特許第5912095号(P5912095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912095水陸両用車におけるまたはそれに関連する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912095
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】水陸両用車におけるまたはそれに関連する改善
(51)【国際特許分類】
   B60F 3/00 20060101AFI20160414BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20160414BHJP
   B60G 99/00 20100101ALI20160414BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B60F3/00 A
   B60B35/14 Q
   B60G99/00
   B60K1/00
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-118605(P2013-118605)
(22)【出願日】2013年6月5日
(62)【分割の表示】特願2010-522433(P2010-522433)の分割
【原出願日】2008年8月22日
(65)【公開番号】特開2013-224140(P2013-224140A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2013年7月3日
(31)【優先権主張番号】0716618.4
(32)【優先日】2007年8月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500170009
【氏名又は名称】ギブズ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(72)【発明者】
【氏名】ギブズ、アラン、ティモシー
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05531179(US,A)
【文献】 特表平04−504692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 3/00
B60G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水陸両用車が水上を走行するときに水と接触する船体と、
車両支持位置から格納位置へ移動可能である少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置と、を備えた陸上および水上で使用するための水陸両用車であって、
前記格納可能なサスペンション装置が、各車輪に対し、サスペンションアップライトに枢支連結されたアッパおよびロアサスペンションアームを含み、前記アッパサスペンションアームが上部枢支連結部によって前記サスペンションアップライトに枢支連結され、かつ前記ロアサスペンションアームが下部枢支連結部によって前記サスペンションアップライトに枢支連結され、
前記サスペンションアップライトが前記下部枢支連結部から、前記上部枢支連結部から離反する方向に、ホイールハブマウント位置まで延び、前記マウント位置でホイールハブが回転自在に取り付けられ、
前記ホイールハブが前記水陸両用車の原動機からトランスミッションを介してのリレードライブによって回転駆動され、
前記トランスミッションは、前記車両支持位置にある前記サスペンションアップライトの比較的高い位置から入力駆動力を受け取り、かつ前記車両支持位置にある前記サスペンションアップライトの比較的低い位置に出力駆動力を生成するように構成されている、水陸両用車。
【請求項2】
前記サスペンションアームが前記船体内から前記船体の外縁を超えて延びる、請求項1に記載の水陸両用車。
【請求項3】
前記ホイールハブが前記下部枢支連結部から、前記上部枢支連結部および前記下部枢支連結部間の距離と少なくとも同等の距離に位置する、請求項1または2のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項4】
前記ハブが前記下部枢支連結部から少なくとも5cm、10cm、15cm、または20cm離れて位置する、請求項1ないし3のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項5】
前記ホイールハブが前記サスペンションアップライトの遠端で前記サスペンションアップライトに回転自在に取り付けられた、請求項1ないし4のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項6】
前記トランスミッションがステップダウンドライブ部を有し、そこで駆動力が前記下部枢支連結またはそれより上の位置から受け継がれ、前記サスペンションアップライトに沿ってまたはそれと平行して従動ホイールハブに中継される、請求項1ないし5のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項7】
前記船体がV型船体である、請求項1ないしのいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項8】
前記船体内において前記アッパおよびロアサスペンションアームのインボード側端部に枢支連結された支持構造、並びに前記サスペンションアームの1つと前記支持構造との間に接続されたばねおよびダンパアセンブリをさらに備えた、請求項1ないしのいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項9】
前記格納可能なサスペンション装置を前記車両支持位置から前記格納位置まで移動するように動作可能である延長可能なアクチュエータを備えた、請求項1ないしのいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項10】
前記アクチュエータが地上高を変化させるように動作可能でもある、請求項に記載の水陸両用車。
【請求項11】
前記支持構造が、1端を前記支持構造の固定部に回動自在に取り付けられた回転自在の支持アームを含み、前記支持アームに前記アクチュエータが枢支連結され、前記アクチュエータが1端を前記支持アームに枢支連結され、かつ他端を前記支持構造の固定部に枢支連結され、ばねおよびダンパアセンブリが1端を前記回転自在の支持アームに、かつ他端を前記ロアサスペンションアームに枢支連結された、請求項またはに記載の水陸両用車。
【請求項12】
船体部分を含む車体を備え、車両支持位置で前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記船体部分の外部に位置するように、前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記車体に接続され、格納位置および車両支持位置で前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を収容するために滑走面に切欠きおよび/または不連続部を設ける必要が無いように、細長いサスペンションアップライトが前記滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる、請求項1ないし11のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項13】
前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記船体部分の上で前記車体に接続される、請求項12に記載の水陸両用車。
【請求項14】
水上で使用時に前記滑走面が水と直接接触可能である、請求項12または13に記載の水陸両用車。
【請求項15】
船体部分の流体力学を不利に変化させる効果を有する切欠き、変則的形状、または不連続部を船体の滑走面に含まない船体部分を含む車体を備え、前記滑走面が水上で使用時に水と接触するためのものであり、車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記船体部分の外部に位置するように、前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記車体に接続され、かつ前記滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる細長いサスペンションアップライトを含み、前記車両支持位置で前記サスペンション装置が、陸上で使用する場合に前記船体部分および/または滑走面から離隔した関係に係止可能であるので、格納位置および車両支持位置で前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を収容するために切欠き、変則的形状、または不連続部が前記滑走面に必要とされず、前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が、車両支持位置から水線より上の格納位置までの移動をもたらすように、前記車体および前記格納可能なサスペンション装置のインボード側に面する領域の少なくとも一部分に接続された格納手段を含む、請求項1ないし14のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項16】
前記サスペンションア装置が前記船体部分および/または前記滑走面と接触することなく、前記サスペンション装置が係止可能であるように構成された、請求項15に記載の水陸両用車。
【請求項17】
前記格納可能なサスペンション装置が、車両支持位置で垂直方向に離隔した2つの位置に前記車体および細長いサスペンションアップライトの接続をもたらすダブルウィッシュボーン構成を含む、請求項15または16に記載の水陸両用車。
【請求項18】
水上で使用時に水と接触するための滑走面に、船体部分の流体力学を不利に変化させる効果を有する切欠き、変則的形状、または不連続部を含まない船体部分を含む車体と、
車両支持位置から格納位置へ移動可能な少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置と、を備え、
車両支持位置で前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記船体部分の外部に位置するように、前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が前記車体に接続され、かつ
前記滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる細長いサスペンションアップライトと、
前記格納可能なサスペンション装置と共に可動であり、水陸両用車の操舵をもたらすために前記水陸両用車の使用者からの操舵入力を前記サスペンション装置の1つ以上の回転自在の連結部と接続することのできる操舵装置と、を含むので、
格納位置および車両支持位置で前記少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置および操舵装置を収容するために前記滑走面に切欠き、変則的形状、または不連続部が不要である、
請求項1ないし17のいずれかに記載の水陸両用車。
【請求項19】
前記水陸両用車が、使用者を乗馬のような仕方で水陸両用車に乗せるように構成された、請求項18に記載の水陸両用車。
【請求項20】
前記操舵装置が使用者の操舵入力を受け取るためのハンドルバー構成を含む、請求項18または19に記載の水陸両用車。
【請求項21】
前記格納可能なサスペンション装置が、前記ホイールハブマウント位置に取付け可能な車輪の操舵をもたらすように、前記細長いサスペンションアップライトを地面に対して横方向に回転可能にする、前記車体に対する枢支連結部を含む、請求項18ないし20のいずれか一項に記載の水陸両用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上および水上で使用するための水陸両用車に関する。特に、本発明は、少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を備えた水陸両用車に関する。
【背景技術】
【0002】
水陸両用車は、陸上および水上の両方で同等に効率的に乗員を輸送するのによく適していなければならない。しかし、ほとんどの水陸両用車が、両方というよりむしろ陸上または水上のいずれか一方で、乗員を輸送するのによりよく適していることは、先行技術から理解されるであろう。
【0003】
陸上での良好な速度および操縦性をもたらすために、サスペンションアーム、ドライブシャフト、および車輪は往々にして、水陸両用車の船体部分からしばしば直接突出する水陸両用車の下部領域、および/または水上での使用中に水没する水陸両用車の部分に位置する。さらに、格納可能なサスペンションは先行技術でも記載されてはいるが、水上での使用時に、サスペンション、ドライブシャフト、および/または車輪は、格納位置で、しばしば水に暴露され続ける。さらに、車輪が格納位置または伸出した車両支持位置のいずれかにあるときに、サスペンション装置、ドライブシャフト、または車輪を収容するために、切欠き部分または船体の形状の他の変則性が水陸両用車の船体部分に設けられることがある。伸出位置は、水陸両用車を陸上で使用する場合の車輪の所定の位置である。先行技術の設計は浮揚性で水密な船体を提供するが、水上で使用中に、たとえ格納されているときでも、水没しかつ/または単に水に接触可能である切欠き、変則的形状、および/またはサスペンション装置、ドライブシャフト、もしくは車輪の部分を有するという点で顕著な不利点もある。これは明らかに水陸両用車の船体部分の流体力学を変化させ、特に切欠き、変則的形状、および/またはサスペンション装置、ドライブシャフト、もしくは車輪の部分が船体の滑走面内に位置する場合、水陸両用車の水上での性能を低下させる。特に、格納される車輪を位置決めするための大きい切欠きは、水上での使用時に水陸両用車の速度および操縦性に大きい影響を及ぼしかねない。例えば水陸両用車は水上で旋回時にオープンホイールアーチの後部が「浸水」する傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、先行技術の上記不利点の少なくとも一部を軽減することを目的とする。
【0005】
第1態様では、本発明は、
水陸両用車が水上を滑走するときに水と接触する滑走面を有する船体と、
車両支持位置から格納位置へ移動可能である少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置と、を備え、
格納可能なサスペンション装置が、各車輪に対し、インボード側端部で船体内の支持構造に枢支連結されかつアウトボード側端部でサスペンションアップライトに枢支連結されたアッパおよびロアサスペンションアームを含み、アッパサスペンションアームが第1上部枢支連結部によってサスペンションアップライトに枢支連結され、かつロアサスペンションアームが第2下部枢支連結部によってサスペンションアップライトに枢支連結され、
サスペンションアップライトが第2連結部から、第1連結部から離反する方向に、ホイールハブマウント位置まで延び、該マウント位置でホイールハブが第1および第2枢支連結部から離れた位置でサスペンションアップライトに回転自在に取り付けられ、
サスペンションアップライトが、陸上使用時に展開されたときに、滑走面の外面および/または側面を横切って船体の外部に延び、
ロアサスペンションアームが水陸両用車の陸上での使用中ずっと、滑走面の頂部より上
に維持される、
陸上および水上で使用するための水陸両用車を提供する。
【0006】
好ましくは、サスペンションアームは船体内から船体の外縁を超えて延びる。
【0007】
最も好ましくは、ホイールハブは第2連結部から、第1および第2連結部間の距離と少なくとも同等の距離に位置する。さらに、ハブは第2連結部から少なくとも約5cm、10cm、15cm、または20cm離れて位置する。
【0008】
好ましくは、ホイールハブは、サスペンションアップライトの遠端で、サスペンションアップライトに回転自在に取り付けられる。
【0009】
ホイールハブは、好ましくは、水陸両用車の原動機からトランスミッションリレードライブによって回転駆動される。トランスミッションはステップダウンドライブを有し、そこで駆動力は下部枢支連結部またはその上の位置から取り出され、サスペンションアップライトに沿ってまたはそれと平行して従動ホイールハブに中継される。
【0010】
代替的に、ホイールハブはハブモータによって駆動してもよい。好ましくは、ハブモータは油圧モータまたは電気モータである。
【0011】
最も好ましくは、船体はV型船体である。
【0012】
水陸両用車は、サスペンションアームの1つと支持構造との間に接続された、ばねおよびダンパアセンブリを含んでもよい。
【0013】
好ましくは、水陸両用車は、車両支持位置から格納位置へまたはその逆に移動するように動作可能である、格納可能かつ延長可能なアクチュエータを含む。さらに好ましくは、アクチュエータは、サスペンションの高さを変動させることによって、地上高を変動させるようにも動作可能である。
【0014】
支持構造は好ましくは、支持構造の固定部に1端を枢着されかつアクチュエータが枢支連結された回転自在の支持アームを含み、アクチュエータは1端を支持アームに枢支連結されかつ他端を支持構造の固定部に枢支連結され、ばねおよびダンパアセンブリは1端を回転自在の支持アームに、他端をロアサスペンションアームに枢支連結される。
【0015】
好ましくは、水陸両用車は船体部分を含む車体を備え、そこで少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置は、車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が船体部分の外部に位置するように車体に接続され、細長いサスペンションアップライトは、少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を格納位置および車両支持位置で収容するために滑走面に切欠きを設ける必要が無いように、滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置は、船体部分の上または滑走面の上で車体に接続される。
【0017】
好ましくは、滑走面は水上で使用時に水と直接接触可能である。
【0018】
好ましくは、水陸両用車は、船体部分の流体力学を不利に変化させる効果を有する切欠き、変則的形状、または不連続部を滑走面に含まない船体部分を含む車体を備え、滑走面は水上で使用時に水と接触するためのものであり、少なくとも1つの格納可能なサスペン
ション装置は、車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が船体部分の外部に位置するように車体に接続され、かつ滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる細長いサスペンションアップライトを含み、車両支持位置でサスペンションアセンブリは陸上で使用する場合に船体部分および/または滑走面から離隔した関係に係止可能であるので、少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を格納位置および車両支持位置で収容するために、切欠き、変則的形状、または不連続性が滑走面で必要とされず、少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置は、車両支持位置から水線より上の格納位置までの移動をもたらすように、車体および格納可能なサスペンション装置のインボード側に面する領域の少なくとも一部分に接続された格納手段を含む。
【0019】
さらに好ましくは、サスペンションアセンブリは、サスペンションアセンブリが、船体部分および/または滑走面に接触することなく係止可能となるように構成される。
【0020】
格納可能なサスペンション装置は、車両支持位置で垂直方向に離隔した2つの位置に車体および細長いサスペンションアップライトの接続をもたらすダブルウィッシュボーン機構を含んでもよい。
【0021】
好ましくは、水陸両用車は、
水上で使用時に水と接触するための滑走面に、船体部分の流体力学を不利に変化させる効果を有する切欠き、変則的形状、または不連続部を含まない船体部分を含む車体と、
車両支持位置から格納位置へ移動可能な少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置と、を備え、
少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置は、車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置が船体部分の外部に位置するように車体に接続され、かつ
滑走面の上から車輪マウント位置まで延びる細長いサスペンションアップライトと、
格納可能なサスペンション装置と共に可動であり、水陸両用車の操舵をもたらすために水陸両用車の使用者からの操舵入力をサスペンション装置の1つ以上の回転自在の連結部と接続することのできる操舵装置と、を含むので、
格納位置および車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置および操舵装置を収容するために滑走面に切欠き、変則的形状、または不連続部が不要である。
【0022】
好ましくは、水陸両用車は使用者を乗馬のような仕方で水陸両用車に乗せるように構成される。
【0023】
さらに好ましくは、操舵装置は使用者の操舵入力を受け取るためのハンドルバー構成を含む。
【0024】
格納可能なサスペンション装置は、車輪マウントに取付け可能な車輪の操舵をもたらすように、細長いサスペンションアップライトを地面に対して横方向に回転可能にする、車体に対する枢支連結部を含むことができる。
【0025】
好都合にも、本発明の水陸両用車は、水陸両用車を水上で使用中に、たとえ格納されているときでも、水没しかつ/または単に水に接触可能である、サスペンション装置、ドライブシャフト、もしくは車輪の切欠き、変則的形状、不連続部、および/または部分を滑走面に有する必要性をかなり軽減し、あるいは完全に排除する。したがって船体の流体力学が改善される。
【0026】
本発明の実施形態は、車両支持位置から格納位置へ移動可能である少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を備え、格納可能なサスペンション装置が車両支持位置でサスペンションアップライトに動作可能に接続されたアッパおよびロアサスペンションアー
ムを含み、サスペンションアップライトが1つ以上の車輪を受容するためのものであり、サスペンションアップライトが、比較的高い位置から入力駆動力を受け取りかつ比較的低い位置に出力駆動力を提供するためのステップダウンドライブを含む、陸上および水上で使用するための水陸両用車によって提供される。ステップダウンドライブはサスペンションアップライトと一体化してもよいし、あるいはサスペンションアップライトに追加して設けてもよい。ステップダウンドライブがサスペンションアップライトに追加して設けられる場合、ステップダウンドライブはサスペンションアップライトと平行して位置し、それに動作可能に接続してもよい。ステップダウンドライブは歯車装置、またはチェーン、ベルト、もしくはシャフト駆動装置であってよい。格納可能なサスペンション装置はウィッシュボーン型サスペンションを含むことができる。
【0027】
本書で使用する場合、用語「切欠き」、「変則的形状」、および「不連続性」は、船体の流体力学に不利な変化をもたらす先行技術の船体の部分を記載するのに使用される。そのような切欠き、変則的形状、および/または不連続部は、特に水陸両用車の車輪またはサスペンションの部分、水陸両用車の操舵手段または駆動手段を受容するために除去された船体部分を含め、種々の形を取ることがある。さらに、切欠き、変則的形状、および/または不連続部は、水陸両用車の移動方向に対し略横断方向に、すなわち車両の略左側から略右側へまたはその逆の方向に後縁を有する船体の表面における断続部を含み、該後縁は前方を向き、水陸両用車が移動しているときに水中に「浸かる」ことがあり得る。
【0028】
船体の滑走面とは、水陸両用車が水面を滑走している間、水と接触する船体の部分である。言うまでもなく、この定義は、高速および低速滑走速度時ならびに水陸両用車が滑走中に方向転換するときに接触可能な船体の部分を含み、それは、まっすぐに滑走しているときに水と接触しない船体の領域をおそらく含むことを当業者は理解されるであろう。
【0029】
本発明を完全に開示するために、以下で実施形態を、単に例示的なものとして、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る水陸両用車の第1実施形態の簡易部分断面図である。
図2】車両支持位置の車輪を示す本発明の第2実施形態に係る水陸両用車の部分正面図である。
図3】格納位置の車輪を示す図2に係る水陸両用車の部分正面図である。
図4A】ステップダウンドライブを有する本発明に係る水陸両用車の簡易部分断面図である。
図4B図4Aのステップダウンドライブの部分断面図である。
図5A】本発明に係る水陸両用車の船体部分の断面図である。
図5B】切欠きを有する先行技術の水陸両用車の船体部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
水陸両用車の部分の簡略図を図1に示す。そこで水陸両用車は一般的に参照符号1で示される。水陸両用車1は船体部分2、車体3、および車輪5を含むサスペンション装置4を含む。この特定の実施形態では、船体部分2と車体3との間の境界は、参照符号6によって表される破線によって示される。最も好ましくは、船体2は、水陸両用車1が滑走しているときに水と接触するための滑走面を提供する。水陸両用車1は、操縦性を高めるために「V」字形を有する規則的形状の船体2を含む。車体3は、船体部分2またはサスペンション装置4に関連して定義されない水陸両用車の特徴を含む。したがって、サスペンション支持構造11は車体3の部分として提供され、サスペンション装置4の部分を受容するように設けられる。支持構造11は船体2の内面に直接接続してよい。支持構造11は車両フレーム(図示せず)の部分をも含んでよい。参照符号70は船体2の可能な水線
を表し、その下の船体2の部分が滑走面を形成する。しかし、滑走面の大きさおよび形状は、少なくとも船体の大きさおよび水陸両用車1が水上で走行する速度に依存することを当業者は理解されるであろう。
【0032】
図1に示す通り、サスペンション装置4は、キングピンとしても知られるサスペンションアップライト7、ならびに第1および第2側方サスペンションアーム8および9を含む。サスペンションアップライト7は垂直面内で、サスペンションアーム8、9に対し略垂直である。アッパ側方サスペンションアーム8は第1端を車体3に接続され、かつ第2端をサスペンションアップライト7に接続される。どちらの接続も枢支連結であり、サスペンション装置4のそれぞれの部分が移動することを可能にする。ロアサスペンションアーム9もまた車体3およびサスペンションアップライト7に接続される。再び接続は枢支連結であり、サスペンション装置4のそれぞれの移動を可能にする。実施例として、サスペンション装置4は、装置4の車両支持位置および格納位置の間で移動するときに、参照符号13および14によってそれぞれ表される矢印によって示される通り、垂直面内および水平面内で充分に移動することができる。図1から分かるように、サスペンションアップライト7は、ロア側方サスペンションアーム9の連結部からアッパ側方サスペンションアーム8とは反対方向に延びる延長サスペンションアップライト7Aを含む。車輪5を受容するためのハブ10は、サスペンションアーム連結部とは離れた位置の延長サスペンションアップライト7Aの遠端またはその付近に位置する。好都合にも、延長サスペンションアップライト7Aを設けることにより、格納位置または車両支持位置で少なくとも1つの格納可能なサスペンション装置を収容するために浸水面または滑走面に切欠きが必要ないように、サスペンション装置4を水陸両用車1に接続することが可能になる。
【0033】
図1から分かるように、サスペンションアップライト7は、陸上使用時に展開されたときに、滑走面の外面2Aおよび/または側面2Aを超えて船体2の外側に延長する。滑走面の側面2A、外面2A、または頂部が言及される場合、これらの部分が滑走時に通常の動作では水陸両用車の重量を支持しないことを当業者は理解されるであろう。重量は言うまでもなく、船体2のV形部分によって実質的に支持される。しかし、これらの部分は船体2の容積の一部を提供しており、車体外面内の機械的部品を水から隔離させる車体外面の部分である。
【0034】
さらに、図1から分かるように、サスペンション装置4は船体2または外面2Aおよび/もしくは側面2Aから離隔した関係に設けられ、かつサスペンション装置4が船体2と接触しないように間隙100が設けられる。
【0035】
図2および3は、本発明に係る水陸両用車の第2実施形態を示す。共通する特徴を識別するには同様の参照符号が使用されており、これらの特徴については詳述しない。特に、第1実施形態と本実施形態との間の相違について記載する。
【0036】
水陸両用車1は船体2、車体3、サスペンション装置4、および車輪5を含む。また車体3に直接接続されるサスペンション支持構造11、および操舵装置12も設けられる。
【0037】
サスペンション装置4は、キングピンとしても知られるサスペンションアップライト20、アッパ側方サスペンションアーム21、およびロア側方サスペンションアーム22を含む。特にアッパおよびロア側方サスペンションアーム21、22はウィッシュボーン型サスペンションアームである。アッパサスペンションアーム21は、側方サスペンションアーム22およびサスペンションアップライト20の比較的下部の接続に比較して、サスペンションアップライトの比較的上部領域でサスペンションアップライト20に動作可能に接続される。したがって、アッパサスペンションアーム21とサスペンションアップライト20との間の上部枢支連結23が設けられる。さらに、下部枢支連結24がロアサス
ペンションアーム22とサスペンションアップライト20との間に設けられる。サスペンションアーム21、22の反対側の端では、1つ以上の枢支連結25がアッパサスペンションアーム21と支持構造11の上部との間に設けられ、1つ以上の枢支連結26(および/または33)がロアサスペンションアーム22と支持構造11の下部との間に設けられる。第1サスペンション装置4の反対側に位置する第2サスペンション装置(図示せず)にサスペンション装置4を連結するために、アンチロールバー27も設けられる。
【0038】
さらに、図2から分かるように、サスペンション装置4が船体2から離隔した関係に設けられ、サスペンション装置4が船体2と接触しないように間隙100´が設けられる。この図では、船体2は水陸両用車1の船首方向にテーパが付けられる状態で示され、それはサスペンション装置4が船体2と接触する印象を与えるかもしれないが、この事情にもかかわらず、サスペンション装置は船体と接触せず、したがって離隔した関係で設けられる。
【0039】
図3に示す通り、特にサスペンション装置4は、サスペンション装置4および車輪5を車両支持位置から格納位置へ移動させるための格納ラム28を含む。実施例として、図2は車両支持位置のサスペンション装置4および車輪5を示す。さらに図3は、格納位置のサスペンション装置4および車輪5を示す。格納ラム28の第1の上端は、支持構造11の一部を形成するアーム30に接続される。第2の下端は車体3に接続される。
【0040】
また、特に図3に示す通り、アッパおよびロアサスペンションアーム21、22ならびにサスペンションアップライト20が従来のサスペンションとして動作することを可能にするために、ダンパおよびばねアセンブリ29が設けられる。ダンパおよびばねアセンブリ29の第1端はアーム30に接続され、ダンパおよびばねアセンブリ29の第2端はロアサスペンションアーム22に接続される。アーム30は、格納ラム28ならびにダンパおよびばねアセンブリ29との連結部とは反対側の端を枢支され、枢支連結26の少なくとも1つと共通する枢支点33をもたらし、それを中心にして車輪5およびサスペンション装置4の部分が、車両支持位置と格納位置との間で回転することができる。
【0041】
サスペンション装置4が車両支持位置から格納位置に移動することを可能にするために、アッパおよびロアサスペンションアーム21、22は両方とも、その長さに沿って枢支点が設けられ、サスペンションアーム21、22が格納位置と伸出位置との間で移動することが可能になる。アッパサスペンションアームは、サスペンションアーム21および支持構造11の接合部に設けられた枢支点25を中心に枢動する。ロアサスペンションアーム22は、ロアサスペンションアーム22および支持構造11の接合部に設けられた枢支点26、33を中心に枢動する。特に、ロアサスペンションアーム22の部分はアーム30と不動に接続されるので、それらは一体に移動可能となる。さらに、剛性および強度を高めるために、アンチロールバー27とロアサスペンションアーム22との間にドロップリンク31が設けられる。
【0042】
図3は、特に滑走面の外面2Aおよび/または側面2Aを示し、サスペンションアップライト20は、陸上用に展開するときに、それを横切って延びる。
【0043】
図2および3のサスペンション装置は、水陸両用車1の前輪のみを示す。しかし、サスペンション装置4は水陸両用車1の車輪のどれにでも使用することができる。特に、図2および3に示す水陸両用車1は車輪5用の駆動装置を持たないが、車輪5は従動輪であってよい。さらに、その車輪5を駆動させるために、ステップダウンドライブ(図示せず)が、サスペンションアップライトと一体的な構造として、またはサスペンションアップライトに追加して設けてよい。当業者は周知の通り、ステップダウンドライブは、比較的高い位置からの入力駆動力を受け取り、かつ比較的低い位置に出力駆動力を生成することが
できる。代替的に、ホイールハブ10は1つ以上の油圧モータ(図示せず)、または1つ以上の電気モータ、または電動ハブ(図示せず)を含むことができる。
【0044】
代替例として、格納ラム28またはダンパおよびばねアセンブリ29は、水陸両用車1の地上高を変えるために、手動で調整することができる。
【0045】
図2および3に示すサスペンション装置4はドライブレスであるが、該サスペンション装置4は水陸両用車1を操舵するために使用される装置12を含む。操舵装置12は、連結部32をサスペンションアップライト20の中間領域で、好ましくは連結部23および24の間でサスペンションアップライト20に動作可能に接続されたアーム36を含む。アーム31の他端は入力操舵手段、例えばハンドルバーまたは操舵輪(図示せず)に接続される。
【0046】
図1、2、および3は、車体3に取り付けられた1つだけのサスペンション装置4および車輪5を示す。しかし、任意の数の車輪、特に3つまたは4つの車輪、および適切な数のサスペンション装置4を使用することができる。さらに、車輪5は駆動されるか、またはドライブレスとすることができる。
【0047】
図4Aは、図1に示したものと同様の本発明の実施形態を示す。したがって、共通する特徴に対しては同様の参照符号が利用されており、相違だけを記載する。特に、サスペンションアップライト7および延長サスペンションアップライト7Aはステップダウンドライブ60を含む。さらに、図4Aから分かるように、サスペンション装置4は船体2から離隔した関係に設けられ、かつサスペンション装置4が船体2に接触しないように、間隙100が設けられる。特に図4Bに示す通り、サスペンション装置4がその車両支持位置にあるときに、ステップダウンドライブは上部入力端61および下部入力端62を含む。各端61、62に歯63が設けられ、どちらかの歯63が移動するときに他方の歯63の対応する回転がもたらされるように、チェーン64によって連結される。入力端61の歯63はシャフト65によって駆動されるか、あるいはエンジン66によって例示される原動機によってそれ自体直接または間接的に駆動される。エンジン66、シャフト65、および歯63を接続するために、1つ以上の自在継手67または同等品が使用される。出力端62の歯63はホイールハブ10および車輪5を駆動する。したがって、原動機からの入力駆動力は、1つ以上の車輪を駆動するために、水陸両用車が載っている地面に対して低い高さに降下される。
【0048】
図5Aは本発明に係る水陸両用車の船体を示す。船体は優れた流体力学を達成するように形作られる。さらに、水上で使用するために水陸両用車がサスペンション装置4を引き込んだときに、切欠きまたは他の変則的形状、および/またはサスペンション装置、ドライブシャフト、もしくは車輪の部分が水没しかつ/または水と接触することが無い。対照的に、図5Bは、サスペンション装置および/または車輪をそれらの格納位置に配置するために切欠き50が設けられた水陸両用車の船体を示す。したがって、図5Aに示す船体は図5Bに示す船体より優れた流体力学を有する。図5Bにおける参照番号150は、8ページ(原文)で上述した通り、切欠きの後縁を表す。参照符号Fは図5Aおよび5Bに示す水陸両用車の前部を表し、参照符号Rは後部を表す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B