(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912240
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】排気ガス還流装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/02 20160101AFI20160414BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20160414BHJP
F02M 26/65 20160101ALI20160414BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20160414BHJP
F02B 37/10 20060101ALI20160414BHJP
F02B 37/12 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
F02M25/07 570P
F02M25/07 570D
F02M25/07 580F
F02B37/00 302F
F02B37/10 Z
F02B37/12 302E
F02B37/12 302G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-239645(P2010-239645)
(22)【出願日】2010年10月26日
(65)【公開番号】特開2012-92702(P2012-92702A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月19日
【審判番号】不服2015-2617(P2015-2617/J1)
【審判請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 知宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 治世
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章
(72)【発明者】
【氏名】橘川 功
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】水島 由加利
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朝幸
【合議体】
【審判長】
加藤 友也
【審判官】
伊藤 元人
【審判官】
松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−235944(JP,A)
【文献】
特開2007−278066(JP,A)
【文献】
特開2004−278326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08 - 47/10
F02M 25/06 - 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに直列に装着された高圧段ターボ及びウェストゲート弁を有しない低圧段ターボと、前記高圧段ターボの高圧段タービンと高圧段コンプレッサとを連結する回転軸に装着された電動機と、前記高圧段タービンよりも上流の前記エンジンの排気通路と前記高圧段コンプレッサよりも下流の前記エンジンの吸気通路とを連通するEGR通路と、該EGR通路に配設されたEGRバルブと、前記高圧段コンプレッサよりも下流かつ前記EGR通路と前記吸気通路の接続部よりも上流の前記吸気通路に配設された吸入空気絞り弁と、前記排気通路に接続され前記高圧段タービンをバイパスする排気バイパス通路と、該排気バイパス通路に配設された排気バイパスバルブと、前記吸気通路に接続され前記高圧段コンプレッサをバイパスする吸気バイパス通路と、該吸気バイパス通路に配設された吸気バイパスバルブと、前記エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記電動機、前記EGRバルブ、前記排気バイパスバルブ及び前記吸気バイパスバルブを制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記運転状態検出手段により前記エンジンの高負荷高回転運転状態を検出したときに、前記EGRバルブ及び前記吸気バイパスバルブを全開とすると共に、前記高圧段ターボが逆回転するように前記電動機を駆動し、且つ、前記高圧段ターボが逆回転するように前記電動機を駆動しているときには前記排気バイパスバルブの開度を全閉とすることなく絞ることで、前記吸入空気絞り弁を絞ることなく、吸入空気量が目標吸入空気量になるように、前記高圧段タービンよりも上流の前記排気通路内の圧力を、前記高圧段コンプレッサよりも下流の前記吸気通路内の圧力よりも高くすることを特徴とする排気ガス還流装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記EGRバルブ及び前記吸気バイパスバルブの開度を一定に維持にした状態で、前記排気バイパスバルブの開度を変化させることで、吸入空気量及びEGRガス量を調節する請求項1に記載の排気ガス還流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気通路内の排気ガスの一部を吸気通路内に還流させる排気ガス還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EGR(排気ガス再循環)は、エンジンの排気通路内の排気ガスの一部をEGR通路を介して吸気通路内に再循環(還流)させることで、内燃機関の燃焼状態を制御して排気ガスのNOx発生量を抑える技術である。排気ガスを吸気通路内に還流させる際は、EGR通路の排気側圧力と吸気側圧力との圧力差をEGR通路に設けたEGRバルブの開度により制御することで、所定のEGRガス量(排気ガスの還流量)の排気ガスを吸気通路内に導入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボ付エンジンにおいては、ターボのコンプレッサ側圧力(コンプレッサよりも下流の吸気通路内の圧力)が高くなるに従い、タービン側圧力(タービンよりも上流の排気通路内の圧力)に対するコンプレッサ側圧力の圧力差が小さくなる為、多量のEGRガス量の排気ガスを確保することが困難になってくる。このような運転条件(エンジンの高負荷高回転運転領域)では、吸気通路に設けた吸入空気絞り弁の開度を絞ることで、EGR通路の吸気側圧力が排気側圧力よりも低くなるように制御を行って、所定のEGRガス量を確保している。その際、吸入空気絞り弁の開度を絞る為、吸入空気量(新気量)が少なくなり、エンジン出力が低くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、エンジンの高負荷高回転運転領域において、所望の吸入空気量を確保しつつ所望のEGRガス量も確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成する為に、本発明は、エンジンに直列に装着された高圧段ターボ及び低圧段ターボと、前記高圧段ターボの高圧段タービンと高圧段コンプレッサとを連結する回転軸に装着された電動機と、前記高圧段タービンよりも上流の前記エンジンの排気通路と前記高圧段コンプレッサよりも下流の前記エンジンの吸気通路とを連通するEGR通路と、該EGR通路に配設されたEGRバルブと、前記排気通路に接続され前記高圧段タービンをバイパスする排気バイパス通路と、該排気バイパス通路に配設された排気バイパスバルブと、前記吸気通路に接続され前記高圧段コンプレッサをバイパスする吸気バイパス通路と、該吸気バイパス通路に配設された吸気バイパスバルブと、前記エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記電動機、前記EGRバルブ、前記排気バイパスバルブ及び前記吸気バイパスバルブを制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記運転状態検出手段により前記エンジンの高負荷高回転運転状態を検出したときに、前記EGRバルブ及び前記吸気バイパスバルブを開とすると共に、前記排気バイパスバルブの開度を絞り、且つ、前記高圧段ターボが逆回転するように前記電動機を駆動することで、前記高圧段タービンよりも上流の前記排気通路内の圧力を、前記高圧段コンプレッサよりも下流の前記吸気通路内の圧力よりも高くするものである。
【0007】
前記制御手段は、前記EGRバルブ及び前記吸気バイパスバルブの開度を一定に維持にした状態で、前記排気バイパスバルブの開度を変化させることで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するものであっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンの高負荷高回転運転領域において、所望の吸入空気量を確保しつつ所望のEGRガス量も確保することが出来るという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス還流装置の概略図である。
【
図2】高圧段ターボ及び低圧段ターボの作動領域のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】
図1中、1はエンジン(本実施形態では、ディーゼルエンジン)、2は電動機付き高圧段ターボ(以下、高圧段ターボともいう)、3は低圧段ターボ、4はエンジン1の吸気ポートに連通する吸気ダクト(吸気通路)、5はエンジン1の排気ポートに連通する排気ダクト(排気通路)、6は制御手段としてのエンジン制御ユニット(以下、ECUという)、7はエンジンのシリンダ内(燃焼室内)に燃料を噴射する燃料噴射装置(インジェクタ)、8はエンジン回転数を検出するエンジン回転センサ(図示例では、クランク角センサ)、9はアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)を検出するアクセル開度センサである。
【0012】
吸気ダクト4には上流側から順に、吸入空気を清浄化するエアクリーナ10、吸入空気量(新気量)を検出する吸入空気量センサ(MAFセンサ)11、低圧段ターボ3の低圧段コンプレッサ3C、高圧段ターボ2の高圧段コンプレッサ2C、低圧段コンプレッサ3C或いは高圧段コンプレッサ2Cで昇圧された吸入空気を冷却するインタークーラ12、インタークーラ12通過後の吸入空気圧力を検出する吸入空気圧力センサ(MAPセンサ)13、吸気ダクト4の通路面積を変更する吸入空気絞り弁(インテークスロットル)14(図示例では、電磁弁)、吸気ダクト4内の吸気温度を検出する吸気温度センサ15が配設されている。
【0013】
また、排気ダクト5には上流側から順に、排気ダクト5内の排気温度を検出する排気温度センサ16、高圧段ターボ2の高圧段タービン2T、低圧段ターボ3の低圧段タービン3T、排気を消音する排気サイレンサ17が配設されている。
【0014】
電動機付き高圧段ターボ2は、可変容量型のターボ(VGT)であって、低圧段ターボ3よりも過給容量が小さいものである。電動機付き高圧段ターボ2は、排気ダクト5に配設された高圧段タービン2Tと、吸気ダクト4に配設され、高圧段タービン2Tによって駆動される高圧段コンプレッサ2Cと、高圧段タービン2Tと高圧段コンプレッサ2Cとを連結する回転軸に装着された電動機(電動モータ)2Mとを有している。
【0015】
一方、低圧段ターボ3は、高圧段ターボ2よりも過給容量が大きいものである。低圧段ターボ3は、高圧段タービン2Tよりも下流の排気ダクト5に配設された低圧段タービン3Tと、高圧段コンプレッサ2Cよりも上流の吸気ダクト4に配設され、低圧段タービン3Tによって駆動される低圧段コンプレッサ3Cとを有している。
【0016】
即ち、本実施形態では、高圧段ターボ2と低圧段ターボ3とを直列に組み合わせた2段過給構成(シリーズ・2ステージターボ)とし、これら高圧段ターボ2及び低圧段ターボ3の内、高圧段ターボ2に電動機2Mを組み込んだ仕様としている。
【0017】
また、高圧段タービン2Tよりも上流(図示例では、排気温度センサ16と高圧段タービン2Tとの間)の排気ダクト5と、高圧段コンプレサッサ2Cよりも下流(図示例では、吸入空気絞り弁14と吸気温度センサ15との間)の吸気ダクト4とはEGRダクト(EGR通路)18で連通されており、EGRダクト18には上流側(排気ダクト5側)から順に、吸気ダクト4に還流させる排気再循環ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラ19、EGRダクト18を開閉し或いはEGRダクト18の通路面積を変更するEGRバルブ20(図示例では、電磁弁)が配設されている。
【0018】
また、排気ダクト5には、高圧段タービン2Tをバイパスする排気バイパスダクト(排気バイパス通路)21が接続されており、排気バイパスダクト21には、排気バイパスダクト21を開閉し或いは排気バイパスダクト21の通路面積を変更する排気バイパスバルブ(ターボバイパスバルブ)22が配設されている。
【0019】
一方、吸気ダクト4には、高圧段コンプレッサ2Cをバイパスする吸気バイパスダクト(吸気バイパス通路)23が接続されており、吸気バイパスダクト23には、吸気バイパスダクト23を開閉し或いは吸気バイパスダクト23の通路面積を変更する吸気バイパスバルブ24(図示例では、電磁弁)が配設されている。
【0020】
ECU6には、エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9、吸入空気量センサ11、吸入空気圧力センサ13、吸気温度センサ15及び排気温度センサ16等の各種センサ類が接続されており、ECU6は、各種センサ類の検出値に基づいて、燃料噴射装置7、吸入空気絞り弁14、EGRバルブ20、電動機2M、排気バイパスバルブ22及び吸気バイパスバルブ24等の各種アクチュエータ類を制御するようになっている。
【0021】
本実施形態では、ECU6は、運転状態検出手段(本実施形態では、エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9)の検出値(つまり、エンジン回転数、アクセル開度)に基づいて目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期を求め、求めた目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期に応じて燃料噴射装置7を制御するようになっている。例えば、ECU6は、エンジン回転センサ8の検出値(エンジン回転数)及びアクセル開度センサ9の検出値(アクセル開度)に対応する目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期を各々、目標燃料噴射量マップ及び目標燃料噴射時期マップ(図示せず)から読み取り、読み取った目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期に応じて燃料噴射装置7を制御するようになっている。
【0022】
次に、本実施形態に係る排気ガス還流装置の作動を説明する。
【0023】
先ず、ECU6は、運転状態検出手段(エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9)の検出値(エンジン回転数、アクセル開度)に基づいてエンジン1の運転状態を認識するようになっている。例えば、ECU6は、エンジン回転センサ8の検出値(エンジン回転数)及びアクセル開度センサ9の検出値(アクセル開度)に対応するエンジン1の運転状態(低負荷低回転運転状態、中負荷中回転運転状態、高負荷高回転運転状態)を、エンジン運転状態マップ(図示せず)から読み取ることで、エンジン1の運転状態を認識するようになっている。
【0024】
次いで、ECU6は、運転状態検出手段(エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9)によりエンジン1の低負荷低回転運転状態を検出したとき、つまり、エンジン運転状態マップから読み取ったエンジン1の運転状態が低負荷低回転運転状態であったときは、排気バイパスバルブ22及び吸気バイパスバルブ24を全閉(開度0%)とすることで、吸気を主に高圧段コンプレッサ2Cで昇圧するようになっている(高圧段ターボ2による過給;
図2参照)。
【0025】
エンジン1の低負荷低回転運転領域においては、ECU6は、吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)に基づいてEGRバルブ20を制御することで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。例えば、ECU6は、目標吸入空気量マップ(図示せず)から読み取った目標吸入空気量に吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)が一致するように、EGRバルブ20の開度をEGRバルブ制御マップ(図示せず)に従って変化させることで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。
【0026】
また、ECU6は、運転状態検出手段(エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9)によりエンジン1の中負荷中回転運転状態を検出したとき、つまり、エンジン運転状態マップから読み取ったエンジン1の運転状態が中負荷中回転運転状態であったときは、吸気バイパスバルブ24を全閉(開度0%)とすると共に、排気バイパスバルブ22の開度を全閉を除く開度に調節することで、吸気を低圧段コンプレッサ3Cで昇圧すると共に、低圧段コンプレッサ3Cで昇圧した吸気を高圧段コンプレッサ2Cでさらに昇圧するようになっている(高圧段ターボ2及び低圧段ターボ3による2段過給;
図2参照)。
【0027】
エンジン1の中負荷中回転運転領域においては、ECU6は、低負荷低回転運転領域と同様に、吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)に基づいてEGRバルブ20を制御することで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。例えば、ECU6は、低負荷低回転運転領域と同様に、目標吸入空気量マップから読み取った目標吸入空気量に吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)が一致するように、EGRバルブ20の開度をEGRバルブ制御マップに従って変化させることで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。
【0028】
また、ECU6は、運転状態検出手段(エンジン回転センサ8、アクセル開度センサ9)によりエンジン1の高負荷高回転運転状態を検出したとき、つまり、エンジン運転状態マップから読み取ったエンジン1の運転状態が高負荷高回転運転状態であったときには、EGRバルブ20及び吸気バイパスバルブ24を開とすると共に、排気バイパスバルブ22の開度を絞り、且つ、高圧段ターボ2が逆回転するように電動機2Mを駆動することで、吸気を低圧段コンプレッサ3Cのみで昇圧するようになっている(低圧段ターボ3による過給;
図2参照)。
【0029】
具体的には、ECU6は、EGRダクト18の排気側圧力(つまり、高圧段タービン2Tよりも上流の排気ダクト5内の圧力)が吸気側圧力(つまり、高圧段コンプレッサ2Cよりも下流の吸気ダクト4内の圧力)よりも高くなり(排気側圧力>吸気側圧力)且つEGRダクト18の排気側圧力と吸気側圧力との圧力差が所定の圧力差となるように、排気バイパスバルブ22の開度を所定開度(例えば、85〜95%程度)とすると共に、逆回転する高圧段ターボ2の回転数を所定回転数(例えば、数〜数十rpm程度)に制御するようになっている。
【0030】
即ち、本実施形態では、エンジン1の高負荷高回転運転領域において、電動機2Mによって高圧段ターボ2を逆回転させ、排気バイパスバルブ22の開度を絞ることで、これら高圧段ターボ2(高圧段タービン2T)及び排気バイパスバルブ22によって排気ダクト5の通路抵抗を一時的に高めて、EGRダクト18の排気側圧力を高めている。これにより、EGRダクト18の排気側圧力を高める為に吸入空気絞り弁14の開度を絞る必要が無くなる。
【0031】
エンジンの高負荷高回転運転領域においては、ECU6は、吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)に基づいて排気バイパスバルブ22を制御することで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。例えば、ECU6は、EGRバルブ20及び吸気バイパスバルブ24の開度を一定(本実施形態では、全開(開度100%))に維持した状態で、目標吸入空気量マップから読み取った目標吸入空気量に吸入空気量センサ11の検出値(吸入空気量)が一致するように、排気バイパスバルブ22の開度を排気バイパスバルブ制御マップ(図示せず)に従って変化させることで、吸入空気量及びEGRガス量を調節するようになっている。なお、エンジンの高負荷高回転運転領域においては、ECU6は、吸入空気絞り弁14を常時全開とするようになっている。従って、エンジンの高負荷高回転運転領域においては、吸入空気絞り弁14による吸気絞りがなされない。
【0032】
要するに、本実施形態では、EGRダクト18の排気側圧力が吸気側圧力よりも高い場合(つまり、エンジン1の低負荷低回転運転領域及び中負荷中回転運転領域)は、EGRバルブ20を開とすることで、EGRガスを吸気ダクト4に還流させる。一方、EGRダクト18の吸気側圧力が高いが、多量のEGRガス量を確保したい場合(つまり、エンジン1の高負荷高回転運転領域)には、EGRバルブ20及び吸気バイパスバルブ24を開とし、電動機2Mで高圧段ターボ2を逆回転させ、且つ、排気バイパスバルブ22の開度を調節することで、EGRダクト18の排気側圧力を高めることが出来、多量のEGRガスを吸気ダクト4に還流させつつ、吸入空気絞りなしで吸入空気をエンジン1のシリンダ内に導入することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態によれば、エンジン1の高負荷高回転運転領域においてEGRダクト18の排気側圧力を高められることで、吸入空気絞りを行わなくとも多量のEGRガス量を確保出来る為、エンジン出力の低下を招くこと無く、所望のEGRガス量の確保が可能となる。従来、エンジン1の高負荷高回転運転領域での多量のEGRガス量確保は吸入空気絞りを行わないと困難であったが、本実施形態により同運転領域での多量のEGRガス量の確保が吸入空気絞りを行わなくとも可能となり、より広い運転領域での排出ガス低減が可能となる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0035】
例えば、エンジン1の高負荷高回転運転領域において、EGRバルブ20及び吸気バイパスバルブ24の開度を全開に維持するとしたがこれには限定はされず、EGRバルブ20及び吸気バイパスバルブ24の開度を全閉及び全開を除く所定の開度に維持するようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 エンジン
2 高圧段ターボ(電動機付き高圧段ターボ)
3 低圧段ターボ
4 吸気ダクト(吸気通路)
5 排気ダクト(排気通路)
6 ECU(制御手段)
8 エンジン回転センサ(運転状態検出手段)
9 アクセル開度センサ(運転状態検出手段)
18 EGRダクト(EGR通路)
20 EGRバルブ
21 排気バイバスダクト(排気バイパス通路)
22 排気バイパスバルブ
23 吸気バイパスダクト(吸気バイパス通路)
24 吸気バイパスバルブ