(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912148
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】自動車内のブロックヒーターの存在を検出するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F01P 11/20 20060101AFI20160414BHJP
F01P 11/16 20060101ALI20160414BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
F01P11/20 A
F01P11/16 E
F02D45/00 310B
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-105002(P2014-105002)
(22)【出願日】2014年5月21日
(62)【分割の表示】特願2011-190663(P2011-190663)の分割
【原出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2014-148978(P2014-148978A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】12/911,669
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】アシム マンチャンダ
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−298058(JP,A)
【文献】
特開2000−130242(JP,A)
【文献】
特開2007−192045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00−11/20
F02D 43/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン機能不良を検出する方法であって、
エンジン冷却液温度センサを使用して、エンジン冷却液の現在の温度に対応するエンジン冷却液温度データを検出し、
前記現在の温度が最大温度よりも大きくなったときに、エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき最大温度を該現在の温度に更新し、
前記最大温度が更新されたときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき最小温度を前記最大温度に更新し、
前記最大温度が更新されることなく、前記最小温度が前記現在の温度よりも大きくなったときに、前記エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき前記最小温度を該現在の温度に更新し、
前記エンジン制御ユニットを使用して、前記最大温度と前記最小温度との温度差を判定し、
前記エンジン制御ユニットを使用して、所定時間経過時あるいは所定時間経過してから後の前記温度差を用いてブロックヒーターの存在を判定し、
前記ブロックヒーターが存在しないと判定されたときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、エンジン機能不良を検出し、
前記ブロックヒーターが存在すると判定されたときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、前記エンジン機能不良の検出をマスキングすることを含む、エンジン機能不良を検出する方法。
【請求項2】
前記エンジン制御ユニットを使用して、前記温度差を用いてブロックヒーターの存在を判定することは、前記温度差を所定の温度閾値と比較し、前記温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、前記ブロックヒーターが存在すると判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の温度閾値はほぼ1.25℃〜3.125℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンジン冷却液温度データは、エンジン始動からの温度データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロックヒーターが存在すると判定されたときに、前記エンジン制御ユニットを使用して、前記エンジン機能不良の検出をマスキングすることは、診断トラブル・コードの生成をマスキングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジン冷却液温度データの初期エンジン冷却液温度データは、使用者がエンジンを始動させるように指示する時の温度と、前記エンジンの始動時の温度との平均である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジン制御ユニットを使用して前記最大温度を更新する前に、前記最大温度を初期化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エンジン制御ユニットを使用して前記最小温度を更新する前に、前記最小温度を初期化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エンジン制御ユニットを使用して、前記温度差を用いて前記ブロックヒータの存在を判定することは、所定の時間が経過したときに実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
自動車内のブロックヒーターの存在を判定する方法であって、
エンジン冷却液温度センサを使用して、エンジン冷却液の現在の温度に対応するエンジン冷却液温度データを検出し、
前記現在の温度が最大温度よりも大きくなったときに、エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき最大温度を該現在の温度に更新し、
前記最大温度が更新されたときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき最小温度を前記最大温度に更新し、
前記最大温度が更新されることなく、前記最小温度が前記現在の温度よりも大きくなったときに、前記エンジン制御ユニットを使用して、設定されるべき前記最小温度を該現在の温度に更新し、
前記エンジン制御ユニットを使用して、所定時間経過時あるいは所定時間経過してから後の前記最大温度と前記最小温度との温度差を判定し、
前記エンジン制御ユニットを使用して、前記温度差を所定の温度閾値と比較し、
前記温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、前記ブロックヒーターが存在すると判定することを含む、自動車内のブロックヒーターの存在を判定する方法。
【請求項11】
前記所定の温度閾値はほぼ1.25℃〜3.125℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エンジン冷却液温度データの初期エンジン冷却液温度データは、使用者がエンジンを始動させるように指示する時の温度と、前記エンジンの始動時の温度との平均である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エンジン制御ユニットを使用して、前記最大温度を更新する前に前記最大温度を初期化することと、前記最小温度を更新する前に前記最小温度を初期化することとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、前記エンジン制御ユニットを使用して、前記ブロックヒーターが存在すると判定することは、所定の時間が経過したときに実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
自動車であって、
エンジンブロックを含むエンジンと、
前記エンジンブロックに接続されてエンジン冷却液を輸送するように形成されたラジエータ・ホースと、
前記エンジン冷却液の通路内に配置されて、前記エンジン冷却液の現在の温度に対応するエンジン冷却液温度データを検出するように形成されたエンジン冷却液温度センサと、
前記現在の温度が最大温度よりも大きくなったときに、設定されるべき最大温度を該現在の温度に更新し、
前記最大温度が更新されたときには、設定されるべき最小温度を前記最大温度に更新し、
前記最大温度が更新されることなく、前記最小温度が前記現在の温度よりも大きくなったときに、設定されるべき前記最小温度を該現在の温度に更新し、
所定時間経過時あるいは所定時間経過してから後の前記最大温度と前記最小温度との温度差を判定し、
前記温度差を所定の温度閾値と比較し、
前記温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、ブロックヒーターが存在すると判定するように形成されて、前記エンジン冷却液温度センサに接続されたエンジン制御ユニットとを含む、自動車。
【請求項16】
前記所定の温度閾値はほぼ1.25℃〜3.125℃である、請求項15に記載の自動車。
【請求項17】
前記エンジン冷却液温度データの初期エンジン冷却液温度データは、使用者がエンジンを始動させるように指示する時の温度と、前記エンジンの始動時の温度との平均である、請求項15に記載の自動車。
【請求項18】
前記エンジン制御ユニットはさらに、
前記最大温度を更新する前に、前記エンジン冷却液温度データを使用して前記最大温度を初期化するように形成されている、請求項15に記載の自動車。
【請求項19】
前記エンジン制御ユニットはさらに、
前記最小温度を更新する前に、前記最小温度を初期化するように形成されている、請求項18に記載の自動車。
【請求項20】
前記エンジン制御ユニットはさらに、
所定の時間が経過したときに、前記温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、前記ブロックヒーターが存在すると判定するように形成されている、請求項18に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内のブロックヒーターの存在を検出するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベンショナルな自動車の場合、ブロックヒーターは、地理的低温地域でエンジンブロックを加熱するために使用される付属品である。エンジンブロックを加熱すると、エンジンを始動させやすくなる。しかし、ブロックヒーターを備えたエンジンブロックの加熱は一般に、冷却液のエンジン冷却液温度(「ECT」)を、エンジン内の燃焼のために使用される吸込空気の吸込空気温度(「IAT」)よりも著しく高く上昇させる。このことはIATとECTとの温度差を招く。
【0003】
この温度差は、エンジン制御ユニット(ECU)による機能不良の誤検出を引き起こすおそれがある。通常の条件下、すなわちブロックヒーターを使用しない条件下では、ECTとIATとは、
図1に示されているようなエンジン・オフを伴う7時間という比較的長いソーク時間(soak time、均熱時間)後に、互いに向かって標準化する。このような特性を活用して、ECT−IATが7時間のソーク後に指定範囲内にないときには機能不良が検出される。
図1では、曲線134がECTを表すのに対して、曲線136はIATを表す。図から明らかなように、ECTとIATとは、矢印164によって示された7時間のソーク時間後に互いに引きつけられる。しかしブロックヒーターを使用すると、ECTとIATとは互いに離される。従って、診断トラブル・コード(エンジン機能不良を示す)の検出を防止するために、ブロックヒーターの存在を検出しなければならない。
【0004】
エンジン機能不良を判定するためのコンベンショナルな方法は、所定の時間後のECTの温度差をチェックすることにより、ブロックヒーターの存在を判定しようとするものであった。例えば、
図2から判るように、ブロックヒーターが存在するかどうかを判定する1つのコンベンショナルな方法は、エンジン始動時とその後の何らかの時点とのECTの温度差を求めることである。
図2では、曲線138は第1の自動車のECTを表し、曲線140は第2の自動車のECTを表す。双方の状況において10秒後に明らかように、エンジン始動時と10秒経過後とには温度差がある。温度差は例えば3℃と十分に大きいので、このことは、ブロックヒーターがあることを指示する。コンベンショナルな方法は、ブロックヒーターに対するECTセンサの相対位置に依存する。
【0005】
しかしながら、これらのコンベンショナルな方法は、自動車の形態及び/又はブロックヒーターの配置如何では不十分であるおそれがある。例えば、いくつかの自動車の場合、ECTセンサの配置によっては、ECTは実際には上昇してから低下し、次いで再び上昇する。このことは例えば、ブロックヒーターがエンジンを冷却するための冷却液の温度を上昇させるときに発生し得る。このような冷却液は、エンジンがオフのときにエンジンの近くで淀んでいるものである。エンジンが始動されると、冷却液はエンジン及びラジエータ・ホースを通って循環し、そしてECTセンサは最初は、エンジンの近くで淀んでいる冷却液と接触する。この冷却液はブロックヒーターによって加熱されており、その結果ECTを高くする。冷却液がさらに循環するのに伴って、ブロックヒーターによって加熱されていない冷却液がECTセンサと接触し、ECTセンサによって検出されるECTを低下させる。エンジンが完全運転状態になるのに伴って、ECTは再び上昇する。
【0006】
このことは例えば
図3から明らかであり、曲線142は第3の自動車のECTを表し、そして曲線144は第4の自動車のECTを表す。曲線146はブロックヒーターなしの自動車を表す。このような状況において、10秒後、エンジン始動時のECTと10秒経過後のECTとの温度差は小さく、例えば1℃である。コンベンショナルな方法を用いると、これは、ブロックヒーターが存在しないことを指示することになり、その結果、エンジン機能不良の誤指示を招くおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って自動車内のブロックヒーターの存在を検出する方法及びシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車内のブロックヒーターの存在を検出するための方法及びシステムに関する。1実施態様の場合、本発明は、エンジンと、ラジエータ、エンジン冷却液温度(「ECT」)センサ、吸込空気温度(「IAT」)センサ、及び/又はエンジン制御ユニット(ECU)を含む自動車を含む。ラジエータは、エンジンを冷却するためにエンジンに冷却液を供給する。エンジン冷却システムはまたファンを含んでおり、このファンは冷却液を冷却するために、ラジエータ全体にわたって空気を強制的に送る。ECTセンサは冷却液の通路内に配置されているのに対して、IATセンサは、燃焼を容易にするためにエンジンに供給される吸込空気の通路内に配置されている。ECTセンサはECTデータを判定するのに対して、IATセンサは吸込空気データを判定する。
【0009】
ECUは、第1の時間におけるエンジン冷却液温度データの現在最大温度と、第1の時間後の第2の時間におけるエンジン冷却液温度データの現在最小温度との温度差を判定する。現在最大温度後の所定の時間における現在最小温度の検出は、ECTが最初は上昇し、そしてブロックヒーターの存在の正確な検出をまだ維持するのを可能にする。
1実施態様では、エンジン冷却液温度データの初期エンジン冷却液温度データは、使用者がエンジンを始動させるように指示する時の温度と、エンジンの始動時の温度との平均である。
【0010】
温度差が所定の温度閾値よりも大きいときには、ECUはブロックヒーターが存在すると判定する。そうでない場合は、ECUはブロックヒーターが存在しないと判定する。ブロックヒーターが存在しないときには、ECUは、ECTとIATとの温度差によって引き起こされる機能不良を検出する。しかし、ブロックヒーターが存在する時には、ECUはその機能不良の検出をマスキング(遮蔽)する。
【0011】
1実施態様の場合、本発明は、エンジン機能不良を検出する方法であって、エンジン冷却液温度センサを使用して、エンジン冷却液温度データを検出し、エンジン制御ユニットを使用して、第1の時間におけるエンジン冷却液温度データの最大温度を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、該第1の時間後の第2の時間におけるエンジン冷却液温度データの最小温度を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、該最大温度と該最小温度との温度差を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、該温度差を用いてブロックヒーターの存在を判定し、該ブロックヒーターが存在しないと判定されたときには、該エンジン制御ユニットを使用して、エンジン機能不良を検出し、そして該ブロックヒーターが存在すると判定されたときには、該エンジン制御ユニットを使用して、該エンジン機能不良の検出をマスキングすることを含むエンジン機能不良を検出する方法である。
【0012】
別の実施態様の場合、本発明は、自動車内のブロックヒーターの存在を判定する方法であって、エンジン冷却液温度センサを使用して、エンジン冷却液温度データを検出し、エンジン制御ユニットを使用して、第1の時間におけるエンジン冷却液温度データの最大温度を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、該第1の時間後の第2の時間におけるエンジン冷却液温度データの最小温度を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、該最大温度と該最小温度との温度差を判定し、該エンジン制御ユニットを使用して、温度差を所定の温度閾値と比較し、そして該温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、該エンジン制御ユニットを使用して、該ブロックヒーターが存在すると判定することを含む、自動車内のブロックヒーターの存在を判定する方法である。
【0013】
さらに別の実施態様の場合、本発明は、自動車であって、エンジンブロックを含むエンジンと、該エンジンブロックに接続されてエンジン冷却液を輸送するように形成されたラジエータ・ホースと、該エンジン冷却液の通路内に配置されてエンジン冷却液温度データを検出するように形成されたエンジン冷却液温度センサと、該エンジン冷却液温度センサに接続されたエンジン制御ユニットとを含む自動車である。エンジン制御ユニットは、第1の時間におけるエンジン冷却液温度データの最大温度を判定し、該第1の時間後の第2の時間におけるエンジン冷却液温度データの最小温度を判定し、該最大温度と該最小温度との温度差を判定し、該温度差を所定の温度閾値と比較し、そして該温度差が所定の温度閾値よりも高いときには、該ブロックヒーターが存在すると判定するように形成することができる。
【0014】
本発明の特徴、障害、及び利点は、図面と併せて下記詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】自動車のエンジン冷却液温度及び吸込空気温度を示すグラフである。
【
図2】複数の自動車のエンジン冷却液温度を示すグラフである。
【
図3】ブロックヒーターが存在する自動車、そしてブロックヒーターが存在しない自動車のエンジン冷却液温度を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施態様に基づくブロックヒーターを含む自動車を示す図である。
【
図5】本発明の実施態様に基づくエンジンを示す図である。
【
図6】本発明の実施態様に基づく、ブロックヒーターが存在する自動車、そしてブロックヒーターが存在しない自動車のエンジン冷却液温度を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施態様に基づく、現在最大温度と現在最小温度との温度差、及び所定の温度閾値を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施態様に基づく、ブロックヒーターが存在する自動車、そしてブロックヒーターが存在しない自動車のエンジン冷却液温度、及びそれぞれの温度差を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施態様に基づく、複数モデルの自動車のエンジン冷却液温度と吸込空気温度との差、及び温度差を示す表である。
【
図10】本発明の実施態様に基づくプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の種々の特徴の実施態様を実施する装置、システム及び方法を、図面を参照しながら以下に説明する。図面及び関連の説明は、本発明のいくつかの実施態様を示すために提供するのであって、本発明の範囲を限定するためではない。図面全体にわたって、符号を再使用することにより、参照された要素間の対応関係を示す。
【0017】
1実施態様の場合、本発明は
図4に示されているような自動車100を含む。自動車100は、例えばエンジンベイ102を含む。エンジンベイ102の内部には、エンジン104、ラジエータ106、エンジン冷却液温度(「ECT」)センサ114、吸込空気温度(「IAT」)センサ116、及び/又はエンジン制御ユニット(「ECU」)118が配置されている。加えてエンジンベイ102内には、ブロックヒーター122を使用及び/又は配置することもできる。
【0018】
ラジエータ106は例えばラジエータ・ホース110及び/又はファン112を含んでいる。ラジエータ・ホース110は例えば上側ラジエータ・ホース126及び/又は下側ラジエータ・ホース124を含むことができる。ファン112を空気108を引き込むために回転する。空気は、上側ラジエータ・ホース126及び/又は下側ラジエータ・ホース124を貫流する冷却液110を冷却するために使用される。冷却液は、矢印120によって概略的に示すように、エンジン104及び/又はエンジン104の近くの構成部分を冷却するために使用される。
【0019】
エンジン104は例えばエンジンブロックを含む。エンジン104は、エンジン104の始動を容易にするために、ブロックヒーター122によって加熱することができる。エンジン104は、冷却液によって冷却することもできる。より具体的には、エンジンブロックは冷却液によって冷却することもできる。
図5から明らかなように、エンジンブロック128が示されている。エンジンブロック128は、例えば冷却液ポンプ130を含むことができる。加えて、1実施態様の場合、ECTセンサ114は、エンジンブロック128上の冷却液の通路内に配置することができる。
【0020】
図4に戻ると、ECTセンサ114は、冷却液の通路内に配置されていて、例えばエンジン冷却液温度データを検出するために使用することができる。ECTデータは、例えば冷却液の温度を示す。IATセンサ116は、吸込空気システムから引き込まれた吸込空気の通路内に配置されている。吸込空気は、エンジン内の燃焼を容易にするためにエンジンに供給される。IATセンサ116は、例えば吸込空気の温度を指示するIATデータを検出する。
【0021】
ブロックヒーター122はエンジン104に隣接して配置することができ、例えばエンジン104を加熱するために使用することができる。しかし、エンジン104の加熱中に、ブロックヒーター122は、エンジン104に隣接する冷却液を加熱することもあり得る。その結果、例えば、冷却液が循環し始めたとき(冷却液ポンプ130がエンジン始動によって作動されたとき)に、ECTは徐々に低下する前に、最初にECTの上昇が生じることがある。
【0022】
ECU118は、ECTデータ及び/又はIATデータを受信し、そして診断トラブル・コード(「DTC」)が存在するかどうかを判定するために、ECTデータ及び/又はIATデータを分析することができる。DTCは、例えばエンジン機能不良が生じているか又は生じるらしいことを指示することができる。DTCの2つの事実(instances)がある場合には、エンジン機能不良が発生しており、そして機能不良インジケータ・ランプ(「MIL」)又はチェック・エンジン・ライトを使用者に見えるように作動させることができる。1実施態様の場合、ECU118は、ブロックヒーター122の存在を判定し、そしてブロックヒーター122が存在すると判定されたときには、エンジン機能不良の検出をマスキングすることができる。
【0023】
例えば、ECU118は所定の時間にわたるECTデータの最大温度と、所定の時間にわたるECTデータの最小温度とを判定し、そしてECTデータの最大温度とECTデータの最小温度との温度差を判定することができる。温度差は、所定の温度閾値と比較することができる。温度差が所定の温度閾値よりも大きいときには、ブロックヒーター122が存在する。しかし、温度差が所定の温度閾値よりも大きくないときには、ブロックヒーター122は存在しない。1実施態様の場合、所定の温度閾値は、ほぼ1.25℃〜3.125℃の値を有することができる。しかし言うまでもなく、所定の温度閾値は、政府規制及び/又は製造規制の要件に応じた任意の値で設定することができる。
【0024】
最大温度と最小温度とを判定するために、現在最大温度と現在最小温度とを判定することができる。エンジン104の始動時からのECTとなるように、現在最大温度を初期化する。現在最大温度をECTセンサからの現在温度とコンスタントに比較することにより、現在温度が現在最大温度よりも高いかどうかを判定する。現在温度が現在最大温度よりも高い場合には、現在最大温度を現在温度となるように更新する。現在最大温度が更新されるときにはいつでも、現在最小温度も更新される。このことは、現在最大温度と、現在最大温度が生じた後の時間に生じる現在最小温度との温度差が判定されるのを可能にする。現在最大温度の後の現在最小温度を判定することにより、ブロックヒーターの存在を判定する際に及ぼされるECTの初期上昇の影響が低減される。次いで、温度差を所定の温度閾値と比較することにより、ブロックヒーターが使用されているかどうかを判定する。
【0025】
このことは、例えば
図6及び
図7から明らかである。
図6では、曲線148が、ブロックヒーター122を使用している自動車100のECTを表し、曲線150は、ブロックヒーター122を使用していない自動車100のECTを表す。図から判るように、ブロックヒーター122を使用している自動車100のECTは、時間t1まで上昇し、次いで時間t2まで低下し、その後上昇する。しかしブロックヒーター122を使用していない自動車の場合、温度は時間t1において上昇し始める。本発明の場合、ECU118は、エンジン始動時から時間t3までECTを分析する。ECU118は、エンジンが始動されると、現在最大温度を初期化することができる。現在最大温度をECTセンサ114からの現在温度とコンスタントに比較することにより、現在温度が現在最大温度よりも高いかどうかを判定する。こうして、ECTが上昇するのに伴って、現在最大温度の値も時間t1まで上昇する。ECTが時間t1後に低下すると、現在最大温度は、現在温度よりも高いので変化しないままである。
【0026】
現在最小温度を判定するために、ECU118は先ず、エンジンが始動されたときに、現在最小温度を現在温度に初期化する。現在最大温度を現在温度に更新したときにはいつでも、現在最小温度も、現在最大温度と同じ値を有するように更新される。しかし、現在最大温度が更新されないとき(すなわち、現在温度が現在最大温度よりも低いことを示す)には、ECU118は、現在最小温度を現在温度と比較する。現在温度が現在最小温度よりも低い場合には、現在最小温度を現在温度に更新する。
【0027】
例えば、時間t1まで、現在最小温度は現在最大温度となるようにコンスタントに更新される。それというのも現在温度は徐々に上昇するからである。しかし、時間t1と時間t2との間では、現在最小温度は、現在温度が低下するのに伴って現在温度となるように更新される。しかし時間t2後には、現在温度は現在最小温度を下回ることはなく、ひいては現在最小温度は、現在温度となるように更新されることはない。従って、現在最小温度は、現在最大温度の後の所定の時間に生じる。時間t3における値が、ECTセンサ114からのECTデータに対応する最大温度及び最小温度と考えられるので、時間t3において、ECU118は現在最大温度及び現在最小温度の更新を終える。
【0028】
現在最小温度と現在最大温度との温度差は、
図7の曲線152で見られるように示すことができる。時間t3において温度差が線154によって表した所定の閾値よりも大きい場合、ECU118は、ブロックヒーター122が存在すると判定する。そうでない場合には、ECU118は、ブロックヒーター122が存在しないと判定する。
図7から明らかなように、温度差は時間t1の前ではほぼ0℃である。なぜならば、現在温度が上昇しているときには、現在最小温度は現在最大温度となるように更新されるからである。同様に、時間t3の後、現在最小温度及び現在最大温度はリセットされてよい。
【0029】
図8は、自動車から収集した実際のデータを示している。曲線154は、ブロックヒーターを使用しているときの自動車のECTを表しているのに対して、曲線162は、ブロックヒーターを使用していないときの自動車のECTを表している。曲線158は、ブロックヒーターを使用しているときの自動車に対応する現在最大温度と現在最小温度との温度差を表し、曲線160は、ブロックヒーターを使用していないときの自動車に対応する現在最大温度と現在最小温度との温度差を表している。曲線156は所定の温度閾値を表している。
【0030】
図8から明らかなように、曲線154のECTが低下し始めた後、曲線158は曲線156と交差する。しかし、曲線160は曲線156と交差することはない。なぜならば、現在最小温度は現在最大温度になるように連続的に更新され、その結果、温度差が0℃となるからである。このように、ECU118は、自動車がブロックヒーターを使用しているときには、より正確に予測することができる。
【0031】
1実施態様の場合、本発明は
図10に示されているようなプロセスである。ステップS1002において、エンジン冷却液温度データを検出する。例えばECTセンサ144がECTデータを検出することができる。ステップS1004において、ECTデータの最大温度を第1の時間において判定する。例えば、ECU118が、時間t1におけるECTデータの現在最大温度を判定する。ステップS1006において、第1の時間後の第2の時間におけるECTデータの最小温度を判定する。例えば、ECU118が、時間t1の後の時間t2におけるECTの最小温度を判定する。ステップS1008において、最大温度と最小温度との温度差を判定する。例えば、ECU118が、最大温度と最小温度との温度差を計算する。
【0032】
ステップS1010において、ブロックヒーターの存在を判定する。例えば、ECU118が、温度差を所定の温度閾値と比較することができる。温度差が所定の温度閾値よりも大きいときには、ECU118は、ブロックヒーターが存在すると判定する。温度差が所定の温度閾値よりも大きくないときには、ECU118は、ブロックヒーターが存在しないと判定する。
【0033】
ステップS1012において、ブロックヒーターが存在しないと判定されたときには、エンジン機能不良が検出される。例えば、ブロックヒーターが存在しないときにECU118がエンジン機能不良を検出すると、DTCが生成される。2つ又は3つ以上のDTCが生成されたときには、ECU118は、MIL又はチェック・エンジン・ライトを制御して、使用者に見えるように作動させることができる。ステップS1014において、ブロックヒーターが存在すると判定されると、エンジン機能不良の検出がマスキングされる。例えば、ブロックヒーターが存在するときにECU118がエンジン機能不良を検出すると、生成されたいかなるDTCもマスキングされ、且つ/又は、DTCが生成されるのが防止される。
【0034】
試験において収集された他のデータを
図9の表に見ることもできる。図から判るように、ECTとIATとの差、及び所定の時間Δtにおける現在最大温度と現在最小温度との温度差が、自動車モデルA、モデルB、モデルC、モデルD、及びモデルEに関して示されている。
【0035】
作業中、使用者は自動車100の使用を終えた後でブロックヒーター122を作動させることができる。このことは一般に例えば、地理的低温地域では一晩にわたって行うことができる。長期にわたるソーク時間後、例えば7時間後、使用者は自動車110を使用したいと思うことがある。こうして、使用者はエンジン104を始動させる。エンジン104が始動されると、ECU118は現在最大温度及び/又は現在最小温度を現在温度となるように初期化することができる。
【0036】
現在温度が現在最大温度よりも高い場合には、ECU118は、現在最大温度を現在温度となるように更新する。現在最大温度が更新されるときにはいつでも、ECU118は、現在最小温度を現在最大温度となるように更新する。しかし、現在温度が現在最小温度よりも低い場合には、ECU118は、現在最小温度を現在温度となるように更新する。所定の時間後、ECU118は、現在最大温度と現在最小温度との温度差を計算し、そして温度差を所定の温度閾値と比較する。温度差が所定の温度閾値よりも大きい場合には、ECU118は、ブロックヒーターが存在すると判定する。そうでない場合、つまり温度差が所定の温度閾値よりも小さい場合には、ECU118は、ブロックヒーターが存在しないと判定する。
【0037】
上記例では、ブロックヒーターの存在を判定するためにECTだけが用いられているが、ECTに加えてIATを用いることもできる。
【0038】
当業者には明らかなように、本明細書中に開示した例との関連において記載した種々の論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズム・ステップは、電子ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、又はこれら双方の組み合わせとして実行してよい。さらに、本発明は、プロセッサ又はコンピュータに或る特定の機能を果たさせる、又は実行させる機械可読媒体上で具体化することもできる。
【0039】
ハードウェア及びソフトウェアのこのような互換性を明示するために、種々の構成部分、ブロック、モジュール、回路、及びステップの例をその機能性の面から概略的に上述した。このような機能をハードウェアとして実行するか、又はソフトウェアとして実行するかは、特定の用途、及びシステム全体に課せられる設計制約に依存する。当業者ならば、それぞれの特定の用途に対して種々様々な方法で上記機能を実行することができるが、しかしこのような実行決定を、開示された装置及び方法の範囲からの逸脱をもたらすものとして解釈してはならない。
【0040】
本明細書中に開示した例との関連において記載した種々の論理ブロック、ユニット、モジュール、及び回路の例は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)又はその他のプログラム可能論理回路、個別ゲート又はトランジスタ論理回路、個別ハードウェア構成部分、又は本明細書中に記載された機能を果たすように設計されたこれらの任意の組み合わせを用いて実行又は実施されてよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、しかしその代わりに、プロセッサは、任意のコンベンショナルなプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又は状態機械であってもよい。プロセッサは、コンピュータ・デバイスの組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサとDSPコアとの併用、又は任意のその他の形態として実行してもよい。
【0041】
本明細書中に開示された例との関連において記載された方法又はアルゴリズムのステップは、ハードウェア内で直接に、又はプロセッサによって実行されたソフトウェア・モジュール内で、又はこれら2つの組み合わせで具体化されてよい。方法又はアルゴリズムのステップは、例において提供されたステップとは別の順序で実施してもよい。ソフトウェア・モジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブル・ディスク、CD−ROM、又は当業者に知られたストレージ媒体の任意の他の形態内に存在してよい。プロセッサに模範的なストレージ媒体を接続することにより、プロセッサがストレージ媒体から情報を読み出し、そしてストレージ媒体に情報を書き込むことができる。或いは、ストレージ媒体は、プロセッサと一体的であってもよい。プロセッサ及びストレージ媒体は特定用途向け集積回路(ASIC)内に存在してよい。ASICは無線モデム内に存在してよい。或いは、プロセッサ及びストレージ媒体は、無線モデム内に個別構成部分として存在してよい。
【0042】
開示された例の前記説明は、当業者が開示された方法及び装置を形成又は利用するのを可能にするために提供するものである。これらの例に対する種々の改変が当業者には容易に明らかであり、本明細書中に定義した原理を、開示された方法及び装置の思想又は範囲を逸脱することなしに、他の例に適用することもできる。上記実施態様はあらゆる点で例示的なもの、そして非限定的なものとしてのみ考えられ、従って本発明の範囲は、前記説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等な範囲及び意味に入る全ての変更は、特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0043】
102 エンジンベイ
104 エンジン
114 エンジン冷却液温度センサ
118 エンジン制御ユニット
122 ブロックヒーター