(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物が充填され、第1ネジ部を有するガスケットで密閉されたシリンジに、第2ネジ部を有するプランジャを、該第1ネジ部と該第2ネジ部との締め付けによって装着するための装着装置であって、
該シリンジと該プランジャを、軸線に沿って接近可能に、かつ該軸線廻りに相対回転自在にして搬送する搬送手段と、
駆動モータにより駆動回転され、該シリンジと該プランジャを相対回転させる回転力を付与して、該第1ネジ部と該第2ネジ部とを螺合させて締め付ける回転部と、
該駆動モータに連結される制御部と、を備え、
該第1ネジ部と該第2ネジ部との締め付けが、一次締め付けと二次締め付けの二段階でおこなわれ、
一次締め付けにおいて、該第1ネジ部と該第2ネジ部とが途中位置まで締め付けられたのち、
二次締め付けにおいて、該第1ネジ部と該第2ネジ部との締め付けが再開されるとともに、該制御部により、帰還トルクのピーク値が検出され、帰還トルクのピーク値が検出されると、該ピーク値を基準にした該ピーク値と略等しい値の一定の補正トルク値を指令トルクとして締め付けがおこなわれ、帰還トルクが補正トルク値に達したことが検知されると、一定時間経過後に駆動モータが停止され、該第1ネジ部と該第2ネジ部との締め付けが完了されるようにした装着装置。
二次締め付けにおける当初の指令トルクが、所定勾配にて上昇する第1指令期間の指令トルクと、これよりも緩やかな勾配にて上昇する第2指令期間の指令トルクと、から構成される請求項1に記載の装着装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1〜
図3は実施形態に係る装着装置1を示し、
図1は全体平面図、
図2は一部側面断面図、
図3は一部平面断面図である。
図4は実施形態に係るシリンジ81にプランジャ82を装着する装着状況を示す図、
図5は実施形態に係る指令トルクおよび帰還トルクを示すグラフ、
図6は装着装置1による検査状況を示す図である。
図7は実施形態に係るシリンジ81およびプランジャ82を示す図である。
【0018】
図1〜
図3に示すように、装着装置1は主として、搬送手段10と、回転ユニット40と、制御部50と、検査手段60と、を備えて構成される。装着装置1により、シリンジ81にプランジャ82が装着されている。
【0019】
シリンジ81は、
図7に示すように、略円筒形の胴部83を備える。胴部83の両端には、先窄まりの先端部84と、鍔状に折り返されたフランジ85と、が形成される。胴部83内には薬液等の内容物86が充填される。シリンジ81は、小容量の内容物86が充填されるもので、胴部83が小径に構成される。実施形態のシリンジ81は、胴部83の内径が5〜7mm程度であり、約1mLの内容物86が充填されるようになっている。内容物86が充填されたシリンジ81は、ガスケット87で密閉されている。ガスケット87は、ゴムまたは合成樹脂等からなり、胴部83の内壁面と気密状に密着される。ガスケット87の中心部には、雌ネジ部88(第1ネジ部)が軸線Aに沿って凹設される。シリンジ81の先端部84には、注射針(図示せず)が取着され、保護キャップ89が被装されている。
プランジャ82は、
図7に示すように、適宜断面(実施形態では平面視十字形)をなすロッド部91を備える。ロッド部91の両端には、大径の頭部92と、小径の装着端部93と、が接続される。装着端部93にはさらに、上記雌ネジ部88に対応する雄ネジ部94(第2ネジ部)が、軸線Aに沿って設けられる。雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付けによって、シリンジ81にプランジャ82が装着される。シリンジ81、プランジャ82は、例えば合成樹脂やガラス等の素材によって構成される。
【0020】
搬送手段10は、シリンジ81とプランジャ82を、軸線Aに沿って接近可能に、かつ軸線A廻りに相対回転自在にして搬送する。搬送手段10は、
図1〜
図3に示すように、ターレット11と、複数の搬送ユニット12、12・・・と、を備える。ターレット11は円盤状をなし、略水平に設けられる。ターレット11は、モータ等の駆動手段(図示せず)により、主軸13廻りを一定方向に回転される。各搬送ユニット12は、ターレット11の外周に配設される。実施形態では、
図1に示すように、8個の搬送ユニット12が等間隔に周設されており、これに対応してターレット11が、45度毎に間欠停止するようになっている。スターホイール3、4、5、回転ユニット40、検査手段60の第1撮影カメラ61および第2撮影カメラ62は、この停止位置においてターレット11の外側に配設される。スターホイール3、4、5は、適宜のポケット部3a、4a、5aをそれぞれ備え、ターレット11の回転と同期して所定方向に水平回転される。スターホイール3は、プランジャ82を装着装置1に搬入し、スターホイール4は、シリンジ81を装着装置1に搬入する。スターホイール5は、シリンジ81にプランジャ82を装着された装着品80を、装着装置1から受け取って、次工程へ搬出する。
【0021】
搬送ユニット12は、
図1〜
図3に示すように、シリンジ81を搬送する回転保持部15と、プランジャ82を搬送する回転規制部16と、から構成される。回転保持部15により、シリンジ81が、軸線Aが垂直となる垂直姿勢(フランジ85が上方、先端部84が下方となる)にされ、軸線A廻りに回転自在に保持される。また、回転規制部16により、プランジャ82が、同一の軸線Aが垂直となる垂直姿勢(頭部92が上方、雄ネジ部94が下方となる)にされ、シリンジ81の回転には追従しないよう回転不能に規制される。シリンジ81は、回転保持部15により、平面視円弧状の搬送経路に沿って水平搬送されるが、プランジャ82は、回転規制部16により、シリンジ81の直上を搬送されるとともに、昇降手段32(後述する)を介して、軸線Aに沿って適宜のタイミングで下降される。
【0022】
回転保持部15は、
図2〜
図3に示すように、ターレット11の周縁部に固設される本体部18と、本体部18から延設される延設部19、19と、を備える。延設部19、19は、ターレット11の径方向外方に水平をなして上下に設けられる。延設部19には、平面視略半円形の窪み部21が形成される。窪み部21は、シリンジ81の胴部83に対応して寸法構成され、胴部83の上下端付近をごく僅かなクリアランスで嵌め入れることができるようになっている。延設部19、19の間には、受けローラ27、27が並設される。受けローラ27は、回転自在に軸支され、シリンジ81の胴部83にちょうど接触し得る外周面を有する。また、延設部19の外方には、シリンジ81の脱落を防止するためのガイド部24が設けられる。ガイド部24は、
図1に示すような平面視円弧状をなし、所定範囲に配置される。
【0023】
回転規制部16は、
図2に示すように、回転保持部15の上方に配設されるアーム31と、アーム31を上下方向に昇降自在とする昇降手段32と、を備える。アーム31は、ターレット11の径方向に沿って水平に設けられる。アーム31の外端には、プランジャ82のロッド部91を、軸線A廻りに回転不能に挟掴するチャック部33が設けられる。チャック部33は、エア圧等を用いた公知の開閉機構(図示せず)に接続されている。昇降手段32は、ターレット11上に立設されるレール部35と、レール部35にスライド自在に嵌合されるスライダ部36と、を備える。スライダ部36は、アーム31の内端と固着される。スライダ部36には、ターレット11と同心状に設けられる環状の立体カム機構(図示せず)等が連結されており、回転規制部16の周位置等に応じて、スライダ部36がレール部35に沿って昇降し、これに伴ってアーム31が昇降自在に構成される。アーム31の下降により、チャック部33に挟掴されたプランジャ82が、軸線Aに沿って下降される。プランジャ82の下降により、プランジャ82の雄ネジ部94がシリンジ81内に挿入され、ガスケット87の雌ネジ部88に接近・螺合される。チャック部33の上方には、変位センサ38が配設されている。変位センサ38は、プランジャ82との間の距離Lないしその変化量を検知することで、シリンジ81とプランジャ82との相対位置を測定する。プランジャ82の安定的な下降を補助するための適宜のガイド部材(図示せず)を、回転規制部16に付設するようにしてもよい。
【0024】
回転ユニット40は、シリンジ81とプランジャ82を相対回転させる回転力を付与する回転部41を備える。回転部41は、
図1〜
図3に示すように、ターレット11の径方向外方から回転保持部15に臨むように配設される。回転部41は、シリンジ81に作用して、シリンジ81を軸線A廻りに回転させる回転力を付与する。これにより、シリンジ81内の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94とが螺合して締め付けられ、シリンジ81にプランジャ82が装着される。
回転部41は、やや低背のローラ形状をなし、回転自在に軸支される。回転部41は、回転保持部15によって保持されるシリンジ81の胴部83に外接可能に構成される。回転部41は好ましくは、シリンジ81の胴部83に弾力的に接触する。
【0025】
回転部41は、
図1〜
図2に示すように、駆動モータ42により駆動回転される。駆動モータ42は、プーリ45、46およびタイミングベルト47を介して、回転部41に連結される。プーリ45は、回転部41よりも小径に、かつ回転部41と同軸に設けられ、回転部41と一体に回転される。プーリ46には、駆動モータ42の出力軸43が連結され、プーリ45、46間に、タイミングベルト47が掛回される。これにより、回転部41に駆動モータ42の出力軸43の回転が伝達され、回転部41と駆動モータ42とを連動させることができるようになっている。駆動モータ42としては、サーボモータが好ましく用いられる。駆動モータ42には、エンコーダ等が適宜付設される。
なお、回転ユニット40は好ましくは、シリンダ機構(図示せず)等に連結され、回転部41が、回転保持部15に保持されるシリンジ81に対して接離自在に構成される。
【0026】
制御部50は、
図1に示すように、駆動モータ42に連結される。制御部50により、駆動モータ42を介して、回転部41の作動が制御される。制御部50は、駆動指令手段51と、監視手段52と、検出手段53と、を主に備える。駆動指令手段51は、指令トルクにより駆動モータ42を駆動させる指令を出す。監視手段52は、駆動モータ42から還される帰還トルクを監視する。検出手段53は、監視手段52により監視される帰還トルクから、所定のピーク値P(後述する)を検出する。
駆動モータ42には、計測手段55が付設される。計測手段55は主として、駆動モータ42の出力トルクを計測するためのものである。計測手段55としては、例えば電流計や電圧計、トルク計等が用いられる。駆動モータ42の出力トルクは、帰還トルクとして制御部50に通知されている。
なお、図示しないが、制御部50は、メモリ等の記憶手段、CPU等の演算処理手段、モニタ・ディスプレイ等の表示手段、タッチパネル・キーパッド・キーボード等の入力手段、ドライバ、各種インターフェース、所定のプログラム等を適宜備える。
【0027】
検査手段60は、
図1に示すように、撮影部としての第1撮影カメラ61および第2撮影カメラ62と、これらに接続される画像検査部64と、を備える。第1撮影カメラ61、第2撮影カメラ62は、回転ユニット40の上流と下流にそれぞれ適宜高さで配設される。第1撮影カメラ61、第2撮影カメラ62には、例えばCCDカメラやCMOSカメラが用いられる。図示しないが、第1撮影カメラ61、第2撮影カメラ62の撮影に必要な光を照射する光源等が適宜設けられている。
画像検査部64は、画像比較手段65と、判定手段66と、を主に備える。画像比較手段65は、第1撮影カメラ61および第2撮影カメラ62によって得られた撮影画像を比較処理する。判定手段66は、画像比較手段65の比較処理を受けて、所定の判定処理をおこなう。
【0028】
次に、上記構成の装着装置1の動作について説明する。
【0029】
図1に示すように、スターホイール3、4により、プランジャ82、シリンジ81が装着装置1に順次搬入される。シリンジ81は、図示しない前工程で、胴部83内に内容物86が充填され、ガスケット87で密閉されている。シリンジ81およびプランジャ82は、搬送手段10の搬送ユニット12により、所定の垂直姿勢をなし、円弧状の搬送経路に沿って間欠停止しながら搬送される。プランジャ82は、シリンジ81の上方においてシリンジ81から適宜距離を隔てて搬送されている。
【0030】
シリンジ81およびプランジャ82が所定の周位置まで搬送されると、昇降手段32を介して、プランジャ82が下降される。実施形態では、シリンジ81およびプランジャ82が、第1撮影カメラ61を通過して回転部41に到達するまでの間に、プランジャ82が下降されるようになっている。プランジャ82は、
図4(a)に示すように、雄ネジ部94とガスケット87の雌ネジ部88とが略接触する高さ位置まで下降して停止する。
【0031】
図4(a)に示す状態で、回転ユニット40の回転部41が、シリンジ81の胴部83に接触する。回転部41は駆動モータ42により回転され、これによりシリンジ81が軸線A廻りの所定方向に回転される。このとき、回転部41と、回転保持部15の受けローラ27、27とが、シリンジ81の胴部83に三方向から接触するため(
図3参照)、シリンジ81が安定して回転されるようになっている。回転部41、受けローラ27の外周面は、比較的グリップ性が有り、シリンジ81を損傷させ難い素材によって構成されるのが好ましく、例えばゴムまたは合成樹脂製とされる。
シリンジ81の回転に伴って、シリンジ81内のガスケット87もシリンジ81と一体となって回転される。これに対して、プランジャ82は、回転規制部16によりシリンジ81の回転に追従しないように規制されている。よって、回転部41の回転により、
図4(b)(c)に示すように、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94とを螺合させ締め付けることができる。締め付け時のプランジャ82は好ましくは、軸線Aに沿って下降自在に構成される。
なお、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付けに際し、プランジャ82を下方(シリンジ81側)に向けて一時付勢する付勢手段(図示せず)を設けるようにしてもよい。このような付勢手段を設けることにより、雌ネジ部88と雄ネジ部94との螺合がスムーズに開始され得る。
【0032】
装着装置1では、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付けが、一次締め付けと二次締め付けの二段階でおこなわれる。
【0033】
一次締め付けでは、回転部41が駆動モータ42により回転される。駆動モータ42は、制御部50により適宜制御される。一次締め付けでは、回転部41を比較的高速度で回転させることができる。一次締め付けにより、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94とが途中位置まで締め付けられる。即ち、一次締め付けにより、
図4(b)に示すように、プランジャ82の雄ネジ部94は、ガスケット87の上端から仮着長さdの位置まで雌ネジ部88に螺入される。この仮着長さdは、任意に設定され得るが、複数のシリンジ81間で正確に一定である必要はない。仮着長さdは、締め付け完了時の締着長さD(
図4(c)参照)の概ね2/3〜1/2程度となるように設定されるのが好ましい。一次締め付けのあと、駆動モータ42は一旦停止され、これにより回転部41の回転も一旦停止される。実施形態では、プランジャ82の上方に変位センサ38が設けられるが(
図2参照)、変位センサ38は制御部50と接続されており、プランジャ82が所定の高さ位置まで締め付けられると、駆動モータ42が停止するように制御されている。これにより、上記仮着長さdを一定範囲内に保つことが容易となる。出力軸43が所定の回転角度や回転時間、出力トルク等に到達すると、駆動モータ42が停止するような構成とすることもできる。回転部41の停止に伴って、シリンジ81が静止され、雌ネジ部88と雄ネジ部94との螺合が中断される。
【0034】
一次締め付けに次いで、二次締め付けがおこなわれる。二次締め付けでは、回転部41が駆動モータ42により回転される。二次締め付けでは、回転部41は比較的低速度で回転される。回転部41が比較的低速度で回転されることで、所定のピーク値P(後述する)を高精度に検出し易くなる。また、一次締め付けにおける回転部41の回転速度を、二次締め付けにおける回転部41の回転速度よりも高速度にすることで、締め付け時間が短縮され、効率的な締め付けをおこなうことが可能となる。二次締め付けにより、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との螺合が再開されて、締着位置まで締め付けられる。即ち、二次締め付けにより、
図4(c)に示すように、プランジャ82の雄ネジ部94は、ガスケット87の上端から所要の締着長さDの位置まで雌ネジ部88に螺入され、締め付けが完了される。
【0035】
二次締め付けにおいて、回転部41は、制御部50による駆動モータ42の制御を介して、次のように動作する。
まず制御部50の駆動指令手段51により、停止中の駆動モータ42に対して、駆動指令が出される。駆動指令手段51の駆動指令は、
図5に示すように、一定の勾配(=トルク/時間)にて漸次上昇する指令トルクによりおこなわれる。回転部41の回転負荷が、駆動モータ42の出力トルクとなり、帰還トルクとして制御部50に通知される。帰還トルクは、
図5に示すように、指令トルクに追随してゆっくりと上昇(初期上昇)する。この帰還トルクが初期上昇している間は、回転部41は未だ回転をはじめていない。シリンジ81も静止したままである。回転部41に回転方向とは逆向きの抵抗力が作用することで、帰還トルクは初期上昇している。
【0036】
駆動指令手段51により、漸次上昇する指令トルクによる駆動指令が引き続き出される一方、帰還トルクは、
図5に示すように、或る時点でピーク値Pを示して折り返す。これは回転部41(および駆動モータ42)の回転力が、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との間の最大静止摩擦力を超えるのに対応する。帰還トルクがピーク値Pを示すと、回転部41が回転をはじめ、雌ネジ部88と雄ネジ部94との螺合が再開される。
【0037】
制御部50では、上記の帰還トルクは、監視手段52によって監視されている。初期上昇している帰還トルクが折り返して下降をはじめると、検出手段53により、ピーク値Pが検出される。具体的には、監視手段52が、帰還トルクが所定時間内に所定数値以上下落したことを検知すると、帰還トルクが折り返して下降をはじめたものとして認識する。すると、検出手段53が、そこから遡って帰還トルクの数値をチェックし、最大の数値をピーク値Pとして検出する。
検出手段53により、帰還トルクのピーク値Pが検出されると、駆動指令手段51は、
図5に示すように、一定の補正トルク値Tを指令トルクとして駆動指令を出し直す。補正トルク値Tは、検出されたピーク値Pを基準にして演算される。例えば補正トルク値Tは、検出されたピーク値Pに対して所定の数値を加算または減算等したものとされる。以降、この補正トルク値Tを指令トルクとして、帰還トルクがトルク管理される。
【0038】
図5に示すように、帰還トルクは、ピーク値Pを示したのち下降する。これはガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との螺合が再開され、回転部41の回転負荷(および駆動モータ42の出力トルク)が暫く軽減されるためである。螺合が進むと、雌ネジ部88と雄ネジ部94との間の摩擦抵抗が増大するため、帰還トルクは再上昇をはじめる。
そして、監視手段52により、帰還トルクが上記の補正トルク値Tに達したことが検知されると、駆動指令手段51を介して、駆動モータ42が停止される。好ましくは帰還トルクが、補正トルク値Tに到達して一定時間経過後に駆動モータ42が停止される(
図5参照)。これにより、誤検知を防止し、確実なトルク管理をおこなうことが可能となる。駆動モータ42が停止されると、回転部41の回転も停止される。これに伴って、シリンジ81が静止され、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付けが完了される。
なお、実施形態の補正トルク値Tは、ピーク値Pと略等しい値とされている。ピーク値Pは、上記のとおり、雌ネジ部88と雄ネジ部94との間の最大静止摩擦力に対応して検出されるものである。よって、補正トルク値Tを、ピーク値Pと略等しい値とすることで、過不足のない理想的な回転力により、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付けを完了することができると考えられる。
【0039】
このようにして、搬送手段10のターレット11が間欠停止するたびに、回転ユニット40および制御部50を介して、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94とが締め付けられ、次々とシリンジ81にプランジャ82が装着されるようになっている。
【0040】
また、実施形態の装着装置1では、検査手段60により、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締着の良否が検査される。
図1に示すように、第1撮影カメラ61により、回転ユニット40を通過前のシリンジ81の状態、即ち雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け前の状態が撮影され、第2撮影カメラ62により、回転ユニット40を通過後のシリンジ81の状態、即ち雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け後の状態が撮影される。第1撮影カメラ61、第2撮影カメラ62から画像検査部64に入力される信号はデジタルデータ化され、必要に応じて画像処理や位置補正等の処理が施される。
図6(a)(b)には、第1撮影カメラ61、第2撮影カメラ62によりそれぞれ得られる撮影画像68、69を例示している。これに示すように、撮影画像68、69は、少なくともガスケット87を含むようにシリンジ81の胴部83を真横から撮影したものである。
【0041】
画像検査部64では、画像比較手段65により、上記の撮影画像68、69が比較処理される。実施形態では、この比較処理に基づき、1)ガスケット87の上端面とプランジャ82の装着端部93の下端面との隙間量h
1(
図6(a)参照)と、2)ガスケット87の上下方向(軸線A方向)の移動量h
2(
図6(b)参照)と、が算出されるようになっている。
判定手段66は、これらの隙間量h
1、移動量h
2により、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締着の良否を判定する。例えば、隙間量h
1または移動量h
2の何れかが、所定量を超えて過大となっている場合、締着不良と判定する。検査手段60で締着不良と判定された装着品80は、
図1に示すスターホイール5を介して、系外へ排出される。
上記の隙間量h
1によれば、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付け不足を検査することができる。また、上記の移動量h
2によれば、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付け過ぎ(シリンジ81の胴部83に対するガスケット87の滑動具合)を検査することができる。
【0042】
このような検査手段60を設けることで、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎを、簡単かつ確実に検査することができる。
なお、上記の隙間量h
1、移動量h
2は、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎ以外の要因によっても過大となることがあり得る。通常、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足がなければ、上記の隙間量h
1は所定範囲内におさまる。また、雌ネジ部88と雄ネジ部94との間に生じる摩擦抵抗は、シリンジ81の胴部83の内壁面とガスケット87の外周面との間の摩擦抵抗よりも小さく設計されているため、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け過ぎがなければ、上記の移動量h
2も所定範囲内におさまるはずである。ところが、各部材(シリンジ81、プランジャ82、ガスケット87、雌ネジ部88、雄ネジ部94等)に成形不良や組付不良等の製品不良があると、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎに拘わらず、上記の隙間量h
1や移動量h
2が過大となる可能性が考えられる。検査手段60によれば、このようなシリンジ81やプランジャ82等の各部材の製品不良を併せて検査することができる。
【0043】
以上説明した装着装置1によれば、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎを生じさせ難くすることができる。装着装置1によれば、所定のピーク値Pを基準にして雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付けが完了されるようにしたため、適正な設定トルク値をあらかじめ設定しておく必要がない。また、シリンジ81やガスケット87、プランジャ82等に個体差がある場合、例えば、これらの実寸法やガスケット87の組付位置に製品公差等がある場合でも、柔軟に対応することができる。
【0044】
特に実施形態のシリンジ81のように、小容量の内容物86が充填されるものにあっては、シリンジ81の胴部83の内壁面とガスケット87の外周面との間に生じる摩擦抵抗等が非常に微小となり、ごく僅かな力加減の差で、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎを生じてしまう。装着装置1によれば、このようなシリンジ81であっても、雌ネジ部88と雄ネジ部94との締め付け不足や締め付け過ぎを生じさせ難くすることが可能となる。
【0045】
また、装着装置1によれば、搬送手段10や回転ユニット40等を備えたコンパクトな構造であり、シリンジ81とプランジャ82を所定姿勢で搬送しながら、効率よくシリンジ81にプランジャ82を装着することができる。
【0046】
図8には、上記実施形態の変形例を示している。変形例では、
図8に示すように、二次締め付けにおける当初(立上り直後)の指令トルクが、第1指令期間t1と第2指令期間t2の指令トルクに分けて構成される。第1指令期間t1の指令トルクは、比較的急勾配にて上昇し、第2指令期間t2の指令トルクは、これよりも緩やかな緩勾配にて上昇する。これにより、帰還トルクを、第1指令期間t1の指令トルクに追随して速やかに上昇させたのち、ピーク値Pに向けて、第2指令期間t2の指令トルクに追随してごくゆっくりと上昇させることができる。よって、帰還トルクのピーク値Pを、非常に精度良く検出することが可能となり、しかもタクトタイムを犠牲にする必要がない。第1指令期間t1から第2指令期間t2への移行タイミングは、例えばトルク値や経過時間等に基づき、適宜設定される。上記実施形態のように、変位センサ38等を介して、仮着長さdが一定範囲内に保たれる構成であれば、締め付け完了までに必要な残りの締め付け量が或る程度絞り込まれるため、第1指令期間t1、第2指令期間t2を効率的に設け易くなる。
【0047】
また、変形例では、
図8に示すように、ピーク値Pの検出により補正された指令トルクが、第3指令期間t3と第4指令期間t4の指令トルクを備える。第3指令期間t3の指令トルクは、補正トルク値Tで一定とされ、第4指令期間t4の指令トルクは、補正トルク値Tから緩勾配にて下降する。第4指令期間t4の終了後に、駆動モータ42が停止される。そして、帰還トルクが補正トルク値Tに達して所定時間経過後に、第3指令期間t3から第4指令期間t4に移行するように構成されている。補正トルク値Tに達した帰還トルクは、第4指令期間t4の指令トルクに追随してごくゆっくりと下降される。これにより、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付け過ぎを確実に防止しつつ、着実な締め付けをおこなうことが可能となる。
【0048】
他の実施形態について、
図9に基づき説明する。
図9は他の実施形態に係る装着装置101を示す一部平面図である。上記実施形態と共通の構成には同一の符号を付し、制御部50や画像検査部64等の図示は省略している。
【0049】
図9に示すように、装着装置101は、一次締め付けステーション107と、二次締め付けステーション108と、を備える。一次締め付けステーション107、二次締め付けステーション108は、搬送手段10のターレット11が間欠停止する位置に隣り合って配設される。一次締め付けステーション107、二次締め付けステーション108は、それぞれ所定の回転ユニット40を備える。装着装置101では、ガスケット87の雌ネジ部88とプランジャ82の雄ネジ部94との締め付けが、一次締め付けステーション107と二次締め付けステーション108により分担される。即ち、一次締め付けステーション107において、所定の一次締め付けがおこなわれ、二次締め付けステーション108において、所定の二次締め付けがおこなわれるようになっている。
【0050】
このような装着装置101によれば、搬送手段10のターレット11が間欠停止している間に、一次締め付けステーション107と二次締め付けステーション108により、一次締め付けと二次締め付けを同時進行的におこなうことができる。よって、ターレット11の停止時間が短くて済み、装着能力を向上させることが可能となる。
【0051】
以上の実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正や設計変更等が可能である。
【0052】
例えば、搬送手段10や回転ユニット40等の大きさ・形状、配置等は適宜変更することができる。搬送手段10は、シリンジ81およびプランジャ82を、略水平の寝姿勢や斜め姿勢で搬送したり、直線状の搬送経路に沿って搬送するものであってもよい。また、プランジャ82を一定位置に保持し、シリンジ81の方をプランジャ82に対して接近させるようにしてもよい。プランジャ82を軸線A廻りに回転自在に保持し、シリンジ81をプランジャ82の回転に追従しないように規制して、回転部41をプランジャ82に作用させる構成とすることもできる。また、シリンジ81ないしプランジャ82を適宜のホルダで把持し、回転部41の回転力を、このホルダを介して間接的に付与するようにしてもよい。さらに、ローラ形状の回転部41に替えて、ベルトやチェーン等をシリンジ81ないしプランジャ82に作用させ、所定の回転力を付与するようにしてもよい。実施形態では、小容量の内容物86が充填されるシリンジ81を特に例示したが、シリンジ81(およびプランジャ82、ガスケット87)として、様々な大きさ・形状のものに本発明を用いることができる。