(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912227
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】ヘアキャッチャーおよび排水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/264 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
E03C1/264
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-102060(P2010-102060)
(22)【出願日】2010年4月27日
(65)【公開番号】特開2011-231507(P2011-231507A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2013年3月18日
【審判番号】不服2015-13712(P2015-13712/J1)
【審判請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【合議体】
【審判長】
赤木 啓二
【審判官】
谷垣 圭二
【審判官】
住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150111(JP,A)
【文献】
特開2009−144491(JP,A)
【文献】
特開2009−167769(JP,A)
【文献】
特開2009−167783(JP,A)
【文献】
特開2007−211579(JP,A)
【文献】
特開2009−7785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室や洗面台などの排水口に取り付けられて排水中に含まれる毛髪を捕集するヘアキャッチャーであって、
すり鉢状の形状を有し、
前記底部の中央が最も下方位置となるように構成され、
断面視において上縁部から底部まで折れ目がなく連続して構成されており、
底部の中心から側面にかけて周方向に多数の孔を穿設してなる底メッシュ部と、
前記底メッシュ部の上方、断面視で底メッシュ部に連続して、孔が形成されていない非メッシュ部と、
前記非メッシュ部の上方、断面視で非メッシュ部に連続して、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備えている
ことを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
ヘアキャッチャーの上縁部が、前記排水口と面一になっている
ことを特徴とする請求項1記載のヘアキャッチャー。
【請求項3】
浴室や洗面台などの排水口に取り付けられて排水中に含まれる毛髪を捕集するヘアキャッチャーと、
渦流となるよう排水に付勢する渦流付勢手段とを備え、
前記ヘアキャッチャーが、
すり鉢状の形状を有し、
前記底部の中央が最も下方位置となるように構成され、
断面視において上縁部から底部まで折れ目がなく連続して構成されており、
底部の中心から側面にかけて周方向に多数の孔を穿設してなる底メッシュ部と、
前記底メッシュ部の上方、断面視で底メッシュ部に連続して、孔が形成されていない非メッシュ部と、
前記非メッシュ部の上方、断面視で非メッシュ部に連続して、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備えている
ことを特徴とする排水装置。
【請求項4】
前記渦流付勢手段は、パンの下方表側に設けられた溝である
ことを特徴とする請求項3記載の排水装置。
【請求項5】
前記渦流付勢手段は、排水プレートの裏面に設けられたガイドリブである
ことを特徴とする請求項3記載の排水装置。
【請求項6】
浴室や洗面台などの排水口に取り付けられて排水中に含まれる毛髪を捕集するヘアキャッチャーと、
渦流となるよう排水に付勢する渦流付勢手段とを備え、
前記ヘアキャッチャーは、
すり鉢状の形状を有し、
前記底部の中央が最も下方位置となるように構成され、
断面視において上縁部から底部まで折れ目がなく連続して構成されており、
底部の中心から側面にかけて周方向に多数の孔を穿設してなる底メッシュ部と、
前記底メッシュ部の上方、断面視で底メッシュ部に連続して、孔が形成されていない非メッシュ部と、
前記非メッシュ部の上方、断面視で非メッシュ部に連続して、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備えており、
前記渦流付勢手段は、排水プレートの裏面に設けられたガイドリブであって、当該ガイドリブはその下面がパンの表面に接する
ことを特徴とする排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室や洗面台などの排水口に取り付けられるヘアキャッチャー及びそれを備えた排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水中に含まれる毛髪や微細なゴミなどを捕集するために、小さなメッシュを有するヘアキャッチャーが排水口に備えられている。排水口にセットされたヘアキャッチャーは、排水がメッシュ面を通過する際に排水中の毛髪等を捕集する構造となっている。ヘアキャッチャー全体に散らばって毛髪等が捕集されると、ヘアキャッチャーを清掃する際に手間が掛かることから、ヘアキャッチャーの形状を工夫したり、排水に渦を巻かせたりする等して毛髪を集中させる提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ヘアキャッチャーの形状によって渦を巻かせて排水中の毛髪等を集中させるものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、渦流発生手段で上昇渦流を排水口に発生させ、そこにヘアキャッチャーを配置して毛髪等を集中させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−203770号公報
【特許文献2】特開2007−211579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のヘアキャッチャーでは、渦を巻かせるために設けたヘアキャッチャーのリブや凹凸に毛髪が絡まるおそれがある。また、リブや凹凸で狭小な部分が生じるためにスポンジなどを入れにくく、清掃性を悪化させるという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2の排水トラップでは、上昇渦流を発生させるために別の排水口から大量の排水を必要とし、排水が大量に発生する浴槽近傍、つまり、浴室の排水口にしか適用できないという問題がある。また、トラップを利用することから排水口にトラップが直結している必要があり、渦流発生手段として大がかりな構造を必要とするといった問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、大がかりな構造を必要とせず簡易な構成で、清掃性に優れたヘアキャッチャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係るヘアキャッチャーは、浴室や洗面台などの排水口に取り付けられて排水中に含まれる毛髪を捕集するヘアキャッチャーであって、すり鉢状の形状を有し、底部に、周方向に多数の孔を穿設してなる底メッシュ部と、前記底メッシュ部の上方に孔が形成されていない非メッシュ部と、前記非メッシュ部の上方に、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、若干の渦を巻くように付勢された排水が、ヘアキャッチャーの中間メッシュ部で過剰分が排出され、非メッシュ部で付勢された排水の渦流を維持・加速させるとともに、底部に穿設された底メッシュ部で排水中の毛髪等を滞留させて捕集するので、簡易な構成で、清掃性に優れたヘアキャッチャーが実現可能となる。
【0011】
ここで、ヘアキャッチャーの上縁部が、前記排水口と面一になっているのが好ましい。
【0012】
これによれば、排水の流れを排水口からヘアキャッチャーにスムーズに導くことができ、ヘアキャッチャー内において適切な渦流を発生させることが可能となる。
【0013】
また、本発明は、浴室や洗面台などの排水口に取り付けられて排水中に含まれる毛髪を捕集するヘアキャッチャーと、渦流となるよう排水に付勢する渦流付勢手段とを備え、前記ヘアキャッチャーが、すり鉢状の形状を有し、底部に、周方向に多数の孔を穿設してなる底メッシュ部と、前記底メッシュ部の上方に孔が形成されていない非メッシュ部と、前記非メッシュ部の上方に、周方向に多数の孔を穿設してなる中間メッシュ部とを備える排水装置として構成することもできる。
【0014】
ここで、前記渦流付勢手段は、パンの下方表側に設けられた溝としてもよいし、前記渦流付勢手段は、排水プレートの裏面に設けられたガイドリブとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るヘアキャッチャーによれば、若干の渦を巻くよう付勢された排水を、すり鉢形状の中間部分に形成されたメッシュ部で過剰分を排出し、底部に形成されたメッシュ部で排水中に含まれる毛髪等を捕集するので、容易に清掃できるヘアキャッチャーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】浴室における排水装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るヘアキャッチャーについて図を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、浴室における排水装置の構成を示す図である。
【0019】
本図に示すように、本実施の形態に係るヘアキャッチャー10は、浴室の排水装置1の洗い場排水口4にセットされて用いられる。
【0020】
図2はヘアキャッチャー10の平面図、
図3はヘアキャッチャー10の断面図である。
【0021】
このように、ヘアキャッチャー10は、ステンレスなどの金属製であり、全体がすり鉢形状となっている。ヘアキャッチャー10の中間部分と底部には、パンチング加工によって周方向に多数の孔がメッシュ状に穿設されており、それぞれ中間メッシュ部11と底メッシュ部13が形成されている。また、中間メッシュ部11と底メッシュ部13との間の中間部分は、孔が形成されていない非メッシュ部12となっている。
【0022】
また、ヘアキャッチャー10の上縁は、洗い場排水口4と面一となるように構成されており、洗い場パン2からの排水は、洗い場排水口4の上方から、若干の渦を巻くように付勢を付けて流される。
【0023】
図4は、排水口近辺の構成を示す図である。
【0024】
ここでは、洗い場パン2からの排水が渦を巻くようにする付勢手段として、洗い場排水口4にガイド溝5を設けた例を示している。このガイド溝5はパンの下方表側に設けられた溝であり、これによって、排水は破線矢印で示す方向、つまり、反時計回り(左回り)に渦を巻くように付勢されてヘアキャッチャー10へ導かれる。
【0025】
図5は、排水口近辺の別の構成を示す図である。
【0026】
本図では、洗い場パン2からの排水が渦を巻くようにする付勢手段の別の例として、洗い場排水口4に排水を導くガイドを備えた排水プレート6を設けた例を示している。この排水プレート6の裏面には排水を導くガイドリブが設けられており、このガイドリブの下面がパン表面に接することによって、排水は破線矢印で示す方向、つまり、時計回り(右回り)に渦を巻くように付勢されてヘアキャッチャー10へ導かれることとなる。
【0027】
以上のような、排水口の中心より偏心した側方の位置から排水を中心へ誘導する付勢手段で渦を巻くようにされた排水は、ヘアキャッチャー10の上縁と洗い場排水口4とが面一になっているため、スムーズにヘアキャッチャー10へ導かれることになる。
【0028】
そして、ヘアキャッチャー10に導かれた排水は、ヘアキャッチャー10の中間メッシュ部11において、過剰な分が排出処理される。
【0029】
続いて、毛髪やゴミなどを載せた排水は、ヘアキャッチャー10の中間部分に位置する非メッシュ部12で、付勢された渦流が維持された状態で底メッシュ部13へ導かれる。ここで、非メッシュ部12はヘアキャッチャー10の底部へ向けて収束するように傾斜しているので、排水の流れが若干加速されることとなる。
【0030】
その後、非メッシュ部12で渦を巻いた排水に載った毛髪等は、ヘアキャッチャー10の中央の底メッシュ部13に滞留して捕集されるので、ユーザは容易に毛髪やゴミ等を処理することができる。
【0031】
なお、中間メッシュ部11は、排水の過剰分を排出するとともに付勢された渦流を維持させる観点から、メッシュの開口率は40%〜70%程度に設定するのが好ましい。
【0032】
このように、本実施の形態に係るヘアキャッチャーによれば、若干の渦を巻くように付勢された排水は、ヘアキャッチャーの中間部分に穿設された中間メッシュ部で過剰分が排出され、中間メッシュ部の下方に位置する非メッシュ部で付勢された排水の渦流を維持・加速させ、底部に穿設された底メッシュ部で排水中の毛髪等が滞留し捕集されるので、大がかりな構造を必要とすることがない。また、ヘアキャッチャーは、すり鉢形状にメッシュを設けた構成であるから容易に清掃することができ、清掃性に優れたヘアキャッチャーを実現することができる。
【0033】
以上、本発明に係るヘアキャッチャーについて、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、ヘアキャッチャーを金属製としているが、表面を平滑にした合成樹脂製とすることも可能である。
【0035】
また、渦巻きの付勢手段は、排水口の中心より偏心した位置から排水を中心へ誘導するようなものであれば、上記実施形態で例示したものでなくてもよい。
【0036】
さらに、上記実施の形態では、浴室の洗い場排水口にヘアキャッチャーをセットする例を説明したが、本発明に係るヘアキャッチャーは簡易な構成であるため、洗面台などの排水口にセットすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、浴室や洗面台などの排水口に取り付けられるヘアキャッチャーとして利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 排水装置
2 洗い場パン
3 浴槽
4 洗い場排水口
5 ガイド溝
6 排水プレート
10 ヘアキャッチャー
11 中間メッシュ部
12 非メッシュ部
13 底メッシュ部