(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2記載のピン状フィン一体型ヒートシンクを製造する方法であって、金属材料を加熱処理する加熱工程と、多数のフィン成形用穴部を有する成形ダイ上で加熱処理後の前記金属材料を鍛造することにより、前記板状部の周縁部の少なくとも一部を厚肉部にするとともに、該厚肉部を除く部分に前記ピン状フィン及び該ピン状フィンを立設した薄肉のフィン立設部を成形する熱間鍛造工程と、前記厚肉部を冷間で鍛造することにより前記板状部の周縁部を成形する冷間鍛造工程とを有することを特徴とするピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品においては、電子部品を正常に動作させるために、熱を外部に放散させるヒートシンク或いはヒートスプレッダが取り付けられる。これらの素材としては、熱伝導率が高く、軽量で加工性の良いアルミニウムや銅が用いられる。
特許文献1にはヒートスプレッダ(ヒートシンク)用銅合金として、0.2%耐力が100〜200N/mm
2、熱伝導率が350W/m・K以上、加工硬化指数が0.14〜0.18、圧延表面板の幅方向の結晶粒径が25μm以下であるCu基合金が開示されている。また、Fe、Ni、Coのうち少なくとも1種類以上とPを合計で0.05〜0.3wt%含有し、残部がCuと不可避成分からなり、断面減少率40%以下の冷間鍛造後に600℃で30分間熱処理した後の結晶粒径が25μm以下であり、断面減少率40%以下の冷間鍛造後に600℃で30分間熱処理した後のビッカース硬さがHV60〜170であるのが好ましいと記載されている。
また、このようなヒートシンクとして、放熱のためのフィンをピン状に形成し、ベースとなる板状部に多数のピン状フィンを立設状態に設けたものがあり、その製造方法として、例えば特許文献2及び特許文献3に記載の方法が知られている。
【0003】
特許文献2には、金属材料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の金属材料を金型を用いて鍛造して目的の形状に成形する鍛造工程と、成形後の金属材料をエジェクターピンで金型の外方に押し出す押出工程とを備え、金型の内側に、鍛造工程時の圧力により金属材料を平板状に成形する凹部を設け、該凹部下面に鍛造工程時の圧力で金属材料を搾伸してピン状に成形する孔部を多数穿設し、鍛造工程時には、金型のすべての孔部に金型の外側からエジェクターピンを挿入し、当該エジェクターピンの外径を金型の孔部の内径よりも0.05mm小さくして、エジェクターピンの外周面と金型の孔部の内周面との間に隙間を画成する製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法によれば、常温では変形抵抗が大きい金属材料であっても、その変形抵抗を小さくして鍛造することができるので、フィンピッチを細かくすることや、大型のヒートシンクを製造することも可能となる。
【0005】
一方、特許文献3にも、成形ダイスとパンチとにより多数のピンを鍛造成形する技術が開示されており、この場合も成形ダイスの各孔内にノックアウトピン(エジェクターピン)が挿入されている。また、ダイス孔詰まりとピン高さの不揃いの対策として、成形ダイスのベアリング部の表面粗度を0.05μm以下となし、かつダイスの出側部分に「逃がし」を与えてダイス内壁とピン材料の摩擦を極力ゼロに近づけるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなピン状フィン一体型ヒートシンクは、各種機器の構造部材にねじ止め等により固定され、また、水冷の場合にはフィンに作用する水流の圧力をねじ止め部により支持する必要がある。このため、取付けのための強度と外力に対する耐力が必要であるが、特許文献1記載のような高強度材を用いると、鍛造時にも大きな圧力が必要になり、成形性を低下させる。また、板状部にはフィンと反対面である板状部の中央部分に電子部品が接合され、この電子部品が熱伸縮することから、熱応力発生を緩和するために、電子部品の熱伸縮に対して,板状部の中央部分が容易に塑性変形することで,電子部品に過大な応力を生じさせない程度に軟質であることが求められる。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、ピン状フィンの良好な成形性を有しつつ、取付け強度を確保し、また、電子部品の熱伸縮に対して、板状部の中央部分が容易に塑性変形することができるピン状フィン一体型ヒートシンク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクは、純度が99.90質量%以上の純銅からなり、板状部の一面側に多数のピン状フィンが立設されるとともに、前記板状部
において前記ピン状フィンが立設されているフィン立設部の回りの周縁部の少なくとも一部は、0.2%耐力が、電子部品が接合される板状部の中央部分の2倍〜5倍とされ
、前記板状部の周縁部及び前記フィン立設部は同じ厚さであることを特徴とする。
【0010】
純度が99.90質量%以上の純銅は、熱伝導率が高く、軟質で塑性変形が容易であるので、鍛造によりピン状フィンを高精度に成形することができる。また、電子部品が接合された後には、電子部品の熱伸縮に対して、電子部品が接合される板状部の中央部分が容易に塑性変形することで,電子部品に過大な応力を生じさせないことができる。一方、板状部の周縁部で0.2%耐力が板状部の中央部分の2倍〜5倍とした部分は、各種機器の構造材への取付け部として利用することができ、部材としての強度を向上させることができる。純銅のなかでも、純度99.96質量%以上の無酸素銅、99.99質量%以上の電子管用無酸素銅がより好ましい。
純度99.90質量%未満の銅基合金は、析出硬化あるいは固溶強化により、全体として機械的強度は大きくなるが、電子部品の熱伸縮に対して、板状部の中央部分が塑性変形し難くなるので好ましくない。
【0011】
更に、本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクは、前記板状部の周縁部の表面粗さが算術平均粗さRaで0.1μm〜6.3μmであることを特徴とする。
算術平均粗さRaが0.1μm〜6.3μmであることにより、ピン状フィン一体型ヒートシンクが収納される水冷ボックス側に取り付けられたパッキンを介して各種機器に液密に取り付けられ、水冷による冷媒に対する密封性に特に優れたものとなる。
算術平均粗さRaが6.3μmを超えると、密封性が低下する傾向が見られ、算術平均粗さRaが0.1μm未満では、効果が飽和して無駄となる。
【0012】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法は、金属材料を加熱処理する加熱工程と、多数のフィン成形用穴部を有する成形ダイ上で加熱処理後の前記金属材料を鍛造することにより、前記板状部の周縁部の少なくとも一部を厚肉部にするとともに、該厚肉部を除く部分に前記ピン状フィン及び該ピン状フィンを立設した薄肉のフィン立設部を成形する熱間鍛造工程と、前記厚肉部を冷間で鍛造することにより前記板状部の周縁部を成形する冷間鍛造工程とを有することを特徴とする。
【0013】
すなわち、金属材料を加熱し、ピン状フィンと、板状部のうち周縁部の少なくとも一部を除くピン状フィンを立設するフィン立設部とを熱間で鍛造して成形し、その後に冷間で板状部の周縁部の少なくとも一部を鍛造して成形する。熱間で金属材料を塑性変形し易い状態にしておいて、ピン状フィン等を精密に成形し、製品としてねじ止め等されるため機械的強度が必要な部位は冷間にて成形することにより加工硬化させ、必要な強度と耐力を得る。更に、冷間にて成形することにより、容易に前記板状部の周縁部の表面粗さを小さくすることができ、ピン状フィン一体型ヒートシンクが収納される水冷ボックス側に取り付けられたパッキンを介して各種機器に液密に取り付けられ、水冷による冷媒に対する密封性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピン状フィンの良好な成形性を有しつつ、各種機器に取り付けられる周縁部に強度や耐力を確保し、また、電子部品の熱伸縮に対して、板状部の中央部分が容易に塑性変形することが可能なピン状フィン一体型ヒートシンクを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
ピン状フィン一体型ヒートシンク1は、
図1に示すように、板状部2の一面側に多数のピン状フィン3が立設されている。図示例では、一列に並べたピン状フィン3が列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列となるように形成されている。これらの諸寸法は特に限定されるものではないが、板状部2は、例えば長さ133mm、幅77mm、厚さ5mmに形成され、ピン状フィン3は、外径が1.5mm〜2mm、高さが6mm〜8mm、ピッチが4mm〜5mmに形成される。
【0017】
材料としては、純度が99.90質量%以上の純銅が用いられる。不純物として、As、Sb、Bi、Pb、S、Fe、O、Pなどが含まれる場合があるが、特にO、Pは微量で塑性変形能が低下するため、O量は500ppm以下、好ましくは100ppm以下とし、P量は150ppm以下、好ましくは50ppm以下に規制することが望ましい。タフピッチ銅、無酸素銅、リン脱酸銅が好適な素材として挙げられるが、純度99.96質量%以上の無酸素銅、99.99質量%以上の電子管用無酸素銅がより好ましい。
【0018】
また、板状部2のピン状フィン3が立設されているフィン立設部5の回りの周縁部7は、その表面粗さが算術平均粗さRaで0.1μm〜6.3μmとされている。
さらに、板状部2の周縁部7には、各種機器への取付け部となるねじ止めのための貫通孔8が形成されている。この貫通孔8が形成されている板状部2の周縁部7は、その内側の板状部2の中央部分9よりも機械的強度が大きく形成されており、0.2%耐力が少なくとも板状部2の中央部分9に比べて2倍〜5倍となっている。例えば、板状部2の中央部分9の0.2%耐力が35N/mm
2〜70N/mm
2であるのに対して、板状部2の周縁部7は100N/mm
2〜200N/mm
2とされる。また、ビッカース硬さも、板状部2の中央部分9が45Hv〜60Hvであるのに対して、周縁部7は60Hv〜170Hvに形成される。
板状部2の中央部分9は、後述する冷間鍛造において、フィン立設部5のうちの外周部分は冷間鍛造による加工硬化の影響を少なからず受けるので、フィン立設部5の外周部分よりも内側の部分をいう。ピン状フィン3の大きさや板状部3の板厚等にもよるが、
図1(b)の鎖線で囲ったように、あるいは
図4(b)に示したように、例えばピン状フィン3の最外周の1周分あるいは2周分が立設されている部分よりも内側の部分をいう。
そして、板状部2の中央部分9においてピン状フィン3が形成されていない他面側の平面部に電子部品(図示略)がはんだ付け等により搭載され、その熱は板状部2を介して各ピン状フィン3に伝達され、これら板状部2及び各ピン状フィン3の外周面から放散される。
【0019】
このように構成されたピン状フィン一体型ヒートシンク1は、例えば
図2に示すような冷却ボックス31に取り付けられる。この冷却ボックス31は、ヒートシンク1のピン状フィン3を内部に挿入状態として取り付けるために開口部32が形成されるとともに、その開口部32の周囲を囲むようにパッキン収容溝33が形成され、そのさらに外側にねじ穴34が形成されており、鎖線矢印で示すようにヒートシンク1をピン状フィン3が
図2において下方を向くように配置して開口部32内に挿入し、板状部2を開口部32の周囲の表面にパッキン35を介して密接させ、ねじ止めにより固定する構成である。図示例では2個のヒートシンクが取り付けられるようになっており、矢印で示すように冷却媒体が流通して、内部に挿入状態のヒートシンク1のピン状フィン3を冷却する。
【0020】
このピン状フィン一体型ヒートシンク1を製造するための製造装置は、板状部2の周縁部7を除き、その内側のフィン立設部5及びピン状フィン3を熱間で鍛造して成形するフィン成形用金型11と、このフィン成形用金型11により成形した中間成形体12に対して板状部2の周縁部7を冷間で鍛造して成形する周縁部成形用金型14とから構成される。
フィン成形用金型11は、
図3に示すように、図示略の鍛造プレスに、ピン状フィン3を形成するための多数の凹状のフィン成形用穴部15を有する成形ダイ16と、この成形ダイ16上に載せた金属材料Mを鍛造するパンチ17と、成形ダイ16に上下移動可能に設けられるエジェクターピン18とが備えられた構成とされている。
【0021】
成形ダイ16は、その上面部に、鍛造時に金属材料Mが配置される凹部19が形成され、その凹部19に連通して各フィン成形用穴部15が凹部19の底面に形成されている。
パンチ17は、成形ダイ16の上方から図示略の油圧機構により上下動され、成形ダイ16の凹部19内で金属材料Mを叩くように押圧する。この場合、パンチ17の下面のパンチ面17aの平面積は成形ダイ16の凹部19よりも小さく、板状部2のうちの周縁部7を除くフィン立設部5を強く押圧し得る大きさに形成されており、そのパンチ面17aの周囲に、上方に窪むように逃がし部20が形成され、周縁部の熱間鍛造後の肉厚を決めている。
エジェクターピン18は、図示略の油圧機構等により、鍛造後の中間成形体12の周縁部分を下方から押し上げる構成である。
【0022】
一方、周縁部成形用金型14は、
図4に示すように、フィン成形用金型11によりピン状フィン3及びフィン立設部5が鍛造された中間成形体12をさらに鍛造するものであり、図示略の鍛造プレスに、各ピン状フィン3を臨ませるための複数の凹状の穴部25を有し、その穴部25に連通するように成形用の凹部26を有する成形ダイ27と、この成形ダイ27の凹部26上で中間成形体12を鍛造するパンチ28と、鍛造後に成形ダイ27から製品を押し上げるエジェクターピン29とを備えている。
成形ダイ27の凹部26は、フィン成形用金型11による鍛造時に形成された板状部2の周縁部7の厚肉部13を鍛造するものであり、この凹部26の内周面が板状部2の外周面を形成する。凹状の穴部25は、鍛造中にピン状フィン3が変位しないように、ピン状フィン3を収容しておくものである。また、この嵌合は冷間鍛造における素材の正確な位置決めとなる。
パンチ28は、下面のパンチ面28aが板状部2の平面積を有する平坦面に形成され、成形ダイ27の凹部26上で中間成形体12を鍛造することにより、板状部2を成形する。
エジェクターピン29は、成形ダイ27に上下スライド自在に挿入され、鍛造後に図示略の油圧機構等により上昇することにより、製品を成形ダイ27から押し上げる。
【0023】
このように構成されたフィン成形用金型11及び周縁部成形用金型14を用いてピン状フィン一体型ヒートシンク1を製造する方法について説明する。
この製造方法においては、金属材料Mを加熱する加熱工程と、加熱後の金属材料Mをフィン成形用金型11により鍛造して、成形ダイ16の成形用穴部15内に金属材料Mの一部を押し込むことにより、主に板状部2のピン状フィン3とフィン立設部5とを成形する熱間鍛造工程と、この熱間鍛造工程において厚肉とした周縁部7を周縁部成形用金型14により冷間にて鍛造する冷間鍛造工程とを備えている。以下、工程順に説明する。
【0024】
<加熱工程>
加熱工程では、金属材料Mの変形抵抗を減少させるため、金属材料の再結晶温度以上の温度まで加熱する。
【0025】
<熱間鍛造工程>
図3(a)に示すように、加熱された金属材料Mをフィン成形用金型11の成形ダイ16の凹部19に設置し、パンチ17により叩くように押圧すると、
図3(b)に示すように、金属材料Mは成形ダイ16とパンチ17とにより押しつぶされて、凹部19内に広がりながら板状部2の中央部分のフィン立設部5が薄肉に成形されるとともに、その一部がフィン成形用穴部15内に圧入されピン状フィン3の外形が成形される。この鍛造工程は、熱間で行われるため、金属材料Mの流動性が良く、細い径のピン状フィン3も精密に成形することができる。
この熱間鍛造工程により、最終製品のうち、板状部2の周縁部7を除くフィン立設部5及びピン状フィン3を有する中間成形体12が成形され、板状部2の周縁部7となる部分はパンチ17の逃がし部20により成形され、厚肉部13となる。
【0026】
次いで、パンチ17を上方に退避させ、エジェクターピン18を上昇させて、中間成形体12を成形ダイ16から押し上げる。
【0027】
<冷間鍛造工程>
熱間鍛造工程により得られた中間成形体12を冷却後、
図4(a)に示すように、周縁部成形用金型14の成形ダイ27の穴部25に中間成形体12のピン状フィン3をすべて配置した状態として、凹部26に板状部2を載置する。この状態では、板状部2の周縁部が厚肉部13となっているため、厚肉部13がフィン立設部5よりも上方に膨出している。そして、
図4(b)に示すように、その厚肉部13をフィン立設部5と同じ厚さになるように鍛造することにより、パンチ28と成形ダイ27の凹部26との間に厚肉部13が圧縮されて、これらの内周面により板状部2の周縁部7が成形される。このとき、板状部2のフィン立設部5は、先の熱間鍛造工程においてすでに成形されており、そのフィン立設部5の厚さまで厚肉部13を鍛造するものであるから、この冷間鍛造工程においては変形しない。また、この冷間で鍛造することにより、板状部2の周縁部7の表面は、表面粗さが算術平均粗さRaで0.1μm〜6.3μmに形成される。
次いで、パンチ28を上方に退避させ、エジェクターピン29を上昇することにより、製品を成形ダイ27から押し上げる。
【0028】
このようにして製造されたピン状フィン一体型ヒートシンク1は、フィン立設部5におけるピン状フィン3が立設されている面とは反対面である板状部2の中央部分9に電子部品が搭載され、水冷ボックス31内にピン状フィン3を挿入した状態となるように、板状部2の周縁部7がパッキン35を介して水冷ボックス31にねじ止め等により固定される。電子部品は、半導体チップ、回路基板等により構成される部品であり、水冷ボックス31は、内部に水等の冷却媒体が流通しており、その冷却媒体にピン状フィン3が浸漬して放熱を促進する。
この取付け状態において、水冷ボックス31に固定される板状部2の周縁部7は、冷間鍛造により加工硬化しており(
図4(b)のクロスハッチング部分参照)、0.2%耐力が板状部2の中央部分9の2倍〜5倍に大きく形成されているので、変形等を生じることなく強固に固定することができる。また、水冷ボックス31のパッキン収容溝33に収容したパッキン35に密接されるヒートシンク1の板状部2の周縁部7は、算術平均粗さRaが0,1μm〜6.3μmに形成されているので、水冷ボックス31との間で優れた密封性を確保することができる。
また、長期間の使用に際して、電子部品の発熱、周囲環境の温度変化等により熱伸縮するが、電子部品が固着されている板状部2の中央部分9は熱間鍛造により成形され、その後の冷間鍛造工程では変形されていないことから、比較的軟質に維持され、電子部品との熱伸縮差を緩和するように電子部品の熱伸縮に対して、板状部5の中央部9が容易に塑性変形して、電子部品に生じる熱応力の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0029】
金属材料として無酸素銅(純度99.99wt%以上)を用い、ヒートシンクとしては、板状部は、長さ133mm、幅77mm、厚さ5mmとし、ピン状フィンは、外径が1.5mm、高さ8mm、ピッチが4mmで、一列に並べたピン状フィンが列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列としたものを成形した。
無酸素銅(純度99.99wt%以上)の鋳塊を700℃に加熱した後、フィン成形用金型により熱間鍛造し、フィン立設部及びピン状フィンを成形した。この熱間鍛造時の圧力は100MPa〜150MPaとした。次に、板状周縁部成形用金型により冷間鍛造して、板状部の周縁部を成形し、表面粗さを変えて試料1〜6のヒートシンクを作製した。この冷間鍛造時の圧力は200MPa〜500MPaとした。
比較例として、無酸素銅(純度99.99wt%以上)の鋳塊を700℃に加熱した後、フィン立設部及びピン状フィンと板状周縁部が一体で形成できる金型を使用して、熱間鍛造のみで冷間鍛造なしにこれらを一体形成し、試料7及び試料8のヒートシンクを作製した。表1には、この試料7及び8について、フィン及びフィン立設部と、板状周縁部とをそれぞれ熱間として表記したが、これらを一体に熱間鍛造したことを示す。
このようにして作製した試料1〜8のヒートシンクについて、0.2%耐力比(板状周縁部の0.2%耐力値/板状部の中央部分の0.2%耐力値)、密封性、熱サイクル性を評価した。
0.2%耐力値はJIS Z 2241に準拠して測定した。
密封性は、ヒートシンクを水冷ボックス(パッキン付)に固定し、水冷ボックス内に500kPaの圧力を30分間かけて、漏洩による圧力低下の有無を測定し、漏れが認められなかったものを○、さらに圧力を700kPaに上げて30分間かけても漏れが認められなかったものは◎、500kPaの圧力で30分の間に漏れが認められたものを×とした。
熱サイクル性は、ヒートシンクの板状部の中央部分に電子部品をはんだ付けし、JIS C0025に準拠し、−65℃〜125℃の温度変化を500サイクル繰り返し、はんだ接合部の剥がれやクラック等を観察した。剥がれやクラックが認められなかったものを○、これらが認められたものを×とした。
これらの結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示される結果から明らかなように、本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクは、ピン状フィンの良好な成形性を有しながら、取付け強度を確保し、電子部品の熱伸縮による応力を抑制できることがわかる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、板状部を各種機器に取り付ける場合、ねじ止めに限らず、クランプ等の他の固定手段によってもよい。また、
図2及び
図3のいずれも、エジェクタ−ピンにより鍛造品の外周部を押し上げるように構成したが、各ピン状フィンの下端を押し上げる構成としてもよい。また、
図2及び
図3のいずれも、鍛造時にバリを出していないが、鍛造機の能力に応じてバリを出して高い圧力で成形してもよい。また、
図2における初期の金属材料Mは単純な板状の素材としているが、ピン状フィンの寸法と周縁部へ付与する冷間加工の大きさから、予め適切な形状に成形しておいてもよい。