(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、電子打楽器である電子ハイハット80全体の側断面図であり、
図1(b)は、電子ハイハット80上部の拡大側断面図である。なお、
図1(a)において、上部シンバル100、下部シンバル200、及び、上部シンバル100と下部シンバル200とに挟まれた部分の断面は省略し、これらの部分の断面を
図1(b)に図示する。
【0014】
図1(a)に示すように、電子ハイハット80は、上部シンバル100と、下部シンバル200と、上部シンバル100が揺動可能に連結されているエクステンションロッド420と、下部シンバル200が揺動可能に連結されている中空シャフト部410と、この中空シャフト部410の内部下端に嵌め込まれているスプリング430と、踏み込み式のフットペダル440と、エクステンションロッド420とフットペダル440とを連結するジョイント450と、中空シャフト部410に連結されている電子ハイハット80全体の起立を支持するための脚部460などを備えている。
【0015】
エクステンションロッド420は、その下方において、ジョイント450を介してフットペダル440に連結され、フットペダル440の踏み込み操作に応じて、エクステンションロッド420が上下動するように構成されている。一方で、エクステンションロッド420の上方には、連結具によって上部シンバル100が揺動可能に連結されており、フットペダル440の踏み込み操作に応じて、エクステンションロッド420が上下動すると、それに伴って、上部シンバル100が上下動する。つまり、上部シンバル100の打面位置は、フットペダル440の踏み込み操作の量に応じて変化する。
【0016】
このエクステンションロッド420において、その下部は、上部中空シャフト411及び下部中空シャフト412を貫通すると共に、下部中空シャフト412の内部に嵌め込まれたスプリング430もまた貫通している。このスプリング430が、エクステンションロッド420に設けられている節部420aの下側と下部中空シャフト412の節部
412aの上側との間に挟持されることにより、エクステンションロッド420は、常時、上方への付勢力を受けるので、フットペダル440の踏み込み操作が行われていないときの上部シンバル100と下部シンバル200は、所定の間隔で離間されている。
【0017】
次に、
図1(b)を参照して、上部シンバル100と下部シンバル200とについて説明する。なお、
図1(b)では、上部シンバル100と下部シンバル200とが離れた状態であるオープン位置を示す。フットペダル440の踏み込み操作が行われていない場合、上述した通り、上部シンバル100及び下部シンバル200は、
図1(b)に示すオープン位置となる。フットペダル440が踏み込まれると、踏み込み量が大きくなるにつれて上部シンバル100の打面位置が次第に下がり、やがて、上部シンバル100と下部シンバル200とが密着する状態であるクローズ位置になる。
【0018】
上部シンバル100は、上面がゴムにより形成される打面110を有し、上部シンバル100の打面110の裏側には、振動を検出する振動センサ70が、振動センサ取り付けフレーム120に設けられている。振動センサ70は、上部シンバル100の打撃又は上部シンバル100と下部シンバル200との接触による上部シンバル100の振動の振動レベルを検出するセンサであり、例えば、ピエゾ圧電センサである。振動センサ70が振動を検出すると、その振動レベルに応じた打撃情報が、配線を介して下部シンバル200へ伝達され、下部シンバル200に設けられた出力用端子(図示せず)から、楽音制御装置1(
図2参照)へ出力される。
【0019】
変位センサ60は、上部シンバル100と下部シンバル200との間に配置される。変位センサ60は、例えば、特開2005−195892号公報に記載される変位センサであり、上面が開口された中空の円筒の内側の底部に収納された円形のセンサシートと、そのセンサシートの上に配置され、このセンサシートの上に配置され、上から下へ向かって広がる円錐状のコイルばねと、そのコイルばねの上部に接触する蓋部とから構成されている。
【0020】
フットペダル440が踏み込まれた場合、上部シンバル100と下部シンバル200との間がその踏み込み量に応じて次第に閉じる方向へ移行する。上部シンバル100の下降により蓋部が押し下げられ、それに伴い、コイルばねは、クッションシートに対して押しつけられて圧縮されて、その圧縮力により上下方向に変形する。コイルばねが上下方向に圧縮されて生じた変形を、センサシート部を用いて電気抵抗値(以下「変位センサ値」と称す)として検出する。つまり、フットペダル440の踏み込み量、即ち、上部シンバル100の位置(以下、「打面位置」と称す)に応じた変位センサ値が、センサシート部によって検出される。センサシート部により検出された変位センサ値は、出力用端子(図示せず)を介して、打面位置を示す位置情報として、楽音制御装置1(
図2参照)へ出力される。
【0021】
よって、上部シンバル100の位置(打面位置)を検出可能な変位センサ60を有する電子ハイハット80によれば、上部シンバル100に対する打撃や、フットペダルが踏み込まれて下部シンバル200と接触したことによる上部シンバル100の振動が振動センサ70により検出された場合、その振動レベルに応じた振動情報が、振動センサ70から楽音制御装置1(
図2参照)へ出力される。一方で、変位センサ60により検出された打面位置に応じた電気抵抗値が、楽音制御装置1(
図2参照)へ出力される。
【0022】
図2は、本発明の楽音制御装置の一実施形態である発音制御装置1の電気的構成を示すブロック図である。楽音制御装置1は、上述した電子ハイハット80から振動情報が入力された場合に、そのときの変位センサ値に応じた音色の楽音を発生する。つまり、電子ハイハット80において上部シンバル100が振動した場合に、楽音制御装置1は、上部シンバル100が振動したときの打面位置に応じた音色の楽音を発生する。なお、本実施形態では、楽音制御装置1が、電子ハイハット80の演奏操作(打撃、ペダル操作)に基づく楽音のみを発生するものとして説明する。
【0023】
詳細は後述するが、本実施形態の楽音制御装置1は、スライト音の消音制御を、スライト音発生後の打面位置の遷移状態を考慮して行うように構成され、それによって、ユーザの演奏意図が十分に反映された電子ハイハット80の楽音(ハイハット音)を発生できる。
【0024】
楽音制御装置1は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、操作パネル14と、入力部15と、音源16と、デジタルアナログコンバータ(DAC)17とを有している。各部11〜16は、バスライン18を介して互いに接続される。音源16は、DAC17にも接続される。
【0025】
CPU11は、ROM12に記憶される固定値やプログラム、RAM13に記憶されているデータなどに従って、楽音制御装置1の各部を制御する中央制御装置である。CPU11は、クロック信号を計数することにより、時刻を計時するタイマ11aを内蔵している。
【0026】
ROM12は、書き替え不能な不揮発性メモリであって、CPU11などに実行させる制御プログラム12aや、この制御プログラム12aが実行される際にCPU11により参照される固定値データ(図示せず)などが記憶される。なお、
図4及び
図5のフローチャートに示す各処理は、制御プログラム12aにより実行される。
【0027】
RAM13は、書き替え可能な揮発性メモリであり、CPU11が制御プログラム12aを実行するにあたり、各種のデータを一時的に記憶するためのテンポラリエリアを有する。RAM13のテンポラリエリアには、発音中メモリ13aと、今回変位メモリ13bと、前回変位メモリ13cと、遷移時刻メモリ13dとが設けられている。なお、これらの各部13a〜13dは、いずれも、楽音制御装置1の電源投入時に初期化される。
【0028】
発音中メモリ13aは、音源16から発生させる楽音の音色と、当該楽音に対して割り当てた音源16のボイスと、当該楽音の発音時刻とを対応付けて記憶するメモリ領域である。具体的に、発音中メモリ13aは、音色記憶領域と、ボイス記憶領域と、発音時刻記憶領域とから構成され、これらの記憶領域(音色記憶領域、ボイス記憶領域、発音時刻記憶領域)は、音源16から発生させる楽音毎に設けられる。
【0029】
振動情報に基づいて上部シンバル100が打撃されたとCPU11が判断した場合、CPU11は、その打撃に対して発生させる楽音に対し、そのときの変位センサ値に応じた音色を示す音色情報を音色記憶領域に記憶し、当該楽音に対して割り当てた音源16のボイスを示すボイス情報をボイス記憶領域に記憶し、現在時刻を発音時刻として発音時刻記憶領域に記憶する。その一方で、CPU11は、音源14に対して発音の停止指示を出力する場合に、発音中メモリ13aに記憶されている内容のうち、その停止指示の対象となる楽音に対応する情報(音色情報、ボイス情報、発音時刻)をクリアする。
【0030】
今回変位メモリ13bは、電子ハイハット80の変位センサ60から今回入力された変位センサ値を記憶する領域である。一方、前回変位メモリ13cは、前回に変位センサ60から入力された変位センサ値を記憶する領域である。具体的に、後述する変位センサ処理(
図5参照)が実行される毎に、今回変位メモリ13bに記憶されている値が、前回変位メモリ13cに記憶(移動)された後、取得した変位センサ値が今回変位メモリ13bに記憶される。
【0031】
遷移時刻メモリ13dは、電子ハイハット80における打面位置(上部シンバル100の位置)が、より開放される側へ向かいながら規定開放位置P2(
図3参照)に達したときの時刻(遷移時刻)を記憶する領域である。
【0032】
操作パネル14は、音量などの各種パラメータを設定する操作子と、その操作子により設定されたパラメータの値などを表示する表示器とが設けられたパネルであり、ユーザインタフェイスとして使用される。
【0033】
入力部15は、電子ハイハット80の変位センサ60及び振動センサ70を接続するインターフェイスである。各センサ60,70から出力されたアナログ信号(振動情報、変位センサ値)は、入力部15を介して楽音制御装置1に入力される。入力部15には、アナログデジタルコンバータが内蔵されている。各センサ60,70から入力されるアナログ信号は、アナログデジタルコンバータによって所定時間毎にデジタル値に変換され、CPU11に出力される。CPU11は、電子ハイハット80の振動センサ70から振動情報が入力され、その振動情報が所定の閾値を超える振動レベルである場合に、電子ハイハット80における上部シンバル100の打面が打撃されたものと判断し、そのときの変位センサ値に応じた音色での楽音の発生指示を音源16へ出力する。
【0034】
音源16は、CPU11から楽音の発生指示を受けた場合に、その発生指示に従う音色の楽音を発生する。また、音源16は、CPU11から楽音の停止指示を受けた場合に、その停止指示により指示された楽音の発生を停止するものである。なお、音源16は、複数の楽音(ボイス)を発音可能に構成されており、CPU11から発生指示を受信すると、その発生指示に応じた音色及び音量のデジタル楽音を、その発生指示により割り当てられるボイスから発生する。なお、ボイスは、1つ又は複数の発音チャンネルからなる。
【0035】
音源16には、非図示の波形ROMが内蔵される。この波形ROMには、電子ハイハット80の打面位置に応じて異なる音色のデジタル楽音が記憶されている。本実施形態では、音源16の波形ROMに、4種類のハイハット音(オープン音、ハーフオープン音、スライト音、クローズ音)が記憶されている。また、音源16には、フィルタやエフェクトなどの処理を行うDSP(Digital Signal Processor)が内蔵され、そのDSPによりTVF(Time Valiant Filter)が形成される。このTVFは、遮断周波数を変更することができるローパスフィルタであり、例えば、音源16によりオープン音を発生する場合は、遮断周波数が高く設定され、クローズ音を発生する場合は、遮断周波数が低く設定される。
【0036】
音源16は、発生指示がCPU11から入力された場合に、その発生指示に従う音色のデジタル楽音を波形ROMから読み出し、DSPにおいてフィルタやエフェクトなどの所定の処理を行い、処理後のデジタル楽音をDAC17へ出力する。DAC17は、入力されたデジタル楽音をアナログ楽音に変換し、楽音制御装置1の外部に設けられるアンプ41に出力する。アンプ21は、入力されたアナログ楽音を増幅し、スピーカ42を駆動して放音させる。
【0037】
次に、
図3を参照して、楽音制御装置1による発音(楽音の発生)制御及び消音(楽音の発生停止)制御の概要について説明する。
図3は、変位センサ値により規定される各種位置を説明する説明図である。
【0038】
電子ハイハット80の打面位置は、変位センサ値に応じて規定される。具体的に、
図3に示すように、変位センサ値の出力範囲を4分割し、変位センサ値が大きい方から順に、オープン位置、ハーフオープン位置、スライト位置、クローズ位置とが規定される。これら4種類の打面位置のうち、オープン位置、ハーフオープン位置、及びスライト位置は、上部シンバル100と下部シンバル200とが密着していないオープン系の打面位置である。一方、クローズ位置は、上部シンバル100と下部シンバル200とが密着した打面位置である。楽音制御装置1は、上部シンバル100が打撃された場合に、そのときの変位センサ値が示す打面位置に応じた音色のハイハット音(オープン音、ハーフオープン音、スライト音、クローズ音)を発生する。
【0039】
スライト位置の範囲内には、停止制御位置P1が規定されている。楽音制御装置1は、打面位置が、スライト位置に含まれる所定の停止制御位置P1に達した場合に、オープン音及びハーフオープン音を停止させるとともに、所定条件を満たすスライト音を停止させる。
【0040】
停止制御位置P1より高い所定位置には、規定開放位置P2が規定される。本実施形態では、規定開放位置P2は、ハーフオープン位置の範囲内に規定される。規定開放位置P2は、スライト音の消音制御を行うために参照される位置である。本実施形態の楽音制御装置1は、打面位置が停止制御位置P1に達した場合に、スライト音の発生後に打面位置が規定開放位置P2に一旦達しているスライト音を停止させるように構成される。かかる楽音制御装置1によれば、スライト位置でパッドを打撃し、フットペダルの踏み込みを緩めることにより打面位置を一度開いてから(オープンしてから)、フットペダルを再度踏み込んで打面位置をクローズ位置に戻すハイハットの奏法を、演奏者の意図通りに実現できる。
【0041】
次に、
図4及び
図5を参照して、上記構成を有する楽音制御装置1のCPU11が実行する処理について説明する。まず、
図4は、CPU11が実行する楽音制御装置1のメイン処理である。メイン処理は、楽音制御装置1に電源が投入されている間、繰り返し実行される処理である。
【0042】
まず、CPU11は、電子ハイハット80の上部シンバル100が打撃されたかを、振動センサ70から入力される打撃情報に基づいて判定する(S401)。具体的に、S401において、CPU11は、振動情報が示す振動レベルが所定の閾値を超える場合に、上部シンバル100が打撃されたと判定する。
【0043】
S401において、上部シンバル100が打撃されたとCPU11が判定した場合(S401:Yes)、CPU11は、今回発生させる楽音(今回の発生指示の対象とする楽音)に、タイマ11aから取得される現在時刻を発音時刻として対応付けて記憶する(S402)。本実施形態では、S402において、CPU11は、今回発生させる楽音に対する発音中メモリ13aの発音時刻領域に発音時刻(現在時刻)を記憶する。
【0044】
次に、CPU11は、変位センサ60から入力される変位センサ値を取得する(S403)。このとき、CPU11は、S402において発音時刻を記憶した発音時刻領域に対応する音色記憶領域に、取得した変位センサ値に基づく音色情報を記憶するとともに、当該発音時刻領域に対応するボイス記憶領域に、割り当てたボイスを示すボイス情報を記憶する。
【0045】
S403の処理後、取得した変位センサ値がオープン位置を示すとCPU11が判定した場合(S404:Yes)、CPU11は、オープン音の発生指示を音源16へ出力し、音源16にオープン音を発生させる(S405)。
【0046】
一方、取得した変位センサ値がハーフオープン位置を示すとCPU11が判定した場合(S404:No,S407:Yes)、CPU11は、ハーフオープン音の発生指示を音源16へ出力し、音源16にハーフオープン音を発生させる(S408)。
【0047】
また、取得した変位センサ値がスライト位置を示すとCPU11が判定した場合(S404:No,S407:No,S409:Yes)、CPU11は、スライト音の発生指示を音源16へ出力し、音源16にスライト音を発生させる(S410)。
【0048】
また、取得した変位センサ値が、オープン位置でも、ハーフオープン位置でも、スライト位置でもない、即ち、クローズ位置であるとCPU11が判定した場合には(S404:No,S407:No,S409:No)、CPU11は、クローズ音の発生指示を音源16へ出力し、音源16にクローズ音を発生させる(S411)。
【0049】
CPU10は、S405、S408、S410、又はS411の処理を実行した後、変位センサ処理を実行し(S406)、本処理を終了する。変位センサ処理(S406)は、変位センサ60から入力される変位センサ値に応じて、発生中(発音中)の楽音の停止制御を行う処理である。
【0050】
ここで、
図5を参照して、変位センサ処理(S406)について説明する。
図5は、メイン処理の中で実行される変位センサ処理(S406)を示すフローチャートである。変位センサ処理(S406)において、まず、CPU11は、変位センサ60から入力される変位センサ値を取得する(S501)。
【0051】
次に、CPU11は、今回変位メモリ13bに記憶されている値を、前回変位メモリ13cに記憶させる(S502)。S502の処理により、前回に実行された本処理において取得された変位センサ値が、前回値として、前回変位メモリ13cに記憶される。次に、CPU11は、S501において取得した変位センサ値を、今回値として、今回変位メモリ13bに記憶する(S503)。
【0052】
CPU11は、S503の処理を実行した後、今回変位メモリ13b及び前回変位メモリ13cにそれぞれ記憶される変位センサ値に基づいて、打面位置が規定開放位置P2を下から上へ跨いだかを判定する(S504)。このとき、打面位置が規定開放位置P2を下から上へ跨いだとCPU11が判定した場合には(S504:Yes)、CPU11は、タイマ11aから取得される現在時刻を遷移時刻として遷移時刻メモリ13dに記憶し(S505)、処理をS506へ移行する。一方、打面位置が規定開放位置P2を下から上へ跨いでいないとCPU11が判定した場合には(S504:No)、CPU11は、処理をS506へ移行する。
【0053】
S506において、CPU11は、今回変位メモリ13b及び前回変位メモリ13cにそれぞれ記憶される変位センサ値に基づいて、打面位置が停止制御位置P1を上から下へ跨いだかを判定する(S506)。このとき、打面位置が停止制御位置P1を上から下へ跨いだとCPU11が判定した場合には(S506:Yes)、オープン音及びハーフオープン音の停止指示を音源16へ出力し、オープン音及びハーフオープン音の発生を音源16に停止させる(S507)。なお、S507において、発音中メモリ13aの中に、音源16から発生中のオープン音及びハーフオープン音が存在しない場合には、S507の処理を省略してもよい。
【0054】
次に、CPU11は、発音中メモリ13aの内容に基づき、発音時刻が、遷移時刻メモリ13dに記憶されている遷移時刻より前であるスライト音の停止指示を音源16へ出力し、当該スライト音の発生を音源16に停止させ(S508)、本処理を終了する。
【0055】
本実施形態の楽音制御装置1によれば、打面位置が停止制御位置P1に達した場合であっても、停止させる対象となるスライト音は、その発音時刻が、遷移時刻メモリ13dに記憶されている遷移時刻より前であるスライト音、即ち、規定開放位置P2に達する前に発生が開始されているスライト音に限定される。換言すれば、打面位置が停止制御位置P1に達した場合に停止させるスライト音は、発生後に打面位置が一旦上昇して規定開放位置P2に達したスライト音に限定される。
【0056】
このように、スライト音の発音時刻と、打面位置が規定開放位置P2を下から上に跨いだ時刻(遷移時刻)とを参照することにより、スライト音を発生した後の打面位置の遷移状態(移動状態)を推測することができる。かかる打面位置の遷移状態は、スライト位置でパッドを打撃し、打面位置を一度開いてから、クローズ位置に戻すハイハットの奏法を反映する。よって、打面位置が停止制御位置P1に達した場合に停止させるスライト音を、発生後に打面位置が一旦上昇して規定開放位置P2に達したスライト音とすることにより、上記奏法において、停止されるべきスライト音が鳴り続けることを防ぐことができ
、上記奏法を演奏者の意図通りに行うことができる。
【0057】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0058】
例えば、上記実施形態では、本発明を適用する楽音制御装置として、電子ハイハット80の楽音を制御する楽音制御装置1を例示したが、電子ハイハット80を含む電子ドラムセットを構成する電子ドラムや電子シンバルなどの各々に接続され、電子ハイハット80の楽音を含む各楽音をそれぞれ制御する楽音制御装置に、本発明を適用してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、楽音制御装置1が音源16およびDAC17を内蔵する構成としたが、音源16およびDAC17を有さず、別体の音源に対し、
図4,5のフローチャートに基づく楽音の発生指示又は停止指示を出力する構成としてもよい。また、楽音制御装置1が、電子ハイハット80に内蔵される構成であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、スライト音の発音時刻と、打面位置が規定開放位置P2を下から上に跨いだ時刻(遷移時刻)との関係に基づき、スライト音が発生してから(スライト位置で上部シンバル100が打撃されてから)の打面位置の遷移状態を推測する構成としたが、スライト音が発生してからの打面位置の遷移状態を推測する方法としては、これに限るものではない。
【0061】
例えば、定期的に更新するカウンタを設け、スライト音を発生させる場合に、現在時刻に換えて、カウンタ値を、発音中メモリ13aにおける当該スライト音の情報に対応付けて記憶する構成としてもよい。かかる場合には、打面位置が停止制御位置P1に達した場合には、そのときのカウンタ値と、発音中メモリ13aに記憶されているカウンタ値とを比較し、打面位置が停止制御位置P1に達したときのカウンタ値より、小さなカウンタ値に対応するスライト音に対する停止指示を、音源16へ出力する構成としてもよい。
【0062】
別の例としては、発音中メモリ13aに記憶される各楽音のうち、スライト音にフラグを対応付け、打面位置が停止制御位置P1に達した場合には、フラグの状態に応じて停止指示するスライト音を決定してもよい。つまり、
変位センサ処理(
図5)のS504において、規定開放位置P2を下から上に跨いだと判定された場合に、発生中のスライト音に対応付けたフラグをオンに設定し、S506において、停止制御位置P1を上から下に跨いだと判定された場合に、フラグがオンに設定されているスライト音に対する停止指示を音源16へ出力する構成としてもよい。
【0063】
さらに別の例としては、発音中メモリ13aに記憶される各楽音のうち、スライト音にカウンタを対応づけて設け、打面位置(即ち、変位センサ値)が所定量変化する毎に、スライト音に対応づけたカウンタを更新する構成としてもよい。打面位置が停止制御位置P1に達した場合に、発音中メモリ13aに記憶される各楽音のうち、カウンタ値が所定の閾値を越えるスライト音に対する停止指示を音源16へ出力する構成としてもよい。つまり、発生後に打面位置の変化量(移動量)が大きいスライト音色を、発生後に打面位置が一旦上昇して規定開放位置P2に達したスライト音と推測し、該当するスライト音の発生を停止させる構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、上部シンバル100が打撃された場合には、音色の種類とは無関係に発音時刻を記憶する構成としたが、発生させる音がスライト音である場合に限り、その後の打面位置の遷移状態の推測に用いる発音時刻を記憶する構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、S504において、規定開放位置P2を下から上に跨いだかを判定する構成としたが、規定開放位置P2を上から下へ跨いだかを判定する構成としてもよい。また、跨ぐ方向とは無関係に規定開放位置P2に達したかを判定する構成としてもよい。つまり、S505において遷移時刻メモリ13dに記憶される時刻(遷移時刻)を、跨ぐ方向とは無関係に規定開放位置P2に最後に達したときの時刻としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、S506において、停止制御位置P1を上から下に跨いだかを判定する構成としたが、跨ぐ方向とは無関係に停止制御位置P1に達したかを判定する構成としてもよい。なお、跨ぐ方向とは無関係に停止制御位置P1又は規定開放位置P2に達したかを判定する場合には、今回変位メモリ13b及び前回変位メモリ13cのうち、少なくとも前回変位メモリ13cを不要にできる。
【0067】
また、上記実施形態では、規定開放位置P2をハーフオープン位置の範囲内に規定したが、規定開放位置P2は、停止制御位置P1より高い位置であればよく、オープン位置や、スライト位置であっても停止制御位置P1より高い位置であればよい。
この規定開放位置P2を、ユーザが適宜変更できるように構成してもよい。
【0068】
上記実施形態では、電子ハイハットとして、上部シンバル100と下部シンバル200とからなる電子ハイハット80を例示したが、例えば、特開2006−201334号公報に記載される電子打楽器のような、下部シンバルを有さない電子ハイハットに対して本発明を適用してもよい。
【0069】
上記実施形態では、上部シンバル100と下部シンバル200との間に設けられた変位センサ60の出力(変位センサ値)に基づいて打面位置を検出する構成としたが、例えば、特開平09−097075号公報に記載されるような、ペダル部の踏み込み量を検出するセンサの出力に基づいて打面位置を検出する構成としてもよい。
【0070】
上記実施形態において、位置情報取得手段としては、S403,S501が例示される。打撃情報取得手段としては、S401が例示される。楽音発生指示手段としては、S405,S408,S410,S411が例示される。楽音停止指示手段としては、S507,S508が例示される。遷移状態情報取得手段としては、S402,S505が例示される。第1時間情報取得手段としては、S402が例示され、第2時間情報取得手段としては、S505が例示される。