(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した第1及び第2の先行技術では、封入封緘後に厚みの異なる封筒が混在した場合に以下の問題が発生する。
【0008】
第1の先行技術は、円弧の中心方向に配置した1つの光学センサからフラップ部までの距離を基準として良否を判断するため、検査対象に大小様々な厚みの封筒が混在していると、比較的厚みが大きい封筒のほとんどを不良と誤判定してしまうという問題がある。すなわち、封緘後の厚みが比較的大きい封筒は、比較的厚みが薄い封筒に比べて光学センサまでの距離が全体的に短くなるため、光学センサからフラップまでの距離が不良判断の基準となる距離より短い場合、特にフラップ部の浮き上がりがなくても、それだけで不良と誤判定してしまう。
【0009】
また第1の先行技術は、封緘後の封筒全体を搬送過程で円弧状に大きく曲げる必要があるため、比較的厚みの大きい封筒には対応することができない。すなわち、内容物が少なく、封緘後の厚みが比較的小さい封筒であれば、その全体を変形させることは容易であるものの、内容物が多く、比較的厚みの大きい封筒は全体として腰が強くなるため、これを大きく曲げることは容易でない。また無理やり湾曲させようとすると、内容物が損傷したり、封筒本体が破れたりするおそれがある。
【0010】
第2の先行技術は、搬送路から一定の高さにセンサ光軸を配置しているため、センサ光軸の高さより厚みが大きい封筒には対応することができない。もちろん、平均的な封緘後の厚みに合わせてセンサ光軸の高さを調整することは可能であるが、それでも検査対象に大小様々な厚みの封筒が混在する場合、比較的厚みの大きい良品の封筒がセンサ光を遮ると、それだけで不良品と誤判定されてしまう。
【0011】
そこで本発明は、封緘後の厚みが異なる封筒が混在している場合であっても、誤判定なく検査を行うことができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔第1発明〕
本発明(第1発明)は、封緘済み封筒の検査装置及びその検査方法である。
検査装置(第1発明)は搬送機構及び変形機構を備え、このうち搬送機構は、内容物が封入された封筒本体にフラップ部が接着された状態の封緘済み封筒を、所定の搬送面に沿って搬送する。このとき搬送方向は、フラップ部の長手方向(接着部分の長手方向)に合致していることが好ましい。また変形機構は、封緘済み封筒の搬送過程で、封筒本体とフラップ部との貼り合わせ領域をフラップ部の側から搬送面を離れる方向へ反らせつつ、封筒本体の貼り合わせ領域以外を搬送面に対向する側から厚み方向に押し込んで窪ませる。
【0013】
また検査装置(第1発明)は、測定手段及び検査手段を備える。測定手段は、変形機構により貼り合わせ領域への反りと貼り合わせ領域以外への窪みがともに与えられる位置で、搬送面に相対する所定の基準位置から貼り合わせ領域までの距離と貼り合わせ領域以外までの距離をそれぞれ測定する。そして検査手段は、測定手段により測定された複数の距離の相対関係に基づいて、封筒本体へのフラップ部の接着状態を検査する。
【0014】
本発明(第1発明)の検査装置によれば、封緘済み封筒の搬送過程で、貼り合わせ領域とそれ以外にそれぞれ変形が加えられることにより、フラップ部の接着不良があった場合、その不良箇所が封筒本体から浮き上がった状態となる。この場合、基準位置からの距離でみると、貼り合わせ領域以外では特に封筒本体に浮き上がりがないため、基準位置からの距離に大きな変化が見られない。これに対し、貼り合わせ領域については、フラップ部の不良箇所が浮き上がった分だけ基準位置に接近するため、基準位置からの距離は相対的に短くなる。したがって、貼り合わせ領域と貼り合わせ領域以外でそれぞれ測定された距離がある程度異なる場合、それは接着不良箇所の浮き上がりに起因すると考えられるため、接着状態が不良であると判定することができる。
【0015】
このように本発明(第1発明)では、検査対象となる封筒について測定された複数の距離の相対関係から接着状態を検査するため、たとえ封筒の厚みが大小様々に変化したしたとしても、検査の基準が封筒の厚みの変化によって左右されることがない。したがって、封緘後の封筒の厚みにかかわらず、多様な厚みをもつ封筒を検査対象とすることができる。
【0016】
また本発明(第1発明)は、封筒の材質に起因した皺の発生に対しても有効である。
すなわち、検査対象となる封筒によっては、曲げ等の変形を加えることで封筒本体(封筒面)そのものに皺が寄りやすい材質を使用していることもある。この場合、フラップ部の接着状態に問題がない良品であっても、封筒本体に生じた皺と一緒にフラップ部も膨らむため、上述した第1の先行技術の手法では良品を誤って不良品と判定してしまうおそれがある。
【0017】
これに対し、本発明(第1発明)の手法では、たとえ封筒の材質等により全体に皺が寄り、封筒本体と一緒にフラップ部も膨らんだ状態となった場合であっても、基準位置からの距離でみると、貼り合わせ領域と貼り合わせ領域以外の両方が膨らんだ分だけ基準位置に接近するため、いずれも基準位置からの距離は同程度に短くなるが、両者に目立った違いは生じない。また、特にフラップ部の接着状態に不良がなく、変形による皺も生じなかった場合、封筒本体とフラップ部は同じように変形しているため、同様に両者の距離にほとんど違いはない。
【0018】
したがって、絶対的な距離が変化しているか否かに関わらず、貼り合わせ領域と貼り合わせ領域以外でそれぞれ測定された距離にほとんど違いがない場合、それはフラップ部の浮き上がりに起因するものではないため、接着状態は不良でないと判定することができる。これにより誤判定を防止し、検査の精度を向上することができる。
【0019】
なお検査手段は、複数の距離の差に基づいて、フラップ部の接着状態を検査することができる。この場合、貼り合わせ領域までの距離と貼り合わせ領域以外までの距離との差が顕著(例えば基準値を超えている等)であれば、それによってフラップ部の接着状態が不良であると判定することができる。逆に、両者の距離の差がほとんどない(例えば基準値を下回る等)であれば、フラップ部の接着状態が不良でないと判定することができる。
【0020】
また測定手段は、搬送方向でみた封緘済み封筒の複数箇所で貼り合わせ領域までの距離と貼り合わせ領域以外までの距離とをそれぞれ測定し、検査手段は、複数箇所のそれぞれで測定された複数の距離の差に基づいてフラップ部の接着状態を検査することとしてもよい。
【0021】
上記の態様であれば、フラップ部の接着部分がある程度の長さを有している場合、その複数箇所で距離を測定することにより、接着部分の全範囲にわたって接着状態を検査することができる。
【0022】
また測定手段は、基準位置に配置された第1及び第2の変位センサを含む。第1の変位センサは、フラップ部の接着位置(接着部分の位置)で貼り合わせ領域の外面までの距離を測定し、第2の変位センサは、封筒本体の貼り合わせ領域以外の外面までの距離を測定する。また検査手段は、演算部及び判定部を含む。演算部は、第1及び第2の変位センサによりそれぞれ測定された2つの距離の差を演算する。また判定部は、演算部により演算された2つの距離の差と所定値とを比較した結果からフラップ部の接着状態の良否を判定する。
【0023】
これにより、各変位センサによる距離の測定とその後の演算・判定処理をコンピュータ等で自動化し、検査の高速化を図ることができる。
【0024】
変形機構は、封筒受け部材、フラップ押さえローラ、押し込みローラ等を含む。封筒受け部材は、搬送面に沿って配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で貼り合わせ領域以外をフラップ部の貼り合わせ面とは反対側から支持する。フラップ押さえローラは、搬送面を挟んで封筒受け部材と反対側に回転軸が配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で封筒受け部材と反対側から搬送面を越えて円錐形状に拡がる外周面に沿って貼り合わせ領域を相対的に案内することにより、封筒受け部材を支点として貼り合わせ領域に反り変形を与える。そして押し込みローラは、搬送面に相対して回転軸が配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で回転軸から搬送面までの間隔より半径が大きい外周面に沿って貼り合わせ領域以外を相対的に案内することにより、貼り合わせ領域以外に搬送面を越えて窪み変形を与える。特に変形機構は、押し込みローラの回転軸の位置を封緘済み封筒の厚み方向に調整可能とする調整機構を含むことができる。
【0025】
これにより、封緘済み封筒を搬送する過程で、各種部材、ローラ等による封筒の変形を容易に実現することができる。また、押し込みローラの回転軸の位置を調整することで、封筒の平均的な厚みが変化した場合にも容易に対応することができる。
【0026】
本発明の検査方法(第1発明)は、以下の工程を有する。以下の工程は、並行して実行されるものであってもよい。
〔搬送工程〕
この工程では、内容物が封入された封筒本体にフラップ部が接着された状態の封緘済み封筒を、所定の搬送面に沿って搬送する。
【0027】
〔変形工程〕
この工程では、搬送工程を通じて封緘済み封筒が搬送される過程で、封筒本体とフラップ部との貼り合わせ領域をフラップ部の側から搬送面を離れる方向へ反らせつつ、封筒本体の貼り合わせ領域以外を搬送面に対向する側から厚み方向に押し込んで窪ませる。
【0028】
〔測定工程〕
この工程では、変形工程で貼り合わせ領域への反りと貼り合わせ領域以外への窪みがともに与えられる位置で、搬送面に相対する所定の基準位置から貼り合わせ領域までの距離と貼り合わせ領域以外までの距離をそれぞれ測定する。
【0029】
〔検査工程〕
この工程では、測定工程で測定された複数の距離の相対関係に基づいて、封筒本体へのフラップ部の接着状態を検査する。
【0030】
上記の検査方法によれば、検査装置を用いた場合と同様に、検査対象に大小様々な厚みの封筒が混在する場合であっても、誤判定なく高精度に検査を行うことができる。また、封筒の材質等によって良品に生じた皺を不良として誤判定することを防止し、検査精度を向上することができる。
【0031】
なお検査方法において、上記の検査工程では、複数の距離の差に基づいて、フラップ部の接着状態を検査してもよい。
【0032】
また測定工程では、搬送方向でみた封緘済み封筒の複数箇所で貼り合わせ領域までの距離と貼り合わせ領域以外までの距離とをそれぞれ測定し、検査工程では、複数箇所のそれぞれで測定された複数の距離の差に基づいてフラップ部の接着状態を検査してもよい。
【0033】
〔第2発明〕
本発明(第2発明)は、封緘済み封筒の検査装置及びその検査方法である。
検査装置(第2発明)は搬送機構及び変形機構を備え、このうち搬送機構は、内容物が封入された封筒本体にフラップ部が接着された状態の封緘済み封筒を、所定の搬送面に沿って搬送する。このとき搬送方向は、フラップ部の長手方向(接着部分の長手方向)に合致していることが好ましい。また変形機構は、封緘済み封筒の搬送過程で、封筒本体とフラップ部との貼り合わせ領域をフラップ部の側から搬送面を離れる方向へ反らせつつ、封筒本体の貼り合わせ領域以外を搬送面に対向する側から厚み方向に押し込んで窪ませる。
【0034】
また検査装置(第2発明)は、測定手段及び検査手段を備える。測定手段は、変形機構により貼り合わせ領域への反りと貼り合わせ領域以外への窪みがともに与えられる位置を封緘済み封筒が通過する過程で、搬送面に相対する所定の基準位置から貼り合わせ領域までの距離を複数回にわたり測定する。また検査手段は、測定手段により測定された複数回分の距離の変化態様に基づいて、封筒本体へのフラップ部の接着状態を検査する。
【0035】
本発明(第2発明)の検査装置によれば、封緘済み封筒の搬送過程で、貼り合わせ領域とそれ以外にそれぞれ変形が加えられるが、変形箇所は貼り合わせ領域を反らせたり、貼り合わせ領域以外の一部を窪ませたりするだけであり、全体を大きく湾曲させる等の変形を加える必要がない。このため、封緘後の封筒の厚みにかかわらず、多様な厚みをもつ封筒を検査対象とすることができる。
【0036】
また、封緘済み封筒に上記のような変形を加えることにより、フラップ部の接着不良があった場合は、その不良箇所が封筒本体から浮き上がった状態となる。このとき本発明(第2発明)では、例えばセンサ光軸のような予め固定されたポイントで浮き上がりの有無を検査するのではなく、搬送の過程を通して貼り合わせ領域までの距離がどのように変化していったかを捉え、その変化態様から浮き上がりの有無を検査している。
【0037】
例えば、実際にフラップ部の接着不良により浮き上がりがあれば、そのような不良箇所が搬送路上の一定位置を通過する前と、通過中、さらに通過後で測定した距離に変化が生じる。したがって、このときの距離の変化態様(傾き)がフラップ部の浮き上がりを表すものであれば、フラップ部の接着状態に不良があると判定することができる。逆に、封筒全体が搬送経路上の一定位置を通過する過程を通して、測定した距離に極端な変化が生じていない場合、フラップの接着不良がないと判定することができる。
【0038】
このように、本発明(第2発明)の検査装置によれば、封緘済み封筒の厚みが様々に変化する場合であっても、一定位置で測定した距離の変化態様から、フラップ部の接着状態を検査することができる。
【0039】
上記の検査手段は、測定手段により連続して測定された2つの距離の差に基づいて、フラップ部の接着状態を検査することができる。
【0040】
この場合、連続して測定された2つの距離は、貼り合わせ領域上の搬送方向でみて隣り合う地点で測定された距離の差に相当する。したがって2つの距離の差は、搬送方向でみたフラップ部の傾きを表しているため、差がある程度大きい場合、フラップ部の接着状態が不良であると判定することができる。逆に、差があまりない場合、フラップ部に傾きが生じていないため、接着不良がないと判定することができる。
【0041】
また測定手段は、基準位置に配置され、フラップ部の接着位置で貼り合わせ領域の外面までの距離を検出する変位センサを含み、検査手段は、変位センサにより連続して測定された2つの距離の差を演算する演算部と、演算部により演算された2つの距離の差を用いてフラップ部の接着状態の良否を判定する判定部とを含むものであってもよい。
【0042】
これにより、変位センサによる距離の測定とその後の演算・判定処理をコンピュータ等で自動化し、検査の高速化を図ることができる。
【0043】
変形機構は、封筒受け部材、フラップ押さえローラ、押し込みローラ等を含む。封筒受け部材は、搬送面に沿って配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で貼り合わせ領域以外をフラップ部の貼り合わせ面とは反対側から支持する。フラップ押さえローラは、搬送面を挟んで封筒受け部材と反対側に回転軸が配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で封筒受け部材と反対側から搬送面を越えて円錐形状に拡がる外周面に沿って貼り合わせ領域を相対的に案内することにより、封筒受け部材を支点として貼り合わせ領域に反り変形を与える。そして押し込みローラは、搬送面に相対して回転軸が配置され、封緘済み封筒が搬送される過程で回転軸から搬送面までの間隔より半径が大きい外周面に沿って貼り合わせ領域以外を相対的に案内することにより、貼り合わせ領域以外に搬送面を越えて窪み変形を与える。特に変形機構は、押し込みローラの回転軸の位置を封緘済み封筒の厚み方向に調整可能とする調整機構を含むことができる。
【0044】
これにより、封緘済み封筒を搬送する過程で、各種部材、ローラ等による封筒の変形を容易に実現することができる。また、押し込みローラの回転軸の位置を調整することで、封筒の平均的な厚みが変化した場合にも容易に対応することができる。
【0045】
本発明の検査方法(第2発明)は、以下の工程を有する。以下の工程は、並行して実行されるものであってもよい。
〔搬送工程〕
この工程では、内容物が封入された封筒本体にフラップ部が接着された状態の封緘済み封筒を、所定の搬送面に沿って搬送する。
【0046】
〔変形工程〕
この工程では、搬送工程を通じて封緘済み封筒が搬送される過程で、封筒本体とフラップ部との貼り合わせ領域をフラップ部の側から搬送面を離れる方向へ反らせつつ、封筒本体の貼り合わせ領域以外を搬送面に対向する側から厚み方向に押し込んで窪ませる。
【0047】
〔測定工程〕
この工程では、変形工程で貼り合わせ領域への反りと貼り合わせ領域以外への窪みがともに与えられる位置を封緘済み封筒が通過する過程で、基準位置から貼り合わせ領域までの距離を複数回にわたり測定する。
【0048】
〔検査工程〕
この工程では、測定工程で測定された複数回分の距離の変化態様に基づいて、封筒本体へのフラップ部の接着状態を検査する。
【0049】
上記の検査方法によれば、検査装置を用いた場合と同様に、封緘後の厚みが異なる封筒が混在する場合であっても、個々の封筒の厚みにかかわらず、フラップの接着状態を確実に検査することができる。
【0050】
なお検査方法において、上記の検査工程では、測定工程で連続して測定された2つの距離の差に基づいて、フラップ部の接着状態を検査してもよい。
【発明の効果】
【0051】
本発明(第1発明及び第2発明)の検査装置及び検査方法によれば、封緘済み封筒の厚みが異なる場合であっても、大量の封筒を効率よく検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[第1部]
第1部において、第1発明の検査装置の一実施形態について説明し、この検査装置を用いて実施される第1発明の検査方法について明らかにする。
【0054】
図1は、一実施形態の検査装置10の構成を概略的に示す図である。
一実施形態の検査装置10は、封緘済みの封筒Eを搬送する過程で、フラップ部Fの接着状態(接着不良の有無)を自動で検査するものである。検査装置10は、例えば図示しない封入封緘機に接続して使用することができ、封入封緘機において封筒Eには、例えば商取引上の書類や広告等の内容物が自動で封入された後、フラップ部Fを自動で接着(糊付け)して封緘するまでの作業が行われている。なおフラップ部Fの接着は、例えば予め塗布されている再湿糊(アラビア糊)に水分を付加して行われる。また封筒Eは、定形のものでも定形外のものでもよい。
【0055】
〔搬送機構〕
検査装置10は搬送機構11を備えており、この搬送機構11は、例えば図示しない封入封緘機から受け取った封緘済みの封筒Eを、
図1に示す白抜き矢印の方向へ搬送する。搬送機構11は無端状の搬送ベルト12を有しており、搬送ベルト12は主に、駆動ローラ14、従動ローラ16及びテンションローラ8に掛け回されている。
【0056】
搬送ベルト12は、従動ローラ16から駆動ローラ14までの区間に平坦な搬送路を形成している。この搬送路の始端で従動ローラ16と受け入れローラ18との間に送り込まれた封筒Eは、搬送ベルト12に引き込まれてその走行方向へ搬送される。なお搬送路の区間内で搬送ベルト12の表面は、封筒Eの搬送面を形成している。駆動ローラ14は搬送路の終端に位置しており、終端に達した封筒Eは駆動ローラ14と送出ローラ24の間から送出される。
【0057】
搬送路の始端近傍及び終端近傍には、それぞれガイドローラ対20,22が設置されている。これらガイドローラ対20,22は、搬送ベルト12による封筒Eの安定した搬送を案内している。
【0058】
〔変形機構〕
また、検査装置は変形機構30を備えており、この変形機構30は、搬送方向でみて搬送路の中央位置に設けられている。変形機構30は、搬送過程にある封筒Eに変形を加えることで、フラップ部Fに接着不良箇所があった場合はこれを浮き上がらせることができる。
【0059】
より詳細には、封筒Eに変形を加えるため、変形機構30は封筒受け板32、フラップ押さえローラ34、封筒押し込みローラ36及び封筒押さえローラ38を有している。このうち封筒受け板32は搬送ベルト12の表面、つまり搬送面に沿って全体が封筒Eの搬送方向に延びており、その長手方向でみた中央部分がコ字形状に変形されている。封筒受け板32は封筒Eが搬送される過程で、搬送ベルト12側から封筒Eを支持する。
【0060】
その他のフラップ押さえローラ34、封筒押し込みローラ36及び封筒押さえローラ38は、搬送面を挟んで封筒受け板32の反対側に配置されている。このうち封筒押し込みローラ36が搬送方向でみて中央に位置し、その両側(上流側と下流側)にそれぞれフラップ押さえローラ34及び封筒押さえローラ38が配置されている。この例では、フラップ押さえローラ34と封筒押さえローラ38が同じ回転軸上に位置しているが、フラップ押さえローラ34と封筒押さえローラ38とは搬送路の横断方向に離れて配置されている。また搬送ベルト12の内側には、各封筒押さえローラ38に対向してガイドローラ40が配置されている。
【0061】
フラップ押さえローラ34は、封筒Eが搬送される過程で、フラップ部Fに対応する領域(貼り合わせ領域)を搬送面から離れる方向(
図1では下方向)へ反らせるようにして変形させる。なお、このとき上記の封筒受け板32が変形時の支点となっている。また封筒押し込みローラ36は、封筒Eのフラップ部Fに対応する領域以外を厚み方向に押し込むことで、封筒押し込みローラ36の位置で封筒Eを窪ませる。上記のように封筒受け板32の中央部分がコ字形状となっているのは、封筒Eを窪ませた時の「逃げ」となる空間を確保するためである。
【0062】
いずれにしても、変形機構30により封筒Eに変形を与えることにより、フラップ部Fに接着不良箇所があった場合、
図1の二点鎖線で示されるように、不良箇所を浮き上がらせることができる。
【0063】
〔測定及び検査〕
そして検査装置10は、フラップ部Fの接着状態を検査するため、2つの変位センサ42,44及び検査ユニット46を有している。変位センサ42,44は反射型の光学式距離センサであり、いずれも搬送方向でみて、封筒押し込みローラ36と略同じ位置でセンサ光を送受光する。このうち一方の変位センサ44は、フラップ部Fに対応する領域を測定対象位置としており、他方の変位センサ42は、フラップ部Fに対応する領域以外を測定対象位置としている。そして、各変位センサ42,44の検出信号は検査ユニット46に入力され、その内部で情報処理に用いられる。
【0064】
検査ユニット46は、情報処理機能を有する電子機器(例えばパーソナルコンピュータ)を用いて実現することができる。この検査ユニット46は、機能要素としての測定部48、演算部50及び判定部52を含んでおり、このうち測定部48は、各変位センサ42,44の検出信号から、各測定対象位置までの距離を測定する。また演算部50は、測定部48による測定結果を用いて演算処理を行う。判定部52は、演算処理の結果に基づいてフラップ部Fの接着状態を検査する。
【0065】
検査ユニット46には、例えば液晶ディスプレイ等の表示部54が付設されており、この表示部54には、所望により測定部48による測定結果や演算部50による演算結果、判定部52による判定結果等を可視表示することができる。
【0066】
検査ユニット46による測定部48や演算部50、判定部52としての機能は、例えば検査ユニット46がコンピュータ機器として実行するソフトウエア処理により実現することができる。なお、検査ユニット46による検査手法の詳細についてはさらに後述する。
【0067】
図2は、搬送過程で封筒Eに加えられる変形の態様を示す斜視図である。上記のように、搬送ベルト12の表面を搬送面とすると、基本的に封筒Eは、搬送面に沿って一方向に搬送される。このとき搬送方向は、フラップ部Fの長手方向に合致している。
【0068】
ここで封緘済みの封筒Eは、その封筒本体Bに内容物が封入された後、これにフラップ部Fが接着された(貼り合わせられた)状態にある。この状態で、封筒Eのフラップ部Fに対応する領域を貼り合わせ領域A1とし、この貼り合わせ領域A1以外を本体領域A2とする。このとき封筒受け板32は、貼り合わせ領域A1と本体領域A2の境界近傍で、本体領域A2側に位置している。この位置で封筒受け板32は、例えば搬送ベルト12を介して封筒Eをフラップ部Fの貼り合わせ面と反対側から支持することができる。
【0069】
2つのフラップ押さえローラ34は、いずれも封筒受け板32から搬送面の一側方に張り出して位置しており、この位置で貼り合わせ領域A1に相対している。また各フラップ押さえローラ34は円錐台形状をなしており、その回転軸(参照符号なし)は搬送面を挟んで封筒受け板32と反対側に配置されているが、外周面は封筒受け板32と反対側から搬送面を越えて円錐形状(テーパ状)に拡がっている。このため図示のように各フラップ押さえローラ34は、その外周面に沿って貼り合わせ領域A1を案内する過程で、封筒受け板32を支点として貼り合わせ領域A1に搬送面から離れる方向(この例では下方向)への反り変形を与えることができる。
【0070】
なお、ここでは貼り合わせ領域A1が搬送ベルト12からはみ出して搬送される態様となっているが、封筒Eは全体的に搬送ベルト12に接した状態で搬送され、その過程でフラップ押さえローラ34による変形が与えられると、搬送ベルト12の縁が貼り合わせ領域A1と一緒に反る態様であってもよい。
【0071】
一方、封筒押し込みローラ36は、封筒Eの本体領域A2に相対して位置している。封筒押し込みローラ36は円柱形状であり、その回転軸36aも搬送面に相対して配置されている。ただし封筒押し込みローラ36は、その回転軸36aから搬送面までの間隔よりも外周面の半径が大きく、このため
図1に示したように、封筒押し込みローラ36は封筒Eの本体領域A2に搬送面を越えて窪み変形を与えることができる。なお、このとき封筒押し込みローラ36の両側では、各封筒押さえローラ38及びガイドローラ40(
図2に示さず)により本体領域A2の変形が拘束されている。
【0072】
なお封筒押し込みローラ36には調整機構36bが付属しており、この調整機構36bは、図示しないアクチュエータにより、回転軸36aの位置(搬送面からの高さ)を封筒Eの厚み方向に調整することができる。これにより、封筒Eの平均的な厚みに応じて本体領域A2に与える窪み変形量を調整することができる。
【0073】
2つの変位センサ42,44は、搬送面から一定間隔をおいた基準位置に設置(固定)されている。上記のように一方の変位センサ44は、基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離を検出し、他方の変位センサ42は、基準位置から本体領域A2までの距離を検出する。なお2つの変位センサ42,44は、搬送路上で貼り合わせ領域A1への反り変形と本体領域A2への窪み変形がともに与えられる位置(2つのフラップ押さえローラ34の間、回転軸36aと略同一線上)にセンサ光軸が設定されている。
【0074】
〔測定位置〕
図3は、搬送路上での封筒Eと各センサ光軸(測定位置)との位置関係を示す平面図である。2つの変位センサ42,44は固定されているが、封筒Eが搬送される過程で、一方の変位センサ44は走査線L1上で貼り合わせ領域A1までの距離を測定し、他方の変位センサ42は、走査線L2上で本体領域A2までの距離を測定する。このとき、貼り合わせ領域A1に対応する走査線L1は、フラップ部Fの接着部分Pの幅方向でみた略中央に位置合わせされている。また本体領域A2に対応する走査線L2は、フラップ部Fの縁からある程度近い所に位置合わせされているものとする。
【0075】
〔測定回数〕
各変位センサ42,44による測定は、1つの封筒Eが搬送される過程で、複数回(例えば10回程度)にわたり行われる。具体的には、変位センサ42,44のセンサ光軸位置を封筒Eが通過する間に、測定部48による検出信号の読み取りが一定間隔で複数回にわたり行われることになる。これにより、1つの封筒Eが搬送される過程で、各走査線L1,L2上の複数箇所(例えば10箇所)で距離の測定が行われる。
【0076】
〔接着状態別の測定結果〕
図4は、変位センサ42,44による距離の測定結果をフラップ部Fの接着状態別に示した図である。このうち
図4(A)は、良好な接着状態で封筒Eに皺が寄らない場合、
図4(B)は不良な接着状態でフラップ部Fに浮き上がりが生じている場合、
図4(C)は良好な接着状態であるが、封筒Eに皺が寄っている場合をそれぞれ示している。以下、より具体的に説明する。
【0077】
〔接着状態良好時〕
図4(A):フラップ部Fの接着状態が良好で、封筒Eに皺が寄らなかった場合、各変位センサ42,44の測定位置でフラップ部Fと封筒本体Bはともに窪んだ状態にある。このとき、変位センサ42,44の送受光面を基準位置とすると、一方の変位センサ44は、基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離を測定し、測定値D1を得ることができる。また、他方の変位センサ42は、基準位置から本体領域A2までの距離を測定し、測定値D2を得ることができる。そしてこの場合、2つの測定値D1,D2の差H(=D1−D2)は比較的小さくなる(例えば、フラップ部Fの厚み程度)。
【0078】
〔接着状態不良時〕
図4(B):これに対し、フラップ部Fに接着状態の不良箇所があった場合、各変位センサ42,44の測定位置で封筒本体Bは窪んだ状態にあるが、フラップ部Fは封筒本体Bから浮き上がった状態となる。この場合、2つの測定値D1,D2の差H(=D1−D2)は、比較的大きくなる(フラップ部Fの浮き上がり高さに相当)。
【0079】
〔接着状態良好・皺発生時〕
図4(C):一方、フラップ部Fの接着状態は良好であるが、封筒Eの材質等によって全体に皺が寄った場合、各変位センサ42の測定位置では、封筒押し込みローラ36に接する面の封筒本体B、及びフラップ部Fがともに膨らんだ状態となる(ただし、内容物は窪んだ状態にある。)。したがってこの場合、2つの測定値D1,D2の差H(=D1−D2)は比較的小さいままとなる(例えば、フラップ部Fの厚み程度)。
【0080】
〔検査方法〕
次に、検査ユニット46の機能について具体的に説明し、合わせて検査装置10を用いて実行される検査方法についても明らかにする。
【0081】
〔搬送工程〕
先ず検査装置10の搬送機構11を用いて、検査対象となる封筒Eを搬送路上にて搬送する。なお封筒Eは、単位時間内に複数部を連続して搬送してもよい。
【0082】
〔変形工程〕
搬送機構11による封筒Eの搬送過程で、検査装置10の変形機構30を用いて封筒Eに変形を加える。封筒Eに加えられる変形の態様は、既に説明したとおりである。
【0083】
〔測定工程〕
そして、封筒Eが各変位センサ42の測定位置を通過する際に、基準位置から貼り合わせ領域A1及び本体領域A2までの距離をそれぞれ測定する。測定には、2つの変位センサ42,44、及び検査ユニット46の測定部48を用いることができる。
【0084】
〔検査工程〕
2つの変位センサ42の測定値D1,D2の相対関係として、両者の差(D1−D2)を演算し、その結果からフラップ部Fの接着状態を検査する。例えば、差(D1−D2)が所定の閾値未満である場合は接着状態が良好であると判定し、逆に閾値以上である場合は接着不良と判定する。
【0085】
〔検査処理〕
図5は、検査ユニット46により実行される検査処理の流れを示すフローチャートである。上記の測定工程及び検査工程は、この検査処理の実行により進行する。
【0086】
ステップS100,S102:検査ユニット46は、測定部48にて変位センサ44の測定値D1を取得し、続けて変位センサ42の測定値D2を取得する。
【0087】
ステップS104:検査ユニット46は、演算部50にて測定値D1,D2の差(D1−D2)を演算し、その結果を判定部52にて閾値と比較する。
【0088】
ステップS106:差(D1−D2)が閾値以下であれば(ステップS104:Yes)、判定部52はフラップ部Fの接着状態が良好であると判定する。
ステップS108:これに対し、差(D1−D2)が閾値以上である場合(ステップS104:No)、判定部52はフラップ部Fの接着状態が不良であると判定する。なお閾値は、検査対象となる封筒Eの材質やサイズ、検査したい接着不良箇所の程度(長さ)に応じて予め適切に設定しておくことができる。
【0089】
1回の検査処理の流れは以上で終了となっているが、検査ユニット46は1つの封筒Eが搬送される過程で検査処理を複数回にわたり繰り返して実行する。これにより、封筒Eの搬送方向でみた複数の測定箇所(各走査線M1,M2上)で測定値D1,D2を取得し、その差(D1−D2)から接着状態を検査することができる。
【0090】
〔検査結果の具体例〕
以下に具体例として、(1)良品の検査結果(皺なし)、(2)不良品の検査結果、(3)良品の検査結果(皺あり)をそれぞれ挙げる。
【0091】
(1)良品の検査結果(皺なし)
図6は、良品の封筒Eについて、複数の測定箇所で取得した測定値D1,D2とこれらの差(D1−D2)を一覧にして示す表である。表の最上段には測定箇所番号として「1」〜「10」を示し、番号別のカラムには上から順に測定値D1、測定値D2、これらの差(D1−D2)の演算結果を数値で示している。
【0092】
図7は、
図6の表に示される数値をプロットしたグラフである。グラフの縦軸には測定値や演算結果をとり、横軸には測定箇所番号を取っている。
図7(A)は、測定箇所別の測定値D1を示し、
図7(B)は測定箇所別の測定値D2を示す。
【0093】
これら
図7(A),(B)から明らかなように、この検査対象の封筒Eでは、全ての測定箇所を通して測定値D1,D2が安定している。これは、検査対象の封筒Eにはフラップ部Fの浮き上がりも皺による膨らみも生じなかったことを表している。
【0094】
そして、
図7(C)に示される差(D1−D2)は全ての測定箇所で0に近い結果を示している。したがって、全ての測定箇所で差(D1−D2)が閾値未満であるから、検査対象の封筒Eは良品と判定することができる。
【0095】
(2)不良品の検査結果
次に
図8は、不良品の封筒Eについての値を一覧にして示す表である。なお、表は
図8(A)に示されており、同
図8(B)は、接着不良箇所を有する不良品の封筒Eの態様を一例として示すものである。接着不良箇所は、例えば定形サイズの封筒Eで50mm程度の長さを有するものを想定している。
【0096】
図9は、
図8(A)の表に示される数値をプロットしたグラフである。
図9(A)は、測定箇所別の測定値D1を示し、
図9(B)は測定箇所別の測定値D2を示す。
【0097】
これら
図9(A),(B)から明らかなように、この検査対象の封筒Eでは、特定の測定箇所(例えば番号「7」)で測定値D1が他より突出しているが、測定値D2の方は全体的に安定している。これは、検査対象の封筒Eには、特定の測定箇所でフラップ部Fの浮き上がりが発生したことを表している。
【0098】
そして、
図9(C)に示される差(D1−D2)は、やはり特定の測定箇所で他より突出している。したがって、今回は特定の測定箇所で差(D1−D2)が閾値Thを超えることから、検査対象の封筒Eが不良品であると判定することができる。
【0099】
(3)良品の検査結果(皺あり)
次に
図10は、別の良品の封筒Eについての値を一覧にして示す表である。また
図11は、
図10の表に示される数値をプロットしたグラフである。
図10(A)は、測定箇所別の測定値D1を示し、
図10(B)は測定箇所別の測定値D2を示す。
【0100】
これら
図10(A),(B)から明らかなように、この検査対象の封筒Eでは、特定の測定箇所(例えば番号「7」)で測定値D1が他より突出しており、測定値D2についても、同じく特定の測定箇所(番号「7」)で他より突出している。これは、検査対象の封筒Eには、特定の測定箇所で封筒本体Bに皺が寄ったため、封筒本体Bとフラップ部Fがともに膨らんだことを表している。
【0101】
このため、
図10(C)に示される差(D1−D2)は、特定の測定箇所で突出することなく、全体的に安定している。したがって、特に接着不良箇所のない封筒Eに皺が寄った場合、全ての測定箇所で差(D1−D2)が閾値Th以下となることから、検査対象の封筒Eは良品であると判定することができる。
【0102】
〔第1部のまとめ〕
以上のように、封緘済み封筒Eの検査装置10及びその検査方法によれば、特定位置の光学センサからフラップ部Fまでの距離を基準として検査するのではなく、検査対象の封筒Eについて、2つの測定値D1,D2の相対関係からフラップ部Fの浮き上がりを判断して接着状態を検査しているので、厚みが異なる封筒Eが混在していても、封筒Eの厚みの違いによる影響を受けることなく、フラップ部Fの接着不良を正確に検査することができる。
【0103】
また、封筒Eに曲げ等の変形を加えた際に、材質や内容物等の影響で皺が寄りやすい場合であっても、良品に生じた全体の膨らみと不良品に生じたフラップ部Fの浮き上がりとを混同して誤判定することなく、純粋な接着不良を高精度に検査することができる。
【0104】
また、調整機構36bにより封筒押し込みローラ36の回転軸36aの位置(搬送面からの距離)を調整することで、封緘済み封筒Eの平均的な厚みが変化した場合にも容易に対応することができる。
【0105】
第1発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。一実施形態で挙げた搬送機構11や変形機構30の具体的な構成は一例であり、これらの構成部品を適宜に変更してもよい。
【0106】
また検査ユニット46は、2つの変位センサ42,44の測定値を取得するごとに良否の判定を行っているが、全ての測定値をバッファメモリ等に記憶しておき、これらをまとめて演算処理にかけて良否の判定を行うこととしてもよい。
【0107】
[第2部]
第2部において、第2発明の検査装置の一実施形態について説明し、この検査装置を用いて実施される第2発明の検査方法について明らかにする。なお、一部の説明は第1部と重複するが、基本的に第1部の検査装置10と共通する構成には図示とともに同じ符号を付し、個々の説明を省略するものとする。
【0108】
図12は、一実施形態の検査装置100の構成を概略的に示す図である。
第2発明に対応する一実施形態の検査装置100は、封緘済みの封筒Eを搬送する過程で、フラップ部Fの接着状態(接着不良の有無)を自動で検査するものである。検査装置100は、例えば図示しない封入封緘機に接続して使用することができ、封入封緘機において封筒Eには、例えば商取引上の書類や広告等の内容物が自動で封入された後、フラップ部Fを自動で接着(糊付け)して封緘するまでの作業が行われている。なおフラップ部Fの接着は、例えば予め塗布されている再湿糊(アラビア糊)に水分を付加して行われる。また封筒Eは、定形のものでも定形外のものでもよい。
【0109】
〔搬送機構及び変形機構〕
検査装置100は、第1部で説明した検査装置10と同様の搬送機構11及び変形機構30を備えている。これらの構成及び動作は第1部で説明したものと同様である。
【0110】
〔測定及び検査〕
そして検査装置100は、フラップ部Fの接着状態を検査するため、変位センサ440及び検査ユニット46を有している。変位センサ440は反射型の光学式距離センサであり、いずれも搬送方向でみて、封筒押し込みローラ36と略同じ位置でセンサ光を送受光する。なお変位センサ440は、フラップ部Fに対応する領域を測定対象位置としている。変位センサ440の検出信号は検査ユニット46に入力され、その内部で情報処理に用いられる。
【0111】
検査ユニット46は、情報処理機能を有する電子機器(例えばパーソナルコンピュータ)を用いて実現することができる。この検査ユニット46は、機能要素としての測定部48、演算部50及び判定部52を含んでおり、このうち測定部48は、変位センサ440の検出信号から、測定対象位置までの距離を測定する。また演算部50は、測定部48による測定結果を用いて演算処理を行う。判定部52は、演算処理の結果に基づいてフラップ部Fの接着状態を検査する。
【0112】
検査ユニット46には、例えば液晶ディスプレイ等の表示部54が付設されており、この表示部54には、所望により測定部48による測定結果や演算部50による演算結果、判定部52による判定結果等を可視表示することができる。
【0113】
検査ユニット46による測定部48や演算部50、判定部52としての機能は、例えば検査ユニット46がコンピュータ機器として実行するソフトウエア処理により実現することができる。なお、検査ユニット46による検査手法の詳細についてはさらに後述する。
【0114】
図13は、搬送過程で封筒Eに加えられる変形の態様を示す斜視図である。搬送ベルト12の表面を搬送面とすると、基本的に封筒Eは、搬送面に沿って一方向に搬送される。このとき搬送方向は、フラップ部Fの長手方向に合致している。
【0115】
〔搬送過程での封筒の変形〕
搬送機構11による封筒Eの搬送過程で、変形機構30により封筒Eに変形が加えられる態様は、基本的に第1部で説明したものと同じである。
【0116】
変位センサ440は、搬送面から一定間隔をおいた基準位置に設置(固定)されている。この状態で変位センサ440は、基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離を検出する。なお変位センサ440は、搬送路上で貼り合わせ領域A1への反り変形と本体領域A2への窪み変形がともに与えられる位置(2つのフラップ押さえローラ34の間、回転軸36aと略同一線上)にセンサ光軸が設定されているものとする。
【0117】
〔測定位置〕
図14は、搬送路上での封筒Eとセンサ光軸(測定位置)との位置関係を示す平面図である。変位センサ440は固定されているが、封筒Eが搬送される過程で、変位センサ440は走査線L3上で貼り合わせ領域A1までの距離を測定する。このとき走査線L3は、フラップ部Fの接着部分Pの幅方向でみた略中央に位置合わせされている。
【0118】
〔測定回数〕
変位センサ440による測定は、1つの封筒Eが搬送される過程で、複数回(例えば10回程度)にわたり行われる。具体的には、変位センサ440のセンサ光軸位置を封筒Eが通過する間に、測定部48による検出信号の読み取りが一定間隔で複数回にわたり行われることになる。これにより、1つの封筒Eが搬送される過程で、走査線L3上の複数箇所(例えば10箇所)で距離の測定が行われる。
【0119】
〔厚みの異なる封筒の混在時〕
図15は、検査対象に厚みの異なる封筒Eが混在している場合への対応を示した図である。このうち
図15(A)は、比較的厚みT1が小さい封筒Eが検査対象となる場合を示し、
図15(B)は、比較的厚みT2が大きい封筒Eが検査対象となる場合を示している。
【0120】
図15(A),(B)の比較から明らかなように、検査装置100は、検査対象となる封筒Eの厚みT1,T2(T1<T2)が違っていても、変位センサ440により基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離D3を測定し、その測定値に基づいてフラップ部Fの接着状態を検査することができる。
【0121】
〔先行技術との対比〕
この点、
図15(A),(B)に二点鎖線で示されているように、例えば搬送面(符号CS)から一定の高さにセンサSを固定して検査を行う場合、センサ光軸が搬送面と平行に配置されることになる。この場合、
図15(A)に示されるように、厚みT1が比較的小さい封筒Eについては、フラップ部Fの浮き上がりを検査する際に一応有効であると考えられる。しかし、
図15(B)に示されるように、厚みT2が比較的大きい封筒Eについては、良品の状態で封筒Eそのものがセンサ光軸にかかってしまうため、有効に検査することは不可能となる。
【0122】
これに対し、一実施形態の検査装置100は、封筒Eの厚みT1,T2に関わらず、基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離の測定値に基づいて検査を行うため、上記のような問題は生じない。
【0123】
〔接着状態別の測定結果〕
図16は、変位センサ440により測定された距離の変化態様をフラップ部Fの接着状態別に示した図である。このうち
図16(A)は、フラップ部Fの接着不良がない良品の場合、
図16(B)は不良な接着状態でフラップ部Fに浮き上がりが生じている場合をそれぞれ示している。以下、より具体的に説明する。
【0124】
〔接着状態良好時〕
図16(A):フラップ部Fの接着状態が良好である場合、封筒Eの搬送過程を通して変位センサ440の測定位置でフラップ部Fと封筒本体Bはともに窪んだ状態にある(つまり、フラップ部Fに浮き上がりが生じない。)。このとき、封筒Eが白抜き矢印の方向へ搬送されており、変位センサ440が封筒Eの搬送過程で複数回にわたり距離の測定を行うとすると、前回の測定時(二点鎖線で示す)に得られた測定値D3’と、今回の測定時(実線で示す)に得られた測定値D3とでは、両者に目立った変化が現れていない。
【0125】
〔接着状態不良時〕
図16(B):これに対し、フラップ部Fに接着状態の不良箇所があった場合、変位センサ440の測定位置でフラップ部Fは封筒本体Bから浮き上がった状態となる。この場合、前回の測定時(二点鎖線で示す)に得られた測定値D3’と、今回の測定時(実線で示す)に得られた測定値D3とで、両者に顕著な変化(=ΔD)が現れる。これは、浮き上がりによってフラップ部Fの表面に傾斜が生じていることを意味する。
【0126】
〔検査方法〕
次に、検査ユニット46の機能について具体的に説明し、合わせて検査装置100を用いて実行される検査方法についても明らかにする。
【0127】
〔搬送工程〕
先ず検査装置100の搬送機構11を用いて、検査対象となる封筒Eを搬送路上にて搬送する。なお封筒Eは、単位時間内に複数部を連続して搬送してもよい。
【0128】
〔変形工程〕
搬送機構11による封筒Eの搬送過程で、検査装置100の変形機構30を用いて封筒Eに変形を加える。封筒Eに加えられる変形の態様は、既に説明したとおりである。
【0129】
〔測定工程〕
そして、封筒Eが変位センサ440の測定位置を通過する際に、基準位置から貼り合わせ領域A1までの距離を測定する。測定は、1つの封筒Eについて複数回(例えば定形のもので10回程度)にわたり行うものとする。また距離の測定には、変位センサ440及び検査ユニット46の測定部48を用いることができる。
【0130】
〔検査工程〕
変位センサ440による複数回分の測定値の変化態様として、例えば連続する測定値D3,D3’の差(ΔD3=D3−D3’)を一通り演算し、その結果からフラップ部Fの接着状態を検査する。例えば、複数回分の測定値D3が順に10,20,60,40,10(単位はmm)であったとすると、これらの中で隣り合っている測定値の差ΔD3は、以下のようになる。
(1)20−10=10
(2)60−20=40
(3)40−60=−20
(4)10−40=−30
【0131】
〔距離の変化態様に基づく検査〕
差ΔD3の計算値は、搬送方向で隣り合う測定箇所間でのフラップ部Fの傾きを表している。検査に際しては、先ず差ΔD3の計算値の中から最大となるプラスの傾きを検索し、その最大のプラスの傾きよりも後の順番に絶対値で一定以上のマイナスの計算値があるか否かを調査する。
【0132】
その結果、一定以上のマイナスの計算値があれば、フラップ部Fに浮き上がりが生じていたと判断し、接着不良があると判定することができる。逆に、一定以上のマイナスの計算値がなければ、フラップ部Fに浮き上がりがなく、接着不良ではないと判定することができる。
【0133】
〔検査結果の具体例〕
以下に具体例として、(1)良品の検査結果、(2)不良品の検査結果をそれぞれ挙げる。
【0134】
(1)良品の検査結果
図17は、良品の封筒Eについて複数の測定箇所で取得した測定値D3と、隣り合う測定箇所間での傾き計算値(ΔD3=D3−D3’)を一覧にして示す表である。表の最上段には測定箇所番号として「1」〜「10」を示し、番号別のカラムには上から順に測定値D3、傾き計算値(番号順で隣り合う測定値の差)の演算結果を数値で示している。
【0135】
また
図18は、
図17の表に示される測定値D3を番号順にプロットしたグラフである。グラフの縦軸には測定値をとり、横軸には測定箇所番号を取っている。
【0136】
これら
図17及び
図18から明らかなように、この検査対象の封筒Eでは、最大のプラスの傾き計算値は「0.52」であるが、その後の順番にあるマイナスの計算値は「−0.22」,「−0.12」であり、特に顕著なマイナスの傾きが現れていないことがわかる。これは、検査対象の封筒Eにはフラップ部Fの浮き上がりが生じなかったことを表している。
【0137】
また、
図18に示される測定値D3のグラフから変化態様をみても、全ての測定箇所で測定値D3は安定していることがわかる。以上より、検査対象の封筒Eは良品と判定することができる。
【0138】
(2)不良品の検査結果
次に
図19は、不良品の封筒Eについての値を一覧にして示す表である。なお、接着不良箇所を有する不良品の封筒Eの態様は第1部と同様である。
【0139】
図20は、
図19の表に示される測定値D3を番号順にプロットしたグラフである。
これら
図19及び
図20から明らかなように、この検査対象の封筒Eでは、最大のプラスの傾き計算値は「3.21」であり、その後の順番に「−3.89」というマイナスの計算値がある。つまりこの場合、最大となるプラスの傾き計算値の後に、一定以上(例えば絶対値で2.5以上)のマイナスの計算値が存在している。これは、検査対象の封筒Eにフラップ部Fの浮き上がりが発生していることを表している。
【0140】
また、
図20に示される測定値D3のグラフから変化態様をみると、測定箇所の6番と7番で最大となるプラスの傾き(+ΔD3)があり、その後に顕著なマイナスの傾き(−ΔD3)が存在していることがわかる。したがって、今回は検査対象の封筒Eが不良品であると判定することができる。
【0141】
特にフローチャートとしては図示していないが、以上のような演算処理や判定処理は、検査ユニット46の演算部50及び判定部52の機能を用いて実行することができる。また測定値D3や傾き計算値等は、検査ユニット46のバッファメモリ等に記憶しておき、これを判定部52による処理に用いることができる。
【0142】
〔第2部のまとめ〕
以上のように、封緘済み封筒Eの検査装置100及びその検査方法によれば、厚みが異なる封筒Eが混在していても、封筒Eの厚みの違いによる影響を受けることなく、フラップ部Fの接着不良を正確に検査することができる。
【0143】
また、調整機構36bにより封筒押し込みローラ36の回転軸36aの位置(搬送面からの距離)を調整することで、封緘済み封筒Eの平均的な厚みが変化した場合にも容易に対応することができる。
【0144】
第2発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。一実施形態で挙げた搬送機構11や変形機構30の具体的な構成は一例であり、これらの構成部品を適宜に変更してもよい。
【0145】
また第1発明及び第2発明において、検査対象となる封筒Eのサイズやフラップ部Fの大きさ、厚み等は適宜に変更可能であり、多様な封筒Eを検査対象として発明を実施可能であることはいうまでもない。