特許第5912413号(P5912413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912413固体潤滑剤埋込型軸受およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912413
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】固体潤滑剤埋込型軸受およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20160414BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160414BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F16C33/10 D
   F16C17/02 Z
   F16C33/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-235503(P2011-235503)
(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公開番号】特開2013-92222(P2013-92222A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】大久保 健太郎
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭45−000002(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−014320(JP,U)
【文献】 特開昭52−050440(JP,A)
【文献】 実公昭26−002813(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を支持するための摺動面を備える固体潤滑剤埋込型軸受であって、
内周面または外周面に、一方の端面から他方の端面に向かう軸方向の溝が複数形成された円筒状の軸受本体と、
前記軸方向の溝の各々の内部を埋めるよう当該溝の各々に嵌入された複数の、前記軸方向に沿った棒状の固体潤滑剤と、を有し、
前記軸方向の溝が形成された前記内周面または前記外周面は、
前記軸方向の溝の前記内周面側または前記外周面側の開口に露出する前記固体潤滑剤とともに、前記摺動面を構成し、
前記軸方向の溝は、
前記摺動面上の前記開口部の溝幅が、前記軸方向に沿った平坦な溝底の溝幅より狭い台形状の径方向断面形状を有し、
前記棒状の固体潤滑剤は、
前記軸方向の溝の溝底に面接触する面を前記軸方向に有し、前記軸方向の溝と整合する台形状に形成されている
ことを特徴とする固体潤滑剤埋込型軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の固体潤滑剤埋込型軸受であって、
前記軸方向の溝は、前記軸受本体の一方の端面から他方の端面まで軸方向に連続して繋がっている
ことを特徴とする固体潤滑剤埋込型軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体潤滑剤埋込型軸受であって、
前記軸方向の溝は、所定の配列ピッチで、前記軸受本体の円周方向に複数配列されている
ことを特徴とする固体潤滑剤埋込型軸受。
【請求項4】
回転体を支持するための摺動面を備える固体潤滑剤埋込型軸受の製造方法であって、
円筒状の軸受本体の内周または外周面に当該軸受本体の一方の端面から他方の端面に向かう軸方向に沿って形成され、前記摺動面上の開口部の溝幅が、前記軸方向に沿った平坦な溝底の溝幅よりも狭い台形状の径方向断面形状を有する溝の各々に、当該溝の溝底に面接触する面を前記軸方向に有し、かつ、当該溝と整合する台形状に形成された固体潤滑剤を前記一方の端面あるいは前記他方の端面から嵌入し、
前記溝からの前記固体潤滑剤の露出面を、前記溝が形成された前記円筒状の軸受本体の内周面または外周面に沿って
ことを特徴とする固体潤滑剤埋込型軸受の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体潤滑剤埋込型軸受に関し、特に、摺動面に対する固体潤滑剤の埋込構造に関する。
【背景技術】
【0002】
固体潤滑剤埋込型軸受は、基体となる軸受本体の摺動面に固体潤滑剤が埋め込まれたすべり軸受であり、一般的なすべり軸受に対して、高荷重条件下で使用できる、耐久性および性能安定性に優れるなどの利点を有する。このような固体潤滑剤埋込型軸受において、摺動面に対する固体潤滑剤の埋込構造としては、摺動面に対して垂直に形成された貫通孔または止まり孔にプラグ状の固体潤滑剤が嵌入されたタイプ(例えば特許文献1の図5)、摺動面に形成された螺旋溝に、流動性を有する潤滑剤を流し込み、これを硬化させて固体潤滑剤としたタイプ(例えば特許文献2)などが知られている。しかし、後者のタイプは、使用可能な潤滑剤の種類に制限があり、汎用性に欠けることや、製造コストが高くなることなどから、前者のタイプの固体潤滑剤埋込型軸受が普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−166539号公報
【特許文献2】特開平6−200946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固体潤滑剤埋込型軸受に支持された軸がこの固体潤滑剤埋込型軸受に対して相対的に移動すると、軸表面と固体潤滑剤との摺動により、固体潤滑剤が軸表面をラップして潤滑する。したがって、軸表面の潤滑範囲は、軸と固体潤滑剤埋込型軸受との相対的な移動量によって決まる。例えば、固体潤滑剤埋込型軸受に対して軸が微小に回動する場合など、軸と固体潤滑剤埋込型軸受との相対的な回転量(円周方向の移動量)が円周方向における固体潤滑剤の配列ピッチよりも短いと、軸受本体の表面に固体潤滑剤でラップされない領域が生じる。このため、潤滑性が悪くなることがあり、これを防ぐには、円周方向における固体潤滑剤の配列ピッチを狭める必要がある。
【0005】
しかしながら、前者のタイプの固体潤滑剤埋込型軸受において、円周方向における固体潤滑剤の配列ピッチを狭めるには限界がある。すなわち、固体潤滑剤によるラップ領域を軸方向においてオーバーラップさせるため、円周方向の固体潤滑剤列が固体潤滑剤の直径よりも短いピッチで軸方向に複数列並ぶ必要がある。このため、円周方向の固体潤滑剤列において隣り合う固体潤滑剤の間に、軸方向においてこの固体潤滑剤列の上下段にある円周方向の固体潤滑剤列の固体潤滑剤が位置しなければならない。したがって、固体潤滑剤を嵌入するための孔を円周方向に狭ピッチで打ち抜くと、近接する孔間の距離が近くなり過ぎて軸受本体の強度が低下してしまう。
【0006】
また、前者のタイプの固体潤滑剤埋込型軸受では、固体潤滑剤埋込用の孔を軸受本体の摺動面に対して垂直に形成しているため、孔の内周面と固体潤滑剤の外周面との接触面積が固体潤滑剤埋込型軸受の肉厚(内周面(摺動面)から外周面までの厚み)に依存する。このため、軸受本体を薄肉化すると、固体潤滑剤との接触面積を十分に確保できずに、孔から固体潤滑剤が抜け落ち易くなる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持する軸の相対的な微小な回転に対して潤滑性がよく、かつ固体潤滑剤が抜け落ち難い固体潤滑剤埋込型軸受の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、軸受本体の内周面または外周面に、一方の端面から他方の端面に向かう軸方向の溝を複数形成し、これらの溝の内部を埋めるように、それぞれに溝に棒状の固体潤滑剤を嵌入した。
【0009】
例えば、本発明の一態様は、
回転体を支持するための摺動面を備える固体潤滑剤埋込型軸受であって、
内周面または外周面に、一方の端面から他方の端面に向かう軸方向の溝が複数形成された円筒状の軸受本体と、
前記軸方向の溝の各々の内部を埋めるよう当該溝の各々に嵌入された複数の、前記軸方向に沿った棒状の固体潤滑剤と、を有し、
前記軸方向の溝が形成された前記内周面または前記外周面は、
前記軸方向の溝の前記内周面側または前記外周面側の開口に露出する前記固体潤滑剤とともに、前記摺動面を構成し、
前記軸方向の溝は、
前記摺動面上の前記開口部の溝幅が、前記軸方向に沿った平坦な溝底の溝幅より狭い台形状の径方向断面形状を有し、
前記棒状の固体潤滑剤は、
前記軸方向の溝の溝底に面接触する面を前記軸方向に有し、前記軸方向の溝と整合する台形状に形成されている。
また、本発明の他の態様は、
回転体を支持するための摺動面を備える固体潤滑剤埋込型軸受の製造方法であって、
円筒状の軸受本体の内周または外周面に当該軸受本体の一方の端面から他方の端面に向かう軸方向に沿って形成され、前記摺動面上の開口部の溝幅が、前記軸方向に沿った平坦な溝底の溝幅より狭い台形状の径方向断面形状を有する溝の各々に、当該溝の溝底に面接触する面を前記軸方向に有し、当該溝と整合する台形状に形成されている固体潤滑剤を前記一方の端面あるいは前記他方の端面から嵌入し、
前記溝からの前記固体潤滑剤の露出面を、前記溝が形成された前記円筒状の軸受本体の内周面または外周面に沿って削る
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸受本体の摺動面に軸方向の溝を複数形成し、これらの溝の内部に固体潤滑剤が嵌込されるため、軸受本体に固体潤滑剤埋込用の孔を近接して打ち抜く必要がない。このため、従来に比べて軸受本体の強度をより高く保つことができ、また、固体潤滑剤の摺動面における円周方向の配列ピッチを狭くすることが可能となる。したがって、支持する回転体の相対的な微小な回転に対して、軸受本体の表面に生じる固体潤滑剤でラップされない部分を小さくできるため、支持する回転体の相対的な微小な回転に対する潤滑性を向上させることができる。また、軸受本体の溝は、その内壁と固体潤滑剤との接触面積を軸方向に長くとることができるので、軸受本体を薄肉化した場合でも、固体潤滑剤と軸受本体との接触面積を十分に確保することができ、このため、軸受本体の溝から固体潤滑剤を抜け落ち難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る固体潤滑剤埋込型軸受1の正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A断面図である。
図2図2(A)、(B)は、図1(A)のB部拡大図を用いて、固体潤滑剤埋込型軸受1における固体潤滑剤3の埋込方法を説明するための図である。
図3図3(A)、(B)は、図1(A)のB部拡大図に相当する部分拡大図を用いて、固体潤滑剤埋込型軸受1の変形例における固体潤滑剤3aの埋込方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る固体潤滑剤埋込型軸受1の正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A断面図である。
【0014】
図示するように、本実施の形態に係る固体潤滑剤埋込型軸受1は、鉄、銅合金等からなる金属製の軸受本体2と、軸受本体2に埋め込まれた複数の樹脂製の固体潤滑剤3と、を備えている。
【0015】
軸受本体2は、円筒状を有しており、その内周面21には、軸方向αに沿って、一方の端面23から他方の端面24に繋がる溝25が、円周方向βに所定の配列ピッチγで複数形成されている。各溝25は、軸受本体2の内周面21上の開口部26において、溝25の最大溝幅d2よりも小さな溝幅d1を有している(図2(B)参照)。本実施形態においては、各溝25の、軸方向αに垂直な断面は、内周面21上の開口部26によって一部が切り欠かれた円形状を有しており、開口部26における溝幅d1は、外周面22側(溝内部)27の位置における最大溝幅d2よりも狭くなっている。なお、軸受本体2の取扱いを容易にするため、軸受本体2の両側の端面23、24の内外周の縁部29を面取りしてもよい。
【0016】
固体潤滑剤3は、溝25の軸方向αに垂直な断面形状と整合する断面形状の棒状に成型されており、溝25の内部を埋めるように溝25に嵌入され、溝25の開口部26から一部露出している。これにより、軸受本体2の内周面21は、溝25の開口部26から露出した固体潤滑剤3とともに、軸受本体2に挿入された軸(不図示)を支持する摺動面を構成している。なお、固体潤滑剤3には、例えば、焼成された黒鉛単体からなるもの、焼成された黒鉛を含んだ樹脂製のもの、あるいは、インジウム、亜鉛、錫等の軟質金属、ワックス等の難接着性材料、および四フッ化エチレン樹脂を含んだ樹脂製のものなどが用いられる。
【0017】
つぎに、軸受本体2の内周面21に形成された各溝25への固体潤滑剤3の埋込方法について説明する。
【0018】
図2(A)、(B)は、図1(A)のB部拡大図を用いて、固体潤滑剤3の埋込方法を説明するための図である。
【0019】
図2(A)に示すように、軸受本体2の端面23、24のいずれか一方から溝25に円柱状の固体潤滑剤3を嵌入する。この際、冷やし嵌めにより固体潤滑剤3を溝25に嵌入するようにしてもよい。すなわち、金属の熱膨張係数よりも樹脂の熱膨張係数の方が大きいことを利用し、固体潤滑剤3を、ドライアイス等で冷却して軸受本体2の溝25に収まるよう十分に収縮させてから、溝25に挿入する。その後、常温に戻すことにより、固体潤滑剤3を膨張させて、固体潤滑剤3を溝25にしまり嵌めする。または、接着剤を使って固体潤滑剤3を溝25の内壁に接着させてもよい。
【0020】
つぎに、図2(B)に示すように、軸受本体2の端面23、24を切削加工することにより、固体潤滑剤3の端面31を軸受本体2の端面23、24に揃える。それから、軸受本体2の内周面21を切削加工することにより、軸受本体2の内周面21に形成された溝25の開口部26からの固体潤滑剤3の突出部分32を除去して、溝25の開口部26からの固体潤滑剤3の露出面33が軸受本体2の内周面21の表面形状に滑らかに揃うように仕上げる。
【0021】
このようにして、固体潤滑剤3が、軸受本体2の内周面21に形成された各溝25の内部を埋めるように、溝25の各々に嵌入される。
【0022】
以上、本発明の実施の形態を説明した。
【0023】
本実施の形態では、軸受本体2の内周面21に、一方の端面23から他方の端面24に連続して繋がる軸方向αの溝25を複数形成し、これらの溝25の内部を埋めるように、それぞれに溝25に棒状の固体潤滑剤3を嵌入している。
【0024】
このため、軸受本体2に、固体潤滑剤を埋め込むための複数の孔を近接して打ち抜く必要がないので、摺動面に対して垂直に形成された複数の貫通孔に固体潤滑剤を嵌入するタイプの従来の固体潤滑剤埋込型軸受に比べて、軸受本体2の強度をより高く保つことができる。そして、摺動面(軸受本体2の内周面21)において、固体潤滑剤3は、軸受本体2の一方の端面23から他方の端面24に達しており、また、円周方向βの配列ピッチγを狭くすることができる。これにより、支持する軸の相対的な微小な回転に対して、軸受本体2の表面に生じる固体潤滑剤3でラップされない部分を小さくできるので、支持する軸の相対的な回転に対する潤滑性を向上させることができる。
【0025】
また、軸受本体2と固体潤滑剤3との接触面積を軸方向αに長くとることができるので、軸受本体2を薄肉化した場合でも、固体潤滑剤3との接触面積を十分に確保することができる。このため、軸受本体2の溝25に嵌入された固体潤滑剤3を抜け落ち難くすることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、溝25の軸方向αに垂直な断面が、軸受本体2の内周面21上に形成された溝25の開口部26によって一部が切り欠かれた円形状を有しており、開口部26の溝幅d1が溝内部27の最大溝幅d2より小さくなっている。このため、固体潤滑剤3が溝25の開口部26から抜け落ちることはなく、したがって、軸受本体2の溝25に嵌入された固体潤滑剤3をさらに抜け落ち難くすることができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、一方の端面23から他方の端面24に連続して繋がる軸方向αの溝25を複数形成しているが、摺動面の軸方向中央付近にグリース溝となる凹所を作成し、両端面部から凹所端面部に向かって伸びた、凹所を介して繋ながっている溝形態であっても適用可能である。
【0028】
また、軸受本体2は円筒形状に限らず、例えば、円筒形状の半分からなる半円筒形状のような、回転体の外周面または内周面相補的な形状を一部分有する摺動面を具備した形態においても適用可能である。
【0029】
また、本実施の形態では、溝25の軸方向αに垂直な断面が、内周面21上に形成された溝25の開口部26によって一部が切り欠かれた円形状を有しているが、本発明はこれに限定されない。溝25は、軸受本体2の内周面21上の開口部26において、溝25の最大溝幅d2よりも小さな溝幅d1を有していればよく、溝25の軸方向αに垂直な断面形状は、円形以外の他の形状であってもよい。以下、固体潤滑剤埋込型軸受1の変形例として、円形以外の断面形状を有する溝25aが軸受本体21に形成された固体潤滑剤埋込型軸受について説明する。
【0030】
図3(A)、(B)は、図1(A)のB部拡大図に相当する部分拡大図を用いて、固体潤滑剤埋込型軸受1の変形例における固体潤滑剤3aの埋込方法を説明するための図である。
【0031】
この変形例に係る固体潤滑剤埋込型軸受では、溝25aの軸方向αに垂直な断面は、内周面21上の開口部26aにおける溝幅d1が溝内部27aの最大溝幅d2(溝25aの底面28における溝幅)よりも小さい台形状を有している。
【0032】
この固体潤滑剤埋込型軸受を作製するには、まず、図3(A)に示すように、軸受本体2の端面23、24のいずれか一方から溝25aに台柱状の固体潤滑剤3aを挿入する。この際、上記実施の形態と同様に、冷やし嵌めにより固体潤滑剤3aを溝25aにしまり嵌めするようにしてもよい。また、接着剤を使って固体潤滑剤3aを溝25aの内壁に接着させてもよい。つぎに、図3(B)に示すように、軸受本体2の端面23、24を切削加工することにより、固体潤滑剤3aの端面31aを軸受本体2の端面23、24に揃える。さらに、軸受本体2の内周面21を切削加工することにより、軸受本体2の内周面21に形成された溝25aの開口部26aからの固体潤滑剤3aの突出部分32aを除去して、溝25aの開口部26aからの固体潤滑剤3aの露出面33aが軸受本体2の内周面21の表面形状に滑らかに揃うように仕上げる。
【0033】
このようにして、固体潤滑剤3aが、軸受本体2の内周面21に形成された各溝25aの内部を埋めるように、溝25aの各々に嵌入される。
【0034】
なお、以上説明した実施形態においては、軸受本体2の内周面21に形成した溝25、25aに固体潤滑剤3、3aを嵌入しているが、プーリ等の回転体を外周面で回転可能に支持する固体潤滑剤埋込型軸受については、軸受本体2の一方の端面23から他方の端面24に達する軸方向αの溝を、複数、円周方向βに所定の配列ピッチで軸受本体2の外周面22に形成し、これらの溝の内部に固体潤滑剤を埋め込めばよい。この場合においても、上記の実施形態と同様、各溝は、開口部における溝幅が溝内部の最大溝幅よりも狭い断面形状(例えば、円形状、台形状)を有している。
【符号の説明】
【0035】
1:固体潤滑剤埋込型軸受、2:軸受本体、3、3a:固体潤滑剤、21:軸受本体、2の内周面、22:軸受本体2の外周面、23、24:軸受本体2の端面、25、25a:溝、26、26a:溝25、25aの開口部、27、27a:溝内部、28:溝25aの底面、29:軸受本体2の縁部、31、31a:固体潤滑剤3、3aの端面、32、32a:固体潤滑剤3、3aの突出部分(切削部分)、33、33a:溝25、25aの開口部26、26aからの固体潤滑剤3、3aの露出面
図1
図2
図3