(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロボットによりワークを把持又は吸着して移動させる場合、ワークが収納ケースにバラ積み状態で収容されており、その中からワークを取り出して治具等に整列状態にセットする場合がある。
【0008】
上記のターレットハンドでは、ワークの形状又は姿勢に応じて、ターレットを回転させて複数のハンドの中からハンドを選択してワークを把持可能であるが、ターレットとその複数のハンドによりロボットハンド装置が大型化してしまう。そのため、収納ケースの奥部や隅部にあるワークの取り出しが困難であったり、収納ケース又はその収納ケース内のワークとロボットハンド装置が干渉してしまうこともある。
【0009】
上記のツールチェンジャハンドでは、ワークの形状又は姿勢に応じてツールチェンジャから対応するハンドを選択してこのハンドをロボットアームの先端部に着脱するため、ハンドの選択と着脱に時間がかかるうえ、ロボットアームの先端部に取り付けた1つのハンドで1つのワークを把持するため、取り出し作業の高速化は到底困難であるうえ、ツールチェンジャの製作費が高価になる。
【0010】
特許文献1のパラレルロボットにおいては、複数の移動ブロックを装備したワークピッチ可変装置が大型になるため、収納ケースからのワークの取り出し等に適したものではなく、複数の移動ブロックの高さ位置が一定でありワークに応じて変更できないため、バラ積み状態のワーク等に対処できない。
【0011】
特許文献2のロボットアームに取り付けるワーククランプ装置は、段差付きの1つのワークを複数のハンドで吸着固定するものであり、2つのエアシリンダを並列状に配置したものである。そのため、ワーククランプ装置に1種類の複数の吸着パッドを装備しているため、形状や姿勢の異なる種々のワークを取り出す等の作業に適したものではなく、複数のワークの同時取り出し等に適したものではない。
【0012】
本発明の目的は、複数のハンドに複数のワークを順に把持しそれらを一括して取り出して移動可能なロボットハンド装置を提供すること、独立に伸縮させて狭隘空間にも挿入可能な複数の伸縮部材の先端部にハンドを夫々設けたロボットハンド装置を提供すること、
複数種類の形状や姿勢のワークを把持可能な複数種類のハンドを装備して並行的に使用可能なロボットハンド装置を提供すること等である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のロボットハンド装置は、複数のハンドを有するロボットハンド装置において、ロボットアームの先端の手首部の
回転軸心と直交する取付け面に固定され
、この取付け面に対して垂直方向に延びるように設けられた本体部材と、前記本体部材に夫々独立に
前記本体部材が延びる方向に伸縮可能に設けられた複数の伸縮機構と、前記複数の伸縮機構の伸縮部材の先端部に夫々設けられた複数のハンドとを備え
、前記伸縮機構は、前記伸縮部材と、前記本体部材に対して前記伸縮部材を昇降自在に且つ水平方向へ移動不能に案内する案内機構であって、前記本体部材の外側面部に設けられた案内機構と、前記伸縮部材を本体部材に対して昇降駆動可能な駆動シリンダ手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項2のロボットハンド装置は、請求項1の発明において、前
記複数の伸縮機構は、前記本体部材に前記手首部の回転軸心を中心として周方向に等間隔になるように配置されたことを特徴としている。
【0015】
請求項3のロボットハンド装置は、請求項1又は2の発明において、前記複数のハンドは、複数種類の形状又は姿勢のワークに対応する複数種類のハンドを含むことを特徴としている。
【0016】
請求項4のロボットハンド装置は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記駆動
シリンダ手段は、エアシリンダ
であることを特徴としている。
【0017】
請求項5のロボットハンド装置は、請求項4の発明において、前記エアシリンダのピストンロッドを進出側へ又は退入側へ弾性付勢する弾性部材を備えていることを特徴としている。
【0018】
請求項6のロボットハンド装置は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、前記複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御する駆動制御手段と、前記複数のハンドで把持する把持対象のワークをバラ積み状態に収納した収納エリアを撮像する撮像手段とを有し、前記撮像手段で前記収納エリアを撮像する毎に、前記駆動制御手段が撮像手段から受ける画像情報に基づいて前記複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御して複数のハンドにより複数のワークを把持することを特徴としている。
【0019】
請求項7のロボットハンド装置は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、前記複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御する駆動制御手段と、前記複数のハンドで把持する把持対象のワークのベルトコンベアによる搬送状態を撮像する撮像手段とを有し、前記撮像手段で前記ワークの搬送状態を撮像し、前記駆動制御手段が前記ワークの前記ロボットアームによる搬送の搬送先の収納情報と前記撮像手段から受ける画像情報とに基づいて、前記手首部の位置及び旋回角度を制御しながら複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御して、複数のハンドにより複数のワークの平面視における姿勢を揃えながら把持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明(ロボットハンド装置)によれば、ロボットアームの先端の手首部の
回転軸心と直交する取付け面に固定され
、この取付け面に対して垂直方向に延びるように設けられた本体部材と、本体部材に夫々独立に伸縮可能に設けられた複数の伸縮機構と、複数の伸縮機構の伸縮部材の先端部に夫々設けられた複数のハンドとを備え
、伸縮機構は、伸縮部材と、本体部材に対して伸縮部材を昇降自在に且つ水平方向へ移動不能に案内する案内機構であって、本体部材の外側面部に設けられた案内機構と、伸縮部材を本体部材に対して昇降駆動可能な駆動シリンダ手段とを備えたので、
伸縮機構の動作を円滑で高精度にすることができ、収納ケース内にバラ積みされたワークを取り出すような作業を行う場合、複数の伸縮機構の伸縮部材を順々に伸長させてそのハンドでワークを把持するのを繰り返して、複数のハンドにワークを把持した状態でロボットアームを移動させることにより、一度の取り出し動作で複数のワークを取り出せるため、作業能率を格段に高めることができる。
【0021】
ロボットアームの先端側には、伸長状態の伸縮部材の先端に1つのハンドがあるだけで、その他のハンドは収縮状態の伸縮部材により退避した位置に保持されるため、その他のハンドと収納ケースやその内部のワークとの干渉を避けることができ、収納ケースの奥部や隅部などの狭隘スペースからのワークの取り出しが可能となる。しかも、複数のハンドをワークの形状や姿勢に応じた複数種類のハンドとすることができるため、ロボットハンド装置でワークを把持する性能を高め、汎用性を高めることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば
、複数の伸縮機構は、本体部材に手首部の回転軸心を中心として周方向に等間隔になるように配置されたので、複数の伸縮機構を全体としてコンパクトに構成でき、手首の回転を介してハンドの位置を制御する面でも有利である。
【0023】
請求項3の発明によれば、複数のハンドは、複数種類の形状又は姿勢のワークに対応する複数種類のハンドを含むので、これら複数種類のハンドによって、複数種類の形状又は姿勢のワークの取り出し作業を容易に行うことができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、
駆動シリンダ手段はエアシリンダであるので、エアシリンダの駆動力によって伸縮部材を伸縮駆動することができ、伸縮機構の動作を円滑で高精度、高速化することができ、構成を簡単化できる。
【0025】
請求項5の発明によれば、伸縮機構は、エアシリンダのピストンロッドを進出側へ又は退入側へ弾性付勢する弾性部材を備えているので、エアシリンダへの加圧エアの供給ラインを1系統減らすことができる。また、進出側又は退入側への伸縮部材の動作を高速化することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、撮像手段で収納エリアを撮像する毎に、駆動制御手段が撮像手段から受ける画像情報に基づいて複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御して複数のハンドにより複数のワークを把持するので、画像情報によって収納エリアからワークを取り出す為の最適なエリアを選択して、ワークを取り出すように制御することができる。
【0027】
請求項7の発明によれば、撮像手段でワークの搬送状態を撮像し、駆動制御手段がワークのロボットアームによる搬送の搬送先の収納情報と撮像手段から受ける画像情報とに基づいて、手首部の位置及び旋回角度を制御しながら複数の伸縮機構を夫々独立に駆動制御して、複数のハンドにより複数のワークの平面視における姿勢を揃えながら把持するので、ロボットアームによる搬送の搬送先で、ロボットアームの手首部をワーク把持状態のハンド毎に旋回させる必要がなくなり、複数のワークを搬送先に迅速に載置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
先ず、ロボットハンド装置1の全体構成について説明する。
図1〜
図10に示すように、ロボットハンド装置1は、本体部材2と、この本体部材2に設けられた同構造の3組の伸縮機構3と、これら3組の伸縮機構3の伸縮部材35の先端部に取り付けられた複数種類の形状又は姿勢のワークW1を把持可能な複数種類のハンド4A,4B,4Cとを備えている。このロボットハンド装置1は、垂直多関節ロボットや水平多関節ロボット等のロボットアームAの先端に手首部Wを介して回転軸心Sの回りに回転駆動可能に設けられるものである。
【0031】
以下では、ロボットハンド装置1は、縦向きの基準姿勢にした場合を例として説明する。尚、
図1,
図2においては、ロボットハンド装置1の1組の伸縮機構3とハンド4Aのみ図示し、それ以外の伸縮機構3とハンド4B,4Cの図示は省略している。また、伸縮機構3とハンド4A,4B,4Cの数は3組に限定される訳ではなく、2組でもよく、4組以上でもよいが、本実施例では3組の場合を例にして説明する。
【0032】
次に、本体部材2について説明する。
図1〜
図3に示すように、本体部材2は、ロボットアームAの手首部Wの取付け面Fに固定された上端板部材31、この上端板部材31の下面に固定された三角筒部材32、三角筒部材32の外周部に固定された3つの連結板33、3つの連結板33の下端部に固定された環状部材34とで構成されている。本体部材2は、ロボットアームAの手首部Wの取付け面F(手首部Wの回転軸心Sと直交している)に対して垂直下方(鉛直下方)へ延びるように設けられている。
【0033】
上端板部材31は円板で構成されている。この上端板部材31は、手首部Wの取付け面Fに下方から当接させ、ピン部材により位置決めした状態で、複数のボルト31aにより取付け面Fに固定されている。上端板部材31の下面に、三角筒部材32の上端部の上端鍔部32cが複数のボルト32dにより固定されている。
【0034】
三角筒部材32は、本体部材2の全長の約40〜50%程度の長さを有する。この三角筒部材32の外形の形状は、正三角形の角部を円弧状にした三角形的形状であり、3つの辺部に相当する3つの固定面32aが周方向に等間隔に形成されている。三角筒部材32は手首部Wの回転軸心Sと共通の軸心を有する。固定面32aは回転軸心Sと平行な鉛直面である。三角筒部材32の中心部分には円筒孔32bが形成されている。
【0035】
連結板33は、三角筒部材32の全長の約2.5倍の長さを有し、固定面32aとほぼ同幅の帯状の板部材である。3つの連結板33の各々において、連結板33の上部が固定面32aに当接させた状態で、複数のボルト33aで固定面32aに固定され、三角筒部材32の下方へ延びている。こうして、3つの連結板33が周方向に等間隔に配置されている。環状部材34は、三角筒部材32と同様の外形形状と3つの固定面34aを有する。各辺部の固定面32aと固定面34aは共通の鉛直面上にあり、3つの連結板33の下端部が3つの固定面34aに複数のボルトで夫々固定されている。
【0036】
次に、伸縮機構3について説明する。
図1〜
図3に示すように、3組の伸縮機構3は、本体部材2に夫々独立に伸縮可能に且つ周方向3等分位置に設けられている。これら3組の伸縮機構3は、本体部材2にロボットアームAの手首部Wの回転軸心Sを中心として周方向に等間隔になるように配置されている。これらの伸縮機構3は、ハンド駆動制御ユニット(駆動制御手段、図示略)によって夫々独立に駆動制御されるものである。尚、3組の伸縮機構3は、全て同じ構成なので、以下では、1組の伸縮機構3についてのみ説明する。
【0037】
図1〜
図3に示すように、伸縮機構3は、手首部Wの回転軸心Sと平行方向に延びる伸縮部材35と、この伸縮部材35と伸縮部材35の先端部に連結されたハンド4Aを回転軸心Sと平行方向に案内するリニアガイド36と、伸縮部材35を伸縮駆動するエアシリンダ37などを備えている。
【0038】
上記の伸縮部材35は、連結板33とほぼ同幅の板部材であり、リニアガイド36のガイドレール36aよりも幾分短く形成され、ガイドレール36aの外側近傍に平行に配設されている。伸縮部材35の上端部がリニアガイド36のスライダ36bにボルト35aで固定され、伸縮部材35はリニアガイド36によって前記回転軸心Sと平行方向に低摩擦で円滑に移動するように案内される。伸縮部材35の先端部(下端部)にハンド4Aが取り付けられている。
【0039】
図1,
図2に示すように、リニアガイド36は、手首部Wの取付け面Fと直交する方向に延びるガイドレール36aと、ガイドレール36aに上下方向に摺動自在に係合されたスライダ36bとを備えている。ガイドレール36aは、連結板33の下半部分の外面に複数のボルトで固定されている。スライダ36bは
図1に実線で示す上限位置と、2点鎖線で示す下限位置とに亙って昇降可能に構成されている。スライダ36bが上限位置のとき伸縮部材33は収縮状態になり、スライダ36bが下限位置のとき伸縮部材33が伸長状態になる。
【0040】
次に、エアシリンダ37について説明する。
図1,
図2に示すように、複動型のエアシリンダ37は、シリンダ本体38と、シリンダ本体38内のピストン部から下方へ延びてシリンダ本体38から突出しているピストンロッド39とを備えている。このエアシリンダ37は、連結板33の上半部分の外側に間隔を空けて回転軸心Sと平行に配設されている。シリンダ本体38内のピストン部の上側に往動作動室が形成され、ピストン部の下側に復動作動室が形成されている。
【0041】
シリンダ本体38の上端部の端壁部材38aには、往動作動室に連通した加圧エアポート38cが形成され、シリンダ本体38の下端部の端壁部材38bには、復動作動室に連通した加圧エアポート38dが形成され、これら加圧エアポート38c,38dは、加圧エア供給ホース(図示略)により加圧エア供給源に夫々接続されている。ピストンロッド39を伸長させる際には、往動作動室に加圧エアを供給し、復動作動室の加圧エアを排出する。上記と反対に、ピストンロッド39を伸長させる際には、復動作動室に加圧エアを供給し、往動作動室の加圧エアを排出する。
【0042】
シリンダ本体38の上端側の端壁部材38aは、L形金具40とスペーサ41を介して連結板33の上端部に固定され、シリンダ本体38の下端側の端壁部材38bは、L形金具42とスペーサ43を介して連結板33の中段部に固定されている。
【0043】
ピストンロッド39の下端部を伸縮部材35に固定するため、伸縮部材35の中段部において、伸縮部材35の外面に連結台44が固定され、この連結台44の水平な上面に連結ブロック45が固定され、ピストンロッド39の下端部が連結ブロック45にナットを含むネジ結合46にて連結されている。連結台44は、2枚のブラケット44aと、これらブラケット44aの上端に固着された水平板44bとで構成されている。
【0044】
次に、3種類のハンド4A,4B,4Cについて説明する。
図1〜
図10に示すように、本実施例のロボットハンド装置1においては、収納ケース内にバラ積みされた状態の種々の姿勢のワークW1を把持する為に、3種類のハンド4A,4B,4Cが3組の伸縮部材35の先端に夫々設けられている。
【0045】
ハンド4Aは縦向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持可能なハンドであり、ハンド4Bは横向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持可能なハンドであり、ハンド4Cは横向きに配置されたワークW1の大径部W1bを把持可能なハンドである。
【0046】
ハンド4A,4Bは、同様の構成のものであるので、最初にハンド4Aの構成について説明する。
図1〜
図5に示すように、ハンド4Aは、ハンド本体50と、このハンド本体50内に設けられたハンド駆動機構(図示略)と、このハンド駆動機構によって開閉駆動されてワークW1を把持可能な1対の爪部材51,52とを備えている。
【0047】
ハンド本体50は直方体状の箱体に構成され、このハンド本体50は伸縮部材35の下端部の外面に複数のボルト50aで固定されている。ハンド本体50の内部のハンド駆動機構は、小型の複動型エアシリンダにより1対の爪部材51,52を開閉駆動するように構成してある。上記のエアシリンダに加圧エアを供給・排出する為の2つの加圧エアポート50b,50cがハンド本体50に設けられ、これら2つの加圧エアポート50b,50cは、加圧エア供給ホース(図示略)を介して加圧エア供給源に夫々接続されている。
【0048】
ハンド駆動機構で開閉駆動される1対の平行な出力部材53,54がハンド本体50から下方へ縦向きに突出する状態に設けられ、これら1対の出力部材53,54に1対の爪部材51,52が複数のボルト51a,52aにより夫々固定されている。
【0049】
1対の爪部材51,52は側面視L形に形成され、爪部材51,52の上部には出力部材53,54の外面に固定される固定部51b,52bが形成され、爪部材51,52の下部には固定部51b,52bよりも回転軸心Sと反対側へ突出し且つワーク把持側の内面が出力部材53,54の内面とほぼ同一面とされた爪部51c,52cが形成されている。
【0050】
1対の爪部材51,52において、爪部51c,52cの内面部分には、縦向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持可能なV溝状の縦溝部55,56と、この縦溝部55,56と直交状の横溝部57,58であって、横向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持可能な横溝部57,58とが形成されている。
【0051】
これらハンド4A,4BによりワークW1を把持する場合、ハンド本体50内のエアシリンダへの加圧エアの供給・排出を制御することにより、伸長状態のエアシリンダを収縮動作させると、1対の出力部材53,54及び1対の爪部材51,52が相接近するように閉駆動され、ワークW1を把持することができる。
【0052】
縦向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持する場合は、
図1〜
図3に示すように、縦溝部55,56間にワークW1の縦向きの軸部W1aを挟持することでワークW1を把持する。横向き姿勢のワークW1の軸部W1aを把持する場合は、
図4、
図5に示すように、横溝部57,58間にワークW1の横向きの軸部W1aを挟持することでワークW1を把持する。
【0053】
ワークW1の把持を解除する場合には、前記のエアシリンダへの加圧エアの供給・排出を制御することにより、収縮状態のエアシリンダを伸長動作させると、1対の出力部材53,54及び1対の爪部材51,52が相離隔するように開駆動され、ワークW1の把持を解除することができる。
【0054】
尚、斜め姿勢のワークW1を把持可能にする為に、
図6に示すように、ハンド4Aを爪部51c,52cが斜め上方に向くように傾斜状に伸縮部材35に固定しても良い。同様に、ハンド4Aをその爪部51c,52cが先端側が斜め下方に向くように傾斜状に伸縮部材35に固定しても良い。
【0055】
次に、ハンド4Cについて説明する。
図7〜
図9に示すように、ハンド4Cは、ハンド本体60と、このハンド本体60に設けられたエアシリンダを含むハンド駆動機構と、このハンド駆動機構で開閉駆動される1対の出力部材61,62と、ハンド駆動機構により出力部材61,62を介して開閉駆動されてワークW1を把持可能な1対の爪部材63,64とを備え、横向き姿勢のワークW1の大径部W1bを把持するものである。ハンド本体60と出力部材61,62とハンド駆動機構は、ハンド4A,4Bのものと同様であるのでそれらについての説明は省略し、1対の爪部材63,64について説明する。尚、
図7における左右方向を左右方向として説明する。
【0056】
1対の爪部材63,64は、平行に配置されたほぼクランク形状に構成されている。
図7、
図8に示すように、右側の爪部材63は、上部の固定部65と、水平板部66と、縦向きの爪部67と、補強用の複数のリブなどで一体的に構成されている。固定部65は縦向きの板部材からなり、その上端部が出力部材61の外面に複数のボルト65aにより固定されている。水平板部66の右端部が固定部65の下端に固定され、爪部67は水平板部66の左端部分に固定されている。
【0057】
爪部67は、ワークW1の軸部W1aを下方から導入可能なアーチ形の開口部67aとその両側の1対の爪部本体67bとを有する縦板67cであって出力部材61と平行な縦板67cと、この縦板67cの1対の爪部本体67bの右端面と水平板部66とに固定された1対の補強リブ67dとで構成されている。尚、アーチ形の開口部67aの幅はワークW1の軸部W1aの直径よりも大きく、大径部W1bの直径よりも小さい。
【0058】
図7、
図9に示すように、左側の爪部材64は、上部の固定部68と、水平板部69と、縦向きの爪部70と、補強用の複数のリブなどで一体的に構成されている。固定部68は縦向きの板部材からなり、その上端部が出力部材62の外面に複数のボルト68aにより固定されている。水平板部69の右端部が固定部68の下端部に固定され、爪部70は水平板部69の左端部分に固定されている。
【0059】
爪部70は、ワークW1の軸部W1aを下方から導入可能なアーチ形の開口部70aとその両側の1対の爪部本体70bとを有する縦板70cであって出力部材62と平行な縦板70cと、この縦板70cの1対の爪部本体70bの左端面と水平板部69とに固定された1対の補強リブ70dとで構成されている。尚、アーチ形の開口部70aの幅はワークW1の軸部W1aの直径よりも大きく、大径部W1bの直径よりも小さい。
【0060】
水平板部69は、爪部材63の水平板部66よりも上側に配置され、爪部70は、爪部材63の爪部67に左方から対向しており、爪部70のアーチ形の開口部70aにワークW1の軸部W1aを下方から導入すると共に、爪部67,70の間にワークW1の大径部W1bを位置させた状態で、ハンド駆動機構により1対の爪部材63,64を接近させることにより、
図7に示すように爪部67と爪部70とでワークW1の大径部W1bを把持することができ、ワークW1の取り出し後に1対の爪部材63,64を離隔方向へ駆動することにより、ワークW1に対する把持を解除可能に構成されている。
【0061】
尚、爪部67にも、アーチ形の開口部67aが形成されているため、その開口部67aにワークW1の軸部W1aを下方から導入し、爪部67と爪部70との間にワークW1の大径部W1bを位置させた状態にした場合にも、ワークW1を把持することができる。
尚、
図10に示すように、ハンド4Cの爪部67と爪部70によって傾斜姿勢のワークW1の大径部W1bを把持して、ワークW1を取り出すこともできる。
【0062】
次に、本発明のロボットハンド装置1の作用、効果について説明する。
最初に、図示しないロボット制御ユニットによりロボットアームAを駆動制御して、ロボットアームAを待機位置に移動させ、ハンド駆動制御ユニット(駆動制御手段)によりロボットハンド装置1を駆動制御することにより、3組のエアシリンダ37の各々の復動作動室に加圧エアを供給するとともに、各々の往動作動室の加圧エアを排出することで、
図1に示すように、3組の伸縮部材35を上限位置へ復帰させた初期状態にする。
【0063】
次に、ロボット及びロボットハンド装置1により、収納ケース内にバラ積みされた状態の種々の姿勢のワークW1の取り出しを行う場合、1度の取り出し毎に、ロボットアームA側に装備された撮像機器により収納ケース内を撮像し、その画像情報に基づいて把持対象のワークW1を決定し、ロボットアームAの位置を制御し、ロボットハンド装置1を動作させる。
【0064】
この場合、ロボットアームAを収納ケースの上方に移動させ、撮像機器により撮像を行なってから 第1のハンド4Aで把持可能な縦向き姿勢(又は横向き姿勢)の第1のワークW1を決定し、次にロボットアームAの手首部Wを回転駆動して、第1のハンド4Aを把持対象の第1のワークW1の上方に位置させる。
【0065】
次に、第1のエアシリンダ37の往動作動室に加圧エアを供給すると共に、復動作動室の加圧エアを排出しながら第1の伸縮部材35を伸長させ、第1のハンド4Aで第1のワークW1の軸部W1aを把持する。
【0066】
次に、上記の第1のエアシリンダ37により第1の伸縮部材35と第1のハンド4Aを上昇させてから、前記と同様にロボットアームAの移動及び/又は手首部Wの回転を介して第2のハンド4Bを横向き姿勢(又は縦向き姿勢)のワークW1の上方に位置させ、第2のエアシリンダ37を伸長させて第2のハンド4Bで第2のワークW1の軸部W1aを把持してから、第2の伸縮部材35と第2のハンド4Bを上昇させる。
【0067】
以下同様にして、第3のハンド4Cに横向きに配置されたワークW1の大径部W1bを把持させ且つ上昇位置に保持し、その後、ロボットアームAによりロボットハンド装置1を、目的位置へ移動させて、第1〜第3のハンド4A,4B,4Cで把持した第1〜第3のワークW1を目的位置のパレット上に整列させた状態に載置する。
【0068】
このように、ワークの取り出し作業を3個ずつのワークを単位として行うことができるため、ワークの取り出し作業を能率的に行うことができる。つまり、複数の伸縮機構3の伸縮部材35を順々に伸長させてそのハンド4A,4B,4CでワークW1を把持するのを繰り返して、複数のハンド4A,4B,4CにワークW1を把持した状態でロボットアームAを動作させることにより、一度の取り出し動作で複数のワークW1を取り出せるため、作業能率を格段に高めることができる。
【0069】
ここで、複数のワークW1が、バラ積み状態で収納ケースに収納されている場合、収納ケース内が仕切り板で区画されている場合など、収納ケース及び/又は仕切り板の隅部などの狭隘空間、収納ケース及び/又は仕切り板とワークW1の間の狭隘空間、ワークW1とワークW1の間の狭隘空間などに、ハンド4A,4B,4Cを挿入して把持することも必要である。
【0070】
ロボットアームAの先端側には、伸長状態の伸縮部材35の先端に1つのハンド4Aがあるだけで、その他のハンド4B,4Cは収縮状態の伸縮部材35により退避した位置に保持されるため、その他のハンド4B,4Cと収納ケースやその内部のワークW1との干渉を避けることができ、収納ケースの奥部や隅部などの狭隘空間からのワークW1の取り出しが可能となる。しかも、複数のハンド4A,4B,4CとしてワークW1の形状や姿勢に応じた複数種類のハンド4A,4B,4Cを採用することができるため、ロボットハンド装置1でワークW1を把持する性能を高め、汎用性を高めることができる。
【0071】
複数の伸縮機構3は、本体部材2に手首部Wの回転軸心Sを中心として周方向に等間隔になるように配置されたので、複数の伸縮機構3をコンパクトに配置することができ、ロボットハンド装置1の小型化を図ることができ、手首部Wの回転を介して伸縮機構3の位置を制御できるため制御上も有利である。
【0072】
このロボットハンド装置1は、複数種類の形状又は姿勢のワークW1に対応する複数種類のハンド4A,4B,4Cを備えているので、これら複数種類のハンド4A,4B,4Cによって、複数種類の形状(軸部、大径部)又は姿勢(縦向き、横向き、斜め向き)のワークW1の取り出し作業を容易に実行することができる。
【0073】
伸縮機構3は、伸縮部材35と、伸縮部材35とこの伸縮部材35の先端部に連結されたハンド4A,4B,4Cを手首部Wの回転軸心Sと平行方向に案内するリニアガイド36と、この伸縮部材35を伸縮駆動するエアシリンダ37とを備えているため、エアシリンダ37の駆動力によって伸縮部材35を駆動することができ、伸縮機構3の動作を円滑で高精度、高速化することができ、構成を簡単化できる。
【実施例2】
【0074】
次に、実施例1のロボットハンド装置1に適用可能なバラ積み状態のワークの取り出し処理の一例について説明する。
【0075】
図11に示すように、本実施例のロボットハンド装置1Aは、ロボットハンド装置1の伸縮機構3と同様の2組の伸縮機構3Aを本体部材2Aの両側部に装備したものである。2組の伸縮機構3Aの伸縮部材35Aの先端部(下端部)には、ハンド4A,4Bが夫々取り付けられている。
【0076】
この本体部材2Aの下端部の中央部には、撮像用のカメラ70(撮像手段に相当する)が下向きに設けられており、ロボットハンド装置1Aを収納ケース71の上方の所定高さ位置に保持した状態で、このカメラ70により収納ケース71内の収納エリアの全体を撮像可能になっている。尚、カメラ70の取付位置は、本体部材2Aの下端部に限定する必要はなく、本体部材2Aの近傍部に設けるようにしても良いし、収納ケース71内の収納エリアの全体を撮像可能であれば取付位置は特に限定しない。
【0077】
図12に示すように、ロボットを制御するロボット駆動制御ユニット72は、ロボットの第1〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・などを制御するものであり、ハンド駆動制御ユニット73は2組の伸縮機構3Aのエアシリンダ37Aを独立に駆動制御すると共に、ハンド4A,4Bを独立に駆動制御するものである。ハンド駆動制御ユニット73はロボット駆動制御ユニット72に接続されている。ロボット駆動制御ユニット72とハンド駆動制御ユニット73とが、駆動制御手段に相当する。
【0078】
伸縮機構3Aのエアシリンダ37Aの駆動制御は、加圧エア供給源のバルブ類の制御を介して行われる。ハンド4A,4Bの駆動制御は、加圧エア供給源のバルブ類の制御と、真空ポンプ及びバルブ類の制御を介して行われる。カメラ70で撮像した画像データはロボット駆動制御ユニット72へ供給される。尚、本実施例のロボットは7軸の多関節ロボットを例にして説明するが、7軸のロボットに限らず5軸、6軸のロボットでもよく、多関節ロボット以外のロボットでもよい。
【0079】
次に、ロボット駆動制御ユニット72とハンド駆動制御ユニット73により実行されるバラ積み状態のワークの取り出し制御について、
図13のフローチャートに基づいて説明する。このワークの取り出し制御の制御プログラムは、ロボット駆動制御ユニット72のコンピュータの記憶部(例えば、ROM)に予め格納されている。尚、図中Si(i=1,2・・・)は各ステップを示す。
【0080】
先ず、ロボットハンド装置1Aによるバラ積み状態の複数のワークW2を取り出す制御が開始されると、ロボットアームAの位置を制御することにより、カメラ70を収納ケース71の真上に移動させ、
図11に示す位置よりも上方の所定高さ位置にカメラ70を保持した状態で、複数のワークW2をバラ積み状態に収納した収納ケース71内の収納エリアの全体をカメラ70により撮像する(S1)。このカメラ70により撮像された画像データは、ロボット駆動制御ユニット72に供給されてコンピュータの揮発性の記憶部(例えば、RAM)に一時的に格納される。
【0081】
次に、ロボット駆動制御ユニット72において、カメラ73から供給された画像データから収納エリア内における複数のワークW2の形状や姿勢を解析して記憶する(S2)。次に、複数のワークW2の形状や姿勢と関連付けて収納ケース71内の収納エリアを2組のハンド4A,4Bに夫々対応する2つの分割エリアA,Bに分割して、その分割エリアA,Bに関するデータを記憶する(S3)。
【0082】
このワークの取り出し制御においては、カメラ70による1回の撮像情報に基づいて、2組のハンド4A,4Bによる2個のワークW2の取り出しを行う関係上、一方の分割エリアAからワークW2を取り出した際に、分割エリアAのバラ積み状態のワークW2の一部が崩れる可能性があるが、このワークW2の崩れが他方の分割エリアBに影響を及ぼさないように収納エリアを分割する。
【0083】
次に、ロボット駆動制御ユニット72により第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・・を駆動制御してロボットアームAの位置を制御し、ハンド4Aを分割エリアAの上方に移動させ且つハンド4Aを把持対象となるワークW2の上方に移動させる(S4)。
【0084】
次に、分割エリアAからワークW2を取り出す為に、ハンド駆動制御ユニット73により伸縮機構3Aの伸縮部材35Aを把持対象のワークW2へ向けて伸長させ(S5)、ハンド駆動制御ユニット73を制御して、左側のハンド4AにワークW2を把持させ(S6)、次に、伸縮部材35Aを上方へ収縮動作させることで、ワークW2を分割エリアAから取り出す(S7)。
【0085】
次に、S8においてワークW2の取り出し作業が完了したか否かを判定し、Noの場合、S9に移行し、第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・・を駆動制御して、ロボットアームAの位置を制御し、ハンド4Bを分割エリアBの上方に移動させ且つハンド4Bを把持対象となるワークW2の上方に移動させる(S4)。
【0086】
次に、分割エリアBのワークW2をハンド4Bで取り出す為に、ハンド駆動制御ユニット73により伸縮機構3Aの伸縮部材35Aを把持対象のワークW2へ向けて伸長させ(S5)、ハンド駆動制御ユニット73の制御を介して、右側のハンド4BにワークW2を把持させ(S6)、次に、伸縮部材35Aを上方へ収縮動作させることで、ワークW2を分割エリアBから取り出す(S7)。
【0087】
次に、ハンド4A,4Bによって収納エリアから複数のワークW2の取り出し作業が完了したか否かを判定し(S8)、Yesの場合、S10に移行し、第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・・を駆動制御して、ロボットアームAの位置を制御し、左右のハンド4A,4Bで夫々把持した2つのワークW2を所定の場所に移動させて所定のパレット上に載置台する。
【0088】
次に、ワークW2の取り出し作業が終了したか否か判定し(S11)、Noの場合、S1に移行してS1以降を繰り返えし実行し、Yesの場合は、ロボットハンド装置1AによるワークW2の取り出し作業を終了する。
【0089】
尚、本実施例では、2つのハンド4A,4Bで2分割した収納エリアからの複数のワークW2の取り出し作業について説明したが、2分割に限らず、3組の伸縮機構及びハンドを装備している場合には、収納エリアを3分割し、5組の伸縮機構及びハンドを装備している場合には、収納エリアを5分割するなど、伸縮機構及びハンドの数に応じて収納エリアを複数分割するものとする。
【0090】
以上説明したように、本実施例のワークW2の取り出し制御おいては、カメラ70で収納エリアを撮像する毎に、収納エリアをハンド4A,4Bに対応する2つのエリアA,Bに分割し、カメラ70から受ける画像データに基づいて、ロボット駆動制御ユニット72がロボットハンド装置1Aの位置を制御すると共に、ハンド駆動制御ユニット73が2組の伸縮機構3A及びハンド4A,4Bを夫々独立に駆動制御して2組のハンド4A,4Bにより2つのワークW2を把持するので、収納エリアからワークW2を取り出す為の最適なエリアを選択し、ハンド4Aによるワークの取り出しの影響を受けることなく、ハンド4Bでワークを取り出すことができる。
【実施例3】
【0091】
次に、実施例1のロボットハンド装置1を部分的に変更した実施例3に係るロボットハンド装置1Bについて説明する。
【0092】
図14,
図15に示すように、ロボットハンド装置1Bは、籠のような形状の本体部材2Bと、この本体部材2Bに設けられた複数の伸縮機構3Bと、これら複数の伸縮機構3Bの伸縮部材35Bの先端部に夫々取り付けられた複数の吸着式のハンド4Dとを備えている。尚、
図14,
図15においては、ロボットハンド装置1Bの伸縮機構3Bとハンド4Dを一組のみ図示し、それ以外の伸縮機構3Bとハンド4Dの図示は省略している。
【0093】
このロボットハンド装置1Bの伸縮機構3Bは、エアシリンダ37Bのピストンロッド39Bを進出側へ弾性付勢する圧縮状態の弾性部材30を備えているが、本体部材2Bと伸縮機構3Bとハンド4Dは、実施例1の本体部材2と伸縮機構3とハンド4A〜4Cと異なる部分はあるが基本的に共通しているものなので詳細な説明は省略する。
【0094】
弾性部材30は、圧縮状のスプリング部材で構成され、本体部材2Bと伸縮部材35Bとの間において、ピストンロッド39Bに外嵌状に且つ圧縮状に装着されている。この弾性部材30は、
図14に示すようにピストンロッド39Bが退入状態になると最大圧縮状になり、
図15に示すピストンロッド39Bが伸長状態になると最小圧縮状態になるように設定されている。
【0095】
この構成によると、伸縮部材35Bの伸長方向の力は、弾性付勢力(バネ力)から得られるので、エアシリンダ37Bへの進出用加圧エアの供給ラインを1系統減らすことができる上、弾性付勢力による緩衝作用を得ることができる。この緩衝作用により、ハンド4DとワークW3の精密な位置決めが不要となる。ハンド4Dが吸着式のものであるので、弾性付勢力によりハンド4DをワークW3に押圧するぐらいに進出動作させることで、ハンド4DとワークW3が密着状に当接し、ハンド4Dからのエア漏れを防止できる。
【0096】
尚、上記では、弾性部材30は、伸縮部材35Bを進出側へ弾性付勢しているが、これに限定する必要はなく、エアシリンダ37Bのピストンロッド39Bを退入側へ弾性付勢する弾性部材を備える構成であっても良い。この場合も同様に、エアシリンダ37Bへの退入用加圧エアの供給ラインを1系統減らすことができる。また場合によっては、複数のハンド4Dで1つのワークを把持しても良い。このようにすることで、ワークをより強固に把持することができる。
【実施例4】
【0097】
次に、ロボットハンド装置1,1Bに適用可能なベルトコンベア上にバラバラな状態で配置されて搬送される複数のワークの取り出し処理の一例について説明する。
【0098】
図16に示すように、本実施例のロボットハンド装置1Cは、実施例3のロボットハンド装置1Bとほぼ同様な構成のものであって、本体部材2Bと、4組の伸縮機構3Bと、各伸縮機構3Bの伸縮部材35Bの先端部に夫々取り付けられた4組の吸着式のハンド4Dとを備えている。尚、
図16においては、ロボットハンド装置1Cの伸縮機構3Bとハンド4Dを二組のみ図示し、それ以外の2組の伸縮機構3Bとハンド4Dの図示は省略している。
【0099】
本体部材2Bの下端部の中央部には、撮像用のカメラ70C(撮像手段に相当する)が下向きに設けられており、ロボットハンド装置1Cをベルトコンベア80の上方の所定高さ位置に保持した状態で、このカメラ70Cによりベルトコンベア80上の複数のワークW4の搬送状態を撮像可能になっている。尚、カメラ70Cの取付位置は、本体部材2Bの下端部に限定する必要はなく、本体部材2Bの近傍部に設けるようにしても良いし、ベルトコンベア80上のワークW4の搬送状態を撮像可能であれば取付位置は特に限定しない。カメラ70Cで撮像した画像データはロボット駆動制御ユニット72Cへ供給される。
【0100】
図17に示すように、ロボットを制御するロボット駆動制御ユニット72Cは、第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・などを制御するものであり、ロボット駆動制御ユニット72Cに接続されたハンド駆動制御ユニット73Cは、4組の伸縮機構3Bのエアシリンダ37Bを独立に駆動制御すると共に、ハンド4Dを独立に駆動制御するものである。ロボット駆動制御ユニット72Cとハンド駆動制御ユニット73Cとが、駆動制御手段に相当する。尚、これら制御ユニット72C,73Cは、実施例2のロボット駆動制御ユニット72やハンド駆動制御ユニット73と実質的に同様なものである。
【0101】
次に、ロボット駆動制御ユニット72Cとハンド駆動制御ユニット73Cにより実行されるベルトコンベア80上にバラバラな状態で配置されて搬送される同種の複数のワークW4を取り出して収納箱に収納するワークの取り出し制御について、
図18のフローチャートに基づいて説明する。このワークの取り出し制御の制御プログラムは、ロボット駆動制御ユニット72Cのコンピュータの記憶部(例えば、ROM)に予め格納されている。尚、図中Si(i=21,22・・・)は各ステップを示す。
【0102】
先ず、このワークの取り出し制御の概要について説明する。
このワークの取り出し制御においては、カメラ70でコンベア80上のワークW4の搬送状態を撮像し、ロボット駆動制御ユニット72Cにより、ワークW4のロボットアームAによる搬送の搬送先の収納情報とカメラ70から受ける画像情報とに基づいて、手首部Wの位置及び旋回角度を制御しながら複数の伸縮機構3Bを夫々独立に駆動制御して、複数のハンド4Dにより複数のワークW4の平面視における姿勢を揃えながら把持して収納箱81に収納する。
【0103】
ロボットハンド装置1Cによる、
図19(a)に示すベルトコンベア80により搬送される複数のワークW4を取り出す制御が開始されると、ロボットアームAの位置を制御することにより、カメラ70Cをベルトコンベア80の撮像対象部分の真上の所定高さ位置に移動させ、手首部Wの旋回姿勢を所定姿勢に保持した状態で、カメラ70Cによりベルトコンベア80の撮像対象部分上の複数のワークW4の搬送状態を撮像する(S21)。
このカメラ70Cにより撮像された画像データは、ロボット駆動制御ユニット72Cに供給されてコンピュータの揮発性の記憶部(例えば、RAM)に一時的に格納される。
【0104】
ロボット駆動制御ユニット72Cにおいて、カメラ73から供給された画像データから把持対象の4つのワークW4の姿勢を解析すると共に、予め記憶部に記憶されているロボットアームAによる搬送の搬送先の収納情報(例えば、収納箱81の位置等)に基づいて4つのワークW4の収納位置を解析する(S22)。
【0105】
次に、ソフトカウンタCを「0」に初期化する(S23)。次に、ロボット駆動制御ユニット72Cにより第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・・を駆動制御して、撮像時点からの経過時間とコンベア80の搬送速度を加味しながら、今回把持するC番目(但し、C=1,2,3,4の何れか)のワークW4の姿勢に応じて且つ把持するワークW4の姿勢が同一姿勢に揃うように、ロボットアームAの手首部Wの位置及び旋回角度を制御しながら、1組のハンド4Dを今回把持対象のC番目のワークW4の上方に移動させる(S24)。
【0106】
次に、ベルトコンベア80上からC番目のワークW4を取り出す為に、ハンド駆動制御ユニット73Cにより、1組の伸縮機構3Bの伸縮部材35BをC番目のワークW4へ向けて伸長させ(S25)、ハンド4Dの吸着パッド4DaにワークW4の重心G近傍部を吸着把持させる(S26)。次に、伸縮部材35Bを上方へ収縮動作させることで、前記ワークW4をベルトコンベア80上から取り出す(S27)。次に、ソフトカウンタCを「1」だけインクリメントする(S28)。
【0107】
次に、S29において、ソフトカウンタC=4か否か判定することにより4つのハンド4Dで4つのワークW4の取り出し作業が完了したか否かを判定する。その判定がNoの場合、S24に移行してS24〜S28を繰り返えし、S29の判定がYesとなった場合にはS30へ移行する。
【0108】
次に、S30において、第1軸〜第7軸のサーボモータ72a,72b・・・を駆動制御して、収納情報と把持した4つのワークの姿勢に基づいて、ロボットアームAの位置を制御し、4組のハンド4Dで夫々把持した4つのワークW4を搬送先の収納箱81の上方へ移動させる。次に、S31において、
図19(b)に示すように、ハンド駆動制御ユニット73Cの制御を介して、収納箱81の4つの収納部に合うように手首部Wを旋回させて、平面視にて姿勢が揃えられた4つのワークW4の4組のハンド4Dによる把持を解除して収納箱81の収納部に4つのワークW4を一括して収納する。
【0109】
次に、ワークW4の取り出し作業が終了したか否か判定し(S31)、Noの場合、S21に移行してS21以降を繰り返えし実行し、Yesの場合は、ロボットハンド装置1CによるワークW4の取り出し制御を終了する。
【0110】
尚、本実施例では、4つのハンド4Dでベルトコンベア80上に適当に配置された4つのワークW4の取り出し作業について説明したが、4つに限らず、1組〜3組,5組以上の伸縮機構及びハンドを装備し、搬送先もこれらの数のワークを収納可能な場合には、これらの数に対応するように、ハンドによりワークW4を平面視における姿勢を揃えながら把持して搬送して、一括して収容しても良い。
【0111】
尚、複数のハンド4Dで吸着把持されるワークW4の相対的な位置姿勢は、ロボットアームAによる搬送の搬送先の収納箱81の収納情報に合致すれば良いので、
図19(c)に示すように、複数のハンド4DでワークW4の重心Gをずらせた状態で把持することも可能である。また、本実施例では、吸着式のハンド4Dについて説明したが、特にこれに限定する必要はなく、複数のワークW4を平面視における姿勢を揃えた状態で把持することができるのであれば、実施例1のハンド4A〜4Cを使用しても良い。
【0112】
以上説明したように、本実施例のワークW4の取り出し制御おいては、カメラ70CでワークW4の搬送状態を撮像し、ワークW4のロボットアームAによる搬送の搬送先の収納情報とカメラ70Cから受ける画像情報とに基づいて、ロボット駆動制御ユニット72Cが、手首部Wの位置及び旋回角度を制御しながら、ハンド駆動制御ユニット73Cが、複数の伸縮機構3Bを夫々独立に駆動制御して、複数のハンド4Dにより複数のワークW4の平面視における姿勢を制御しながら把持するので、ロボットアームAによる搬送の搬送先で、ロボットアームAの手首部Wをワーク把持状態のハンド4D毎に旋回させる必要がなくなり、複数のワーク4Dを収納箱81に迅速に載置することができる。
【0113】
尚、本実施例は7軸の多関節ロボットに本発明のロボットハンド装置を適用して複数のワークを把持することを例にして説明しているが、多関節7軸のロボットに限らず、これ以外のロボット、特にパラレルリンクロボット(所謂、デルタロボット)を採用するのが好適である。この場合、パラレルリンクロボットに本発明のロボットハンド装置を適用すると、手首部の回転軸の1自由度に加えて、位置決めに必要な自由度を持たせることも可能となる。
【0114】
次に、前記実施例を部分的に変更した形態について説明する。
[1]前記実施例1のロボットハンド装置1においては、3組の伸縮機構3及びハンド4A,4B,4Cが設けられ、特にこれらの数に限定する必要はなく、2組でもよく、4組以上の伸縮機構とハンドを設けることもできる。また、複数のハンドとして、全て同じ構成のものを採用しても良い。
【0115】
[2]前記実施例1〜4において、前記伸縮機構3,3A,3Bの伸縮部材を伸縮させるのにエアシリンダ37,37A,37Bを採用したが、このエアシリンダ37,37A,37Bの代わりに、油圧シリンダ、電動シリンダなども採用可能である。
【0116】
[3]前記実施例1〜4のロボットハンド装置1,1A〜1Cにおける本体部材2,2A,2Bは一例を示すものに過ぎず、種々の構造の本体部材を採用することも可能であり、本体部材2,2A,2Bは、鋼製のものでもよく、軽合金製のものでもよく、合成樹脂製のものでもよい。
【0117】
[4]前記実施例1〜4のハンド4A〜4Dは把持式や吸着式のハンドであったが、ハンドの構造は上記のものに限定されず、磁力でワークW1〜W4を固定する磁力式のハンドやこれら以外の構造のものを採用しても良い。
【0118】
[5]前記実施例1〜4の本体部材2,2A,2Bは、手首部Wの取付け面Fに対して垂直方向に延びるように設けられ、複数の伸縮機構3,3A,3Bは、本体部材2,2A,2Bに手首部Wの回転軸心Sを中心として周方向に等間隔になるように配置されているが、特にこれらの構成に限定する必要はなく、本体部材が、手首部Wの取付け面Fに対して任意の角度で傾いて設けられても良く、また、複数の伸縮機構が、本体部材の手首部Wの回転軸心Sを中心として配置されなくても良く、周方向に等間隔に配置されなくても良い。
【0119】
[6]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例を部分的に変更した形態で実施可能である。