸残基のアミノ酸配列であることを実験データから結論づけている。各々の独立したGセグメントは14ないし23のアミノ酸残基からなることが好適である。各Gセグメントの少なくとも40%のアミノ酸残基はグリシン残基である。一般的には、各々の独立したGセグメントのグリシン成分の範囲は40ないし60%である。
【0088】
各々の独立したGセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基20ないし42、57ないし70、84ないし106、121ないし134、148ないし170、184ないし197、212ないし234、249ないし265、280ないし293、307ないし329、343ないし356、371ないし393、407ないし420、435ないし457、471ないし488、503ないし516、530ないし552、567ないし580、595ないし617、631ないし647、662ないし675、689ないし711、726ないし739、753ないし775、790ないし803、817ないし839、854ないし867、881ないし903、918ないし931、946ないし968、982ないし998、1014ないし1027、1043ないし1059、及び1074ないし1092の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には少なくとも90%、更に好適には95%、もっとも好適には100%同一であることが好適である。この群の各配列は、Euprosthenops australisのMaSp1タンパク質の天然に存在する配列のセグメントに対応し、対応するcDNAのクローン化で推定される。国際公開第2007/078239号参照。代替的に、各々の独立したGセグメントは、配列番号3のアミノ酸残基153ないし173、187ないし203、219ないし232、248ないし264、及び279ないし296の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には少なくとも90%、更に好適には95%、もっとも好適には100%同一である。この群の各配列は、発現した本発明による非天然のタンパク質のセグメントに対応し、そのタンパク質は好適な条件下でシルク繊維を形成する能力がある(実施例2参照)。従って、本発明による特定の実施形態においては、各々の独立したGセグメントは上述のアミノ酸セグメントから選択されるアミノ酸配列と同一となる。
【0089】
特定の実施形態においては、本発明による各々のGセグメントの最初の2のアミノ酸残基は−Gln−Gln−ではない。
【0090】
本発明によるGセグメントの3の亜類型がある。この分類はEuprosthenops australisのMaSp1タンパク質配列の正確な分析に基づいており(国際公開第2007/078239号)、情報は新規で非天然のスパイダーシルクタンパク質の構成で使用及び検証されている。
【0091】
本発明によるGセグメントの第1の亜類型は、アミノ酸1文字表記のコンセンサス配列GQG(G/S)QGG(Q/Y)GG(L/Q)GQGGYGQGAGSS(配列番号11)で表される。一般的には最長であるこの第1のGセグメントの亜類型は、一般的には23のアミノ酸残基を含むが、17程度の短いアミノ酸残基を含んでもよく、荷電性残基がなくても1の荷電性残基を含んでもよい。従って、この第1のGセグメントの亜類型は17ないし23のアミノ酸残基を含むことが好適であるが、12程度の少ないあるいは30程度の多いアミノ酸残基を含みうることを予期すべきである。任意の特定の理論によって結びつけられることを望まないが、この亜類型はコイル構造又は3
1へリックス構造を形成することは予想すべきである。この第1の亜類型の代表的なGセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基20ないし42、84ないし106、148ないし170、212ないし234、307ないし329、371ないし393、435ないし457、530ないし552、595ないし617、689ないし711、753ないし775、817ないし839、881ないし903、946ないし968、1043ないし1059、及び1074ないし1092である。特定の実施形態においては、本発明によるこの第1の亜類型の各々のGセグメントの最初の2のアミノ酸残基は−Gln−Gln−ではない。
【0092】
本発明によるGセグメントの第2の亜類型は、アミノ酸1文字表記のコンセンサス配列GQGGQGQG(G/R)YGQG(A/S)G(S/G)S(配列番号12)で表される。一般的には中程度の大きさであるこの第2のGセグメントの亜類型は、一般的には17のアミノ酸残基を含み、荷電性残基がないか、あるいは1の荷電性残基を含んでいる。この第2のGセグメントの亜類型は14ないし20のアミノ酸残基を含むことが好適であるが、12程度の少ないあるいは30程度の多いアミノ酸残基を含みうることを予期すべきである。任意の特定の理論によって結びつけられることを望まないが、この亜類型はコイル構造を形成することは予想すべきである。この第2の亜類型の代表的なGセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基249ないし265、471ないし488、631ないし647、及び982ないし998、ならびに配列番号3のアミノ酸残基187ないし203である。
【0093】
本発明によるGセグメントの第3の亜類型は、アミノ酸1文字表記のコンセンサス配列G(R/Q)GQG(G/R)YGQG(A/S/V)GGN(配列番号13)で表される。この第3のGセグメントの亜類型は一般的に14のアミノ酸残基を含み、一般的には本発明によるGセグメントの亜類型のうちで最短である。この第3のGセグメントの亜類型は12ないし17のアミノ酸残基を含むことが好適であるが、23程度の多いアミノ酸残基を含みうることを予期すべきである。任意の特定の理論によって結びつけられることを望まないが、この亜類型はターン構造を形成することは予想すべきである。この第3の亜類型の代表的なGセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基57ないし70、121ないし134、184ないし197、280ないし293、343ないし356、407ないし420、503ないし516、567ないし580、662ないし675、726ないし739、790ないし803、854ないし867、918ないし931、1014ないし1027、ならびに配列番号3のアミノ酸残基219ないし232である。
【0094】
従って好適な実施形態においては、各々の独立したGセグメントは配列番号11、配列番号12、及び配列番号13から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には90%、更に好適には95%同一である。
【0095】
REP断片のAセグメント及びGセグメントの交互配列の好適な実施形態においては、総ての第2のGセグメントは第1の亜類型であるが、残余のGセグメントは第3の亜類型、例えば:
...A
1G
shortA
2G
longA
3G
shortA
4G
longA
5G
short...;
である。REP断片の別の好適な実施形態においては、第2の亜類型の1のGセグメントが挿入部、例えば:
...A
1G
shortA
2G
longA
3G
midA
4G
shortA
5G
long...;
を介してGセグメントの規則性を断続している。
【0096】
各々の独立したLセグメントは任意のリンカーアミノ酸配列を表し、0ないし20のアミノ酸残基、例えば0ないし10のアミノ酸残基を含んでもよい。このセグメントは任意であり、スパイダーシルクタンパク質で機能上重要ではないが、その存在によって更に、完全に機能的なスパイダーシルクタンパク質を可能にし、本発明によるスパイダーシルク繊維を形成する。更に、Euprosthenops australis由来のMaSp1タンパク質の推定アミノ酸配列の反復部分(配列番号10)に存在するリンカーアミノ酸配列がある。特に、リンカーセグメントのアミノ酸配列は、記載のAセグメント又はGセグメントのいずれかに類似しうるが、通常は本明細書中に規定のような基準に十分には合致しない。
【0097】
国際公開第2007/078239号に示されるように、REP断片のC末端部分に配置されたリンカーセグメントは、アミノ酸1文字表記のコンセンサス配列ASASAAASAASTVANSVS及びASAASAAAで表すことができ、アラニンリッチである。実際に、第2の配列は本発明によるAセグメントと認識されうるが、第1の配列は本発明によるAセグメントに対する類似度が高くなる。本発明によるリンカーセグメントの別の例の1文字表記のアミノ酸配列はGSAMGQGSであり、グリシンリッチであり、本発明によるGセグメントに対する類似度が高くなる。リンカーセグメントの別の例はSASAGである。
【0098】
代表的なLセグメントは、配列番号10のアミノ酸残基1ないし6及び1093ないし1110、ならびに配列番号3のアミノ酸残基138ないし142であるが、当該技術分野の当業者はこれらのセグメントに好適な多くの代替的なアミノ酸配列があることは容易に理解するであろう。本発明によるREP断片の一実施形態においては、Lセグメントのうちの一方が0のアミノ酸を含む。すなわち、Lセグメントのうちの1つは空隙部となる。本発明によるREP断片の別の実施形態においては、双方のLセグメントが0のアミノ酸を含む。すなわち双方のLセグメントは空隙部となる。従って、本発明によるREP断片のこれらの実施形態は:(AG)
nL、(AG)
nAL、(GA)
nL、(GA)
nGL;L(AG)
n、L(AG)
nA、L(GA)
n、L(GA)
nG;及び(AG)
n、(AG)
nA、(GA)
n、(GA)
nG;として概略的に表される。これらのREP断片のいずれかは以下に規定のような任意のCT断片で用いるのに好適である。
【0099】
本発明によるスパイダーシルクタンパク質の任意のCT断片は、スパイダーシルクタンパク質のC末端のアミノ酸配列に対する類似度が高い。国際公開第2007/078239号に示されるように、このアミノ酸配列は多様な種及びスパイダーシルクタンパク質の間で都合良く維持されており、MaSp1及びMaSp2を含んでいる。MaSp1及びMaSp2のC末端領域のコンセンサス配列は配列番号9として与えられる。
図2においては、以下のMaSpタンパク質は配列され、該当する場合にはGenBankアクセス項目で表示される。
【0100】
[表2:スピドロインのCT断片]
【表2】
【0101】
特定のCT断片が本発明によるスパイダーシルクタンパク質に存在することは、存在したとしても重要ではない。従って、本発明によるCT断片は
図2及び表2に示されるアミノ酸配列、あるいは類似度の高い配列のいずれかから選択できる。広範で多様なC末端配列は本発明によるスパイダーシルクタンパク質で用いることができる。
【0102】
本発明によるCT断片の配列は、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号9と少なくとも50%同一、好適には少なくとも60%同一、更に好適には少なくとも65%同一、更には少なくとも70%同一であり、
図2のアミノ酸配列に基づいている。
【0103】
本発明による代表的なCT断片は、Euprosthenops australis配列の配列番号7である。従って、本発明の好適な態様によると、CT断片は配列番号7又は
図2及び表2における任意の別個のアミノ酸配列と少なくとも80%、好適には少なくとも90%、例えば少なくとも95%同一である。本発明の好適な態様においては、CT断片は配列番号7又は
図2及び表2における任意の別個のアミノ酸配列と同一である。
【0104】
CT断片は一般的には70ないし120のアミノ酸残基からなる。CT断片は少なくとも70の、又は80を超え、好適には90を超えるアミノ酸残基を含むことが好適である。CT断片は最大で120の、又は110未満のアミノ酸残基を含むことが更に好適である。一般的なCT断片は約100のアミノ酸残基を含む。
【0105】
一実施形態においては、単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生する方法の第1のステップは、大腸菌といった好適な宿主でスパイダーシルクタンパク質をコードするポリ核酸分子の発現を含む。このように得られたタンパク質は標準的な手順を用いて単離される。任意にリポ多糖類及び他の発熱物質はこの段階で能動的に除去される。
【0106】
単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生する方法の第2のステップにおいては、液体培地におけるスパイダーシルクタンパク質の溶液が提供される。用語「可溶な(soluble)」及び「溶液における(in solution)」によって、タンパク質が見かけ上凝集されず、60000×gで溶媒から沈殿しないことを示している。液体培地は水溶性培地といった任意の好適な培地、好適には生理学的培地、一般的には10ないし50mMのトリス塩酸(Tris−HCl)緩衝液又はリン酸緩衝液といった緩衝した水溶性培地にできる。液体培地はpHが6.4以上であり、かつ/あるいはスパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である。すなわち、液体培地はpHが6.4以上であるか、あるいはスパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成であるか、あるいはその双方である。
【0107】
スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成は、本明細書中に開示の方法を用いて当業者によって容易に調製されうる。スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止する好適なイオン組成のイオン強度は300mMを超えている。スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成の特異的な例は、300mMを超えるNaClと、100mMのホスファートと、スパイダーシルクタンパク質の重合に所望の阻止の効果を及ぼすこれらのイオンの組合せ、例えば10mMのホスファートと300mMのNaClとの組合せとを含む。
【0108】
驚くべきことに、NT断片の存在によって溶液の安定性が改善され、これらの条件下での重合体の形成が阻止されることが見出された。このことは即時の重合が所望されない場合、例えばタンパク質精製時、大きな処理単位の調製時、又は他の条件が最適化される必要がある場合に有益である。液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上、又は更に8.0以上、例えば最大10.5に調節して、スパイダーシルクタンパク質の溶解度を高くすることが好適である。更には、液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8に調節するのが有益であり、それによってスパイダーシルクタンパク質を十分に溶解できるが、後の6.3以下へのpHの調節を促進できる。
【0109】
第3のステップにおいては、液体培地の特性は6.3以下のpH及び重合を可能にするイオン組成に調節される。すなわち、スパイダーシルクタンパク質が溶解される液体培地のpHが6.4以上の場合、pHを6.3以下に低下する。当業者はこれを実現する多様な方法、一般的には強酸又は弱酸の添加を含む多様な方法を十分に承知している。スパイダーシルクタンパク質を溶解した液体培地が重合を阻止するイオン組成である場合、イオン組成は重合を可能にするように変化する。当業者はこれを実現する多様な方法、例えば希釈、透析、又はゲル濾過を十分に承知している。必要に応じて、このステップは液体培地のpHを6.3以下に低下するステップと、重合を可能にするようにイオン組成を変化させるステップとの双方を具える。液体培地のpHは6.2以下、例えば6.0以下に調節されることが好適である。特に、実用的な観点から直前のステップにおける6.4又は6.4ないし6.8から、このステップにおける6.3又は6.0ないし6.3、例えば6.2にpHの低下を限定することは有益となりうる。好適な実施形態においては、このステップの液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上となる。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。
【0110】
第4のステップにおいては、スパイダーシルクタンパク質は、pHが6.3以下であり、かつスパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成である液体培地において、重合するのが可能となる。驚くべきことに、NT断片の存在によって6.4以上のpH及び/又はスパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成で溶液の安定性が改善されるが、イオン組成によってスパイダーシルクタンパク質の重合が可能となる場合に6.3以下のpHで重合体の形成が促進されることが見出された。得られた重合体は好適には固体かつマクロ的であり、pHが6.3以下であり、かつスパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成である液体培地において形成される。好適な実施形態においては、このステップの液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上である。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。好適な重合体の形状は繊維、薄膜、発泡樹脂、ネット、又はメッシュを含む。重合体は直径が0.1μmを超え、好適には1μmを超え、長さが5mmを超える繊維であることが好適である。
【0111】
スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成は、本明細書中に開示の方法を用いて当業者によって容易に調製されうる。スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にする好適なイオン組成のイオン強度は300mM未満である。スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成の特異的な例は、150mMのNaClと、10mMのホスファートと、20mMのホスファートと、スパイダーシルクタンパク質の重合での阻止の効果をなくすこれらのイオンの組合せ、例えば10mMのホスファート又は20mMのホスファートと150mMのNaClとの組合せとを含む。この液体培地のイオン強度の範囲は1ないし250mMに調節されることが好適である。
【0112】
任意の特定の理論に限定されることを所望しないが、NT断片が対向して荷電する極を有し、環境でのpHの変化が重合の前にタンパク質の表面の荷電平衡に影響を与える一方、塩が同一の事象を抑制することは予想すべきである。
【0113】
中性のpHで、酸性の極の過剰な負電荷を相殺するエネルギーコストは重合を阻止するために予測してもよい。しかしながら、二量体が低いpHで等電点に接近する場合、静電引力が最終的に優位となり、NT及びNTを含むミニスピドロイン(minispidroin)の、観察した塩及びpH依存性の重合の挙動が説明される。我々はpH誘導性のNT重合及びNT−ミニスピドロインの繊維形成効率の増加が表面の静電電位の変化によるものであること、及び重合の遷移が6.3以下のpH値で生じるように、NTの一方の極での酸性残基のクラスター形成が荷電平衡をシフトすることを提唱する。
【0114】
第5の最終ステップにおいては、好適には固体の、得られたスパイダーシルクタンパク質の重合体は前記液体培地から単離される。任意に、このステップはリポ多糖類及び他の発熱物質をスピドロインの重合体から能動的に除去するステップを具える。
【0115】
任意の特定の理論に限定されることを所望しないが、スピドロインの重合体の形成が水溶性のスピドロインの二量体の形成を介して進展することが観察された。従って、本発明は更に、単離したスパイダーシルクタンパク質の二量体を産生する方法を提供し、最初の2のステップは上述の通りである。スパイダーシルクタンパク質はpHが6.4以上であり、かつ/あるいは前記スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である液体培地において二量体として存在する。第3のステップは第2のステップで得られた二量体を単離するステップと、任意にリポ多糖類及び他の発熱物質の除去とを具える。好適な実施形態においては、本発明のスパイダーシルクタンパク質の重合体は重合したタンパク質の二量体からなる。従って本発明は、スパイダーシルクタンパク質の二量体を産生するためのスパイダーシルクタンパク質、好適には本明細書中に開示したものの新規の使用を提供する。
【0116】
別の態様によると、本発明は本明細書中に開示したようなスパイダーシルクタンパク質の重合体を提供する。好適な実施形態においては、このタンパク質の重合体は、そのための本発明による方法のいずれか1つによって取得可能である。従って、スパイダーシルクタンパク質の重合体を産生するためのスパイダーシルクタンパク質、好適には本明細書中に開示したものの新規の使用を提供する。一実施形態によると、本発明は、単離したスパイダーシルクタンパク質の重合体を産生するためのスパイダーシルクタンパク質の二量体、好適には本明細書中に開示したものの新規の使用を提供する。これらの使用においては、pHが6.3以下であり、かつ前記スパイダーシルクタンパク質の重合を可能にするイオン組成である液体培地において産生されることが好適である。好適な実施形態においては、液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上である。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。
【0117】
本発明の1以上の方法を用いて、重合プロセスを制御することが可能であり、このことによって、所望の特性及び形状のシルク重合体を得るためのパラメータの最適化が可能となる。
【0118】
本発明によるスピドロインタンパク質の重合体はマクロ的な大きさの繊維、すなわち直径が0.1μmを超え、好適には1μmを超え、長さが5mmを超える繊維であることが好適である。繊維は直径の範囲が1ないし400μm、好適には60ないし120μmであり、長さの範囲が0.5ないし300cm、好適には1ないし100cmであることが好適である。他の好適な範囲は0.5ないし30cm、及び1ないし20cmである。本発明によるスピドロインタンパク質の繊維といった重合体は更に、引張り強さが1MPaを超え、好適には2MPaを超え、更に好適には10MPa以上であることが好適である。本発明によるスピドロインタンパク質の繊維といった重合体は、引張り強さが100MPaを超え、更に好適には200MPa以上であることが好適である。繊維は物理的動作中に無傷で維持する性能がある。すなわち、紡績、機織り、加撚、かぎ針編み、及び類似の製法で用いることができる。
【0119】
他の好適な実施形態においては、本発明によるスピドロインタンパク質の重合体は発泡樹脂、ネット、メッシュ、又は薄膜を形成する。
【0120】
別の態様によると、本発明は配列番号14ないし16といった、本発明によるスパイダーシルクタンパク質又はその相補的な核酸配列をコードする核酸配列を含む単離したポリ核酸分子を提供する。これらのポリ核酸分子、ならびに本明細書中に開示の多様なタンパク質(配列番号1ないし7、10ないし13)をコードするポリ核酸分子は、非天然のスピドロインタンパク質又はそのための産生系の更なる開発に有用である。
【0121】
本発明によるポリ核酸分子はDNA分子にでき、cDNA分子又はRNA分子を含んでいる。当業者が承知のように、核酸配列は同様にその相補的な核酸配列によって記載されうる。従って、本発明による核酸配列に対して相補的な核酸配列は更に、本発明の保護範囲によって包含される。
【0122】
一態様によると、本発明は、本発明によるスパイダーシルクタンパク質を産生する方法を提供する。第1のステップにおいては、本発明によるスパイダーシルクタンパク質をコードするポリ核酸分子は好適な宿主で発現される。第2のステップにおいては、このように得られた可溶性のタンパク質は例えば、クロマトグラフィ及び/又は濾過を用いて単離される。任意に可溶性のスパイダーシルクタンパク質を単離する前記第2のステップはLPS及び他の発熱物質の除去を含む。
【0123】
本発明によるスパイダーシルクタンパク質は一般的には、細菌、酵母、哺乳類細胞、植物、昆虫細胞、及び遺伝子導入動物といった、多様な好適な宿主を用いて組換え産生される。本発明によるスパイダーシルクタンパク質は細菌において産生されることが好適である。
【0124】
生体内での生体材料としての使用に必須の、発熱成分が少ないタンパク質を得るために、リポ多糖類(LPS)の除去で最適化される精製プロトコルが開発されている。LPSの遊離による混入を阻止するために、産生するバクテリア細胞はCaCl
2とEDTAとを交互にした洗浄ステップを受ける。細胞溶解後、総ての後の精製ステップは標的タンパク質とLPSとの間での疎水性の相互作用を最小化するために、低伝導率の緩衝液で行われる。LPS成分は更にタンパク質溶液のEndotrapカラムの通過によって最小化され、そのリガンドは特異的にLPSを吸収する。LPS及び他の発熱物質の成分が一定に低いことを確認するために、総ての処理単位は生体外での発熱物質試験(IPT:in vitro pyrogen test)及び/又はカブトガニ血球抽出成分(LAL:Limulus amebocyte lysate)での動態アッセイを用いて分析される。グラム陰性菌の宿主で産生されるが、組換え型のスピドロインタンパク質はLPS及び発熱物質の残留レベルが動物試験で要求される限界未満、すなわち、移植片につき25EU未満となるように精製できる。本発明による特定の実施形態においては、単離したスパイダーシルクタンパク質におけるLPS及び他の発熱物質はタンパク質の1EU/mg以下となる。本発明による特定の実施形態においては、単離したスパイダーシルクタンパク質におけるLPS及び他の発熱物質の含量はタンパク質の1EU/mg以下、好適にはタンパク質の0.25EU/mg以下である。
【0125】
一態様によると、本発明はpHが6.4以上であり、かつ/あるいは、前記スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である液体培地に溶解される単離したスパイダーシルクタンパク質、好適には本明細書中に開示したものを含む組成物を提供する。液体培地は水溶性培地といった任意の好適な培地、好適には生理学的培地、一般的には10ないし50mMのTris−HCl緩衝液又はリン酸緩衝液といった緩衝した水溶性培地にできる。液体培地はpHが6.4以上であり、かつ/あるいはスパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成である。すなわち、液体培地はpHが6.4以上であるか、あるいはスパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成であるか、あるいはその双方である。スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止する好適なイオン組成のイオン強度は300mMを超えている。スパイダーシルクタンパク質の重合を阻止するイオン組成の特異的な例は、300mMを超えるNaClと、100mMのホスファートと、スパイダーシルクタンパク質の重合に所望の阻止の効果を及ぼすこれらのイオンの組合せ、例えば10mMのホスファートと300mMのNaClとの組合せとを含む。液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上、又は更に8.0以上、例えば最大10.5に調節して、スパイダーシルクタンパク質の溶解度を高くすることが好適である。更には、液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8に調節するのが有益であり、それによってスパイダーシルクタンパク質を十分に溶解できるが、後の6.3以下へのpHの調節を促進できる。リポ多糖類及び他の発熱物質の含量は液体培地において単離したタンパク質の1EU/mg以下であることが好適である。
【0126】
スパイダーシルクタンパク質のN末端の非反復断片がこれらのタンパク質の重合において関与しており、この断片を含む重合体の形成が特定のパラメータを変えることによって密に制御できるという発明の見識は更に、N末端の非反復スピドロイン断片由来の少なくとも1の断片を保有する分子の重合体又は低重合体を可逆形成する新規の方法に発展している。実施例は必然的に、この場合にはEuprosthenops australisの大嚢状腺スピドロイン1(MaSp1)由来のタンパク質を含む特定のタンパク質に関連づけているが、本明細書中に開示の方法は重合体又は低重合体を産生する目的で任意の類似するタンパク質に適用可能であることは考慮すべきである。
【0127】
この態様によると、本発明は1種類の分子又は異なる数種類の分子の重合体又は低重合体を可逆形成する方法を提供する。第1の方法ステップは前記分子を提供するステップを具える。各々の分子は:(a)少なくとも1の第1の結合成分と;(b)調査又は利用すべき生理活性を保有している第2の成分と;を含んでいる。好適な実施形態においては、分子は単一の結合成分(a)を含んでいる。他の好適な実施形態においては、分子は少なくとも2の、例えば2の結合成分(a)を含んでいる。各分子は一般的には、1ないし2、1ないし4、1ないし6、2ないし4、及び2ないし6の範囲から選択される多数の結合成分(a)を含んでいる。各々の結合成分(a)は100ないし160のアミノ酸残基からなり、スパイダーシルクタンパク質のN末端(NT)断片由来である。NT断片はスパイダーシルクタンパク質のN末端のアミノ酸配列と類似度が高い。表1及び
図1に示されるように、このアミノ酸配列は多様な種及びスパイダーシルクタンパク質の間で都合良く維持されており、MaSp1及びMaSp2を含んでいる。
【0128】
NTは酸性残基及び塩基性残基が対向する極のクラスターに局在化する場合に双極子モーメントが明確になることが観察される。限定を所望しないが、観察したNTの重合は、NT二量体の線形アレイの形成に関与し、アレイにおける隣の二量体において、1のサブユニットの負の表面が隣接するサブユニットの正の表面に対面して、極が向かい合って積層されることは予測されよう。
【0129】
NT断片が完全には欠損していない限りにおいては、特定の1以上のNT断片が本発明のこの態様による1以上の分子型に存在することは重要ではない。従って、本発明のこの態様による1以上のNT断片は、表1又は
図1に示されるアミノ酸配列、あるいは類似度の高い配列のいずれかから選択できる。広範で多様なN末端配列は本発明のこの態様による1以上の分子型で用いることができる。
【0130】
本発明によるNT断片の配列は、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と少なくとも50%同一、好適には少なくとも60%同一であり、
図1のアミノ酸配列に基づいている。好適な実施形態においては、本発明によるNT断片の配列は、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と少なくとも65%同一、好適には少なくとも70%同一である。好適な実施形態においては、本発明によるNT断片は更に、コンセンサスアミノ酸配列の配列番号8と70%、好適には80%類似している。
【0131】
本発明による代表的なNT断片は、Euprosthenops australis配列の配列番号6である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%同一である。本発明の好適な実施形態においては、NT断片は配列番号6又は
図1における任意の別個のアミノ酸配列と同一である。
【0132】
NT断片は100ないし160のアミノ酸残基を含む。NT断片は少なくとも100の、又は110を超え、好適には120を超えるアミノ酸残基を含むことが好適である。NT断片は最大で160の、又は140未満のアミノ酸残基を含むことが更に好適である。一般的なNT断片は約130ないし140のアミノ酸残基を含む。
【0133】
特定の方法の総ての分子の結合成分(a)は一般的には共通であるが、本明細書中に記載のpH及びイオン強度の条件下で相互に結合する能力を維持する限りにおいては、その差異が異なる成分(a)の使用に属する場合、分子型が異なることが可能となる。一般的には、第2の成分(b)は調査又は利用すべき生理活性を保有し、方法が2以上の分子型を含む場合に異なるのが一般的にはこの第2の成分である。第2の成分(b)はタンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質から別個に選択される。好適には、第2の成分(b)は更にタンパク質である。
【0134】
好適な実施形態においては、第1のステップの分子は同一、すなわち単一型であり、ひいては得られた重合体(低重合体)は同種重合体(同種低重合体)である。別の好適な実施形態においては、第1のステップの分子は同一ではなく、ひいては得られた重合体(低重合体)は異種重合体(異種低重合体)である。上述のように、分子の異種性は結合成分(a)、生理活性成分(b)、又は双方に属しうる。
【0135】
第2の方法ステップにおいては、液体培地における分子の溶液が提供される。液体培地は水溶性培地といった任意の好適な培地、好適には生理学的培地、一般的には10ないし50mMのTris−HCl緩衝液又はリン酸緩衝液といった緩衝した水溶性培地にできる。液体培地はpHが6.4以上であり、かつ/あるいは結合成分を介した分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成である。すなわち、液体培地はpHが6.4以上であるか、あるいは結合成分を介した分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成であるか、あるいはその双方である。
【0136】
結合成分を介した分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成は、本明細書中に開示の方法を用いて当業者によって容易に調製されうる。結合成分を介した分子の重合又は低重合を阻止する好適なイオン組成のイオン強度は300mMを超えている。結合成分を介した分子の重合を阻止するイオン組成の特異的な例は、300mMを超えるNaClと、100mMのホスファートと、結合成分を介した分子の重合に所望の阻止の効果を及ぼすこれらのイオンの組合せ、例えば10mMのホスファートと300mMのNaClとの組合せとを含む。
【0137】
驚くべきことに、少なくとも1のNT断片の存在によって溶液の安定性が改善され、これらの条件下での重合体及び低重合体の形成が阻止されることが見出された。このことは即時の重合又は低重合が所望されない場合、例えばタンパク質精製時、大きな処理単位の調製時、又は他の条件が最適化される必要がある場合に有益である。液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上、又は更に8.0以上、例えば最大10.5に調節して、分子の溶解度を高くすることが好適である。更には、液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8に調節するのが有益であり、それによって分子を十分に溶解できるが、後の6.3以下へのpHの調節を促進できる。
【0138】
第3の方法ステップにおいては、前記液体培地の特性は結合成分を介して分子の重合又は低重合を可能にするように調節される。従って、液体培地の特性は6.3以下のpH及び重合を可能にするイオン組成に調節される。すなわち、分子が溶解される液体培地のpHが6.4以上の場合、pHを6.3以下に低下する。当業者はこれを実現する多様な方法、一般的には強酸又は弱酸の添加を含む多様な方法を十分に承知している。分子を溶解した液体培地が重合又は低重合を阻止するイオン組成である場合、イオン組成は結合成分を介して分子の重合又は低重合を可能にするように変化する。当業者はこれを実現する多様な方法、例えば希釈、透析、又はゲル濾過を十分に承知している。必要に応じて、このステップは液体培地のpHを6.3以下に低下するステップと、重合又は低重合を可能にするようにイオン組成を変化させるステップとの双方を具える。液体培地のpHは6.2以下、例えば6.0以下に調節されることが好適である。特に、実用的な観点から直前のステップにおける6.4又は6.4ないし6.8から、このステップにおける6.3又は6.0ないし6.3、例えば6.2にpHの低下を限定することは有益となりうる。好適な実施形態においては、このステップの液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上となる。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。
【0139】
第4の方法ステップにおいては、分子は液体培地における結合成分を介して重合体又は低重合体を形成可能となる。液体培地は、pHが6.3以下であり、かつ結合成分を介して分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である。驚くべきことに、結合成分の存在によって6.4以上のpH及び/又は分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成で分子の安定性が改善されるが、イオン組成によって分子の重合又は低重合が可能となる場合に6.3以下のpHで重合又は低重合の形成が促進されることが見出された。好適な実施形態においては、このステップの液体培地のpHは3以上、例えば4.2以上である。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。本方法の好適な実施形態においては、第4のステップで得られた重合体又は低重合体は可溶に維持される。すなわち、pHが6.3以下であり、分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である液体培地に溶解される。
【0140】
結合成分を介して分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成は、本明細書中に開示の方法を用いて当業者によって容易に調製されうる。結合成分を介して分子の重合を可能にする好適なイオン組成のイオン強度は300mM未満である。結合成分を介した分子の重合を可能にするイオン組成の特異的な例は、150mMのNaClと、10mMのホスファートと、20mMのホスファートと、結合成分を介した分子の重合での阻止の効果をなくすこれらのイオンの組合せ、例えば10mMのホスファート又は20mMのホスファートと150mMのNaClとの組合せとを含む。この液体培地のイオン強度の範囲は1ないし250mMに調節されることが好適である。
【0141】
好適な実施形態においては、本発明のこの態様による方法は、重合体又は低重合体の形成を逆転させる第5のステップを具えうる。本方法ステップは6.4以上のpH、及び/又は前記分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成に、液体培地の特性を調節するステップを具える。このことによって、液体培地に存在する重合体又は低重合体は液体培地において分解及び溶解される。第5の方法ステップの液体培地の組成は、第2の方法ステップの液体培地で記載のものと同一にできる。例えば、第5の方法ステップの液体培地のpHは6.7以上、例えば7.0以上、又は更に8.0以上、例えば最大10.5である。代替的には、第5の方法ステップの液体培地のpHの範囲は6.4ないし6.8である。
【0142】
ステップ(iv)の重合体又は低重合体は相互作用の調査、選別、酵素複合体の誘発活性、又はFRET分析で有益に用いることができる。特定の用途においては、第1の方法ステップの少なくとも1の分子型は固形担体、あるいは以下に記載のようなアフィニティ培地の基質に固定化される。
【0143】
一態様によると、本発明は更に分子の集合に含まれる分子の部分集合間の結合相互作用を検出する方法を提供する。第1の方法ステップにおいては、分子の集合が提供される。この集合の各分子は上に詳述したように設計される。すなわち、(a)少なくとも1の第1の結合成分と、(b)調査又は利用すべき生理活性を保有する第2の成分とを含んでいる。好適な実施形態においては、分子は単一の結合成分(a)を含んでいる。他の好適な実施形態においては、分子は少なくとも2の、例えば2の結合成分(a)を含んでいる。各々の分子は一般的には1ないし2、1ないし4、1ないし6、2ないし4、及び2ないし6の範囲から選択される多数の結合成分(a)を含む。各々の結合成分(a)は100ないし160のアミノ酸残基からなり、上述のようにスパイダーシルクタンパク質のN末端(NT)断片由来である。各々の生理活性成分(b)はタンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質、好適にはタンパク質から別個に選択される。
【0144】
第2の方法ステップにおいては、液体培地における前記分子の集合の溶液が提供される。上述のように、液体培地はpHが6.4以上であり、前記分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成である。液体培地の好適な組成は以前の開示で明らかである。
【0145】
第3の方法ステップにおいては、液体培地の特性は分子の重合又は低重合を可能にするように調節される。上述のように、液体培地はpHが6.3以下であり、分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である。液体培地の好適な組成は以前の開示で明らかである。
【0146】
第4の方法ステップにおいては、この集合の分子は液体培地において、前記結合成分を介して重合体又は低重合体を形成可能にする。上述のように、液体培地はpHが6.3以下であり、分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である。液体培地の好適な組成は以前の開示で明らかである。
【0147】
第5の方法ステップにおいては、液体培地の特性は重合体又は低重合体を分解するように調節される。上述のように、液体培地はpHが6.4以上であり、かつ/あるいは、前記分子の重合又は低重合を阻止するイオン組成である。液体培地の好適な組成は以前の開示で明らかである。これによって、NT由来の結合成分を介した連結を阻止することによる重合体又は低重合体の分解を引き起こす。
【0148】
最後かつ第6の方法ステップにおいては、2以上の異なる分子間での前記結合成分を介した2以上の異なる分子間で前記結合成分を介して媒介されない結合相互作用の存在が判定される。このことによって、NT由来の結合成分を介して媒介したpH/塩で調節した重合又は低重合を含まない分子の部分集合間での結合相互作用を同定する。
【0149】
本発明の関連する態様は、pHが約7から6に、更に特異的には6.4超から6.3未満に低下した場合に、NT断片が大きな溶解可能な集合体を形成するという見識に基づいている。この集合体はpHが4.2超、すなわち4.2ないし6.3、例えば4.2ないし6の範囲で最も効率的に生じる。この特性は例えば、NTがカラムに固定化された場合に、アフィニティ精製のために用いられうる。pHが約6から7に上昇した場合に集合体は分解されるため、このアプローチは生理学的に関連する間隔でのpHシフトによって、結合タンパク質が遊離可能となる。
【0150】
本発明による方法の好適な実施形態においては、スパイダーシルクタンパク質を単離するステップは、NT成分を固定化したアフィニティ培地、例えばアフィニティカラムでのスパイダーシルクタンパク質の精製を含む。アフィニティ培地でのスパイダーシルクタンパク質の精製は6.3以下、好適には4.2ないし6.3の範囲のpHで、NT成分を固定化したアフィニティ培地に結合し、次いでpHが6.4以上であり、かつ/あるいはイオン強度が高い所望の解離培地でアフィニティ培地から解離することで好適には行われる。イオン強度が高い解離培地のイオン強度は一般的には300mMを超え、例えば300mMを超えるNaClである。
【0151】
これらの親和性(アフィニティ)による手順は本発明によるNT成分の固有の特性を用いている。特に興味深いのは、6.3未満、特に4.2ないし6.3の範囲のpHで結合するスピドロインのNTタンパク質断片の強い性質である。これは強力なアフィニティ精製ツールとして用いるのに有益であり、複合混合物から本発明によるスパイダーシルクタンパク質のワンステップでの精製が可能となる。クロマトグラフィが好適であるが、クロマトグラフィ以外の他のアフィニティ系の精製方法、例えば表面が官能基化した磁気ビーズ又は表面が官能基化したフィルタは当然利用できる。
【0152】
従って、本発明によるスパイダーシルクタンパク質を産生する方法は、NT成分を固定化したアフィニティ培地でのスパイダーシルクタンパク質の精製を含みうる。好適には、アフィニティ培地での融合タンパク質の精製は6.3以下のpHでNT成分を固定化したアフィニティ培地に結合し、次いでpHが6.4以上であり、かつ/あるいはイオン強度が高い所望の解離培地でアフィニティ培地から解離することで行われる。精製は一般的にはカラムにおいて、表面が官能基化した磁気ビーズで、あるいは表面が官能基化したフィルタで生じる。
【0153】
本発明は更に、基質と当該基質に結合した親和性相互作用のためのリガンドとを、任意にスペーサーアーム部を介して含むアフィニティ培地を提供する。リガンドは本発明の記載に述べているようにスパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基のうちの少なくとも1の断片を含んでいる。好適な実施形態においては、リガンドは単一の断片を具えている。他の好適な実施形態においては、リガンドは少なくとも2の断片等を含んでいる。各リガンドは一般的には、1ないし2、1ないし4、1ないし6、2ないし4、及び2ないし6の範囲から選択される多数の断片を含んでいる。基質は一般的には、多糖粒子等の粒子、及びフィルタからなる群から選択される。粒子の例は、アガロース、セファロース、及びスーパーロース(Superose)等の多糖ビーズと、磁気ビーズとを含む。
【0154】
関連する態様によると、本発明は1以上の分子の新規の使用を提供する。上述のように、各々の分子は:(a)スパイダーシルクタンパク質のN末端断片由来の100ないし160のアミノ酸残基の少なくとも1の第1の結合成分と;(b)タンパク質、核酸、炭水化物、及び脂質から別個に選択される第2の成分と;を含んでいる。好適な実施形態においては、分子は単一の結合成分(a)を含んでいる。他の好適な実施形態においては、分子は少なくとも2の、例えば2の結合成分(a)を含んでいる。各分子は一般的には、1ないし2、1ないし4、1ないし6、2ないし4、及び2ないし6の範囲から選択される多数の結合成分(a)を含んでいる。分子はpHが6.3以下であり、かつ前記分子の重合又は低重合を可能にするイオン組成である溶液において、結合成分を介して分子の重合体又は低重合体を可逆形成するのに用いられる。好適な実施形態においては、溶液のpHは3以上、例えば4.2以上である。4.2ないし6.3等の得られたpHの範囲は、迅速な重合を促進する。好適には、得られた重合体又は低重合体は相互作用の調査、選別、酵素複合体の誘発活性、又はFRET分析に用いられる。
【0155】
本明細書中に開示の結果及び結論は分子レベルでのスパイダーシルクの形成に新規の見識を与える。任意の特定の理論で限定されることを所望しないが、NTの極性及び非平衡な荷電分布は理想的には、pH及び塩濃度によって簡単に制御されうる重合可能なモジュールの産生に好適である。このことによって更には、中途での凝集を阻止し、かつpHが低下したときに重合を始動することによって、NTはクモのシルクの排出管を通って生じると認知されるものに類似するシルク形成を制御可能となる。
【0156】
本発明は以下において、以下の限定しない実施例によって更に例示されるであろう。
【0157】
[材料及び方法]
《タンパク質発現及び生成》
発現ベクターは、His
6TrxHis
6に対するC末端融合物としてそれぞれ、NT(配列番号6)、NTΔHis6、NT5Rep(配列番号4)、NT4Rep(配列番号3)、及び4RepCT(配列番号2)、ならびにHis
6へのN末端融合物としてのNT4RepCT(配列番号5)を産生するように構成した。別個のベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600に形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドで誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。溶解、固定化金属アフィニティ精製、及びHis
6TrxHis
6−タグのタンパク質分解性の除去は「Hedhammar,Mら、Biochemistry47,3407−3417(2008)」に記載のように行われた。
【0158】
《動的な光散乱(DLS)》
NT及びNTΔHis6の流体力学直径でのpH及びイオン強度の効果は(pH依存型の効果が位置6でのHisにより生じることを除外するために)、633nmのHeNeレーザを装備したMalvern Instruments社(英国ウスターシア州)から入手可能なZetasizer Nano Sにおいて、25±0.1℃で測定した。緩衝液は使用前にナイロンのフィルタを通して濾過された。試料の容量は50μlであり、小さなガラスキュベットであるZEN2112を用いた。キュベットの壁部からの減衰及び測定の位置(4.65mm)は、総ての分析について一定に維持された。6の走査が各々の試料で実行された。総ての試料は三組で分析された。流体力学直径(dH)はDLS分析のためにMalvernソフトウェアでの「General Purpose(汎用)」アルゴリズムを用いて算出され、ストークス・アインシュタイン(Stokes−Einstein)の式:
d
H=k
BT/3πηD
を通して流体力学直径に対して拡散係数を相関づけた。ここで、k
Bはボルツマン定数であり、Tは温度であり、ηは粘度であり、Dは並進拡散係数である。溶媒の粘度及び屈折率の値はMalvernソフトウェアで得た。「Multiple Narrow Modes」アルゴリズムは「General Purpose」アルゴリズムによって得た結果を検証するのに用いた。NT及びNTΔHis6の試料は0.8mg/mlの濃度で分析した。
【0159】
《比濁分析》
混濁度はOLIS社の電子装置及びソフトウェアを装備した分光蛍光光度計SLM4800S(ジョージア州ボガートのOLIS社)において、25℃、様々なpH値で、タンパク質(0.8mg/ml)の340nmでの見かけ上の吸収度から概算した。NT、NT4Rep、及びNTΔHis6は実質的に同様の結果で分析した。
【0160】
《繊維形成及び走査型電子顕微鏡(SEM)》
繊維形成のための条件は本質的に「Stark,Mら、Biomacromolecules8,1695−1701(2007)」に記載のとおりである。約25μmの各タンパク質はpH7又は6での、300mMのNaClがある、あるいは無い、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液でインキュベートした。様々な時点で、試料はSEMスタブに塗布され、空気乾燥し、金及びパラジウムで真空コーティングした。試料は5kVの加速電圧を用いて顕微鏡LEO1550FEG(独国オーバーコーヘンのCarl Zeiss社)で撮影した。
【実施例1】
【0161】
《NT及びミニスピドロインの発現及び精製》
発現ベクター(配列番号14ないし16他)は、His
6TrxHis
6に対するC末端融合物としてそれぞれ、NT(配列番号6)、NTΔHis6、NT5Rep(配列番号4)、NT4Rep(配列番号3)、及び4RepCT(配列番号2)、ならびにHis
6へのN末端融合物としてのNT4RepCT(配列番号5)を産生するように構成した。別個のベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドで誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞はリゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼI(DNase I)を補充した20mMのTris−HCl(pH8.0)で回収及び再懸濁した。完全溶解後、15000gの上澄部は、Ni−NTAセファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を300mMのイミダゾールで溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析した。MaSp1タンパク質は、比率が1:1000(w/w)のトロンビン:融合タンパク質を用いて、室温で1ないし2時間、タンパク質開裂によってタグから遊離した。遊離したHisTrxHisタグを除去するため、開裂混合物は更なるNi−NTAセファロースカラムに充填し、通過画分を回収した。タンパク質試料はSDS−PAGEを介して選別され、次いでクーマシーブリリアントブルーR−250で染色した。タンパク質は5kDaの分子量遮断型のセルロースフィルタ(Millipore社)を用いた限外濾過によって濃縮した。
【実施例2】
【0162】
《NT及びミニスピドロインのpH依存性の重合》
NTがある(NT4RepCT又はNT4Rep)あるいはNTがない(4RepCT又は4Rep)ミニスピドロインの重合はpH7(
図3、時間尺度の上方)又はpH6(
図3、時間尺度の下方)で行われた。
【0163】
反復領域からなる微小なスピドロインは、C末端断片があってもなくても、環境の変化、例えばpHのゆらぎに対して感受性を示さない(4Rep及び4RepCT、
図3)。pH依存型のスピドロインの重合に関与するのがN末端断片であるという仮説を試験するために、Euprosthenops australis由来の大嚢状腺スピドロイン(MaSp)1のN末端断片を包含するいくつかの構造(NT、NT4Rep、及びNT4RepCT;
図3)は、精製した組換えタンパク質を得るのに用いられた(実施例1)。動的な光散乱、比濁分析、及び走査型電子顕微鏡はNTのみの、ならびにミニスピドロイン構造の安定性及び重合に対するpH及び塩濃度の効果を証明するのに用いた。
【0164】
NT及びNT4Repは様々なpH値で比濁分析に供した。NT4Rep(丸形)及びNT(矩形)の平均値(±標準偏差(SD)、n=3)は
図4に示す。同様の結果はNT5Repで得られた。
【0165】
NTは6ないし7のpH、及び0ないし300mMのNaClで動的な光散乱を受けた。3の実験の代表例は
図5に示している。表3参照のこと。
【0166】
[表3:動的な光散乱によって定量されるタンパク質形成の大きさ]
【表3】
【0167】
単独では、NTはpH7.0で顕著に可溶な(210mg/mlを超える)二量体を形成するが、直ちにpH6.4未満で流体力学的サイズが700nm程度の重合体を形成する(
図4及び5)。NTの重合はpHの増加によって容易に逆行し、高レベルの塩によって遮断される(
図5及び6)。これらの特性はNTΔHis6で維持され(比濁分析)、NT断片(NT4RepCT、NT4Rep、NTTNT4RepCT、及びNT5Rep)を含むミニスピドロインで増殖し、これによってpH7で溶解性が得られ、pH6で迅速に重合する(
図3)。
【0168】
図3における矢印は、マクロな形成が最初に検出されたときに、pH7でNTの存在が重合を遅延させるが、pH6で重合を促進させることを示す目的である。これはC末端断片(黒丸)が存在するか、否か(縞模様の丸印によって示す)と無関係である。NTの存在によって、更に規則正しい重合が得られ、
図3に走査型電子顕微鏡写真で例示されており、pH7での総ての構造に対する(時間尺度の上方)、あるいはpH6でのNT4RepCTに対する(時間尺度の下方)典型的な初期の重合体である。pH及び塩の観察された効果はスピドロインの重合がNTが関与する静電相互作用に依存することを示唆する。
【実施例3】
【0169】
《pH依存性かつ可逆性の相互作用の媒介物としてのNT》
Euprosthenops australisの牽引糸由来の大嚢状腺スピドロイン1のN末端断片(NT)は、pH7で可溶性が高い(210mg/mlを超える)が、pH値が6.4未満で電荷相互作用を介して700nm程度の重合体に重合する(動的な光散乱及び比濁分析で示される)。NTの重合はpHの増加によって容易に逆行し、高レベルの塩によって遮断される。これらの重合特性はNT断片(例えば、NT−X及びNT−Y)を含む融合タンパク質で増殖し、これによってpH7で溶解性が得られ、pH6で迅速に重合する(
図7)。2の異なるタンパク質を形成するこの可逆的方法は、タンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質間の相互作用の調査、例えば、蛍光共鳴エネルギー転移を用いたタンパク質間の相互作用の分析において、あるいは活性、例えば酵素活性の誘発において、あるいはタンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質の局在化又は固定化のために、あるいは例えばアレイ技術を用いたタンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質の分析又は選別において用いることができる。
【実施例4】
【0170】
《MetSP−C33Leu融合タンパク質の産生》
発現ベクターはHis
6(配列番号26、27)に対する融合物としてNT−MetSP−C33Leuをコードする遺伝子を含んで構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を0.9ないし1のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に3時間25℃でインキュベートした。細胞は遠心分離によって回収され、pH8の20mMのTris−HClで再懸濁した。
【0171】
リゾチームを添加し、細胞は氷上で30分間インキュベートした。Tween(ツイーン)は0.7%の最終濃度まで添加した。細胞は氷上で5分間、2秒間のオン状態と2秒間のオフ状態を交互にして、超音波処理で破壊した。細胞の溶解産物は20000×gで30分間遠心分離した。上澄部はNi−NTAセファロースカラムに充填し、0.7%のTweenを含むpH8の20mMのTris−HCl緩衝液で平衡にした。カラムは0.7%のTweenを含むpH8の20mMのTris−HCl緩衝液で洗浄し、結合タンパク質は0.7%のTweenを含むpH8の20mMのTris−HClの300mMのイミダゾール緩衝液で溶出した。
【0172】
溶出物は還元条件下で12%のTris−グリシンゲル上でSDS−PAGEに供した。融合タンパク質に対応する主要なバンドは
図8Aで矢印によって示している。収率は1のOD
600まで成長した1リットル振盪フラスコの培養由来の精製したタンパク質をmg単位で定量した。収率は64mg/lであった。単一のNT成分を含む融合タンパク質によって、細胞の溶解産物における洗浄剤の存在下で驚くべき高収率が得られると結論づけている。
【実施例5】
【0173】
《MetSP−C33Leu融合タンパク質の産生》
発現ベクターはHis
6(配列番号28、29)に対する融合物としてNT
2−MetSP−C33Leu(すなわち、NTNT−MetSP−C33Leu)をコードする遺伝子を含んで構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を0.9ないし1のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に3時間25℃でインキュベートした。細胞は遠心分離によって回収され、pH8の20mMのTris−HClで再懸濁した。
【0174】
リゾチームを添加し、細胞は氷上で30分間インキュベートした。Tweenは添加しないか、0.7%の最終濃度まで添加するかのいずれかであった。細胞は氷上で5分間、2秒間のオン状態と2秒間のオフ状態を交互にして、超音波処理で破壊した。細胞の溶解産物は20000×gで30分間遠心分離した。上澄部はNi−NTAセファロースカラムに充填し、pH8の20mMのTris−HCl緩衝液±0.7%のTweenで平衡にした。カラムはpH8の20mMのTris−HCl緩衝液±0.7%のTweenで洗浄し、結合タンパク質はpH8の20mMのTris−HClの300mMのイミダゾール緩衝液±0.7%のTweenで溶出した。
【0175】
溶出物は還元条件下で12%のTris−グリシンゲル上でSDS−PAGEに供した。左側の2のレーンにおける融合タンパク質に対応する主要なバンドは
図8Bで矢印によって示している。収率は1のOD
600まで成長した1リットル振盪フラスコの培養由来の精製したタンパク質をmg単位で定量した。収率はTweenの不存在下で40mg/lであり、0.7%のTweenの存在下で68mg/lであった。2の連続したNT成分を含む融合タンパク質によって、細胞の溶解産物における洗浄剤の不存在下で驚くべき高収率が得られ、細胞の溶解産物における洗浄剤の存在下で収率が更に増加すると結論づけている。
【実施例6】
【0176】
《NTセファロースの産生》
CysHis
6NT構造は大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を形質転換するのに用いられた。細胞はカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で0.8ないし1のOD
600まで成長させ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、pH8の20mMのTris−HClで再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。完全溶解後、15000gの上澄部は、Niセファロースで満たされたカラム(GE Healthcare社)に充填した。カラムは広範に洗浄し、その後結合タンパク質は100ないし300mMのイミダゾールで溶出した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、pH8.0の20mMのTris−HClで透析した。精製したCys−His6−NTタンパク質は標準的なプロトコル(GE Healthcare社)を用いて活性化したチオールセファロースと結合する。
【実施例7】
【0177】
《NTセファロースを用いた融合タンパク質の精製》
実施例4及び5由来の細胞の溶解産物はNTセファロースで満たされたカラムに充填され、pH6の20mMのリン酸ナトリウムで事前に平衡にする。カラムはpH6の20mMのリン酸ナトリウムで広範に洗浄し、その後結合タンパク質はpH7の20mMのリン酸ナトリウムで溶出する。標的タンパク質を含む画分は貯蔵する。タンパク質試料はSDS−PAGEゲルで選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色する。タンパク質成分は280nmでの吸光度から判定している。
【実施例8】
【0178】
《NT−REP
4−CTの産生》
発現ベクターはHis
6(配列番号17、18)に対するN末端融合物としてNT−REP
4−CTを産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、20mMのTris−HCl(pH8.0)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。
【0179】
完全溶解後、15000gの上澄部は、セファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を300mMのイミダゾールで溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析した。
【0180】
タンパク質試料はSDS−PAGEで選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色した。得られたNT−REP
4−CTタンパク質は5kDaの分子量遮断型のセルロースフィルタ(Millipore社)を用いた限外濾過によって濃縮した。
【実施例9】
【0181】
《NT−REP
4−CTの産生》
発現ベクターはZbasic(配列番号19)に対するC末端融合物としてNT−REP
4−CTを産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大2ないし4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。
【0182】
完全溶解後、15000gの上澄部は、陽イオン交換体(HiTrap S、スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を500mMのNaClで勾配溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)で透析した。NT−REP
4−CTタンパク質(配列番号20)は、比率が1:50(w/w)のプロテアーゼ3C:融合タンパク質を用いて、4℃で一晩、タンパク質開裂によってZbasicタグから遊離した。遊離したZbasicタグを除去するため、開裂混合物は更なる陽イオン交換体に充填し、通過画分を回収した。
【実施例10】
【0183】
《NT−REP
4−CTの産生》
発現ベクターはHisTrxHis(配列番号21)に対するC末端融合物としてNT−REP
4−CTを産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大2ないし4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、20mMのTris−HCl(pH8.0)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。
【0184】
完全溶解後、15000gの上澄部は、Niセファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を500mMのNaClで勾配溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析した。NT−REP
4−CTタンパク質(配列番号22)は、比率が1:1000(w/w)のトロンビン:融合タンパク質を用いて、4℃で一晩、タンパク質開裂によってHisTrxHisタグから遊離した。遊離したHisTrxHisを除去するため、開裂混合物は更なるNiセファロースに充填し、通過画分を回収した。
【実施例11】
【0185】
《NT
2−REP
4−CTの産生》
発現ベクターはHis
6(配列番号23、24)に対する融合物としてNT
2−REP−CT(すなわち、NTNT−REP−CT)をコードする遺伝子を含んで構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を0.9ないし1のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に3時間25℃でインキュベートした。細胞は遠心分離によって回収され、pH8.0の20mMのTris−HClで再懸濁した。
【0186】
リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を添加し、細胞は氷上で30分間インキュベートした。細胞の溶解産物は20000×gで30分間遠心分離した。上澄部はNi−NTAセファロースカラムに充填し、pH8の20mMのTris−HCl緩衝液で平衡にした。カラムはpH8の20mMのTris−HCl緩衝液で洗浄し、結合タンパク質はpH8の20mMのTris−HClの300mMのイミダゾール緩衝液で溶出した。
【0187】
溶出物は還元条件下で12%のTris−グリシンゲル上でSDS−PAGEに供した。左側の2のレーンにおける融合タンパク質に対応する主要なバンドは
図8Cで矢印によって示している。収率は1のOD
600まで成長した1リットル振盪フラスコの培養由来の精製したタンパク質をmg単位で定量した。収率は30mg/lであった。スピドロインの微小なタンパク質は2のNT部分との融合物として有益に発現しうると結論づけている。
【実施例12】
【0188】
《NT−REP
4−CT、NT
2−REP
4−CT、及びNT−REP
8−CTの産生》
発現ベクターはNT−REP
4−CT(配列番号20及び22)、NT
2−REP
4−CT(配列番号23)、及びNT−REP
8−CT(配列番号25)をそれぞれコードする遺伝子を含んで構成する。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を0.9ないし1のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に3時間25℃でインキュベートする。細胞は遠心分離によって回収され、pH8.0の20mMのTris−HClで再懸濁する。
【0189】
リゾチームを添加し、細胞は氷上で30分間インキュベートした。Tweenは添加しないか、0.7%の最終濃度まで添加するかのいずれかである。細胞の溶解産物は20000×gで30分間遠心分離する。NTのアフィニティ培地は実施例6に記載のように調製している。上澄部は実施例7に従いNTのアフィニティカラムに充填する。NTのアフィニティカラム由来の溶出物はゲル電気泳動に供する。
【実施例13】
【0190】
《NTHis、NT
2−REP
8−CT、及びNT
2−Brichosの産生》
A)NTHis
発現ベクターはHis
6(配列番号30)に対するN末端融合物としてNTを産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、20mMのTris−HCl(pH8.0)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。
【0191】
完全溶解後、15000gの上澄部は、Niセファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を300mMのイミダゾールで溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析した。タンパク質試料はSDS−PAGEで選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色した。得られたNTタンパク質(配列番号30)は5kDaの分子量遮断型のセルロースフィルタ(Millipore社)を用いた限外濾過によって濃縮した。収率は1のOD
600まで成長させた1リットルの振盪フラスコあたり112mgであった。
【0192】
B)NT
2−REP
8−CT
発現ベクターはHis
6(配列番号31)に対するN末端融合物としてNT
2−REP
8−CT(NTNT8REPCT)を産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、20mMのTris−HCl(pH8.0)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。タンパク質試料はSDS−PAGEで選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色して、タンパク質の発現を確認した。
【0193】
完全溶解後、15000gの上澄部は、Niセファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填する。カラムは結合タンパク質を300mMのイミダゾールで溶出する前に広範に洗浄する。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析する。タンパク質試料はSDS−PAGEゲルで選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色する。
【0194】
C)NT
2−Brichos
発現ベクターはHis
6(配列番号32)に対するN末端融合物としてNT
2−Brichos(NT−NT−Brichos)を産生するように構成した。ベクターはカナマイシンを含むLuria−Bertani培地で30℃で成長させた大腸菌BL21(DE3)細胞(Merck Biosciences社)を1程度のOD
600まで形質転換するのに用いられ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発され、更に最大4時間室温でインキュベートした。その後、細胞は回収され、20mMのTris−HCl(pH8.0)で再懸濁し、リゾチーム及びデオキシリボヌクレアーゼIを補充した。細胞は更に、氷上で5分間、2秒間のオン状態と2秒間のオフ状態を交互にして、超音波処理で破壊した。
【0195】
完全溶解後、15000gの上澄部は、Niセファロースで満たされたカラム(スウェーデン国ウプサラのGE Healthcare社)に充填した。カラムは結合タンパク質を300mMのイミダゾールで溶出する前に広範に洗浄した。標的タンパク質を含む画分は貯蔵し、20mMのTris−HCl(pH8.0)で透析した。タンパク質試料はSDS−PAGEを介して選別し、その後クーマシーブリリアントブルーR−250で染色した。得られたNT
2−Brichosタンパク質(配列番号32)は5kDaの分子量遮断型のセルロースフィルタ(Millipore社)を用いた限外濾過によって濃縮した。収率は1のOD
600まで成長させた1リットルの振盪フラスコあたり20mgであった。
【実施例14】
【0196】
《pH依存性で可逆性の捕捉のためのNT》
〈目的〉
NTの融合タンパク質を可逆的に捕捉するために共有結合的に固定化したNT(及びNTNT)を使用する。
【0197】
〈方法〉
NT(及びNTNT)融合タンパク質の、NT(及びNTNT)が共有結合した繊維(及び薄膜)へのpH依存性の形成を調査する。NTがない繊維及び薄膜はコントロールとして用いている。
【0198】
A)繊維
NT−REP
4−CT(配列番号20)、NT
2−REP
4−CT(配列番号23)、及びREP
4−CT(配列番号2、コントロール)の繊維(0.5cm長程度、50ug程度)は可溶性のNTHis(配列番号30)又はNT
2−Brichos(配列番号32)の100μl溶液にpH8で10分間水浸した。pHは400ulのリン酸ナトリウム緩衝液(NaP)の添加によってpH6に減少し、10分間インキュベートして、可溶性のNTの繊維への形成を可能にした。繊維はpH6の500μlのNaPに移され、2回洗浄した。最終的には、繊維はpH7の500μlのNaPに移し、10分間インキュベートして、可溶性のNTの遊離を可能にした。異なる溶液による試料はSDS−PAGEで分析した。
【0199】
NT
2−REP
4−CT及びNT−REP
4−CTの繊維を用いて、NTHis及びNT
2−Brichosの双方をpH6で捕捉した。pH7へのpH上昇時に、NTHis及びNT
2−Brichosの双方が再度遊離され、SDS−PAGEで検出できた。300mMのNaClの添加によって、pH6での捕捉が減少した。
【0200】
B)薄膜
NT−REP
4−CT(配列番号20)及びREP
4−CT(配列番号2、コントロール)の薄膜はプラスチックウェルに3mg/mlのタンパク質溶液の50μlを割当てることによって調製し、一晩中乾燥させて安置した。次の日、pH8の5mg/mlの可溶性のNTHis(配列番号30)の100μl溶液は薄膜のウェルに添加され、10分間安置された。pHは次いで400μlのNaPの添加によって6まで低減し、10分間インキュベートして可溶性のNTを薄膜へ形成可能にした。薄膜は次いでpH6の500μlのNaPで2回洗浄した。可溶性のNTHisの遊離のために、pH7の500μlのNaPを添加して10分間インキュベートした。同様のことが300mMのNaClの存在下で、総てのpH6のNaP緩衝液においてなされた。様々な溶液由来の試料をSDS−PAGEで分析した。
【0201】
SDS−PAGEでの分析は、NT−REP
4−CTの薄膜によってNTHisがpH6で捕捉可能となり、pHの7への上昇時に再度遊離可能となることを示した。
【実施例15】
【0202】
《融合タンパク質のpH依存性で可逆性の形成のためのNT》
〈目的〉
タンパク質成分間の相互作用の分析を可能にする、例えば、βシートで標的となるBrichos、例えばサーファクタントタンパク質C(SP−C)の相互作用を分析する可逆性のタグとしてNTを使用する。
【0203】
NT
2−Brichos(配列番号32)はNT
2−MetSP−C33Leu(配列番号28)又はNTHis(配列番号30)のいずれかと、pH8で総量が100μlとなるまで混合する。NaP緩衝液(400ul)を添加して、最終的なpH6を得て、混合物は20分間インキュベートして、NTの形成を可能とした。pHは次いで再度pH7に上昇させ、NT形成を逆行可能にする。様々な溶液由来の試料は天然ゲル及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)で分析する。