特許第5912139号(P5912139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912139低いガラス転移温度を有するトリアジン含有フルオロポリエーテルエラストマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912139
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】低いガラス転移温度を有するトリアジン含有フルオロポリエーテルエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20160414BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20160414BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C08G73/06
   C08J5/00CEZ
   C09K3/10 M
   C09K3/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-556740(P2013-556740)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公表番号】特表2014-514371(P2014-514371A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012026425
(87)【国際公開番号】WO2012121898
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月23日
(31)【優先権主張番号】61/449,128
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル エー.ゲーラ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ イェー.ダムス
(72)【発明者】
【氏名】ステフェン ヘー.コルフェレイン
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−513784(JP,A)
【文献】 特表2006−514134(JP,A)
【文献】 特開平04−085328(JP,A)
【文献】 米国特許第05693748(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0162395(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/072900(WO,A1)
【文献】 特表2013−506752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0220719(US,A1)
【文献】 特開平08−337723(JP,A)
【文献】 特開平05−078478(JP,A)
【文献】 特開平04−264504(JP,A)
【文献】 特開平07−285948(JP,A)
【文献】 特開昭49−099200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
a)400g/モル〜20,000g/モルの分子量を有し、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、更に、末端位又は前記末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくともつの炭素原子を含有し、前記官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含み、硬化させてトリアジン環構造を有する基を生成することができる、硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が、アルキレンジアミン、アルキレンジアミンカルバメート、窒素へテロアリールアミンから選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む成形物品であって、前記硬化フルオロポリエーテル系ポリマーが、請求項1に記載の硬化性組成物から調製される、成形物品。
【請求項4】
(i)燃料管理システムの一部であるシール、又は(ii)液化ガスの貯蔵用若しくは生成用装置の構成部品に使用される、請求項3に記載の成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低いガラス転移温度を有し、エラストマーとして好適であるトリアジン含有フルオロポリエーテルポリマー、それらを含有する組成物、それらの前駆組成物、及びそれらを製造する方法、並びにそれらを含有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマーは、それらのエラストマー特性、並びに耐熱性及び耐薬品性、特に燃料フュームに対する耐性のため、自動車又は航空機業界において、シール及びホース用の材料として広く使用されている。多数のこのような用途において、フルオロエラストマーは、それらのシール特性を保証するために、広い温度範囲にわたってエラストマー特性を保持することが所望される。特に、一般に、航空機、船、又は自動車に使用される場合において、フルオロエラストマーは、−50℃未満、又は更には−70℃未満の温度においても、それらのエラストマー特性を保持することが所望される。材料には更に優れたものが必要とされる。したがって、非常に低いガラス転移温度(Tg)を有するフルオロエラストマーが所望される。低いガラス転移温度を有する材料に対する具体的な要望が、液化ガスの生成及び貯蔵等の低温用途の分野に存在する。
【0003】
テトラフルオロエチレンのコポリマー又はフッ化ビニリデンのコポリマーを含有する広範なフルオロエラストマーが既知であり、市販されている(A van Cleef,in Modern Fluoropolymers,John Scheirs ed.,John Wiley & Sons,1997,pages 597〜613を比較されたい)。
【0004】
高い耐薬品性及び耐熱性であり、良好な機械的特性のフルオロエラストマー組成物は、フッ化ビニリデン及び/又はテトラフルオロエチレンのコポリマーを含む系を、ペルフルオロビニルエーテル及び硬化部位モノマーで硬化させることによって調製することができる。典型的に、約−30℃のガラス転移温度は、例えば、欧州特許第1 829 905 B1号に記載のような系を用いて得ることができる。しかしながら、ペルフルオロビニルエーテルの製造費用は、比較的高額である。
【0005】
したがって、低温用途でのシール等、それらの適用を可能にするためには、低いガラス転移温度を有するフルオロエラストマーを提供することが求められている。したがって、−60℃未満、好ましくは、−80℃未満又はそれよりも低いガラス転移温度を有するフルオロポリマーを提供する必要性が存在している。好適には、材料は、エラストマーである。望ましくは、このような材料は、低費用で調製可能である。
【0006】
驚くべきことに、非常に低いガラス転移温度及びそれらをエラストマーとして好適にする機械的特性を有するフルオロポリマーは、トリアジン基を含有する結合の形成下で、硬化剤を用いてニトリル官能性低分子量フルオロポリエーテルを硬化させることによって製造できることが、今では判明している。ペルフルオロポリエーテルは、フルオロポリマー業界において既知であるが、それらは、液体である可能性が高いという事実のため、潤滑剤又は液体シールとして、広く使用されてきた。既知の用途と並んで、エラストマーを製造するための原材料としてのペルフルオロポリエーテル系ポリトリアジンの使用は、米国特許第5,693,748号において企図されている。ペンダントニトリル基を有するフルオロポリエーテルポリトリアジンは、アンモニアを硬化触媒として使用して硬化させていた。結果として得られたポリマーは、−45℃の範囲のTgを有することが報告された。しかしながら、硬化したポリマーは、ペンダントニトリル基を有するポリマー単位が、ニトリル基当たり約25,000g/モル未満の分子量を有する場合には、脆弱であると報告されている。このような材料は、エラストマーとして好適ではないと報告されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、硬化性組成物であって、
a)(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、更に、末端位又は末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含み、硬化させてトリアジン環構造を有する基を生成することができる、硬化性組成物を、以下に提供する。
【0008】
別の態様において、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、トリアジン環構造を有する基によって分離されるフルオロポリエーテルセグメントを含有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物であって、少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、組成物を提供する。
【0009】
更なる態様において、トリアジン環構造を有する基及び−60℃未満のガラス転移温度を有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物を製造する方法であって、前記方法が、
i)硬化性組成物であって、
a)(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、更に、末端位又は末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含む、硬化性組成物を提供することと、
ii)その硬化性組成物を熱硬化に供してトリアジン環構造を有する基を作出することと、
を含む、方法を提供する。
【0010】
更に別の態様において、トリアジン環構造を有する基によって分離される、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、フルオロポリエーテルセグメントを含有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む成形物品であって、該組成物が少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、成形物品を提供する。
【0011】
尚も更なる態様において、硬化性組成物であって、
a)
(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、更に、末端位又は末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、を含む、硬化性組成物を射出又は圧縮成形することを含む、成形物品を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、その適用に際して本開示は以下の説明文に記載される組成物の細部及び要素の配置に限定されないことが、理解されなければならない。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語は、説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきでない点は理解されるべきである。「からなる」の使用とは対照的に、本願における「包含する」、「含有する」、「含む」、又は「有する」及びその変化形の使用は広い範囲を意味し、これらの語の後に列記される要素及びその同等物に加えて更なる要素を網羅することを意味する。「からなる」という言葉は、限定された範囲を意味し、これらの語の後に列挙される要素及びその同等物のみを包含するが、任意の追加の要素は含まないことを意味する。用語「から基本的になる」は、その下の記述により定義される意味を有する。
【0013】
「a」又は「an」の使用は、「1以上」を包含することを意味する。本明細書において記載される全ての数値範囲は、その範囲の下限値から上限値までの全ての値を含むものとする。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば、2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%などの1%〜50%の値を明確に開示するものとする。
【0014】
フルオロポリエーテル
好適なフルオロポリエーテルは、
(−CO−)、(−CO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分、例えば、
(−CO−)及び(−CFO−);(−CO−)、(−CO−)、及び(−CFO−);又は(−CO−)及び(−CO−)から選択される単位を含有する分子である。これらの単位は、不規則な順序で存在してもよい。
【0015】
フルオロポリエーテルは、直鎖骨格鎖を有してもよく、又は、それらは分枝鎖であってもよい(その場合、骨格鎖は、側鎖を含み得る)。側鎖は、例えば、フルオロポリエーテルが、上述の単位に加えて、分枝鎖(−CO−)単位を更に含有する場合、及び/又は(−CO−)が分枝鎖の場合に存在し得る。
【0016】
フルオロポリエーテルは、少なくとも1つのニトリル基又は(ペル)フルオロアルキルニトリル基を含有する。1つ以上のニトリル基は、フルオロポリエーテルの末端位、又は末端位に隣接する位置に位置付けられる。本明細書に使用される際、用語「末端位」は、骨格鎖の末端位、及び非直鎖フルオロポリエーテルの場合は側鎖の末端位を包含する。
【0017】
好ましくは、フルオロポリエーテルは、1つ又は2つの末端ニトリル又はペルフルオロアルキルニトリル基を含有する。フルオロポリエーテルは、2つ又は3つ以上のニトリル(又は(ペル)フルオロアルキルニトリル)基を含有してもよく、即ち、フルオロポリエーテルは、二官能性又は多官能性であってもよい。より好ましくは、フルオロポリエーテルは、ペルフルオロポリエーテルであり、1つ又は2つの末端ニトリル(若しくは(ペル)フルオロアルキル)基を含有する。
【0018】
好ましい実施形態において、フルオロポリエーテルは、全フッ素化されている。本明細書の前述及び後述で使用される用語「全フッ素化」とは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されている有機基又は有機化合物を意味する。全フッ素化された基は、しかしながら、フッ素及び炭素原子以外の原子、例えば、窒素原子、酸素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子も、依然として含有し得る。例えば、FC−又はFC−O−は、それぞれ、全フッ素化メチル基又は全フッ素化メトキシ基である。全フッ素化基又は化合物とは対照的に、全ての水素原子が置換されているわけではない基又は化合物は、本明細書において、「部分的フッ素化」基又は化合物と称される。例えば、FHC−又はFHC−O−基は、それぞれ、部分的フッ素化メチル又はメトキシ基である。
【0019】
好ましくは、フルオロポリエーテルは、(−CFO−)、(−CO−)、若しくは(−CO−)から選択される単位、又は(−CFO−)、(−CO−)、及び(−CO−)単位、並びに、追加として、任意であるが、(−CO−)単位のうち1つ以上の組み合わせから基本的になる。本明細書において使用されるとき、用語「基本的になる」は、少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%の前述の単位を含有する化合物を意味する。
【0020】
骨格鎖の残部は、好ましくは、全フッ素化アルキル基及び/又は全フッ素化アルキレン基を含み、これらの基の炭素鎖は、酸素原子によって中断されてもよく、又はされなくてもよい。これらの基は、ニトリル官能基をフルオロポリエーテルセグメントに結合させ得る。
【0021】
フルオロポリエーテルの典型的な例には、一般式
X−A−Y
(式中、X及びYは、互いに独立して、ニトリル、(ペル)フルオロアルキルニトリル、又は(ペル)フルオロアルキル基を表すが、但し、X又はYのうちの少なくとも1つは、ニトリル又は(ペル)フルオロアルキルニトリル基であることを条件とし、Aは、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の単位を含むフルオロポリエーテル単位を示す。)によって表されるものが含まれる。フルオロポリエーテル単位は、追加として、(−CO−)単位もまた含有し得る。好ましくは、ポリエーテル単位Aは、単位(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせ、例えば、(−(CFO−)及び(−(CFO−)単位;(−(CFO−)、(−(CFO−)、及び
(−CFO−)単位、(−(CFO−)及び(−CFO−)単位;(−(CFO−)及び(−CFO−)単位等からなるか、又は基本的にそれらからなる。任意で、フルオロポリエーテルセグメントAはまた、これらの単位及び/又はそれらの組み合わせに加えて(−CO−)単位を含有してもよい。
【0022】
フルオロポリエーテルは、典型的に、(約25℃及び約1バール(0.1MPa)の圧力等の周囲条件において)液体である。それらはまた、低分子量である。フルオロポリエーテルは、一般的に、約20,000g/モル未満、又は約15,000g/モル未満、典型的には約400g/モル〜約15,000g/モル、好ましくは約450〜約9,000g/モルの分子量を有する。フルオロポリエーテルは、混合物であってもよく、上述の分子量は、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって判定される)重量平均分子量であってもよい。更に、フルオロポリエーテル又はペルフルオロポリエーテルの混合物、並びにフルオロポリエーテル及びペルフルオロポリエーテルの混合物が使用可能である。混合物を使用する場合、平均官能性(すなわち、(ペル)フルオロポリエーテル当たりのニトリル基の数)は、望ましくは、0.5〜2.5である。
【0023】
液体組成物をフルオロエラストマーの製造に使用できることは、これによって、射出成形プロセスの使用を可能にし得るか、又は射出成形の費用を削減し得るため、本発明の利点である。粘度は、よりペースト状の稠度を得るために、充填剤を添加することによって、便宜的に適合させることができる。更に、圧縮成形又は他の成形プロセスでの適用は、液体又はペースト状の組成物を使用することにより、無駄なくより効率的に成形型を充填することが可能であるため、より費用効率的であり得る。
【0024】
上述のフルオロポリエーテル及びそれらの合成は、既知であり、説明されている。例えば、−CFCFO−単位のブロックによって特徴付けられる骨格鎖を有するペルフルオロポリエーテルは、米国特許第3,125,599号に記載のように、テトラフルオロエチレンエポキシドから製造することができる。酸素をテトラフルオロエチレンと反応させて製造する他の物は、−CFO−の反復単位(例えば、米国特許第3,392,097号を参照)から製造される骨格により特徴付けられる。−CFO−及び−CF(CF)O−単位と組み合わせた、−CO−単位の骨格を有するペルフルオロポリエーテルは、例えば、米国特許第3,699,145号に述べられている。更に、ペルフルオロポリエーテルの有用な例として、米国特許第3,810,874号に開示されているような、−CFO−及び−CFCFO−の反復単位の骨格を有するものが挙げられる。ペルフルオロポリエーテルは、例えば米国特許第4,647,413号及び同第3,250,808号に記載されているように、HFPOのジカルボン酸フッ化物を重合開始剤とする重合によっても得ることができる。HFPOから誘導されるペルフルオロポリエーテルは、分枝鎖ペルフルオロアルキル基を含み、少なくとも単位(−CO−)の1つが直鎖ではなく、例えば、(−CO−)は−CF−CF(CF)−O−単位である。HFPOから誘導されるペルフルオロポリエーテルはまた、市販されており、例えば、KRYTOXの商品名でDuPont de Nemoursから入手可能である。フルオロポリエーテルは、特に、直鎖タイプ及び官能化したフルオロポリエーテルを含め、市販もされており、例えばFOMBLIN,FOMBLIN Z DEALの商品名でSolvay Solexisから、DEMNUMの商品名でDaikinから市販されている。官能化フルオロポリエーテルのニトリル基を含有するフルオロポリエーテルへの変換は、有機合成の既知の方法によって実行することができる。ニトリル官能基を有するフルオロポリエーテルは、例えば、米国特許第3,810,874号、同第4,647,413号、又は同第5,545,693号に記載のように、対応する前駆体ペルフルオロポリエーテルから得ることができる。合成のためには、前駆体ペルフルオロポリエーテルは、典型的には酸フッ化物末端基を有する。これらの酸フッ化物末端基は、適切なアルコール(メタノールなど)との反応により、エステルに変換することができる。エステルは、その後、アンモニアとの反応によりアミドに変換することができる。次いで、ピリジン及びトリフルオロ酢酸無水物を使用して、適切な溶媒(DMFなど)の中で、アミドを脱水しニトリルにすることができる。あるいは、P又はPClのような他の試薬を用いてアミドを脱水してもよい。
【0025】
硬化剤
本明細書に言及される硬化剤は、非フッ素化化合物であり、結合基によって分離される、少なくとも1つ、好ましくは2つの反応基を含有する。反応基には、一級若しくは二級アミン基、又はブロック一級若しくはブロック二級アミン基が含まれる。「一級アミン」基とは、窒素が、1つの炭素原子に結合した−NH基を意味し、「二級アミン」基とは、窒素が、2つの異なる炭素原子に結合した−NH−基を意味する。本明細書に言及される「ブロックアミン」とは、熱により分解され、少なくとも1つの一級又は二級アミンを生成する化合物である。好ましくは、それらは、40℃〜200℃、又は80℃〜170℃の温度で分解する。アミン基は、したがって、その位置で、即ち、硬化反応中に、生成される。ブロックアミンの例には、カルバミン酸塩が挙げられる。
【0026】
これらの官能基は、フルオロポリエーテルのニトリル基と反応して、フルオロポリエーテル分子と結合するトリアジン基を形成し、硬化ポリマーを形成することができる。硬化剤は、硬化反応の間に、消費され、(少なくとも下記の結合基とともに)ポリマー構造に組み込まれ、これが、硬化触媒とそれらとの違いである。硬化触媒は、消費されず、ポリマーに組み込まれることはない。本明細書に提供される硬化剤は、ポリマー中に完全に組み込まれない場合があることを理解されたく、これは、反応に使用される全ての硬化剤が、ポリマー構造に含まれる必要があることを意味する。いくつかの硬化剤は、分解されるか、副反応が起こり得る可能性もある。しかしながら、本明細書に提供される少なくともいくつかの硬化剤は、下記のようにトリアジン環構造を有する基の一部を形成することによって、ポリマーに組み込まれるであろうことが意図される。
【0027】
硬化剤は、低分子量であってもよく、それらは、2,000g/モル未満、約1,500g/モル未満、又は好ましくは、1,000g/モル未満の分子量を有し得ることを意味する。低分子量の硬化剤は、高いフッ素含量、例えば、高い耐薬品性を有する材料に望ましいような、50重量%以上のフッ素含量を有するフルオロポリエーテル系組成物を調製する場合に好ましい。
【0028】
硬化剤は、典型的に、1つ以上の一級又は二級アミノ基を含有する非フッ素化化合物であり、それは、結合基によってブロックされ、結合され得る。結合基(又は、硬化剤が1官能性のみである場合の残基)は、少なくとも3つの炭素原子を含有する。
【0029】
好適な硬化剤には、一般式
(R−NH)−R−(NHR
(式中、各R及びRは、独立して、H、脂肪族基、又は−COOR’基(式中、R’は、H、アンモニウム化合物、金属原子、若しくはアルキル基を表す。)を表すもの)が挙げられる。
【0030】
Rは、官能基(R−NH)−及び−(NHRを結合する結合基を表し、少なくとも3つの炭素原子を含有する。好ましくは、Rは、直鎖又は分枝鎖のアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、及びヘテロアリールアルキレンから選択される。アルキレンは、炭素原子を中断するヘテロ原子、例えば、酸素原子を含有してもよい。残基Rはまた、ハロゲン置換されていてもよく、すなわち、Rが、Cl、Br、及びIから選択されるハロゲン原子を含有し得ることを意味する。
【0031】
好適な硬化剤の例には、脂肪族、芳香族、複素環式、又は脂環式の一級又は二級アミン、ジアミン、又はポリアミンが挙げられる。特に有用な例には、アルキレンジアミン(例えば、限定されないが、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン)、アニリン、メラミン、及びビスフェノールジアミンが挙げられる。
【0032】
ブロックアミンを含有する硬化剤の例には、ジ又はポリ置換尿素(例えば、1,3−ジメチル尿素)、N−アルキル又は−ジアルキルカルバメート(例えば、N−(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアミン)、ジ−又はポリ−置換チオ尿素(例えば、1,3−ジメチル−チオ尿素)、アルデヒド−アミン縮合生成物(例えば、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン)、及びN,N’−ジアルキルフタルアミド誘導体(例えば、N,N’−ジメチルフタルアミド)が挙げられる。
【0033】
ブロックアミンの特に有用な例には、商品名DIAK 1でDuPontから市販されている、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが挙げられる。
【0034】
硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを製造する方法
上述のようなフルオロポリエーテル及び硬化剤を含有する組成物を、熱硬化に供することによって、ニトリル及びアミン基が反応して、フルオロポリエーテルに結合するトリアジン環構造を有する基を形成し、硬化ポリマーを形成する。
【0035】
トリアジン環構造を含有する基は、フルオロポリエーテル及び硬化剤を、熱処理、例えば、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃の熱処理に供することによって形成することができる。典型的に、熱処理は、約80℃〜約180℃の温度を伴う。熱処理の間に、圧力、例えば、約1〜20バール(0.1〜2MPa)の圧力を適用してもよい。
【0036】
硬化時に、フルオロポリエーテルのニトリル基が、硬化剤の反応基と反応して、フルオロポリエーテルに結合するトリアジン環構造を有する基を形成する。好ましくは、硬化剤は、トリアジン環構造に組み込まれるようなものである。これは、上述の硬化剤の残基又は結合基が、トリアジン環構造の側鎖又は側鎖の一部を形成することを意味する。トリアジン環構造を有する基は、一般式
【0037】
【化1】
(式中、X1、X2、及びX3は、化学結合を表す。)によって表される。化学結合は、トリアジン環構造をフルオロポリエーテル及び/又は硬化剤からの残基に結合させる。典型的に、化学結合のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、環構造をフルオロポリエーテルに結合させる。
【0038】
結果として得られたポリマーは、低いガラス転移温度、例えば、−60℃未満、−80℃未満、又は更には−100℃未満のガラス転移温度を有する。材料は、エラストマーとして好適であり、少なくとも10%の破断伸度を有する。
【0039】
硬度及び引張強度等の機械的特性は、架橋密度を調節することによって、最適化又は微調整することができる。架橋密度を増加させることで、ポリマーの硬度を増加させることができる。架橋密度を減少させることで、破断伸度を増加させることができる。架橋密度の増加は、例えば、架橋結合に利用可能な官能基の量を増加させることによって、達成することができる。
【0040】
本明細書に提供されるポリマーの耐薬品性を増加させるために、それらのフッ素含量は、望ましくは、例えば、50重量%を上回るか、又は更には60重量%を上回るような高いものである。高いフッ素含量を有する材料は、成分の量及び比率を選択すること、例えば、フルオロポリエーテルを、硬化剤を上回る適切な超過量で使用すること、及び/又は上述のような低分子量の硬化剤を使用することによって、調製することができる。
【0041】
典型的には、100部のフルオロポリエーテル当たり、0.1〜10部、又は0.2〜5部の硬化剤(全て重量を基準とする)を使用して、下記の機械的特性のうち少なくとも1つ又は全てを有するフルオロポリエーテル系ポリマーを含有する組成物を得ることができる。これは、フルオロポリエーテル及び硬化剤を、5を上回るか、又は15を上回るか、又は50を上回るか、又は更には300を上回る、硬化剤に対するフルオロポリエーテルの重量比で、使用することができることを意味する。
【0042】
好ましくは、フルオロポリエーテル及び硬化剤は、硬化剤の、反応基に対するフルオロポリエーテルのニトリル基のモル比が、少なくとも1以上、好ましくは4.5を上回るか、又は更には9.0を上回るように、調節することができる。フルオロポリエーテルのニトリル基と、硬化共剤の反応基(アミン又はブロックアミン基)との典型的なモル比は、2.5:1〜5:1、又は10:1〜20:1、又は更には100:1の比率を含む。好ましくは、上述のような低分子量硬化剤を使用する。
【0043】
硬化性フルオロポリエーテル組成物(又はエラストマー前駆組成物)を調製するためには、成分を、緊密に混合する。既知の混合装置、例えば、回転式混合器、二重遊星混合器、高速調合器、又は商品名「Hauschild Speedmixer」で販売されている高速混合器等を使用することができる。硬化性フルオロポリエーテル組成物は、典型的に、液体又はペーストである。ペーストは、典型的に、25℃で2,000〜50,000センチポアズのブルックフィールド粘度を有する。
【0044】
充填剤及び他の添加物を、硬化性組成物に加えてもよい。好ましくは、充填剤及び他の添加物は、組成物の硬化の前に加えられる。充填剤を加えて、通常は液体であるフルオロポリエーテル−硬化剤の混合物の粘度を増加させ、取り扱いを容易にするペースト状の稠度を得ることができる。充填剤はまた、硬化組成物の硬度及び引張強度を増加させることができる。
【0045】
充填剤は典型的には粒子である。粒子は球状又は非球状粒子であってよい。これらは棒又は繊維であってよい。典型的には、充填剤はマイクロサイズの材料である。典型的に、それらは、少なくとも1つの寸法が、約0.01μm又は0.05μm〜約5,000μm、〜約1,000μm、又は〜約500μmの長さ又は直径である。充填剤、特に炭素又はシリカ含有材料は、0.05〜30μm程度の小さい粒子サイズ(数平均)で得られる。
【0046】
充填剤として無機又は有機材料が挙げられる。典型的な充填剤には、シリコーン酸化物含有材料が挙げられる。シリコーン酸化物含有充填剤の例には、シリカ(二酸化ケイ素とも称される)が挙げられる。シリカの具体的な例には、親水性及び疎水性シリカ、ヒュームドシリカ(これらは、例えば、Evonik GmbH,Frankfurt,Germanyから、例えば、AEROSIL 200、AEROSIL R972、又はAEROSIL R974等の商品名「AEROSIL」で市販され、Cabot Corporationから商品名「NANOGEL」市販されている)、シラン処理ヒュームドシリカ(例えば、Cabot Corporationから商品名「CABOSIL」で市販されている)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。更なる例には、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びこれらの混合物等のケイ酸塩、例えば、雲母、粘土、及びガラス等、例えば、ガラス球等(3M Companyから商品名「GLASSBUBBLES」で市販されている)が挙げられる。更に好適な充填剤には、ニトリル変性シリカが挙げられる。ニトリル変性シリカは、例えば、市販のヒドロキシル含有シリカ、例えば、AEROSIL 200V(Evonikから市販)等を、例えば、3−シアノプロピルトリエトキシシラン(Aldrichから市販)等のシアノシランと、塩酸含有エタノールの存在下で反応させることによって、調製することができる。反応物の量は、10〜30(重量)%のニトリル変性シリカが得られるように選択される。更に、好適なシリカ含有充填剤としては、フッ素変性シリカが挙げられる。フッ素変性シリカは、例えば、市販されているヒドロキシル含有シリカ(例えば、AEROSIL 200V)をフルオロシランと反応させることにより調製できる。好適なフルオロシランとしてHFPOシランが挙げられ、これは米国特許第3,646,085号に述べられているように、オリゴマーのHFPOエステル、及び、例えば、アミノアルキルトリアルコキシシランなどのシランから調製することができる。更に好適なフルオロシランは、例えば、米国特許第6,716,534号に記載のように、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシランと反応した、FOMBLIN Z Deal(Solvay Solexis)等の市販のペルフルオロポリエーテルから誘導することができる。反応物の量は、典型的には、1〜5%(重量基準)のフッ素変性シリカが得られるように選択される。
【0047】
好適な充填剤の他の例には、炭素材料が挙げられる。炭素材料には、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック又はそのサブタイプ、例えば、アセチレンブラック、変性炭素、例えば、フッ化黒鉛(例えば、Central Glassから市販)又はCarbofluor(Advanced Research Coから市販)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、Cabot Corporationから市販されている。
【0048】
充填剤は、フルオロポリエーテル(phr)の100重量部当たり、3〜50部、又は10〜30部の量で加えることができる。
【0049】
硬化性フルオロポリエーテル組成物(及び更には硬化フルオロポリエーテル組成物)は、添加物を更に含んでもよい。例としては、色素、酸化防止剤、加工助剤、レオロジー変性剤、潤滑剤、難燃剤、難燃共力剤、抗菌剤、並びに脱酸素剤(例えば、金属酸化物、例として、酸化マグネシウム及び酸化カルシウム)のようなフルオロポリマーの配合及びゴムの加工の技術分野において既知の更なる添加物が挙げられる。
【0050】
更なる添加物には、必須ではないが、硬化触媒が含まれてもよく、これは、本明細書に提供される方法の更なる利点である。本明細書に使用される硬化触媒は、例えば、アンモニア及び例えばブチルスズ化合物等の有機金属化合物等、トリアジンの形成を可能にする化合物である。
【0051】
望ましい場合、硬化フルオロポリエーテルポリマーの架橋密度は、過酸化物硬化剤を加えることによって増加させることができる。過酸化物硬化剤は、ニトリル基を通じた架橋結合をもたらすが、しかしながら、トリアジン基を形成しない。過酸化物硬化剤の有用な例には、過酸化ジクミルが挙げられる。
【0052】
硬化は成形型の中で行うことができる。ゴムの硬化及びゴムの加工に典型的に使用される成形型が使用できる。硬化は、解放空気中、例えば、解放した成形型の中で行ってよいが、好ましくは、閉じた成形型の中で行う。閉じた成形型の中における硬化は、作業者を硬化反応中に発生するフュームに暴露しない利点を提供する。したがって、本明細書に提供される硬化性組成物及び方法の利点は、組成物が、以下に記載のように、閉じた成形型の中で硬化され、エラストマーを生成することができることにある。
【0053】
硬化は、典型的には、組成物を熱処理することにより達成される。熱処理は、トリアジン環構造を有する基を有する硬化組成物を作出するのに効果的な温度及び効果的な時間で行われる。最適な条件は、結果として得られる硬化ポリマーを、機械的及び物理的特性に関して試験することによって、調べることができる。典型的には、硬化は、−100℃を上回るか、150℃を上回るか、又は少なくとも177℃の温度で行われる。硬化性フルオロポリエーテル組成物の典型的な硬化条件には、6〜90分で、160℃〜210℃、典型的には177℃の温度が挙げられる。10〜100バール(1〜10MPa)の圧力が、硬化中に適用されてもよい。典型的に、硬化は、少なくとも30分又は少なくとも45分にわたって行われる。後硬化を、典型的には200℃を上回る温度で20時間、好ましくは、周囲圧力又は上述の圧力で、適用してもよい。
【0054】
硬化フルオロポリエーテル組成物は、典型的に、4を上回る最大トルク(MH−ML)(ASTM D 5289−93aに従って測定される)に達する。
【0055】
結果として得られたポリマーは、低いガラス転移温度、例えば、約−60℃未満、約−80℃未満、又は更には約−100℃未満のガラス転移温度を有する。
【0056】
硬化性フルオロポリエーテル組成物
上述のように、硬化性組成物は、上述のフルオロポリエーテル及び硬化剤を含有する。
【0057】
組成物は、硬化性であり、これは、それらが、好ましくは、約40℃を上回る温度、好ましくは、約100℃を上回るか、又は約150℃〜約180℃の温度を含む、硬化条件において、反応して、トリアジン環構造を有する基を有するポリマーを形成することを意味する。組成物を硬化させることにより、フルオロポリエーテル系ポリマーを、本明細書に記載のガラス転移温度及び機械的特性を有して形成することができる。好ましくは、本組成物は、硬化させてエラストマーを形成することができる。
【0058】
上述のことから、前述及び後述のトリアジン含有基は、硬化共剤がトリアジン部分に組み込まれるため、置換トリアジンであることがわかる。典型的に、硬化剤の残基又は結合基が、トリアジン環構造の置換基、より具体的には側鎖を形成する。
【0059】
硬化性又は前駆組成物は、典型的に、上述の量又はモル比で、フルオロポリエーテル及び硬化剤を含有する。更に、フルオロポリエーテル前駆組成物は、上述のような充填剤及び他の成分を、上述の量又は比率で含有してもよい。
【0060】
硬化フルオロポリエーテル系ポリマー
本明細書に提供される硬化フルオロポリエーテル系ポリマー及びそれらを含有する組成物は、約−60℃未満、約−70℃未満、約−80℃未満、又は更には約−100℃未満のガラス転移温度を有する。
【0061】
硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はそれらを含有する組成物は、少なくとも10%の破断伸度を有する。それらは、ゴム様の稠度である。本明細書に提供される硬化フルオロポリエーテル系ポリマーは、エラストマーである。これは、それらが、エラストマー特性を有することを意味する。これは、それらが、(破断伸度に関して方法の部分に記載されるような)好適な力を適用することによって、それらの初期長の10%まで伸長し、その力の適用が中断されると、元の長さを維持することが可能できることを意味する。
【0062】
好ましくは、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーは、ポリマーの重量を基準として、約40重量%を上回り、少なくとも50重量%のフッ素含量を有する。
【0063】
硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はそれらを含有する組成物は、Oリング又はシールの製造における使用に好適である。
【0064】
好ましくは、フルオロポリエーテル系ポリマー又は組成物は、少なくとも50%の破断伸度を有する。好ましくは、それらは、更に、少なくとも15のショアA硬度もまた有する。より好ましくは、それらは、更に、少なくとも1Mpaの引張強度もまた有する。
【0065】
本明細書に提供される硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はポリマー組成物は、上述のフルオロポリエーテルと、上述の硬化共剤との間のトリアジン基形成反応の反応生成物である。これは、それらが、任意で、上述のような1つ以上の充填剤及び追加の成分の存在下において、上述のフルオロポリエーテル及び硬化剤の硬化反応によって得られることを意味する。
【0066】
したがって、硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はポリマー組成物は、トリアジン基含有結合を有する。トリアジン基は、典型的に、硬化共剤の結合基、例えば、上述のような基Rから誘導される側鎖もまた含有する。典型的に、本明細書に提供される硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はポリマー組成物は、約400g/モル〜約15,000g/モルの分子量を有し、トリアジン環構造を有する1つ以上の基、より具体的には上述のような結合基Rから誘導される少なくとも1つの側鎖を含有するトリアジン基部分によって互いに分離される、(−CFO−)、(−CO−)、(−CO−)、又はそれらの組み合わせから選択される単位を含有するか、又はそれらからなる。本ポリマー又はポリマー組成物は、更に、(−CO−)単位を含有してもよい。好ましくは、本明細書に提供される硬化フルオロポリエーテル系ポリマー及びポリマー組成物は、(−CFO−);(−CFO−)及び(−CO−);(−CFO−)、(−CO−)、及び(−CO−);又はそれらの組み合わせから選択され、トリアジン基含有部分によって、より具体的には、上述のように結合基Rから誘導される少なくとも1つの側鎖を含有するトリアジン基部分によって、互いに分離される、フルオロポリエーテル単位を含有する。好ましくは、このようなフルオロポリエーテル単位は、約400g/モル〜約15,000g/モルの分子量を有する。
【0067】
本明細書に記載の方法によって得られる硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はポリマー組成物は、次の特性のうちの1つ以上、又は全てを有し得る。
【0068】
(i)−60℃未満、好ましくは−70℃未満、より好ましくは−80℃未満、又は−100℃未満のガラス転移温度(Tg)
(ii)少なくとも50%の破断伸度
(iii)少なくとも1MPa、好ましくは、少なくとも1.3MPaの引張強度
(iv)少なくとも15、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも40のショアA硬度
硬化フルオロポリエーテル系ポリマー又はそれらを含有する組成物の典型的な実施形態は、−60℃未満のガラス転移温度、少なくとも1MPaの引張強度、少なくとも25のショアA硬度、少なくとも50%の破断伸度、及び少なくとも40重量%のフッ素含量を有する。
【0069】
物品及び物品の製造方法:
本明細書に提供される硬化性組成物は、例えば、成形による成形物品の製造に使用することができる。フルオロポリマーの配合又は加工に使用される従来の加工技術、例えば、射出成形、特に液体射出成形、又は圧縮成形などが使用できる。あるいは、フルオロポリエーテル組成物の層を解放空気炉の中で硬化させて、シート状の物品を製造することができる。このようなシートは、切断又はスタンピング方法によって更に成形することができる。
【0070】
圧縮成形は、典型的に、未硬化エラストマー組成物を、加熱した成形型の穴に入れ、その後に適切な圧力を用いて成形型を閉じ、物品を成形することを含む。加硫(硬化)を進行させるのに十分な温度で十分な時間、ゴム様の材料を保持した後、典型的には、それを成形型から外す。
【0071】
液体射出成形は、硬化性組成物を、加熱したチャンバにポンプ移送し、次いで、そこから水力(例えば、ピストン)によって、中空成形型の穴に注入する、成形技術である。加硫(硬化)後に、成形された物品を成形型から外す。
【0072】
本明細書に提供される硬化性組成物は、航空機、航空宇宙、及び自動車業界において使用するための物品の製造に使用することができる。好適な物品の典型的な例には、シール、より具体的には、少なくとも1つの表面が、液体又はガス状炭化水素と接しているか、又は接するように適用されるシールが挙げられる。典型的に、シールは、少なくとも1つの燃料ポンプ及び/又は少なくとも1つの燃料インジェクターを含む燃料管理システムの構成部品であり、燃料は、好ましくは炭化水素である。このような構成部品又は一般的な好適な物品の例には、Oリング、シャフトシール、ガスケット、チューブ、シート、容器、蓋、ホース、又はそれらの構成部品、膜、及び接着シールが挙げられる。物品の具体的な例には、上述のような燃料システムの構成要素が挙げられ、この燃料システムは、自動車、航空機、ヘリコプター、ロケット、スペースシャトル、又は船の燃料システムである。他の物品には、人工衛星の構成部品が挙げられる(上述の物品を含む)。
【0073】
本明細書に提供される硬化性組成物は、He、Ne、天然ガス、及び他の炭化水素等、ガスの液化及び液化ガスの貯蔵に使用するための物品を製造するために使用することができる。例には、限定されないが、LNG(液化天然ガス)、CNG(圧縮天然ガス)、合成天然ガス(CNG)、液体石油ガス(LPG)、及びGTLガス(気体から液体になるガス)が挙げられる。好適な物品の典型的な例には、例えば、Oリング等のシールが挙げられる。シールは、少なくとも1つの表面が、液体若しくはガス状炭化水素、又は希ガス、又はそれらの混合物と接しているか、又は接するように適用され得る。シールは、例えば、バルブの構成部品であり得る。バルブの例には、ボールバルブ、バタフライバルブ等が挙げられる。バルブは、液化ガスターミナル、又は例えば、膨張によって、液化ガスを調製するための処理ユニットにおける結合の構成部品であってもよい。更なる例には、液化ガス貯蔵装置又はガス膨張によってガスを冷却するための装置の構成部品である、バルブのシール又はシール部品が挙げられる。例には、例えば、船積み又は船舶若しくは自動車による輸送等のための液化ガス貯蔵容器、あるいは、液化ガスターミナルにおける貯蔵ユニット等が挙げられる。例には、Oリングを含むシール又はシールの構成部品、チューブ又はチューブの構成部品等が挙げられる。
【0074】
発明を更に説明するために、具体的な実施形態を以下に羅列する。この羅列は、説明の目的のみで提供されたものであり、本発明を制限するように意図するものではない。
【0075】
1.硬化性組成物であって、
a)約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、更に、末端位又は末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含み、硬化させてトリアジン環構造を有する基を生成することができる、硬化性組成物。
【0076】
2.フルオロポリエーテルが、一般式
X−A−Y
(式中、X及びYは、互いに独立して、ニトリル、ペルフルオロアルキルニトリル、又はペルフルオロアルキル基を表すが、但し、X又はYのうちの少なくとも1つは、ニトリル又はペルフルオロアルキルニトリル基であることを条件とし、Aは、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の単位を含むか、それらからなるか、又は基本的にそれらからなるフルオロポリエーテル単位を示す。)によって表される、実施形態1に記載の硬化性組成物。
【0077】
3.硬化剤が、式
(R−NH)−R−(NHR
(式中、各R及びRは、独立して、H、脂肪族基、又は−COOR’基(式中、R’は、H、アンモニウム化合物、金属原子、若しくはアルキル基を表す。)を表し、
Rは、官能基(R−NH)−及び−(NHRを結合する結合基を表し、少なくとも3つの炭素原子を含有し、xは、1〜5の整数を表し、yは、1〜5の整数を表す)によって表される、実施形態1又は2に記載の硬化性組成物。
【0078】
4.硬化剤が、式
(R−NH)−R−(NHR
(式中、各R及びRは、独立して、H、脂肪族基、又は−COOR’基(式中R’は、H、アンモニウム化合物、金属原子、若しくはアルキル基を表す。)表し、
Rは、官能基(R−NH)−及び−(NHRを結合する結合基を表し、直鎖又は分枝鎖のアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、及びヘテロアリールアルキレンから選択され、
xは、1〜5の整数を表し、yは、1〜5の整数を表し、好ましくは、xとyの合計が、少なくとも2かつ5未満である)によって表される、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0079】
5.硬化剤が、アルキレンジアミン、アルキレンジアミンカルバメート、窒素−へテロアリールアミンから選択される、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0080】
6.硬化剤が、2,000g/モル未満、又は1,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0081】
7.フルオロポリエーテルが、複数の分枝鎖−(CO)−単位を更に含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0082】
8.少なくとも1つの充填剤を更に含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0083】
9.炭素材料又は酸化ケイ素材料を含有する粒子を含有する充填剤を含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0084】
10.フルオロポリエーテル及び硬化剤が、硬化剤に対するフルオロポリエーテルの重量比が10を上回って存在する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0085】
11.フルオロポリエーテル及び硬化剤が、硬化剤に対するフルオロポリエーテルの重量比が、20を上回って500まで存在する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0086】
12.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化させることによって得られるトリアジン環構造を有する基を含有する硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物。
【0087】
13.少なくとも−60℃のガラス転移温度と、
a)少なくとも50%の破断伸度、
b)少なくとも15のショアA硬度、及び
c)少なくとも1MPaの引張強度、から選択される機械的特性のうちの1つ以上と、を有する、実施形態12に記載の組成物。
【0088】
14.(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、トリアジン環構造を有する基によって分離されるフルオロポリエーテルセグメントを含有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物であって、少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、組成物。
【0089】
15.少なくとも−60℃のガラス転移温度と、
a)少なくとも50%の破断伸度、
b)少なくとも15のショアA硬度、及び
c)少なくとも1MPaの引張強度、から選択される機械的特性のうちの1つ以上と、を有する、実施形態14に記載の組成物。
【0090】
16.硬化フルオロポリエーテル系ポリマーが、エラストマーである、実施形態12〜15に記載の組成物。
【0091】
17.硬化フルオロポリエーテル系ポリマーが、ポリマーの総重量を基準として、少なくとも50重量%のフッ素含量を有する、実施形態12〜15に記載の組成物。
【0092】
18.トリアジン環構造を有する基及び−60℃未満のガラス転移温度を有する硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物を製造する方法であって、
前記方法が、
i)実施形態1〜11のいずれか1つに記載の硬化性組成物を提供することと、
ii)硬化性組成物を熱硬化に供して、トリアジン環構造を有する基を作出することと、
を含む、方法。
【0093】
19.硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物が、
a)少なくとも50%の破断伸度、
b)少なくとも15のショアA硬度、及び
c)少なくとも1MPaの引張強度、から選択される機械的特性のうち少なくとも1つ以上を有する、実施形態18に記載の方法。
【0094】
20.硬化フルオロポリエーテル系ポリマーが、ポリマーの総重量を基準として、少なくとも50重量%のフッ素含量を有する、実施形態18及び19に記載の方法。
【0095】
21.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の硬化性組成物を成形することによって得られる成形物品。
【0096】
22.シールである、実施形態21に記載の成形物品。
【0097】
23.燃料管理システムの構成部品である、実施形態21に記載の成形物品。
【0098】
24.燃料管理システムが、航空機、自動車、又は船の燃料管理システムである、実施形態23に記載の成形物品。
【0099】
25.液化ガスの貯蔵装置又はガス膨張によるガス液化装置の構成部品である、実施形態21又は22に記載の成形物品。
【0100】
26.トリアジン環構造を有する基によって分離される、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、フルオロポリエーテルセグメントを含有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物であって、該組成物が少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、実施形態21〜24のいずれか1つに記載の成形物品。
【0101】
27.射出成形又は圧縮成形によって得られる、実施形態21〜26のいずれか1つに記載の成形物品。
【0102】
28.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の硬化性組成物を成形することを含む、成形物品を製造する方法。
【0103】
29.成形が、射出又は圧縮成形である、実施形態28に記載の方法。
【0104】
以下の実施例は、本明細書に提供される組成物及び方法を更に説明するために提供される。以下の実施例は幾つかの実施形態を説明するために用意されたものであり、その発明を限定するものではない。実施形態の説明に先立ち、材料及びその特性評価に使用される幾つかの試験方法を述べる。特に指示がない限り、パーセンテージは全組成物の質量に対する重量パーセンテージであり、それぞれのケースで100重量パーセントとなる。
【実施例】
【0105】
試験方法
硬さ:
ショアA硬度(2”)を、ASTM D−2240に従って、250℃で20時間、後硬化した試料において測定した。
【0106】
ガラス転移温度(Tg):
TA Instrumentsから入手できるTA Instruments Q200 modulated DSCを使用する、温度変調DSCにより、Tgを測定した。測定条件:2又は3℃/分での−150℃〜50℃、60秒中の+−1℃/分の温度変調振幅。
【0107】
破断強度、破断伸度及び100%伸度における応力:
これらの特性は、DIN 53504(S2 DIE)に従って、1kNのロードセルを用いて、商品名「Instron」で入手可能な機械的試験器を使用して判定した。全ての試験は、200mm/分の一定のクロスヘッド変位速度で行った。各試験は3回行った。報告した値は3回の試験の平均である。
【0108】
100%伸度応力、破断伸度、及び破断強度は、メガパスカル(MPa)、%及びMPaの単位でそれぞれ報告した。エラストマー特性は、破断伸度の測定で行ったように判定することができる。試料を、その最初の長さの10%まで伸長させる。次いで、伸長を止め、試料にその元の形状を回復させる。試料は、それが15分以内にその元の長さに回復する場合、エラストマー性である。
【0109】
硬化特性:
加硫特性は、Alpha Technologies Moving Die Rheometerを使用して(ASTM D 5289−93aに従い177℃で)測定し、最低トルク(ML)、最高トルク(MH)及びデルタトルク(これはMHとMLとの差である)を報告した。トルク値は、in.lbs(N.m)の単位で報告する。tg δ @ML及びtg δ@MHも報告した。更に、Ts2(トルクが、MLから2単位増加するのに必要な時間)、T50(トルクが、MLからデルタトルクの50%増加する時間)、及びT90(トルクが、MLからデルタトルクの90%増加する時間)等の硬化速度を示すパラメータを報告し、これらは全て、分単位で報告した。
【0110】
トリアジン環の存在:
トリアジン環の存在は、FT−IR分析における1550〜1560cm−1の強い吸収ピークで示された。硬化又は後硬化した50μmの薄い試料を、FT−IR分析に供した。
【0111】
試料調製
ペースト形態のフルオロエラストマー化合物は、商品名「Hauschild Speedmixer」(2000rpmで1分、3500rpmで1分)で入手可能な高速混合器において、少なくとも1つの一級又は二級アミンを有する非フッ素化化合物を有するフルオロポリエーテル100重量部と、ペルフルオロポリエーテル100重量部当たりの部として各実施形態に示されている充填剤を混合することによって、作製した。ペーストは、Agila press(加熱板を装備した典型的なラバープレスの例である、Agila NV in Ieper,BelgiumからのAgila PE 60プレス)でプレス硬化した。硬化は、177℃で30分間、20バール(2Mpa)の圧力下で行った。フルオロエラストマーは、炉の中で、250℃で20時間、後硬化した。
【0112】
使用材料:
官能化フルオロポリエーテル(PFE)
PFE−1:NCCFO(CFO)9〜11(CFCFO)9〜11CFCN
PFE−1は、ペルフルオロポリエーテルジエステルCHOC(O)CFO(CFO)9〜11(CFCFO)9〜11CFC(O)OCH(約2000の平均分子量で、商品名「Fomblin Z−DEAL」でSolvay Solexisから入手)から開始し、米国特許第5,545,693号、実施例3に記載のプロセスに従って製造した。第1工程において、ペルフルオロポリエーテルジエステルを、アンモニアガスを使用して、対応するジカルボンアミドに変換した。第2工程では、ジカルボンアミドを対応するジニトリルに変換した。
【0113】
PFE−2:NC(CFCFO)n−CFCFCN
PFE−2は、PFE−1で概説した手順に従って調製したが、850の分子量を有し、Exfluor,Texasから市販のPFEO−ジエステルで開始した。
【0114】
硬化共剤
エチレンジアミン:Aldrichから入手可能
メラミン:Alddrichから入手可能
DIAK1:ヘキサメチレンジアミンカルバメート、DuPontから入手可能。
【0115】
充填剤
商品名「Nanogel」でCabot Corporationから入手可能なエアロゲル
商品名「Cab−O−Sil TS530」でCabot Corporationから入手可能な高表面積ヒュームドシリカ
商品名「Carbofluor 2065」でAdvanced Research Co.から入手可能なフッ化黒鉛。
【0116】
(実施例)
(実施例1):
ペーストを、100部のPFE−1、0.33部のエチレンジアミン、7.5部のNanogelを混合することにより作製した。ペーストを177℃で30分間プレス硬化し、次いで、230℃で16時間、後硬化した。硬化フルオロエラストマーの硬化挙動及び特性を、表1に示す。
【0117】
【表1】
(実施例2):
実施例2では、ペーストを、100部のPFE−1、7.5部のNanogel、及び0.92部のメラミンを混合することによって作製した。ペーストを177℃で7分間プレス硬化し、次いで、230℃で16時間、後硬化した。硬化フルオロエラストマーの硬化挙動及び特性を、表2に示す。
【0118】
【表2】
(実施例3)
実施例3では、ペーストを、100部のPFE−1、2部のAEROSIL 200V、20部のCarbofluor 2065、5部のnanogel、及び0.75部のDIAK 1を混合することによって作製した。ペーストを177℃で分間プレス硬化し、次いで、170℃で60分間、後硬化した。硬化フルオロエラストマーの硬化挙動及び特性を、表3に示す。
【0119】
【表3】
(実施例4):
実施例4及び実施例5において、ペーストは、100部のPFE−2、7.5部のNanogel、及び1.3部のメラミン(実施例5)又は0.462のエチレンジアミン(実施例6)を混合することにより作製した。ペーストを、177℃で7分間プレス硬化し、次いで、200℃で16時間、後硬化した。硬化フルオロエラストマーの硬化挙動及び特性を、表4に示す。
【表4】
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]‐[16]に記載する。
[1]
硬化性組成物であって、
a)約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、更に、末端位又は前記末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、前記官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含み、硬化させてトリアジン環構造を有する基を生成することができる、硬化性組成物。
[2]
前記フルオロポリエーテルが、一般式
X−A−Y
(式中、X及びYは、互いに独立して、ニトリル、ペルフルオロアルキルニトリル、又はペルフルオロアルキル基を表すが、但し、X又はYのうちの少なくとも1つはニトリル又はペルフルオロアルキルニトリル基であることを条件とし、Aは、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される複数の単位を含むフルオロポリエーテル単位を示す。)によって表される、項目1に記載の硬化性組成物。
[3]
前記硬化剤が、式:
(R−NH)−R−(NHR
(式中、各R及びRは、独立して、H、脂肪族基、又は−COOR’基(式中、R’は、H、アンモニウム化合物、金属原子、若しくはアルキル基を表す。)を表し、
Rは、官能基(R−NH)−及び−(NHRを結合する結合基を表し、少なくとも3つの炭素原子を含有し、xは、1〜5の整数を表し、yは、1〜5の整数を表す)によって表される、項目1に記載の硬化性組成物。
[4]
前記硬化剤が、式:
(R−NH)−R−(NHR
(式中、各R及びRは、独立して、H、脂肪族基、又は−COOR’基(式中、R’は、H、アンモニウム化合物、金属原子、若しくはアルキル基を表す。)を表し、
Rは、官能基(R−NH)−及び−(NHRを結合する結合基を表し、直鎖又は分枝鎖のアルキレン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、及びヘテロアリールアルキレンから選択され、xは、1〜5の整数を表し、yは、1〜5の整数を表し、好ましくは、xとyの合計が、少なくとも2かつ5未満である)によって表され、項目1に記載の硬化性組成物。
[5]
前記硬化剤が、アルキレンジアミン、アルキレンジアミンカルバメート、窒素へテロアリールアミンから選択される、項目1に記載の硬化性組成物。
[6]
前記フルオロポリエーテルが、分枝鎖−(CO)−単位を更に含む、項目1に記載の硬化性組成物。
[7]
少なくとも1つの充填剤を更に含む、項目1に記載の硬化性組成物。
[8]
(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、トリアジン環構造を有する基によって分離されるフルオロポリエーテルセグメント、を含有する硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物であって、少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、組成物。
[9]
少なくとも−60℃のガラス転移温度と、
a)少なくとも50%の破断伸度、
b)少なくとも15のショアA硬度、及び
c)少なくとも1MPaの引張強度、
から選択される機械的特性のうちの1つ以上を有する、項目8に記載の組成物。
[10]
前記フルオロポリエーテルセグメントが、複数の分枝鎖−(CO)−単位を更に含む、項目8に記載の組成物。
[11]
前記フルオロポリエーテル系ポリマーが、エラストマーである、項目8に記載の組成物。
[12]
トリアジン環構造を有する基及び−60℃未満のガラス転移温度を有する硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む組成物を製造する方法であって、
前記方法が、
i)約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、更に、末端位又は前記末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が、少なくとも3つの炭素原子を含有し、前記官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級若しくは二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、を含む、硬化性組成物を提供することと、
ii)前記硬化性組成物を熱硬化に供してトリアジン環構造を有する基を作出することと、
を含む、方法。
[13]
前記組成物が、
a)少なくとも50%の破断伸度、
b)少なくとも15のショアA硬度、及び
c)少なくとも1MPaの引張強度、
から選択される機械的特性のうちの少なくとも1つ以上を有する、項目12に記載の組成物。
[14]
トリアジン環構造を有する基によって分離される、(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)又はそれらの組み合わせから選択される複数の部分を含有し、約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有するフルオロポリエーテルセグメントを含有する、硬化フルオロポリエーテル系ポリマーを含む成形物品であって、前記組成物が少なくとも−60℃のガラス転移温度を有する、成形物品。
[15]
燃料管理システムの、又は液化ガスの貯蔵用若しくは生成用装置の構成部品の一部であるシールである、項目14に記載の成形物品。
[16]
成形物品を製造する方法であって、
a)約400g/モル〜約20,000g/モルの分子量を有し、
(−(CFO−)、(−(CFO−)、(−CFO−)、又はそれらの組み合わせから選択される部分を含有し、更に、末端位又は前記末端位に隣接する位置に少なくとも1つのニトリル基を含有する、フルオロポリエーテルと、
b)共通の残基に結合される1つ以上の官能基を含有する非フッ素化化合物から選択される1つ以上の硬化剤であって、前記残基が少なくとも3つの炭素原子を含有し、前記官能基が、一級アミン、二級アミン、及び熱処理すると一級又は二級アミンを生成する官能基から選択される、硬化剤と、
を含む、硬化性組成物を射出又は圧縮成形することを含む、方法