(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の有機ELパネルについて、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、実施形態の有機ELパネルの一部分を陰極側上面から眺めた透視部分切欠平面図であり、
図2は
図1のA−A線における有機ELパネルの断面を示す部分的断面図である。
【0014】
有機ELパネルは、
図2に示すように、光取り出し側のガラスや樹脂などからなる平板状の透明な基板1上に形成された透明な陽極2(所謂、透明導電性膜)と、この上に積層された機能積層体FLBと、この上に積層された陰極9(所謂、対向電極膜)とから構成される。白色発光可能な機能積層体FLBの機能層としては、例えば、正孔注入層3/正孔輸送層4/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子輸送層7/電子注入層8の積層が挙げられる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、基板1上には、パネル平面におけるXY方向に拡がる透明な陽極2と陰極9が機能積層体FLBを挟むように形成されている。ITOなどの透明導電性膜の陽極2と対向電極膜の陰極9に挟まれ且つこれらに重なる機能積層体FLBの部分が発光部となり、基板1側から光が取り出される。
【0016】
透明な陽極2下で基板1上には、複数の長手の補助電極BLがX方向に伸長して平行にストライプ状に形成されている。すなわち、基板1上の補助電極BLは、陽極2に直接覆われ電気的に接続される形態で形成されている。補助電極BLは、陽極2に電源電力を供給する為に形成されている。陽極2の下から発光部外部へ露出する複数の補助電極BL及びその連結配線上には陰極9の端部の間に、すなわち、発光部下以外の補助電極BL上に短絡防止膜(図示せず)を設けても良い。面光源用の有機ELパネルにおいては、透明電極の抵抗率が高く広い透明電極面積を必要とする場合でも、抵抗率の低い金属材料からなる補助電極を透明電極下にストライプ状に並置することにより、補助電極BL及び透明陽極2を全体として低抵抗化を達成している。
【0017】
複数の補助電極BLを透明陽極2の下部に設けて透明陽極2の膜厚を1μmを超えるμmオーダと厚くすることにより、実施形態の有機ELパネルでは、低抵抗化と共に補助電極BLのカバレッジ効果を大きくし陽極自体の平滑化を達成している。かかる陽極の厚膜化による平滑主面は、後工程で成膜される機能積層体FLBの機能層の平滑化、膜厚ムラの軽減に貢献する。平滑化の他に陽極の厚膜化は光取り出し側の干渉低減効果にも期待できる。例えば、陽極の膜厚設定において、それぞれの取り出し発光色のピーク波長の1/4の非整数倍にできる膜厚幅の自由度が拡大できる。陽極の厚膜化のために、
図2に示すように、陽極2は、補助電極BLの膜厚t1を超える膜厚t2を有する。透明陽極2の膜厚は透明陽極2の透過率を維持しかつパネル特性を確保するために1μm〜5μmであることが好ましい。
【0018】
陽極2は、
図2に示すように、機能積層体FLBとの界面に平滑主面2Aと基板1の主面上の陽極2の縁部2B(最縁端)に向けて膜厚が漸次減少するテーパ側面2Cとを有するように成膜される。ここで、陽極のパタニングは通常フォトリソグラフィプロセスにて行われ、上記プロセスで作製したITO陽極のエッジは不安定であるため絶縁膜でカバーする必要がある。この絶縁膜工程がパネルのコストアップ、歩留まり低下の要因の一つになっている。この問題を解決するため陽極はスクリーン印刷や無版印刷若しくは有版印刷などの湿式塗布法又は非密着若しくは密着のマスクを用いたスパッタリング法にてパタニングすることが好ましい。また、機能積層体FLBの機能層は塗布にて形成することが好ましい。陽極2のテーパ側面2C上に機能積層体FLBがされると、機能積層体FLBにもテーパ側面が形成され、後工程で形成される陰極の断線を防止することができる。よって、以上の構成により、絶縁膜を必要とすることなく照明などに適した有機ELパネルを作製することが可能になる。
【0019】
陽極2の及び縁部2Bのカバレッジを良化するため機能積層体FLBの機能層は塗布にて形成する。特に機能積層体FLBの1層目(正孔注入層3又は正孔輸送層4)は補助電極BLの膜厚より厚く塗布されることが好ましい。機能積層体FLBにもテーパ側面を厚膜にするほど陽極2の及び縁部2Bのカバレッジ性が上昇するのでリーク抑制効果が上がる。具体的には、陽極2から機能積層体FLBの発光層5までの積層膜の膜厚の合計は陽極上の異物に対する埋包性を確保するため少なくとも100nmであることが好ましい。
【0020】
本実施形態の有機ELパネルの一例は、
図2に示すように、ガラスなどの透明基板1上にて、順に、積層された陽極2/正孔注入層3/正孔輸送層4/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子輸送層7/電子注入層8/陰極9/の構成である。この積層構成の他に、図示しないが、陽極2/正孔注入層3/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子輸送層7/電子注入層8/陰極9/の正孔輸送層4を省いた構成や、図示しないが、陽極2/正孔輸送層4/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子輸送層7/電子注入層8/陰極9/の正孔注入層3を省いた構成や、図示しないが、陽極2/正孔輸送層4/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子注入層8/陰極9/の正孔注入層3、電子輸送層7を省いた構成も本発明に含まれる。上記いずれの積層構造において赤緑混合発光層5と青発光層6上記の間に拡散防止層を設ける構成も本発明に含まれる。
【0021】
有機ELパネルの機能層を成膜する手法として、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式塗布法や、スクリーン印刷、スプレイ法、インクジェット法、スピンコータ法、グラビア印刷、ロールコータ法などの湿式塗布法が知られている。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層を湿式塗布法でベタ膜として一様に成膜して、電子輸送層及び電子注入層を、それぞれ乾式塗布法でベタ膜として一様に順次成膜してもよい。また、すべての機能層を湿式塗布法でベタ膜として一様に順次成膜してもよい。
【0022】
[基板]
基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、曲げられる樹脂基板、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの合成樹脂の透明板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機ELパネルが劣化することがあるので好ましくない。よって、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などを設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0023】
なお、湿式塗布法にて透明陽極を厚膜で形成する場合、基板表面の凹凸を緩和できるので、高価なディスプレイ用研磨ガラス基板でない廉価なガラス基板も有機ELパネル基板に用いることができる。
【0024】
[陽極及び陰極]
発光層までの機能層に正孔を供給する陽極2は、通常、インジウム酸化物とスズ酸化物の複合酸化物(所謂、ITO)などにより構成される。ITOの他に、陽極2はZnO、ZnO−Al
2O
3(所謂、AZO)、In
2O
3−ZnO(所謂、IZO)、SnO
2−Sb
2O
3(所謂、ATO)、RuO
2などにより構成され得る。さらに、陽極2の透明導電性膜は、有機EL材料から得られる発光波長において少なくとも10%以上の透過率を持つ材料を選択することが好ましい。
【0025】
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
【0026】
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
【0027】
発光層までの機能層に電子を供給する陰極9の材料としては、効率良く電子注入を行う為に仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀などの適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金などの低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0028】
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0029】
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、陰極の上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、有機ELパネルの安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金などの金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0030】
[機能積層体の機能層]
[正孔注入層]
正孔注入層3は、電子受容性化合物を含有する層とすることが好ましい。
【0031】
湿式塗布法で形成する場合、正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶媒を含有する。溶媒としては、限定されるものではないが、例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(所謂、PGMEA)などの脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソールなどの芳香族エーテル、などが挙げられる。
【0032】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチルなどの芳香族エステル、などが挙げられる。
【0033】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレンなどが挙げられる。
【0034】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、などが挙げられる。その他、ジメチルスルホキシド、なども用いることができる。これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0035】
正孔輸送性化合物は、通常、有機ELパネルの正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、低分子化合物であることが好ましい。
【0036】
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン銅(所謂、CuPc)に代表されるフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボンなどが挙げられる。ここで誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
【0037】
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−エチレンジオキシチオフェンを高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(所謂、PEDOT/PSS)もまた好ましい。さらに、PEDOT/PSSのポリマーの末端をメタクリレートなどでキャップしたものであってもよい。
【0038】
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することもできる。非晶質性、可視光の透過率の点から、正孔注入層には芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0039】
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が高すぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、低すぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
【0040】
正孔注入層形成用組成物は電子受容性化合物を含有することが好ましく、また、正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の有機EL材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0041】
湿式塗布法により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、陽極上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
【0042】
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0043】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体などが挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
【0044】
湿式塗布法で正孔輸送層を形成する場合は、正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、乾燥させる。
【0045】
正孔輸送層形成用組成物に、正孔輸送性化合物の他、溶媒を含有する。用いる溶媒は正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、乾燥条件なども正孔注入層の形成の場合と同様である。
【0046】
正孔輸送層は、正孔輸送性化合物の他、各種の有機EL材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
【0047】
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0048】
上記したように少なくとも正孔注入層3又は正孔輸送層4は厚く塗布されることが好ましいので、陽極2から発光層5までの正孔注入層3及び/又は正孔輸送層4の膜厚の合計は少なくとも100nmであることが好ましい。
【0049】
[発光層]
赤緑混合発光層と青発光層の発光層は有機EL材料を含み、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、或いは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有させることもできる。有機EL材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として適宜使用してもよい。有機EL材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。
【0050】
有機EL材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光材料であってもよく、燐光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から燐光材料を用いることが好ましい。発光層は単層構造としても、或いは所望により複数の材料からなる多層構造とすることもできる。例えば、青色発光層は蛍光材料を用い、緑色や赤色の発光層は燐光材料を用いるなど、様々組み合わせて用いてもよい。また、発光層の間に拡散防止層を設けることもできる。
【0051】
青色発光を与える蛍光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0052】
緑色発光を与える蛍光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Alq3(tris (8-hydroxy-quinoline) aluminum) などのアルミニウム錯体などが挙げられる。
【0053】
黄色発光を与える蛍光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体などが挙げられる。
【0054】
赤色発光を与える蛍光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4-(dicyanomethylene)-2-methyl-6-(p-dimethylaminostyryl)-4H-pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテンなどが挙げられる。
【0055】
燐光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金などが挙げられる。錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0056】
燐光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(所謂、Ir(ppy)3)、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリンなどが挙げられる。
【0057】
有機EL材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。有機EL材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる機能層のモルフォロジー変化を招来する場合がある。一方、有機EL材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、湿式塗布法で形成する場合の溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
【0058】
なお、有機EL材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で併用してもよい。発光層における有機EL材料の割合は、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。有機EL材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の有機EL材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。発光層における含有量が最も多い成分をホスト材料とより少ない成分をゲスト材料と呼ぶ。
【0059】
発光層には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3における正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス
[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(所謂、α−NPD)に代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン類や、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニル
アミンなどのスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物や、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物や、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニル
アミノ)−9,9’−スピロビフルオレンなどのスピロ化合物などが挙げられる。
【0060】
なお、発光層において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0061】
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0062】
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(所謂、BND)や、2,5−ビス(6’−
(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(所謂
、PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(所謂、BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(所謂、BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(所謂、tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9H−カルバゾー
ル−9−イル)ビフェニル(所謂、CBP)などが挙げられる。なお、発光層において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0063】
発光層における電子輸送性化合物の割合は、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0064】
湿式塗布法で形成する場合、発光層は、上記発光層材料を適切な溶媒に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて湿式成膜後、乾燥させ、溶媒を除去することにより、形成される。よって、湿式塗布法で形成する場合、発光層塗布液には、発光層となるべき少なくとも2種類の固形分(ホスト材料とゲスト材料)が溶質として溶媒に分散又は溶解されて、調製される。用いる溶媒は正孔注入層形成用組成物に用い得る上記溶媒から選択され得る。
【0065】
発光層を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶媒の比率は、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。なお、発光層用溶媒として2種以上の溶媒を混合して用いる場合には、これらの溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。
【0066】
発光層の膜厚は通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0067】
[電子輸送層]
電子輸送層7は、有機ELパネルの発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0068】
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、且つ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、Alq3や10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン、キノキサリン化合物、フェナントロリン誘導体、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶
質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0069】
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0070】
電子輸送層の形成方法に制限はなく、湿式塗布法または乾式塗布法で形成することができる。湿式塗布法で形成する場合、電子輸送層は、上記電子輸送層材料を適切な溶媒に溶解させて電子輸送層形成用組成物を調製し、それを用いて湿式成膜後、乾燥させ、溶媒を除去することにより、形成される。用いる溶媒は正孔注入層形成用組成物に用い得る上記溶媒から選択され得る。
【0071】
電子輸送層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0072】
[電子注入層]
電子注入層8は、陰極から注入された電子を効率良く発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウムなどのアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属、それらの化合物(CsF、Cs
2CO
3、Li
2O、LiF)などが用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0073】
更に、バソフェナントロリンなどの含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウムなどのアルカリ金属をドープすることにより、電子注入輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となる。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0074】
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0075】
電子注入層の形成方法に制限はなく、湿式塗布法または乾式塗布法で形成することができる。湿式塗布法で形成する場合、電子注入層は、上記電子注入層材料を適切な溶媒に溶解させて電子注入層形成用組成物を調製し、それを用いて湿式成膜後、乾燥させ、溶媒を除去することにより、形成される。用いる溶媒は正孔注入層形成用組成物に用い得る上記溶媒から選択され得る。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の実施例の一例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0077】
図3〜
図10は本発明が適用された有機ELパネルの製造方法の製造過程における基板とその上に形成された構造物を示す断面図である。かかる製造過程を下記の(a)補助電極形成工程、(b)陽極形成工程、(c)正孔輸送層形成工程、(d)塗布発光層形成工程、及び(e)蒸着発光層形成工程の順に説明する。
【0078】
(a)補助電極形成工程
先ず、例えば、
図3に示すように、洗浄された厚さ0.7mmのガラス板からなる透明な基板1を用意する。基板1の主面上に、該主面から離れて配置された非密着若しくは密着のマスク(図示せず)を用いたスパッタリング法によってAlNd(アルミニウム−ネオジウム合金)の補助電極BLが形成される。マスクのパターン開口を介してAlNdターゲットの飛沫材料を基板の所定部分に付着させて、エッジにテーパが付いた所定パターンの補助電極が得られる。基板1のXY表面上においてX方向に平行に伸長する複数の帯状の補助電極BLが一定ピッチで形成される。なお、補助電極BLは次工程で成膜される陽極2への給電ラインであり、その幅がその並置されるピッチよりも小さくなるように形成される。
【0079】
補助電極BLは同一断面形状で形成されており、互いに平行に配置されており、補助電極BL同士の間に基板1の表面が露出される。例えば、各補助電極BLの厚さは150nmであり、その幅は50μmであり、隣接の補助電極BLの離間距離は300μmである。
【0080】
また、
図3においては、補助電極BLの伸張方向Xに直交する並置方向Yに沿った断面を示しており、このことは以下の図においても同様である。
【0081】
(b)陽極形成工程
図4に示すように、基板1の主面から離れて配置されたマスクを用いたスパッタリング法によって、基板1の主面及び補助電極BL上にIZO(In
2O
3−ZnO)の透明陽極2が形成される。補助電極BLを含む基板1上にマスクのパターン開口を介してIZOターゲットの飛沫材料を付着させて、エッジにテーパが付いた所定パターンのIZO膜が陽極2(透明導電性膜)として得られる。該飛沫材料がマスク開口からマスク基板間に回り込むために、透明陽極2の主面の平滑主面2Aからその縁部2Bに向けて膜厚が漸次減少するテーパ側面2Cが形成される。
【0082】
陽極2は補助電極BLと隣接の補助電極間の基板領域(凹部)に亘ってこれらを覆うように形成され、補助電極BL間の領域では基板1上に直接接触する。陽極2の厚さは例えば、1000nmである。
【0083】
(c)正孔注入・輸送層形成工程
先ず、エキシマ光照射装置(図示せず)を用いて前処理として、陽極2上にUV/O
3(紫外線/オゾン)が照射され、IZO表面を洗浄する。
【0084】
正孔注入層材料として、ホストとしてPEDOT(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとしてPSS(ポリスチレンスルホン酸)を用いた固定分濃度1wt%の水分散溶液を調製しておく。
【0085】
前処理後、
図5に示すようにインクジェット装置にて正孔注入層材料用の液滴Lqがインクジェットヘッド12により陽極2の全面上へ塗布される。例えば、インクジェットヘッド12を陽極2上のXY平面においてラスタスキャン移動させることにより、塗布された液滴Lqの膜の縁部同士が繋がって陽極2の縁部と近傍の基板をも覆う液滴膜が成膜される。
【0086】
次に、真空乾燥装置を用いてかかる液滴膜は気体圧力0.1〜50Paにて2分間に亘り真空乾燥され、230℃での1時間に亘る加熱処理により焼成される。
図6に示すように液滴の溶媒が蒸発して陽極2の縁部をも覆う硬化した正孔注入層3が得られる。機能積層体の正孔注入層3の端部の少なくとも一部は補助電極BLに接することなく基板1に達している。
【0087】
かかる正孔注入層と同様に、インクジェット法により、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサンの所定濃度の有機溶媒液滴を用いて、正孔輸送層4が
図7に示すように正孔注入層3の全面と近傍の基板上に塗布、乾燥される。これら正孔注入層3及び正孔輸送層4の厚さは例えば、それぞれ50nmである。
【0088】
(d)塗布発光層形成工程
赤緑混合発光層材料として、ホストとしてBalq(Bis-(2-methyl-8- quinolinolato)(p-phenylphenolato)aluminum)を、ドーパントとしてHex−Ir(phq)3(Tris[2-(4-n-hexylphenyl)quinoline)]iridium(III))を用いた固定分濃度6wt%の有機溶液を調製しておく。
【0089】
上述のインクジェット法と同様にインクジェットヘッド12により、
図8に示すように、かかる赤緑混合発光層材料液滴Lqが正孔輸送層4の全面上へ塗布される。
【0090】
次に、真空乾燥装置を用いて液滴膜は気体圧力0.1〜50Paにて2分間に亘って真空乾燥され、そして、10分間に亘る130℃での加熱処理により焼成される。この結果、
図9に示すように、正孔輸送層4を覆う硬化した赤緑混合発光層5が得られる。赤緑混合発光層5の厚さは例えば、40nmである。
【0091】
(e)蒸着発光層形成工程
真空蒸着装置を用いて、赤緑混合発光層5上に、ホストの9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(所謂、ADN)と、濃度6wt%となるようにドーパントの4,4’−ビス(2、2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(所謂、DPVBi)とが共に真空蒸着され、これにより青発光層6が例えば、15nmの厚さで形成される。
【0092】
次に、青発光層6上に真空蒸着法にてAlq3が真空蒸着され、これによりAlq3の電子輸送層7が例えば、30nmの厚さで形成される。
【0093】
次いで、電子輸送層7上に真空蒸着法にてLiF(フッ化リチウム)が真空蒸着され、これにより電子注入層8が例えば、1nmの厚さで形成される。
【0094】
最後に、電子注入層8上に真空蒸着法にて所定パターン開口のマスクを用いてAl(アルミニウム)が真空蒸着され、これにより陰極9が例えば、80nmの厚さで形成される。
図10に示すように、ここで正孔注入層3から電子注入層8まで機能積層体FLBが形成される。陰極9は、補助電極BLの伸張方向Xに直交する並置方向Yに沿って透明陽極2(補助電極BL)と交差するように帯状に成膜される。対向電極膜の陰極9の端部の少なくとも一部は補助電極BL及び透明陽極2に接することなく基板1に達している。機能積層体FLBを挟む陽極2と陰極9が重なる部分は有機ELパネルの発光エリアを画定する。その後、封止工程を経て、封止された有機ELパネルを得ることができる。
【0095】
このように実施例によれば、(a)補助電極形成工程、(b)陽極形成工程、(c)正孔輸送層形成工程、(d)塗布発光層形成工程及び(e)蒸着発光層形成工程によって有機ELパネルが製造されている。上記実施例では、青発光層6を真空蒸着法により成膜したが、発光層すべてをインクジェット塗布工程と乾燥工程の組で成膜して、それぞれの機能を果たす機能層ごとに塗布と乾燥を順次繰り返して、
図10に示すように、多層の機能積層体FLB(正孔注入層3/正孔輸送層4/赤緑混合発光層5/青発光層6/電子輸送層7)が形成されてもよい。
【0096】
上記した実施例においては、補助電極BLとしてAlNdなどの金属材料が用いられ、その補助電極BLの上に透明導電性膜の陽極12が積層されて、発光層で発光した光が補助電極BLで拡散されるので、有機ELパネルの開口率を向上させることができる。
【0097】
例えば、従来の有機LEDでは絶縁性のバンク材が用いられており、そのバンク材は一般的にポリイミド材質など可視域に吸収がある材料の使用が多いため、陰極の金属色である色合いに対して外観を損ねる場合がある。また、可視域に吸収材料があるため、発光した光がバンクで損失する可能性がある。これに対し、上記した実施例においては補助電極BLとしてAlNdなどの金属が用いられているので、陰極9のAlの金属色と同等で外観を損ねることがない。また、発光した光が補助電極BLで拡散しても損失することなく、有機ELパネルから放出されるので従来よりも高開口率を得ることができる。更に、補助電極BLの材料の電気抵抗率は陽極2の材料のそれより小さく、また補助電極BLに陽極2が直接接触するので、有機ELパネルに効率よく給電することができる。更に、上記したように開口率の増加のために発光した光を効率より放出させることができるので、所望の光量を得るために従来の素子より消費電力を低減させることができる。
【0098】
上記した実施例においては、陽極2(透明導電性膜)上に正孔注入層3及び正孔輸送層4の2層が形成されているが、2層が形成されることに限定されず、正孔注入層又は正孔輸送層の1層だけ、或いは正孔注入層と正孔輸送層に電子阻止層(図示せず)を加えた3層以上が発光層までに形成されても良い。
【0099】
なお、上記した実施例における基板1、補助電極BL、陽極2、正孔注入層3及び正孔輸送層4、赤緑混合発光層5、青発光層6、電子輸送層7、電子注入層8及び陰極9の各材料は上記したものに限定されない。例えば、補助電極BLの材料としてはAl、Ag、Mo、Ti、Pt、Auなどの金属又はそれらの合金を用いることができる。
【0100】
また、上記した実施例において示した各工程での各膜の形成方法、各膜の幅及び厚さ、加熱温度、加熱時間などの条件は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0101】
更に、補助電極は必ずしも同一断面形状に限定されず、またライン伸張方向において同一の長さである必要はない。
【0102】
[他の実施例]
上記の実施例においては、陽極2は、マスクを用いたスパッタリング法にてパタニングされている。陽極2はスパッタリング法の他、スクリーン印刷、インクジェット法、スプレーコート法、ロールコート法、有版印刷など湿式塗布法により形成することもできる。
【0103】
例えば、
図3に示す補助電極形成工程による補助電極BLの形成後、インクジェット法の印刷により、補助電極BLの上にIZOペーストを塗布してIZOペースト塗布膜を成膜する。
【0104】
例えば、
図11に示すようにIZOペーストの液滴Lqがインクジェットヘッド12により基板1と補助電極BL上へ所定パターンで塗布される。そして基板1を乾燥(例えば150〜200℃)後に、焼成(例えば400〜600℃)を施して、
図12に示すように基板1と補助電極BLを覆う所定パターンの陽極2を形成できる。この製造方法の場合には、陽極2がマスクやエッチング工程なしで形成できる故に、陽極2の成膜が簡単になる。さらに、印刷によるダレによって容易に、平滑主面2Aと縁部2Bに向けて膜厚が漸次減少するテーパ側面2Cとを有するIZOの陽極2(透明導電性膜)が得られる。