(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の力測定装置であって、前記検出点が、前記作用点に作用する力の3分力により個別に変位する3つの分散された検出点から成り、前記第1の支持機構が、前記固定点と前記3つの検出点のそれぞれとの間を支持する3つの支持機構で構成され、前記第2の支持機構が、前記3つの検出点のそれぞれと前記作用点との間を支持する3つの支持機構で構成されることを特徴とする力測定装置。
請求項11に記載の力測定装置であって、前記固定点が3つの分離した固定点から成り、前記第1の支持機構を構成する前記3つの支持機構が、前記3つの固定点のそれぞれと前記3つの検出点のそれぞれとの間を支持し、前記3つの支持機構のそれぞれの中心線が前記第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれの中心線の延長線上に在ることを特徴とする力測定装置。
請求項1に記載の力測定装置であって、前記検出点が、前記作用点に作用する力の3分力により傾きを変える一体型検出部から成り、前記第1の支持機構が、前記固定点と前記一体型検出部の3箇所との間をそれぞれ支持する3つの支持機構で構成され、前記第2の支持機構が、前記一体型検出部の前記3箇所と前記作用点との間をそれぞれ支持する3つの支持機構で構成されることを特徴とする力測定装置。
請求項13に記載の力測定装置であって、前記固定点が3つの分離した固定点から成り、前記第1の支持機構を構成する前記3つの支持機構が、前記3つの固定点のそれぞれと前記一体型検出部の3箇所との間をそれぞれ支持し、前記3つの支持機構のそれぞれの中心線が前記第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれの中心線の延長線上に在ることを特徴とする力測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、原子間顕微鏡では、探針に作用する微小力で試料と探針との間隔が変化するため、試料と探針との間隔を一定に保ち、同一測定状態のもとで外力を測定することができない。あるいは、センサの検出量がゼロになるように試料の高さを変えるアクチュエータの駆動電流から原子間力を測定する装置では、駆動電流に含まれるノイズ(雑音)のため感度の高い測定が困難である。
また、3次元空間における力の方向及び大きさは、同一平面上に無い3方向の分力を測定し、その3分力を合成して求めることができるが、原子間顕微鏡では、1次元の力しか測定することができない。
【0005】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、測定対象物との間隔を一定に保って、作用する力を高精度に測定することができ、また、その力の3分力を測定することができる力測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定点と、変位を検出する検出点と、力が作用する作用点とを有し、前記作用点に作用する力を検出点の変位に変換して検出する力測定装置であって、固定点と検出点との間を支持する第1の支持機構と、検出点と作用点との間を支持する第2の支持機構と、検出点の変位を検出する検出手段と、を有し、第1の支持機構と第2の支持機構とが検出点で接続され、第1の支持機構及び第2の支持機構の一方が、アクチュエータを備える能動型支持機構であり、他方が、受動型支持機構、または、
アクチュエータを備える能動型支持機構であり、作用点の位置が変位しないようにアクチュエータの制御が行われ、作用点の位置が変位しない状態での検出点の変位が検出手段により検出されることを特徴とする。
この力測定装置では、作用点が力を受けても変位しないため、測定対象物との間隔を一定に保って測定対象物から受ける力を測定することができる。
【0007】
また、本発明の力測定装置では、アクチュエータとして、電磁石、静電アクチュエータ、ボイスコイルモータ、圧電アクチュエータ、リニアモータあるいは磁歪アクチュエータを用いることができる。
【0008】
また、本発明の力測定装置では、第1の支持機構及び第2の支持機構の一方が能動型支持機構で他方が受動型支持機構であるとき、能動型支持機構が、受動型支持機構の剛性と大きさが等しく符号が反対の剛性を持つように、アクチュエータの制御が行われる。
こうした剛性制御により、作用点の位置を一定に保つことができる。
【0009】
また、本発明の力測定装置では、第1の支持機構及び第2の支持機構の一方が能動型支持機構で他方が受動型支持機構であるとき、受動型支持機構の変位を検出し、能動型支持機構が受動型支持機構の変位を相殺するように、アクチュエータの制御を行っても良い。
こうした変位相殺制御によっても、作用点の位置を一定に保つことができる。この場合、能動型支持機構は、静的には剛性制御のときと同じ動作をする。
【0010】
また、本発明の力測定装置では、第1の支持機構及び第2の支持機構の一方が能動型支持機構で他方が受動型支持機構であるとき、作用点の固定点に対する変位を検出し、能動型支持機構を変位させて、作用点の固定点に対する変位がゼロとなるようにアクチュエータの制御を行っても良い。
この制御は、作用点変位に関する積分補償を含む制御であり、能動型支持機構は、静的には剛性制御のときと同じ動作をする。
【0011】
また、本発明の力測定装置では、検出点を、作用点に作用する力の3分力により個別に変位する3つの分散された検出点で構成し、第1の支持機構を、固定点と3つの検出点のそれぞれとの間を支持する3つの支持機構で構成し、第2の支持機構を、3つの検出点のそれぞれと作用点との間を支持する3つの支持機構で構成する。
この装置では、3つの分散された検出点により、作用点に作用する力の3分力を測定することができる。
【0012】
また、本発明の力測定装置では、さらに、固定点を3つの分離した固定点で構成し、
第1の支持機構を構成する3つの支持機構が、3つの固定点のそれぞれと3つの検出点のそれぞれとの間を支持し、その3つの支持機構のそれぞれの中心線が第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれの中心線の延長線上に在るように構成することが望ましい。
第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれと第1の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれとを一直線上に配置することで、3つの検出点は、それらの直線上で変位することになり、検出点の変位の測定が容易になる。
【0013】
また、本発明の力測定装置では、検出点を、作用点に作用する力の3分力により傾きを変える一体型検出部で構成し、第1の支持機構を、固定点と一体型検出部の3箇所との間をそれぞれ支持する3つの支持機構で構成し、第2の支持機構を、一体型検出部の3箇所と作用点との間をそれぞれ支持する3つの支持機構で構成しても良い。
この装置では、作用点との間が3つの支持機構で支持された一体型検出部の上下の移動量や傾きから、作用点に作用する力の3分力を測定することができる。
【0014】
また、本発明の力測定装置では、さらに、固定点を3つの分離した固定点で構成し、第1の支持機構を構成する3つの支持機構が、3つの固定点のそれぞれと一体型検出部の3箇所との間をそれぞれ支持し、3つの支持機構のそれぞれの中心線が第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれの中心線の延長線上に在るように構成しても良い。
第2の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれと第1の支持機構を構成する3つの支持機構のそれぞれとを一直線上に配置することで、一体型検出部の3箇所は、それらの直線上で変位することになり、検出点の変位の測定が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の力測定装置は、作用点に力を受けても作用点の位置が変化しないため、測定対象物との間隔を一定に保って外力を測定することができ、高精度の測定が可能である。作用点に作用する力が変化する場合でも、測定対象物との間隔を一定に保つことで、高精度の動的な計測が可能である。
また、本発明の力測定装置は、作用する力の3分力を測定することができ、この3分力から3次元空間での力の方向及び大きさを求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)は、本発明の基本原理を説明するための力測定装置を示している。この装置は、変位を検出する検出点20と固定点10との間が第1の支持機構40で支持され、力が作用する作用点30と検出点20との間が第2の支持機構50で支持されている。第1の支持機構40と第2の支持機構50とは検出点20で直列に接続されており、第1の支持機構40の中心線の延長線上に第2の支持機構50の中心線が存在する。
図1(b)に示すように、作用点30に作用する力をF、検出点20の変位をx、作用点30の変位をyとする。
【0018】
また、第1の支持機構40のばね定数をk
1、第2の支持機構50のばね定数をk
2とすると、第1の支持機構40と第2の支持機構50とが直列接続された支持機構は、一つのばねとして動作し、そのばね定数k
cは、次の(数1)で与えられる。
k
c=k
1k
2/(k
1+k
2) (数1)
ここで、仮にばね定数が負のばね(以下では「負のばね」と略す)が実現できたとして、
k
1=−k
2 (数2)
という関係を満たすようにすれば,次式(数3)のように無限大の剛性が得られる。
|k
c|=∞ (数3)
この場合、作用点30に力Fが作用しても、作用点30は変位しない。一方、検出点20の変位xは、次式(数4)を満足する。
x=F/k
1=−F/k
2 (数4)
従って、ばね定数の大きさを予め測っておけば、検出点20の変位から、作用点30に働く力を測定することができる。
これが、本発明の基本原理である。
本発明による測定装置では、剛性の大きさ(|k
1|=|k
2|)を小さく設定することによって、力の検出感度を高くすることができるので、微小力の測定に適している。
【0019】
図2は、第1の支持機構40と第2の支持機構50とが直列接続された合成ばねの変位の様子を示している。
図2(a)は、作用点30に作用するする力Fが0の場合を示し、
図2(b)は、第1の支持機構40が正のばね(k
1>0)で、第2の支持機構50が負のばね(k
2=−k
1<0)の場合に作用点30に力F(>0)が作用した状態を示し、また、
図2(c)は、第1の支持機構40が負のばね(k
1=−k
2<0)で、第2の支持機構50が正のばね(k
2>0)の場合に作用点30に力F(>0)が作用した状態を示している。
【0020】
このように、本発明の力測定装置では、
(A)第1の支持機構40が正のばねで、第2の支持機構50が負のばねの場合
(B)第1の支持機構40が負のばねで、第2の支持機構50が正のばねの場合
の二通りが存在し、検出点20の変位は、(A)と(B)とで逆になる。
しかし、基本原理の説明では「負のばね」を仮定したが、実際には、単純に負のばねを用いると、系全体が不安定になる。
【0021】
そのため、本発明の力測定装置では、安定な系で上述した動作が行えるように、少なくとも一つの支持機構を、アクチュエータを備える能動型支持機構で構成する。即ち、
(a)第1の支持機構40を能動型支持機構とし、第2の支持機構50を非能動型支持機構(受動型支持機構)とする。
(b)第1の支持機構40を受動型支持機構とし、第2の支持機構50を能動型支持機構とする。
(c)第1の支持機構40及び第2の支持機構50を能動型支持機構とする。
のいずれかである。
ここで留意すべきは、能動型支持機構が負のばねとは限らない点である。後述するように、能動型支持機構が正のばねで、受動型支持機構が負のばねの場合もある。
なお、前記(c)の形態は、装置が複雑となりコストの面で問題があり、さらには一つの支持機構は受動型支持機構と等価な働きをするように制御されることになるため、以下では(a)及び(b)について言及する。
【0022】
能動型支持機構を構成するアクチュエータには、次のようなものが使用できる。
(イ)電磁石
(ロ)静電アクチュエータ
(ハ)ボイスコイルモータ
(ニ)圧電アクチュエータ(バイモルフ型を含む)
(ホ)リニアモータ
(ヘ)磁歪アクチュエータ
【0023】
また、作用点30に力が働いても、この点が(定常的には)変位しないというゼロコンプライアンスを達成するために、次に示す(1)(2)(3)の制御方法を利用する。
(1)剛性制御(P制御、ゼロパワー制御などを含む)
能動型支持機構が、受動型支持機構の剛性と大きさが等しく符号が反対の剛性を持つように、アクチュエータを制御する。
図3は、剛性制御を行う制御系のブロック図を示している。この制御系は、検出点20の変位(x)を検出するセンサ61と、作用点30の変位(y)を検出するセンサ62と、センサ61、62の検出信号から制御信号を生成するコントローラ71と、制御信号を増幅して能動型支持機構41のアクチュエータの駆動信号を生成する増幅器63とを備え、コントローラ71は、センサ62の出力信号の安定化を図る安定化補償器712と、センサ61の出力信号と大きさが等しく符号が反対の信号を生成する剛性制御器711とを有し、安定化補償器712の出力信号(y)と剛性制御器711の出力信号(−x)とを加え合わせた信号(y−x)が制御信号として出力される。
【0024】
(2)変位相殺制御
受動型支持機構の変位を検出し、能動型支持機構が受動型支持機構の変位を相殺するように、アクチュエータを制御する。
図4は、変位相殺制御を行う制御系のブロック図を示している。この制御系のコントローラ72は、センサ62の出力信号(y)からセンサ61の出力信号(x)を差し引いた信号(y−x)を出力する変位相殺制御器721を有し、この信号が制御信号として増幅器63に送られる。
この場合、能動型支持機構41のアクチュエータは、剛性制御のときと同じ動作を行う。
【0025】
(3)作用点変位に関する積分補償を含む制御
作用点30の固定点10に対する変位を検出し、この変位がゼロとなるように能動型支持機構41を変位させる。
図5は、この制御を行う制御系のブロック図を示している。この制御系のコントローラ73は、センサ62の出力信号(y)を積分して作用点30の固定点10に対する変位を求める積分要素が含まれたPID補償器731を備え、作用点30の変位の目標値をゼロとして制御信号を生成するPID補償器731の出力が増幅器63に送られる。
この場合も、能動型支持機構41のアクチュエータは、剛性制御のときと同じ動作を行う。
【0026】
(実施例1)
本発明の実施例1として、前記(a)(イ)(3)に該当する装置、即ち、第1の支持機構40が能動型支持機構であって、第2の支持機構50が受動型支持機構であり、アクチュエータが電磁石であり、作用点変位に関する積分補償を含む制御を行う力測定装置について説明する。
この装置は、
図6(a)に示すように、電磁石100と、永久磁石101と、強磁性体102とを備えており、永久磁石101が検出点、強磁性体102が作用点となる。
この装置では、永久磁石101に電磁石100からの吸引力が働き、強磁性体102に永久磁石101の磁力による吸引力が働いている。
【0027】
図6(b)は、この装置の制御系を示しており、コントローラ73は、永久磁石101の変位を用いて永久磁石101の変位をPD制御するPD補償器732と、強磁性体102の変位を用いて、強磁性体102が変位しないようにPID制御するPID補償器731とを備えている。
この場合、強磁性体102に下向きの外力を加えると、PID制御されている強磁性体102は定常的には変位せず、定常的外力と釣り合わせるために、永久磁石101が強磁性体102とのギャップを縮める向き(下方)に変位する。この変位により電磁石100と永久磁石101とのギャップが拡がるので、電磁石100と永久磁石101との間を支持する第1の支持機構40(能動型支持機構)は、正のばねと看做すことができ、永久磁石101と強磁性体102との間を支持する第2の支持機構51は、負のばねと看做すことができる。即ち、前記(A)の形態である。
【0028】
図7は、この装置の制御系のブロック線図を示している。
図6の装置の平衡点付近の運動方程式は次式(数5)(数6)のようになる。
【数5】
【数6】
ここで、m1、m2は永久磁石101、強磁性体102の質量、k
iは電磁石特性係数(発生力/電流)、k
sは電磁石特性係数(発生力/変位)、k
s2は永久磁石特性係数(発生力/変位)、iは電磁石100に流れる電流、xは永久磁石101の変位、yは強磁性体102の変位、F(t)は強磁性体102に働く外力である。また、後述するように実際の実験装置では、永久磁石101を板バネによって拘束・支持しているので、k
pはそのバネ定数を表している。以下では板バネのバネ定数k
pと電磁石特性係数(発生力/変位)k
sをまとめて、次式(数7)のように表す。
【数7】
【0029】
(数5)(数6)をラプラス変換すると、次式(数8)(数9)が得られる。
【数8】
【数9】
ここで、F(s)は外力F(t)のラプラス変換を表している。
また、制御入力iは次式(数10)のように表される。
【数10】
ここで、p
d、q
dは永久磁石101、強磁性体102の位置フィードバック係数、p
v、q
vは永久磁石101、強磁性体102の速度フィードバック係数、q
iは強磁性体102の積分フィードバック係数である。
【0030】
(数8)〜(数10)から、強磁性体102に作用する外力F(t)と永久磁石101の変位xとの関係は次式(数11)のようになる。
【数11】
ここで、各係数は、以下のように定められる。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【0031】
この制御系において、次のように表される一定の外力F
0が作用したときの応答を考える。
【数21】
このときの定常変位は、次式(数22)で求められる。
【数22】
(数22)から、一定の外力F
0に対する静的な変位xは永久磁石101の特性係数k
s2のみに依存し、k
s2の絶対値を小さくするほどxの絶対値が大きくなることが分かる。
【0032】
図8は、この力測定装置の特性測定用に製作した実験装置を示している。
この装置の最上部には電磁石100が設置されている。電磁石100は、十分な吸引力を確保するため線径0.5mmで巻数880回のコイルを用いた。永久磁石101は、電磁石100に対向する鉄板105と一体化され、永久磁石101の動きを1自由度に拘束するための板ばね107に支持されている。また、強磁性体102は、
図9に示すように、錘805を付加することによって質量が可変できる構造を有している。
永久磁石101の変位は、板ばね107に貼り付けた歪ゲージ611により測定している。強磁性体102は、上下に設置したリミッタ106の間で浮上可能であり、強磁性体102の変位は、強磁性体102の下部に設置した渦電流センサ621で測定している。
また、コントローラ73には、DSPをコアとするデジタルコントローラを使用した。
この装置の電磁石特性係数k
iや永久磁石特性係数k
s2、永久磁石101の等価質量m
1は、実験的に求めることができる。
【0033】
図10は、強磁性体102に加わる静的な外力(横軸)に対する強磁性体102及び永久磁石101の変位(縦軸)を示している。なお、縦軸は、下向きの変位が負となる方向に取られている。ここでは、永久磁石101を“Floator1”、強磁性体102を“Floator2”と表している。静的な外力は、強磁性体102に錘805を付加することにより与えている。
実験では、まず強磁性体102に全ての錘を付加し、951mNの外力が掛かった状態から開始し、24.5mNずつ外力を減らしながら678mNまで測定を行った。強磁性体102に外力が掛かっても強磁性体102は変位せず、永久磁石101が変位している(下向きの力が作用すると、下向きに変位している)ことが確認できる。このことから、強磁性体102に働く外力を永久磁石101の変位を用いて非接触で計測できる。永久磁石特性係数k
s2は永久磁石101からの距離の二乗に反比例して変化してしまうが、
図10の測定範囲の限りでは永久磁石101は線形的に変位しているので、k
s2は定数と見なすことができる。
次に、この状態から再び24.5mNずつ外力を増やして、951mNになるまで測定を行った。図から、このとき外力の増加・減少で永久磁石101の変位はわずかに異なっているが、これは磁気ヒステリシスの影響によるものと考えられる。
【0034】
図11は、強磁性体102に0.025gの錘を付加していったときの外力と強磁性体102の変位との関係を示している。
図11から、強磁性体102の位置は一定に保たれていることが確認できる。
図12は、このときの外力と永久磁石101の変位との関係を示している。
図12から、永久磁石101の変位は、外力に対し、比例的に変化していることが分かる。
【0035】
また、
図13は、このときの外力と電磁石100の励磁電流との関係を示している。
図13から明らかなように、励磁電流の大きさは、外力に対し比例的に変化しているとは言い難い。この主な原因は、励磁電流の検出信号には雑音の影響が大きく現れ、測定値のばらつきが大きくなってしまうからである。
この結果から、外力を変位に変換して測定する本発明の力測定装置は、従来のサーボ機構を利用した測定と比較して、高い分解能を実現できることが明らかである。
【0036】
なお、
図6の力測定装置では、前記(1)剛性制御、または(2)変位相殺制御を適用して電磁石100を制御することも可能である。例えば(1)剛性制御を適用する場合は、第1の支持機構40の剛性を、負の剛性を持つ第2の支持機構50の剛性と絶対値が等しく、符号が反対となるように設定する。また、(2)変位相殺制御を適用する場合は、検出点と作用点との間隔の変化を相殺するように能動型支持機構である第1の支持機構40を動作させる。
【0037】
(実施例2)
図14は、前記(a)(イ)(3)に該当する装置であって、前記(B)の形態、即ち、第1の支持機構40の能動型支持機構が負のばねで、第2の支持機構50が正のばねから成る力測定装置を示している。
この装置は、電磁石100と、電磁石100からの吸引力が働く強磁性体(または永久磁石)103と、強磁性体(または永久磁石)103との間がばね105で接続された球体104とを備えており、強磁性体(または永久磁石)103が検出点、球体104が作用点となる。
この装置では、球体104に下向きの外力を加えると、第2の支持機構50であるばね105が伸びる(k
2>0)。これに対し、電磁石100と強磁性体(または永久磁石)103との間隔は積分補償の働きで狭くなる(k
1<0)。
【0038】
(実施例3)
図15は、前記(B)(a)(ロ)に該当する装置、即ち、第1の支持機構40が負のばねから成る能動型支持機構であり、アクチュエータに静電アクチュエータが使用された力測定装置を示している。
この装置は、静電アクチュエータの固定側電極110、111に対向する可動側電極112が、正のばね113を介して球体114に接続されており、可動側電極112が検出点、球体114が作用点となる。
静電アクチュエータは、固定側電極110、111と可動側電極112との間の静電力で、球体114が接続された可動側電極112を静電浮上させており、固定側電極110、111に印加する電圧が変わると、静電力が変化して固定側電極110、111と可動側電極112とのギャップが変わる。
【0039】
この装置では、球体114に下向きの外力を加えると、第2の支持機構であるばね113が伸びる(k
2>0)。これに対し、静電アクチュエータの固定側電極110、111には、コントローラの制御で、球体114を変位させないように設定された電圧が印加され、可動側電極112と固定側電極110、111側とのギャップが狭くなる(k
1<0)。
制御系として、(1)剛体制御を適用する場合は、静電浮上により、ばね113の剛性と大きさが等しくなる負の剛性を実現する。また、(2)変位相殺制御を適用する場合は、ばね113の伸縮を検出し、その変位を相殺するように浮上位置を制御する。また、(3)作用点変位に関する積分補償を含む制御を適用する場合は、球体114の固定側電極110、111(固定点)に対する変位を検出して、それがゼロとなるように浮上位置を制御する。
【0040】
図16は、
図15の装置をマイクロ化するときの構造を示している。第1の支持機構40及び第2の支持機構50は、いずれも一体化されたエデンばね機構となっており、第1の支持機構40の中に静電アクチュエータの電極110、111が形成されている。
このような機構は、ワイヤーカット放電加工を利用すれば、小型のものが簡単に製作することができる。
【0041】
(実施例4)
図17は、前記(A)(b)(ロ)に該当する装置、即ち、第1の支持機構40が正のばねで、第2の支持機構50が能動型支持機構から成る負のばねであり、アクチュエータに静電アクチュエータが使用された力測定装置を示している。
この装置は、静電浮上用の電極123、124が、固定点からばね121で支持されたプレート122(検出点)に固定され、作用点の球体125が静電力により静電浮上している。
この装置では、球体125に下向きの外力を加えると、第2の支持機構の静電アクチュエータが球体125との静電力を強めて電極123、124と球体125とのギャップを狭める(k
2<0)。そのため、ばね121が伸びる(k
1>0)。
【0042】
制御系として、(1)剛体制御を適用する場合は、静電浮上により、ばね121の剛性と大きさが等しくなる負の剛性を実現する。(2)変位相殺制御を適用する場合は、ばね121の伸縮を検出し、その変位を相殺するように浮上位置を制御する。また、(3)作用点変位に関する積分補償を含む制御を適用する場合は、球体125の固定点に対する変位を検出し、それがゼロとなるように浮上位置を制御する。
【0043】
(実施例5)
実施例5では、作用点に働く力の3分力を測定する力測定装置について説明する。
図18(3次元図形)、
図19(側方から見た図)は、この装置の一例を模式的に示している。この装置は、作用点30に働く力の3分力を検出する3つの検出点21、22、23を有し、作用点30と各検出点21、22、23との間を支持する3つの第2の支持機構501、502、503を備えている。そして、第2の支持機構501、502、503の延長線が交差する固定板600の位置に3つの固定点11、12、13が設定され、3つの固定点11、12、13と3つの検出点21、22、23との間を支持する3つの第1の支持機構401、402、403を備えている。
従って、この装置では、第1の支持機構401の中心線が、第2の支持機構501の中心線の延長線上に在り、第1の支持機構402の中心線が、第2の支持機構502の中心線の延長線上に在り、第1の支持機構403の中心線が、第2の支持機構503の中心線の延長線上に在る。
なお、3つの検出点21、22、23は分散しており、3つの第2の支持機構501、502、503は、1平面に含まれない。
【0044】
3分力を検出する第1の系は、固定点11、第1の支持機構401、検出点21、第2の支持機構501、作用点30によって構成され、第2の系は、固定点12、第1の支持機構402、検出点22、第2の支持機構502、作用点30によって構成され、第3の系は、固定点13、第1の支持機構403、検出点23、第2の支持機構503、作用点30によって構成される。
各系の第1の支持機構401、402、403及び第2の支持機構501、502、503の少なくとも一方はアクチュエータを備える能動型支持機構であり、アクチュエータとして、(イ)電磁石、(ロ)静電アクチュエータ、(ハ)ボイスコイルモータ、(ニ)圧電アクチュエータ、(ホ)リニアモータ、(ヘ)磁歪アクチュエータのいずれかが使用され、アクチュエータは、前述する(1)剛性制御、(2)変位相殺制御、または(3)作用点変位に関する積分補償を含む制御、によって制御される。
【0045】
つまり、各系の構成は、(実施例1)〜(実施例4)で説明した1次元の力を検出するための構成と同じであり、測定の際に、作用点30は変位せずに、3つの検出点21、22、23の変位から、作用点30に作用する力の3分力が測定される。
このとき、3つの検出点21、22、23の変位の方向は、各系の直線方向に沿っているから、各検出点21、22、23の変位が測定し易い。
作用点30に作用する力の3次元空間での大きさ及び方向は、測定された3分力を合成することにより得られる。
【0046】
(実施例6)
図20(3次元図形)、
図21(側方から見た図)は、実施例5の変形例を示している。この装置では、3つの固定点11、12、13を固定板600の1点の近傍に設定し、この3つの固定点11、12、13と3つの検出点21、22、23との間を3つの第1の支持機構401、402、403で支持している。その他の構成は、実施例5と変わりがない。
この装置の3分力を検出する各系は、くの字状を呈しており、そのため、装置の全体形状を小型化できる利点がある。
【0047】
(実施例7)
図22(3次元図形)、
図23(側方から見た図)は、実施例5の他の変形例を示している。この装置では、3分力を検出する3つの検出点が、一枚のプレート601上の3箇所に設定されており、一体化されている。その他の構成は、実施例5と変わりがない。
この装置では、プレート601上の3箇所の検出点が同じように変位すると、プレート601が上下方向に平行移動し、3箇所の検出点の変位に違いがあると、プレート601が傾く。
このプレート601の動きを検出することで、作用点30に作用する力の3分力を測定することができる。
【0048】
(実施例8)
図24(3次元図形)、
図25(側方から見た図)は、実施例7の変形例を示している。この装置では、実施例6(
図20、
図21)と同様に、3つの固定点11、12、13を固定板600の1点の近傍に設定している。その他の構成は、実施例7と変わりがない。