(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912087
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】後部把持を伴う大腿骨プロテーゼステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
A61F2/36
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-557655(P2012-557655)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-521923(P2013-521923A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】IT2011000069
(87)【国際公開番号】WO2011114363
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】RM2010A000664
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】RM2010U000036
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512241863
【氏名又は名称】パロンビ、パオロ
【氏名又は名称原語表記】PALOMBI, Paolo
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】パロンビ、パオロ
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0119942(US,A1)
【文献】
特表平03−500978(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04421153(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/32
A61F 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方部分及び後方部分を有する大腿骨プロテーゼステム(1)において、
前記ステム(1)が空洞状後方部分を有し、
前記空洞状後方部分が、間に空洞部(3)を画成する2つの末広がりの側部ウイング部(2)を有し、
前記空洞部(3)が、内側に膨み部をもつ内部形状を有し、
前記後方部分は、前記ステムが挿入される大腿骨の軸に対して斜方向の後部プロファイルを有し、前記ステムに加わる力を、前記大腿骨の軸に平行な成分と前記大腿骨の軸に垂直な成分とに変換することを特徴とするステム。
【請求項2】
単一のブロックから形成されることを特徴とする請求項1に記載のステム。
【請求項3】
チタン合金から形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のステム。
【請求項4】
外科医が一定の曲率の動作を伴って大腿骨に前記ステムを挿入することができるように、前記ステムの曲率半径は一定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部把持を伴う大腿骨プロテーゼステムに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、短いステムを有して後部把持を伴った全股関節プロテーゼ用大腿骨プロテーゼステムに関し、このステムは、温存性があり且つ低侵襲性である介入を行うことを可能とする。
【背景技術】
【0003】
既知のように、従来のプロテーゼステムはこれまで、近位で骨幹端を把持する、骨幹を把持する又は全体を把持することを特徴としてきた。既知の問題解決方法によるステムに作用するトルクは全て、傾斜する危険性を全く伴わずに、骨幹導管上のプロテーゼステムの内側部分のスラスト力によって吸収される。
【0004】
最近、新たなステムが生み出されており、これらのステムは、埋め込みに関係する骨頭(osseous capital)を温存する(save)目的で、より短く作られる(短いステムである)と共に骨幹端にのみ固定される。
【0005】
このタイプのステムは、導管における固定が減少されることを含め、幾つかの問題を解決する上では利点を有するが、大腿骨頭にかかる荷重と大腿骨骨幹端の解剖学上の軸との間に生じるトルクによって生成される力を受け、プロテーゼの後部のスラスト力を、プロテーゼに影響を及ぼす(dominate)海綿状の骨幹端−骨幹(metadiaphyseal)の近位部分にまで生じる可能性があり、その結果、大腿距領域上にてこ的に作用するプロテーゼの後部の近位方向への可動化が起こり、このスラスト力が剪断力に変わり得る危険性を伴う。
【発明の概要】
【0006】
このような状況において、本発明により提供される解決策を見出すことができ、その解決策とは、より良好な骨幹端−骨端(meta-epiphyseal)の温存性及びより強い二次的固定を容易にするような構造を有する短い大腿骨プロテーゼステムを形成することを可能にするものである。
【0007】
本発明の別の目的は、1つの溝及び2つのウイング部の形成を伴った大きく変更が加えられた後方面を有する大腿骨プロテーゼステムを生み出すことであり、この溝及びウィング部は、より良好な骨結合(osseointegration)を伴った骨−プロテーゼの接触面を増加させるものである。
【0008】
本発明によれば、空洞状後方部分を有する大腿骨プロテーゼステムを用いて、これらの効果及び他の効果が得られる。
【0009】
したがって、本発明の特定の目的とするものは、空洞状後方部分を有することを特徴とする、前方部分及び後方部分を有する大腿骨プロテーゼステムである。
【0010】
特に、本発明によれば、上記プロテーゼステムは、単一のブロックから形成され、好ましくはチタン合金から形成される。
【0011】
本発明によれば、後方部分は、間に空洞部を画成する2つの末広がりの側部ウイング部を有することが好ましい。
【0012】
本発明の特に好ましい解決策において、外科医が一定の曲率での動作を伴って大腿骨にステムを挿入することができるように、ステムの曲率半径は一定である。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記ステムは、現在市場に出回っているステムと比較して、特別な長さ方向の後部プロファイル(back profile)を有し、それはステムが挿入される大腿骨の軸に対して概ね垂直な角度を形成する。
【0014】
次に本発明を、添付図面の図を特に参照しながら限定ではなく例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による後部把持を伴う大腿骨プロテーゼステムの斜視図である。
【
図4】大腿骨に挿入されている
図1のステムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず添付図面の
図1、
図2及び
図3を参照すると、単一のブロックからなり、好ましくはチタン合金からなる、本発明による大腿骨プロテーゼステム1が示されている。上記ステム1は、その後方部分に、空洞部3を画成する2つの末広がりの側部ウイング部2を有している。
【0017】
図4に示されているように、ステム1の曲率半径4は、一貫して一定であるように設計されており、そのため、外科医は一定の曲率での動作を伴って大腿骨5にステム1を挿入することができ、有利なことに、このことによって、覆っている骨幹端の骨の一体性が得られる。
【0018】
さらに、ステム1は、現在市場に出回っているステムと比較して特別な長さ方向の後部プロファイルを有しており、この後部プロファイルは、ステム1が挿入される大腿骨5の軸に対して概ね垂直な角度を形成する。このことによって、有利なことに、トルクの応力がかかっている状態でステム1が移動できないようになる。さらに、このことは、トルクに起因する鉛直方向の力をより横断方向のスラスト力に変換することを可能とし、市場に出回っているステムが受ける滑りの問題に対処するだけでなく、ステム1の後方空洞部3に沿ってスラスト力を再分散することによっても対処する。
【0019】
ステム1は、大腿骨骨幹端の海綿骨にステム1が埋め込まれる大腿骨5に対して、市場に出回っているステムにおけるように腹側と、そして背側との双方の側で、2つの末広がりの側部ウイング部2によって強化された結合を伴って、しがみついて留まり、このことによって、曲げ応力に対する抵抗が与えられ、効果的且つ迅速な骨結合のための骨−金属の接触面/対照面が増加し、有利なことに、大腿骨に捻り方向につかむ力を加えることが可能となる。
【0020】
本発明による解決策を用いれば、一連の重要な利点が得られる。特に、介入によって影響を受ける骨を実質的に温存することと、2つのウイング部2を有することで骨の総接触面積が増加することと、より良好に一体化されること(それ故、より良好に固定されること)とが得られる。
【0021】
さらに、後部の把持と応力の解放とが、ステムの後部における上記説明した構成のおかげで得られる。
【0022】
その結果として、プロテーゼにおける可能性のある変更を考慮しても骨が温存され、ステムの「無菌性弛緩(Aseptic loosening)」の危険性が低下し、低侵襲性介入を達成することが可能である。
【0023】
さらに、本発明によるステムは、軟部組織を保護することを可能にし、入院期間を減らし、血液の損失を低減する。
【0024】
したがって、軟部組織が生来の解剖学的構造を維持するため、軟部組織の合併症が低減し、そして、この合併症は、骨物質の損失に対する検証の段階の間、低減する。
【0025】
最後に、本発明によるステムは、後部に沿って空洞部があるおかげで、全体が1つのブロックからなり且つ市場に出回っているステムよりも、かなり軽量である。本発明によるステムは、固有受容性を向上させるため、患者にとってかなり利点のあるものである。
【0026】
上述において、好ましい実施形態が記載され、本発明の幾つかの変形形態が示唆されているが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような関連する保護範囲を逸脱しなければ当業者によって変更及び交換がなされてもよいということは、理解されるべきである。