(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912141
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】三次元対象物の画像を記録するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20160414BHJP
G03B 17/54 20060101ALI20160414BHJP
G03B 35/08 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
A61B1/24
G03B17/54
G03B35/08
【請求項の数】18
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-558267(P2013-558267)
(86)(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公表番号】特表2014-514034(P2014-514034A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】AT2012000061
(87)【国際公開番号】WO2012126022
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】A388/2011
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513234411
【氏名又は名称】エイ.トロンスリーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コイニーク,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】イエセンコ,ユルゲン
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−078133(JP,A)
【文献】
特開2007−083009(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0275016(US,A1)
【文献】
特開2005−218614(JP,A)
【文献】
特開2010−069301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/24
G03B 17/54
G03B 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの鏡(26,27,28)が、光または投影ビーム(23)および/または対象物(10)により反射された画像を偏向させるように配置された撮像領域部(2)、およびグリップ領域部(3)を有する、歯のような三次元対象物(10)の画像を記録するための装置であって、カメラ(32)および/またはプロジェクター(14)が撮像領域部(2)に配置され、そして撮像領域部(2)がグリップ領域部(3)に関して10°から40°の間の角度(α)で投影方向に対して傾けられていることを特徴とし、
少なくとも2つの鏡(27,28)がそれぞれの場合で、プロジェクター(14)からの光線(23a,23b)を異なる方向から対象物(10)へ反射する、該三次元対象物(10)の画像を記録するための装置。
【請求項2】
中央領域部(5)がグリップ領域部(3)と撮像領域部(2)との間に配置され、この中央領域部がそれぞれの場合でグリップ領域部(3)および撮像領域部(2)に関して少なくとも3°の角度(β、γ)で傾けられている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
中央領域部(5)がグリップ領域部(3)と撮像領域部(2)との間に配置され、中央領域部(5)がグリップ領域部(3)に関して7°〜25°の角度(γ)で傾けられている請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
中央領域部(5)がグリップ領域部(3)と撮像領域部(2)との間に配置され、撮像領域部(2)が中央領域部(5)に関して3°〜15°の角度(β)で傾けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
撮像領域部(2)が10mmから60mmの間の長さを有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
撮像領域部(2)が、透明ディスク(13)により閉じられる開口部(12)を持つハウジングを有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
2つの鏡面対称ハウジングの半分(16,17)を持つハウジングを有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
プロジェクター(14)が、撮像領域部(2)と、隣接する中央領域部(5)またはグリップ領域部(3)との間の移行領域に配置されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
光が偏向鏡(26)を介して間接的に第一鏡(27)に向けられ、そして光がプロジェクター(14)から直接、第二鏡(28)に向けられる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
2つの鏡(27,28)がカメラ(32)の異なる側にある請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
互いに重複し、そして異なる方向からの画像を記録する撮像範囲を持つ2つのカメラ(32)を特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
プロジェクター(14)が、ランダムに配置されたパターンを対象物(10)に投影する請求項1ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの透明媒体(36,37)には、プロジェクター(14)のビーム路のパターンが設けられている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
パターンが、無作為に分布され、不規則に形成された点および/または線から構成される請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
媒体(36,37)が、ビーム路の方向で互いに関してオフセットされる区分を有する請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも2つの媒体(36,37)が、ビーム路の方向で互いに関してオフセットされる請求項13または14に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの媒体(36,37)が、ビーム路の方向で互いに関してオフセットされる区分を有する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
光の伝播方向に関して、少なくとも1つの媒体(36,37)が90°に等しくない角度で傾けられている請求項13ないし17のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの鏡が光または投影ビームおよび/または対象物により反射された画像を偏向させるために配置されている撮像領域、およびグリップ領域を持つ、三次元対象物、特に歯の画像を記録するための装置に関する。
【0002】
そのような装置は特に歯の三次元撮像の分野に使用される。このような場合、本出願はデジタル歯型および顎型(tooth and jaw impression)を記録すること、診断の支援、歯の処置のモニタリング、ならびに挿入したインプラントの信頼性のあるモニタリングにまで及ぶ。医療用および工業的技術の分野における他の用途、例えば内視鏡の分野に加えて、一般に接近することが難しい対象物を体積測定的(stereometrically)に測定することができる。
【背景技術】
【0003】
例えば特許文献1のような最先端技術から、三次元画像をもたらす、歯のような対象物を測定する装置および方法はすでに知られている。この装置および方法、しかしまた他の既知の装置および方法も、三次元画像を作成するために本発明で使用することができる。
【0004】
既知の装置の重大な欠点は、撮像される対象物を通る撮像装置(手で持つスキャナ−)が、多くの場合で扱い難く、かさばり、しかも患者の口に効果的に導くように幾何学的に形成されていない点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】オーストリア特許第508563号明細書
【発明の概要】
【0006】
したがって本発明の目的は、取り扱いが容易で、しかも口腔内で効率的測定を可能にする装置を利用できるようにすることである。
【0007】
この目的は、カメラおよび/またはプロジェクターが撮像領域に配置され、そして撮像領域がグリップ領域に対して10°から40°の間の角度で投影方向に傾けられている上述したタイプの装置で達成される。
【0008】
撮像領域はグリップ領域に関して10°から40°の間の角度により投影方向に対して曲げられているという事実から、装置を使用して撮像される個々の対象物の視界は、ハンドピースまたはハンドピースを保持する手によりもはや妨げられず、したがってより効率的な対象物の撮像が拘束された条件下(cramped condition)でも促進される。
【0009】
本発明の好適な態様は、従属項の主題である。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付する図面を参照にして、以下に続く本発明の好適な態様の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のハンドピースの側面からの態様を示す。
【
図8】線VIII−VIIIに沿って装置を貫通する断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面では、対象物10、特に歯の三次元撮像用の装置1の好適態様が示され、これは撮像領域2およびグリップ領域3を有する。説明する態様では、撮像領域2とグリップ領域3との間に中央領域5が配置されている。中央領域5は撮像領域2よりも小さい外寸を有するので、撮像領域2は中央領域5まで本質的に円錐の移行領域6を有する。前端4で、撮像領域2は丸い。
【0013】
撮像領域2は中心軸7を有し、グリップ領域3は中心軸8を有し、そして中心領域5は中心軸9を有する。中心軸7と中心軸8との間の角度αは、本発明に従い10°から40°の間となり、これにより描かれている態様(中央領域5)でこの角度αは2つの角度βおよびγに分けられ、これにより角度βは撮像部2の中心軸7と中央領域5の中心軸9との間にあり、そして角度γは中央領域5の中心軸9とグリップ部分3の中心軸8の間にある。角度βは好ましくは3°から15°の間になり、そして角度γは7°から25°の間になる。撮像領域の長さは好ましくは10から60mmの間となり、それというのもこの限度内でハンドピース1の容易な取り扱い、および投影および/または撮像技術の設置用の十分な空間の両方が存在するからである。
【0014】
撮像される対象物10に面する側面11上に、開口部12(
図5)が撮像部2に配置され、これはディスク13によって閉じられる。このディスク13を通って、光、特に不規則パターンをプロジェクター14を用いて対象物10に向けることができ、そして対象物10の画像をカメラシステム15により記録することができる。グリップ領域3に関して、撮像領域2はこのように10°から40°の間の角度αにより投影方向に対して後方に傾けられる。
【0015】
図5から8では、プロジェクター14が光源により光線23を照射する本発明の態様を示す。光線23は
図9に示す1もしくは複数の透明媒体(transparent vehicle)36、37、例えばスライドを通って入り、無作為な原理に従い配列されたスライド上のパターンが配置される。このパターンは好ましくは無作為に分布され、場合により不規則に形成された点および/または線から本質的になり、これは引き続いて対象物10、例えば歯に投射される。
【0016】
光線23の光路には偏向鏡(deflection mirror)26があり、これが光線23の一部23a、
図7の態様の最下部を第一鏡27に偏向し、この鏡が引き続き
光を対象物10に向ける。光線23の別の部分23b、
図7の態様の中央部分は第二鏡28に直接あたり、これからの光も対象物10に向けられる。
【0017】
偏向鏡26は好ましくは平面鏡であるが、必要に応じて凸面または凹面鏡であることもできる。この2つの鏡27および28は好ましくは、2つの軸が同じか、または異なる曲率半径を持つ二軸の凸面鏡であり、必要ならばこれを用いて光線23の各比率をより大きく散乱させることができる。
【0018】
示した態様では、偏向鏡26および第一鏡27の配置および曲率は、図面の像平面での光線23の一部23aが、約30°の開口角度δを有するように選択される。例として、第二鏡28の配置および曲率は、図面の像平面での光線23の一部23bが、約25°の開口角度εを有するように選択される。図面の像平面に対する標準方向では、光線23の一部23a、23bの開口角度は、要件に応じて同じかまたは異なることができ、鏡27、28の適切な曲率により、各開口角度δ、εは像平面に広がる(lie)。
【0019】
図7の例で選択される鏡27、28の配置により、該鏡の光軸29、30は、光線23の一部23a、23bが異なる方向から対象物10に当たるように互いに傾けられている。
【0020】
2つの鏡27、28の間に見えるプロジェクター14の投射方向では、第二鏡28に幾分近く表す態様で、示した態様では2つのカメラ32からなるカメラシステム15が配置され、このカメラは互いに重複する撮像領域で異なる方向から記録される画像により対象物10の三次元測定に関する立体鏡的画像を記録する。鏡27、28の2つの光軸29、30は平面ωに広がり、これにより2つのカメラ32、より正確にはそれらのレンズ33はこの平面ωの両側で対称的である。
【0021】
この好適な配置により、鏡26、27または平面ωのそれらの光軸29、30を有するカメラシステム15は、これにより大変正確な画像の記録、すなわち対象物の測定が可能となる。カメラシステム15の両側にある鏡26、27による光線の一部23a、23bの投影により、対象物10上への無作為なパターンの照明または投影がこの平面ωの2つの側から起こり、これによりカメラシステム15の見地から見ると対象物10、例えば臼歯または門歯の場合に生じる可能性がある影や欠陥(flaw)は、かなり確実に回避され得る。
【0022】
原理的には、プロジェクター14から見て、2つのカメラ32に加えて鏡を配置し、そして場合によりそれら両方が平面ωにあるように2つのカメラ32を90°まで回転することが可能である。またカメラ32の前および/または後ろの両方、および横に2より多くの鏡は、対象物10へ可能な最高の照明またはパターン投影を作成すると考えることもできる。
【0023】
示した態様では、偏向鏡26の上の領域に、光線23の一部がカメラ32の光学系33に望ましくない反射を引き起こさないように、光線23の第三部分23cを遮断するアパーチャ(aperture)34が配置される。鏡26、27、28およびレンズ33の配置に依存して、アパーチャ34は省略または配置でき、あるいは異なるように形成することもできる。
【0024】
すべての鏡26、27、28、アパーチャ34、およびまた場合によりカメラシステム15は、必要ならば個々の部品の単純な調整および/またはキャリブレーションが可能となるように、対応する保持具31に調整できる様式で固定することもできる。さらに、上記の部品のすべてまたは唯一つの部品は、媒介システム(vehicle system)に固定され、そして前調整し、それを次に撮像装置で使用することができる。装置1のハウジングは、好ましくは、鏡像として設計された2つのハウジングの半分16、17からなり、これにより装置は大変容易に組み立てることができる。
【0025】
図面に例として表した本発明の選択された配置により、大変小型で薄い設計が可能となり、これは例えば歯の三次元撮像用のハンドピースに大変た易く組み込むことができる。
【0026】
図5から8に関連して説明した鏡およびカメラの配置は、好ましくは角度を付けた撮像領域2および場合により中央領域5を有するハンドピースで使用される。それというのも大変薄く、そして鋭く曲がっているので特に口腔スキャナーの場合に特に容易に取り扱える角度をつけたハンドピース1に全投影および撮像技術を取り込むために、特に優れたオプションが鏡26、27、28により提供されるからである。
【0027】
本発明の装置では、鮮明さの最適な度合いが、対象物、例えば測定され得る歯にスキャナーを配置するだけで、影や欠陥のリスク無しにスキャナーガラス13の外面から始めて直接達成することができ、逆に既知のスキャナーは歯から特定の距離を維持しなければならないことが多く、これは歯に直接配置することも可能な本発明による可能性と比較すると大いに撮像工程を妨害するものである。
【0028】
図9では本発明の態様が図により示され、ここで2つの透明媒体36、37、例えば2つのスライド(この上に無作為な原理に従い配列されたパターンが配置される)が光線23のビーム路にあり、これは光源22、例えばLEDから照射される。このパターンは無作為に分布され、場合により不規則に形成された点および/または線から本質的になることができる。光は示した態様に最初にレンズ35を通って行き、次いで2つの媒体36、37を通り、そして引き続きレンズ38により象徴的に表され、投影ビーム23を向けて、鮮明さを調整するために使用される別のレンズ系を通る。
【0029】
図9のプロジェクター14は、例えば
図5から8に示す装置で使用することができ、ここで光線23は2つの鏡27および28を通して対象物10に向けられる。光は偏向鏡26および鏡27、または対象物10上の鏡28のいずれかに当たるかどうかに依存して異なる長さの経路を通り抜けるので、対象物10上への1つの、またはもう一つの、または両方の投影のぼやけ(blurring)が、媒体上に存在するパターンの投影に生じる可能性がある。
【0030】
2つの媒体36、37を使用することにより、このことを考慮することができ、そしてぼやけは個々に補正され得る。これは例えば、2つの媒体36、37が光の伝播方向で互いに関してオフセットされることにより行うことができる。すなわち各媒体36、37から各鏡(1もしくは複数)26、27、28を通って対象物10への光路が全部、再びほぼ同じ長さになるように、例えば鏡28の光線23bの光路にある媒体36は、レンズ38のさらに後ろか、もしくはレンズからさらに離れているか、あるいは鏡27の光線23aの光路にある媒体37より後のレンズ系となる。媒体36、37からレンズ系38への異なる距離は、これらの距離が空間を測定する平面を定める位置および場所を定めるので決定的となる。各鏡(1もしくは複数)26、27、28を通って対象物10への路の差がそれほど大きくなければ、例えば一つの媒体を使用するだけでよく、これは段階的にオフセットされる区分を有するか、あるいはこれはさらに中央で路の差を補正するために対応して大きく傾けられるいずれかとなる。別の選択として1つの媒体を使用することもでき、媒体は前側上および後側上の各々の場合で異なる領域または区分にパターンがコーティングされる。次いで媒体材料の厚さも距離の差を定める。
【0031】
図9では、光の伝播方向に対して媒体36、37を傾けることが分かり、すなわち媒体
36、37は光の伝播方向に対して正確に直角ではない。本発明のこの態様は、
図1から8に表す態様のようにプロジェクター14またはその光学中心軸39が、撮像領域2で0°より大きい角度βに傾けられた場合、特に光学中心軸39がカメラ32の光学中心軸40に対して直角に向けられていない場合に有利である。カメラ32が位置する撮像領域2と中央領域5との間の角度をつけた移行領域で、プロジェクター14の配置は、このようにして撮像領域2を比較的短く維持することができ、これによりハンドピース1の取り扱いが有意に改善するため特に有利である。プロジェクター14を傾けることにより生じる対象物10上へ投影されるパターンのぼやけは、媒体36、37を傾けることにより補正できる。