(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブ本体は前記チップ保持体に固定されたスライドシャフト保持体を有し、前記スライドシャフト保持体に対し前記スライドシャフトが固定されている、ことを特徴とする請求項1記載の発電出力測定用治具。
前記ばねは前記スライドシャフトに被挿され、前記スライドシャフト保持体と前記スライドブロックとの間に前記ばねの前記付勢力が作用するようにしたことを特徴とする請求項1又は5記載の発電出力測定用治具。
前記ばねは前記チップ保持体に被挿され、前記チップ保持体と前記スライドブロックとの間に前記ばねの前記付勢力が作用するようにしたことを特徴とする請求項1又は5記載の発電出力測定用治具。
前記ばねとして2つのばねを有し、1つのばねは前記スライドシャフトに被挿され、もう一つのばねは前記チップ保持体に被挿され、前記チップ保持体と前記スライドブロックとの間に前記2つのばねの2つの付勢力が作用するようにしたことを特徴とする請求項1又は5記載の発電出力測定用治具。
前記スライドシャフト保持体に前記スライドシャフトの一端が取り付けられ、前記スライドシャフトの他端側の自由端が、前記スライドブロックにおけるスライドシャフト摺動案内穴に、抜き差し摺動可能に挿嵌されている、ことを特徴とする請求項3記載の発電出力測定用治具。
前記スライドシャフト摺動案内穴は、前記スライドブロックに穿けた穴の内部に挿嵌した摺動案内用ブッシュによって構成されていることを特徴とする請求項9記載の発電出力測定用治具。
前記プローブ本体には、その中央部分に、両端が、ばねストッパとブロックストッパとにより区画される保持部が設けられ、前記保持部と前記スライドブロックとが互いに摺動可能に嵌合され、これにより前記待機時には、前記ばねの付勢力により、前記プローブ本体に前記第2の方向に沿って前記スライドブロックから突出する方向へ付勢するとともに前記ブロックストッパを前記スライドガイドに当接させて前記プローブ本体に待機位置を採らせ、前記測定時には、前記端子により前記チップが押圧されることに伴う前記プローブ本体の前記スライドブロックからの後退を前記ばねの変形により許容する、ことを特徴とする請求項7記載の発電出力測定用治具。
前記プローブ本体は、前記プローブ本体と一体に動作する、前記チップ保持体と平行なスライドシャフトを有し、前記スライドシャフトを前記スライドブロックに互いに相対的に往復摺動可能に挿嵌した、ことを特徴とする請求項2乃至4の1つに記載の発電出力測定用治具。
前記スライドブロックに取り付けられ、前記プローブ本体の前記保持部よりも先端側を支持案内する、プローブガイドを有することを特徴とする請求項2乃至4の1つに記載の発電出力測定用治具。
前記スライドガイドに沿って、前記複数のプローブアセンブリ間のピッチを調節するための目盛りを刻んだピッチスケールを設けたことを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の発電出力測定用治具。
前記プローブ本体を、先端に前記チップを有する先端側保持部と、前記先端側保持部に分離可能に結合される基端側保持部と、により、測定を行う結合状態と、前記ばねを着脱可能な分離状態と、を採りうるものとして構成した、ことを特徴とする請求項1乃至14の1つに記載の発電出力測定用治具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の発電出力測定用治具を説明する。
【0013】
公知の太陽光発電システムは、太陽電池アレイ、端子箱及びパワーコンディショナ等を有している。この太陽電池アレイは複数のモジュールストリングを備え、各モジュールストリングの出力は前記端子箱内の端子台を介してパワーコンディショナ等に送られる。つまり、例えば、各モジュールストリングの正負一対の出力端が、端子台の正負一対の端子に接続されている。
【0014】
図1に、本発明の実施形態の発電出力測定用治具とそれが測定対象とする端子台TBの概略的平面図を示している。
【0015】
図1に示す端子台TBは都合8つの端子T(例えば、4組の正負の端子T)を有するものとして構成されている。各端子Tは具体的にはモジュールストリングの出力側の配線を固定するねじとして示されている。一般にこのねじにはドライバで駆動するための+/−のねじ溝TGが切られている。而して、従来の手作業による測定においては、測定装置のプローブの先端の導電性チップを例えば前記ねじ溝TGに押圧して、ねじ溝TGでプローブの先端の位置決めをしつつ電気的に接触させて測定を行っていた。図示の本発明の実施形態も、手作業で各モジュールストリングの出力測定を行おうとするものであるが、本実施形態は、一度に複数(ここでは8つ)の端子(ねじ)Tについての測定を同時に行い得るように構成したものである。
【0016】
具体的には、
図1(平面図)、
図2(正面図)、
図3(
図1のIII―III線端面図)に示される本発明の実施形態の発電出力測定用治具は、操作者が後述のハンドル3を手に持って、いわゆるプローブ(チップ12B)を前記端子Tに押し当てて測定を行うものであるが、上述のように従来と異なるところは、一度に複数のプローブを複数の端子Tに適正に押圧可能として、確実に複数の端子についての測定を可能としたところにある。後述するところからも分かるように、本実施形態によれば、図中横方向(第1の方向)に一列に並ぶ複数の端子Tに、縦方向(第2の方向)に移動させた複数のプローブを同時に的確に押圧して、複数の端子Tに対して確実に電気的な接続を採って測定することが、操作者の特別な熟練を必要とすること無く、可能である。
【0017】
より詳しくは、本実施形態は、特に
図2の正面図から分かるように、左右一対の側板1A、1Bを有する。これらの側板1A、1Bは特に
図1の平面図から分かるように、図中左右(第1の方向)に走るスライドフレーム2によって一体に固定されている。スライドフレーム2にはこの装置を把持し測定操作するためのハンドル3が取り付けられている。
【0018】
さらに、特に
図2から分かるように、スライドフレーム2の前側の側面にピッチスケール7が設けられている。このピッチスケール7は、
図1に示す前記第1の方向と交差する図中上下方向(第2の方向)に長尺なものとして構成されているプローブアセンブリ10間の左右の間隔を調整する際に使用するためのものである。
【0019】
前記側板1A、1Bは、実質的に同一の構成を有し、特に
図3から分かるように、紙面に垂直な厚さ方向に穿けられた一対の貫通孔1a,1bを有する。これらの貫通孔1a,1bには、円柱状のスライドガイド4A,4Bの両端が挿入固定されている(
図2)。この固定の手段としては各種のものを採用することができるが、この実施形態ではねじ5A,5Bを締め付けるという手段を採っている。つまりねじ5A,5Bを締め付けてスリット1a1,1b1及び貫通孔1a,1bを狭めることにより、スライドガイド4A,4Bを側板1A、1Bと一体化している。
【0020】
本実施形態の測定装置の実際の組立の手順については後述するが、
図1及び
図2から分かるように、前記一対のスライドガイド4A,4Bに対して、複数(ここでは8つ)のプローブアセンブリ10が、互いに横方向に摺動可能に嵌合されている。且つ、各プローブアセンブリ10は一対のスライドガイド4A,4Bに対してその位置を固定可能とされている。つまり、各プローブアセンブリ10は、ボルト15を緩めることにより、スライドガイド4A、4Bが被挿された状態で図中左右に移動可能とされ、且つ、ボルト15を締め付けることによりスライドガイド4Aに対しその位置を固持可能とされている。これにより、被測定対象とする
図1中の前記各端子T間のピッチに応じて、前記ピッチスケール7を参照しながら、複数のプローブアセンブリ10間のピッチを調整し、その位置を保持可能としている。
【0021】
つまり、
図1において、各プローブアセンブリ10には、図中左右に走る一対のスライドガイド4A,4Bを相対的に摺動可能に貫通させている。これにより、プローブアセンブリ10を、2本の前記スライドガイド4A,4Bが被挿された状態で左右に位置調節可能とし、前記端子台TBの端子Tの間隔に合った位置(ピッチ)を採り得るようにしている。
【0022】
次に、前記各プローブアセンブリ10の構成について説明する。前記各プローブアセンブリ10は同じ構造のものであるため、その1つについて説明する。
【0023】
図4は、
図1のIV−IV線端面図である。
図4からわかるように、このプローブアセンブリ10は、むくの矩形体状のスライドブロック(基体)11、そのスライドブロック11を貫通する長尺状のプローブ本体12及びそのプローブ本体12の先端側を支える横断面がほぼL型のプローブガイド13を備える。
【0024】
スライドブロック11の全体斜視図が
図5に示される。スライドブロック11は基本的には樹脂等の絶縁材料で作られた矩形体である。この矩形体に対し、第2の方向に走るプローブ本体12が貫通するプローブ穴11aが穿けられ、第1の方向に前記一対のスライドガイド4A,4Bが貫通する2つのガイド穴11bA,11bBが穿けられている。さらに、天面から下方に向けて上側の前記ガイド穴11bAに交差連通する固定用ねじ穴11cが切られている。この固定用ねじ穴11cにねじ込まれた固定用の前記ボルト15の下端が、前記ガイド穴11bA内を貫通する前記スライドガイド4Aの側面に当接押圧し、スライドブロック11をスライドガイド4Aに対し固定状態に位置決めする。
【0025】
図4に示すように、前記スライドブロック11の底面には前記L型のプローブガイド13が固定されている。このプローブガイド13はほぼ直角に交わる立板部13aと底板部13bを有する。立板部13aには、プローブ本体12の後述の先端側保持部12A2が貫通するプローブ案内穴13A1が穿けられている。底板部13bはスライドブロック11の底面にボルト14により固定されている。
【0026】
前記プローブ本体12は
図6(a)にその全体が示される。このプローブ本体12は、絶縁材性のチップ保持体12Aとその先端に取り付けられた導電材性のチップ12Bを有する。チップ保持体12Aは、実際は、装置としての組立の都合上等から、
図6(b)から分かるように、基端側保持部12A1と先端側保持部12A2の2つの部材を有し、両者を引き抜き可能に且つ固定状態に挿入固定して一体化したものである。これにより、チップ保持体12Aは1つの部材として把握される。よって、以下には、チップ保持体12Aを一体的な1つの部材として説明する。なお、チップ保持体12Aの前記2つの部材(12A1,12A2)の構造や組立方については追ってその都度順次説明する。
【0027】
図6(a)において、チップ保持体12Aは概略的には筒状に構成されており、その内部にはチップ12Bに繋がる所望の構成の内部配線が構成されている。その内部配線によって先端のチップ12Bで得た端子Tからの電気信号がチップ保持体12Aの基端側の配線12A3に導かれていわゆる各種測定装置に送られる。
【0028】
図6(a)から分かるように、チップ保持体12Aのやや中央部分が、2段構成ではあるが、小径に構成されて、前記スライドブロック11及び前記ばね17を貫通状態に保持する保持部12A23とされている。この保持の状態は特に
図4に示される。特に
図6(a)から分かるように、この保持部12A23の図中左右両端には、この保持部12A23を区画する、フランジ状のばねストッパ12A22とブロックストッパ12A12とが、保持部12A23より大径なものとして構成されている。ばねストッパ12A22は前記先端側保持部12A2に形成されたものであり、ブロックストッパ12A12は(特に後述する
図6(b)からも分かるように)基端側保持部12A1に構成されたものである。ブロックストッパ12A12は、後述するように、プローブ本体12がスライドブロック11から抜け出ないようにするためのものであり、この趣旨を満たせば上記以外の構成を採用することもできる。
【0029】
この保持部12A23へのばね17とスライドブロック11の取り付け状態を示す
図4において、ばね17は若干圧縮され付勢力を蓄えた状態で前記ばねストッパ12A22とスライドブロック11の間に挿入状態に取り付けられている。これにより、スライドブロック11を基準としてみれば、プローブ本体12はスライドブロック11から図中左方へ飛び出ようとする付勢力をため込んだ状態になっている。つまり、プローブ本体12はばね17の付勢力で図中左方向へ突出しようとするが、その突出は、前記ブロックストッパ12A12がスライドブロック11の図中右側面に当接することにより、阻止された状態にある。よって、プローブ本体12は、
図7から分かるように、ばね17の付勢力に抗して、このばね17を圧縮しつつ図中右方へ後退移動可能である。この動きを、実際の測定動作との関連で説明すれば以下の通りである。
【0030】
即ち、この
図4の状態において、操作者がハンドル3を持ってこのプローブアセンブリ10(スライドブロック11)を手動にて測定対象である静止系としての端子Tに押し当てる。これにより、プローブ本体12は、
図7に示すように、ばね17を圧縮しながら、スライドブロック11に対し図中右方へ後退摺動する。これによりさらに増大したばね17の付勢力で先端のチップ12Bが端子Tに押圧させられ、両者は確実に電気的に接続される。測定後は、この状態から、再び手動にて、装置全体を、つまりプローブアセンブリ10を図中右方へ移動させれば、チップ12Bは端子Tから離間し、プローブアセンブリ10はばね17の付勢力により
図4の状態に復帰する。
【0031】
即ち、上記プローブアセンブリ10は次のように動作する。つまり、操作者がハンドル3を持って装置全体を、つまりスライドブロック11を端子台TBに近づけると、それにつれてプローブ本体12のチップ12Bが端子(ねじ)Tの頭に押し当てられる。この後は、プローブ本体12はばね17を圧縮しながら、端子(ねじ)Tの頭の高さ位置に応じただけスライドブロック11内を後退する。これにより増大するばね17の付勢力により、チップ12Bは端子(ねじ)Tに確実に当接し、電気的に導通し、測定が可能となる。
【0032】
つまり、以上の動作(測定動作)は次のようにも説明される。即ち、前記ばね17により、
−待機時においては、前記ばね17の付勢力により前記チップ保持体12Aに前記スラ
イドブロック(基体)11から先端方向に突出する力が与えられた待機位置を採り、 −測定時においては、前記チップ12Bが前記端子Tに押し付けられる押圧力によりそ
の押圧力に応じた距離だけ前記チップ保持体12Aが前記ばね17の付勢力を増大さ
せながら前記基体11に対し基端方向へ後退させる測定位置を採り、
−前記押圧力の消失時には前記ばね17の付勢力により前記チップ保持体12Aを前記
待機位置に復帰する。
【0033】
以上に説明した上記の動作(測定待機動作)は1つのプローブアセンブリ10についてのものであるが、特に
図1から明らかなように、前記プローブアセンブリ10は複数備えられている。このため、1つ1つのプローブアセンブリ10は互いに独立に上記の動作を行うことになる。つまり、個々のプローブアセンブリ10はそれ自体が、隣のプローブアセンブリ10とは無関係に、自己が押し当てられる端子(ねじ)Tの頭の高さ(標高)に応じただけ後退し、チップ12Bと端子(ねじ)Tとは電気的に確実に接続する。
【0034】
つまり、本発明の実施形態の発電出力測定用治具においては、前記測定動作を前記各プローブアセンブリ10において互いに独立的に行わせることにより、複数のモジュールストリングについての発電出力測定を同時に行い得るようにした。
【0035】
而して、太陽光発電システム全体を見た場合、
図1に示したような端子台TBは複数存在している。その1つの端子台TBを見た場合、複数(ここでは8つ)の端子(ねじ)Tの頭の位置の標高位置は必ずしも完全に揃っているとは限らない。つまり、簡単に言えば、8つの端子(ねじ)Tの頭はチップ12Bに向けて出たり、引っ込んだりして高さが一様ではないこともある。つまり、チップ12B(1)―12B(8)の先端と、端子(ねじ)T(1)―T(8)の頭と、の距離D1−D8は一様とは限らない。たとえ各端子台TBの複数の端子Tがこのようなものであっても、複数の端子Tに本実施形態の測定装置を手動で押し当てた場合、8つのプローブアセンブリ10におけるプローブ本体12はそれぞれ独立的に必要な量だけスライドブロック11から後退し、全てのプローブ本体12のチップ12Bが各端子Tに適正に当接し、電気的に導通する。つまり、本実施形態によれば、複数の端子Tの頭の高さのばらつきを吸収するマージンを有するという特徴を有する。
【0036】
また、本実施形態によれば、上記のように操作対象とする端子台TBの端子Tの頭の高さが揃っていない場合だけでなく、操作者の操作に起因して複数のチップ12Bが複数の端子Tに対して正確に平行でない場合でも、正確な測定が可能である。
【0037】
即ち、
図1から分かるように、端子Tは複数のものが図中横一列に並んでいる。これらの端子Tの頭を結ぶ線をL1とする。前記測定時に手動操作により複数の前記プローブ本体12のチップ12Bが複数の端子(ねじ)Tに押し当てられるが、押し当てられる直前の複数のチップ12Bの先端を結ぶ線をL2とする。これら2つの線L1,L2が実質的に平行であれば問題はない。つまり、両者が平行であれば全てのチップ12Bが全ての端子Tに対して適正に確実に当接し、測定は正しく行われる。しかしながら、手動操作では、両者がいつも必ずしも厳密に相対的に平行になるとは限らない。しかしながら、この実施形態では、両者の平行性が崩れた場合でも、そのずれを吸収して、的確に測定を行うことができる。つまり、前述のように、本実施形態は、2つの線L1、L2の平行性のずれに、マージンを持たせていると言える。より詳しくは、
図1において、操作者がハンドル3の持ち方に起因して、2つの線L1,L2が平行でなくても、本実施形態によれば適正に測定できる。つまり、例えば、左端のチップ12B(1)と端子T(1)の距離D1が小さく、右端のチップ12B(8)と端子T(8)の距離D8が大きいように、線L2が傾いているとする。このような場合にあっても、スライドブロック11を複数の端子Tにさらに近づけると、複数のプローブ本体12のうち図中左側のプローブ本体12ほど大きく後退し、右側のプローブ本体12ほど小さく後退し、その結果、その傾きは吸収されて、8組全部のチップ12Bと端子Tのペアの適正な電気的な接触がなされる。つまり、必ずしも操作者が手動操作の際に、細心の注意を払い、両者が適正に互いに平行になるようにしなくても良い。つまり、実際の測定箇所が複数あるため、全部の測定箇所についてそのようにするには熟練度が必要なだけでなく、たとえ熟練していても、そのようにするのは測定作業の効率が著しく下がるのが避けられず、現実的ではない。しかしながら、本発明の実施形態によれば、操作者の操作に起因して、前記線L1,L2が平行ではなく傾きがあっても、その傾きは測定時に自動的に吸収されるため、つまり各プローブ本体12がそれが対応するスライドブロック11に対しての後退量が自動的に制御されるため、極めて高効率で且つ迅速且つ確実に測定作業を行うことができる。
【0038】
次に、前記プローブ本体12の構造について、つまり2つの部材としての基端側保持部12A1と先端側保持部12A2の組み付けについて説明する。
【0039】
例えば
図6(a)を参照するに、プローブ本体12においては、先端のチップ12Bは所望の内部配線によって後端の配線12A3と電気的に繋がっている。而して、前に簡単に述べたが、プローブ本体12の保持部12Aは、
図6(b)に示すところから分かるように、2つの部材(基端側保持部12A1、先端側保持部12A2)を分解、組み立て可能に一体化したものである。より詳しくは、先端側保持部12A2においては、その基端部分からわかるように、導電性のチップ12Bと電気的に繋がる配線の一部としての導電体(導電膜)12A21が筒状の先端側保持部12A2の内面に形成されて、一方のコネクタを構成している。また、基端側保持部12A1においては、前記配線12A3等に繋がる導電性ピン12A11を筒状の基端側保持部12A1の中心軸付近に位置させて、他方のコネクタを構成している。先端側保持部12A2の基端(一方のコネクタ)を基端側保持部12A1の先端(他方のコネクタ)に、
図6(a)に示すように、挿入する。これにより、両者が入れ子状に互いに係合して機械的に結合されると共に、前記導電性ピン12A11と前記導電膜12A21とが互いに電気的に接続される。これにより、導電性のチップ12Bと配線12A3とが電気的に接続される。なお、基端側保持部12A1と先端側保持部12A2との機械的且つ電気的な接続は、上記の構成に限るものではなく、他の構成も採用可能である。
【0040】
また、
図4に示すプローブアセンブリ10は、実際には以下のようにして組み立てられる。即ち、
図8に示すように、プローブ本体12を基端側保持部12A1と先端側保持部12A2とに切り離した状態とし、これらの間にスライドブロック11とばね17とを位置させる。また、先端側保持部12A2の先端側にプローブガイド13を位置させる。
【0041】
この状態で、先端側保持部12A2の基端側(一方のコネクタ)を、ばね17を貫通させ、次いでスライドブロック11のプローブ穴11aを貫通させ、その後に、基端側保持部12A1の先端側(他方のコネクタ)に接続させる。これと同時に、先端側保持部12A2をプローブガイド13のプローブ案内穴13A1に通す。これにより、
図4に示すプローブアセンブリ10が得られる。
【0042】
なお、前記チップ12Bの前記端子Tへの当接力を適当なものに設定することは、複数のチップ12Bによる測定を同時に適正に行うために非常に重要である。本発明では、この点に着目して、以下の構成を採用している。
【0043】
即ち、前記ばね17として付勢力の異なる複数のものを準備しておく。さらに、チップ12Bの端子(ねじ)Tへの当接力が適当なものとなり測定が適正に行われるように、適宜交換して用いることもできる。つまり、前記プローブ本体12は、前述のように、先端に前記チップ12Bを有する先端側保持部12A2と、前記先端側保持部に分離可能に結合される基端側保持部12A1と、により、測定を行う結合状態と、前記ばね17を交換可能な分離状態と、を採りうるものとして構成されている。
【0044】
また、ばね17を交換することなくその付勢力を調節することもできる。即ち、前記先端側保持部12A2と前記基端側保持部12A1とをねじ機構で接続し、相対的に螺回することにより両者を軸方向に接離する構成を採用することもできる。これにより、特に
図4から分かるように、ばねストッパ12A22とスライドブロック11の面との距離が変わり、前記ばね17の圧縮量が変わってばね17の付勢力が変わる。これにより、チップ12Bの端子Tへの接触圧を連続的に変化させて、適正に測定を行い得る接触圧を得ることもできる。
【0045】
さらに、前記先端側保持部12A2として、チップ12Bの形状を変えた複数のものを用意しておき、測定対象とする端子Tの先端の形状に応じたものを交換して使用することもできる。
【0046】
なお、
図2には、ピッチスケール7として汎用の物差しのように目盛りを刻んだものを示したが、これ以外の態様で目盛りしたものも用いることができる。例えば、
図9(a)は目盛りの数字の形態を変えたもの、(b)、(c)は被測定対象としての端子T間のピッチに予め合わせて目盛りを刻んだものをそれぞれ示す。
【0047】
図10は本発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態が先に説明した
図1,
図4等に示した第1の実施形態との違いは以下の通りである。第1の実施形態では、特に
図4等から分かるように、スライドガイド4A,4Bが図中上下に重なる位置関係で設けられている。これに対し、第2の実施形態では、
図10から分かるように、スライドガイド4A,4Bが、
図10において左右に並ぶ位置関係で設けられている。さらに、この第2の実施形態のスライドブロック11Aにおいては、
図4等に示される縦断面がL型のプローブガイド13に代えて、平板としてのプローブガイド13Aをスライドブロック11Aの後ろ側(基端側)に用いている。このプローブガイド13Aはスライドブロック11Aにボルト14で固定されている。このプローブガイド13Aとスライドブロック11Aに対しプローブ本体12が図中左右に摺動可能に挿嵌されている。さらに、この平板のプローブガイド13Aと前記ばねストッパ12A22との間にばね17を圧縮した状態で保持している。より詳しくは、プローブ本体12の先端側保持部12A2がスライドブロック11Aに左右に摺動可能に挿嵌され、基端側保持部12A1も前記プローブガイド13Aに左右に摺動可能に挿嵌されている。これにより、スライドブロック11A、プローブガイド13Aを被測定対象としての端子Tに向けて前進させれば、チップ12Bが端子Tに押圧し、さらに前進させれば、プローブ本体12は、
図10の静止状態から、ばね17を圧縮しながらスライドブロック11A、プローブガイド13Aに対し図中右方向に後退動する。このときの圧縮されるばね17の付勢力により、先端のチップ12Bは被測定端子に確実に圧接される。測定後、スライドブロック11A、プローブガイド13Aを端子Tから遠ざければ、チップ12Bは端子Tから離間し、プローブ本体12はばね17の付勢力により
図10の状態に復帰する。図中第1の実施形態と同等の部材には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0048】
次に、
図11乃至
図18を参照しながら第3の実施形態について説明する。前記第1及び第2の実施形態では、プローブ本体12のスライドブロック11に対する直進性は、プローブ本体12とスライドブロック11自体によって達成されていた。これに対し、第3の実施形態では、プローブ本体12のスライドブロック11Bに対する直進性を補完し向上させるために、別途新たに直進性を保持するための機構を設けたところにある。つまり、追って詳しく説明するように、例えば
図16において、プローブ本体12にスライドシャフト33をいくつかの部材を介して一体的に取り付け、このスライドシャフト33をスライドブロック11Bに対して高精度に直進摺動するようにして、プローブ本体12がスライドブロック11Bに対し高精度に直進摺動するようにしたところにある。また、スライドガイド4A,4Bは、第1の実施形態では特に
図3からわかるように図中上下に設けているが、第3の実施形態では特に
図16等から分かるように図中横並びに設けている。なお、第3の実施形態において第1の実施形態と同等の部材には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0049】
以下にこの第3の実施形態を詳細に説明する。
【0050】
本発明の第3の実施形態の全体の平面図は
図11に、正面図は
図12にそれぞれ示される。特に
図11において、一対の側板41A、41Bとそれらに挟まれるスライドフレーム42は、分解斜視図として
図14に示される。この
図14から分かるように、側板41A、41Bは、同一の構成を有し、共に、基部41aとそれから上方に突出した上部41bとを有する。一対の側板41A、41Bの上部41b、41b間に前記スライドフレーム42が貫通穴41b1、41b1を貫通するボルト(図示せず)等によって固定される。前記ボルトの頭は座ぐりによって側板41A、41B内に埋め込まれ、面一となるようにしている。このスライドフレーム42は、基部42aとそれから図中左方向に延成する棚部42bを有する。この棚部42bの上面に、第1の実施形態におけると同様の各種のピッチスケール7が載置状態に固定される。前記基部42aには、その両端から内側に長手方向に向けて、前記側板41A、41Bの貫通穴41b1、41b1に対応する位置において、ねじ穴42a1が切ってあり、前記ボルト(図示せず)等によって左右から固定される。また、
図11に示されるハンドル3はスライドフレーム42に上記と同様に埋め込み状態とするボルト(図示せず)等によって取り付けられている。
【0051】
前記側板41A、41Bと前記スライドフレーム42の組み立て状態は
図13に示される。この
図13は
図11のXIII―XIII線断面図である。この
図13においては、組み立て用のボルトや締め付け用のボルトの図示は省略してある。
【0052】
例えば
図11,
図12から分かるように、前記一対のスライドガイド4A,4Bには、第1の実施形態の
図1,
図2と同様に、複数のプローブアセンブリ10Aがスライドガイド4A,4Bに沿って図中左右に摺動可能に且つ位置調節可能に、さらに任意の位置に固定可能なように被挿されている。
【0053】
前記プローブアセンブリ10Aの詳細は
図16に示される。この第3の実施形態においては、プローブアセンブリ10Aは、プローブ本体12と、ばね17と、スライドブロック11Bの3つから構成される。つまり、プローブ本体12は、第1の実施形態におけるプローブ本体の他に、後述するスライドシャフト保持体31と、これに圧入されるスライドシャフト33とを有する。而して、このように構成されたプローブ本体12を、ばね17の付勢力により、スライドブロック11Bに対し付勢するようにしている。
【0054】
より詳しくは、前記プローブアセンブリ10Aはスライドブロック11Bを有するが、その詳細は
図15に示される。この
図15から分かるように、スライドブロック11Bは、基部11B1とそれより図中下向きに延びる延成部11B2とを有する。基部11B1には、厚さ方向に、前記一対のスライドガイド4A,4Bを摺動可能に被挿するガイド穴11bA,11bBが形成されている。前記延成部11B2には、図中左右方向つまり幅方向に、2つの貫通穴が形成されている。1つは、プローブ本体12を摺動可能に貫通状態に被挿するプローブ穴11aである。もう1つは、シャフト摺動穴11B2bである。このシャフト摺動穴11B2bの内表面には、摺動案内用の銅合金製等のスライドブッシュ35を挿入固定してスライドシャフト摺動案内穴を形成してある。これにより、スライドシャフト33が、摺動性良く且つ傾かないで高精度に出退摺動可能とされている。むろん、このスライドブッシュ35の材質はこれに限るものではなく、スライドシャフト33を傾かせずに図中左右に摺動させ得るものであれば良い。また、スライドシャフト33をスライドブロック11Bで上記と同様に摺動可能に支持するに当たり、例えば含油軸受機構やそれに準じた機構等で支持することもできる。
【0055】
図16からわかるように、このように構成したスライドブロック11Bの前記プローブ穴11aには、前記プローブ本体12が図中左右に摺動可能に挿嵌されている。且つ、前記シャフト摺動穴11B2b(スライドブッシュ35)には後述するスライドシャフト33が抜き差しされる。このスライドシャフト33にはばね17が被挿され、後述するスライドシャフト保持体31とスライドブロック11Bとの間に圧縮状態に保持されている。つまり、ばね17により、プローブ本体12はスライドブロック11Bから飛び出る方向に常時付勢力が加わっている。この付勢力が存在していても、第1の実施形態と同様に、プローブ本体12のブロックストッパ12A12がスライドブロック11Bの図中右側面に押当しているため、プローブ本体12がスライドブロック11Bから飛び出ることはない。
【0056】
また、
図16から分かるように、前記プローブ本体12の先端側(先端側保持部12A2)がスライドシャフト保持体31に貫通状態に挿嵌されている。このプローブ本体12とスライドシャフト保持体31とはねじ36,36によって一体に固定されている。また、このスライドシャフト保持体31には、前記チップ保持体12Aと平行となるように、スライドシャフト33の一端が圧入等の手段により固定されている。スライドシャフト33の他端(自由端)は、前述のように前記スライドブッシュ35内に摺動可能に挿入されている。スライドシャフト33は各デメンジョンに高精度を持たせて作製されており、例えば外径においては±0.05mmの精度で作製したものを用いている。これにより、スライドシャフト33とスライドブッシュ35の協働により、実質的にスライドシャフト33の傾きがない状態、あるいは傾きが無視できるほどに極力抑えられた状態で、相互に摺動する。これにより、プローブ本体12はスライドブロック11Bに対し傾くことなく
図16中左右に摺動する。これにより、例えば、ハンドル3を持って、本発明の実施形態における装置を、
図1に示すような端子台TBに近づければ、複数のプローブ本体12の複数のチップ12Bの全てを実質的にずれることなく、複数の端子Tに同時に的確に当接、圧接することができ、高効率な測定が可能である。
【0057】
このような測定時におけるプローブ本体12がスライドブロック11Bに対して後退した状態の一例が
図17に示される。測定時には、第1の実施形態の
図7と同様に、プローブ本体12は、ばね17を圧縮しながら、スライドブロック11Bに対し図中右方へ後退する。この時の増大する付勢力によりチップ12Bが端子Tに適正に押圧されるのは第1の実施形態と同様である。この状態からスライドブロック11B(ハンドル3)を
図17において右方へ後退させれば、ばね17の付勢力により、プローブ本体12がスライドブロック11Bに対し
図16の状態に戻るのも第1の実施形態の場合と同様である。
【0058】
図18は、プローブアセンブリ10Aの組み立て過程を説明するための各部材の分離状態を示す図である。即ち、
図16に示すプローブアセンブリ10Aは、実際には以下のようにして組み立てられる。即ち、概念的には、
図18に示すように、プローブ本体12(チップ保持体12A)を基端側保持部12A1と先端側保持部12A2とに切り離した状態とし、且つ各部材を図示のような位置関係に位置させる。この概念的な状態において、順不同ではあるが、スライドブロック11Bにスライドブッシュ35を固定状態に嵌め込み、スライドシャフト33をスライドシャフト保持体31に圧入し、スライドシャフト33にばね17を被挿し、スライドシャフト保持体31に先端側保持部12A2の先端部分を挿入してねじ36で固定する。この状態とした後、基端側保持部12A1と先端側保持部12A2とを互いに挿嵌により一体化する。これにより、
図16に示すプローブアセンブリ10Aが得られる。
【0059】
この第3の実施形態においても前記第1の実施形態におけると同様の各種の変形例が適用できるのは当然である。
【0060】
また、以上に説明した第3の実施形態では、ばね17をスライドシャフト33に被挿する構成としたが、これに代え、第1の実施形態と同様にチップ保持体12に被挿することもでき、さらにはスライドシャフト33とチップ保持体12Aの両方にそれぞればね17に被挿することもできる。ばねとしての付勢力をどうするか等の観点からいくつのばねをどこに設けるかを決めることができる。また、前記第1の実施形態と同様に付勢力の異なる複数のばね17を準備しておき、用途等に応じて適宜交換して用いることもできる。さらに、スライドシャフト保持体31をチップ保持体12Aにおける前記スライドブロック11Bよりも先端側に設けたが、スライドブロック11Bの基端側に設けることもできる。この場合には対応する部材を設計変更する必要があるのは当然である。
【0061】
図19及び
図20はそれぞれ第4の実施形態及び第5の実施形態を示す。
【0062】
図19の第4の実施形態が、
図16の第3の実施形態と異なる点は、両図の比較から分かるように、スライドシャフト33を基端側保持部12A1及び先端側保持部12A2よりも図中下側に設けた点等である。
図20の実施形態は、スライドシャフト33を2本設けた例を示す。なお、
図19,
図20の実施形態ではばね17は第1の実施形態と同様にプローブ本体12に被挿しているが、スライドシャフト33に被挿することも、複数のばね17を同時に用いることもできる。これら
図19,
図20の実施形態とも、その基本的な構造、動作は、第1の実施形態のものとほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。