【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて、この発明をより具体的に説明する。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0039】
<評価方法>
<重合体水性分散液の測定方法>
[ガラス転移温度(Tg)]
共重合体中の各構成単量体a,b,…の構成重量分率をWa,Wb,…とし、各構成単量体a,b,…の単独重合体のガラス転移温度をTga,Tgb,…としたとき、下記に示すFOXの式で、共重合であるビニル重合体のTgの値を求めた。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+…
【0040】
[酸価]
(理論酸価)
得られた重合体水性分散液の製造時の仕込量比からカルボキシル基含有量を計算し、これを中和するために要する水酸化カリウム量を算出した(単位は、「mgKOH/g」)。
【0041】
[粘度]
25℃の重合体水性分散液1kgを1リットル容のガラスビーカーにとり、ブルックフィールド型粘度計(東京計器(株)製、B型粘度計、形式BM)を用い、ローターの回転数60rpmで測定した。
【0042】
[平均粒子径]
動的光散乱法粒度分布測定装置(大塚電子(株)製:ELS−8000)を用いて平均粒子径を測定した。
【0043】
[pH]
約500mlの重合体水性分散液を、気泡が混入しないように採り、試験温度25℃±1℃にて、JIS Z 8802に規定するpH計に、JIS Z 8805に規定するガラス電極を取り付けて測定した(JIS K 6828に準拠)。
【0044】
[不揮発分]
重合体水性分散液約1gを精秤し熱風循環乾燥機にて105℃×3時間乾燥させた後、デシケーターの中で放冷しその重量を測定した。そして、下記の式にしたがい、不揮発分を算出した。
不揮発分[%]=(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100
【0045】
[ろ過性]
ポリエチレン製(幅210mm×長さ1000mm)のろ布を用いて、自然ろ過を行い、下記の基準でろ過性を評価した。
○…ろ過は速やかで、凝集物もほとんど見られない。
△…ろ過速度がやや劣る。凝集物は少ない。
×…凝集物が多く、ろ過速度が著しく遅い。
【0046】
[付着性]
乳化重合後の重合容器内壁、撹拌翼への重合体の付着状況により評価した。
○…付着なし
△…付着が見られるものの、部分的であり、量も少ない。
×…付着が多く見られる
【0047】
<フロアーポリッシュ(床用光沢剤)物性の測定方法>
[光沢性]
得られたフロアーポリッシュ配合液を、基材((株)タジマ製:Pタイル P−60、寸法:225mm×225mm)に1回塗布し、23℃、50%RHで30分間乾燥させて試験片を得た。
次いで、鏡面光沢度測定装置(日本電色(株)製:PG−1M)を用い、光源からの入射角を60°、受光角を60°として、上記試験片の光沢度を測定した。
次いで、上記試験片に、上記フロアーポリッシュ配合液をもう1回塗布し、23℃、50%RHで30分間乾燥させた。これを用いて、上記と同様にして光沢度を測定した。
さらに、同様にして上記フロアーポリッシュ配合液をさらに1回塗布して乾燥させた後、光沢度を測定した。この3回目の光沢度測定値を「60°光沢度」と記す。
3回目の光沢度の測定結果(60°光沢度)を、下記の基準で評価した。
◎…60°光沢度が70以上
○…60°光沢度が65以上70未満
×…60°光沢度が65未満
【0048】
[耐ブラックヒールマーク性]
前記光沢性の評価と同様にして、3回のフロアーポリッシュ配合液の塗布、乾燥を行って、試験片を作成した。
次いで、ヒールマーク試験機(テスター産業(株)製:ヒールマークスネルカプセルテスター)の試験ドラムに、上記試験片をセットし、その内部に標準ゴムブロック6個を入れ、50rpmで5分間回転させた。その後、逆方向に50rpmで5分間回転させた。
試験後の試験片に付着したヒールマークの付着状態を、下記の基準で、目視にて評価した。
◎…汚れが全く付着していない。
○…汚れが少し付くが、布で容易に拭き取ることができる。
△…汚れが多く付くが、布で容易に拭き取ることができる。
×…汚れが多く付き、拭き取るのが困難である。
【0049】
[耐水性]
前記光沢性の評価と同様にして、3回のフロアーポリッシュ配合液の塗布、乾燥を行い、試験片を作成した。
次いで、試験片の中央部に0.1mlの水をメスピペット滴下し、ペトリ皿で覆った。1時間静置後、ペトリ皿を除き、試験片に残っている水滴を布や紙などで吸い取って除いた後、1時間放置し、試験片の白化の様子を評価した。
◎…白化していない。
○…やや白化するが、透明感が残っている。
△…明らかに白化が見られる。
×…白化して、皮膜のフクレや剥離が起きている。
【0050】
[剥離性]
前記光沢性の評価と同様にして、3回のフロアーポリッシュ配合液の塗布、乾燥を行って、試験片を作成した。
次に、この試験片を50±2℃の恒温乾燥機中で、連続7日間、加熱促進処理を行った。その後、常温で1時間放置した後、ゆっくりとかき混ぜられている常温の水道水中に1時間浸漬した。次いで、試験片を引き上げて、常温で24時間放置し、50mm×150mmに裁断し、小試験片を得た。
一方、白パットを25±5℃の標準剥離剤(ラウリル硫酸ナトリウム2重量部を25±5℃のイオン交換水500重量部に加えて透明になるまでかき混ぜ、次いで、ベンジルアルコール20重量部及び2−アミノエタノール40重量部を順に加えてよく分散させた後、さらに、25±5℃のイオン交換水を加えて全量を1000重量部に調製した液)に30秒間浸漬した後に引き上げ、液垂れがほぼ収まった状態で、洗浄試験機(テスター産業(株)製:ウォッシャビリティー・テスター)に取り付けた。このとき、洗浄用しゅう動部の位置は、試験片が取り付けられる位置以外の部分とした。
次いで、上記小試験片を上記洗浄試験機に取り付け、25±5℃の上記標準剥離剤10±2mlを試験片をほぼ覆うように注ぎ、2分間放置後、洗浄試験機の運転を開始した。
洗浄試験機の駆動が25往復に達したら運転を止めて、試験片を取り外して流水で十分にすすぎ、乾燥させた後、小試験片上のフロアーポリッシュ皮膜が除去されたか否かを、下記の基準で評価した。
◎…皮膜は完全に剥離・除去されている。
○…僅かに皮膜が残っている。
△…試験片表面の一部に皮膜が残っている。
×…皮膜が剥離されていない。
【0051】
[耐久性(耐洗濯性)]
前記光沢性の評価と同様にして、3回のフロアーポリッシュ配合液の塗布、乾燥を行って、試験片を作成した。
この試験片を歩行者通路に敷設し、1ヶ月間経過後の汚れ付着状況を試験片の様子を下記の基準で評価した。
◎…汚れの付着がないか、極めて少ない。
○…汚れの付着が多少見られる。
△…明らかに汚れの付着が見られる。
×…汚れが著しい。
【0052】
[フロアーポリッシュ配合液の放置安定性]
得られたフロアーポリッシュ配合液100mlを、容量が100mlで、内径が30〜40mmの無色透明なプラチック製瓶(アズワン(株)製:ペット広口瓶)に入れて密閉し、−10℃〜−15℃に保った冷凍庫に入れた。24時間経過後に取り出し、室温にさらに24時間置いた後、試料の状態(ゲル化、相分離、固形分の沈殿の有無等)を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎…沈殿等はなく、放置試験前の分散液と同じ状態に戻っている。
○…分散液の状態は戻ったが、一部沈殿物やゲル状物質が含まれている。
△…ゲル化して液状に戻らない。
【0053】
<原材料>
(重合体水性分散液)
・スチレンモノマー…旭化成ケミカルズ(株)製、以下「SM」と略する。
・メチルメタクリレート…三菱レイヨン(株)製、以下「MMA」と略する。
・ブチルアクリレート…三菱化学(株)製、以下、「BA」と略する。
・メタクリル酸…三菱レイヨン(株)製、以下「MAA」と略する。
・アクリル酸…三菱化学(株)製、以下「AA」と略する。
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム…花王(株)製:ネオペレックスG−65、以下「G65」と略する。
・エーテルサルフェート型反応性界面活性剤…(株)ADEKA製:アデカリアソープSR−10、以下「SR10」と略する。
・ノニオン系反応性界面活性剤…(株)ADEKA製:アデカリアソープER−30、以下「ER30」と略する。
【0054】
(フロアーポリッシュ配合液)
・トリブトキシエチルフォスフェート(可塑剤)…大八化学工業(株)製、以下「TBEP」と略する。
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(成膜助剤)…和光純薬(株)製、以下「DEGEE」と略する。
・湿潤剤…AGCセイミケミカル(株)製:サーフロン(10重量%品)、以下「サーフロン」と略する。
・アルカリ可溶性樹脂…荒川化学(株)製:アラスター700(15重量%品)。
・ポリエチレンワックスエマルジョン…東邦化学工業(株)製:ハイテックE−4000(40重量%品)。
・エチレン−アクリル酸系樹脂分散液…中央理化工業(株)製:ET−8(20重量%品)、以下「ET8」と略する。
・ウレタン−アクリル樹脂分散液…中央理化工業(株)製:SU−200(34重量%品)、以下「SU200」と略する。
【0055】
〔重合体水性分散液の製造〕
(実施例1〜7、比較例1〜3)
攪拌機、還流冷却機及び原料投入口を備えた1Lフラスコにイオン交換水100.0重量部、及び表1に記載の乳化剤を仕込み、その内温を80℃に保ちながら、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)を0.5重量部添加した後、イオン交換水30.0重量部及び表1に記載の乳化剤の混合液に同表に記載の単量体を混合したプレエマルジョンを滴下液として3時間かけて滴下した。
滴下終了後、内温を80℃に保ちながら2時間熟成した。得られた乳化液を30℃に冷却し25%アンモニア水を添加し、実施例1の場合、粘度193mPa・s,pH8.5,固形分40.5%の重合体水性分散液を得た。得られた重合体水性分散液を用いて、上記の各評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
なお、比較例2は、反応後のエマルジョン粘度が高く、また凝集物も見られたので、以後の評価を行わなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
〔フロアーポリッシュ配合液の製造1〕
実施例1〜7、比較例1〜3で得られた各重合体水性分散液を40.5重量部(固形分:16重量部)、TBEPを2.5重量部、DEGEEを9.0重量部、サーフロンを0.25重量部(固形分:0.025重量部)、アルカリ可溶性樹脂を4.625重量部(固形分:0.7重量部)、ポリエチレンワックスエマルジョンを8.625重量部(固形分:3.45重量部)、及びイオン交換水を35.0重量部混合し、フロアーポリッシュ配合液100.5重量部を調製した。
得られたフロアーポリッシュ配合液を用いて、上記の各評価を行った。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
〔フロアーポリッシュ配合液の製造2〕
実施例6で得られた各重合体水性分散液とET8又はSU200とを表3に示す量を使用した以外は、上記のフロアーポリッシュ配合液の製造1の場合と同様にしてフロアーポリッシュ配合液を調製した(実施例6−1〜6−4)。
得られたフロアーポリッシュ配合液を用いて、上記の各評価を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】