(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ある量の連行空気は、脆い材料であるコンクリートの凍結−解凍耐久性を向上させるために必要である。しかしながら、コンクリート内の過剰に大きいか又は不均一に間隔を置かれた気孔は凍結−解凍耐久性及び圧縮強さの損失に導き得るので、空気連行の性質及び程度は注意深く制御されねばならない。ロジン及びアニオン性界面活性剤のような空気連行剤は、セメント系混合物中の気孔の寸法及び間隔を制御するために通常用いられる。
【0003】
特許文献1(本明細書の共通譲受人が所有)においてGartner et al.は、トリイソプロパノールアミン(“TIPA”)のような高級アルカノールアミンのセメント系組成物への添加は後期強度(late strength)(例えば28日における)を強化するが、セメント系組成物中に連行される空気の量を増加させもすると記載した。種々のセメント試料の分析は、TIPAを含有しないセメントと比較した時の約2パーセントの空気連行における増加を明らかにした。Gartner et al.は、ホスフェート(例えばトリブチルホスフェート)、フタレート(例えばジイソデシルフタレート)及びポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーを含む空気除去性(air−detraining)非イオン性界面活性剤の使用を示唆した。特許文献1を6頁40〜53行において参照されたい。
【0004】
特許文献2(本明細書の共通譲受人が所有)においてGartner et al.は、コンクリート中の空気の除去(detraining)のための水溶性アルキル化アルカノールアミン塩の使用を記載した。これらの材料にはN−アルキルアルカノールアミン及びN−アルキル−ヒドロキシルアミンが含まれた。TIPAを0.02重量%の量で水和水の一部として、脱泡剤としての0.01重量%のジブチルアミノ−2−ブタノール(“DBAB”)と共にモルタル混合物に加えると、モルタル混合物は空気連行における減少を示した(5欄51行〜6欄14行)。
【0005】
コンクリートを調製する場合、それには水硬セメント、砂、砂利、水及びおそらく添加物のような種々の成分を混合して実質的に均一な混合物を形成することが必要である。混合の間に空気は組成物中に閉じ込められ、この空気の多くは生ずる硬化組成物中に気孔の形態で留まる。気孔寸法が小さい場合、混合物は「空気連行」であると言われる。ほとんどの場合、少量の空気連行は許容され、且つ他の場合、これは凍結/解凍サイクルへの抵抗の点でコンクリートの耐久性を強化するために望ましい。
【0006】
しかしながら、水硬セメント組成物における過剰の空気連行は、得られる構造が、過剰の空気連行がなければ混合物設計が達成できる強さより低い圧縮強さを持つ原因となるであろう。空気連行と圧縮強さの間には逆相関関係がある。一般にコンクリート塊中の気孔(泡)の各容量パーセント当たりに5パーセントの圧縮強さの損失があると思われる。従って気孔量(void content)及び気孔の性質の管理は極めて重要である。
【0007】
減水性(water−reducing)混合物(超可塑剤(superplasticizers)を含む)は、コンクリートスラリ中に過剰の空気を連行することが特に知られている。産業は、コンクリート混合物中で空気除去剤(air−detraining agents)(そうでなければ本明細書で脱泡剤と呼ばれる)を用いることにより、これを修正することを試みた。前に言及したセメント磨砕添加物(例えばTIPA)の場合と同様に、通常の混合物は、低い親水性−親油性バランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤、シリコーン誘導体、トリブチルホスフェート及びアルキルフタレートのような疎水性材料を含む。
【0008】
しかしながら、高い疎水性を有する脱泡剤は結局、水中における非常に限られた溶解性を有し、減水性混合物を構成する水溶液中に容易に導入されない。それらの疎水性は、成分の分離を助長することにより水性生成物を不安定化する傾向があり、減水性混合物及び脱泡剤を別々のタンクに保存して使用直前に混合するか;あるいはまたそれを予備−混合して絶えず撹拌し、分離を妨げる必要がある。
【0009】
特許文献3及び特許文献4(本明細書の共通譲受人が所有)においてDarwin et al.は、ポリカルボキシレート超可塑剤と一緒に使用するためのオキシアルキレンアミンに基づく脱泡剤の使用を開示した。アルコキシポリオキシアルキレンアンモニウムポリマーは、櫛型ポリマー主鎖のカルボキシレート部分にイオン的に結合し、処理されている水和性コンクリートに所望の空気制御性を与えた。
【0010】
特許文献5(本明細書の共通譲受人が所有)においてDarwin et al.は、乳化された超可塑剤及び脱泡剤を安定化するための界面活性剤を用いて脱泡剤と乳化されたポリカルボキシレート超可塑剤を開示した。脱泡性を有するホスフェートエステル(例えばジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート)、ボレートエステル、シリコーン誘導体(例えばポリアルキルシロキサン)及びポリオキシアルキレンから脱泡剤を選ぶことができた。
【0011】
特許文献6(本明細書の共通譲受人が所有)においてZhang et al.は、安定な混合調製物(admixture formulation)を調製し、且つコンクリート混合物中の連行空気の制御可能なレベルの達成を助けるためのポリカルボキシレート減水剤(water−reducer)及び100〜1500の平均分子量を有する第3級アミン脱泡剤を開示した。
【0012】
特許文献7(BASFが所有)においてBuchner et al.は、セメント混合物の気孔率を低下させるための脱泡剤としてポリカルボキシレート超可塑剤及びブトキシル化ポリアルキレンポリアミンの混合物を開示した。
【0013】
特許文献8(やはりBASFが所有)においてGopalkrishnan et al.は、ポリカルボキシレート超可塑剤及び空気除去剤の混合物を開示した。空気除去剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位を含有すると記載され、且つ反応性ジアミン又はグリコール基を用いて開始されると記載される低分子量ブロックポリエーテルポリマーに基づいた。
【0014】
特許文献9(MBT Holding AGが所有)においてShendy et al.は、ポリカルボキシレート分散剤、水不溶性脱泡剤及び水不溶性脱泡剤を可溶化するための可溶化剤の使用を開示した。そのような可溶化剤は、水相中の油成分の量を増加させることにより機能した。類似の方法が特許文献10において採用され、そこでShendy et al.は水不溶性脱泡剤の安定化のためにアミン可溶化剤の使用を記載した。
【0015】
脱泡剤が添加物組成物内でポリマー分散剤上にグラフト化されるか、乳化されるか、又はより水溶性とされるかにかかわらず、本発明者は、処理されているセメント系混合物内で空気を除去する脱泡剤の有効性を保持しながら、水に基づく添加物調製物内の相分離を避けることに関して、重大な問題がまだ残っていると思う。
【0016】
従って、空気除去剤としての脱泡剤の有効性を縮小することなく、セメント又はコンクリート混合物中で用いられる空気連行性添加物の安定性を向上させるための改良された脱泡剤添加物組成物が必要である。本発明者は、セメント系材料中の空気含有量を制御するため、且つまた種々の程度の脱泡力を与えるための、さらに相分離に対する抵抗性を与える向上した水適合性を有する、高級トリアルカノールアミン及び減水剤のような空気連行剤と一緒に用いるための新規な種類の脱泡剤が必要であると思う。
【発明を実施するための形態】
【0025】
代表的な態様の詳細な説明
本発明で用いられる「セメント」という用語は、水硬ケイ酸カルシウムから成るクリンカー及び相互磨砕添加物(interground additive)としての1種もしくはそれより多い形態の硫酸カルシウム(例えば石膏)を微粉砕することにより製造される水和性セメントを含む。「モルタル」は、水を用いて形成され且つさらに細骨材(例えば砂)を含むセメントペーストであり、「コンクリート」はさらに粗骨材(例えば砕石又は砂利)を含むモルタルである。
【0026】
本明細書で用いられる「セメント系」という用語は、セメント(例えばポルトランドセメント)を含む(include)か又は含んでなる(comprise)材料あるいはそうでない場合、細骨材(例えば砂)、粗骨材(例えば砕砂利)又はそれらの混合物を結合させる(hold together)ための結合剤として機能する材料を指す。典型的には、ポルトランドセメントは1種もしくはそれより多い他の補足的セメント系材料(“SCMs”)と組み合わされ、ブレンドとして与えられる。SCMsは石灰岩、消石灰(hydrated lime)、フライアッシュ、粒状高炉スラグ(granulat
ed blast furnace slag)及びシリカヒューム(silica fume)あるいはそのようなセメント中に通常含まれる他の材料を含むことができる。従ってセメント系材料は1種もしくはそれより多いSCMsを、好ましくはセメント系材料の合計乾燥重量に基づいて0%〜100%、より好ましくは10%〜60%の量で含むことができる。
【0027】
本明細書で用いられる「水和性」という用語は、水との化学的相互作用により硬化するセメント又はセメント系材料を指すことが意図されている。ポルトランドセメントクリンカーは、主に水和性ケイ酸カルシウムを含んでなる部分的に溶融した塊である。ケイ酸カルシウムは本質的にケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO
2 セメント化学者表示法において“C
3S”)及びケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO
2,“C
2S”)の混合物であり、その中で前者が優勢の形態であり、少量のアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al
2O
3,“C
3A”)及びアルミノ亜鉄酸四カルシウム(4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3,“C
4AF”)を含む。例えばDodson,Vance H.著,
Concrete Admixtures(Van Nostrand Reinhold,New York NY 1990年),1頁を参照されたい。
【0028】
前にまとめた通り、本発明の代表的な添加物及びセメント組成物は、高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、オキシアルキレン−含有超可塑剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含んでなる少なくとも1種の作用剤の使用を含む。「添加物」という用語は、本明細書で、セメント製造プラントにおいて加えられる添加物を記載するために、ならびに又セメントモルタル、コンクリート及び他のセメント系材料の製造に用いられるセメント、水及び任意の骨材に加えられる「混合物」を記載するために用いられるものとする。好ましくは、添加物組成物は、液体形態で分配され得る(例えばポンプで計量される)水性の液体である。
【0029】
本明細書で用いられる「高級トリアルカノールアミン」という用語は、少なくとも1個のC
3−C
5ヒドロキシアルキルそしてより好ましくは少なくとも1個のC
3−C
4ヒドロキシアルキル基を中に有するトリ(ヒドロキシアルキル)アミンである第3級アミン化合物を指すものとする。第3級アミンの残りの(もしあれば)ヒドロキシアルキル基はC
1−C
2ヒドロキシアルキル基(好ましくはC
2ヒドロキシアルキル)から選ばれることができる。そのような化合物の例にはヒドロキシエチルジ(ヒドロキシプロピル)アミン、ヒドロキシプロピルジ(ヒドロキシエチル)アミン、トリ(ヒドロキシプロピル)アミン、ヒドロキシエチルジ(ヒドロキシ−n−ブチル)アミン、トリ(2−ヒドロキシブチル)アミン、ヒドロキシブチルジ(ヒドロキシプロピル)アミンなどが含まれる。好ましい高級トリアルカノールアミンはトリイソプロパノールアミン(“TIPA”)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(“DEIPA”)、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミン(“EDIPA”)及びトリ(2−ヒドロキシブチル)アミンである。そのような高級トリアルカノールアミンの混合物を用いることができ、これら又はこれらの組み合わせのいずれかを、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミンの1つもしくはそれより多く又はそれらの混合物と一緒に用いることができる。ポルトランドセメント又は混合セメントのための磨砕添加物として用いられる場合、高級トリアルカノールアミンをセメントの重量に基づいて最高で2%、好ましくは最高で0.1%そして最も好ましくは0.005%〜0.03%の量で加えることができる。特にTIPAは、後期強度強化剤(late strength enhancer)としての使用に関して既知である。
【0030】
「リグノスルホネート」、「ナフタレンスルホネート」、「メラミンスルホネート」及
び「オキシアルキレン含有超可塑剤」という用語は本明細書で、空気を連行することが知られている減水剤(“WRA”)を指すために用いられる。「リグノスルホネート」WRAにはリグノスルホン酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、例えばリグノスルホン酸カルシウムが含まれ、それは通常用いられるWRAである。「ナフタレンスルホネート」WRAにはスルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物のアルカリ金属塩が含まれ;「メラミンスルホネート」WRAにはスルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物のアルカリ金属塩が含まれる。
【0031】
塩の形態における化合物への言及はそれらの酸の形態への言及が含まれると理解され得、且つその逆が理解され得、それは、水性環境内に酸の形態及び塩の形態の両方が共存し得ることがあり得るからである。類似して、アミン形態における化合物への言及はそれらのアンモニウム形態への言及が含まれると理解され得、且つその逆も理解され得る。
【0032】
「オキシアルキレン含有超可塑剤」という用語は減水剤、典型的にはポリカルボン酸又は側鎖ポリオキシアルキレン基が結合した部分エステルを含んでなる櫛型ポリマーを指す。そのようなオキシアルキレン基にはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)及びブチレンオキシドが含まれる。そのようなオキシアルキレン含有超可塑剤は、セメント及びコンクリート産業において通常用いられるもののいずれかであろう。例えば炭素含有主鎖を有し、それにアミド、イミド、エステル及び/又はエーテル結合を介してポリオキシアルキレン基が結合している櫛型ポリマーである高分子超可塑剤が本発明における使用用に意図されている。オキシアルキレン含有超可塑剤の他の例には、アクリル酸もしくはメタクリル酸とポリアルキレングリコールモノメチルエーテルの反応生成物とのアクリル酸もしくはメタクリル酸のコポリマーが含まれる。オキシアルキレン含有超可塑剤のさらに別の例には、C
3−C
20の典型的なアルコール鎖長を有するポリアルコキシル化アルコールとのアクリル酸又はメタクリル酸のコポリマーが含まれる。
【0033】
一般に、本発明において用いられるセメント組成物に加えられるべき空気−連行性WRAの量は、セメント又はセメント系組成物の合計重量に基づいて少なくとも約0.005重量パーセント、そして通常は0.005〜約5重量パーセントの範囲内、そして好ましくは0.03重量パーセント〜約1重量パーセントの範囲内の量であろう。
【0034】
「オキシアルキレン−含有収縮低減剤」(下記ではオキシアルキレン含有“SRA”)という用語は、セメント系組成物の気孔量を保持するか又は向上させることにより、セメント系組成物の乾燥収縮を妨げるように設計される添加物を指す。オキシアルキレン含有SRAs及びSRA調製組成物の例は、米国特許第5,556,460;5,604,273;5,618,344;5,779,788;及び5,622,558;5,603,760;及び6,277,191号明細書に開示されており、それらのすべては引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる。これらの特許参照文献に記載されているSRA組成物及び調製物の多くは空気含有量の保持又は制御に有用であるが、本発明者は、本発明のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤の使用が、より小さくより均一な気孔を形成することができる点で、オキシアルキンSRAsの設計可能性を広げることができると思う。
【0035】
かくして水和性セメント系組成物中の空気の制御のための代表的な本発明の添加物組成物は:
(A)高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、オキシアルキレン含有超可塑剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含んでなる、水和性セメント系組成物中で空気を連行するように作用可能な少なくとも1種の作用剤;及び
(B)式(1)
【0037】
により示される構造を有するポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤又はその塩あるいは該脱泡剤とその塩の組み合わせであって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7のそれぞれは独立して水素、C
1−C
4アルキル基、−CH
2−OH又は−(AO)
x−R
8を示し、ここでAOはプロピレンオキシド(“PO”)又はPOとエチレンオキシド(“EO”)の混合物を示し、ここでPO対EOのモル比は少なくとも100:0〜100:90であり;“x”は0〜100の整数を示し;そしてR
8は水素又はアルキル基を示し;“n”は0〜100の整数を示し;且つ
ここで“n”が0である場合、EOの量は該ポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤の合計重量に基づいて10重量%より少ないポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤又はその塩あるいは該脱泡剤とその塩の組み合わせ
を含み、そして
(C)成分A対成分Bの比は乾燥重量により5〜100の範囲内(そしてより好ましくは14〜70の範囲内、最も好ましくは20〜50の範囲内)である。
【0038】
好ましい代表的な態様において、脱泡剤はポリアルキレンポリアミンのポリアルコキシル化により作られる。本発明において用いるのに適した代表的なポリアルキレンポリアミンにはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルプロピレンジアミン、N,N’−ジエチルプロピレンジアミンが含まれるが、これらに限られない。これらのポリアルキレンポリアミンの中でより好ましいのはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はそれらの混合物であり、最も好ましいのはジエチレントリアミンである。
【0039】
さらに別の代表的な態様において、ポリアルキレンポリアミンをエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はもっと高級のアルキレンオキシドと反応させることにより、それをアルコキシル化することができる。さらにもっと別の態様において、ポリアルキレンポリアミンをエチレンオキシド及びプロピレンオキシドと反応させることによりそれをアルコキシル化することができ、ここでプロピレンオキシド対エチレンオキシドのモル比は1より大きい。別の好ましい態様において、エチレンオキシド基の量はポリエーテルの合計重量に基づいて0%〜40%の範囲内であり、ポリプロピレンオキシド基の量はポリエーテルの合計重量に基づいて60%〜100%の範囲内である。
【0040】
さらに別の代表的な態様において、成分Bのポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤は、500〜7000の数平均分子量を有する。より好ましくは、数平均分子量は1000〜5000であり;そして最も好ましくは、数平均分子量は2000〜3500である。
【0041】
さらに別の代表的な態様において、成分Bのポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤は、酸を用いて中和される。酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硝酸、硫
酸又はそれらの混合物から選ばれることができる。好ましくは、酸はギ酸又は酢酸である。成分Bのポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤の中和のために用いられ得る代表的な酸は、オキシアルキレン含有超可塑剤であることもできる。
【0042】
本発明は、セメント系組成物中の空気の制御方法も提供し、それは水和性セメント系結合剤、例えばセメント(補足的なセメント系材料を含むことができる)を前記のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤と合わせることを含む。
【0043】
かくしてセメント系組成物中の空気を制御する本発明の代表的な方法は、水和性セメント系組成物を、
(A)高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、オキシアルキレン含有超可塑剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含んでなる、水和性セメント系組成物中で空気を連行するように作用可能な少なくとも1種の作用剤;
(B)式(1)
【0045】
により示される構造を有するポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤又はその塩あるいは該脱泡剤とその塩の組み合わせであって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7のそれぞれは独立して水素、C
1−C
4アルキル基、−CH
2−OH又は−(AO)
x−R
8を示し、ここでAOはプロピレンオキシド(“PO”)又はPOとエチレンオキシド(“EO”)の混合物を示し、ここでPO対EOのモル比は少なくとも100:0〜100:90であり;“x”は0〜100の整数を示し;そしてR
8は水素又はアルキル基を示し;“n”は0〜100の整数を示し;且つ
ここで“n”が0である場合、EOの量は該ポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤の合計重量に基づいて10重量%より少ないポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤又はその塩あるいは該脱泡剤とその塩の組み合わせ
を有し、そして
(C)成分A対成分Bの比は乾燥重量により5〜100の範囲内(そしてより好ましくは14〜70の範囲内、最も好ましくは20〜50の範囲内)である
添加物と組み合わせることを含む。
【0046】
本発明は、水和性セメント系結合剤及びpHレベル及び/又は他の因子に依存してアミン形態、アンモニウム塩形態又は同時に両方の形態にあり得る前記のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤を含んでなるセメント系組成物にも関する。
【0047】
用いられるポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤の量は、用いられる1種もしくはそれより多い空気連行剤(成分(A))の量及び性質に依存するであろうが、典型的には処理されているセメント系組成物中の水和性セメントの重量に基づいて0.05〜5.0%の範囲内であることができる。
【0048】
本発明のさらに別の代表的な方法及び組成物において、1種もしくはそれより多い通常の脱泡剤を、本発明の代表的な添加物組成物、セメント組成物及び方法においてポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミンと組み合わせることができる。本発明において用いるために意図される通常の脱泡剤には、トリブチルホスフェートが含まれる。別のそのよ
うな脱泡剤は、ビスヒドロキシルプロピル牛脂アミン(bishydroxylpropyl tallow amine)である(構造式R
1NR
2R
3により示される第3級アミン脱泡剤であって、式中、R
1は疎水性であり、直鎖状又は分枝鎖状アルキル、アルケン、アルキン、アルコール、エステル又は式R
4−(AO)
n−又はR
4−(OA)
n−により示されるオキシアルキレン基(例えばポリオキシアルキレン)を含んでなるC
8−C
25基を示し、ここでR
4は水素又はC
1−C
25アルキル基を示し、AはC
1−C
6アルキル基を示し、そして“n”は1〜4の整数であり;R
2及びR
3はそれぞれ分枝鎖状もしくは直鎖状アルキル、アルケン、アルキン、アルコール、エステル又は式R
4−(AO)
n−又はR
4(OA)
n−により示されるオキシアルキレン基(例えばポリオキシアルキレン)を含んでなるC
1−C
6基を示し、ここでR
4は水素又はC
1−C
25アルキル基を示し、AはC
1−C
6アルキル基を示し、そして“n”は1〜4の整数であり、且つここで第3級アミン脱泡剤の平均分子量は100〜1500、そしてより好ましくは200〜750である)。
【0049】
さらに別の代表的な脱泡剤にはオキシアルキレンアミンが含まれる。一般的な組成は構造式X
2N(BO)
zRにより示され得、式中、Xは水素、(BO)
zR又はそれらの混合物を示し;Rは水素、C
1−C
10アルキル基又はBNH
2を示し、ここでBはC
2−C
10アルキレン基を示し;そしてzは5〜200の整数を示す。
【0050】
さらに別の代表的な脱泡剤を式(PO)(O−R)
3により示される組成より成る群から選ぶこともでき、式中、RはC
2−C
20アルキル基、ボレートエステル、シリコーン誘導体及びEO/PO型脱泡剤である。さらにもっと別の代表的な脱泡剤には、セト−ステアリルアルコールエトキシレート及びセト−オレイルアルコールエトキシレート、特にエトキシル化及びプロポキシル化直鎖状第1級C
16−C
18アルコールが含まれる。
【0051】
本明細書で限られた数の態様を用いて本発明を記載するが、これらの特定の態様は、本明細書中で他のように(otherwise)記載され、特許請求される本発明の範囲を制限することを意図していない。記載される態様からの修正及び変動が存在する。さらに特定的に、特許請求される本発明の態様の特定の例として以下の実施例を示す。本発明は実施例中に示される特定の詳細に制限されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0052】
ポリカルボキシレート分散剤及びポリアルコキシル化ポリエチレンポリアミンの水性混合物を調製し、固体が合計重量により溶液の25%〜40%を構成する溶液を与えた。高分子分散剤は、ポリカルボキシレート基を有する主鎖及び側鎖ポリエチレンオキシド基を含んだ。ポリアミンのモル当たりのプロピレンオキシドのモル数により示されるポリプロポキシル化の種々の程度を有するポリエチレンポリアミンを下記の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
これらの実験において、ポリカルボキシレート及びポリプロポキシル化ポリアミンを20〜50の範囲の種々の重量比で混合した;合計濃度は水中の25〜40重量%であった。それぞれの溶液を周囲温度で15〜30分間撹拌し、最終的な溶液のpHは4〜5の範囲であった。周囲条件において60日間保存した後、得られる溶液は相分離を示さず、優れた保存安定性を示した。
【実施例2】
【0055】
この実施例では、種々のポリプロポキシル化ポリアミン添加物の脱泡性を、標準的なモルタルテストにおいてスランプ値及び空気含有率に関して評価した。通常のポルトランドセメントXを、3/1/0.5の砂/セメント/水の比で用いた。すべてのテストをポリカルボキシレート分散剤A及び空気−連行剤の存在下で行った。分散剤の用量はセメントの0.13重量%であり、分散剤対添加物の比は重量により33:1であった。空気−連行剤は、Grace Construction Products,Cambridge,MassachusettsからDAREX(R) II AEAの商品名の下に商業的に入手可能である。ASTM C 185に従って空気含有率を測定し、ワーカビリティーを、式
ワーカビリティー=スランプ値+(フロー1+フロー2)/2−100
を用いて計算した。
【0056】
3種のポリプロポキシル化ポリアミンを標準と比較し、結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
添加物を含まない標準混合物と比較すると、添加物を用いる混合物の場合のより低い空気パーセンテージは、ポリプロポキシル化ポリアミンが有効な脱泡剤として機能したことを明らかに示している。低下した空気含有率は、ワーカビリティーにおける向上にも反映された。
【実施例3】
【0059】
通常のポルトランドセメントY及びポリカルボキシレート分散剤Bを用いる以外は、実施例2に記載されたモルタルテスト案を繰り返した。5種類の脱泡剤を、ポリカルボキシレート分散剤に対する種々の重量比で評価した。さらに、空気含有率における変化を時間の関数として測定した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
この実施例における結果は、ポリアルキレンポリアミンの型、ポリプロポキシル化の程度及び分散剤の量に対するその濃度の選択の組み合わせを介して、空気含有率を望み通りにする(tailored)ことができることを示している。
【実施例4】
【0062】
この実施例は、コンクリート中の3種類の型のポリカルボキシレート分散剤のための脱泡剤としてのポリプロポキシル化ジエチレントリアミンの有効性を示す。脱泡剤を用いる場合、分散剤及び脱泡剤を33:1の重量比で混合した。
【0063】
以下の割合を用いてコンクリート混合物を二次加工した:611ポンド/ヤード
3の量におけるポルトランドセメントX、1330ポンド/ヤード
3の量における細骨材、1650ポンド/ヤード
3の量における粗骨材及び278ポンド/ヤード
3の量における水。ASTM C231−97に従って空気含有率を調べた。スランプ値、強度及び硬化時間のような他のコンクリートの性質を調べ、コンクリートが実験目的のための合理的な範囲内にあることを確証した。スランプ値及び空気含有率の両方を9分標準で(at 9 minute mark)で測定し、結果を表4にまとめる。
【0064】
【表4】
【0065】
各ポリカルボキシレート分散剤は種々の量の空気を閉じ込めたが、表4における結果は、ポリプロポキシル化ジエチレントリアミンが有効に空気含有率を約50%低下させたことを明白に示している。
【実施例5】
【0066】
この実施例は、空気−連行コンクリート中の脱泡剤としてのポリプロポキシル化ジエチレントリアミン及びポリプロポキシル化トリエチレンテトラミンの機能を示す。
【0067】
コンクリートテスト案は、通常の空気−連行剤も導入したことを除いて、実施例4で用いられた案と類似していた。市販の空気−連行剤(Grace Construction Products,Cambridge,MAからDARAVAIR(R) 1000の商品名の下に商業的に入手可能)をセメントのcwt当たりに0.75オンスにおいて用いた。
【0068】
この実施例においても、ポリカルボキシレート分散剤Bをセメントの0.11重量%の用量で用い、添加物に対するその重量比を50:1に固定した。表5は結果をまとめている。
【0069】
【表5】
【0070】
この表における結果は、3種類の添加物すべてが空気−連行コンクリートにおいて空気除去(脱泡)能力を示したこと、ならびに同じジアミンに関し、ポリプロポキシル化の程度の向上と共に空気除去力も向上したことを示している。
【実施例6】
【0071】
ポリプロポキシル化エチレンジアミン及びポリプロポキシル化ジエチレントリアミンの
脱泡効果を、空気−連行コンクリートにおいて時間の関数として評価した。実施例5のテスト案を用い、9、25及び40分標準で(at 9,25,and 40 minutes marks)スランプ値及び空気含有率の両方を測定した。Grace Construction ProductsからDAREX(R) II AEAの商品名の下に商業的に入手可能な空気−連行剤を、セメントのcwt当たり0.20オンスの用量で用いた。ポリカルボキシレート分散剤B及び添加物の水溶液を33:1の重量比で調製した。実験の結果を表6において表にして示す。
【0072】
【表6】
【0073】
添加物を含まない標準混合物と比較して、ポリプロポキシル化エチレンジアミン及びポリプロポキシル化ジエチレントリアミンの両方は、実験の経過全体に及んでそれらの脱泡性を明らかに示した。
【0074】
前記の実施例及び態様は例示目的のみのためにあり、本発明の範囲を制限することは意図されていない。