(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912166
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】骨固定装置およびモジュール式システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/68 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
A61B17/58 310
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-245028(P2014-245028)
(22)【出願日】2014年12月3日
(62)【分割の表示】特願2010-210738(P2010-210738)の分割
【原出願日】2010年9月21日
(65)【公開番号】特開2015-57123(P2015-57123A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】09171416.2
(32)【優先日】2009年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/245,940
(32)【優先日】2009年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリード・マティス
【審査官】
毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/112114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨に固定するための軸(3)と頭部(4)とを有する固定要素(2)と、
頭部(4)を受け、固定要素に接続されるべきロッド(20)を受けるための受け部(5′)とを含み、前記受け部は、一体型に形成され、上端部(51)と、底端部(52)と、上端部から底端部にまで延在するボア(53)と、上端部に隣接し、ロッドを受けるための実質的にU字型のチャネル(55)と、底端部に隣接し、頭部を収容するための座部(54)とを備え、前記固定要素は上端部(51)から挿入されるものであり、前記骨固定装置はさらに、
頭部に圧力を加えることのできる圧力要素(6′)を含み、
前記固定要素は、受け部に対して回動可能であり、圧力要素を介して頭部に圧力を加えることによってある角度で固定可能であり、
圧力要素と受け部との間で作用するばね要素(59)が設けられ、ばね要素は、上端部から圧力要素を挿入することを可能にするが、圧力要素が上端部を通って外れるのを阻止し、
前記受け部(5′)の内壁がばね要素(59)を含み、
前記ばね要素が、受け部の壁における凹部(58)の内外へと弾力的に移動可能である少なくとも1つの弾性指部(59)によって形成され、
前記弾性指部(59)が、前記凹部(58)の前記底端部(52)に面する基部から前記上端部(51)の方向に延在しており、
ばね要素が、上端部を通って圧力要素が外れるのを防ぐ停止面(59a)を備える、骨固定装置。
【請求項2】
骨固定装置であって、
骨に固定するための軸(3)と頭部(4)とを有する固定要素(2)と、
頭部(4)を受け、固定要素に接続されるべきロッド(20)を受けるための受け部(5′)とを含み、前記受け部は、一体型に形成され、上端部(51)と、底端部(52)と、上端部から底端部にまで延在するボア(53)と、上端部に隣接し、ロッドを受けるための実質的にU字型のチャネル(55)と、底端部に隣接し、頭部を収容するための座部(54)とを備え、前記固定要素は上端部(51)から挿入されるものであり、前記骨固定装置はさらに、
頭部に圧力を加えることのできる圧力要素(6′)を含み、
前記固定要素は、受け部に対して回動可能であり、圧力要素を介して頭部に圧力を加えることによってある角度で固定可能であり、
圧力要素と受け部との間で作用するばね要素(59)が設けられ、ばね要素は、上端部から圧力要素を挿入することを可能にするが、圧力要素が上端部を通って外れるのを阻止し、
前記受け部(5′)の内壁がばね要素(59)を含み、
前記ばね要素が、受け部の壁における凹部(58)の内外へと弾力的に移動可能である少なくとも1つの弾性指部(59)によって形成され、
前記弾性指部(59)が、前記凹部(58)の前記底端部(52)に面する基部から前記上端部(51)の方向に延在しており、
ばね要素は傾斜面(59b)を有し、これにより、挿入中に圧力要素がばね要素を徐々に拡張させることが可能となる、骨固定装置。
【請求項3】
前記指部(59)は、その第1の端部に面するそれぞれの端部において、軸Mに対して実質的に垂直に延在する前記停止面(59a)を有し、
前記停止面(59a)の反対側には、前記上端部(51)に面する傾斜面(59b)が存在し、該傾斜面(59b)は、その傾斜面に沿って圧力要素が摺動できるような摺動面がもたらされるように、下方に傾斜しており、
その結果として、前記ばね要素(59)が挿入方向に非対称である、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項4】
ばね要素および圧力要素(6′)は別個の部品である、請求項1から3のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項5】
ばね要素(59)は、圧力要素(6′)を保持位置に移動させることができ、該保持位置において、頭部は回動が可能であり、前記保持位置にあるときに、前記圧力要素(6′)が前記少なくとも1つの弾性指部(59)を通り過ぎて、該弾性指部(59)から弾性力を受け、前記圧力要素(6′)が前記上端部(51)の方向に外れるのが前記停止面(59a)によって防止される、請求項1または3に記載の骨固定装置。
【請求項6】
ばね要素(59)がチャネルの側壁に設けられる、請求項1から5のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項7】
圧力要素は、頭部に僅かな付勢力を加える位置において予め組立てられた状態で配置される、請求項1から6のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の骨固定装置を備えるモジュール式システムであって、複数の異なるシャンクおよび/または複数の異なる頭部が設けられている、モジュール式システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨または椎骨に安定化ロッドを固定するための骨固定装置に関する。骨固定装置は、固定要素と、骨固定要素の頭部を受け、固定要素に接続されるべき安定化ロッドを受けるための受け部とを含む。固定要素は、受け部に回動可能に接続され、受け部に配置される圧力要素を介して頭部に圧力を加えることによってある角度で固定することができる。固定要素および圧力要素は、受け部の上端部から挿入されるものであり、ばね要素は、圧力要素が挿入された際に圧力要素が上端部を通って外れるのを阻止する。
【背景技術】
【0002】
US5,716,356に開示される多軸骨ねじは、ねじ要素と、ねじ要素に回動可能に接続される受け部と、ねじ要素と受け部との間の角度を固定するようねじ要素の頭部に圧力を加えるための圧力要素とを備える。受け部は、安定化ロッドを受けるためにU字型のチャネルとして設けられる。圧力要素は円筒形の凹部を備えており、これがU字型のチャネルと整合してロッドを内部に受けるようにする。U字型のチャネルと整合された位置に圧力要素を保持するために、受け部に設けられた貫通孔をかしめることによって圧力要素の位置が固定される。
【0003】
US2005/0080420A1に開示される多軸骨ねじは、ねじ要素と、受け部材と、ねじ要素を受け部材に保持するための基部部材と、ねじ要素の頭部に圧力を加える頂部要素とを備える。頂部要素は、受け部の停止面に当たることにより受け部内に頂部要素を保持するのを助けるスナップリングを備える。多軸骨ねじは、いわゆる底部装着型のねじであり、ねじ要素が底部から受け部へと挿入される。
【0004】
WO2006/116437A2に開示される脊椎固定用の骨アンカーは、多軸骨ねじの形状をしており、ねじ要素と、ハウジングと、スリーブと、ハウジングに配置され、ねじ要素の頭部に圧力を加えるためのコレットとを備える。ねじ要素の頭部は、ハウジングの底部を介して挿入される。スリーブは保持タブを備えており、これら保持タブは、ハウジングが有する向かい合った壁部分にあるスロットに嵌め込まれる。代替的には、保持タブはハウジング上に形成されてもよく、スロットはスリーブ上に形成されてもよい。
【0005】
通常、上述のタイプの多軸骨ねじは、たとえば、予め組立てられた状態で製造業者によって搬送される。この状態では、特定のねじ要素、たとえば特定の長さおよび特定の直径を有し、特定のねじ山形状をしたねじ要素、が受け部に接続されており、ねじ要素が外れないようにそこに圧力要素が配置される。外科手術の場合、必要なタイプのこのような予め組立てられた多軸骨ねじが必要な数だけ選択され、一式のインプラントとして予め準備される。
【0006】
公知の多軸骨ねじが予め組立てられた状態である場合、圧力要素は、頭部が受け部内で自由に回動することを可能にするような位置にある。いくつかの状況においては、手術中には、このような無制限の回動は望ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5,716,356
【特許文献2】US2005/0080420A1
【特許文献3】WO2006/116437A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、部品の製造後に、施術部位または他の任意の位置において外科医または他の作業者が単純な態様でこのような部品を選択して組立てることを可能にする骨固定装置を提供することである。加えて、骨固定装置により、手術中の処理が改善され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、請求項1に記載の固定装置によって達成される。さらなる展開例を従属請求項に記載する。
【0010】
骨固定装置は、ほんの僅かな部品しか備えておらず、これらの部品は単純に設計されている。これにより、製造コストが低減され、処置が簡便なものとなる。部品を製造した後や、ねじ要素を骨に挿入する前などの如何なる配達状態であっても骨固定装置を組立てることができる。したがって、多軸骨ねじは、誰でも、特に外科医または手術前または手術中に外科医を支援するいかなる術者でも組立てることができる。
【0011】
骨固定装置にはモジュール式システムを設けることもでき、このモジュール式システムにより、実際の臨床上の要件次第で必要に応じてさまざまな固定要素を好適な如何なる受け部とも組合せることが可能となる。これにより、多軸ねじの費用が削減され、在庫が減らされ、インプラントの実質的な選択肢が外科医に与えられることとなる。加えて、既存の受け部は、本発明に従った骨固定装置を形成するよう改善され得る。
【0012】
骨固定装置では、予め組立てられた状態でねじ要素の頭部に僅かな付勢力を加えて、頭部を回動させるのに必要な力をたとえば手動でも加えることができるようにする。いくつかの状況においては、これにより、手術中における骨固定装置の取扱いが改善される。骨固定装置を組立てる際に適切な圧力要素を選択することにより、頭部に対して圧力要素を付勢する度合いを選択することができるように、さまざまな圧力要素を設けることができる。
【0013】
添付の図面を用いた実施例の説明から、本発明のさらなる特徴および利点が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
本発明に関連する骨固定装置の
参考例を示す側面斜視図である。
【
図2】
図1の骨固定装置を組立てられた状態で示す側面斜視図である。
【
図3】
図2の骨固定装置をロッド軸に対して垂直な断面で示す図である。
【
図5】
参考例のスナップリングを示す斜視図である。
【
図6】
参考例のスナップリングを示す上面図である。
【
図7】
図6の線A−Aに沿った
図6のスナップリングの断面図である。
【
図8】スナップリングの変形された
参考例を示す斜視図である。
【
図9】
参考例に従った骨固定装置を組立てるステップを断面で示す図である。
【
図10】
参考例に従った骨固定装置を組立てるステップを断面で示す図である。
【
図11】
参考例に従った骨固定装置を組立てるステップを断面で示す図である。
【
図12】
本発明の実施例に従った骨固定装置を示す分解斜視図である。
【
図13】
図12の骨固定装置を組立てられた状態で示す側面斜視図である。
【
図15】
図13の
本発明の実施例に従った骨固定装置をロッド軸に対して垂直な断面で示す図である。
【
図17】
本発明の実施例に従った骨固定装置を組立てるステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図4に示される、
本発明に関連する参考例に従った骨固定装置1は骨固定要素を備える。この場合、骨固定要素は、ねじ軸3および頭部4を備えたねじ部材2である。頭部4は、たとえば球形のセグメントとして形作られている。頭部の自由端部には、工具との係合のための凹部4′が設けられている。骨固定装置は、さらに、ねじ部材2をロッド20に接続するための受け部5を備える。圧力要素6は、頭部4の上部にある受け部5に配置される。ロッド20を受け部に固定し、圧力要素に圧力を加えるために、内ねじ7の形をしたロック装置が設けられる。図示されるロック装置が例示的なものであり、他の多くの設計において、特に2部品型のロック装置として、異なるねじ山形状で実現可能であることが理解されるべきである。加えて、ばね要素8は、受け部5内に圧力要素6を保持する役割を果たすスナップリングの形状で設けられている。
【0016】
受け部5は、特に
図1〜
図3に図示のとおり一体的に形成されており、図示される例においては実質的に円筒形であり、上端部51、底端部52および対称軸Mを備えている。同軸ボア53は、上端部51から底端部52へと延在する。ボア53の直径は、底端部52に向かって小さくなっており、これにより、ねじ頭部4を収容するための座部54が設けられる。座部54の形状は、球形もしくは円錐形、または先細になっていてもよく、さらに、受け部5に対して回動できるように頭部4を収容することを可能にする他の如何なる形状であってもよい。底端部にあるボア53は、ねじ軸3を通すことができるような直径を有する。中間部分における上端部51までのボア53の直径は、ねじ要素のねじ軸および頭部4を通すことができるようなものにされている。受け部の上端部51は実質的にU字型の凹部55を有しており、これにより、ロッド20を受けるためのチャネルが形成される。ロック装置の内ねじ7と協働するよう雌ねじ56が上端部付近に設けられる。
【0017】
圧力要素6は一体型に形成される。圧力要素6は、また、実質的に円筒形の設計構造であり、上端部51から挿入して受け部5の同軸ボア53内で軸方向に移動することを可能にするような外径を有している。ねじ要素の頭部4に面する側には、頭部4のサイズに適合する球形の凹部61が設けられている。圧力要素6の下側部分について、他の任意の形状、たとえば平面または他の如何なる構造も想到可能であるが、ねじ要素の頭部に適合される表面により、頭部4に対する負荷の分散が均一になる。圧力要素6は、頭部4とは反対側に、ロッド20を受けるよう適合された円筒形の凹部62を備える。この凹部により、ロッドを受けるためのチャネルが形成される。図示される
参考例においては、凹部62の深さはロッドの直径よりも小さくなっており、このため、内ねじ7がロッド20に接触することが可能となる。同軸ボア63が圧力要素を通過すると、ねじ要素2を捩じ込むための工具へのアクセスが可能となる。
【0018】
圧力要素6はさらに、圧力要素の外面のうち円筒形の凹部62よりも下方の部分に設けられた円周溝64を備える。溝64の断面は長方形であるが、正方形であってもよく、または、丸みを帯びた角部を有していてもよい。また、別の形状であってもよく、たとえば非対称であってもよい。溝64は、スナップリング8の一部を収容することができるような直径を有する。スロット63により、スナップリングには弾力性が得られ、その直径が変化し得る。
【0019】
受け部5は対応する円周溝57を備えており、この円周溝57は、チャネル55の底部よりも下方に位置しているため、スナップリング8が挿入されると、ロッドよりも下方に位置することとなる。溝57は、スナップリング8を収容できるような大きさである。圧力要素
6における溝64と同様に、受け部における溝57は、長方形の断面を有しているか、または正方形の断面を有し得るか、または丸みを帯びた角部を有し得る。また、別の形状であってもよく、たとえば非対称であってもよい。
【0020】
図5〜
図7に関連付けてスナップリング8を説明する。
参考例に従ったスナップリングは円形である。スナップリングは、上側81と、底側82と、スナップリングを上側から底側に貫通して延在するスロット83とを備える。スナップリングの内径は、底側82の方が上側81よりも小さくなっており、スナップリングの断面は実質的に台形であり、傾斜面84が形成されている。これにより、スナップリングが、圧力要素の移動方向に非対称な形状にされる。溝57は、スナップリング8が溝に挿入され、圧力要素が挿入されることによりスナップリング8が圧力要素の溝64に係合する場合に、圧力要素が保持位置にある場合でも頭部の回動が可能となるような位置にある。スナップリングは、スナップリングが溝57に位置している場合に、圧力要素がその溝64に嵌まり込むまで差込まれるとそこで拡張可能となるような内径を有する。
【0021】
ロック装置のねじ7は、圧力要素の上方側部に押し当てられるまで受け部の雌ねじ56に捩じ込むことができ、これにより、圧力要素が頭部に押し当てられるまで下方に動かされて、頭部を受け部にロックすることができる。
【0022】
骨固定装置の部品はすべて、生体適合性のある材料、たとえばチタンまたはステンレス鋼、生体適合性のある金属合金、たとえばTi−Ni合金、または生体適合性のあるプラスチック材料、たとえばPEEKなど、から作られている。特に、スナップリング8は、生体適合性のあるプラスチック材料から作り出すことができ、このため、ばね要素を容易に製造し、かつ安全に機能させることが可能となる。
【0023】
図8は、スナップリングの変形例を示す。スナップリング8′は、円形ではなく星型である。スナップリング8′はまた、スロット83と、好ましくは星型の頂部同士の間にある谷部に位置する傾斜面84′とを備える。星型のスナップリング8′は、円形のスナップリングよりも可撓性が高くなるように作製され得る。他の形状も想到可能であり、たとえば、頂部および谷部を備えた他の波型のリングであってもよい。
【0024】
さらなる変形例においては、スナップリングの断面は、挿入方向に対称であってもよく、溝の断面は非対称であってもよい。
【0025】
図9〜
図11は、骨固定装置の組立てステップを示す。
図9に図示される第1のステップにおいては、スナップリング8は、溝57に載るまで受け部5に差込まれる。スナップリング8は、傾斜面84が受け部5の上端部51に面するような向きにされる。スナップリング8は円周方向においては、スロット83をチャネル55の長手方向軸に対して約90°の角度に位置付けることができるような向きにされる。
【0026】
次のステップにおいては、
図10に図示のとおり、ねじ要素および圧力要素が、上端部51から受け部に挿入され、これにより、ねじ軸3が第2の端部52におけるボア53を貫通することとなる。
【0027】
次いで、
図11に図示のとおり、圧力要素6および頭部4は下方に動かされ、これにより、スナップリングを通過してボア53に突出る。傾斜面84が受け部の上端部51に面しているので、ねじ頭部および圧力要素のための挿入力が低下する。ねじ頭部と、圧力要素の下方端縁とが傾斜面84に沿って摺動し、これによりスナップリングを拡張させる。
圧力要素は、スナップリング8が圧力要素の溝64に嵌まり込むまで押し下げられる。スナップリングが溝64に収容されると、圧力要素を取外す、すなわちスナップリングを溝64から取出す、のにより大きな力が必要となる。というのも、溝64,57の上方部分が止め部としての役割を果たすからである。したがって、圧力要素が脱落する可能性がなくなり、特定の工具を使わなければ第1の端部51から取外すこともできなくなる。このため、圧力要素とねじ要素とは一方向に組立てられる。
【0028】
スナップリングの位置は、予め組立てられた状態で圧力要素によって頭部に僅かな付勢力が加えられるように選択することができる。このようにして、さまざまな圧力要素、たとえば第2の圧力要素よりも高い位置に設けられた溝を備えた第1の圧力要素、を設けることができる。骨固定装置を組立てる際に、所望の量の付勢力をもたらすのに適切な圧力要素を選択することができる。
【0029】
既存の多軸ねじの圧力要素および受け部は、溝およびスナップリングで改善することができる。
【0030】
使用の際、骨固定装置を組立てた後、ねじ要素が骨に挿入される。その後、受け部が、ロッドを受取るための正確な向きになるまで回動される。いくつかの骨固定装置同士を接続するロッドが挿入され、内ねじ7が締められて圧力要素が下方に動かされることにより、頭部がかしめられてロックされる。同時にロッドが内ねじ7によって固定される。傾斜面84が第1の端部51に面しているので、圧力要素をさらに押し下げるのに必要な力が小さくなる。というのも、圧力要素の溝64の上方端縁が傾斜面84に沿って摺動するからである。
【0031】
図12〜
図17に関連付けて
本発明の実施例が示される。
本実施例は、ばね要素がスナップリングとしては設けられておらず、受け部の一部として設けられている点で
上記参考例とは異なっている。
本実施例の特徴
のうち、上記参考例の特徴と
共通する点については、その説明は繰り返さない。受け部5′はその向い合った2つの側部に長手の凹部58を備えており、そこに弾性指部59が配置されている。
【0032】
弾性指部59は、第2の端部52に面している凹部58の基部から第1の端部51の方向に延在しており、凹部58内外への方向に可撓性がある。こうして、凹部
58は、圧力要素によって外側に押圧された場合に弾性指部59を受取るための空間をもたらす。
弾性指部59は、第1の端部に面するそれぞれの端部において、軸Mに対して実質的に垂直に延在する停止面59aを備える。停止面59aの反対側には、第1の端部51に面する傾斜面59bが存在している。面59bは下方に傾斜させられており、これにより、その面に沿って圧力要素が摺動できるような摺動面がもたらされる。弾性指部の間における停止面59aの領域の内径は、圧力要素の外径よりも小さくなっている。
【0033】
圧力要素6′は、上述の
参考例の圧力要素6と同様の形状であるが、溝64は備えていない。圧力要素6′の上方側部65は弾性指部の停止面59aと接触する。
【0034】
本発明の実施例に従った骨固定装置の組立てステップは、まず、受け部5′を設け、次いで、
図17に図示のとおり、圧力要素6′を備えたねじ要素2を受け部5′の上端部51から挿入するステップである。圧力要素および頭部は、圧力要素が弾性指部59の傾斜した上面59bに接するまで下方に動かされ、これにより弾性指部がそれぞれ外側に向けて凹部58に押し込まれる。傾斜面59bが第1の端部51に面しているので、挿入力が小さくなる。圧力要素が弾性指部を通り過ぎると、これらの弾性指部が跳ね返り、圧力要素が第1の端部51の方向に外れるのが停止面59aによって防止される。したがって、圧力要素とねじ要素と受け部とは、また、一方向に組立てられる。
【0035】
実施例のさらなる変形例が想到可能である。たとえば、固定要素については、すべての種類の固定要素を用いて受け部と組合せることができる。これらの固定要素として、たとえば、さまざまな長さおよびさまざまな直径を有するねじ、挿管されたねじ、さまざまなねじ山形状をもつねじ、釘などが挙げられる。
【0036】
あらゆる種類の受け部が使用可能であり、特に、さまざまなロック要素を備えたもの、たとえば、ロッドと頭部とを別個にロックする外ねじおよび内ねじを備えた2部品型ロック装置などを備えたものが挙げられる。この場合、圧力要素は、ロッドのためのチャネルを備えており、そのチャネルの深さはロッドの直径よりも大きくなっている。外側ナット、外側キャップ、差込ロック装置などの他のロック装置も想到可能である。受け部の形状は図示される実施例には限定されない。たとえば、受け部は、ねじ部材が一方側に回動する角度をより大きくすることのできる非対称な端部分を備えていてもよい。
【0037】
圧力要素の形状はまた、図示される実施例には限定されない。たとえば、圧力要素は、頭部の側部からたとえば円錐形の先細部分を介して頭部に圧力を加えるように設計されてもよく、および/または、頭部をかしめる細穴付き部分を備えていてもよく、または他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 骨固定装置、2 ねじ部材、3 ねじ軸、4 頭部、5
,5′ 受け部、6
,6′ 圧力要素、7 内ねじ、8 ばね要素、
20 ロッド、51 第1の端部、52 第2の端部、53 ボア、55 U字型のチャネル、58 凹部、59 弾性指部(ばね要素)、59a 停止面、59b 傾斜した上面、65 上方側部。