(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912086
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】通信システムでの通信階層とサブ階層との相互作用を介した通信システムの正確なクロック同期化のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20160414BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20160414BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W84/12
【請求項の数】29
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-556020(P2012-556020)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公表番号】特表2013-521692(P2013-521692A)
(43)【公表日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】KR2011001481
(87)【国際公開番号】WO2011108870
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】12/983,208
(32)【優先日】2010年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/312,628
(32)【優先日】2010年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/311,136
(32)【優先日】2010年3月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ファイ−ロン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,チュ−ラン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ,チウ
【審査官】
小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−109433(JP,A)
【文献】
特表2010−541298(JP,A)
【文献】
Ganesh Venkatesan,Kevin Stanton,Normative Text for D3.02 Timing Measurement,doc.:IEEE 802.11-08/1229r2,2008年11月
【文献】
Assaf Kasher,D3.0 PHY clarifications,doc.:IEEE 802.11-11/0794r00,2011年 6月22日,URL,https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-0892-01-00ad-d3-0-phy-clarifications.docx
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの時間同期化方法において、
無線送信機から同期化フレームを無線受信機に、無線通信媒体を介して送信し、前記同期化フレームは、送信のために、前記同期化フレームの所定位置のシンボルが無線通信媒体に位置するときである前記送信機ローカル時間を示す送信時間を含むタイムスタンプを含む段階と、
前記受信機の物理(PHY)階層で、前記同期化フレームを受信する段階と、
前記同期化フレームの前記シンボルが、前記無線通信媒体から前記受信機の前記PHY階層に受信されるときである前記受信機ローカル時間を含む受信時間を決定する段階と、
前記送信機と前記受信機との時間を同期化する段階と、を含み、
前記送信機と前記受信機との時間を同期化する段階は、
前記タイムスタンプと前記受信時間との差を決定する段階と、
前記差に基づいて、前記受信機と前記送信機との時間同期化のために、受信機ローカル時間を調節する段階と、を含み、
前記送信機のローカル時間は、
前記送信機の物理階層によって生成された、PLCPヘッダの伝送が完了されることを示すPHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブに基づき決定されることを特徴とする無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項2】
前記同期化フレームが上位通信階層に到逹する時間である受信機ローカル時間を示す到着時間に、前記同期化フレームが前記上位通信階層に到着するとき、前記受信された同期化フレームを前記受信機の前記上位通信階層に提供する段階をさらに含み、
前記受信機と前記送信機との時間を同期化する段階は、
前記受信された同期化フレームの前記タイムスタンプを利用し、前記タイムスタンプと前記受信時間との差を決定する段階と、
前記受信時間と前記差との組み合わせに基づいて、修正されたローカル時間を決定する段階と、
前記修正されたローカル時間に基づいて、前記受信機のローカル時間を更新し、前記受信機と前記送信機との時間を同期化する段階と、と含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項3】
送信機ローカルクロックを読み取ることによって、前記同期化パケットの所定位置のシンボルが、前記受信機への送信のために、前記無線通信媒体に位置するときである前記ローカル時間を獲得する段階と、
前記同期化パケットの所定位置のシンボルが、前記送信機から前記無線通信媒体を介して受信されるときである前記ローカル時間を得るために、受信機ローカルクロックを読み取る段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項4】
前記受信機と前記送信機との前記時間を同期化する段階は、
前記受信機のPHY階層でのプロセッシング遅延と、前記受信機のPHY階層と前記上位通信階層とのプロセッシング遅延と、を加算することによって、前記受信機ローカル時間を調整する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項5】
前記タイムスタンプは、
前記同期化フレームの所定位置のシンボルが送信のために、前記無線通信媒体に位置するときである前記送信機ローカル時間を推定する送信時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項6】
前記タイムスタンプは、
前記同期化フレームの所定位置のシンボルが送信のために、前記無線通信媒体に位置するときである送信機ローカルタイムを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項7】
前記無線通信システムは、無線近距離ネットワーク(WLAN)を含み、
前記送信機は、無線通信のためのメディア接近制御(MAC)階層と物理(PHY)階層とを含み、
前記受信機は、無線通信のためのMAC階層とPHY階層とを含み、前記受信機の前記上位通信階層は、前記MAC階層を含むことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項8】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記プリアンブルの前記開始地点に設定されることを特徴とする請求項7に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項9】
前記送信機PHY階層のPHY階層収斂手続き(PLCP)サブ階層が、PHY_TXSTART.confirmation(TXSTATUS)プリミティブを、前記送信機MAC階層に発行した後、前記送信機のMAC階層が、TIME_OF_DEPARTUREパラメータを利用し、前記所定位置のシンボルが、前記無線チャネルに送信されたときであるローカル時間を決定する段階を含み、
前記TIME_OF_DEPARTUREパラメータは、前記送信機PHY階層の物理層媒体依存(PMD)サブ階層での送信のために、前記プリアンブルの開始地点のための時間値を運ぶことを特徴とする請求項8に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項10】
前記受信機PHY階層のPLCPサブ階層が、前記PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)プリミティブを、前記受信機のMAC階層に発行した後、前記受信機の前記MAC階層が、前記受信機の前記PHY階層がRXVECTOR内にあるRX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータを利用し、前記同期化パケットの前記プリアンブルの受信を始める時間である推定された時間を獲得する段階をさらに含み、
前記RX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータは、前記受信機PHY階層に、前記同期化フレーム・プリアンブルの前記開始が到着し始めたときから、前記PHY_RXSTART.indicationプリミティブが、前記受信機のMAC階層に発行された時点までの前記推定されたタイムオフセットを運ぶことを特徴とする請求項9に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項11】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記PLCPヘッダ(header)の前記開始地点に設定されることを特徴とする請求項7に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項12】
前記送信機のMAC階層が、前記PLCPヘッダの前記開始で、PHY_TXSTART.confirmationが、前記送信機のMAC階層に発行された後、前記所定位置の前記シンボルが、前記無線チャネルに送信されるときである前記ローカル時間を決定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項13】
前記受信機PHY階層のPMDサブ階層が、前記PLCPヘッダの前記開始で、PM_DATA.indを、前記受信機PHY階層のPLCPサブ階層に発行する段階と、
前記PLCPヘッダの前記開始が、前記PHY階層の前記PMDサブ階層で受信されるときを決定する段階と、
PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)が、前記PLCPヘッダの終端で、前記受信機のMAC階層に発行される段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項14】
前記RXVECTOR内のRX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータが、前記受信機PHY階層の前記PLCPサブ階層に、前記PMD_DATA.indが発行されるときの前記時間を保存するために提供される段階をさらに含み、
前記RX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータは、前記PLCPヘッダの前記開始が、前記受信機PHY階層の前記PMDサブ階層に受信される前記時間を示すことを特徴とする請求項13に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項15】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記PLCPヘッダの前記終端地点に設定されることを特徴とする請求項7に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項16】
前記PLCPヘッダの前記終端で、PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)を、前記受信機MAC階層に発行する段階をさらに含み、
前記受信機MAC階層は、前記PLCPヘッダの前記終端で、前記PHY_RXSTART.indicationが、前記受信機MAC階層に発行された後のローカル時間を獲得することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システムの時間同期化方法。
【請求項17】
無線受信機において、
無線通信媒体を介して無線送信機から受信した同期化フレームを含み、前記同期化フレームは、前記同期化フレームの所定位置に、前記受信機への送信のために、前記無線通信媒体に位置する時間である前記送信機ローカル時間を示す送信時間を含むタイムスタンプを含む無線通信のためのPHY階層と、
前記同期化フレームの前記シンボルが、前記無線通信媒体から前記受信機の前記PHY階層に受信されるときである前記受信機ローカル時間を含む受信時間を決定し、前記受信された同期化フレームを、前記受信機の上位通信階層に提供するように構成され、前記同期化フレームが、上位階層に到着する受信機ローカル時間を示す到着時間に、前記上位階層に到着する同期化モジュールと、を含み、
前記受信機同期化モジュールは、
前記タイムスタンプと前記受信時間との差を決定し、
前記送信機と前記受信機との時間同期化のために、前記受信機ローカル時間と前記差とで調整することによって、前記受信機を、前記送信機の時間と同期化させ、
前記タイムスタンプは、
前記送信機の物理階層によって生成された、PLCPヘッダの伝送が完了されることを示すPHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブに基づき決定されることを特徴とする無線受信機。
【請求項18】
前記受信機と前記送信機とによる前記受信機同期化モジュールの時間同期化は、前記受信された同期化フレームの前記タイムスタンプを利用し、前記タイムスタンプと前記受信時間との差を決定し、
前記受信時間と前記差との組み合わせに基づいて、修正されたローカル時間を決定し、前記受信機と前記送信機との時間同期化のために、前記修正されたローカル時間に基づいて、前記受信機のローカル時間を更新することによって遂行されることを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項19】
前記受信機同期化モジュールは、
前記同期化パケットの所定位置のシンボルが、前記送信機から前記無線通信媒体で受信されるときである前記ローカル時間を獲得するために、受信機ローカルクロックを読み取ることを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項20】
前記受信機同期化モジュールは、
前記受信機PHY階層でのプロセッシング遅延と、前記PHY階層及び前記上位通信階層間のプロセッシング遅延と、を加算することによって、前記受信機ローカル時間を調整することを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項21】
前記タイムスタンプは、
前記同期化フレームの所定位置のシンボルが、送信のために、前記無線通信媒体に位置するときである前記送信ローカル時間を推定する送信時間を含むことを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項22】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記プリアンブルの前記開始地点に設定されたことを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項23】
前記受信機同期化モジュールは、前記受信機PHY階層のPLCPサブ階層が、前記受信機のMAC階層に、前記PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)プリミティブを発行した後、前記受信機の前記PHY階層が、RXVECTOR内にあるRX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータを利用し、前記受信機の前記PHY階層が、前記同期化パケットの前記プリアンブルの受信が開始される前記推定された時間を獲得するための前記受信機MAC階層を含み、
前記RX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータは、前記受信機PHY階層に、同期化フレーム・プリアンブルの開始が到着し始めたときから、PHY_RXSTART.indicationプリミティブが、前記受信機のMAC階層に発行された時点までの前記推定されたタイムオフセットを運び、
前記TIME_OF_DEPARTUREパラメータは、前記送信機PHY階層のPMDサブ階層に送信のために、前記プリアンブルの前記開始地点のための前記時間値を運ぶ前記送信機PHY階層のPLCPサブ階層を含むとき、前記送信機MAC階層に、PHY_TXSTART.confirmation(TXSTATUS)プリミティブを発行した後、前記送信機は、TIME_OF_DEPARTUREパラメータを利用することを特徴とする請求項22に記載の無線受信機。
【請求項24】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記PLCPヘッダの前記開始地点に設定されたことを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項25】
前記受信機PHY階層のPMDサブ階層は、前記PLCPヘッダの前記開始で、PM_DATA.indを、前記受信機PHY階層のPLCPサブ階層に発行し、
前記受信機同期化モジュールは、前記PLCPヘッダの前記開始が、前記PHY階層の前記PMDサブ階層で受信されるときを決定し、
前記PHY階層は、前記PLCPヘッダの終端で、PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)を、前記受信機のMAC階層に発行し、
前記送信機は、PHY_TXSTART.confirmationが、前記PLCPヘッダの前記開始で、前記送信機MAC階層に発行された後、前記所定位置に前記シンボルが、前記無線チャネルを介して送信されたときである前記ローカル時間を決定することを特徴とする請求項24に記載の無線受信機。
【請求項26】
前記RXVECTOR内のRX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータが、前記PMD_DATA.indを、前記受信機PHY階層の前記PLCPサブ階層に発行するときである前記時間を保存するために提供され、
前記RX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータは、前記PLCPヘッダの前記開始が、前記受信機PHY階層の前記PMDサブ階層に受信される時間を示すことを特徴とする請求項25に記載の無線受信機。
【請求項27】
前記所定位置は、
前記同期化フレームの前記PLCPヘッダの前記終端地点に設定されることを特徴とする請求項17に記載の無線受信機。
【請求項28】
PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)は、前記PLCPヘッダの終端で、前記受信機MAC階層に発行され、
前記MAC階層は、前記PLCPヘッダの前記終端で、前記PHY_RXSTART.indicationが、前記受信機MAC階層に発行された後、ローカル時間を獲得することを特徴とする請求項27に記載の無線受信機。
【請求項29】
無線通信システムの時間同期化方法において、
無線送信機から同期化フレームを無線受信機に、無線通信媒体を介して送信し、前記同期化フレームは、送信のために、前記同期化フレームの所定位置のシンボルが無線通信媒体に位置するときである前記送信機ローカル時間を示す送信時間を含むタイムスタンプを含む段階と、
前記受信機の物理(PHY)階層で、前記同期化フレームを受信する段階と、
前記同期化フレームの前記シンボルが、前記無線通信媒体から前記受信機の前記PHY階層に受信されるときである前記受信機ローカル時間を含む受信時間を決定する段階と、
前記送信機と前記受信機との時間を同期化する段階と、を含み、
前記送信機と前記受信機との時間を同期化する段階は、
前記受信機におけるプロセッシング遅延 (Processing delay)を加算することによって、前記タイムスタンプを調節する段階と、
前記調節されたタイムスタンプと前記受信時間との差を判断する段階と、
前記差に基づいて、前記受信機と前記送信機との時間同期化のために、受信機ローカル時間を調節する段階と、を含み、
前記タイムスタンプは、
前記送信機の物理階層によって生成された、PLCPヘッダの伝送が完了されることを示すPHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブに基づき決定されることを特徴とする無線通信システムの時間同期化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置間のクロック同期化、特に、無線ネットワークでの装置間通信のための正確なクロック同期化に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワークのためのIEEE 802.11無線通信プロトコル規格は、無線ネットワークの無線ステーション(wireless stations)のための時間同期化方式を規定している。アクセスポイント(AP:access point)無線ステーションは、ビーコン(beacon)を生成し、タイムスタンプ(timestamp)をビーコンフレームに位置させるとき、システムクロックを読み取ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施形態は、無線ネットワークからなる無線通信システムのような通信システムの装置間の高い正確度のクロック同期化プロトコル(protocol)のための方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、送信のために、所定の位置のシンボルを無線通信媒体に位置させるときである送信機ローカル時間を示す送信時間を含むタイムスタンプを含んだ同期化フレームを、無線送信機から無線受信機まで無線通信媒体を介して送信する段階からなる無線通信システムでの時間同期化のためのプロセス(process)を提供する。前記プロセスは、同期化フレームを、受信機の物理(PHY:physical communication)階層から受信する段階、無線通信媒体から前記同期化フレームのシンボルを受信するときの受信機物理階層での受信機ローカル時間からなる受信時間を決定する段階をさらに含んでもよい。前記プロセスは、受信された同期化フレームを、受信機の上位通信階層に提供する段階をさらに含み、前記同期化フレームは、上位通信階層に同期化フレームが、上位フレームに達する受信機ローカル時間を示す到着時間に到着する。前記プロセスは、前記タイムスタンプと受信時間との差を判断し、受信機と送信機との時間同期化のために、受信機ローカル時間と前記差とを調整することにより、受信機と送信機との時間を同期化する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明の実施形態によれば、AP内のMAC層によってパケットが作成されるとき、AP MAC層で一般的にタイムスタンピングされる方式の代わりに、パケットがAP PHY層にチャネルを介して伝送されるために到着したとき、ローカルクロックの時間でタイムスタンプされる。これは、処理遅延を短縮する(すなわち、APでアクセス遅延を短縮)。同様に、ステーションクロックは、パケットがステーションのPHY階層によって受信されるとき、ステーションのMAC層よりも、PHY層で読み取られる。さらに、ステーションクロックは、受信されたパケットのタイムスタンプに基づいて、必要な場合に更新される。これは、処理遅延をさらに短縮する(つまり、ステーションの受信遅延を短縮)。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態によって、時間同期化を具現する無線通信システムのブロック・ダイヤグラムである。
【
図2】本発明の一実施形態によって、無線近距離ネットワーク(WLAN)からなる無線通信システムでのクロック同期化を具現する無線通信ステーションの物理(PHY)階層と、メディア接近制御通信(MAC)階層とのブロック・ダイヤグラムである。
【
図3A】本発明の一実施形態によって、APが、タイムスタンプを含んだビーコンフレームを含む同期化パケットを、無線近距離ネットワーク(WLAN)内の受信ステーションに送信する、タイミング・ダイヤグラムとプロセスフローとの例を図示する図面である。
【
図3B】本発明の一実施形態による時間同期化プロセスのフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態によって、時間同期化を具現する送信機無線ステーションと、受信機無線ステーションとからなるWLANのブロック・ダイヤグラムである。
【
図5】本発明の一実施形態によって、MAC階層とPHY階層収斂手続き(PLCP)サブ階層との間、
図4の送信機ステーションのPHY階層のPHY PLCPサブ階層と、PHY物理層媒体依存(PMD)サブ階層との時間同期化のための相互作用の例示プロセスとタイミング・ダイヤグラムとを図示する図面である。
【
図6】本発明の一実施形態によって、MAC階層とPHY PLCPサブ階層との間、また
図4の受信機ステーションのPHY階層のPHY PLCPサブ階層と、PHYPMDサブ階層との時間同期化のための相互作用の例示プロセスとタイミング・ダイヤグラムとを図示する図面である。
【
図7】本発明の一実施形態によって、MAC階層とPHY PLCPサブ階層との間、また
図4の受信機ステーションのPHY階層のPHY PLCPサブ階層と、PHYPMDサブ階層との時間同期化のための相互作用の例示プロセスとタイミング・ダイヤグラムとを図示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願は、2010年3月5日に出願されたアメリカ仮出願(No.61/311,136)から優先権を主張して出願した発明である。また、2010年3月10日に出願されたアメリカ仮出願(No.61/312、628)から優先権を主張して出願した発明である。
【0008】
本発明は無線ネットワークからなる無線通信システムのような通信システムの装置間の通信のための高い正確度のクロック同期化プロトコルを提供する。本発明の実施形態は、通信階層とサブ階層との相互作用を介して、無線通信ネットワークでの正確なクロック同期化を提供する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態によって、時間同期化を具現するために、向上したネットワーク・コーディネータ(coordinator)であり、STA
1、…、STA
nのような異なるステーション(STAs)104と作用するアクセスポイント(AP)102を含んだ多重無線ステーションからなる無線LAN(WLAN:wireless local area network)100(IEEE 802.11標準によるWLAN)の例示形態のブロック・ダイヤグラムを図示している。無線ステーションは、無線通信媒体(例えば、ラジオ周波数(RF:radio frequency)チャネル(channel))のような通信リンクを介して無線通信を行う。本発明の一実施形態によれば、ネットワーク100は、無線通信のために、通信階層とサブ階層との相互作用を介して、多数の無線ステーション間の正確なクロック同期化を具現する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、AP 102とSTAs 104は、データ送信のために、開放型システム相互接続モデル(OSI model:open system interconnection model)で特定されたMAC(media access control)階層とPHY(physical)階層とからなるデータリンク(data link)階層を含んだ通信階層を介して、パケット送信を利用することにより、フレーム構造を具現する。無線ステーションでMAC階層は、MACプロトコル・データユニット(MPDU:MAC protocol data unit)を構成するために、ペイロード(payload)データを含んだデータパケットを受信し、MACヘッダ(header)を付ける。MACヘッダは、ソースアドレス(SA:source address)や宛先アドレス(DA:destination address)のような情報を含んでいる。MPDUは、PHYサービス・データユニット(PSDU:PHY service data unit)の一部であり、PHYプロトコル・データユニット(PPDU:PHY protocol data unit)を構成するため、APのような無線ステーションのPHY階層に送信され、それにPHYヘッダ(すなわち、PHYプリアンブル(preamble))を付ける。PHYヘッダは、暗号化/変調方式を含んだ送信方式を決定するためのパラメータ(parameter)を含んでいる。APからSTAまでパケットを送信する前に、チャネル推定及び同期化情報を含んでいるプリアンブルがPPDUに付く。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態によって、同期化マネージャモジュール(synchronization manager module)112を利用して、クロック同期化を具現する無線ステーションのPHY階層110と、MAC階層111との例示ブロック・ダイヤグラムを図示している。PHY階層は、PLCPサブ階層110AとPMDサブ階層110Bとを含んでいる。
【0012】
一実施形態によれば、本発明は、異なる通信階層(例えば、MAC階層111、PHY階層110)の遅延を決定または推定させ、また、前記遅延は、無線ステーションで、情報が通信階層間を通過するから発生する。本発明の一具現例は、下記に追加して説明されているように、交差階層(cross-layer)/サブ階層(sub-layer)の相互作用に焦点を合わせることにより、MAC/PHY階層での高い正確度の時間同期化を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、時間同期化は、チャネルを介して、直接的にWLAN内で同期化遅延ジッタ(jitter)を最小化するために、送信無線ステーション(すなわち、AP 102)と受信機ステーション(すなわち、STA 104)とのPHY/MAC階層で、同期化信号(例えば、ブロードキャスト・ビーコン(broadcast beacon))を利用することにより達成される。受信ステーションが、送信ステーションからタイムスタンプと共にビーコンを受信するとき、受信ステーションの同期化マネージャモジュールは、PHY階層110の遅延時間と、受信ステーションでのPHY階層とMAC階層との遅延とに基づいて、タイムスタンプ値を調整する。その後、受信ステーションは、送信ステーション(すなわち、AP)のシステムクロックと同期化するために、受信ステーションのシステムクロック(ローカル時間)を、ビーコン内のタイムスタンプの調整された値に設定することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、タイミングと係わるパラメータは、正確な時間同期化を支援するために、通信階層またはサブ階層を通過する。本発明はまた、タイミングと係わるパラメータが、MAC階層111とPLCPサブ階層との間、またPLCPサブ階層110AとPMDサブ階層110Bとの間を通過するメカニズムを提供する。従って、本発明は、異なる通信階層/サブ階層の時間記録と、通信階層とサブ階層との間のパラメータ通過を可能とさせる。
【0015】
図3Aは、タイミング・ダイヤグラムの例示及びプロセスフロー20を示しており、前記APは、タイムスタンプを含んだビーコンフレームからなる同期化パケットを受信STAに送信する。受信STAは、受信STAのPHY階層でのプロセッシング(processing)遅延と、受信されたフレームの少なくとも一部の処理における、無線ステーションのPHY階層からMAC階層まで横切るような受信STAのPHY階層とMAC階層との間の通過(passing)遅延と、を追加することにより、ビーコンフレームのタイムスタンプ値を調整する。
【0016】
送信ステーションは、ローカル時間を設定するシステムクロックを有しており、受信ステーションは、ローカル時間を設定するシステムクロックを有しており、受信ステーションのローカル時間は、初めに送信ステーションのローカル時間と同期化される必要がない。本発明の一実施形態による受信ステーションのローカル時間と、送信ステーションのローカル時間との同期化のための手続き及びシナリオの例示は、次の通りである。ローカル時間ta0は、全体パケットが、例示でのAPのような送信ステーションのMAC階層で設けられた時間である。ta1は、パケットの所定の位置に、シンボル(symbol)が、APのPHY階層によって、無線チャネルに位置するときの時間である。ta3’は、パケットの所定位置で、シンボルが受信ステーションのPHY階層によって、無線チャネルから受信されるときの時間である。ta4’は、受信されたパケットが、STAのPHY階層を通過してSTAのMAC階層に到着する時間である。
【0017】
クロックの移動によって、AP 102とSTA 104とでのローカルクロック/時間読み取りは変わる。ローカル時間ta0で、APのMAC階層は、ビーコン・タイムスタンプ(すなわち、タイムスタンプ)をAPのPHY階層によって、無線チャネルのビーコンフレーム内の所定位置にシンボルが位置するときであるローカル時間ta1に設定する。一実施形態として、タイムスタンプ(ta1)は、APのPHY階層によって、無線チャネルのビーコンフレーム内の所定位置に位置するときである推定されたローカル時間からなる(例えば、ta0とta1との間の平均遅延持続期間)。他の実施形態では、タイムスタンプ(ta1)は、以下の
図5ないし
図7と係わって記載したタイミング・プリミティブ(primitive)に根拠して決まる。
【0018】
伝播遅延(propagation delay)は、無線チャネル(すなわち、ラジオ周波数送信チャネル)のAPからSTAまでの送信パケット(すなわち、ビーコン)ビットの遅延時間である。伝播遅延は、一般的に、ビーコン間隔(beacon interval)と比べて無視してもよく、STAとAPとの間の物理的距離の関数である。従って、伝播遅延は、APからの距離差がある異なるSTAによって違う。しかし、APとSTAとの位置が相対的に固定されれば、相応する伝播遅延は、変わりない値になる。伝播遅延は小さく、処理遅延(processing delay)と比べるとき、相対的に計算しやすい。例えば、もしAPとSTAとの間の距離が100メートルよりも短い場合、伝播遅延は、100/(3*108)=333.3nsより小さい。一例として、ビーコンは、同期化パケットに利用され、ビーコン間隔(beacon interval)は、同期化パケット間の間隔を表示する。
【0019】
処理遅延は、APでの処理遅延(例えば、アクセス遅延(access delay)とSTAの処理遅延(例えば、受信遅延(receive delay))とを含む。APでの処理遅延は、ビットがAPのMAC階層から無線チャネルまで、APのPHY階層を通過する時間である。従って、APでの処理遅延を最小化するためには、所定位置のシンボルが、無線チャネルに位置するとき、パケット・タイムスタンプが、できるだけta1と近くなければならない。
【0020】
STAでの処理遅延は、無線チャネルから受信した所定位置のシンボルが、STAのPHY階層で処理され、STAのMAC階層に到逹するのに必要な時間を含む。
図3Aで示される例のように、STAでの処理遅延は、ta3’とta4’との差からなっている。従って、STAでの処理遅延を最小化するためには、STAのMAC階層での時間であるta4’が、可能な限り、無線チャネルから、STAのPHY階層の所定位置で、シンボルが受信されたとき時間であるta3’と近くなければならない。
【0021】
受信STAで、PHY階層は、ローカル時間ta3’でPHY階層は、ビーコンパケットを受信し、PHY階層は、受信STAのMAC階層に、受信時間であるta3’を報告する。ローカル時間ta4’で、受信STAのMAC階層は、受信機ステーションのPHY階層から同期化パケットを受信する(すなわち、ta4’でSTAのMAC階層は、STAのPHY階層から受信したフレームの所定位置にあるシンボルを受信される)。
【0022】
その後、受信STAの同期化マネージャ・モジュールは、ビーコン・タイムスタンプとta3’との差△を決定する。
【0023】
△=タイムスタンプ−ta3’
その後、差△(符号を有した数字)は、調整されたローカル時間Sを決定するために、その次のローカルを時間ta4’に加える。
【0024】
S=ta4’+△
受信ステーションのローカル時間を表現するシステムクロックは、調整されたローカル時間であるSに設定される。一般的に、受信ステーションのシステムクロックは、受信ステーションのシステムクロックと同期化される。
【0025】
図3Bのフローチャートを参照すれば、本発明の一実施形態による高い正確度の時間同期化プロセスの具現は、下のプロセスブロックからなる。
【0026】
ブロック301:APMAC階層は、ビーコンフレームからなる同期化パケットを生成し、APローカル時間を表示するビーコンフレーム・タイムスタンプを、ビーコンフレームの所定位置のシンボルが、APのPHY階層によって無線チャネルに位置する送信時間(すなわち、ta1)に設定する。
【0027】
ブロック302:PHY階層は、無線チャネルを介して、ビーコンフレームの送信を始める。
【0028】
ブロック303:STA PHY階層は、APから無線チャネルを介して、ビーコンフレームを受信され始める。
【0029】
ブロック304:STA PHY階層は、ビーコンフレームの所定位置のシンボルがSTA PHY階層に到着する受信時間(すなわち、ta3’)で、STAローカルクロック/時間を読み取る。
【0030】
ブロック305:STA PHY階層は、STA MAC階層に受信時間を報告し、ビーコンフレームをSTA MAC階層に通過させる。
【0031】
ブロック306:STA MAC階層は、STA PHY階層からビーコンフレームを受信し、ビーコンフレームは、STAローカル到着時間(すなわち、ta4’)で、STA MAC階層に到着する。
【0032】
ブロック307:STA MAC階層は、ビーコンプレタイムスタンプと受信時間(すなわちta3’)の差(すなわち△)を決定する。
【0033】
ブロック308:STA MAC階層は、修正したローカル時間を決定するために、前記の差(符号を有した数字)を到着時間(すなわち、ta4’)に加える。
【0034】
ブロック309:STAクロックは、修正したローカル時間に設定され、かような結果で、STAクロックは、APクロックと同期化される。
【0035】
もしAPとSTAとの距離が、伝播遅延を決定するために推定されるのであれば、STAは、またローカル時間から伝播遅延を差し引くことにより、クロック(タイマ(timer))を調節することができる。
前述の同期化プロセスの一実施形態の適用例示は、次のような60GHz周波数帯域スペックを介したIEEE 802.11adのような、ミリメートル波無線通信標準と、無線ギガビット・アライアンス(WiGig:wireless gigabit alliance)スペックとで説明される。WiGigは、60GHzラジオ(radio)周波数帯域を介した多重ギガビット(multi-gigabit)高速(speed)通信技術に適用される。WiGigは、WLANと、家電製品及び無線ラジオを含んだ他の電子装置のようなWLANデバイス(wireless local area network devices)とのための60GHz周波数帯域と、さらに高い無線信号送信とのために、無線デジタルネットワーク・インターフェース・スペック(wireless digital network interface specification)を定義するために産業体が主導したものである。
【0036】
IEEE 802.11プロトコル仕様ファミリ(IEEE 802.11 protocol specification family)によれば、MAC階層は、プリミティブ(primitive)と、上位階層のタイミング計算のためのインターフェースとを提供する。これは、上位階層での特別なデータフレームの最後のシンボルの終わりの発生を示すことによって達成され、上位階層は、タイムスタンプを記録し、上位階層データパケットを介してタイムスタンプを送る。
【0037】
本発明の実施形態は、IEEE 802.11プロトコル(例えば、IEEE 802.11ad標準)のための向上を提供し、本発明の実施形態と係わったかような向上は、上位階層とMAC階層との間、MAC階層とPHY階層との相互作用によって発生した遅延ジッタ(delay jitter)のようなアーチファクト(artifacts)を最小化するような送信ステーションと受信ステーションとの時間同期化のためのプロセスと構造とを含む。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態による送信機無線ステーション201と、受信機無線ステーション210とからなるWLAN 200の例示ブロック・ダイヤグラムを図示している。本発明の一実施形態によれば、各ステーション201,202は、前述の
図2に図示された無線ステーションの1つの具現例である。
図4で図示されたところによれば、送信機ステーション201は、PHY階層202とMAC階層203とを含む。本発明の実施形態によれば、送信機ステーション201は、同期化/データパケット206(タイミング/同期化情報を含む)に作動するために設定されたMAC同期化マネージャ・モジュール204と、PHY同期化マネージャ・モジュール205とを利用して、クロック同期化を行う。本発明の実施形態によれば、受信機ステーション210は、同期化/データパケット216に作動するために設定されたMAC同期化マネージャ・モジュール214と、PHY同期化マネージャ・モジュール215とを利用して、クロック同期化を提供する。同期化/データパケット216は、送信機ステーション201から受信した同期化/データパケット206からなっている。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、1つの例として、ネットワーク 200は、IEEE 802.11標準に基づいて、無線通信プロトコルを具現し、時間同期化機能(TSF:time synchronization function)を利用して、追加して時間同期化を提供する。本発明の一実施形態によれば、送信機ステーション201のMAC階層203は、MAC同期化マネージャ・モジュール204を含み、PHY階層205は、PHY同期化マネージャ・モジュール205を含む。MAC同期化マネージャ・モジュール204は、パケット206(例えば、ビーコンまたは他のフレーム)の所定位置での情報が、PHY同期化マネージャ・モジュール205によって発見されたときである送信機ステーションのPHY階層のPMDサブ階層110B(
図2)によって送信された実際のクロック読み取りタイム(actual reading time)を決定する。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、受信機ステーション210のMAC階層は、MAC同期化マネージャ・モジュール214を含み、PHY階層は、PHY同期化マネージャ・モジュール215を含む。MAC同期化マネージャ・モジュール214は、PHY同期化マネージャ・モジュール215から発見されたときであるPHY階層212のPMDサブ階層によって、パケット216(例えば、ビーコンまたは他のフレーム)の所定位置に受信された実際のクロック読み取りタイムを決定する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記所定位置は、パケット/フレームのプリアンブル(preamble)の開始部分に設定される。本発明の一実施形態によれば、
図5は、フレーム(パケット)通信のためのMAC階層と、PHY PLCPサブ階層との間、さらに、送信機ステーション201(例えば、AP 102(
図1))でのPHY階層202のPHY PLCPサブ階層と、PHYPMDサブ階層との相互作用のための例示プロセスとタイミング・ダイヤグラムを図示している。本発明の一実施形態によれば、
図6は、フレーム(パケット)通信のための受信機ステーション210のPHY階層212のMAC階層と、PHY PLCPサブ階層との間、及びPHY PLCPサブ階層とPHYPMDサブ階層との相互作用のための例示タイミング・ダイヤグラムとプロセスとを図示している。本発明の一実施形態による例示演算シナリオは、以下の
図4ないし
図6の結合によって説明される。
【0042】
送信ステーション201(
図5)のMAC同期化マネージャ・モジュールは、所定位置でのシンボルが、PLCPサブ階層110Aが、MAC階層203に、PHY_TXSTART.confirmation(TXSTATUS)プリミティブ(すなわち、PHY−TXSTART.confirm)を発行した後、TXSTATUSベクトル(vector)内のTIME_OF_DEPATUREパラメータを介して、無線チャネルに送信されるときであるタイムスタンプ(ta1)のような実際クロック読み取りタイムを決定する。TIME_OF_DEPARTUREパラメータは、送信機無線ステーション201のPHY階層202に送信されるためのPMDサブ階層110Bプリアンブル開始地点のための時間値を運ぶ。TXSTATUSベクトルは、PHY階層がMAC階層に、MPDUの送信と係わって提供するパラメータのリストを示す。このTXSTATUSベクトルは、PLCPとPHYとの運用上のパラメータを含む。PHY_TXSTART.confirmationは、MPDU送信を始めるために、PHY階層によってMAC階層に送信されたサービス・プリミティブである。
【0043】
C−PSDUは、符号化されたPSDUを示す。一般的に、ほぼ信頼し得る符号/変調方式は、PHYヘッダ内のPHY信号フィールド(PHY signal field)に適用され、追加的な循環重複検査(CRC:cyclic redundancy check)は、受信機で、この情報が正確に受信されることを保証するために挿入される。MACヘッダとペイロード(payload)データは、一般的に同等に取り扱われ、PHYヘッダのPHY信号フィールドより少ないロバスト(robust)のために、同一な符号/変調方法を利用して送信される。
【0044】
受信機ステーション210(
図6)のMAC階層213のMAC同期化マネージャ・モジュール214は、PLCPサブ階層が、PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)プリミティブ(すなわち、PHY−RXSTART.Ind)をMAC階層213に発行した後、RXVECTOR内のRX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータを利用し、送信されたフレーム・プリアンブルが、受信機ステーション210のPHY階層212で受信され始める推定された時間を獲得する。
【0045】
RX_START_OF_FRAME_OFFSETパラメータは、受信機ステーション210PHY階層(例えば、アンテナポート(antenna port))に到着する入力フレーム(パケット)に相応するプリアンブルの開始時点から、PHY_RXSTART.indicationプリミティブがMAC階層213に発行される時点まで推定されたタイムオフセット(time offset)(10nsユニット以内(in nanosecond units))を運ぶ。よって、受信機MAC階層213が、RX_START_OF_FRAME_OFFSETを除き、PHY_RXSTART.indication(RXVECTOR)プリミティブを得るときの時間は、受信機ステーション210の推定されたプリアンブル開始受信時間(estimated preamble starting receive time)を提供する。
【0046】
PHY_RXSTART_indicationは、PHY階層によって、MAC階層が、PLCPが有効なスタートフレーム・デリミタ(SFD:start frame delimiter)とPLCPヘッドとを受信したという表示である。プリミティブは、PHY−RXSTART.indication(RXVECTOR)を提供する。RXVECTORベクトルは、有効なPLCPヘッダの受信直後、または受信されたフレーム内の最後のPSDUデータの受信直後、PHYがMAC階層に提供するパラメータのリストを示す。RXVECTORは、MAC及びMACマネジメント(management)パラメータいずれもを含む。
【0047】
ミリメートル波(mmwあるいはmmWave:millimeterwave)無線通信標準の実施形態の同期化メカニズムは、本発明の一実施形態によって、次の通りである。ビーコンフレームのようなmmWaveまたはアナウンスフレーム(announce frame)を送信する送信機ステーション201は、フレームタイムスタンプ・フィールドの値を、無線ステーションの201のPHY階層202から、無線チャネルを介して、フレーム・プリアンブルの送信が開始される送信時間の送信機TSFタイマの値と同一に設定する。フレームタイムスタンプ・フィールドの値は、送信機ステーション201で、最小限一部分のフレームが、MAC−PHYインターフェースから無線チャネルインターフェースまで、ステーションローカルPHY階層202を通過する間である送信ステーション遅延を含む。
【0048】
mmWaveバンド(band)で動作する無線受信機ステーション210で受信されたタイムスタンプ値は、最小限受信フレームの一部が、ローカルPHY階層212を通過する遅延だけではなく、受信ステーション210で、RX_START_OF_FRAME_OFFSETによって推定されるPHY階層212でのプリアンブルが受信され始める時間と同一な量を加算することによって獲得されて調整される。
【0049】
本発明の他の実施形態によれば、送信ステーション201から受信ステーション210まで送信されたフレーム内の前記所定位置は、PLCPヘッダの開始地点に設定される。PLCPヘッダの開始で、PHY_TXSTART.confirmation(すなわち、PHY−TXSTART.confirm)がMAC階層203に発行された後、送信機ステーション201のMAC階層203の同期化マネージャ・モジュール204は、実際のクロック読み取りタイムを得る。
【0050】
本発明の一様相によれば、RX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータは、PMD_DATA.indが、受信ステーション210のPHY階層212のPLCPサブ階層に発行された時間を保存するために、RXVERCTORに挿入される。RX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERパラメータは、受信機ステーション210のPHY階層212のPMDサブ階層で、PLCPヘッダの開始が、PMDサブ階層に受信される時間を示す時間値を運ぶ。
【0051】
本発明の一実施形態によるミリメートル無線通信標準のための同期化メカニズムを利用する本発明の他の実施形態によれば、ビーコンフレームのようなmmWaveまたはアナウンスフレームを送信する送信機無線ステーション201は、フレームタイムスタンプ・フィールドの値を、フレームのPLCPヘッダの最初のデータシンボルが、無線チャネルに送信が開始される送信時間の送信機TSFタイマの値と同一に設定する。タイムスタンプの値は、最小限一部分のフレームが、送信機ステーション201で、ステーションローカルPHY階層を介して、無線チャネルで、MAC−PHYインターフェースからそのインターフェースまでを通過する間である送信ステーション遅延を含む。
【0052】
mmWaveバンドで動作する無線受信ステーション210で、受信フレームのタイムスタンプ値は、受信ステーションの最小限受信フレームの一部分が、ローカルPHY階層212を通過する時間だけではなく、PHY階層212で、PLCPヘッダの最初のデータシンボルが、RX_START_TIME_OF_PLCP_HEADERによって指示されるPHY階層212でのPLCPヘッダの最初のデータシンボルが受信される時間と同一な量の遅延を加算することによって獲得されて調整される。
【0053】
本発明の他の実施形態による
図7の送信機ステーション201での例示タイミング・ダイヤグラム及びプロセス50によれば、送信機ステーション201から受信機ステーション210まで送信されたフレーム内の前記所定位置は、パケット/フレームのPLCPヘッダの終端地点に設定される。特に、
図7は、本発明の一実施形態によって、PHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブの提供に基づいた送信機ステーション201でのMAC−PLCP−PMD階層/サブ階層間の相互作用の例を示している。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、PHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブ(すなわち、PHY−TXPLCPEND.indication)は、送信機MAC階層に係わるシグナリング(signaling)、無線チャネルでのPLCPヘッダの送信完了を知らせることによってなり、前記MAC階層は、PHY_TXPLCPEND.indicationが、タイムスタンプ(ta1)で得られるときである時間を保存することができる。
【0055】
送信機ステーション201で、これは、PHY階層202でPLCPヘッダの送信が完了したとき、MAC階層203に発行されるPHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブを利用して、時間を直接的に獲得することを承諾する。送信機ステーション201のMAC階層203は、PHY_TXPLCPEND.indicationプリミティブが、PHY階層202のPLCPサブ階層時間から受信された時間を保存することによって、PHY階層202で、PLCPヘッダの送信が完了したときのクロック(ローカル時間)を獲得する。受信機ステーション210で、MAC階層213は、PHY_RXSTART.indicationに基づいた実際のローカル時間(ta3’)を獲得し、前記PHY_RXSTART.indicationは、PLCPヘッダの終端(
図6)で、MAC階層213に発行される。
本発明の一実施形態によれば、PHY_TXPLCPEND.indicationを定義するために、IEEE 802.11規格のための下記表1が追加(強化)して提供される。
【0056】
(表1)
TABLE 1.Additions to sub-clause 12.3.5 of the IEEE Std.802. 11-2007,“IEEE Standard for Information technology Telecommunications and information exchange between systems Local and metropolitan are a networks Specific requirements,Part 11: Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications,”IEEE Computer Society,June 12,2007:
【0057】
【表1】
本発明の一実施形態によれば、ビーコンフレームのようなmmWaveまたはアナウンスフレームを送信する送信機ステーション201は、フレームタイムスタンプ・フィールドの値に設定し、これは、無線チャネルを介して、MPDUの最初のビット(bit)を含むデータシンボルの送信が開始される時間の送信機TSFタイマの値と同一である。タイムスタンプの値は、送信機ステーション201で、最小限フレームの一部分がローカルPHY202を介して、無線チャネルでMAC−PHY階層インターフェースからインターフェースまでを通過する間である送信ステーション遅延を含む。
【0058】
受信機ステーション210で、mmwバンドで作動するとき、受信されたフレームのタイムスタンプ値は、受信機ステーションの210のローカルPHY階層212を介した遅延だけでなく、受信機ステーション210で、PHY_RXSTART.indicationによって表示される受信されたフレームのPLCPヘッダの最後のデータシンボルの受信が完了したときと同一な量を加算することによって獲得されて調整される。
【0059】
図3Aの同期化例示手続きは、
図5ないし
図7と係わるプロセスに適用されてもよい。しかし、タイムスタンプ値(t1)は、
図3Aと係わる推定よりは、
図5ないし
図7と係わるタイミング・プリミティブに基づいて決まる。特に、ta0は、MAC階層でのフレーム内の所定位置であるときの時間であり、ta1は、シンボルが送信機によって無線チャネルに位置するときの時間であり、ta3’は、受信機のPHY階層によって、無線チャネルで受信されるときの時間値であり、ta4’は、受信機がシンボルを受信した後、ローカルクロック調整を始めるときの時間である(すなわち、ビーコンまたは他の同期化フレームが、タイムスタンプのような同期化情報を運ぶ)。受信機は、ta4’に、△(前記△は、ta1−ta3’)を加算することによって、ローカルクロック値を調整する。タイムスタンプは、ta1値を含む。
【0060】
たとえAP及びSTAのための特定の実施形態について説明したにしても、本発明の実施形態は、2つの隣接するSTA間の同期化のために適用されてもよい。従って、本発明によれば、APとSTAとの間で、さらに高い時間同期化正確度を成就するために、ローカルクロック時間は、イベント発生位置と可能な限り近く読み取られ、これは、伝達及びプロセッシングの遅延を最小化するために、ローカルクロック時間がPHY階層で読み取られなければならないということを意味する。
【0061】
当該技術分野で知られているように、の前述の実施形態は、プロセッサによる実行のためのプログラム命令語、ソフトウェアモジュール(software modules)、マイクロコード(microcode)、コンピュータで読み取り可能な媒体であるコンピュータプログラム製品、注文型半導体(application specific intergrated circuits)、ファームウエア(firmware)、消費者電子装備、無線装置、無線送信機/受信機、無線ネットワークのような多くの方法で具現されてもよい。それだけでなく、前記実施形態は、全体的にハードウェア(hardware)形態で形成されたり、全体的にソフトウェア(software)形態で形成されたり、あるいは全体的にソフトウェア及びハードウェア両者のいずれも含んでもよい。本発明の実施形態は、フローチャート及び/または方法ブロック・ダイヤグラム、装置(システム)及び本発明の実施形態によるコンピュータプログラム製品を参照して説明される。図面/ダイヤグラムの各ブロックまたはそれらの組み合わせは、コンピュータプログラム命令語によって具現されてもよい。コンピュータプログラム命令語は、機械生産時にプロセッサに提供され、かようなプロセッサを介して実行される命令語は、フローチャート及び/またはブロック・ダイヤグラムの特定された機能/動作を具現する手段を作る。フローチャート/ブロック・ダイヤグラム各ブロックは、本発明の実施形態具現によって、ハードウェア及び/またはソフトウェアのモジュールまたはロジックで表現されてもよい。ブロックに記載した機能は、現在の図面に記載している手順と異なる方式で具現されもする。
【0062】
「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータ利用可能媒体」、「コンピュータで読み取り可能な媒体」及び「コンピュータプログラム製品」は、メインメモリ(main memory)、第2メモリ(secondary memory)、着脱可能な保存ドライブ(removable memory)、ハードディスクに設置されるハードディスク及びシグナルのようなメディア(media)で言及され、一般的に利用される用語である。かようなコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムに提供するための手段である。コンピュータで読み取り可能な媒体は、コンピュータシステムに、データ、命令語、メッセージまたはメッセージフレーム、及び他のコンピュータが読み取り可能な媒体からのコンピュータで読み取り可能な情報を読み取り可能にする。例えば、コンピュータで読み取り可能な媒体は、フロッピー(登録商標)ディスク、ROM(read-only memory)、フラッシュメモリ(flash memory)、ディスクドライブメモリ(disk drive memory)、CD−ROM(read-only memory)及び他の永久的な保存装置のような不揮発性メモリを含んでもよい。例えば、データ、コンピュータ命令語のような情報を、コンピュータシステム間に送信するのに有用である。さらに、コンピュータで読み取り可能な媒体は、有線ネットワーク及び無線ネットワークを含むネットワークリンク(network link)及び/またはネットワーク・インターフェースのような一時的な状態の媒体(transitory state medium)内のコンピュータで読み取り可能な情報で構成されてもよい。コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジッグと命名される)は、メインメモリまたは第2メモリに保存される。コンピュータプログラムはまた、通信インターフェースを介して受信されてもよい。かようなコンピュータプログラムは、実行時、本発明で説明された特徴をコンピュータシステムで行うことを可能にする。特に、コンピュータプログラムは、実行時、プロセッサ・マルチコア・プロセッサ(processor multi-core processor)で、コンピュータシステムの特徴を動作させる。それにより、かようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムの制御装置を示す。
【0063】
たとえ本発明で、特定のバージョン(version)を参照して説明したにしても、他のバージョンもまた可能である。従って、添付された特許請求の範囲は、ここに含まれた選好されるバージョンの詳細な説明に制限されるものではない。