特許第5912342号(P5912342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5912342-配線ボックス 図000002
  • 特許5912342-配線ボックス 図000003
  • 特許5912342-配線ボックス 図000004
  • 特許5912342-配線ボックス 図000005
  • 特許5912342-配線ボックス 図000006
  • 特許5912342-配線ボックス 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912342
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】配線ボックス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/08 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H02G3/08 030
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-187817(P2011-187817)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-51789(P2013-51789A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳樹
【審査官】 多胡 滋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−051990(JP,A)
【文献】 特開2010−213572(JP,A)
【文献】 特開2000−134764(JP,A)
【文献】 特開2008−306863(JP,A)
【文献】 特開2005−033992(JP,A)
【文献】 特開2010−246224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
H02G 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、該底壁の上下に対向する一対の側縁から立設された第1側壁、及び左右に対向する一対の側縁から立設された第2側壁と、から一面に開口するボックス本体を備え、
前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、ケーブルが挿入される電線管を接続するための接続孔が形成されるとともに、該接続孔は、前記第2側壁の少なくとも一方寄りに偏った位置に形成され、
前記第2側壁に前記ボックス本体の側方に開口するとともに前記接続孔に連通する挿入開口が形成されており、
前記接続孔に、前記電線管の径方向の一部が前記挿入開口より前記ボックス本体の側方へ突出するとともに、前記電線管の内部の一部が前記ボックス本体の内部空間に臨み、かつ他部が前記挿入開口の形成された前記第2側壁の端面に対向する状態に前記電線管が接続される配線ボックスにおいて、
前記第2側壁における前記電線管の内部の他部が対向する位置に、前記電線管に挿入された前記ケーブルを前記内部空間へ案内する案内部を形成し、
前記案内部は、前記第2側壁から前記ボックス本体の側方へリブとして突設された案内部形成体に形成され、
前記案内部は、前記第2側壁に固定され、前記ボックス本体の前記内部空間に向けて一定の角度で傾斜する案内面を有することを特徴とする配線ボックス。
【請求項2】
前記接続孔は、両第2側壁寄りに偏った位置に形成されている請求項1に記載の配線ボックス。
【請求項3】
前記挿入開口が形成された前記第2側壁の外面には、建物内の構造物に前記ボックス本体を固定する際に前記構造物に当接する当接座部が形成され、該当接座部は、前記ボックス本体の側方へ突出する電線管の一部よりも前記ボックス本体の側方へ突出している請求項1又は2に記載の配線ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の第1側壁の少なくとも一方に、電線管を接続するための接続孔が形成されるとともに、第2側壁にボックス本体の側方に開口するとともに接続孔に連通する挿入開口が形成された配線ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配線ボックスとしては、例えば、特許文献1が挙げられる。図6(a)に示すように、特許文献1に開示の配線ボックス80は、四角箱状をなすボックス本体81を備えるとともに、そのボックス本体81の上側壁81a及び下側壁(図示せず)には、接続孔82が2つずつ形成されている。なお、各接続孔82は、それぞれ上側壁81a及び下側壁の右側寄り及び左側寄りに偏った位置に形成されるとともに、隣り合う接続孔82同士の間には、上側壁81a及び下側壁の壁部81bが位置している。
【0003】
また、ボックス本体81の右側壁81cには挿入開口83が形成され、その挿入開口83は接続孔82と連通している。そして、配線ボックス80の右側から挿入開口83に電線管90が挿入されるとともに、電線管90が接続孔82に向けてスライド移動されることにより接続孔82に電線管90が接続される。この電線管90にはケーブル84が挿入されるようになっている。また、接続孔82への電線管90の接続状態では、壁部81bに対する電線管90の当接により、反対側の接続孔82へ向けた電線管90の移動が規制されるとともに、電線管90が位置決めされている。
【0004】
ところで、近年は、ケーブル84の挿入作業を容易に行える等の理由から、電線管90が大径化する傾向にある。そこで、図6(b)に示すように、電線管90よりも大径の大径電線管91を接続可能とするために、挿入開口83と連通する一方の接続孔82の開口幅を、他方の接続孔82より広くすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−51990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、大径電線管91が接続孔82に接続されたとき、大径電線管91の径方向に沿った一部が、挿入開口83から接続孔82外へ突出してしまう。すると、大径電線管91においては、その内部の一部が大径電線管91の内部空間に臨むとともに、その他の一部が右側壁81cの端部81dに対向する状態になる。このため、ケーブル84を、大径電線管91内に挿入しながら配線ボックス80内に引き込む際、右側壁81cの端部81dがケーブル84の挿入端に干渉してしまい、配線ボックス80に対するケーブル84の配線作業が行いにくいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ケーブルの配線作業を簡単に行うことができる配線ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、底壁と、該底壁の上下に対向する一対の側縁から立設された第1側壁、及び左右に対向する一対の側縁から立設された第2側壁と、から一面に開口するボックス本体を備え、前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、ケーブルが挿入される電線管を接続するための接続孔が形成されるとともに、該接続孔は、前記第2側壁の少なくとも一方寄りに偏った位置に形成され、前記第2側壁に前記ボックス本体の側方に開口するとともに前記接続孔に連通する挿入開口が形成されており、前記接続孔に、前記電線管の径方向の一部が前記挿入開口より前記ボックス本体の側方へ突出するとともに、前記電線管の内部の一部が前記ボックス本体の内部空間に臨み、かつ他部が前記挿入開口の形成された前記第2側壁の端面に対向する状態に前記電線管が接続される配線ボックスにおいて、前記第2側壁における前記電線管の内部の他部が対向する位置に、前記電線管に挿入された前記ケーブルを前記内部空間へ案内する案内部を形成し、前記案内部は、前記第2側壁から前記ボックス本体の側方へリブとして突設された案内部形成体に形成され、前記案内部は、前記第2側壁に固定され、前記ボックス本体の前記内部空間に向けて一定の角度で傾斜する案内面を有することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線ボックスにおいて、前記接続孔は、両第2側壁寄りに偏った位置に形成されていることを要旨とする
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の配線ボックスにおいて、前記挿入開口が形成された前記第2側壁の外面には、建物内の構造物に前記ボックス本体を固定する際に前記構造物に当接する当接座部が形成され、該当接座部は、前記ボックス本体の側方へ突出する電線管の一部よりも前記ボックス本体の側方へ突出していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケーブルの配線作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の配線ボックス及び電線管を示す斜視図。
図2】(a)は配線ボックスを示す平面図、(b)は配線ボックスの案内部を示す部分破断正面図。
図3】配線ボックスに電線管が接続された状態を示す斜視図。
図4】配線ボックスが柱に固定された状態を示す正面図。
図5】配線ボックスにケーブルが配線された状態を示す平断面図。
図6】(a)及び(b)は背景技術を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、配線ボックス11に接続される電線管としての大径電線管10は合成樹脂材料により可撓性を有するパイプ状に形成され、その周方向に突出する同一径のリング状をなす凸条部10aと、同一径のリング状をなす凹条部10bとが繰り返し連続形成されて凹凸状に形成されている。なお、電線管としては、大径電線管10よりも小径をなす小径電線管(図示せず)も存在し、異なる管径の小径電線管が複数種類存在する。そして、図3に示すように、大径電線管10内にはケーブル24が挿入されるとともに、このケーブル24は配線ボックス11の内部空間Sに引き込まれる。
【0014】
次に、配線ボックス11について説明する。図1及び図2に示すように、配線ボックス11のボックス本体13は、矩形板状をなす底壁12と、その底壁12の上下に対向する一対の側縁から立設された第1側壁としての上側壁12a及び下側壁12bと、底壁12の左右に対向する一対の側縁から立設された第2側壁としての左側壁12c及び右側壁12dとからなる。そして、ボックス本体13は一面に開口する四角箱状に形成されている。また、ボックス本体13内には、底壁12と、上側壁12aと、下側壁12bと、左側壁12cと、右側壁12dとから囲まれる内部空間Sが形成されている。
【0015】
右側壁12dの外面には、一定の厚みを有する直方体状の当接座部14が外方へ突出形成されるとともに、図4に示すように、左側壁12cの外面には、複数のリブ12eがボックス本体13の奥行き方向へ延びるように突設されている。また、図1に示すように、上側壁12a、下側壁12b、及び左側壁12cの開口側の外面には、補強リブ12fが三つの側壁12a,12b,12cに跨るように突設されている。左側壁12cのリブ12eと補強リブ12fとは連続している。
【0016】
左側壁12c及び右側壁12dには、それぞれ各側壁12c,12dを貫通する固定孔15が、ボックス本体13の奥行き方向へ長孔状に延びるように複数形成されるとともに、各固定孔15は、それぞれ固定ビス(図示せず)を挿通可能に形成されている。固定孔15に挿通された固定ビスが、図3に示すように、建物内の構造物としての柱Hに固定されることにより、配線ボックス11が柱Hに固定されるようになっている。
【0017】
図1に示すように、上側壁12a及び下側壁12bにおいて、左側壁12c及び右側壁12d寄りに偏った位置には、それぞれ半円状の接続孔20が各側壁12a,12bを貫通して形成されている。上側壁12a及び下側壁12bには、両接続孔20に挟まれた位置に壁部121が位置するとともに、この壁部121により、ボックス本体13の奥行き方向に沿った上側壁12a及び下側壁12bの強度が確保されている。また、左側壁12c及び右側壁12dの上下両端部には挿入開口21が、左側壁12c及び右側壁12dを貫通して形成されるとともに、各挿入開口21は、それぞれボックス本体13の側方となる左方及び右方へ開口するように形成されている。各挿入開口21は、各接続孔20それぞれと連通するように形成されるとともに、各挿入開口21から各接続孔20内に大径電線管10を挿入可能に形成されている。図5に示すように、ボックス本体13の奥行き方向に沿った挿入開口21の開口幅は大径電線管10の凸条部10aにおける外径と同じ又はわずかに大きく形成されている。
【0018】
図2(a)に示すように、各接続孔20の内周に沿って係合突条22が形成されている。各係合突条22はそれぞれ接続孔20の挿入開口21側から同接続孔20の奥方に向かって直線状に延び、さらに接続孔20の円弧に沿って延びるように形成されている。ボックス本体13の奥行き方向に沿った接続孔20の開口幅は、大径電線管10の凸条部10aにおける外径よりわずかに短く形成されている。大径電線管10が挿入開口21から接続孔20内に挿入されると、大径電線管10の凹条部10bに係合突条22を係合させることが可能となっている。
【0019】
各係合突条22において、挿入開口21側の端縁には、係合突条22より厚み寸法が大きい抜け止め部23が形成されている。各抜け止め部23は、ボックス本体13の外面となる一面側から外方へ突出形成されている。各抜け止め部23において、挿入開口21側に位置する先端部は、それぞれ挿入開口21側から接続孔20の奥方に向かって傾斜するように形成されている。各抜け止め部23の最大の厚み寸法は、凹条部10bの幅、即ち隣接する凸条部10a間の間隔より大きくなるように設定されている。
【0020】
なお、係合突条22には、大径電線管10よりワンサイズ小径の小径電線管も係合させることができ、接続孔20に小径電線管を接続することもできる。さらに、図示しないが、係合突条22の内周側に、小径用係合突条を係合突条22と同様な形状に形成し、その小径用係合突条を用いて、さらに小径の小径電線管を接続孔20に接続可能にしてもよい。
【0021】
図1図2(a)及び図2(b)に示すように、左側壁12c及び右側壁12dにおいて、各挿入開口21よりも中央寄りの外面には、それぞれ案内部形成体30が外方へ突設されている。案内部形成体30は、ボックス本体13の奥行き方向全体に亘って延びる矩形板状に形成されている。各案内部形成体30は、ボックス本体13の開口側の一端が、補強リブ12fの裏面に一体化されるとともに、底壁12側の他端は、底壁12の左右両側方それぞれから裏側に露出している。各案内部形成体30における挿入開口21に臨む端面は、ボックス本体13の外側から内側に向かうに従いボックス本体13の中央に向けて傾斜する平滑面状に形成され、この傾斜面によって案内面30aが形成されている。言い換えると、上側壁12a寄りの案内部形成体30に形成された案内面30aは、上側壁12a側から下側壁12b側に向かうに従いボックス本体13の中央に向けて下り傾斜している。一方、下側壁12b寄りの案内部形成体30に形成された案内面30aは、下側壁12b側から上側壁12a側に向かうに従いボックス本体13の中央に向けて下り傾斜している。すなわち、各案内面30aは、ボックス本体13内へのケーブル24の挿入方向に沿いながらボックス本体13の中央に向けて下り傾斜している。
【0022】
左側壁12cに形成された案内部形成体30は、左側壁12cに形成された複数のリブ12eのうち、挿入開口21に最も近いリブ12eを用いて形成されている。また、右側壁12dに形成された案内部形成体30は、補強リブ12fに一体化されており、右側壁12dの補強リブとしての機能も発揮する。
【0023】
さらに、右側壁12dに形成された案内部形成体30において、ボックス本体13の外方に向けた突出長さは、当接座部14のボックス本体13の外方に向けた突出長さとほぼ同じ(若干短い)になっている。言い換えると、右側壁12dの案内部形成体30は、当接座部14の突出長さを最大に利用して突出長さを確保している。よって、右側壁12dの案内部形成体30は、左側壁12cの案内部形成体30よりも突出長さが長くなっているとともに、右側壁12dの案内面30aの方が左側壁12cの案内面30aよりも傾斜方向への長さが長くなっている。そして、本実施形態では、案内部形成体30と案内面30aとから案内部40が形成されている。
【0024】
上側壁12a及び右側壁12dの内面において、ボックス本体13の開口側であり、接続孔20に挟まれた位置にはボス部Bがボックス本体13の内方に向けて突設されている。また、図2(a)に示すように、各ボス部B内にはナットNが埋込まれている。さらに、各ボス部Bには、ナットNの雌ねじをボス部Bの外側に臨ませる挿通孔Baが形成されている。そして、図5に示すように、挿通孔Baに挿通されたビス34はナットNに螺合されるようになっている。また、図1に示すように、各ボス部Bにおける底壁12側の端面と、底壁12との間であり、壁部121と対向する位置には連結片31が架設されている。
【0025】
次に、上記構成の配線ボックス11の作用を設置方法と共に説明する。
まず、配線ボックス11の左右両側方から、大径電線管10を配線ボックス11に向かってその径方向へ移動させる。そして、その大径電線管10の端部を、上側壁12aの左右各挿入開口21内に挿入するとともに、係合突条22の先端となる抜け止め部23を凹条部10b内に差し込む。さらに、大径電線管10を接続孔20の奥方へ押し込むと、抜け止め部23が凹条部10b内へ円滑に差し込まれる。大径電線管10が接続孔20の奥方へ押し込まれると、抜け止め部23の厚み寸法が、凹条部10bの幅より厚くなるため、抜け止め部23により一対の凸条部10aが外方へ押圧され、弾性変形して押し広げられる。
【0026】
そして、一対の凸条部10aが押し広げられたまま大径電線管10が接続孔20の奥方へ押し込まれると、抜け止め部23よりも接続孔20の奥方に位置する係合突条22の内周縁に凹条部10bが当接する。それと同時に、抜け止め部23は凹条部10b内を通過して大径電線管10の外側に位置し、凹条部10bより上側に位置する凸条部10aの外面に係合可能な位置に配設される。その結果、図3に示すように、各接続孔20に大径電線管10が接続される。
【0027】
図4及び図5に示すように、接続孔20に大径電線管10が接続された状態では、大径電線管10の内部の一部は、接続孔20を介してボックス本体13の内部空間Sに臨むとともに、大径電線管10の内部と内部空間Sとが連通している。しかし、大径電線管10において、挿入開口21側に位置する径方向の一部は、挿入開口21からボックス本体13の側方へ突出している。言い換えると、大径電線管10の一部は、左側壁12c及び右側壁12dの外面を越えた位置にまで突出している。
【0028】
このため、各大径電線管10の内部のうち、内部空間Sと対向しない他部である左側壁12c及び右側壁12d側には、それら左側壁12c及び右側壁12dの端部が対向している。すなわち、各大径電線管10の内部には、各案内部形成体30の案内面30aが露出している。このとき、案内面30aは、大径電線管10の内部の前後方向に跨るように露出している。したがって、接続孔20への大径電線管10の接続状態では、大径電線管10の内部全体は、内部空間Sと案内面30aに塞がれている。
【0029】
なお、左側壁12cの案内部形成体30は、右側壁12dの案内部形成体30より突出長さが短いため、左側壁12c側の接続孔20に接続された大径電線管10は、径方向の一部が、案内部形成体30よりも外方に突出している。一方、右側壁12d側の接続孔20に接続された大径電線管10は、案内部形成体30よりも外方に突出しておらず、大径電線管10は案内部形成体30よりも内側に位置している。
【0030】
また、上側壁12aの両接続孔20に大径電線管10が接続された状態では、各大径電線管10の間には、上側壁12aの壁部121が位置するとともに、連結片31が位置している。よって、上側壁12aの壁部121と、連結片31とにより、一方の大径電線管10が他方の大径電線管10(接続孔20)に向けて移動することが防止されている。
【0031】
次いで、ボックス本体13の開口端が、柱Hの前面と同一平面となるように、当接座部14の外面を柱Hの側面に当接させる。そして、右側壁12dに形成された3箇所の固定孔15のうち、中央に位置する固定孔15に固定ビスを挿通し、その固定ビスを柱Hに固定して配線ボックス11を柱Hに固定する。
【0032】
次に、ケーブル24を、各大径電線管10内に挿入しながら配線ボックス11内に引き込む。大径電線管10内に挿入されたケーブル24の挿入端は、各案内面30aに当接した場合、その傾斜によってボックス本体13中央に向かうように案内される。続けて、ケーブル24を大径電線管10内に挿入すると、ケーブル24の外面が案内面30aに摺接することで、ボックス本体13の中央に向かうように案内される。
【0033】
その後、図5に示すように、柱Hの前後両側に壁材Waが立設されて、壁Wが構築されるとともに、この壁W内に配線ボックス11が設置される。次に、壁Wの表側となる壁材Waに、ボックス本体13の開口を壁Wの表側に臨ませる壁孔Wbが穿設される。そして、配線ボックス11内に引き込まれたケーブル24に配線器具35が接続されるとともに、この配線器具35を保持した保持枠36にビス34が挿通される。そして、ビス34が配線ボックス11の挿通孔Baに挿通されるとともに、ナットNに螺合され、保持枠36が配線ボックス11に固定される。このとき、ビス34は、ボックス本体13の内部空間Sを奥行き方向に延びるようにナットNを螺進するが、両大径電線管10は、上側壁12aの壁部121が存在することにより一定の位置で位置決めされているため、ビス34が大径電線管10に干渉することが防止される。最後に、保持枠36を覆うように化粧プレート37が壁材Waに取り付けられて、配線器具35が壁Wに設置される。
【0034】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)配線ボックス11は、ボックス本体13の側方に開口する挿入開口21から大径電線管10を接続孔20に接続するように構成され、接続状態では大径電線管10の径方向の一部が挿入開口21から側方に突出している。そして、その大径電線管10の内部の一部がボックス本体13の内部空間Sに臨み、かつ他部が挿入開口21の形成された左側壁12c及び右側壁12dに対向する。この配線ボックス11において、大径電線管10の内部が対向する位置に案内部40(案内部形成体30と案内面30a)を形成した。このため、大径電線管10にケーブル24を挿入したとき、案内部40によってケーブル24をボックス本体13の内部空間Sに向かうように案内することができる。したがって、ケーブル24が、左側壁12c及び右側壁12dに当接して、それ以上ケーブル24を挿入できなくなったり、ケーブル24が屈曲したりすることを防止することができ、配線ボックス11に対するケーブル24の配線作業を簡単に行うことができる。
【0035】
(2)案内部40は、案内部形成体30に案内面30aを備え、案内面30aはそれぞれボックス本体13の外側から内側に向かうに従い、ボックス本体13の中央に傾斜している。言い換えると、案内面30aは、ボックス本体13内へのケーブル24の挿入方向に沿いながらボックス本体13の中央に向けて下り傾斜している。よって、案内面30aによって、ボックス本体13内に挿入されたケーブル24をボックス本体13の中央に向けて案内することができる。
【0036】
(3)案内面30aは、それぞれ傾斜した平滑面状に形成されている。よって、案内面30aにケーブル24が摺接することにより、案内面30aによってケーブル24がボックス本体13の内部空間Sに向かうように円滑に案内することができる。
【0037】
(4)接続孔20に大径電線管10が接続された状態では、大径電線管10の内部は、ボックス本体13の内部空間S及び各案内部40に対向しており、ボックス本体13の外部に露出していない。よって、大径電線管10の内部にゴミ等が侵入することが防止できる。
【0038】
(5)接続孔20に大径電線管10が接続された状態では、大径電線管10の内部は、ボックス本体13の内部空間S及び各案内部40に対向している。このため、ケーブル24が内部空間Sよりも各案内部40に向けて挿入されても、各案内部40によってケーブル24がボックス本体13の外側に飛び出てしまうことを防止することができる。
【0039】
(6)各案内部40は、ボックス本体13の強度を確保するために、ボックス本体13の奥行き方向に延びるリブを用いて形成されている。このため、案内部40により、ボックス本体13の強度を確保しつつ、配線ボックス11に対するケーブル24の配線作業を簡単に行うことができる。
【0040】
(7)ボックス本体13の上側壁12a及び下側壁12bには、それぞれ左側壁12c及び右側壁12d寄りに偏った位置に接続孔20が形成され、各接続孔20に対応して左側壁12c及び右側壁12dに案内部40が形成されている。よって、いずれの接続孔20に大径電線管10を接続しても、配線ボックス11に対するケーブル24の配線作業を簡単に行うことができる。
【0041】
(8)案内部40は、左側壁12c及び右側壁12dからボックス本体13の側方へ突設された案内部形成体30に形成されている。このため、例えば、左側壁12c及び右側壁12dの厚み内に案内部40(案内面30a)を形成する場合と比べると、案内部40の突出長さを長くすることができる。したがって、案内部40の面積を大きく確保して、ケーブル24を案内しやすくすることができる。さらには、接続孔20に小径電線管が接続されても、その小径電線管の内部に案内部40を対向させることが可能になり、小径電線管に挿入されたケーブル24も案内することができる。
【0042】
(9)ボックス本体13の右側壁12dの外面には、配線ボックス11を柱Hに固定する際、柱Hの側面に当接させる当接座部14が突設されている。そして、この当接座部14のボックス本体13側方への突出長さは、右側壁12d側の接続孔20に接続された大径電線管10のボックス本体13側方への突出長さより長くなっている。このため、右側壁12d側の接続孔20に大径電線管10が接続されていても、当接座部14を柱Hに当接させることができ、配線ボックス11を柱Hに固定することができる。
【0043】
(10)ボックス本体13の右側壁12dに形成された案内部形成体30は、ボックス本体13の側方への突出長さが、当接座部14の突出長さとほぼ同じになっており、この案内部形成体30は右側壁12dから突出できる最大長さを利用して形成されている。よって、案内部40を最大限に大きく形成し、案内面30aの面積を大きく確保して、ケーブル24を案内しやすくすることができる。
【0044】
(11)接続孔20は、ボックス本体13の上側壁12a及び下側壁12bにおける左側壁12c及び右側壁12d寄りに偏った位置に形成されており、両接続孔20の間には壁部121が形成されている。また、両接続孔20の間には、ボス部Bが位置し、ボス部Bに螺合されたビス34は、接続孔20の間を通過し、ビス34が大径電線管10に干渉しないようになっている。すなわち、本実施形態の配線ボックス11は、上側壁12a及び下側壁12bのほぼ全体に長孔状の接続孔が形成されたタイプとは異なり、各接続孔20に一本の大径電線管10しか接続できないタイプである。このため、配線ボックス11においては、接続孔20に大径電線管10を接続すると、その径方向の一部が挿入開口21から突出し、大径電線管10の内部が狭められてしまう。しかし、案内部40を形成することで、大径電線管10に挿入されたケーブル24をボックス本体13の内部空間Sに挿入しやすくし、配線ボックス11特有の欠点を解消しているのである。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、ボックス本体13の右側壁12dのみに当接座部14を形成したが、左側壁12cに当接座部14を形成してもよい。
【0046】
○ 実施形態では、ボックス本体13において、当接座部14の形成されていない左側壁12cにリブ12eを形成するとともに、リブ12eを利用して案内部40(案内部形成体30)を形成したが、これに限らない。例えば、左側壁12cのリブ12eを削除し、左側壁12cの外面を平滑面とするとともに、その左側壁12cの外面に案内部形成体30のみを突設して案内部40を形成してもよい。
【0047】
○ 実施形態では、ボックス本体13の左側壁12c及び右側壁12dの外面に案内部形成体30を突設し、その案内部形成体30を利用して案内部40を形成したが、左側壁12c及び右側壁12dの厚み内で案内面を形成し、案内部としてもよい。
【0048】
○ 実施形態では、ボックス本体13の上側壁12a及び下側壁12bにおいて、それぞれ左側壁12c寄り及び右側壁12d寄りに接続孔20を形成したが、これに限らない。上側壁12a及び下側壁12bにおいて、左側壁12c寄りのみ又は右側壁12d寄りのみに接続孔20を形成し、接続孔20に対応して左側壁12c又は右側壁12dに案内部40を形成してもよい。さらに、実施形態では、上側壁12a及び下側壁12bの両方に接続孔20を形成したが、上側壁12aのみ又は下側壁12bのみに接続孔20を形成し、接続孔20に対応して上側壁12a側又は下側壁12b側のみに案内部40を形成してもよい。
【0049】
○ 実施形態では、案内部40の案内面30aを、ボックス本体13の外側から内側に向かうに従いボックス本体13の中央へ傾斜する平滑面としたが、これに限らない。例えば、案内面30aは、ボックス本体13の外側から内側に向かうに従い凹んだり、膨らんだりしながら緩やかにカーブする円弧状であってもよい。
【0050】
○ 実施形態では、案内部40をボックス本体13の奥行き方向全体に亘って延びるように形成したが、これに限らない。例えば、接続孔20に大径電線管10を接続したとき、大径電線管10の内部の他部が対向する部位のみに案内部40(案内面30a)を形成してもよい。
【0051】
○ 実施形態では、大径電線管10を接続孔20に接続した後、配線ボックス11を柱Hに固定したが、配線ボックス11を柱Hに固定した後、ボックス本体13の側方に開口する挿入開口21に大径電線管10を挿入し、接続孔20に大径電線管10を接続してもよい。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記案内部は、前記案内部形成体に形成された案内面を備え、該案内面は、前記ボックス本体の外側から内側に向かうに従い前記ボックス本体の中央に向けて下り傾斜している請求項3又は請求項4に記載の配線ボックス。
【0053】
(ロ)前記案内部形成体は、前記第2側壁に形成されたリブを利用して形成されている請求項3、請求項4及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の配線ボックス。
【符号の説明】
【0054】
H…構造物としての柱、S…内部空間、10…電線管としての大径電線管、11…配線ボックス、12…底壁、12a…第1側壁としての上側壁、12b…第1側壁としての下側壁、12c…第2側壁としての左側壁、12d…第2側壁としての右側壁、13…ボックス本体、14…当接座部、20…接続孔、21…挿入開口、24…ケーブル、30…案内部形成体、40…案内部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6