特許第5912481号(P5912481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912481
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】建築用取付具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20160414BHJP
   E04D 13/18 20140101ALI20160414BHJP
【FI】
   E04D13/00 J
   E04D13/18
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-271688(P2011-271688)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122155(P2013-122155A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390035301
【氏名又は名称】株式会社マルイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】安本 重一
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−174631(JP,U)
【文献】 特開2009−185599(JP,A)
【文献】 特開2011−140861(JP,A)
【文献】 実開昭62−040122(JP,U)
【文献】 特開2011−231591(JP,A)
【文献】 特開平08−312082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の頂部と、該頂部の幅方向両端から下方に形成された脚部と、該両脚部の対向する内面側より幅方向中間箇所に向かって突出形成され且つ上下方向に高さ位置の異なる高位置挟持片と低位置挟持片と、前記両脚部同士を内方側に向かって締め付ける締付具とからなり、前記高位置挟持片と前記低位置挟持片は、前記脚部の下端より上方に位置してなると共に、前記高位置挟持片は、折板建築用板の馳締連結部の上方の凹状窪み部に食い込むようにし、且つ前記低位置挟持片は、前記馳締連結部の凸状膨出部の下端側を支持するようにしてなることを特徴とする建築用取付具。
【請求項2】
請求項1において、前記高位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記低位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されてなることを特徴とする建築用取付具。
【請求項3】
請求項1において、前記低位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記高位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されてなることを特徴とする建築用取付具。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記締付具はボルト及びナットから構成され、且つ該ナットの位置する側の脚部には該ナットが収納される窪み部が形成されてなることを特徴とする建築用取付具。
【請求項5】
請求項4において、前記ボルトのボルト頭部と螺子軸部との間には角軸部が形成され、前記脚部には前記角軸部が挿入されると共に前記ボルトが軸周方向に非回転となる締付用貫通孔が形成されてなることを特徴とする建築用取付具。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記頂部には螺子軸が具備されてなることを特徴とする建築用取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馳締タイプの折板建築用板の馳締連結部に極めて強固に装着することができ、且つ装着作業における作業性を良好にできる建築用取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、馳締連結タイプの折板建築用板によって、屋根(壁も含む)の金属製外囲体が施工されている。馳締連結タイプの折板建築用板では、その建築用板の幅方向の一方側に下馳部が形成され、他方側に上馳部が形成され、幅方向に隣接する一方の折板建築用板の下馳部に、他方の折板建築用板の上馳部が重合且つ馳締されて馳締連結部が形成される。この馳締連結部を利用して、太陽電池パネル,緑化屋根用装置等の種々の機器を設置するための建築用部材を装着し易いようにするために、取付具が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−129530号公報
【特許文献2】実開平6−24116号公報
【特許文献3】特開2010−196422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至3において、この種のものが記載されている。ところで、馳締連結部は、連結強度を強固にすると共に水密性も良好にするために、共に略円弧形状とした下馳部と上馳部とが互いに巻き付けられる重合構造としている。このような馳締連結部において、長手方向に直交する断面形状は、左右非対称の形状で、左右(幅方向)の一方側が凹弧状の窪みで、他方側が凸弧状の膨出形状となっている。
【0005】
特許文献1では、金具(雪止め金具)によって馳締連結部の下方に位置する垂直立上り形状の首部が挟状固着されている。したがって、特許文献1では、その挟持箇所において、上下方向の固定が不安定となりガタツキが発生するおそれがある。また、特許文献2における金具(雪止め金具)は、単純な平馳タイプの馳締連結部を挟持固定している。特許文献2では、馳締連結部を安定した状態で挟持するために、補助的な役割をなす部材が存在し、部品点数が多くなり、施工も面倒となる欠点がある。
【0006】
また、特許文献3では、特許文献1と同様に、金具(取付具)は、馳締連結部の垂直立上り形状の首部を挟持する構造であり、その挟持状態は特許文献1の場合と略同様である。したがって、特許文献3では、馳締連結部においても上下方向の固定が不安定となりガタツキが発生するおそれがある。本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、従来技術における欠点、つまり折板屋根における馳締連結部に対して、より一層強固な装着ができ、且つ極めて簡易で迅速な施工にすることができる建築用取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、板状の頂部と、該頂部の幅方向両端から下方に形成された脚部と、該両脚部の対向する内面側より幅方向中間箇所に向かって突出形成され且つ上下方向に高さ位置の異なる高位置挟持片と低位置挟持片と、前記両脚部同士を内方側に向かって締め付ける締付具とからなり、前記高位置挟持片と前記低位置挟持片は、前記脚部の下端より上方に位置してなると共に、前記高位置挟持片は、折板建築用板の馳締連結部の上方の凹状窪み部に食い込むようにし、且つ前記低位置挟持片は、前記馳締連結部の凸状膨出部の下端側を支持するようにしてなる建築用取付具としたことにより、前記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1において、前記高位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記低位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されてなる建築用取付具としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1において、前記低位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記高位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されてなる建築用取付具としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記締付具はボルト及びナットから構成され、且つ前記ナットの位置する側の脚部には該ナットが収納される窪み部が形成されてなる建築用取付具としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項5の発明を、請求項4において、前記ボルトのボルト頭部と螺子軸部との間には角軸部が形成され、前記脚部には前記角軸部が挿入されると共に前記ボルトが軸周方向に非回転となる締付用貫通孔が形成されてなる建築用取付具としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記頂部には螺子軸が具備されてなる建築用取付具としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、建築用取付具を特に凹状窪み部と凸状膨出部とを有する馳締連結部に対して極めて強固な装着ができる。上記効果を詳述すると、両脚部の対向する内面側より幅方向中間箇所に向かって突出形成され且つ上下方向に高さ位置の異なる高位置挟持片と低位置挟持片を有しており、折板屋根を構成する建築用板の馳締連結部に対して、高位置挟持片と低位置挟持片とが上下方向に位置の異なる箇所に当接する構成となる。
【0011】
そして、上述したように、高位置挟持片と低位置挟持片とは高さ方向における段差を有しているので、高位置挟持片は馳締連結部の上方に位置する凹状窪み部に食い込み、低位置挟持片は、馳締連結部の凸状膨出部を下端位置にて支持するように当接することができ、馳締連結部に対して極めて強固に取り付けられる。したがって、高位置挟持片と低位置挟持片により上下方向に対する取付強度が増加する。また、高位置挟持片は、馳締連結部の凹状窪み部に食い込み、その反対側では低位置挟持片が馳締連結部の凸状膨出部の下端位置に当接しているので、馳締連結部の馳締強度も強固にすることができる。
【0012】
さらに、両脚部の下端は、高位置挟持片及び低位置挟持片よりも下方に位置し、折板屋根の馳締連結部の直下に位置する折板屋根の山形頂面に設置され、本発明の建築用取付具を、安定した装着にすることができる。つまり、本発明の建築用取付具は、折板屋根の各山形部に対して、高さ位置の異なる高位置挟持片と低位置挟持片及びこれらに加えて、両脚部の下端の合計4箇所にて設置され、上下左右における取付強度を向上させることができる。
【0013】
請求項2の発明では、高位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記低位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されているので、低位置挟持片の先端と馳締連結部との当接部位を基準として、建築用取付具の馳締連結部に対する位置決めを簡易且つ迅速に行うことができる。そして、高位置挟持片を馳締連結部の上方の凹状窪み部に食い込むように押圧しつつ、建築用取付具を装着できる。よって、馳締連結部の馳締状態をより一層強固にしつつ、建築用取付具を取り付けることができる。
【0014】
請求項3の発明では、低位置挟持片を有する脚部は外方に向かって傾斜状に形成され、前記高位置挟持片を有する脚部は垂直状に形成されているので、高位置挟持片の先端と馳締連結部との当接部位を基準として建築用取付具の馳締連結部に対する位置決めを簡易且つ迅速に行うことができる。そして、低位置挟持片を馳締連結部の下方の凹状膨出部の下端位置に食い込むように押圧しつつ、建築用取付具を装着できる。よって、馳締連結部の馳締状態をより一層強固にしつつ、建築用取付具を取り付けることができる。
【0015】
請求項4の発明では、締付具はボルト及びナットから構成され、且つ前記ナットの位置する側の脚部には該ナットが収納される窪み部が形成された構成としているので、建築用取付具を馳締連結部に装着するときに、締付具のナットとボルトが分離しても、ナットが窪み部に収納された状態となり、ナットが建築用取付具から完全に脱落することを防止できる。
【0016】
請求項5の発明では、前記ボルトのボルト頭部と螺子軸部との間には角軸部が形成され、前記脚部には前記角軸部が挿入されると共に前記ボルトが軸周方向に非回転となる締付用貫通孔が形成される構成としたので、締付具による締付作業で、ボルトが軸周方向に非回転のため、ボルト側を特に工具で固定することなく、ナットのみを回転させればよく、作業効率を向上させることができる。請求項6の発明では、頂部には螺子軸が具備された構成としたことにより、本発明の建築用取付具を折板屋根の馳締連結部に装着するのみで、太陽電池パネル,緑化屋根装置等の機器の設置が極めて効率的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は第1実施形態の建築用取付具の両脚部が締付具により締め付けられた状態の斜視図、(B)は第1実施形態の建築用取付具を外囲体の馳締連結部に装着した状態の正面図、(C)は(B)の(ア)部拡大図である。
図2】(A)は第1実施形態の建築用取付具において締付が解除された状態の一部断面にした正面図、(B)は(A)の(イ)部断面図、(C)は(B)のY1−Y1矢視断面図である。
図3】(A)は第1実施形態の建築用取付具が外囲体の馳締連結部に装着された構成において上下方向の負荷に対応している状態の要部拡大図、(B) は第1実施形態の建築用取付具が外囲体の馳締連結部に装着された構成において馳締連結部に対して左右方向の負荷に対応している状態の要部拡大図、(C)は建築用取付具の高位置挟持片と低位置挟持片にて馳締連結部を締め付けている状態をさらに拡大した要部断面図である。
図4】(A)は第2実施形態の建築用取付具の正面図、(B)は第2実施形態の建築用取付具を外囲体の馳締連結部に装着しようとする状態の正面図、(C) は第3実施形態の建築用取付具の正面図、(D) は第3実施形態の建築用取付具を外囲体の馳締連結部に装着しようとする状態の正面図である。
図5】(A)は第4実施形態の建築用取付具の斜視図、(B)は第4実施形態を建築用取付具を外囲体の馳締連結部に装着した状態の縦断正面図、(C)は第4実施形態の建築用取付具において外囲体の馳締連結部に着脱する際にナットが窪み部に収容されることにより紛失防止された状態を示す縦断正面図である。
図6】外囲体の馳締連結部が角馳タイプとした折板屋根に本発明における建築用取付具を装着した正面図である。
図7】本発明の建築用取付具を介して折板屋根に太陽電池パネルを装着した状態の正面略示図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に基づいて、本発明の第1実施形態から説明する。本発明は、頂部1と、該頂部1の幅方向両端から下方に形成された脚部2,2と、両脚部2,2の対向する内面側より幅方向中間箇所に向かって突出形成され且つ上下方向に高さ位置の異なる高位置挟持片3と低位置挟持片4と、前記両脚部2,2同士を内方側に向かって締め付ける締付具5とから構成される(図1図2参照)。
【0019】
本発明は、金属板材から形成されたものであり、前記頂部1は、略長方形又は略正方形の板状に形成されている。該頂部1の幅方向両端から脚部2,2とが一体的に折曲形成されている。両脚部2,2は、略長方形又は正方形の板状に形成されている。両脚部2,2は、下端側が外方に拡がるようにして傾斜形成されている〔図2(A)参照〕。
【0020】
つまり、両脚部2,2は、互いに略「ハ」字形状となるように、構成されている。そして、後述する締付具5を締め付けることにより、両脚部2,2は、弾性変形して略垂直状に対向する〔図1(A),(B)参照〕。そして、締付具5による締め付けを緩めることで、両脚部2,2は略「ハ」字形状に拡がり復元することができるようになっている〔図2(A)参照〕。本発明の建築用取付具を折板屋根の馳締連結部Jに装着するときは、両脚部2,2は略「ハ」字形状に拡げておく〔図2(A)参照〕。
【0021】
両脚部2,2の下端には、脚部2に対して外方に直角(略直角も含む)に折曲された座板片21,21が形成されている。座板片21は、前後方向に沿って長方形状に形成され、脚部2が垂直状態のときに水平状態となり、本発明の建築用取付具が安定した状態で折板屋根の馳締連結部J箇所に設置できるようになっている。また、両脚部2,2には、前後方向の中間箇所に外方に膨出する膨出補強部22,22が形成されている〔図1(A),(B)、図2(A)参照〕。該膨出補強部22は、上方が半円形で下方が長方形となり、これらが連続して膨出補強部22,22するように形成されたものである。
【0022】
両脚部2,2には、締付用貫通孔23,23が形成されている。両締付用貫通孔23,23には、後述する締付具5のボルト51が貫通する。また、締付用貫通孔23は、脚部2の前記膨出補強部22に形成される〔図2(B)参照〕。このような構成によって、両脚部2,2が締付具5にて締め付けられたときに、脚部2,2に変形が生じにくいようにすることができる。
【0023】
対向する両脚部2,2の内面側において、その一方側の脚部2は高位置挟持片3が設けられ、他方側の脚部2には低位置挟持片4が設けられている。高位置挟持片3及び低位置挟持片4は、両脚部2,2の対向する内面側より幅方向に対して、その中間箇所に向かって突出形成されたものであり、高位置挟持片3及び低位置挟持片4は略長方形状の板片として形成されたものである。
【0024】
高位置挟持片3及び低位置挟持片4は、それぞれが直接装着されている脚部2,2に対して直角(略直角も含む)となるように設定されている。高位置挟持片3には、脚部2とは別部材として形成されたものである。そして高位置挟持片3には、直角に折曲形成された取付片31を有しており、該取付片31が、脚部2の内面側に当接され、リベット,溶接等の固着手段にて高位置挟持片3が脚部2に固着される。
【0025】
低位置挟持片4についても、高位置挟持片3と同様に、脚部2とは別部材として形成されたものであり、低位置挟持片4には、直角に折曲形成された取付片41を有しており、該取付片41が、脚部2の内面側に当接され、リベット,溶接等の固着手段にて低位置挟持片4が脚部2に固着される。
【0026】
両脚部2,2が締付具5によって締め付けられることにより、略垂直状で且つ略平行な状態で対向したときに、高位置挟持片3及び低位置挟持片4は、水平で且つ高さ方向に段差Hを生じるものであり、高位置挟持片3が低位置挟持片4よりも高所に位置することになる〔図1(B),(C)参照〕。その段差Hの量は、後述する馳締連結部Jの大きさや形状によって設定されるものである。高位置挟持片3及び低位置挟持片4は、共に脚部2,2の下端よりも上方に位置している。
【0027】
また、両脚部2,2が平行(略平行も含む)に対向する状態で、幅方向において高位置挟持片3の先端と、低位置挟持片4の先端とは、適宜の間隔を有している。この間隔は、後述する馳締連結部Jの大きさや形状によって設定されるものである。また、馳締連結部Jの種類によっては、高位置挟持片3の先端と低位置挟持片4の先端が幅方向において重なり合う構成となることもある。
【0028】
締付具5は、ボルト51とナット52とから構成され、座金等が構成に含まれることもある。ボルト51は、両脚部2,2の締付用貫通孔23,23を貫通し、ナット52によって締め付けられ、ハ字形状に拡開された脚部2,2を平行(略平行も含む)に対向させる役目をなすものである。
【0029】
ボルト51には、ボルト頭部51aと螺子軸部51bとの間に角軸部51cが形成されている。角軸部51cとしては、四角柱状の軸として形成されている〔図2(B),(C)参照〕。また、前記両脚部2,2の締付用貫通孔23,23のいずれか一方は、角軸部51cと同一形状の角孔として形成されている〔図2(B),(C)参照〕。
【0030】
そして、前記角軸部51cが角孔として形成された締付用貫通孔23に対して、挿入且つ軸周方向に回転不能となるように構成される。これによって、両脚部2,2の締付用貫通孔23,23に貫通したボルト51は、空転しない構成となり、ボルト51を固定することなく、ナット52を回すのみで締付具5の締付を行うことができる。
【0031】
また、前記高位置挟持片3の取付片31には貫通孔31aが形成され、前記低位置挟持片4の取付片41には貫通孔41aが形成され、貫通孔31a及び貫通孔41aには、前記両締付用貫通孔23,23と共に前記ボルト51が貫通して、相互に干渉しない構成としている(図2参照)。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態では、前記高位置挟持片3を有する脚部2は、幅方向において外方に向かって傾斜状に形成され、前記低位置挟持片4を有する脚部2は垂直状に形成される構成としたものである〔図4(A)参照〕。つまり、高位置挟持片3を有する脚部2は、頂部1に対して開いた状態としておき、低位置挟持片4を有する脚部2は、頂部1に対して垂下状にしておく構成としたものである。
【0033】
第2実施形態では、低位置挟持片4を有する脚部2は予め垂直状に形成されている。すなわち、低位置挟持片4側の脚部2は、外囲体を構成する建築用板9の頂部93箇所に設置され、高位置挟持片3側の脚部2を、前述した低位置挟持片4を有する(固定側の)脚部2側に向かって寄せ付けるようにして締付具5により締め付けるものである〔図4(B)参照〕。
【0034】
このように、低位置挟持片4の先端を馳締連結部Jに当接させることで、この当接位置を基準の位置として脚部2を配置することにより〔図4(B)参照〕、建築用取付具の馳締連結部Jに対する位置決めを簡易且つ迅速に行うことができる。そして、高位置挟持片3を馳締連結部Jの上方の凹状窪み部Jaに食い込むように押圧しつつ、建築用取付具を装着できる。よって、馳締連結部Jの馳締状態をより一層強固にしつつ、建築用取付具を取り付けることができる。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態では、前記低位置挟持片4を有する脚部2は、幅方向において外方に向かって傾斜状に形成され、前記高位置挟持片3を有する脚部2は垂直状に形成される構成としたものである。つまり、低位置挟持片4を有する脚部2は、頂部1に対して開いた状態としておき、高位置挟持片3を有する脚部2は、頂部1に対して垂下状にしておく構成としたものである〔図4(C)参照〕。
【0036】
前述した第3実施形態では、高位置挟持片3を有する脚部2が予め垂直状に形成され、該脚部2は、外囲体を構成する建築用板9の頂部93箇所に設置され、低位置挟持片4側の脚部2を、前述した高位置挟持片3を有する(固定側の)脚部2側に向かって寄せ付けるようにして締付具5により締め付けるものである〔図4(D)参照〕。
【0037】
このように、高位置挟持片3の先端を馳締連結部Jに当接させることで、この当接位置を基準の位置として脚部2を配置することにより〔図4(D)参照〕、建築用取付具の馳締連結部Jに対する位置決めを簡易且つ迅速に行うことができる。そして、低位置挟持片4を馳締連結部Jの凸状膨出部Jbの下端側を支持するようにして押圧しつつ、建築用取付具を装着できる。よって、馳締連結部Jの馳締状態をより一層強固にしつつ、建築用取付具を取り付けることができる。
【0038】
本発明の第4実施形態として、前記両脚部2,2において、前記ナット52の位置する側の脚部2には該ナット52が収納される窪み部24が形成されるものが存在する(図5参照)。窪み部24は、脚部2の内方側に凹形状に窪む領域として形成されている。窪み部24にはナット52が十分に収納される程度の深さと広さを有している〔図5(A),(B)参照〕。
【0039】
前記窪み部24が設けられることによって、作業時において、締付具5を構成するナット52等の部品が紛失することを防止できる。つまり、本発明の建築用取付具を、外囲体の馳締連結部Jに装着する場合に、建築用取付具を前記馳締連結部Jに対して設置し易くするために、締付具5を一旦緩めて、両脚部2,2を開き、高位置挟持片3と低位置挟持片4との間隔を拡げることがある〔図5(C)参照〕。
【0040】
そのようなときに、締付具5は、ナット52がボルト51から外れてしまうことも、しばしば、起こり得る。ところが、前記ナット52は、窪み部24内に収容された状態であり、ボルト51から外れたナット52は、窪み部24に引っ掛かる状態となる〔図5(C)参照〕。したがって、ナット52は、建築用取付具の脚部2から脱落することを防止でき、ひいてはナット52を紛失することも防止できる〔図5(C)参照〕。
【0041】
また、前記頂部1には、螺子軸6が具備されている。該螺子軸6は、屋根に装着する太陽電池パネル装置8を設置する場合に使用される。また、前記螺子軸6は、屋根や壁に種々の構造物を設置する際に極めて有効である。特に、屋根を緑化屋根として、施工する場合において、種々の器具を設置することが容易となる。
【0042】
次に、本発明の建築用取付具を建築用板9によって施工された屋根,壁等の外囲体の馳締連結部Jに装着する構造について説明する。前記建築用板9は、主板91の幅方向両側に傾斜状の立上り側部92,92が形成されている。両立上り側部92,92は互いに外方側に向かって傾斜するように形成されている。
【0043】
両立上り側部92,92の外端より頂面93,93が形成されている。その一方の頂面93の外端から下馳部94が形成され、他方の頂面93の外端から上馳部95が形成されている。前記下馳部94は、首部94aの上端から下重合片94bが形成され、前記上馳部95は、首部95aと上重合片95bとからなる。
【0044】
隣接する建築用板9,9の下馳部94と上馳部95とが馳締連結されて馳締連結部Jが構成される。該馳締連結部Jは、首部94aと首部95aとが当接(略当接も含む)し、下重合片94bに上重合片95bが巻き付けられる〔図1(C)参照〕。ここで、下重合片94bと上重合片95bとは、半円弧状に形成され、丸馳タイプの馳締連結部Jを構成したり、或いは下重合片94bと上重合片95bとは、「く」字形状に形成され、角馳タイプの馳締連結部Jを構成する(図6参照)。
【0045】
そして、前記馳締連結部Jには、前述したように、凹状窪み部Jaと、凸状膨出部Jbが形成される。凹状窪み部Jaは略半円形状の窪みであり、凸状膨出部Jbは半円形状の膨出であり、凹状窪み部Jaと凸状膨出部Jbとは、表裏の位置関係にある〔図1(C),図3等参照〕。
【0046】
本発明の建築用取付具を馳締連結部Jに装着するには、締付具5のボルト51とナット52を緩めて両脚部2,2と共に、高位置挟持片3と低位置挟持片4との間隔を拡げる〔図2(A)参照〕。次に、建築用取付具を、折板屋根が構成される山形部の馳締連結部J上に配置する。そして、締付具5を締め付けて、両脚部2,2の間隔を狭くしつつ、高位置挟持片3を前記凹状窪み部Jaに食い込ませ、低位置挟持片4は凸状膨出部Jbの下端を支持するようにして、建築用取付具を馳締連結部Jに取り付けることができる〔図1(B),(C)参照〕。
【0047】
本発明の建築用取付具では、特に凹状窪み部Jaと凸状膨出部Jbとを有する馳締連結部Jに対して極めて強固な装着ができる。両脚部2,2の対向する内面側より幅方向中間箇所に向かって突出形成され且つ上下方向に高さ位置の異なる高位置挟持片3と低位置挟持片4を有しているので、折板屋根を構成する建築用板9,9,…の馳締連結部J,J …に対して、高位置挟持片3と低位置挟持片4とが上下方向に位置の異なる箇所に当接する構成となる。
【0048】
すなわち、高位置挟持片3は馳締連結部Jの上方に位置する凹状窪み部Jaに食い込み、低位置挟持片4、馳締連結部Jの凹状窪み部Jaを下端位置にて支持するように当接することができ、馳締連結部Jに対して極めて強固に取り付けられる。したがって、高位置挟持片3と低位置挟持片4により上下方向及び左右方向に対する取付強度が増加する(図3参照)。
【0049】
その図3(A)は、本発明の建築用取付具が外囲体の馳締連結部Jに装着された状態で、強風等による負圧荷重として垂直方向荷重Fvが建築用取付具にかかり、この垂直方向荷重Fvに対して高位置挟持片3と凹状窪み部Ja及び低位置挟持片4と凸状膨出部Jbとの係止箇所に生じる垂直方向の反力Rvが対応(抵抗)し、建築用取付具が馳締連結部Jから外れない状態を示すものである。
【0050】
また、図3(B)は、本発明の建築用取付具が外囲体の馳締連結部Jに装着された状態で、強風等による水平方向荷重Fhが建築用取付具にかかり、この水平方向荷重Fhに対して高位置挟持片3と凹状窪み部Ja及び低位置挟持片4と凸状膨出部Jbとの係止箇所に生じる水平方向の反力Rhが対応(抵抗)し、建築用取付具が馳締連結部Jから外れない状態を示すものである。
【0051】
また、図3(C)は、高位置挟持片3が馳締連結部Jの凹状窪み部Jaに食い込み、その反対側にて低位置挟持片4が馳締連結部Jの凸状膨出部Jbの下端位置に当接し、締付具5の締付による前記高位置挟持片3及び前記低位置挟持片4の締付荷重R,Rによって、馳締連結部Jの締付強度がさらに向上し、該馳締連結部Jがより一層強固になることを示すものである〔図3(C)参照〕。
【0052】
さらに、両脚部2,2の下端は、高位置挟持片3及び低位置挟持片4よりも下方に位置し、折板屋根の馳締連結部Jの直下に位置する折板屋根の山形頂面に設置され、本発明の建築用取付具を、安定した装着にすることができる。つまり、本発明の建築用取付具は、折板屋根の各山形部に対して、高さ位置の異なる高位置挟持片3と低位置挟持片4及びこれらに加えて、両脚部2,2の下端の合計4箇所にて設置され、上下左右における取付強度を向上させることができる。
【0053】
次に、本発明の建築用取付具の具体的な使用例を説明する。建築用板9によって施工された折板屋根(壁も含む)において、太陽電池パネル装置8を支持する支持架台81が馳締連結部Jに複数装着された建築用取付具の頂部1,1,…に配置される(図7参照)。このとき、頂部1に設けられた螺子軸6を利用する。また、前述した太陽電池パネル装置8の装着以外にも、屋根を緑化屋根等の設備として施工する場合において、本発明の建築用取付具を利用することにより、上記設備に関連する種々の機器,器具等を設置することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…頂部、2…脚部、23…締付用貫通孔、24…窪み部、3…高位置挟持片、
4…低位置挟持片、5…締付具、51…ボルト、51a…ボルト頭部、51c…角軸部、
51b…螺子軸部、52…ナット、6…螺子軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7