特許第5912372号(P5912372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912372セレン/第1B族/第3A族インク、並びにその製造方法および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912372
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】セレン/第1B族/第3A族インク、並びにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/03 20140101AFI20160414BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20160414BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C09D11/03
   C09B57/10
   C09B67/20 F
   C09B67/20 L
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-211842(P2011-211842)
(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公開番号】特開2012-102319(P2012-102319A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】12/895,297
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・カルジア
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・モズレー
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・エル.トーセン
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0260670(US,A1)
【文献】 特開2011−241397(JP,A)
【文献】 特開2011−241396(JP,A)
【文献】 特開2011−088808(JP,A)
【文献】 特開2011−068547(JP,A)
【文献】 特開2011−052206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)当初成分として、
セレン;
RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式(式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルルから独立して選択され、RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基および1−20メルカプトアルキル基から選択され、R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基および1−20メルカプトアルキル基から選択される)を有する少なくとも1種の有機カルコゲナイドを含む有機カルコゲナイド成分;
CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第11族含有物質;
二座チオール成分、ここで、前記二座チオール成分はジチオール、ヒドロキシチオールおよび窒素含有チオールの群から選択され、前記二座チオール成分は2つの活性キレート化基を有し、かつ前記二座チオール成分におけるこれら活性キレート化基は4炭素以下の鎖によって隔てられている;
アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第13族材料を当初成分として含む第13族含有物質;
の組み合わせを含む、セレン/第11族/第13族システム;並びに
(b)以下の(i)および(ii)からなる群から選択される液体キャリア成分
[(i)式NR(式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基、およびC1−10アミノアルキル基から選択される)を有する液体アミン、
(ii)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンおよびこれらの混合物からなる群];
を含む、セレン/第11族/第13族インクであって、
セレン、前記有機カルコゲナイド成分、前記第11族含有物質、前記二座チオール成分および前記第13族含有物質の前記液体キャリア成分中での組み合わせによって形成される生成物が、22℃で窒素下での前記セレン/第11族/第13族インクの貯蔵中に、少なくとも15分間沈殿を形成しない、
セレン/第11族/第13族インク。
【請求項2】
液体キャリア成分が、式NR(式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基、およびC1−10アミノアルキル基から選択される)を有する液体アミンから選択される、請求項1に記載のセレン/第11族/第13族インク。
【請求項3】
液体キャリア成分が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のセレン/第11族/第13族インク。
【請求項4】
セレン:銅:第13族材料のモル比が2:0.5:1〜10:1.5:1である、請求項1に記載のセレン/第11族/第13族インク。
【請求項5】
セレンを提供し;
両方ともRZ−Z’R’およびR−SHから独立して選択される式(式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルルから独立して選択され、RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基および1−20メルカプトアルキル基から選択され、R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基および1−20メルカプトアルキル基から選択される)を有する第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイドを含む有機カルコゲナイド成分を提供し;
CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第11族含有物質を提供し;
第11族リガンド成分を提供し、ここで、前記第11族リガンド成分は二座チオール成分であり、前記二座チオール成分はジチオール、ヒドロキシチオールおよび窒素含有チオールの群から選択され、前記二座チオール成分は2つの活性キレート化基を有し、かつ前記二座チオール成分におけるこれら活性キレート化基は4炭素以下の鎖によって隔てられている;
アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第13族材料を当初成分として含む第13族含有物質を提供し;
第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアを含む液体キャリア成分を提供し;
セレン、第1の有機カルコゲナイドおよび第1の液体キャリアを一緒にして、この組み合わせ物を攪拌しつつ加熱して、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;
第11族含有物質、第11族リガンド成分および第2の液体キャリアを一緒にして第11族材料/リガンド成分を生じさせ;
第13族含有物質、第2の有機カルコゲナイドおよび第3の液体キャリアを一緒にして第13族/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;
化合したセレン/有機カルコゲナイド成分、第11族材料/リガンド成分および第13族/有機カルコゲナイド成分を一緒にして、セレン/第11族/第13族インクを形成する;
ことを含み、
前記セレン/第11族/第13族インクが安定な分散物であり;並びに、
第1の液体キャリア、第2の液体キャリア、および第3の液体キャリアが同じかまたは一緒に混和可能である、
請求項1に記載のセレン/第11族/第13族インクを製造する方法。
【請求項6】
基体を提供し;
請求項1に記載のセレン/第11族/第13族インクを提供し;
セレン/第11族/第13族インクを基体上に堆積させ;
堆積されたセレン/第11族/第13族インクを加熱して、液体キャリア成分を除去して、基体上にセレン/第11族/第13族物質を残し;並びに、
場合によっては、セレン/第11族/第13族物質をアニールする;
ことを含み、
前記セレン/第11族/第13族物質が式 NaCuGaIn(1−d)(2+e)(1−f)Se(2+e)f(式中、0≦L≦0.25、0.25≦m≦1.5、0≦d≦1、−0.2≦e≦0.5、0<f≦1、0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5である)に従う、
基体上にセレン/第11族/第13族物質を堆積させる方法。
【請求項7】
基体上に堆積されたセレン/第11族/第13族物質が5重量%未満の残留炭素混入物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基体がモリブデンの層を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
基体がモリブデンの層を含む請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセレン/第1b族/第3a族インクに関し、このインクは(a)当初成分として、セレン;RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイド(式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルルから独立して選択され、RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択され、R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択される)を少なくとも1種含む有機カルコゲナイド成分;CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第1b族含有物質;場合によって、二座チオール成分;アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第3a族材料を当初成分として含む第3a族含有物質;の組み合わせを含む、セレン/第1b族/第3a族システム;並びに(b)液体キャリア成分を含み、前記セレン/第1b族/第3a族システムは前記液体キャリア成分中に安定に分散されている。本発明は、さらに、このセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法、およびこのセレン/第1b族/第3a族インクを使用して、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セレン/第1b族/第3a族物質の薄膜の製造は、例えば、スイッチング素子、太陽電池、非線形光学素子、イオン性蓄電池、および高密度相変化データ記憶素子をはじめとする多くの潜在的な用途における使用のために過去二十年にわたって広範囲に検討されてきた。
【0003】
セレン/第1b族/第3a族物質についての非常に前途有望な用途の1つは太陽光を電気に変換するための太陽電池の製造におけるものである。特に、例えば、銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe)、銅−ガリウム−ジセレニド(CuGaSe)および銅−インジウム−ガリウム−ジセレニド(CuIn1−xGaSe)をはじめとする第1b−3a−6a族混合金属カルコゲナイド物質をベースにした太陽電池の製造は、その太陽エネルギーから電気エネルギーへの高い変換効率のためにかなり注目を集めている。この第1b−3a−6a族混合金属カルコゲナイド半導体は場合によっては一般的にCIGS物質と称される。従来のCIGS太陽電池はモリブデンの層のような裏面電極、CIGS吸収体層、CdS接合パートナー(junction partner)層、任意の透明バッファ層、例えば、酸化亜鉛、並びに透明導電性酸化物層電極(例えば、アルミニウムドープZnO、インジウムスズ酸化物、SnO)を含み、モリブデン層は基体上に堆積されており、CIGS吸収体層はモリブデン層とCdS接合パートナーとの間に挿入されており、CdS接合パートナーはCIGS吸収体層と透明導電性酸化物層電極との間に挿入されている。
【0004】
セレン/第1b族/第3a族物質の堆積膜の前途有望な用途についての1つの試みはコスト効果的な製造技術の開発である。セレン/第1b族/第3a族物質を堆積させる従来の方法は典型的には真空ベースのプロセス、例えば、真空蒸発、スパッタリングおよび化学蒸着(例えば、金属有機化学蒸着)などの使用を伴う。このような堆積技術は低いスループット能力および高いコストを示す傾向がある。大規模で高スループットで低コストの、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質の使用を組み込んでいるシステムの製造を容易にするために、液体ベースの堆積技術を提供することが望ましいであろう。
【0005】
半導体前駆体膜の液体堆積のための方法がシュルツ(Schulz)らへの米国特許第6,126,740号に開示されている。シュルツらは金属カルコゲナイドナノ粒子および揮発性キャッピング剤を含むコロイド懸濁物を開示し、このコロイド懸濁物は、有機溶媒中での金属塩とカルコゲナイド塩との反応により金属カルコゲナイドを沈殿させ、この金属カルコゲナイド沈殿物の回収、および非水系有機溶媒中での金属カルコゲナイド沈殿物と揮発性キャッピング剤との混合によって製造される。シュルツらは、コロイド懸濁物が基体上に噴霧堆積されて、半導体前駆体膜を生じさせることができることをさらに開示する。シュルツらはそのコロイド懸濁物における使用および使用方法に特に好ましい金属が銅、インジウム、ガリウムおよびカドミウムであることを開示する。
【0006】
CIGS物質の製造においてセレンを堆積させる液体堆積方法の1つは、ミツィー(Mitzi)らによって、アドバンストマテリアルズ(ADVANCED MATERIALS)、第20巻、3657−62ページ(2008年)、高効率の溶液堆積薄膜光起電力素子(A High−Efficiency Solution−Deposited Thin−Film Photovoltaic Device)(Mitzi I)に開示されている。Mitzi Iは特に、薄膜CIGS層の製造におけるセレンの堆積のための液体ビヒクルとしてのヒドラジンを含むセレンインクの使用を開示する。しかし、ヒドラジンは高毒性および爆発性の物質である。よって、Mitzi Iのプロセスは、セレン含有半導体デバイスの大規模製造における使用のためには、限定された価値しか有しない。
【0007】
Mitzi Iに記載されるヒドラジン含有セレンインクの代替物が、Mitziらによって、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)(Mitzi II)に開示されている。Mitzi IIは、セレン化インジウムを堆積し、薄膜トランジスタのセレン化インジウムチャネル形成のための、ヒドラジニウム前駆体物質の使用を開示する。Mitzi IIはさらに、そのヒドラジニウムアプローチは、SnS2−XSe、GeSeおよびInSeシステム以外に、他のカルコゲナイドにおそらく拡張可能であることを述べる。
【0008】
Mitziらによって開示されるヒドラジニウム前駆体物質は、半導体膜を生産するための製造工程からヒドラジンを除く。にもかかわらず、Mitziらはヒドラジンについての必要性を除いていない。むしろ、Mitziらは、ヒドラジニウム前駆体物質の製造において、依然としてヒドラジンを利用する。さらに、ヒドラジニウムイオン前駆体は、エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)によって、彼の本、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)に記載されるように、かなりの爆発の危険性を有している。多くの金属イオンの存在は、ヒドラジニウム爆発または爆轟の危険性を深刻にする。残留するヒドラジニウム塩は、製造中にプロセス装置内に蓄積する場合があり、許容できない安全上のリスクを生じさせるので、このことは問題であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,126,740号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ミツィー(Mitzi)ら、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)
【非特許文献2】ミツィー(Mitzi)ら、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)
【非特許文献3】エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、セレン/第1b族/第3a族半導体を組み込んでいるシステム(例えば、スイッチング素子、太陽電池、非線形光学素子、イオン性蓄電池、および高密度相変化データ記憶素子)の製造において使用するための液体堆積方法についての必要性が存在している。特に、セレン/第1b族/第3a族物質の堆積を容易にする配合されたセレン/第1b族/第3a族インク、好ましくは、ヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まないセレン/第1b族/第3a族インク配合物についての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(a)当初成分として、セレン;RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイド(式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルルから独立して選択され、RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択され、R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択される)を少なくとも1種含む有機カルコゲナイド成分;CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第1b族含有物質;場合によって、二座チオール成分;アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第3a族材料を当初成分として含む第3a族含有物質;の組み合わせを含む、セレン/第1b族/第3a族システム;並びに
(b)液体キャリア成分を含み、
前記セレン/第1b族/第3a族システムは前記液体キャリア成分中に安定に分散されている、セレン/第1b族/第3a族インクを提供する。
【0013】
本発明は、セレンを提供し;両方ともRZ−Z’R’およびR−SHから独立して選択される式を有する第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイド(式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルルから独立して選択され、RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択され、R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択される)を含む有機カルコゲナイド成分を提供し;CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第1b族含有物質を提供し;第1b族リガンド成分を提供し;アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第3a族材料を当初成分として含む第3a族含有物質を提供し;第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアを含む液体キャリア成分を提供し;セレン、第1の有機カルコゲナイドおよび第1の液体キャリアを一緒にし;この組み合わせ物を攪拌しつつ加熱して、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアを一緒にして第1b族材料/リガンド成分を生じさせ;第3a族含有物質、第2の有機カルコゲナイドおよび第3の液体キャリアを一緒にして第3a族/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;化合したセレン/有機カルコゲナイド成分、第1b族材料/リガンド成分および第3a族/有機カルコゲナイド成分を一緒にして、セレン/第1b族/第3a族インクを形成する;ことを含み、前記セレン/第1b族/第3a族インクが安定な分散物であり;並びに、第1の液体キャリア、第2の液体キャリア、および第3の液体キャリアが同じかまたは一緒に混和可能である、請求項1に記載のセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法を提供する。
【0014】
本発明は、基体を提供し;請求項1に記載のセレン/第1b族/第3a族インクを提供し;セレン/第1b族/第3a族インクを基体上に堆積させ;堆積されたセレン/第1b族/第3a族インクを加熱して、第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアを除去して、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を残し;並びに、場合によっては、セレン/第1b族/第3a族物質をアニールすることを含み、前記セレン/第1b族/第3a族物質は式 NaCuGaIn(1−d)(2+e)(1−f)Se(2+e)f(式中、0≦L≦0.25、0.25≦m≦1.5、0≦d≦1、−0.2≦e≦0.5、0<f≦1、0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5である)に従う、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を堆積させる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第1b族/第3a族インクに関する言及における用語「安定な」とは、セレン、有機カルコゲナイド成分、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第3a族含有物質の液体キャリア成分中での組み合わせによって形成される生成物が、22℃で窒素下でのセレン/第1b族/第3a族インクの貯蔵中に、少なくとも15分間沈殿を形成しないことを意味する。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第1b族/第3a族インクに関する言及における用語「ヒドラジンを含まない」とは、セレン/第1b族/第3a族インクが100ppm未満しかヒドラジンを含まないことを意味する。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレン/第1b族/第3a族インクに関する言及における用語「ヒドラジニウムを含まない、または(Nを含まない」とは、セレンと錯体形成したヒドラジニウムをセレン/第1b族/第3a族インクが100ppm未満しか含まないことを意味する。
【0018】
本発明はセレン/第1b族/第3a族インク、セレン/第1b族/第3a族インクの製造、およびセレン/第1b族/第3a族含有素子、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED);メモリデバイスに使用するための相変化合金;および光応答デバイス[例えば、エレクトロフォトグラフィ(例えば、レーザープリンタおよびコピー機)、整流器、写真用露出計、および太陽電池]の製造におけるセレン/第1b族/第3a族インクの使用に関する。以下の詳細な記載は、太陽電池における使用のために設計されたCIGS物質の製造における、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの使用に焦点を当てる。
【0019】
好ましくは、本発明においては、当初成分として使用されるセレンはセレン粉体を含む。
【0020】
本発明において当初成分として使用される有機カルコゲナイド成分は、RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する少なくとも1種の有機カルコゲナイドを含み、式中、ZおよびZ’は硫黄、セレンおよびテルル(好ましくは硫黄およびセレン、最も好ましくは硫黄)から独立して選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択され(好ましくは、RはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC3−20エーテル基から選択され;より好ましくはRはC1−20アルキル基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくはRはC1−10アルキル基およびC1−10ヒドロキシアルキル基から選択され;最も好ましくはRはC1−5アルキル基およびC1−5ヒドロキシアルキル基から選択され);R’はC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択され(好ましくはR’はC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC3−20エーテル基から選択され;より好ましくはR’はC1−20アルキル基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくはR’はC1−10アルキル基およびC1−10ヒドロキシアルキル基から選択され;最も好ましくはR’はC1−5アルキル基およびC1−5ヒドロキシアルキル基から選択され);RはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基、C1−20メルカプトアルキル基およびエーテル基から選択される(好ましくはRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC3−20エーテル基から選択され;より好ましくはRはC1−20アルキル基、C1−20ヒドロキシアルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくはRはC1−10アルキル基およびC1−10ヒドロキシアルキル基から選択され;最も好ましくはRはC1−5アルキル基およびC1−5ヒドロキシアルキル基から選択される)。場合によっては、R、R’およびRは液体キャリア成分中の有機カルコゲナイドの溶解性を増大させるように選択される。
【0021】
場合によってはZおよびZ’は両方とも硫黄である。好ましくは、ZおよびZ’が両方とも硫黄である場合には、RおよびR’は独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される。より好ましくは、ZおよびZ’が両方とも硫黄である場合には、RおよびR’は独立してブチル基、tert−ブチル基、およびヒドロキシエチル基から選択される。
【0022】
場合によってはZおよびZ’は両方ともセレンである。好ましくは、ZおよびZ’が両方ともセレンである場合には、RおよびR’は独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される。より好ましくは、ZおよびZ’が両方ともセレンである場合には、RおよびR’は両方ともフェニル基である。
【0023】
本発明において当初成分として使用される第1b族含有物質は好ましくは銅を含む。より好ましくは、当初成分として使用される第1b族含有物質はCuClおよびCuOから選択される。
【0024】
当初成分として使用される第1b族含有物質は好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクに存在する第1b族リガンド成分と関連する。好ましくは、第1b族リガンド成分は式R−SHを有する有機カルコゲナイド(上述の通り)および二座チオール化合物から選択される。二座チオール化合物は好ましくはジチオール、ヒドロキシチオールおよび窒素含有チオール(好ましくは、二座チオールリガンド上の活性キレート化基が4炭素(すなわち、−C−C−C−C−)以下の鎖によって隔てられているジチオール、ヒドロキシチオールおよび窒素含有チオール;より好ましくは、二座チオールリガンド上の活性キレート化基が2炭素(すなわち、−C−C−)の鎖によって隔てられているジチオール、ヒドロキシチオールおよび窒素含有チオール)から選択される。最も好ましくは、二座チオール化合物は1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、ベータ−メルカプトエタノールおよびジメルカプトールから選択される。
【0025】
本発明において当初成分として使用される第3a族含有物質は、アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせからから選択される第3a族材料を含む(好ましくは、第3a族材料はインジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択され、より好ましくは第3a族材料はインジウムである)。
【0026】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクにおいて使用される液体キャリア成分は、セレン、有機カルコゲナイド成分、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第3a族含有物質の組み合わせにより形成される生成物がその中に安定に分散可能なあらゆる溶媒、もしくは溶媒の混和性混合物であることができる。好ましくは、使用される液体キャリア成分はアミン、エーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾール、キシレンおよびこの混和性混合物から選択される。場合によっては、使用される液体キャリア成分はエーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾール、キシレンおよびこれらの混和性混合物から選択される。場合によっては、液体キャリア成分は窒素含有溶媒、および窒素含有溶媒の混和性混合物から選択される。好ましくは、使用される液体キャリア成分は、式:NR[式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基、C3−10アミノシクロアルキル基(例えば、1,2−ジアミノシクロヘキシル)、およびC1−10アミノアルキル基から選択される]を有する液体アミンを含む。好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用される液体キャリア成分は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンおよびこれらの混合物から選択される。より好ましくは、使用される液体キャリア成分はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ヘキシルアミン、ピロリジン、n−ブチルアミン、1,3−ジアミノプロパン;3−アミノ−1−プロパノール;1−アミノ−2−プロパノールおよびこれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、使用される液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピロリジン、n−ブチルアミンおよびこれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは使用される液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびこれらの混合物から選択される。最も好ましくは、使用される液体キャリアはエチレンジアミンとジエチレントリアミンとの混合物である。
【0027】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクはナトリウムをさらに含む。
【0028】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは非水系インク(すなわち、10重量%以下、好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下しか水を含まない)である。
【0029】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは、場合によっては、補助溶媒をさらに含むことができる。本発明において使用するのに好適な補助溶媒は液体キャリアと混和性である。好ましい補助溶媒は、液体キャリアの沸点の30℃以内の沸点を示す。
【0030】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは、場合によっては、分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御(flow control)剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパント(例えば、CIGS物質の電気的性能を向上させるためのナトリウム)から選択される、少なくとも1種の任意の添加剤をさらに含むことができる。場合によっては、例えば、保存期間の延長を促進するために、フロー特性を向上させるために、基体への適用方法(例えば、印刷、噴霧)を容易にするために、基体上へのインクの濡れ/展着特性を変更するために、基体上に他の成分(例えば、CIGS物質の他の構成成分、例えば、Cu、In、GaおよびS)を堆積させるのに使用される他のインクとセレン/第1b族/第3a族インクとの適合性を増大させるために、並びにセレン/第1b族/第3a族インクの分解温度を変えるために、任意の添加剤が本発明のセレン/第1b族/第3a族インクに組み込まれることができる。いくつかの任意のフロー制御および粘度改変剤には、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドンおよびジェフアミン(Jeffamine)が挙げられる。
【0031】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクに含まれるセレン、第1b族材料(例えば、銅)および第3a族材料(例えば、インジウム)の相対量は、必要とされる具体的な用途、セレン/第1b族/第3a族インクを所定の基体に適用するのに使用される処理技術および装置に適合するように選択的に提供される。好ましくは、セレン/第1b族/第3a族インクは、セレン/第1b族/第3a族インクの重量を基準にして1〜50重量%、1〜5重量%、4〜15重量%、および5〜10重量%から選択されるセレン含量を示す。好ましくは、セレン/第1b族/第3a族インクは、セレン/第1b族/第3a族インクの重量を基準にして0.4〜10重量%から選択される第1b族材料(すなわち、銅)含量を示す。好ましくは、セレン/第1b族/第3a族インクは、セレン/第1b族/第3a族インクの重量を基準にして0.4〜10重量%の第3a族材料(例えば、インジウム、ガリウム)含量を示す。好ましくは、セレン/第1b族/第3a族インクは、2:0.5:1〜10:1.5:1のセレン:第1b族材料:第3a族材料のモル比を示す。
【0032】
好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法は、セレンを提供し;第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイドを含む有機カルコゲナイド成分を提供し、第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイドはそれぞれRZ−Z’R’およびR−SHから独立して選択される式(上述した通り)を有しており;CuClおよびCuOの少なくとも1種を当初成分として含む第1b族含有物質を提供し;第1b族リガンド成分を提供し(好ましくは、上述のように、第1b族リガンド成分は式R−SHを有する物質および二座チオール化合物から選択される);アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第3a族材料を含む第3a族含有物質を提供し;第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアを含む液体キャリア成分を提供し;セレン成分、第1の有機カルコゲナイドおよび第1の液体キャリアを一緒にし;この組み合わせ物を攪拌しつつ加熱して、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアを一緒にして第1b族材料/リガンド成分を生じさせ;第3a族含有物質、第2の有機カルコゲナイドおよび第3の液体キャリアを一緒にして第3a族/有機カルコゲナイド成分を生じさせ;化合したセレン/有機カルコゲナイド成分、第1b族材料/リガンド成分および第3a族/有機カルコゲナイド成分を一緒にして、セレン/第1b族/第3a族インクを形成する;ことを含み、当該セレン/第1b族/第3a族インクが安定な分散物であり、第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイドが両方とも本明細書において上述した有機カルコゲナイド成分から独立して選択され(すなわち、第1の有機カルコゲナイドおよび第2の有機カルコゲナイドは同じかまたは異なっていてよい)、並びに第1の液体キャリア、第2の液体キャリア、および第3の液体キャリアは全て本明細書において上述した液体キャリアから選択され、かつ全て同じであるか、または一緒に混和可能である(すなわち、それらは異なっていてよいが、混和可能でなければならない)。
【0033】
好ましくは、本発明のセレンインクを製造するのに使用するために提供されるセレンはセレン粉体である。
【0034】
好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを製造するのに使用するために提供されるセレンは、製造されるセレン/第1b族/第3a族インクの1〜50重量%、1〜20重量%、1〜5重量%、4〜15重量%、または5〜10重量%をもたらす。
【0035】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの提供においては、提供される有機カルコゲナイドはチオール、有機ジカルコゲナイドおよびこれらの混合物から選択される。チオールが使用される場合には、好ましくは、チオールは式R−SH(上述した通り)を有する。有機ジカルコゲナイドが使用される場合には、有機ジカルコゲナイドは、好ましくは、式RZ−Z’R’(上述した通り)を有する。使用されるチオールおよび有機ジカルコゲナイドにおけるR、RおよびR’基は、セレン、有機カルコゲナイド成分、第1b族含有物質、第3a族含有物質および任意の二座チオールリガンドを液体キャリア中で一緒にすることにより形成される生成物の溶解度を増大させるように選択されうる。
【0036】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用するためのセレンを提供する場合には、セレンおよび第1の液体キャリアは好ましくは、第1の液体キャリアをセレンに添加することにより一緒にされる。より好ましくは、セレンおよび第1の液体キャリアは不活性技術を用いて一緒にされ、次いで、セレンが第1の液体キャリアに溶けるまで、連続攪拌および還流加熱が行われる。好ましくは、第1の液体キャリアは、第1の液体キャリアとセレンとを一緒にする際に、20〜240℃の温度に維持される。場合によっては、第1の液体キャリアおよびセレンは、一緒にするプロセス中、セレンの融点(220℃)より高く加熱されうる。
【0037】
場合によっては、セレンおよび第1の有機カルコゲナイドが一緒にされて、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造において使用するための化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を形成する。化合したセレン/有機カルコゲナイド成分の形成は、好ましくは、セレンを提供し;RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式(上述の通り)を有する第1の有機カルコゲナイドを提供し;第1の液体キャリアを提供し;セレン、第1の有機カルコゲナイドおよび第1の液体キャリアを一緒にし;組み合わせ物を攪拌しつつ、(好ましくは第1の液体キャリアの沸点温度の25℃以内の温度に、最も好ましくは還流加熱で)(好ましくは0.1〜40時間、より好ましくは0.1〜8時間)加熱して、第1の液体キャリア中に安定に分散された、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を形成することを含む。好ましくは、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分における、セレン:第1の有機カルコゲナイドのモル比は2:1〜20:1、より好ましくは2:1〜14:1、さらにより好ましくは2:1〜10:1、最も好ましくは2:1〜8:1である。
【0038】
液体状態で第1の有機カルコゲナイドを使用する場合には、場合によっては、本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するための化合したセレン/有機カルコゲナイド成分の提供は、液体の第1の有機カルコゲナイドを添加する前に、一緒にされたセレンおよび第1の液体キャリアを加熱することをさらに含む。好ましくは、場合によっては、本発明のセレン/第3a族インクの製造に使用するための化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を提供することは、液体の第1の有機カルコゲナイドの添加前および添加中に、一緒にされた第1の液体キャリアおよびセレン粉体を加熱することをさらに含む。より好ましくは、一緒にされた第1の液体キャリアおよびセレン粉体は、液体の第1の有機カルコゲナイドの添加中に20〜240℃の温度に維持される。最も好ましくは、一緒にされたセレンおよび第1の液体キャリアに、液体の第1の有機カルコゲナイドを、連続攪拌および還流加熱を伴って徐々に添加することにより、一緒にされたセレンおよび第1の液体キャリアに、液体の第1の有機カルコゲナイドが添加される。
【0039】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用するための第1b族含有物質を提供することは、好ましくは、CuClおよびCuOからなる群から選択される第1b族含有物質を提供することを含む。
【0040】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用するための第1b族含有物質の提供においては、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアが一緒にされて、一緒にされた第1b物質/リガンド成分を形成する。より好ましくは、不活性技術を用いて、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアが一緒にされ、次いで固体が第2の液体キャリアに溶けるまで連続攪拌および還流加熱が行われる。好ましくは、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアを一緒にする際に、第2の液体キャリアは20〜150℃の温度(より好ましくは、20〜100℃の温度)に維持される。
【0041】
第1b族材料/リガンド成分を提供することは、好ましくは、CuClおよびCuOから選択される第1b族含有物質を提供し;式R−SH(上述の通り)を有する物質、および二座チオール化合物(上述の通り)から選択される第1b族リガンド成分を提供し;第2の液体キャリアを提供し;第1b族材料、第1b族リガンド成分および第2の液体キャリアを一緒にし;この組み合わせ物を(好ましくは25℃〜100℃の温度で)(好ましくは、0.1〜40時間、より好ましくは0.1〜8時間)攪拌しつつ加熱して、第2の液体キャリア中に安定に分散された第1b族材料/リガンド成分を形成する。好ましくは、第1b族材料/リガンド成分における銅:第1b族リガンドのキレート基のモル比は2:1〜1:16、より好ましくは2:1〜1:8、さらにより好ましくは1:1〜1:6、最も好ましくは1:1〜1:4である。より好ましくは、第1b族材料/リガンド成分は1.0重量%以上の銅を含む。
【0042】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用するための第3a族含有物質の提供は、好ましくは、アルミニウム、インジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択される第3a族材料を(好ましくは、第3a族材料はインジウム、ガリウムおよびこの組み合わせから選択され、より好ましくは第3a族材料はインジウムである)当初成分として含む第3a族含有物質、第2の有機カルコゲナイド(上述の通り)、および第3の液体キャリア(上述の通り)を提供し;第3a族材料、第2の有機カルコゲナイドおよび第3の液体キャリアを一緒にし;この組み合わせ物を(好ましくは、第3の液体キャリアの沸点温度の25℃以内の温度、より好ましくは還流加熱で)(好ましくは0.1〜40時間、より好ましくは0.1〜8時間)攪拌しつつ加熱して第3の液体キャリア中に安定に分散された第3a族/有機カルコゲナイド成分を形成することを含む。好ましくは、第3a族/有機カルコゲナイド成分を提供するのに使用される第3a族材料:第2の有機カルコゲナイドのモル比は2:3〜1:6であり、最も好ましくは有機ジカルコゲナイド(すなわち、RZ−Z’R’)については2:3であり、チオール(すなわち、R−SH)については1:3である。好ましくは、第3の液体キャリアはアミンである。
【0043】
好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの提供において、有機カルコゲナイド成分および第1b族リガンド成分の添加のタイミングはそれらの物理的状態に応じて変化する。固体有機カルコゲナイドおよび固体第1b族リガンド成分については、好ましくは、液体キャリア成分と一緒にする前に、固体有機カルコゲナイドおよび固体第1b族リガンド成分は他の固体(例えば、固体セレン粉体、固体第3a族材料、固体第1b族含有物質)と一緒にされる。液体有機カルコゲナイドおよび液体第1b族リガンド成分については、液体有機カルコゲナイドおよび液体第1b族リガンド成分は、好ましくは、セレン粉体、第1b族含有物質および第3a族含有物質の少なくとも1種の添加の後で、液体キャリア成分に添加される。
【0044】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクの製造に使用するための液体キャリア成分の提供は、好ましくは、セレン、有機カルコゲナイド成分、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分および第3a族含有物質の組み合わせによって形成される生成物が液体キャリア中で安定である液体キャリア(上述の通り)を提供する。液体キャリア成分は別々の部分、例えば、第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアとして提供されうる。この別々の部分は体積および組成が変化することができる。それぞれの部分の組成は、その部分が一緒になって混和性である限りは、同じであってよいし、または異なっていてもよい。
【0045】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法は、ナトリウム源を提供し、化合したセレン/有機カルコゲナイド成分、第1b族材料/リガンド成分および第3a族成分とナトリウム源とを一緒にすることをさらに含む。
【0046】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法は、補助溶媒を提供し、補助溶媒をセレン、有機カルコゲナイド成分、第1b族含有物質、第1b族リガンド成分、第3a族含有物質および液体キャリア成分と一緒にすることをさらに含む。好適な補助溶媒はセレン/第1b族/第3a族インク中に含まれる液体キャリア成分と混和性であり、かつセレン/第1b族/第3a族インクを不安定にする影響を有しない。好ましい補助溶媒は、セレン/第1b族/第3a族インクに含まれる液体キャリア成分の沸点の30℃以内の沸点をさらに示す。
【0047】
場合によっては、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを製造する方法は、任意の添加剤を提供し、この任意の添加剤を液体キャリア成分と一緒にすることをさらに含み、この任意の添加剤は分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパントから選択される。
【0048】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは、セレンを含む様々な半導体材料(例えば、薄層トランジスタ、太陽電池、エレクトロフォトグラフィ部品、整流器、写真用露出計、写真式複写(photocopying)メディア)の製造に、およびカルコゲナイド含有相変化メモリデバイスの製造に使用されうる。
【0049】
好ましくは、基体上にセレン/第1b族/第3a族インク物質を堆積させる方法は、基体を提供し;本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを提供し;セレン/第1b族/第3a族インクを基体上に堆積させ;堆積されたセレン/第1b族/第3a族インクを加熱して、第1の液体キャリア、第2の液体キャリアおよび第3の液体キャリアを除去して、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を残し;並びに、場合によっては、セレン/第1b族/第3a族物質をアニールすることを含み、セレン/第1b族/第3a族物質は式 NaCuGaIn(1−d)(2+e)(1−f)Se(2+e)f(式中、0≦L≦0.25、0.25≦m≦1.5、0≦d≦1、−0.2≦e≦0.5、0<f≦1、0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5である)に従う。
【0050】
本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは従来の処理技術、例えば、湿潤コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、接触印刷、トップフィード(top feed)反転印刷、ボトムフィード(bottom feed)反転印刷、ノズルフィード反転印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転マイクログラビア印刷、コマダイレクト(comma direct)印刷、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、マイヤーバー(meyerbar)コーティング、リップダイレクトコーティング、デュアルリップダイレクトコーティング、キャピラリーコーティング、インクジェット印刷、ジェット堆積、噴霧熱分解および噴霧堆積を使用して基体上に堆積されうる。好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは、従来の噴霧堆積技術を用いて基体上に堆積される。好ましくは、本発明のセレン/第1b族/第3a族インクは不活性雰囲気下(例えば、窒素下)で基体上に堆積される。
【0051】
好ましくは、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質を処理して液体キャリアを除く場合には、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質は液体キャリアの沸点温度を超える温度まで加熱される。場合によっては、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質は5〜200℃の温度に加熱される。場合によっては、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質は5〜200℃の温度に真空下で加熱される。
【0052】
好ましくは、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質は炭素の除去を容易にするために処理されうる。場合によっては、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質は80℃〜450℃の温度に30秒〜1時間の期間で、不活性雰囲気下で加熱される。
【0053】
使用される基体は、セレンを含む半導体の製造に伴い、またはカルコゲナイド含有相変化メモリデバイスに伴い使用される従来の物質から選択されうる。いくつかの用途における使用のためには、基体はモリブデン、アルミニウムおよび銅から選択される材料の層を好ましくは含む。光起電力素子における使用のためのCIGS物質の製造における使用のためには、基体は好ましくはモリブデンの層を含む。ある用途においては、モリブデン、アルミニウムまたは銅基体層はキャリア物質、例えば、ガラス、ホイルおよびプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタラートおよびポリイミド)上の塗膜であり得る。場合によっては、基体は光起電力素子における使用のためのCIGS物質のロールツーロール生産を容易にするのに充分に柔軟である。
【0054】
場合によっては、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を堆積させるための方法は、堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質をアニールすることをさらに含む。堆積されたセレン/第1b族/第3a族物質のためのアニーリング温度は、30秒〜5時間のアニーリング時間で、200〜650℃の範囲であることができる。場合によっては、セレンインク、セレン蒸気、セレン粉体、セレン化水素ガス、硫黄粉体および硫化水素ガスの少なくとも1つの形態で、アニーリングプロセス中に、追加の第6a族物質が導入されうる。場合によっては、アニーリングプロセスは2段階アニールである。第1のアニーリング段階においては、堆積された物質は30秒〜1時間の第1段階のアニーリング時間で200〜500℃の温度に加熱される。第2のアニーリング段階においては、堆積された物質は30秒〜1時間の第2段階のアニーリング時間で200〜650℃の温度に加熱される。
【0055】
場合によっては、基体上にセレン/第1b族/第3a族物質を堆積する方法は、ナトリウム源を提供し、基体上にナトリウムを堆積させることをさらに含む。
【0056】
堆積されたCIGS物質中の炭素の存在は、その堆積されたCIGS物質を組み込んでいる素子の電気的特性に悪影響を及ぼす。よって、堆積されたCIGS物質中での炭素の組み込みを最小限にすることが望まれる。本発明のセレン/第1b族/第3a族インクおよび方法は10重量%以下の炭素、より好ましくは5重量%以下の炭素、最も好ましくは0〜1重量%の炭素を有する堆積されたCIGS物質を提供する。
【0057】
本発明のセレン/第1b族/第3a族物質を堆積する方法を使用すると、セレン/第1b族/第3a族物質(例えば、CIGS物質)を含む均一なまたは段階的な半導体膜を提供することが可能である。例えば、段階的CIGS物質は、様々な相対濃度のセレン、第1b族および第3a族成分を用いて、様々な配合の本発明のセレン/第1b族/第3a族インクを堆積させることにより(すなわち、異なる組成の前駆体物質の複数層を堆積させることにより)製造されうる。CIGS物質の製造においては、(例えば、Ga濃度に関して)段階的な膜を提供することが場合によっては望まれる。光によって生じた電荷キャリアの分離の向上を容易にするために、および裏面接触での組み替えの低減を容易にするために、光起電力素子に使用するためのCIGS物質の深さに応じて段階的なGa/(Ga+In)比を提供することが従来のものである。よって、所望の粒子構造および最も高い効率の光起電力素子特性を達成するようにCIGS物質組成を調整することが望ましいと考えられる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態が以下の実施例において詳細に説明される。
【実施例】
【0059】
実施例1:第3a族/有機カルコゲナイド成分の製造
窒素グローブボックス内でインジウム金属(ショット、99.99%、Alfa Aesarより)(1g)およびエチレンジアミン(99+%、Acros Organicsより)(16.5g)が反応器に入れられた。この反応器を密閉してグローブボックスから取り出し、その後、窒素マニホールドを取り付けて操作した。シリンジによって、ジ−n−ブチルジスルフィド(98%、Acros Organicsより)(2.5g)をこの反応器に添加した。次いで、反応器内容物を120℃で6時間還流し、その時点で幾分かのインジウム金属が依然として目に見えていた。この反応を室温で一晩継続し、次の日にジ−n−ブチルジスルフィド(0.84g)をこの反応器に添加し、さらに8時間還流した。得られた透明溶液(5%w/wインジウム)はカニューレによって貯蔵容器に移され、薄膜堆積のために合成されたものとして使用された。
【0060】
実施例2:第3a族/有機カルコゲナイド成分の製造
インジウム金属(ショット、99.99%、Alfa Aesarより)(2g)、エチレンジアミン(99+%、Acros Organicsより)(33.16g)および2−ヒドロキシエチルジスルフィド(90%、Alfa Aesarより)(4.84)が、凝縮器を取り付けた100mLの1つ口フラスコ内で一緒にされた。このフラスコ内容物は窒素でパージされて、次いで120℃で21時間還流され、その時点でインジウムの大部分は消費されて、褐橙色溶液を形成した。この褐橙色溶液である生成物第3a族/有機カルコゲナイド成分はカニューレによってバイアルに移された。生成物第3a族/有機カルコゲナイド成分は、カニューレーションの後でフラスコ内に残っているインジウムの重量を基準にして、3.75重量%濃度のインジウム金属を有していると推定された。
【0061】
実施例3:化合したセレン/有機カルコゲニド成分の製造
セレン粉体、200メッシュ(Strem Chemicals,Inc.より)(10.33g)が250mLの3つ口フラスコに秤量された。次いで、エチレンジアミン(99+%、Acros Organicsより)(85.0g)がフラスコに入れられた。次いで、このフラスコを2つの隔壁および還流凝縮器で密閉し、次いで窒素でパージした。窒素パージ後に、ジ−n−ブチルジスルフィド(98%、Acros Organicsより)(4.67g)がこのフラスコにシリンジで添加された。次いで、フラスコの内容物を加熱し、攪拌しつつ6時間還流し、黒色溶液生成物である化合したセレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせた。この生成物である化合したセレン/有機カルコゲナイド成分溶液(10.33%w/wSe)は使用までは窒素下で貯蔵された。
【0062】
実施例4:第1b族材料/リガンド成分の製造
硝酸銅(II)水和物(0.194g)が第1のバイアルに秤量され、水(1g)と混合された。第2のバイアルにおいて、水(3.2g)およびジエチルアミン(0.366g)がドラフト内で混合された。次いで、二硫化炭素(0.130g)が第2のバイアルに混合しつつ添加された。全ての二硫化炭素が第2のバイアル内の水性相に溶解した後で、第2のバイアルの内容物が第1のバイアルに添加され、混合により褐色固体を形成した。水を用いて生成物溶液は濾別され、次いで固体は真空オーブン内で23℃で一晩乾燥させられて、0.239gの褐色粉体が得られた。ICP−CHN分析およびFTIRは単離された褐色粉体がCu(SCNEtであったことを確認する。次いで、この単離された褐色粉体(113mg)を1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(1220mg)に溶解することにより第1b族材料/リガンド成分が調製された。得られた第1b族材料/リガンド成分は銅を1.5%w/w含んでいると計算された。
【0063】
実施例5:第1b族材料/リガンド成分の製造
酸化第一銅(0.227g)がバイアル内の空気中に秤量された。次いで、バイアルは窒素でパージされた。次いで、無水テトラヒドロフラン(10mL)が10mLシリンジでこのバイアルに入れられた。次いで、ジエチルアミン(0.524g)がシリンジでこのバイアルに添加された。次いで、このバイアル内容物の攪拌を開始した。次いで、二硫化炭素(0.248g)がこのバイアルにシリンジを用いて1分間にわたってゆっくりと添加された。暗褐色となった。このバイアル内容物は室温で30分間連続攪拌された。次いで、このバイアル内容物は静置された。次いで、水(30mL)およびエタノール(10mL)がバイアルの内容物に添加された。次いで、バイアルの内容物は4℃に冷却され、濾過された。次いで、濾別された固体は23℃の真空オーブン内で一晩乾燥させられて、生成物である褐色固体(504mg)を形成した。次いで、この単離された褐色粉体(27mg)を1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(375mg)に溶解することにより第1b族材料/リガンド成分が調製された。得られた第1b族材料/リガンド成分は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0064】
実施例6:第1b族材料/リガンド成分の製造
8mLのパラレル反応チューブに塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(118mg)、p−トルエンチオール(98%、Acros Organicsより)(218mg)、および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(2.46g)が空気中で入れられた。次いで、この反応器は密閉されて、窒素で不活性化された。次いで、この反応器が80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、この反応器は室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0065】
実施例7:第1b族材料/リガンド成分の製造
8mLのパラレル反応チューブに塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(118mg)、1,3−プロパンジチオール(98%、Acros Organicsより)(190mg)、および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(2.49g)が空気中で入れられた。次いで、この反応器は密閉されて、窒素で不活性化された。次いで、この反応器が80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、この反応器は室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0066】
実施例8:第1b族材料/リガンド成分の製造
8mLのパラレル反応チューブに塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(118mg)、アルファ−トルエンチオール(99%、Acros Organicsより)(218mg)、および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(2.46g)が空気中で入れられた。次いで、この反応器は密閉されて、窒素で不活性化された。次いで、この反応器が80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、この反応器は室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0067】
実施例9:第1b族材料/リガンド成分の製造
8mLのパラレル反応チューブに塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(118mg)、ベータ−メルカプトエタノール(99%、Acros Organicsより)(206mg)、および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(2.48g)が空気中で入れられた。次いで、この反応器は密閉されて、窒素で不活性化された。次いで、この反応器が80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、この反応器は室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0068】
実施例10:第1b族材料/リガンド成分の製造
20mLの隔壁キャップバイアルに、塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(211mg)および3−アミノ−1−プロパノール(99%、Acros Organicsより)(4.30g)が空気中で入れられた。次いで、このバイアルは密閉されて、窒素で不活性化された。ジメチルスルホキシド(99%、Aldrichより)(489mg)がシリンジでこのバイアルに添加された。次いで、このバイアルが80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、このバイアルは室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0069】
実施例11:第1b族材料/リガンド成分の製造
20mLの隔壁キャップバイアルに、塩化銅(II)(無水物、98%、Strem Chemicals,Inc.より)(211mg)および3−アミノ−1−プロパノール(99%、Acros Organicsより)(4.40g)が空気中で入れられた。次いで、このバイアルは密閉されて、窒素で不活性化された。2,3−ジメルカプトプロパノール(99%、Aldrichより)(389mg)がシリンジでこのバイアルに添加された。次いで、このバイアルが80℃に加熱され、磁気攪拌しつつ2時間そこで保持された。次いで、このバイアルは室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を2%w/w含んでいると計算された。
【0070】
実施例12:第1b族材料/リガンド成分の製造
20mLの隔壁キャップバイアルに、酸化第一銅(97%、Acros Organicsより)(452mg)および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(8.56g)が空気中で入れられた。次いで、このバイアルは密閉されて、窒素で不活性化された。ベータ−メルカプトエタノール(99%、Acros Organicsより)(988mg)がシリンジでこのバイアルに添加された。次いで、このバイアルが100℃に加熱され、磁気攪拌しつつ10分間そこで保持された。次いで、このバイアルは室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を4%w/w含んでいると計算された。
【0071】
実施例13:第1b族材料/リガンド成分の製造
20mLの隔壁キャップバイアルに、酸化第一銅(97%、Acros Organicsより)(452mg)および1,3−ジアミノプロパン(99%、Acros Organicsより)(8.86g)が空気中で入れられた。次いで、このバイアルは密閉されて、窒素で不活性化された。1,3−プロパンジチオール(98%、Acros Organicsより)(686mg)がシリンジでこのバイアルに添加された。次いで、このバイアルが100℃に加熱され、磁気攪拌しつつ10分間そこで保持された。次いで、このバイアルは室温まで冷却され、次いで、使用までは、生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は窒素下で貯蔵された。生成物である第1b族材料/リガンド成分溶液は銅を4%w/w含んでいると計算された。
【0072】
実施例14−25:セレン/第1b族/第3a族インクの製造
実施例14〜25のセレン/第1b族/第3a族インク配合物は表1に示される量で成分溶液を一緒にすることにより製造された。具体的には、実施例14〜25のそれぞれにおいては、表1に示される成分溶液は示される量で窒素グローブボックス内で秤量された。次いで、成分溶液は、第3a族/有機カルコゲナイド成分(「G3a−OC成分」)を最初に添加し、次いで化合したセレン/有機カルコゲナイド成分(「cSe−OC成分」)の添加、次いで第1b族材料/リガンド成分(「G1b−L成分」)の添加によって、バイアル中で混合された。生成物であるセレン/第1b族/第3a族インクを含むバイアルは、次いで、使用するまではテフロン(登録商標)キャップで蓋をされた。
【0073】
【表1】
【0074】
セレン/第1b族/第3a族物質膜堆積および分析
実施例26〜37のそれぞれにおいてモリブデン基体層上に堆積された生成物膜は表2に示されるように、エネルギー分散型x−線分析(EDS)によって分析された。EDSサンプルは導電炭素テープ上に取り付けられ、日立3400VP−SEMにおいて可変圧力モードで未コートで試験された。EDSスペクトルは30mmSD検出器で15KeVで集められた。EDSデータは堆積された膜におけるセレン、第1b族材料、および第3a族材料間の重量%比率を提供する。次いで、この重量%比率は、互いについてSe、CuおよびIn元素の化学量論量を与えるように変換された(モリブデンバックグラウンドシグナルおよび検出される何らかの他の原子を無視する)。生成物膜は残留炭素含量についても分析された。表2に報告される残留炭素含量は燃焼炭素分析技術もしくは示されたEDSデータによって決定された。燃焼元素分析はロバートソンマイクロリットラボラトリーズ(Robertson Microlit Laboratories)(ニュージャージー州)によって、堆積された物質をモリブデン基体層から削り取り、標準燃焼炭素分析(CHN)分析を行うことにより行われた。
【0075】
実施例26:セレン/第1b族/第3a族物質の基体上での堆積
窒素グローブボックス内で、実施例14のセレン/第1b族/第3a族インク配合物の一滴を基体、すなわち、モリブデンコーティングスライドガラス上に室温で配置することによって、セレン/第1b族/第3a族物質は基体上に堆積された。このスライドガラスは堆積プロセス中ホットプレート上に配置されていた。インク配合物の一滴を基体上に配置した後で、ホットプレート温度は150℃に設定された。150℃に到達すると、ホットプレートの温度はその温度に5分間維持され、その後、ホットプレート上の設定温度を300℃まで上昇させた。300℃に到達すると、ホットプレートの温度はその温度に5分間維持され、その後、ホットプレート上の設定温度を350℃まで上昇させた。350℃に到達すると、ホットプレートの温度はその温度に5分間維持された。次いで、ホットプレートは電源オフにされ、基体はホットプレートの表面上で冷却された。
【0076】
実施例27〜37:セレン/第1b族/第3a族物質の基体上での堆積
窒素グローブボックス内で、セレン/第1b族/第3a族物質が基体上に堆積された。実施例27〜37のそれぞれに使用される基体は、1×1インチ片のモリブデンコーティングガラス基体であった。実施例27〜37のそれぞれにおいて以下の手順が使用された。基体はまず80℃に設定されたホットプレート上で加熱された。次いで、表2に示されるセレン/第1b族/第3a族インク配合物の12滴が基体上に配置された。セレン/第1b族/第3a族インクを基体上に配置した後で、ホットプレート設定温度は、約15分の傾斜時間で400℃に上げられた。次いで、ホットプレート設定温度は15分間400℃に維持され、その後スイッチオフにされた。次いで、基体はホットプレートの表面上で室温まで冷却された。
【0077】
【表2】
£400℃以上でのより長い処理は炭素含量をXPS分析で1重量%(w/w)未満まで低下させた。