特許第5912245号(P5912245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912245
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】光学装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20160414BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20160414BHJP
   H02K 33/18 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   G02B7/02 Z
   H02K33/18 B
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-266749(P2010-266749)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-118213(P2012-118213A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竹村 政夫
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏光
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−191332(JP,A)
【文献】 特開2000−153231(JP,A)
【文献】 特開平11−217276(JP,A)
【文献】 特開平04−152307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
H02K 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影用のレンズを保持する可動体と、前記可動体を移動可能に保持する固定体と、前記固定体に対して前記可動体を相対移動させるための駆動用コイルおよび複数の駆動用磁石と、前記駆動用磁石に固定される金属部材とを備えるとともに、前記金属部材として、前記駆動用磁石を間に挟んだ状態で前記駆動用磁石に固定される1個の第1の金属部材と複数の第2の金属部材とを備え、
前記駆動用磁石は、前記可動体または前記固定体の一方に固定され、
前記駆動用コイルは、前記可動体または前記固定体の他方に固定され、
前記駆動用磁石と前記駆動用コイルとは、所定の隙間を介して対向配置され、
前記駆動用磁石の表面および前記金属部材の表面には、少なくともニッケルを含むニッケルメッキ層が形成され、
前記駆動用磁石と前記金属部材とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなり前記駆動用磁石と前記金属部材との間に配置される接合層によって接合されており、
前記接合層の少なくとも一部と前記駆動用コイルとが所定の隙間を介して対向配置され、
複数の前記第2の金属部材のそれぞれは、複数の前記駆動用磁石のそれぞれに固定されている光学装置の製造方法であって、
前記金属部材が接合される前の前記駆動用磁石の表面には、前記ニッケルメッキ層を被覆するスズメッキ層が形成され、
前記駆動用磁石に接合される前の前記第2の金属部材は、複数の前記第2の金属部材を一体化するための連結部材によって連結されており、
前記接合層は、前記駆動用磁石と前記金属部材との接合時に前記スズメッキ層を溶融、固化させることで形成され、
前記連結部材は、前記接合層が形成された後に除去され、
複数の前記第2の金属部材のそれぞれには、前記連結部材が除去される際に形成された除去跡が形成されていることを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記スズメッキ層は、前記駆動用磁石と前記金属部材との接合時に、誘導加熱によって溶融することを特徴とする請求項1記載の光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記除去跡は、その基端部が前記第2の金属部材に繋がる凸部の先端に形成され、
前記除去跡の幅は、前記凸部の基端の幅よりも狭くなっていること、および/または、前記除去跡の厚みは、前記凸部の基端の厚みよりも薄くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の光学装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影用のレンズを保持する可動体と、この可動体を移動可能に保持する固定体とを備える光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置として、複数のレンズを保持して光軸方向に移動する可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動するための駆動機構とを備えるレンズ駆動装置が本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、略直方体状に形成されている。
【0003】
このレンズ駆動装置では、駆動機構は、略三角柱状に形成された4個の駆動用磁石と、略三角筒状に巻回された4個の駆動用コイルとを備えている。駆動用磁石は、2個の駆動用磁石片と磁性板とによって構成されており、光軸方向において2個の駆動用磁石片が磁性板を挟むように2個の駆動用磁石片と磁性板とが互いに固定されている。2個の駆動用磁石片と磁性板とは、接着剤によって固定されている。2個の駆動用磁石片は、磁性板を介して対向する対向面の磁極が同じ磁極となるように着磁されている。
【0004】
また、駆動用磁石は、レンズ駆動装置の四隅に配置されており、光軸方向における駆動用磁石の一端面は、固定体を構成するカバー部材に接着剤によって固定されている。また、光軸方向における駆動用磁石の他端面には、磁性片が接着剤によって固定されている。駆動用コイルは、駆動用磁石の外周面と駆動用コイルの内周面とが所定の隙間を介して対向するように可動体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−217467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラの市場では、カメラの小型化の要求が一段と高まっており、そのため、カメラに使用されるレンズ駆動装置の小型化の要求も一段と高まっている。特許文献1に記載のレンズ駆動装置において、装置をさらに小型化するためには、駆動用磁石および駆動用コイルを小型化すれば良い。一方で、駆動用磁石および駆動用コイルを小型化すると、可動体を駆動する駆動機構の駆動力が低下するため、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間(ギャップ)を狭くして、駆動機構の駆動力の低下を防止する必要がある。
【0007】
ここで、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合、この隙間が精度良く形成されていないと、駆動用磁石が固定される固定体と駆動用コイルが固定される可動体とが干渉して、可動体の移動に支障を来すおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、2個の駆動用磁石片と磁性板とが接着剤によって固定されているため、駆動用磁石が小型化した場合には、接着剤の塗布量や塗布位置の厳密な管理を行わないと、駆動用磁石片と磁性板との間から接着剤がはみ出すおそれがある。したがって、このレンズ駆動装置では、駆動用磁石や駆動用コイルの小型化に伴って、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合に、駆動用磁石片と磁性板との間からはみ出した接着剤の影響で、可動体の移動に支障を来すおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、撮影用のレンズを保持する可動体と、この可動体を移動可能に保持する固定体とを備える光学装置において、装置を小型化した場合であっても、可動体を適切に移動させることが可能な光学装置の製造方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の光学装置の製造方法は、撮影用のレンズを保持する可動体と、可動体を移動可能に保持する固定体と、固定体に対して可動体を相対移動させるための駆動用コイルおよび複数の駆動用磁石と、駆動用磁石に固定される金属部材とを備えるとともに、金属部材として、駆動用磁石を間に挟んだ状態で駆動用磁石に固定される1個の第1の金属部材と複数の第2の金属部材とを備え、駆動用磁石は、可動体または固定体の一方に固定され、駆動用コイルは、可動体または固定体の他方に固定され、駆動用磁石と駆動用コイルとは、所定の隙間を介して対向配置され、駆動用磁石の表面および金属部材の表面には、少なくともニッケルを含むニッケルメッキ層が形成され、駆動用磁石と金属部材とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなり駆動用磁石と金属部材との間に配置される接合層によって接合されており、接合層の少なくとも一部と駆動用コイルとが所定の隙間を介して対向配置され、複数の第2の金属部材のそれぞれは、複数の駆動用磁石のそれぞれに固定されている光学装置の製造方法であって、金属部材が接合される前の駆動用磁石の表面には、ニッケルメッキ層を被覆するスズメッキ層が形成され、駆動用磁石に接合される前の第2の金属部材は、複数の第2の金属部材を一体化するための連結部材によって連結されており、接合層は、駆動用磁石と金属部材との接合時にスズメッキ層を溶融、固化させることで形成され、連結部材は、接合層が形成された後に除去され、複数の第2の金属部材のそれぞれには、連結部材が除去される際に形成された除去跡が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の光学装置では、駆動用磁石と金属部材とは、スズ系金属からなり駆動用磁石と金属部材との間に配置される接合層によって接合されている。また、本発明では、金属部材が接合される前の駆動用磁石の表面にニッケルメッキ層を被覆するスズメッキ層が形成され、接合層は、駆動用磁石と金属部材との接合時にスズメッキ層を溶融、固化させることで形成されている。すなわち、本発明では、駆動用磁石の表面のニッケルメッキ層を被覆するように形成されるスズメッキ層を、駆動用磁石と金属部材との接合時に溶融、固化させて、接合層を形成し、駆動用磁石と金属部材とを接合している。したがって、本発明では、接合された駆動用磁石と金属部材との間からの接合層のはみ出しを防止することが可能になる。その結果、本発明では、駆動用磁石や駆動用コイルの小型化に起因する駆動力の低下を防止するために、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合であっても、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を精度良く形成することが可能になり、可動体側と固定体側との干渉を防止することが可能になる。すなわち、本発明では、駆動用磁石や駆動用コイルを小型化するとともに、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くすることで、装置を小型化した場合であっても、可動体側と固定体側との干渉を防止して、可動体を適切に移動させることが可能になる。また、本発明では、接合された駆動用磁石と金属部材との間からの接合層のはみ出しを防止することが可能になるため、接合層の少なくとも一部と駆動用コイルとが所定の隙間を介して対向配置されていても、可動体側と固定体側との干渉を防止することが可能になる。また、本発明では、光学装置は、金属部材として、駆動用磁石を間に挟んだ状態で駆動用磁石に固定される第1の金属部材と第2の金属部材とを備えているため、駆動用磁石と金属部材との接合時に、駆動用磁石を挟んだ状態で配置される第1の金属部材および第2の金属部材を加熱して、駆動用磁石の表面のスズメッキ層を溶融、固化させることで、駆動用磁石と第1の金属部材と第2の金属部材とを一度に固定することが可能になる。また、本発明では、接合前の複数の第2の金属部材は、連結部材によって一体化されており、一体化された複数の第2の金属部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に、連結部材を除去している。したがって、第2の金属部材と駆動用磁石とを接合する際の、複数の第2の金属部材間の相対位置のずれを防止することが可能になり、接合後の複数の第2の金属部材間の相対位置精度を高めることが可能になる。
【0012】
本発明において、スズメッキ層は、駆動用磁石と金属部材との接合時に、誘導加熱によって溶融することが好ましい。ここで、駆動用磁石と金属部材との接合時に、ヒータチップを金属部材等に接触させることでスズメッキ層を溶融させることも可能であるが、この場合には、ヒータチップと金属部材等との接触状態によって、金属部材等の温度が不均一となり、駆動用磁石と金属部材との接合強度にばらつきが生じるおそれがある。これに対して、誘導加熱によってスズメッキ層を溶融させる場合には、誘導コイルの中に駆動用磁石および金属部材をセットして、金属部材等を発熱させることで、スズメッキ層を溶融させることができるため、金属部材等の温度を均一化させて、駆動用磁石と金属部材との接合強度のばらつきを防止することが可能になる。また、ヒータチップを金属部材等に接触させることでスズメッキ層を溶融させる場合には、金属部材等に接触するヒータチップの影響で、スズメッキ層を溶融させる際に、駆動用磁石と金属部材との相対位置がずれるおそれがある。これに対して、誘導加熱によってスズメッキ層を溶融させる場合には、駆動用磁石および金属部材を誘導コイルに接触させることなく、スズメッキ層を溶融させることができるため、スズメッキ層を溶融させる際の、駆動用磁石と金属部材との相対位置のずれを防止することが可能になる。
【0017】
本発明において、除去跡は、第2の金属部材にその基端部が繋がる凸部の先端に形成され、除去跡の幅は、凸部の基端の幅よりも狭くなっていること、および/または、除去跡の厚みは、凸部の基端の厚みよりも薄くなっていることが好ましい。このように構成すると、一体化された複数の第2の金属部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に、一体化された複数の第2の金属部材から連結部材を除去しやすくなる。したがって、一体化された複数の第2の金属部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に、一体化された複数の第2の金属部材から連結部材を除去する際に、駆動用磁石に固定される第2の金属部材の固定位置がずれるのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、光学装置を小型化した場合であっても、可動体を適切に移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1にかかる光学装置の斜視図である。
図2図1のE−E断面の断面図である。
図3図1に示すカバー部材に駆動用磁石が固定されている状態を示す斜視図である。
図4図1に示す光学装置から可動体およびベース部材等を取り外した状態を反被写体側から示す図である。
図5図3に示すカバー部材、駆動用磁石および磁性部材原体の接合前の状態を示す分解斜視図である。
図6図5に示すカバー部材、駆動用磁石および磁性部材原体の接合後の状態を示す斜視図である。
図7図6に示すカバー部材、駆動用磁石および磁性部材原体の接合後の状態を反被写体側から示す斜視図である。
図8】本発明の他の実施の形態にかかる磁性部材原体を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態2にかかる光学装置の斜視図である。
図10図9のH−H断面の断面図である。
図11図10に示す駆動用コイル、駆動用磁石および磁石連結部材等の分解斜視図である。
図12図11に示す駆動用磁石に磁石連結部材が固定されている状態を示す斜視図である。
図13図12に示す駆動用磁石および磁石連結部材の側面図である。
図14図10に示すケース体、駆動用コイル、駆動用磁石および磁石連結部材等を反被写体側から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[実施の形態1]
(光学装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる光学装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すカバー部材10に駆動用磁石13が固定されている状態を示す斜視図である。図4は、図1に示す光学装置1から可動体2およびベース部材11等を取り外した状態を反被写体側から示す図である。なお、実施の形態1では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、図1等のZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0026】
本形態の光学装置1は、撮影用のレンズを光軸方向へ移動させて光学像の焦点位置を合わせるための構成を備えるレンズ駆動装置であり、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されて使用される。以下では、本形態の光学装置1を「レンズ駆動装置1」とする。
【0027】
レンズ駆動装置1は、図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。すなわち、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略四角形状となるように形成されている。本形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0028】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0029】
レンズ駆動装置1は、図1図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。可動体2は、図示を省略する板バネを介して固定体3に移動可能に保持されている。板バネは、たとえば、可動体2に固定される可動体側固定部と、固定体3に固定される固定体側固定部と、可動体側固定部と固定体側固定部とを繋ぐバネ部とから構成されており、可動体2の上端側および下端側に配置されている。
【0030】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の4つの側面(外周面)を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の反被写体側の端面を構成するベース部材11とを備えている。
【0031】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されており、レンズホルダ7の内周側に、複数のレンズが固定されている。スリーブ8は、略筒状に形成されており、スリーブ8の内周面に、レンズホルダ7の外周面が固定されている。また、スリーブ8の下端側には、鍔部8aが形成されている。
【0032】
カバー部材10は、磁性材料で形成されている。本形態のカバー部材10は、磁性を有する薄鋼板で形成されている。カバー部材10の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状(略有底四角筒状)に形成されている。底部10aは、上側に配置されており、レンズ駆動装置1の被写体側の端面を構成している。底部10aの中心には、円形の貫通孔10cが形成されている。カバー部材10は、駆動機構4および可動体2の外周側を囲むように配置されている。ベース部材11は、略正方形の枠状に形成されており、カバー部材10の下端側に取り付けられている。
【0033】
駆動機構4は、レンズ駆動装置1の四隅(具体的には、カバー部材10の内側の四隅)に配置される略三角柱状の4個の駆動用磁石13と、スリーブ8に固定される1個の駆動用コイル14とを備えている。
【0034】
駆動用磁石13は、ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とするネオジウム磁石である。この駆動用磁石13は、上下方向から見たときの形状が略直角二等辺三角形となるように形成されており、光軸Lに略平行でかつ互いに直交する矩形状の2個の第1の側面(第1側面)13aと、光軸Lに略平行でかつ2個の第1側面13aを繋ぐ矩形状の1個の第2の側面(第2側面)13bとを備えている。駆動用磁石13の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0035】
駆動用磁石13は、カバー部材10の筒部10bの内周面と第1側面13aとが略平行に、かつ、所定の隙間をあけて対向するように配置されている。すなわち、カバー部材10の内側の対角位置に配置される2個の駆動用磁石13は、第2側面13bが互いに対向するように配置されている。また、4個の駆動用磁石13は、カバー部材10の底部10aに固定されている。具体的には、4個の駆動用磁石13の上端面が、底部10aの下面に当接した状態で、底部10aの下面に固定されている。また、4個の駆動用磁石13の上端面は、底部10aによって完全に覆われている。
【0036】
本形態では、駆動用磁石13は、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層15によって底部10aと接合されている。すなわち、図2に示すように、底部10aの下面と駆動用磁石13の上面との間に配置される接合層15によって、駆動用磁石13と底部10aとが接合されている。接合層15は、スズ、銅を含むスズ合金、金を含むスズ合金、銀を含むスズ合金、あるいは、ビスマスを含むスズ合金等によって構成されている。
【0037】
駆動用磁石13の下端面には、磁性材料で形成された平板状の磁性部材17が固定されている。本形態の磁性部材17は、磁性を有するステンレス鋼板で形成されている。磁性部材17の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0038】
磁性部材17は、上下方向から見たときの形状が駆動用磁石13と同様の略直角二等辺三角形状となるように形成されており、互いに直交する2個の第1の端面(第1端面)17aと、2個の第1端面17aを繋ぐ1個の第2の端面(第2端面)17bとを備えている。この磁性部材17は、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように駆動用磁石13の下端面に固定されている。また、磁性部材17は、第1端面17aが駆動用磁石13の第1側面13aと同一平面状に配置され、第2端面17bが駆動用磁石13の第2側面13bと同一平面状に配置されるように、駆動用磁石13の下端面に固定されている。
【0039】
本形態では、磁性部材17は、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層18によって駆動用磁石13と接合されている。すなわち、図2に示すように、駆動用磁石13の下面と磁性部材17の上面との間に配置される接合層18によって、駆動用磁石13と磁性部材17とが接合されている。接合層18は、接合層15を構成するスズ系金属と同様のスズ系金属で構成されており、スズ、銅を含むスズ合金、金を含むスズ合金、銀を含むスズ合金、あるいは、ビスマスを含むスズ合金等によって構成されている。
【0040】
駆動用磁石13は、上端面の磁極と下端面の磁極とが異なるように、上下方向で2極に着磁されている。たとえば、駆動用磁石13の上端面がS極となり、駆動用磁石13の下端面がN極となるように着磁されている。また、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aは、カバー部材10の筒部10bによって外周側から覆われている。
【0041】
そのため、図2に示すように、レンズ駆動装置1では、カバー部材10の筒部10b、底部10a、駆動用磁石13および磁性部材17を通過するとともに、磁性部材17の下面や第1端面17aから筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界Fが形成されている。この磁界Fは、筒部10bの内周面の、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aに略平行に対向配置される部分に向かって、磁性部材17の下面や第1端面17aから回り込んでいる。なお、図2では、図示を省略しているが、駆動用磁石13の下端面と磁性部材17の上面との当接部分の近傍からも筒部10bの内周面に向かって磁界Fが回り込んでいる。
【0042】
駆動用コイル14は、上下方向から見たときの形状が略正方形状となるように扁平な略四角筒状に巻回されている。上下方向における駆動用コイル14の幅は、磁性部材17の厚さよりも厚くなっている。この駆動用コイル14は、スリーブ8の鍔部8aの上面に接着等で固定されている。
【0043】
駆動用コイル14は、図4に示すように、カバー部材10の筒部10bの内周面に沿って配置されており、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分は、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aとカバー部材10の筒部10bとの隙間に配置されている。すなわち、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分の内周面は、前後方向または左右方向において、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aと所定の隙間を介して対向している。すなわち、駆動用コイル14の一部は、駆動用磁石13および磁性部材17の一部を外周側から覆うように駆動用磁石13および磁性部材17の一部と所定の隙間を介して対向配置されている。また、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分の内周面は、前後方向または左右方向において、駆動用磁石13の下面と磁性部材17の上面との間に配置される接合層18とも所定の隙間を介して対向している(図2参照)。また、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分は、磁性部材17の下面や第1端面17aから筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界Fの中に配置されている。
【0044】
本形態では、可動体2の可動範囲において、駆動用コイル14の内周側に磁性部材17が常に配置されるように、駆動用コイル14が配置されている。すなわち、可動体2の可動範囲において、駆動用コイル14の下端面が磁性部材17の下面よりも上側へ移動せず、かつ、駆動用コイル14の上端面が磁性部材17の上面よりも下側へ移動しないように、駆動用コイル14が配置されている。駆動用コイル14に電流が供給されると、駆動用磁石13と駆動用コイル14との作用で、可動体2が上下方向(光軸方向)へ移動する。すなわち、駆動用磁石13と駆動用コイル14とは、固定体3に対して可動体2を光軸方向へ相対移動させる。
【0045】
なお、本形態のカバー部材10および磁性部材17は、駆動用磁石13に固定される金属部材である。また、本形態のカバー部材10は、第1の金属部材であり、磁性部材17は、第2の金属部材である。
【0046】
(駆動用磁石、カバー部材および磁性部材の接合方法)
図5は、図3に示すカバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21の接合前の状態を示す分解斜視図である。図6は、図5に示すカバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21の接合後の状態を示す斜視図である。図7は、図6に示すカバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21の接合後の状態を反被写体側から示す斜視図である。
【0047】
以下、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合方法を説明する。
【0048】
カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13の表面には、接合後に接合層15、18となるスズメッキ層がニッケルメッキ層を覆うように形成されている。また、カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13は、着磁されていない。なお、本形態では、駆動用磁石13と接合される前のカバー部材10の表面および磁性部材17の表面に、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されていないが、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されても良い。ただし、スズメッキ層は、後述の誘導加熱によって溶融して変色するため、レンズ駆動装置1の外周面を構成するカバー部材10には、スズメッキ層が形成されていないことが好ましい。
【0049】
また、駆動用磁石13に接合される前の磁性部材17は、4個の磁性部材17を一体化するための連結部材20によって連結されており、連結部材20によって連結された4個の磁性部材17は、磁性部材原体21となっている。連結部材20は、略正方形の枠状に形成される基部20aと、基部20aの4辺のそれぞれの略中心から外側へ突出する略長方形状の4個の連結部20bとを備えており、連結部20bによって、基部20aと4個の磁性部材17とが繋がれている。連結部20bと磁性部材17との境界部分における連結部20bの幅方向の両側には、図7に示すように、第2端面17bから磁性部材17側へ窪む略半円弧状の切欠部17cが形成されている。また、基部20aの4隅のうちの対角線上の2箇所には、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合時等に、磁性部材原体21を取り扱うための摘み部20cが形成されている。
【0050】
カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とを接合する際には、まず、接合用治具に形成される窪みの中へ磁性部材原体21をセットして、磁性部材原体21を位置決めする。
【0051】
その後、接合用治具に形成される4個のガイド部材22(図4参照)のそれぞれに4個の駆動用磁石13のそれぞれを押し当てて、駆動用磁石13を磁性部材17上にセットする。ガイド部材22は、図4に示すように、略L形状に形成されており、駆動用磁石13の第1側面13aをガイド部材22の内側面に押し当てると、第1側面13aが磁性部材17の第1端面17aと同一平面状に配置され、駆動用磁石13の第2側面13bが磁性部材17の第2端面17bと同一平面状に配置されるように、磁性部材17上に駆動用磁石13がセットされる。その後、4個の駆動用磁石13の第2側面13bに当接するように形成された略円柱状の入れ子23(図4参照)がセットされて、駆動用磁石13が位置決めされる。
【0052】
その後、カバー部材10の底部10aの下面と駆動用磁石13の上端面とが当接するように、カバー部材10を駆動用磁石13および磁性部材原体21にかぶせて、カバー部材10をセットする。このときには、カバー部材10の筒部10bの内周面がガイド部材22の外側面に案内されて、カバー部材10が位置決めされる。
【0053】
その後、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21を誘導コイルの中に配置する。また、カバー部材10と駆動用磁石13とが密着し、かつ、駆動用磁石13と磁性部材原体21とが密着するように加圧しながら、誘導コイルに電流を供給する。誘導コイルに電流が供給されると、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21に生じる渦電流の作用で、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21が加熱されて、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層が溶融する。すなわち、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層は、誘導加熱によって溶融する。また、誘導コイルへの電流の供給を停止すると、溶融したスズ系金属が固化して接合層15、18が形成され、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21とが接合層15、18によって接合される。なお、誘導加熱時には、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21は、約230℃〜300℃に加熱される。
【0054】
その後、磁性部材原体21の連結部材20を除去する。具体的には、連結部20bと磁性部材17との境界部分を切断して、連結部材20を除去する。連結部20bと磁性部材17との境界部分は、たとえば、機械的な切断あるいはレーザ切断等で切断される。連結部材20が除去されると、磁性部材17には、図4に示すように、除去跡17dが形成される。除去跡17dは、その基端部が磁性部材17に繋がる凸部17eの先端に形成される。なお、本形態では、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とが接合された後に、4個の駆動用磁石13を同時に着磁する。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13の表面のスズメッキ層が溶融、固化して形成された接合層18によって、駆動用磁石13と磁性部材17とが接合されている。そのため、駆動用磁石13と磁性部材17との間から接合層18がはみ出さない。したがって、本形態では、駆動用磁石13や駆動用コイル14の小型化に起因する駆動力の低下を防止するために、駆動用磁石13と駆動用コイル14との隙間を狭くした場合であっても、駆動用磁石13、磁性部材17および接合層18と駆動用コイル14との隙間を精度良く形成することが可能になり、その結果、可動体2側と固定体3側との干渉を防止することが可能になる。すなわち、本形態では、駆動用磁石13や駆動用コイル14を小型化するとともに、駆動用磁石13と駆動用コイル14との隙間を狭くすることで、レンズ駆動装置1を小型化した場合であっても、可動体2側と固定体3側との干渉を防止して、可動体2を適切に移動させることが可能になる。
【0056】
また、本形態では、駆動用磁石13と磁性部材17との間から接合層18がはみ出さないため、駆動用磁石13、磁性部材17および接合層18とスリーブ8の外周面との隙間を精度良く形成することが可能になる。したがって、駆動用磁石13の内周側においても、可動体2側と固定体3側との干渉を防止することが可能になる。
【0057】
本形態では、カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層は、誘導加熱によって溶融している。すなわち、本形態では、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21を誘導コイルの中に配置して、誘導コイルに電流を供給することでスズメッキ層を溶融している。そのため、スズメッキ層を溶融させる際の、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21の温度を均一化させて、カバー部材10と駆動用磁石13との接合強度のばらつき、および、駆動用磁石13と磁性部材原体21との接合強度のばらつきを防止することが可能になる。また、本形態では、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21を誘導コイルに接触させることなく、スズメッキ層を溶融させることができるため、スズメッキ層を溶融させる際の、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21との相対位置のずれを防止することが可能になる。
【0058】
本形態では、カバー部材10の底部10aと磁性部材原体21との間に駆動用磁石13を挟んだ状態で、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層を溶融、固化させることで、接合層15、18が形成されている。そのため、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21とを一度の作業で固定することができる。したがって、本形態では、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21との固定作業が容易になる。
【0059】
本形態では、駆動用磁石13に接合される前の4個の磁性部材17は、連結部材20によって連結され、一体化されている。そのため、駆動用磁石13に接合される際の4個の磁性部材17間の相対位置精度を高めることが可能になり、その結果、組立後のレンズ駆動装置1において、4個の磁性部材17間の相対位置精度を高めることが可能になる。
【0060】
本形態では、スズ系金属からなる接合層15、18によって、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とが接合されている。そのため、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とが接着剤によって接合される場合と比較して、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材17を通過する磁束のロスを低減することが可能になる。したがって、本形態では、効率の良い磁気回路を形成することが可能になる。また、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とが接着剤によって接合される場合と比較して、本形態では、接合時間を短縮することができる。
【0061】
(連結部材の変形例)
図8は、本発明の他の実施の形態にかかる磁性部材原体31、33、35、37を示す平面図である。
【0062】
上述した形態では、略正方形の枠状に形成される基部20aと、基部20aの4辺のそれぞれの略中心から外側へ突出する略長方形状の4個の連結部20bとを備える連結部材20によって4個の磁性部材17が一体化されて、磁性部材原体21が構成されている。この他にもたとえば、図8(A)に示すように、略V形状に形成される2個の第1基部30aと、2個の第1基部30aを繋ぐ2個の第2基部30bと、第1基部30aから外側へ突出する連結部30cとを備える連結部材30によって4個の磁性部材17が一体化されて、磁性部材原体31が構成されても良い。また、図8(B)に示すように、略V形状に形成される2個の第1基部32aと、2個の第1基部32aを繋ぐ2個の第2基部32bと、第1基部32aから外側へ突出する連結部32cとを備える連結部材32によって4個の磁性部材17が一体化されて、磁性部材原体33が構成されても良い。
【0063】
連結部材30、32では、1個の第1基部30a、32aに2個の連結部30c、32cが形成されており、連結部30c、32cによって、1個の第1基部30a、32aと2個の磁性部材17とが繋がれている。連結部30cと磁性部材17との間には境界部30dが形成され、第1基部30aと第2基部30bとの間には境界部30eが形成されている。連結部32cと磁性部材17との間には境界部32dが形成され、第1基部32aと第2基部32bとの間には境界部32eが形成されている。境界部30d、30e、32d、32eは、その中心に向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。
【0064】
磁性部材原体31、33の場合には、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体31、33とを接合した後に、境界部30d、30e、32d、32eを、たとえば、繰り返しで折り曲げて切断することで連結部材30、32が除去される。具体的には、まず、境界部30e、32eを切断することで、第2基部30b、32bが除去され、その後、境界部30d、32dを切断することで、第1基部30a、32aが除去される。このときには、幅が狭くかつ厚みの薄い境界部30d、30e、32d、32eの中心位置で、境界部30d、30e、32d、32eが切断される。
【0065】
連結部材30、32が除去された後の磁性部材17には、境界部30d、32dの一部を構成する凸部17gが形成される。凸部17gの先端は、連結部材30、32が除去される際に形成された除去跡17hとなっており、除去跡17hの幅は、凸部17gの基端の幅よりも狭くなっており、かつ、除去跡17hの厚みは、凸部17gの基端の厚みよりも薄くなっている。なお、連結部材30、32を除去する際の状況によっては、除去跡17hの厚みが凸部17gの基端の厚みより厚くなることもある。
【0066】
また、図8(C)に示すように、略V形状に形成される2個の第1基部34aと、2個の第1基部34aを繋ぐ1個の第2基部34bとを備える連結部材34によって4個の磁性部材17が一体化されて、磁性部材原体35が構成されても良い。また、図8(D)に示すように、略V形状に形成される2個の第1基部36aと、2個の第1基部36aを繋ぐ1個の第2基部36bとを備える連結部材36によって4個の磁性部材17が一体化されて、磁性部材原体37が構成されても良い。
【0067】
連結部材34、36では、1個の第1基部34a、36aに2個の磁性部材17が繋がれている。第1基部34aと磁性部材17との間には境界部34dが形成され、第1基部34aと第2基部34bとの間には境界部34eが形成されている。第1基部36aと磁性部材17との間には境界部36dが形成され、第1基部36aと第2基部36bとの間には境界部36eが形成されている。また、第2基部36bには、第2基部36bを折り曲げるための折曲部36fが形成されている。境界部34d、34e、36dは、その中心に向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。境界部36eおよび折曲部36fは、その中心に向かって、その厚みが薄くなるように形成されている。
【0068】
磁性部材原体35の場合には、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体35とを接合した後に、境界部34dを、たとえば、繰り返しで折り曲げて切断することで連結部材34が除去される。具体的には、まず、境界部34eを折り曲げて、第2基部34bを掴みながら、境界部34dを繰り返しで折り曲げて切断することで、連結部材34が除去される。このときには、幅が狭くかつ厚みの薄い境界部34dの中心位置で、境界部34dが切断される。
【0069】
また、磁性部材原体37の場合には、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体37とを接合した後に、境界部36dを、たとえば、繰り返しで折り曲げて切断することで連結部材36が除去される。具体的には、まず、折曲部36fを折り曲げて、第2基部36bを掴みながら、境界部36dを繰り返しで折り曲げて切断することで、連結部材36が除去される。このときには、幅が狭くかつ厚みの薄い境界部36dの中心位置で、境界部36dが切断される。
【0070】
連結部材34、36が除去された後の磁性部材17には、連結部材30、32が除去された後の磁性部材17と同様に、境界部34d、36dの一部を構成する凸部17gが形成される。凸部17gの先端は、連結部材34、36が除去される際に形成された除去跡17hとなっており、除去跡17hの幅は、凸部17gの基端の幅よりも狭くなっており、かつ、除去跡17hの厚みは、凸部17gの基端の厚みよりも薄くなっている。なお、連結部材30、32を除去する際の状況によっては、除去跡17hの厚みが凸部17gの基端の厚みより厚くなることもある。
【0071】
磁性部材原体31、33、35、37では、境界部30d、32d、34d、36dは、その中心に向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されているため、磁性部材原体31、33、35、37から連結部材30、32、34、36を除去しやすくなっている。したがって、磁性部材原体31、33、35、37から連結部材30、32、34、36を除去する際に、駆動用磁石13に固定された磁性部材17の固定位置がずれるのを防止することが可能である。なお、境界部30d、32d、34d、36dが、その厚みが一定で、かつ、その中心に向かってその幅が狭くなるように形成されている場合、または、境界部30d、32d、34d、36dが、その幅が一定で、かつ、その中心に向かってその厚みが薄くなるように形成されている場合であっても、この効果を得ることは可能である。
【0072】
(実施の形態1の変形例)
実施の形態1では、駆動用磁石13に接合される前の磁性部材17は、連結部材20によって連結されているが、駆動用磁石13に接合される前の磁性部材17は、連結部材20によって連結されていなくても良い。すなわち、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とを接合する際に、分離された4個の磁性部材17を接合用治具にセットしても良い。
【0073】
実施の形態1では、駆動機構4は、カバー部材10の筒部10bの内周面に沿って配置される1個の駆動用コイル14を備えているが、駆動機構4は、駆動用コイル14に代えて、略三角筒状に巻回され、その内周側が駆動用磁石13の側面と所定の隙間を介して対向配置される4個の駆動用コイルを備えていても良い。この場合には、この駆動用コイルは、上下方向から見たときの形状が略直角二等辺三角形状となるように巻回され、駆動用コイルの内周面と駆動用磁石13の側面とが所定の隙間を介して略平行になるように、スリーブ8に固定されている。
【0074】
実施の形態1では、駆動用磁石13は略三角柱状に形成されているが、駆動用磁石13は略三角柱状以外の略多角柱状、略円柱状または略楕円柱状に形成されても良い。また、実施の形態1では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状以外の略多角形状となるように形成されても良いし、光軸方向から見たときの形状が略円形状あるいは略楕円形状となるように形成されても良い。
【0075】
実施の形態1では、上下方向から見たときの駆動用磁石13の形状と磁性部材17の形状とが略同形状となっているが、上下方向から見たときの駆動用磁石13の形状と磁性部材17の形状とが異なっていても良い。また、実施の形態1では、レンズ駆動装置1の四隅に駆動用磁石13が配置されているが、可動体2の駆動力を得ることができるのであれば、レンズ駆動装置1の四隅の3箇所、2箇所あるいは1箇所のみに駆動用磁石13が配置されても良い。
【0076】
[実施の形態2]
(光学装置の構成)
図9は、本発明の実施の形態2にかかる光学装置51の斜視図である。図10は、図9のH−H断面の断面図である。図11は、図10に示す駆動用コイル67、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75等の分解斜視図である。図12は、図11に示す駆動用磁石68に磁石連結部材74、75が固定されている状態を示す斜視図である。図13は、図12に示す駆動用磁石68および磁石連結部材74、75の側面図である。図14は、図10に示すケース体62、駆動用コイル67、駆動用磁石68および磁石連結部材74等を反被写体側から示す図である。なお、実施の形態2では、図9に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0077】
本形態の光学装置51は、携帯電話等の携帯機器、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、オートフォーカス機能と振れ補正機能とを備えている。この光学装置51は、全体として略四角柱状に形成されている。本形態では、光学装置51は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されており、光学装置51の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0078】
光学装置51は、図9図10に示すように、レンズおよび撮像素子を保持する可動体としてのカメラモジュール52と、光軸Lが傾くようにカメラモジュール52を揺動可能に保持する固定体53と、カメラモジュール52と固定体53とを繋ぐ板バネ54と、撮像素子上に結像される光学像の振れを補正するために固定体53に対してカメラモジュール52を揺動させる揺動駆動機構55とを備えている。本形態では、上下方向は、カメラモジュール52が揺動していないときのカメラモジュール52の光軸方向とほぼ一致する。また、本形態では、カメラモジュール52の下端に撮像素子が搭載されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0079】
カメラモジュール52は、全体として略四角柱状に形成されている。本形態では、カメラモジュール52は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。このカメラモジュール52は、レンズを保持するとともに光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する保持体と、保持体に対して可動体を光軸方向へ駆動するためのレンズ駆動機構とを備えている。レンズ駆動機構は、たとえば、駆動用コイルと駆動用磁石とによって構成されている。なお、レンズ駆動機構は、圧電素子あるいは形状記憶合金等によって構成されても良い。
【0080】
カメラモジュール52の下面には、基板57が固定されている。基板57には、撮像素子が実装されている。また、基板57には、カメラモジュール52の傾きの変化を検出するためのジャイロスコープが実装されている。基板57には、FPC(フレキシブルプリント基板)58が接続されており、FPC58は、光学装置51の下端側で引き回されて、光学装置51の側面から引き出されている。また、基板57の下面には、図10に示すように、後述の球状部材64が当接する当接板59が固定されている。
【0081】
固定体53は、光学装置51の前後左右の4つの側面(外周面)を構成するケース体62と、光学装置51の下面側を構成する下ケース体63とを備えている。ケース体62は、略四角筒状に形成されており、カメラモジュール52を外周側から囲むように配置されている。下ケース体63は、底部63aと筒部63bとを有する底付きの略四角筒状(略有底四角筒状)に形成されている。
【0082】
下ケース体63の底部63aは、下側に配置されており、光学装置51の下面を構成している。また、底部63aの中心には、カメラモジュール52の揺動の支点となる球状部材64の下端側が配置される配置孔63cが形成されている。本形態では、球状部材64と配置孔63cとによって、カメラモジュール52の揺動中心となる支点部65が構成されている。支点部65は、カメラモジュール52の下側に配置されており、球状部材64の上端は、当接板59の下面に当接している。
【0083】
揺動駆動機構55は、4個の駆動用コイル67と、4個の駆動用コイル67のそれぞれに対向配置される4個の駆動用磁石68とを備えている。
【0084】
4個の駆動用コイル67は、図11に示すように、FPC69自体に形成されたパターンコイルである。また、駆動用コイル67は、略長方形状に巻回されて形成されており、互いに略平行な2個の長辺部67aを備えている。FPC69は、4個の駆動用コイル67のそれぞれが、ケース体62の内周面を構成する4つの内側面のそれぞれに配置されるように、ケース体62の内周面に沿って配置されている。また、FPC69は、長辺部67aが前後方向または左右方向と略平行になるように、ケース体62の内周面に固定されている。FPC69は、中継用のFPC70を介して、FPC58に接続されている。なお、駆動用コイル67は、空芯状に巻回された空芯コイルであっても良い。この場合には、ケース体62の4つの内側面のそれぞれに駆動用コイル67が固定されても良いし、FPC69に4個の駆動用コイル67が実装されても良い。
【0085】
駆動用磁石68は、ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とするネオジウム磁石である。この駆動用磁石68は、略長方形の平板状に形成されている。また、駆動用磁石68は、略長方形の平板状に形成された磁石片72と磁石片73との2個の磁石片によって構成されている。具体的には、磁石片72の下面と磁石片73の上面とが当接した状態で、磁石片72と磁石片73とが互いに接着固定されることで駆動用磁石68が形成されている。駆動用磁石68の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0086】
4個の駆動用磁石68の上面には、略正方形の枠状に形成される磁石連結部材74が固定され、4個の駆動用磁石68の下面には、略正方形の枠状に形成される磁石連結部材75が固定されている。磁石連結部材74、75は、ステンレス鋼板で形成されている。磁石連結部材74、75の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0087】
本形態では、駆動用磁石68と磁石連結部材74とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層76によって接合されている。同様に、駆動用磁石68と磁石連結部材75とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層77によって接合されている。すなわち、図10図13に示すように、磁石連結部材74の下面と駆動用磁石68の上面との間に配置される接合層76によって、磁石連結部材74と駆動用磁石68とが接合され、磁石連結部材75の上面と駆動用磁石68の下面との間に配置される接合層77によって、磁石連結部材75と駆動用磁石68とが接合されている。接合層76、77は、スズ、銅を含むスズ合金、金を含むスズ合金、銀を含むスズ合金、あるいは、ビスマスを含むスズ合金等によって構成されている。
【0088】
なお、本形態の磁石連結部材74、75は、駆動用磁石68に固定される金属部材である。また、磁石連結部材74、75の一方は、第1の金属部材であり、磁石連結部材74、75の他方は、第2の金属部材である。
【0089】
4個の駆動用磁石68は、カメラモジュール52の外周面を構成する4つの外側面のそれぞれに固定されており、駆動用コイル67よりもケース体62の内周側に配置されている。本形態では、4個の駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とが接合されて、4個の駆動用磁石68が磁石連結部材74、75によって繋がれた後に、カメラモジュール52の外側面に4個の駆動用磁石68が固定される。
【0090】
磁石片72は、一方の側面に形成される磁極と他方の側面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。すなわち、カメラモジュール52に固定される前後左右の内側面に形成される磁極と、駆動用コイル67に対向する前後左右の外側面に形成される磁極とが異なる磁極となるように、磁石片72は着磁されている。同様に、磁石片73は、カメラモジュール52に固定される前後左右の内側面に形成される磁極と、駆動用コイル67に対向する前後左右の外側面に形成される磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。また、磁石片72、73は、磁石片72の内側面の磁極と磁石片73の内側面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。すなわち、磁石片72、73は、磁石片72の外側面の磁極と磁石片73の外側面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。
【0091】
上述のように、駆動用コイル67は、ケース体62の内周面に沿って配置されており、図14に示すように、カメラモジュール52の外側面に固定される駆動用磁石68と、ケース体62の内周面との隙間に配置されている。すなわち、駆動用コイル67は、前後方向または左右方向において、駆動用磁石68と所定の隙間を介して対向している。また、駆動用コイル67は、前後方向または左右方向において、接合層76、77とも所定の隙間を介して対向している(図10参照)。
【0092】
板バネ54は、磁石連結部材75に固定される可動側固定部と、固定体53に固定される固定側固定部と、可動側固定部と固定側固定部とを繋ぐ複数のバネ部とを備えている。本形態では、固定側固定部に対してバネ部が撓むことで、磁石連結部材75および駆動用磁石68等を介して可動側固定部に固定されるカメラモジュール52の揺動動作が可能となっている。また、板バネ54は、球状部材64の上端と当接板59とを確実に当接させるとともに、球状部材64の下端側と下ケース体63の配置孔63cの縁とを確実に当接させるための与圧が発生するように(すなわち、カメラモジュール52を下方向へ付勢する付勢力が発生するように)、撓んだ状態で固定されている。
【0093】
以上のように構成された光学装置51では、基板57に実装されるジャイロスコープでカメラモジュール52の傾きの変化が検出されると、ジャイロスコープでの検出結果に基づいて、駆動用コイル67に電流が供給される。駆動用コイル67に電流が供給されると、支点部65を中心に、左右方向および/または前後方向を軸方向として、カメラモジュール52が光軸Lを傾けるように揺動して、振れが補正される。
【0094】
(駆動用磁石と磁石連結部材との接合方法)
磁石連結部材74、75と接合される前の駆動用磁石68の表面には、接合後に接合層76、77となるスズメッキ層がニッケルメッキ層を覆うように形成されている。また、磁石連結部材74、75と接合される前の駆動用磁石68は、着磁されていない。なお、本形態では、駆動用磁石68と接合される前の磁石連結部材74、75の表面に、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されていないが、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されても良い。
【0095】
駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とを接合する際には、まず、磁石連結部材74と磁石連結部材75との間に4個の駆動用磁石68を挟んだ状態で、接合用治具に駆動用磁石68および磁石連結部材74、75をセットする。その後、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75を誘導コイルの中に配置する。また、駆動用磁石68と磁石連結部材74とが密着し、かつ、駆動用磁石68と磁石連結部材75とが密着するように加圧しながら、誘導コイルに電流を供給する。誘導コイルに電流が供給されると、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75に生じる渦電流の作用で、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75が加熱されて、駆動用磁石68の表面のスズメッキ層が溶融する。また、誘導コイルへの電流の供給を停止すると、溶融したスズ系金属が固化して接合層76、77が形成され、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とが接合層76、77によって接合される。なお、本形態では、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とが接合された後に、4個の駆動用磁石68を同時に着磁する。また、誘導加熱時には、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75は、約230℃〜300℃に加熱される。
【0096】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、磁石連結部材74、75と接合される前の駆動用磁石68の表面のスズメッキ層が溶融、固化して形成された接合層76、77によって、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とが接合されている。そのため、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75との間から接合層76、77がはみ出さない。したがって、本形態では、駆動用磁石68や駆動用コイル67の小型化に起因する駆動力の低下を防止するために、駆動用磁石68と駆動用コイル67との隙間を狭くした場合であっても、駆動用磁石68および接合層76、77と駆動用コイル67との隙間を精度良く形成することが可能になり、その結果、カメラモジュール52側と固定体53側との干渉を防止することが可能になる。すなわち、本形態では、駆動用磁石68や駆動用コイル67を小型化するとともに、駆動用磁石68と駆動用コイル67との隙間を狭くすることで、光学装置51を小型化した場合であっても、カメラモジュール52側と固定体53側との干渉を防止して、カメラモジュール52を適切に揺動させることが可能になる。
【0097】
本形態では、磁石連結部材74、75と接合される前の駆動用磁石68の表面に形成されるスズメッキ層は、誘導加熱によって溶融している。すなわち、本形態では、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75を誘導コイルの中に配置して、誘導コイルに電流を供給することでスズメッキ層を溶融している。そのため、スズメッキ層を溶融させる際の、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75の温度を均一化させて、駆動用磁石68と磁石連結部材74との接合強度のばらつき、および、駆動用磁石68と磁石連結部材75との接合強度のばらつきを防止することが可能になる。また、本形態では、駆動用磁石68および磁石連結部材74、75を誘導コイルに接触させることなく、スズメッキ層を溶融させることができるため、スズメッキ層を溶融させる際の、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75との相対位置のずれを防止することが可能になる。
【0098】
本形態では、磁石連結部材74と磁石連結部材75との間に駆動用磁石68を挟んだ状態で、駆動用磁石68の表面のスズメッキ層を溶融、固化させることで、接合層76、77が形成されている。そのため、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75とを一度の作業で固定することができる。したがって、本形態では、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75との固定作業が容易になる。
【0099】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2では、磁石連結部材74および磁石連結部材75が駆動用磁石68に固定されている。この他にもたとえば、磁石連結部材74または磁石連結部材75の一方のみが駆動用磁石68に固定されても良い。
【0100】
実施の形態2では、光学装置51は、オートフォーカス機能を備えているが、光学装置51は、オートフォーカス機能を備えていなくても良い。すなわち、カメラモジュール52は、レンズ駆動機構を備えていなくても良い。
【0101】
実施の形態2では、光学装置51は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、光学装置51は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良い。また、光学装置51は、光軸方向から見たときの形状がその他の多角形状となるように形成されても良いし、光軸方向から見たときの形状が円形状や楕円形状となるように形成されても良い。
【0102】
[他の実施の形態]
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0103】
実施の形態1では、カバー部材10と磁性部材原体21との間に駆動用磁石13を挟んだ状態で、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層を溶融、固化させることで、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21とを一度に接合している。この他にもたとえば、まず、カバー部材10と駆動用磁石13とを接合し、その後、駆動用磁石13と磁性部材原体21とを接合しても良い。同様に、実施の形態2では、磁石連結部材74と磁石連結部材75との間に駆動用磁石68を挟んだ状態で、駆動用磁石68の表面のスズメッキ層を溶融、固化させることで、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75を一度に接合しているが、まず、駆動用磁石68と磁石連結部材74とを接合し、その後、駆動用磁石68と磁石連結部材75とを接合しても良い。
【0104】
実施の形態1では、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合時に、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を誘導加熱によって溶融させている。この他にもたとえば、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合時に、カバー部材10や磁性部材17等にヒータチップを接触させて、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良いし、カバー部材10と駆動用磁石13との境界部、および、駆動用磁石13と磁性部材17との境界部にレーザを照射することで、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良い。
【0105】
同様に、実施の形態2では、駆動用磁石68と磁石連結部材74、75との接合時に、駆動用磁石68の表面に形成されるスズメッキ層を誘導加熱によって溶融させているが、磁石連結部材74、75等にヒータチップを接触させて、駆動用磁石68の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良いし、駆動用磁石68と磁石連結部材74との境界部、および、駆動用磁石68と磁石連結部材75との境界部にレーザを照射することで、駆動用磁石68の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良い。
【符号の説明】
【0106】
1 レンズ駆動装置(光学装置)
2 可動体
3、53 固定体
10 カバー部材(金属部材、第1の金属部材)
13、68 駆動用磁石
14、67 駆動用コイル
15、18、76、77 接合層
17 磁性部材(金属部材、第2の金属部材)
17d、17h 除去跡
17g 凸部
20、30、32、34、36 連結部材
51 光学装置
52 カメラモジュール(可動体)
62 ケース体
74、75 磁石連結部材(金属部材)
L 光軸
Z 光軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14